タイトル: | 特許公報(B2)_1−エトキシエトキシハロベンゼンを製造する方法 |
出願番号: | 2003032531 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07C 41/06,C07C 43/225,C07B 61/00 |
久保田 昌広 江口 久雄 JP 4352711 特許公報(B2) 20090807 2003032531 20030210 1−エトキシエトキシハロベンゼンを製造する方法 東ソー株式会社 000003300 久保田 昌広 江口 久雄 20091028 C07C 41/06 20060101AFI20091008BHJP C07C 43/225 20060101ALI20091008BHJP C07B 61/00 20060101ALN20091008BHJP JPC07C41/06C07C43/225 AC07B61/00 300 C07C 41/54、43/30-43/303、41/06 CASREACT(STN) CAplus(STN) REGISTRY(STN) 特開2002−173456(JP,A) 特開平11−255820(JP,A) J. Org. Chem.,1993年,Vol.58,p.3538-3542 SYNLETT,1990年,Vol.9, p.555-556 2 2004244317 20040902 8 20051227 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医農薬、機能性高分子等の原料として有用な1−エトキシエトキシハロベンゼン(以下、EEHBと略記する)の製造方法に関する。特にパラ−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼンは、KrFエキシマレジスト用原料として注目されているパラ−(1−エトキシエトキシ)スチレンの原料として極めて有用であることが知られている。【0002】【従来の技術】本発明の目的化合物であるEEHBの製造方法としては、例えば、パラ−ブロモフェノールをパラ−トルエンスルホン酸ピリジン塩触媒の存在下にエチルビニルエーテルと反応させて、パラ−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼンを得る方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が知られている。【0003】しかしながら、本発明者らが上述のパラ−トルエンスルホン酸ピリジン塩触媒を用いる製造方法について検討したところ、以下の問題点が明らかになった。▲1▼ 上記特許文献中には本化合物の収率について記載はないが、本発明者らが追試を行ったところ、反応収率が十分とは言い難かった。▲2▼ 工業的スケールでの触媒入手が困難である。【0004】触媒の入手問題を回避する方法としては、比較的入手容易なパラ−トルエンスルホン酸及びピリジンを予め又は反応系中で混合し、パラ−トルエンスルホン酸ピリジン塩を調製して使用する方法があるが、この方法を用いた場合には、市販試薬のパラ−トルエンスルホン酸ピリジン塩を用いた場合に比べて、反応収率が著しく低下する結果となった。【0005】また、例えば、パラ−ブロモフェノールを塩酸等の無機酸の存在下にエチルビニルエーテルと反応させて、パラ−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼンを得る方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。この反応は発熱反応のため、反応に伴い反応温度は上昇していくが、反応温度が高くなると収率が低下するため、工業的規模で製造するには発熱をおさえる為の除熱時間が長くかかる欠点がある。また、工業的設備においては、反応器が鉄製材質でできたものが多く、反応系に微量の鉄錆が発生又は混入する可能性がある。この反応系中に鉄錆等が微量混入すると多量の副生物が生じ反応収率が著しく低下する問題があり、この方法も工業的な製造法としては満足できるものではない。【0006】【特許文献1】特開平1−311051号公報(実施例)【特許文献2】特開平6−194842号公報(実施例)【特許文献3】特開2002−173456号公報(特許請求の範囲)【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の方法では満足できなかったEEHBの合成法を提供することにある。すなわち、従来の問題点を解決し、効率的で経済性及び安全性に優れたEEHBの製造法を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、ハロフェノールを触媒の存在下にエチルビニルテーテルと反応させて1−エトキシエトキシハロベンゼンを製造する方法において、触媒としてカルボン酸を用いると、1−エトキシエトキシハロベンゼンが容易に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。【0009】すなわち本発明は、下記一般式(1)【0010】【化3】(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロフェノールを、触媒の存在下にエチルビニールエーテルと反応させて、下記一般式(2)【0011】【化4】(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表される1−エトキシエトキシハロベンゼンを製造する方法において、触媒としてカルボン酸を用いることを特徴とする、1−エトキシエトキシハロベンゼンの製造方法である。【0012】以下、本発明を詳細に説明する。【0013】本発明の方法は、ハロフェノールを触媒の存在下にエチルビニルエーテルと反応させることにより行われる。【0014】本発明において使用される触媒はカルボン酸である。本発明においてカルボン酸とは、カルボン酸基を含有する化合物のことをいい、特に限定するものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、n−ウンデシレン酸等の飽和モノカルボン酸類;アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、α−エチルアクリル酸、β,β−ジメチルサクリル酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、4−ヘキサン酸、5−ヘキセン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、3−メチル−2−ペンテン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、4−メチル−3−ペンテン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、4−デセン酸、9−デセン酸,9−ウンデセン酸、10−ウンデセン酸、4−ドデセン酸、5−ドデセン酸等のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸類;プロピオール酸、テトロール酸、エチルプロピオール酸、n−プロピルプロピオール酸、i−プロピルプロピオール酸、n−ブチルプロピオール酸、t−ブチルプロピオール酸、n−アミルプロピオール酸、9−ウンデシン酸等のモノアセチレン性不飽和モノカルボン酸類;2,4−ペンタジエン酸、2,4−ヘキサジエン酸、シアリル酢酸等のジエン性不飽和モノカルボン酸類;フルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、トリブロモ酢酸、ヨード酢酸、ジヨード酢酸、トリヨード酢酸、α−クロロプロピオン酸、β−クロロプロピオン酸、α−ブロモプロピオン酸、β−ブロモプロピオン酸、α−ヨードプロピオン酸、β−ヨードプロピオン酸等のハロゲン化飽和モノカルボン酸類;α−クロロアクリル酸、β−クロロアクリル酸、トリクロロアクリル酸、α−ブロモアクリル酸、β−ブロモアクリル酸、α−ヨードアクリル酸、β−ヨードアクリル酸、α−クロロクロトン酸、β−クロロクロトン酸、γ−クロロクロトン酸、α−ブロモクロトン酸、β−ブロモクロトン酸、γ−ブロモクロトン酸等のハロゲン化モノエチレン性不飽和モノカルボン酸類;しゅう酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の飽和ジカルボン酸類;クロロマロン酸、ジクロロマロン酸、ブロモマロン酸、ジブロモマロン酸、クロロこはく酸、ジクロロこはく酸、ブロモこはく酸、ジブロモこはく酸等のハロゲン化飽和ジカルボン酸類;メチルこはく酸、メチレンマロン酸、α−メチルグルタル酸、β−メチルグルタル酸等のアルキル置換飽和ジカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸類;トランス−トランスムコン酸、シス−シスムコン酸、シス−トランスムコン酸等のポリエチレン性不飽和ジカルボン酸類;アセチレンジカルボン酸、1−プロピン−1,3−ジカルボン酸、1−ブチン−1,4−ジカルボン酸、2−ブチン−1,4−ジカルボン酸等のモノアセチレン性不飽和ジカルボン酸類;プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸等の3価以上の飽和ポリカルボン酸類;安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、4−アセチル安息香酸、o−フルオロ安息香酸、フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ビフェニルカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、9−アントラセンカルボン酸等の芳香族カルボン酸類等を挙げることができる。【0015】本発明においては、上記した触媒を単独に又は混合物として使用することができるが、反応性、経済性を考慮すると、好ましくはハロゲン置換されているカルボン酸、より好ましくはトリフルオロ酢酸、トリブロモ酢酸及びトリクロロ酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。尚、本発明の方法において使用される触媒の使用量は特に限定するものではないが、通常、ハロフェノールに対して10-4〜10-1倍モル程度の使用量が選ばれる。【0016】本発明の方法で用いるエチルビニルエーテルの量は、格別の限定はないが、ハロフェノールに対し、通常1〜5モル比の範囲が好ましい。このモル比が1より小では、ハロフェノールの十分な転化率が得られない場合があり、5より大では、エチルビニルエーテルの量が著しく増加して経済的でない。本発明における反応温度について、特に限定するものではないが、通常−20℃〜100℃、好ましくは0〜70℃の条件下で実施される。【0017】本発明の方法は、溶媒の存在下で実施することができる。なお、本発明の方法において使用される反応溶媒としては、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の含酸素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。本発明の方法においては、通常、これらの溶媒を単独に又は混合して使用する。【0018】反応終了後は、常法に従い反応液にアルカリ性水溶液を加えた後、有機層を分離する。続いて、有機層を水洗処理し、溶媒を留去した後、蒸留することにより高純度なEEHBを得ることも出来る。【0019】【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の方法によれば、従来の問題点を解決して、1−エトキシエトキシハロベンゼンを効率良く、安全に製造することが可能となる。【0020】【実施例】以下に、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。【0021】実施例1温度計、攪拌翼を有する1Lフラスコに、パラ−ブロモフェノール173.0g(1.00mol)、トリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)及びトルエン318gを仕込み、エチルビニルエーテル72.1g(1.00mol)を30℃で約3時間かけて滴下した。さらに同温度で2時間熟成した。【0022】反応終了後、得られた反応液に20%水酸化ナトリウム水溶液100g(0.50mol)を加えた。有機層を分離した後、安定剤を加えて溶媒を留去し、黄色液体239.5gを得た。この溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、パラ−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼンの収率は94.2%であった。結果を表1に示す。【表1】【0023】実施例2反応温度を50℃に変えた以外は実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0024】実施例3仕込み時に、添加物として鉄粉1.2mgを加えた以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0025】実施例4実施例1で使用したトリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)に代えて、トリブロモ酢酸1.49g(5.0mmol)を用いた以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0026】実施例5実施例1で使用したトリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)に代えて、トリクロロ酢酸0.82g(5.0mmol)を用いた以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0027】比較例1実施例1で使用したトリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)に代えて、36%塩酸0.51g(5.0mmol)を用いた以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0028】比較例2実施例1で使用したトリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)に代えて、36%塩酸0.51g(5.0mmol)を用いたこと、及び反応温度を50℃に変えたこと以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0029】比較例3実施例1で使用したトリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)に代えて、36%塩酸0.51g(5.0mmol)を用いたこと、及び仕込み時に、添加物として鉄粉1.2mgを加えた以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0030】比較例4実施例1で使用したトリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)に代えて、パラ−トルエンスルホン酸ピリジン塩〔和光純薬製〕1.35g(5.0mmol)を用いた以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0031】比較例5実施例1で使用したトリフルオロ酢酸0.57g(5.0mmol)に代えて、パラ−トルエンスルホン酸ピリジン塩〔和光純薬製〕1.35g(5.0mmol)を用いたこと、及び反応温度を50℃に変えたこと以外は実施例1の方法に準じて反応を行った。結果を表1にあわせて示す。【0032】比較例6温度計、攪拌翼を有する1Lフラスコに、パラ−ブロモフェノール173.0g(1.00mol)、パラ−トルエンスルホン酸一水和物0.95g(5.0mmol)、ピリジン0.4g(5.0mmol)及びトルエン318gを仕込み、30℃で30分攪拌した後、エチルビニルエーテル72.1g(1.00mol)を30℃で3時間かけて滴下した。さらに同温度で2時間熟成した。【0033】反応終了後、得られた反応液に20%水酸化ナトリウム水溶液120.0g(0.60mol)を加えた。有機層を分離した後、安定剤を加えて溶媒を留去し、黄色液体113.2gを得た。この溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、パラ−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼンの収率は42.7%であった。結果を表1にあわせて示す。 下記一般式(1)(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表されるハロフェノールを、触媒の存在下にエチルビニールエーテルと反応させて、下記一般式(2)(式中、Xはハロゲン原子を示す)で表される1−エトキシエトキシハロベンゼンを製造する方法において、触媒として、トリフルオロ酢酸、トリブロモ酢酸及びトリクロロ酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸を用いることを特徴とする1−エトキシエトキシハロベンゼンの製造方法。 ハロフェノールがパラ−ブロモフェノールであり、1−エトキシエトキシハロベンゼンがパラ−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。