タイトル: | 特許公報(B2)_Si基板上への単分子膜の形成方法 |
出願番号: | 2003026871 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | B01J 19/00,B05D 1/20,C12M 1/00,G01N 27/327,G01N 33/547 |
米澤 徹 白幡 直人 河本 邦仁 小林 一清 三浦 佳子 JP 4381690 特許公報(B2) 20091002 2003026871 20030204 Si基板上への単分子膜の形成方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 清水 守 100089635 米澤 徹 白幡 直人 河本 邦仁 小林 一清 三浦 佳子 20091209 B01J 19/00 20060101AFI20091119BHJP B05D 1/20 20060101ALI20091119BHJP C12M 1/00 20060101ALI20091119BHJP G01N 27/327 20060101ALI20091119BHJP G01N 33/547 20060101ALI20091119BHJP JPB01J19/00 KB01J19/00 MB05D1/20C12M1/00 AG01N27/30 351G01N33/547 B01J 19/00-19/32 B05D 1/00-7/26 C12M 1/00 G01N 27/327 G01N 33/547 特開平11−128723(JP,A) 特開2002−022745(JP,A) 国際公開第97/041425(WO,A1) 1 2004237159 20040826 8 20060118 神田 和輝 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、Si基板上への単分子膜の形成方法に関するものである。【0002】【従来の技術】 近年、無機基板上へ有機単分子膜を集積化し、無機基板表面の性質を変性する研究が盛んである(下記非特許文献1参照)。例えば、無機基板表面に配設された分子鎖のターミナルグループをフッ素化することにより、超撥水性を有する無機基板が得られる。逆に、シラノール基を有すれば、親水膜となる。さらに、何らかのエネルギー源(例えば、光や電子線)を単分子膜へ照射することにより、異なる2種類の表面性質を有する基板が得られる(通称:パターン化)。【0003】 これにより、異なる表面における分子認識を利用することによって、基板の所望するサイトへ粒子を配列させたり(下記非特許文献2及び3参照)、薄膜を位置選択的に成長させること(下記非特許文献4参照)が可能となる。【0004】 しかしながら、これら単分子となる出発原料はAu等上のチオール、SiO2 等上の有機シラン化合物、Si上への不飽和炭化水素(下記非特許文献5参照)と全てが溶液である。【0005】 一方、最近、固体状物質として得られるナノスケール物質を基板上へ集積化するためのプロセスが注目を浴びている。これは、ナノスケール物質の可溶化が注目され、物質表面における官能基化が可能となったからである。代表的な物質としては、フラーレンC60が挙げられる(非特許文献6参照)。【0006】 しかしながら、これらは、主として、Si表面に被覆するSiO2 上へ有機シラン化合物を配設し、その上に分子認識を利用した方法であることから、先に述べた方法パターン化基板上の所望するサイトへ選択的に配列する方法の応用例に過ぎない。加えて、SiO2 層を介しているため表面ラフネスを軽減させることが困難である。【0007】【非特許文献1】 Xia&Whitesides,Angew.Chem.Int.Ed.(Review)1998,37,pp.550−575【0008】【非特許文献2】 増田佳丈,マテリアルスインテグレーション,14(8),2001,pp.37−44【0009】【非特許文献3】 不動寺浩,表面科学,22(1),pp.19−29,2001【0010】【非特許文献4】 増田佳丈,化学と教育,48(9),pp.556−559,2000【0011】【非特許文献5】 Ulman,Chem.Rev.(Review)1996,96,pp.1533−1554【0012】【非特許文献6】 Chupa,J.Am.Chem.Soc.115,pp.4383−4384(1993)【0013】【非特許文献7】 Linford,J.Am.Chem.Soc.117,pp.3145−3155(1995)【0014】【発明が解決しようとする課題】 本発明では、アルケンが水素終端Si表面へラジカル反応により単分子膜として配設するプロセス(上記非特許文献7参照)に着目し、固体状物質であっても一部に不飽和結合を形成し、かつ、何らかの溶媒へ可溶であれば、Si基板上へダイレクトにラジカル反応を利用して集積化が可能ではないかと考えた。【0015】 実際には、特定のタンパク質やウイルス、菌、細胞と選択的に結合することが知られ、多方面で無機基板上への集積化が期待されている糖鎖に着目した。【0016】 本発明は、上記状況に鑑み、Si基板上へダイレクトにラジカル反応を利用して集積化することができるSi基板上への単分子膜の形成方法を提供することを目的とする。【0017】【課題を解決するための手段】 本発明は、上記目的を達成するために、 〔1〕Si基板の表面の不純物を除去し、この不純物が除去されたSi基板の水素終端化処理を行い、この水素終端化処理が行われたSi基板の表面に、不飽和結合を有し、かつ、無水有機溶媒に可溶である物質を配設し、単分子膜を形成するSi基板上への単分子膜の形成方法であって、粉末状で得られるラクトース末端タイプアルケンを無水有機溶媒中にて超音波分散させ、完全に溶解後、この溶液中に水素終端化Si基板を浸漬し、非酸素雰囲気下にて、加温することにより、ラジカル反応を利用してラクトース末端タイプアルキル基が単分子膜として自己組織的に水素終端化Si基板のSi表面上へラクトース末端タイプアルケンを集積化することを特徴とする。【0018】【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。【0019】 図1は本発明のSi基板上への単分子膜の形成工程を示す模式図である。【0020】 (1)まず、シリコンウエハ表面上に直接配設するラクトース末端タイプアルケン粉末の作製方法について説明する。【0021】 末端が不飽和化したアルキル基をもつ糖分子である糖末端タイプアルケンを調製した。実施例として、調製された糖末端タイプアルケン3〔図4参照〕は、Allyl−Gal(ガラクトース末端タイプアルケンの例)とVLA(ラクトース末端タイプアルケンの例)の2種類である。【0022】 (2)清純(水素終端化)シリコン表面の作製 図1(a)に示すように、用いられるシリコンウエハ1は、先ず、不純物を除去しておく。この不純物の除去は、既知の手法に従って行われ、例えば、アセトン、エタノール、次いで純水でそれぞれ5分程度超音波洗浄し、さらに大気中にて紫外線を照射する。照射後のシリコンウエハ表面における水の接触角は5°以下(超親水表面の形成)であり、このことは、シリカに被覆されたシリコンウエハが得られたことを示し、ウエハ表面の不純物は完全に除去されたことを意味する。【0023】 このようにして不純物が除去されたシリコンウエハ1は、次に、図1(b)に示すように、水素終端化処理に供される。水素終端化処理の手法そのものは、良く知られており、例えば、窒素雰囲気下、HF水溶液(1.0vol%)にシリコンウエハ1を1分間程浸漬する。このようにして、シリコン表面が清浄化され自然酸化により生じたシリカ層が消失し、シリコン表面にSi−H(ケイ素−水素)結合が発現している水素終端化シリコンウエハ2が得られる。水素終端化の可否は、シリコン表面における水の接触角が78〜82°になることから判断される。【0024】 (3)ラクトース末端タイプアルケンのSi表面への配設 水素終端化シリコンウエハ2表面上に、図1(c)に示すように、糖末端タイプアルケン3を集積化させる。【0025】 まず、合成時において、粉末状で得られる糖末端タイプアルケン3を無水有機溶媒中にて超音波分散させる。完全に溶解後、この溶液中に水素終端化シリコンウエハ2を浸漬し、非酸素雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)にて、加温することにより、図1(d)に示すように、ラジカル反応を利用して糖末端タイプアルキル基が単分子膜4として自己組織的に水素終端化シリコンウエハ2のシリコン表面上へ集積化する。【0026】 さらに、その単分子膜4にはタンパク質5を吸着させることができる。【0027】 本発明によれば、粉末などの固体状物質であっても、溶解が可能であれば、シリコン基板上へ単一分子として集積化可能であることを示唆しており、このことは、溶液として得られない物質、例えば、高融点を持つ物質を無機基板上へ集積化させたい場合にも適用可能な技術である。【0028】 (4)溶媒の選定 有機溶媒の選定に際しては、溶解させる物質との間のマッチングに依存する。本発明では、アルケンと水素終端表面におけるラジカル反応を利用するため、無水有機溶媒でなければならないが、上記したように、糖末端タイプアルケンを用いた場合にでも、少量であれば、トルエンのような疎水性の高い溶媒においても溶解が可能である。上記実施例においては、例えば、トルエン、クロロホルム、ブロモホルム、ジメチルスルオキシドなどを用いることが可能である。【0029】 (実施例) 既述したように不純物除去及び水素終端化処理した水素終端化シリコンウエハ2を、VLAを適量超音波処理によって溶解させた無水トルエン溶液に、窒素雰囲気下110℃において、2時間浸漬して、ラクトース末端タイプアルキル鎖3をシリコンウエハ2上に単分子状態で形成させた。【0030】 浸漬前後で、シリコン(Si)基板2表面の水の接触角が、78〜82°から20〜30°前後へ変化しており、これは、Si基板2表面の状態が、疎水性から親水性へ変化していることを示している。なぜなら、浸漬後の接触角の値は、金上へメルカプトエタノールを単分子膜4として形成させた値(20°前後)とほぼ同じであるからである。また、Allyl−Galを同様に実験した場合、浸漬後の接触角は、35〜40°となった。【0031】 図2にVLAを用いた場合の浸漬前後におけるラマン分光分析結果を示す。【0032】 1100cm-1付近に、SAM形成前は見受けられなかったブロードなピークが検出された。これが、ラクトース粉末に見られるピーク値と良く一致する。【0033】 ラクトースは、特定のタンパク質に対し特異的に結合する性質を持っている。本発明では、植物マメ科レクチンの一種である分子量35000のヒママメレクチン(RCA120)を用いた。純水中で、レクチンを溶解させ、これに、ラクトース単分子膜を配設したSi基板を15分間浸漬した。【0034】 図3に浸漬前後のSi基板表面の原子間力電子顕微鏡(AFM)像を示す。【0035】 浸漬前のSi基板表面は、図3(a)に示すように、平滑(RMS=0.4〜1.5nm)であったが、図3(b)に示すように、浸漬後は、表面は非常に荒く(RMS=2〜4nm)なり、粒状物質が多数見られる。【0036】 以上の実験の事実から、ラクトース末端アルケンのSi基板上への集積化は、ラクトースをターミナルグループとし、トップグループであるアルケンが、Si−H表面とラジカル反応してSi−C結合を形成し、配設することによりなされることが明らかとなった。また、ガラクトース末端アルケンも同様であった。【0037】 本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。【0038】 (1)固体状物質でも可溶化すれば、Siウエハ上へ集積が可能である。【0039】 (2)本発明で用いたガラクトースやラクトースは、各々特定のタンパク質(例えば、RCA)や菌(イールス菌、大腸菌)、HIVウィルス、細胞(肝臓細胞やT細胞)と結合もしくは吸着する。それ故、これらを検出するためのバイオセンサーとして応用可能である。【0040】 (3)炭素状物質の場合、光リソグラフィーにより、パターン化が可能であるため、糖とそれぞれの糖が分子認識可能なレクチンや細胞、ウィルスなどをSi基板上の所望する箇所に選択的に吸着することが可能である。【0041】 (4)常圧下で100℃程度の低温場で集積化可能という非常にシンプルなプロセスである。加えて、未反応の出発物質は再利用可能であるため、実験系において、廃液となるのは、Siウエハの水素終端化に用いたHFのみである。【0042】 なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。【0043】【発明の効果】 以上、詳細に説明したように、本発明によれば、次のような効果を奏することができる。【0044】 (A)不飽和結合を有し、かつ、何らかの無水有機溶媒に可溶である物質は、例え、固体状態(例えば粉末状態)であってもSiウエハ上に配設することが可能である。つまり、固体状物質でも可溶化すれば、Siウエハ上へ集積が可能である。【0045】 (B)分子認識するような化合物(ここでは糖鎖)を単分子状態で、Si基板上へダイレクトに形成することが可能である。【0046】 (C)本発明で用いる糖類は、特定のタンパク質(例えば、RCA)や菌(イールス菌、大腸菌)、HIVウィルス、細胞(肝臓細胞やT細胞)と結合もしくは吸着する。それ故、これらを検出するためのバイオセンサーとして応用可能である。【0047】 (D)炭素状物質の場合、光リソグラフィーにより、パターン化が可能であるため、糖類と分子認識可能なレクチンや細胞、ウィルスなどをSi基板上の所望する箇所に選択的に吸着することが可能である。【0048】 (E)常圧下で100℃程度の低温場で集積化可能であり、非常にシンプルなプロセスである。加えて、未反応の出発物質は再利用可能であるため、実験系において、廃液となるのは、Siウエハの水素終端化に用いたHFのみである。【図面の簡単な説明】【図1】 本発明のSi基板上への単分子膜の形成工程を示す模式図である。【図2】 本発明のVLAを用いた場合の浸漬前後におけるラマン分光分析結果を示す図である。【図3】 本発明の浸漬前後のSi基板表面の原子間力電子顕微鏡(AFM)像を示す図である。【図4】 本発明の実施例で用いたラクトース末端タイプアルケン(VLA)とガラクトース末端タイプアルケン(Allyl−Gal)の分子構造式を示す図である。【符号の説明】 1 不純物が除去されたシリコンウエハ 2 水素終端化シリコンウエハ 3 糖末端タイプアルケン 4 単分子膜 5 タンパク質 Si基板の表面の不純物を除去し、該不純物が除去されたSi基板の水素終端化処理を行い、該水素終端化処理が行われたSi基板の表面に、不飽和結合を有し、かつ、無水有機溶媒に可溶である物質を配設し、単分子膜を形成するSi基板上への単分子膜の形成方法であって、粉末状で得られるラクトース末端タイプアルケンを無水有機溶媒中にて超音波分散させ、完全に溶解後、この溶液中に水素終端化Si基板を浸漬し、非酸素雰囲気下にて、加温することにより、ラジカル反応を利用してラクトース末端タイプアルキル基が単分子膜として自己組織的に水素終端化Si基板のSi表面上へラクトース末端タイプアルケンを集積化することを特徴とするSi基板上への単分子膜の形成方法。