生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アクリル酸亜鉛の製造方法
出願番号:2003022057
年次:2010
IPC分類:C07C 51/41,C07C 51/43,C07C 57/04


特許情報キャッシュ

長谷川 学 斉藤 義規 JP 4398157 特許公報(B2) 20091030 2003022057 20030130 アクリル酸亜鉛の製造方法 日本蒸溜工業株式会社 000231420 株式会社日本触媒 000004628 八田 幹雄 100072349 奈良 泰男 100110995 宇谷 勝幸 100114649 長谷川 学 斉藤 義規 20100113 C07C 51/41 20060101AFI20091217BHJP C07C 51/43 20060101ALI20091217BHJP C07C 57/04 20060101ALI20091217BHJP JPC07C51/41C07C51/43C07C57/04 C07C 51/41 C07C 51/43 C07C 57/04 米国特許第06278010(US,B1) 特開昭60−092237(JP,A) 2 2004231571 20040819 12 20060120 井上 千弥子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、HLBが1〜12のノニオン界面活性剤の存在下に、アクリル酸と酸化亜鉛とを反応させることを特徴とする、純度が高く吸湿が低減された微細なアクリル酸亜鉛の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】アクリル酸亜鉛は架橋剤として有用な化合物であり、ゴム組成物に配合して加硫性を改善したり、合成樹脂の改質剤として用いられる。【0003】従来、アクリル酸亜鉛を得る方法としては、有機溶媒中でアクリル酸と亜鉛化合物とを反応させ、反応液から有機溶媒を留去させた後に乾燥する方法(特許文献1)や、該反応液から有機溶媒を濾過後乾燥する方法がある。しかしながら、これらの方法では、反応生成物が反応器の内壁や攪拌翼に著しく固着し、または塊状に凝集するため作業性が悪くなる。また、減圧して溶媒を除去する場合には、生成したアクリル酸亜鉛中に含まれる溶媒が飛散するため、該アクリル酸亜鉛の一部も飛散して収率が低下し、または余分の分離回収装置等の設置が必要になるなど経済的な損失も大きい。【0004】一方、アクリル酸亜鉛をゴム組成物に混練して使用する場合は、ステアリン酸等の高級脂肪酸やその亜鉛塩を添加してアクリル酸亜鉛粒子の表面をコーティングする方法が多く提案されている(特許文献2〜5)。【0005】しかしながら、これらの方法では、アクリル酸と酸化亜鉛との反応工程と、これにステアリン酸等の高級脂肪酸やその亜鉛塩を添加してアクリル酸亜鉛の粒子表面をコーティングする工程、およびこれらの工程に応じた装置がそれぞれ必要となる。さらに、得られたアクリル酸亜鉛をゴム組成物に混練するには325メッシュ(44μm)以下の微粉末であることが必要であり、このような微粉末に粉砕する工程も必要となる。この粉砕工程は多大な労力を要するばかりでなく、粉砕作業中および粉砕後のアクリル酸亜鉛が非常に発塵し易いため、作業環境が悪化して衛生上の問題が発生する場合がある。【0006】これに対し、アニオン界面活性剤の存在下に、反応溶媒としてトルエンを使用し、これに酸化亜鉛を分散させながらアクリル酸と炭素数12〜30の高級脂肪酸を添加し、該酸化亜鉛と反応させて有機溶媒に添加してアクリル酸亜鉛を製造する方法がある。得られたアクリル酸亜鉛は、ゴム組成物と混練しても固着や凝集の発生が極めて少なく、均一に拡散されて混練を完了させることができる、というものである(特許文献6)。【0007】また、トルエンに酸化亜鉛と脂肪酸とを仕込んだ溶液に温度40〜75℃でアクリル酸を添加し、該反応液に0.02〜1.0重量%のノニオン界面活性剤を添加してクリーム状になるまで攪拌し、減圧下にトルエンと水とを除去してアクリル酸亜鉛を製造する方法もある(特許文献7)。【0008】【特許文献1】特公昭58−14416号【特許文献2】特開昭52−154436号【特許文献3】特開昭53−83834号【特許文献4】特開昭60−94434号【特許文献5】特開平2−218639号【特許文献6】特開平9−202747号公報【特許文献7】米国特許第6,278,010号明細書【0009】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、酸化亜鉛が分散したトルエン中で高級脂肪酸とアクリル酸とを反応させると該反応によって生成水が発生するため、目的物を有機溶媒と分離した後に乾燥させる必要があり、この際にアクリル酸亜鉛が凝集する場合がある。このような凝集塊の存在は分散性の低下につながるため、アクリル酸亜鉛の製造工程では粉砕工程が必須となる。【0010】また、上記特許文献6記載の実施例1〜4で製造されるアクリル酸亜鉛は、いずれも500μm以上の粒子が全粒子の20質量%を超えて存在し、そのままではゴム中で凝集塊を生じずにスムーズに混練りできず、また、良好に分散しないという欠点がある。また、44μmのアクリル酸亜鉛を63〜66重量%含むものの、5μm以下の粒度のものは40〜43重量%に過ぎず、微細かつ均一な粒度を有するアクリル酸亜鉛の微粉末を製造するには粉砕工程が不可欠である。従って、ゴム組成物中にスムーズに混練りできかつ良好な分散性を有するアクリル酸亜鉛に対する要求は強いが、このような要求に応えるには十分でない。同様に、上記特許文献7記載の方法では、また、HLB8〜17のノニオン界面活性剤を反応終了後に該反応液に添加し、得られたアクリル酸亜鉛の結晶同士の凝集を防止し、粉砕を必要としないというものであるが、40μm未満のものが99%の割合で合成できるが、10μm未満のものは40%に足りず、十分に微細なアクリル酸亜鉛の結晶とはいえない。【0011】また、アクリル酸亜鉛は吸湿しやすく、添加時の流動性が低下するため、アクリル酸亜鉛の貯蔵にはアルミコーティングのポリエチレン袋などが使用される場合が多い。また、より純度の高いものが要求されるが、これを十分に満足するアクリル酸亜鉛は存在しない。【0012】【課題を解決するための手段】 本発明者は、ノニオン界面活性剤の添加時と反応溶媒中で生成するアクリル酸亜鉛の結晶サイズを詳細に検討したところ、アクリル酸と酸化亜鉛の反応開始時にノニオン界面活性剤が存在するとアクリル酸亜鉛の結晶サイズが小さくなり、かつ純度が向上することを見出し、特にHLBが1〜12のノニオン界面活性剤を使用すると、結晶表面全体に界面活性剤がコーティングされるために吸湿性が低減することを見出し、本発明を完成させた。【0013】結晶形が大きくなると、結晶成長時未反応物が、その中に取り込まれてしまうため純度が低下するが、アクリル酸亜鉛の結晶形を小さくコントロールすることで純度を向上させることができる。従って、純度向上のためのその後の精製工程が不要となり、収率を向上させることができる。【0014】また、アクリル酸亜鉛の結晶表面全体に界面活性剤がコーティングされるために吸湿性が低下し、防湿効率を向上させることができる。特にHLBが1〜8と低値の場合に、吸湿性を効果的に防止することができる。【0015】【発明の実施の形態】本発明の第一は、HLB1〜12のノニオン界面活性剤の存在下に、有機溶媒中でアクリル酸と酸化亜鉛とを反応させることを特徴とする微細なアクリル酸亜鉛の製造方法である。【0016】アクリル酸亜鉛の製造方法としては、アクリル酸と酸化亜鉛とをトルエンなどを反応溶媒とするアクリル酸亜鉛の製造方法が一般的である。これは、アクリル酸と酸化亜鉛との反応は下記式に示すように水を発生するため、共沸蒸留によって容易に生成水を除去できることから、反応溶媒としてトルエンを使用するためである。【0017】【数1】【0018】例えば、上記特許文献7に記載の方法は、溶媒としてトルエンなどの炭素数6〜10の芳香族炭化水素を使用し、酸化亜鉛、脂肪酸およびアクリル酸を仕込んみ、アクリル酸亜鉛組成物を合成し、次いでノニオン界面活性剤を添加してクリーム状になるまで攪拌した後、減圧下にトルエンと水とを除去してアクリル酸亜鉛組成物を製造している。【0019】しかしながら、アクリル酸亜鉛の結晶生成・成長は主に反応生成水中で起っているため、溶媒の有する水との界面張力を変えるとアクリル酸亜鉛の結晶形状を変化できることが判明した。例えば、水との界面張力が36dyn/cm(20℃)であるトルエンを使用して得られるアクリル酸亜鉛は、水との界面張力が50〜55dyn/cm(20℃)の溶媒を使用して製造したものと比較して、細長い結晶形となり、この細長い結晶は反応液中で切断され易く、その結果、得られるアクリル酸亜鉛は微細な結晶となる。従って、予めノニオン界面活性剤を添加したトルエン溶液中でアクリル酸亜鉛の結晶を成長させると、アクリル酸亜鉛の合成に伴い発生する生成水の表面張力が低下し、結果として8μm以下の微細なアクリル酸亜鉛を製造し得るのである。しかも該方法によれば、純度が高いためにその後の精製工程を不要とすることができ、しかも、吸湿性が低減されているため、貯蔵時の防湿操作を簡便なものとしても使用時の流動性を確保することができるのである。以下、本発明を詳細に説明する。【0020】本発明で使用する溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール類を広く使用することができ、これらの1種以上の混合物を使用してもよい。【0021】脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソへキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、シクロへキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等の炭素数1〜4の分岐を有していてもよい、環状または鎖状のアルカンである。この中でも炭素数6〜8のアルカンであるヘキサン、ヘプタン、オクタンを使用することが好ましい。その理由は共沸により、水の系外への除去が容易になるからである。該脂肪族炭化水素系溶媒は単独で反応溶媒として使用することができる。【0022】芳香族炭化水素系溶媒は、トルエン、キシレン、シメチレン、クメン、シメン、スチレン、ベンゼン、エチルベンゼンから選ばれる少なくとも1種であり、この中でもトルエン、キシレンを使用することが好ましい。その理由は共沸により、水の系外への除去が容易になるからである。【0023】アルコールとしては、好ましくは分岐を含んでいてもよい炭素数1〜8のアルコールであり、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールがある。これらの中でもイソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノールを使用することが好ましい。その理由は、共沸により、水の系外への除去が容易になるからである。【0024】本発明で使用するノニオン界面活性剤としては、例えば、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロックポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリスチレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル; ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等がある。本発明では、ノニオン界面活性剤として、HLBが1〜12、より好ましくは1〜8、特には3〜6のものを使用する。HLBが12を超えると純度が低下し、または吸湿低減効果が劣る場合がある。【0025】本発明の方法は、該ノニオン界面活性剤の存在下に、酸化亜鉛を上記反応溶媒中に分散させながら、アクリル酸と反応させることによってアクリル酸亜鉛を得るものである。十分な攪拌能力を有する攪拌機及び加熱冷却器を備えた反応器中に、所定量の上記溶媒を仕込んで、攪拌しながら酸化亜鉛を仕込み懸濁液を調製する。本発明において、ノニオン界面活性剤は、アクリル酸と酸化亜鉛との反応の際に反応溶液中に存在すればよいため、溶媒にアクリル酸や酸化亜鉛に先立ってノニオン界面活性剤を仕込んでもよく、アクリル酸や酸化亜鉛を仕込んだ後、加熱による反応前にノニオン界面活性剤を反応溶液に添加してもよい。これらのノニオン界面活性剤の添加量は、反応溶液中に0.01〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%である。【0026】本発明で使用する酸化亜鉛は、高純度のものが好ましいが、水酸化亜鉛を不純物として含んでいてもよい。反応溶媒は、使用する溶媒の種類によっても異なるが、質量換算で酸化亜鉛の1〜7倍であることが好ましく、より好ましくは1〜5倍、特に好ましくは1.3〜4.5倍である。溶媒量が7を超える場合には、未反応物が反応液上部に局在化してしまうため、純度低下する場合がある。本発明では、ノニオン界面活性剤を使用するため、このような未反応物の極在化を防止し、反応効率を向上させることができ、しかも酸化亜鉛に対する使用量が高い場合であっても、アクリル酸亜鉛の純度を高く維持することができる。なお、溶媒量を低下させると粘度が上昇しかつ均一になるため、混練の際の攪拌翼への付着が減少する。なお、溶媒量が酸化亜鉛の7倍量を超えるとこのような純度向上効果が減少し、一方、1.3倍量を下回ると、攪拌が困難となる場合がある。【0027】次いで、この反応液に、必要ならば冷却して10〜70℃、好ましくは15〜50℃を維持しながら、アクリル酸を添加・反応してアクリル酸亜鉛を生成させる。アクリル酸の使用量は、酸化亜鉛と十分反応する量であれば特に制限されないが、酸化亜鉛100質量部に対して、通常、50〜250質量部、好ましくは50〜200質量部である。なお、アクリル酸を過剰に使用した場合には、アクリル酸亜鉛の分離・回収の際に、有機溶媒および反応生成水と共に過剰なアクリル酸を留去、乾燥する。本発明において使用するアクリル酸は、いずれの形態で使用してもよく、また、若干量の水を含んでいてもよいが、好ましくは水で希釈されていないアクリル酸である。また、ハイドロキノンやハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合防止剤をアクリル酸中に含ませてもよい。なお、アクリル酸の添加および反応時間もまた、その反応温度に応じて0.5〜10時間、好ましくは2〜7時間の範囲で適宜選択することができる。【0028】本発明では、アクリル酸の添加に先立ち、反応溶媒に酸化亜鉛を分散させた上記懸濁液に、10〜70℃、好ましくは30〜50℃の温度を維持しながら、高級脂肪酸を添加・反応して、予め高級脂肪酸亜鉛を生成させてもよい。この際、高級脂肪酸の添加および反応時間はその反応温度に応じて0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲で適宜選択することができる。高級脂肪酸の存在下にアクリル酸亜鉛を合成する場合には、アクリル酸亜鉛の含量が60〜98質量%、好ましくは70〜95質量%となるようにアクリル酸と高級脂肪酸の使用量を調整する。より具体的には、高級脂肪酸の使用量は、酸化亜鉛と十分反応する量であれば特に制限されずアクリル酸亜鉛の使用目的の範囲内で決めることができるが、酸化亜鉛100質量部に対して、通常、0〜150質量部、好ましくは10〜100質量部である。高級脂肪酸の使用量が150質量部を超える場合には、アクリル酸亜鉛の特性を減耗させ、好ましくない。【0029】本発明で好ましく使用される炭素数12〜30の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸及びリノール酸などが挙げられる。これらの高級脂肪酸は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらの高級脂肪酸のうち、パルミチン酸およびステアリン酸が好ましく使用される。また、高級脂肪酸は、そのまま使用し、または反応に用いるのと同じ有機溶媒若しくはアクリル酸に予め溶解した後使用してもよく、また、必要により加熱溶解して用いてもよい。【0030】このようにして得られたアクリル酸亜鉛は、公知の方法、例えば、反応器内の反応生成水と有機溶媒とを濾過により分離して10〜70℃の温度で乾燥することによって、分離・回収できる。また、反応器がかき取り翼を有する攪拌機付きのニーダーブレンダー等である場合には、反応液をそのまま攪拌しながら、10〜70℃、好ましくは15〜50℃の温度で、必要により減圧して過剰なアクリル酸、有機溶媒および反応生成水を留去乾燥することによって、アクリル酸亜鉛を分離・回収する方法が、設備上の簡略化である点から好ましく使用される。なお、この場合の留去乾燥時間は、その温度に応じて1〜20時間の範囲で適宜選択することができる。【0031】本発明の製造方法によれば、アクリル酸亜鉛結晶の長軸が15μm以下で、該結晶のアスペクト比が1〜30の範囲であるアクリル酸亜鉛を製造することができる。従来のアクリル酸亜鉛は、反応溶媒としてトルエンを使用しているため、乾燥後に二次凝集を形成しやすかった。この二次凝集性はアクリル酸亜鉛の吸湿量にも依存するため、特に長期間吸湿条件下で貯蔵すると、二次凝集物の形成が促進された。しかしながら本発明の製造方法によると、ノニオン界面活性剤の存在下にアクリル酸亜鉛を合成しているため、アクリル酸亜鉛の表面にノニオン界面活性剤が被覆され、これが防湿効果を発揮して水分量の変動を抑制させ、実際の使用時の流動性を確保することができる。なお、本願におけるアクリル酸亜鉛結晶の長軸、結晶のアスペクト比は、含水量0.5%以下に乾燥したアクリル酸亜鉛の結晶の数値である。【0032】また、本発明のアクリル酸亜鉛は上記のようにノニオン界面活性剤の添加によって反応溶液を均一にして未反応物の残存量を低減できるため、純度が高いアクリル酸亜鉛を得ることができ、その後の精製工程を不要として収率を向上させるばかりでなく、製造工程を簡略化することができる。【0033】更に本発明のアクリル酸亜鉛は、二次凝集が発生した場合であっても極めて崩壊しやすい。このことは、容易にばらけて流動性を確保できることを示すものである。この崩壊性は、固結物崩壊荷重で評価することができ、該数値が小さいほどほぐれやすいことを意味する。【0034】【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明する。【0035】実施例1内容量10LのSUS−316製ジャケット付きニーダーに、有機溶媒としてヘプタン996gを仕込み、次に酸化亜鉛586gを添加する。更にこの溶液にソルビタンモノオレート(花王株式会社製:商品名「レオドールSP−010」、HLB=4.3)を14.9g加え、攪拌懸濁させ、ニーダーの内部温度を5〜30℃に保ちながら、アクリル酸1064gを徐々に40℃に達するように3時間かけて添加し、その後40℃で4時間反応させた。そして徐々に減圧下20Torrに達するように50℃まで昇温させながら、反応生成水およびヘプタンの留去乾燥を5時間かけて行い、アクリル酸亜鉛含量98.7%のアクリル酸亜鉛1494gを得た。【0036】なお、各実施例および比較例における乾燥後のアクリル酸亜鉛含量およびアクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。表1におけるアクリル酸亜鉛は、界面活性剤を差し引いて算出した数値である。また、水分値の変化量は、以下の方法に従って測定した数値である。【0037】(水分値の変化量の測定方法)実施例1で製造したアクリル酸亜鉛3gの水分量を測定し、W0(%)とした。このアクリル酸亜鉛を直径8cmのシャーレ上に入れ、これを恒温恒湿器内(20℃、75HR%)に72時間静置した。72時間後のアクリル酸亜鉛の水分値を測定し、これをW1(%)とし、下記式に従って水分値の変化量を算出した。【0038】【数2】【0039】実施例2ソルビタンモノオレートを1.49g使用した以外は実施例1と同様に操作して、アクリル酸亜鉛含量98.5%のアクリル酸亜鉛を得た。アクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。【0040】(固結物崩壊荷重の測定方法)なお、固結物崩壊荷重は図1に従い、下記方法で測定した。【0041】まず、2gのアクリル酸亜鉛を精確に秤量し、ディスク形成用円筒1に投入しディスク形成用フタ2を置いた。該フタ2の上部から3kgのおもり3を乗せて1時間かけてサンプルを固結させ、ディスク状サンプルを調製した。次に、該サンプルの崩壊荷重を、ホソカワミクロン株式会社製、粉体特性測定装置、型式「パウダテスタPT−N型」にて測定した。なお、テストは外部環境からの吸湿を防止するため、窒素置換したアルミ袋中で行った。【0042】実施例3ソルビタンモノオレートに代えてポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製:商品名「エマルゲン103」、HLB=8.1)を使用した以外は実施例1と同様に操作して、アクリル酸亜鉛含量98.4%のアクリル酸亜鉛を得た。アクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。【0043】比較例1ソルビタンモノオレートに代えてポリオキシエチレンオクタデシルエーテル(日本乳化剤株式会社製:商品名「ニューコール1807」、HLB10.7)をアクリル酸添加4時間後に添加した以外は実施例1と同様に操作して、アクリル酸亜鉛含量97.6%のアクリル酸亜鉛を得た。アクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。【0044】比較例2ソルビタンモノオレートに代えてポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王株式会社製:商品名エマルゲン1108、HLB=13.5)を使用した以外は実施例1と同様に操作して、アクリル酸亜鉛含量97.5%のアクリル酸亜鉛を得た。アクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。【0045】比較例3ソルビタンモノオレートに代えてポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王株式会社製:商品名エマルゲン1135S−70、HLB=17.9)を使用した以外は実施例1と同様に操作して、アクリル酸亜鉛含量97.5%のアクリル酸亜鉛を得た。アクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。【0046】比較例4有機溶媒をヘプタンからトルエンに代えた、ソルビタンモノオレエートに代えてポリオキシエチレンオクタデシルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「ニューコール1897」、HLB10.7)をアクリル酸添加4時間後に加えた以外は実施例1と同様にして、アクリル酸亜鉛含量98.8%のアクリル酸亜鉛を得た。アクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。【0047】比較例5ソルビタンモノオレートを使用しない以外は実施例1と同様に操作して、アクリル酸亜鉛含量98.2%のアクリル酸亜鉛を得た。アクリル酸亜鉛の結晶形、純度および水分値の変化量を表1に示す。【0048】【表1】【0049】(結果)実施例1と比較例2,3とを比較すると、界面活性剤の添加量を1.0と同量にした場合に、HLBが1〜12の界面活性剤を使用すると製品純度が1%以上向上しかつ水分値の変化量も少なかった。【0050】実施例1〜3の結果から、添加する界面活性剤のHLB値が大きくなるにつれて結晶サイズが拡大した。【0051】実施例3と比較例1との結果から、界面活性剤の添加時の相違によって製品純度が変化し、前添加によると純度が向上した。なお、界面活性剤を使用しない比較例5では水分値の変化量が大きく、吸湿による結晶の凝集が示唆された。【0052】比較例4から明らかなように、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテルを後添加すると、結晶形は小さくなり純度を上げることはできるが、防湿効果が低いため固結物崩壊荷重が大きくなる。このことは、固まりやすくかつ固まった場合にほぐれづらいことが示唆される。【0053】【発明の効果】本発明の製造方法によれば、アクリル酸亜鉛の結晶形を小さくコントロールすることで純度を向上させることができる。従って、純度向上のためのその後の精製工程が不要となり、収率を向上させることができる。【0054】また、アクリル酸亜鉛の結晶表面全体に界面活性剤がコーティングされるために吸湿性が低下し、防湿効率を向上させることができる。このため、吸湿を防止するための二重包装などが不要となり、かつ使用時の流動性を確保することができる。【図面の簡単な説明】【図1】 実施例および比較例で製造したアクリル酸亜鉛の固結物崩壊荷重の測定方法を示す図である。【符号の説明】1…ディスク形成用円筒2…ディスク形成用フタ3…おもり4…ディスク状サンプル5…硬度計 HLB1〜12のノニオン界面活性剤の存在下に、有機溶媒中でアクリル酸と酸化亜鉛とを反応開始させることを特徴とする微細なアクリル酸亜鉛の製造方法。 前記有機溶媒中に、前記酸化亜鉛および前記ノニオン界面活性剤を加えた後、アクリル酸を添加することによって反応開始させることを特徴とする、請求項1記載のアクリル酸亜鉛の製造方法。


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