生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アルカリ金属水素化物による求核反応体の製造方法
出願番号:2003018482
年次:2010
IPC分類:C07C 29/70,C07C 31/30,C07B 61/00,C07C 253/30,C07C 255/54


特許情報キャッシュ

月岡 数昌 伊藤 和久 JP 4430872 特許公報(B2) 20091225 2003018482 20030128 アルカリ金属水素化物による求核反応体の製造方法 川研ファインケミカル株式会社 390003001 水野 勝文 100087398 岸田 正行 100067541 高野 弘晋 100103506 月岡 数昌 伊藤 和久 20100310 C07C 29/70 20060101AFI20100218BHJP C07C 31/30 20060101ALI20100218BHJP C07B 61/00 20060101ALI20100218BHJP C07C 253/30 20060101ALI20100218BHJP C07C 255/54 20060101ALI20100218BHJP JPC07C29/70C07C31/30C07B61/00 BC07C253/30C07C255/54 C07C 29/70、31/30 CA/REGISTRY(STN) 特開2001−172229(JP,A) 特開平3−291247(JP,A) 特開昭58−185531(JP,A) 特表2002−518356(JP,A) 特表2002−514615(JP,A) 4 2004231527 20040819 8 20060113 神野 将志 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、活性水素含有化合物にアルカリ金属水素化物を反応させて求核反応体を製造する方法に関するものである。【0002】【従来の技術】【0003】【特許文献1】特公昭60−23656号公報【0004】アルカリ金属水素化物は、活性水素含有化合物の活性水素原子を引き抜き、アルカリ金属化させ、活性水素含有化合物を求核反応試薬とする化学反応に多用されている。【0005】例えば、Williamsonエーテル合成はアルコール類の求核反応体であるアルカリ金属アルコキシドをハロゲン化アルキルに使用する反応である。【0006】アルカリ金属水素化物は、空気中の水分等との反応を押さえるために表面をパラフィン等の油剤により被覆した状態で通常扱われており、反応に使用する場合は、被覆パラフィンを溶出する溶媒の存在下、活性水素含有化合物に反応させる。【0007】これらの溶媒には、アルカリ金属水素化物の表面油類を溶かすだけでなく、活性水素とアルカリ金属の置換反応をスムーズに進行させるため極性のある溶媒が選択される。通常これらの溶媒としてテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略称する)、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略称する)が使用されている。【0008】しかしながら、THFは沸点が66℃と低く、次いで行う求核反応の温度が制限される欠点がある。DMFは沸点も153℃と高く、次いで行う求核反応の温度も十分に確保できるが、安全工学協会にて主催される技術講習会「第2回安全工学実験講座」(平成14年10月29日)に紹介されているように「NaH−DMF混合物の反応暴走」が問題になっている。【0009】また、アルカリ金属水素化物とアルコール類を反応させてアルコキサイドを生成する反応においては、NaH−DMFによりアルコキサイドを調製した場合、アルコールの種類或いは調製条件の差異によりゲル化が発生する場合がある。ゲル化した場合は、反応液の流動性が消失し、工業スケールでは次工程の求核反応を実施できないという問題点があった。【0010】これらの状況下において、より簡便に安全に活性水素含有物質をアルカリ金属水素化物により求核反応体を調製する方法が求められていた。【0011】一方1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンは、非プロトン極性溶媒の一種で、沸点は225℃と高く、反応溶媒、抽出溶媒、可溶化溶媒として広く使用されている溶媒である。【0012】反応溶媒として使用される例としては、特許文献1に反応溶媒として開示されている。【0013】同報によればアルコールの求核反応体であるアルカリ金属アルコキサイドとハロゲン化芳香族の反応において、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの強い極性効果により、通常は進行しないアルカリ金属アルコキサイドとハロゲン化芳香族の反応が進行すると開示され、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンがこれらの求核置換反応を推進させる効果に関して述べられている。【0014】しかしながら、特許文献1には、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンが求核反応体の基質に対する置換反応の効果を高める記載はあるが、求核反応体の調製時に係わる1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの効果に関しては一切記載がなく、実施例もあらかじめ調製されたナトリウムメトキサイドを求核反応体として反応に供している。【0015】【発明が解決しようとする課題】これらの状況において、活性水素含有化合物にアルカリ金属水素化物を作用させ活性水素をアルカリ金属化させ求核反応剤を調製する方法を鋭意検討の結果、アルカリ金属水素化物を1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンに分散させた後、活性水素含有化合物に添加して求核反応体を得ると、分散溶媒の沸点の問題と同時に反応暴走を回避できる事が判明した。更にアルコキサイドの求核反応体を調製する際は、アルカリ金属水素化物−DMFで見られるゲル化は発生せず、工業的に有利に安全に核反応体を調製できる事が判明し本発明を完成した。【0016】 すなわち本発明は、活性水素原子を有するアルコール類にアルカリ金属水素化物を作用させ活性水素をアルカリ金属化させ求核反応体を製造する際、アルカリ金属水素化物を一般式(1)【0017】【化2】【0018】(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)で示される1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを含有する溶媒に分散させスラリーとした後、該スラリーと活性水素原子を有するアルコール類を反応させて求核反応体を得ることを特徴とする求核反応体の製造方法に関する。【0019】【発明の実施の形態】 本発明における活性水素原子を有するアルコール類とは、アルカリ金属水酸化物によってアルカリ金属と置換し得る活性水素原子を有するアルコール類を意味する。【0020】活性水素原子としてはアルコール類、アミノアルコール類の水酸基の水素原子や、電子吸引性基近傍の活性メチレン基の水素原子等が挙げられる。【0021】 これらの活性水素原子を有するアルコール類の好適例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、2−(ジメチルアミノ)エタノールなどが挙げられる。【0022】本発明におけるアルカリ金属水素化物の好適例としては、水素化ナトリウム 水素化リチウム、水素化カリウム等が挙げられ、入手の容易性から水素化ナトリウムが特に好ましい。【0023】 本発明における1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンは、前記一般式(1)で示される化合物であり、好適例をしめせば、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−N’−エチル−2−イミダゾリジノン等があげられるが、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが広く流通しているのでこれを利用する事が特に好ましい。【0024】本発明の求核反応体の製造方法に使用する溶媒は全て1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンである事が好ましいが、アルキル金属水素化物と反応しない炭化水素系溶媒を加えて混合溶媒としてもよい。混合溶媒中1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの重量比率が10重量%以上であれば、炭化水素系溶媒を加えて実施しても本発明の効果を損なわない。【0025】混合溶媒中1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンが10重量%未満になった場合は、活性水素とアルカリ金属の置換反応が鈍化し、所望量の求核反応体を生成できない場合があり好ましくない。【0026】この様な希釈溶媒として用いられる炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン等が挙げられる。【0027】本発明の求核反応体としては、例えばメタノールナトリウム塩、エタノールナトリウム塩、エタノールカリウム塩、エタノールリチウム塩、tert−ブタノールナトリウム塩、2−(ジメチルアミノ)エタノールナトリウム塩、アセト酢酸エチルナトリウム塩、アセチルアセトンカリウム塩などを挙げることができる。【0028】活性水素含有化合物に対するアルカリ金属水素化合物の反応割合は、活性水素含有化合物1モルに対しアルカリ金属水素化物を0.8〜1.0モルの範囲で用いる。アルカリ金属水素化物が0.8モル未満では、活性水素含有化合物が残存しやすくなり好ましくない。また、1.0モルを超えると、アルカリ金属水素化物が残存するので好ましくない。【0029】以下、本発明の実施に関して詳細に述べる。【0030】本発明方法の第1の工程は、アルカリ金属水素化合物を1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを含有する溶媒に分散させ、スラリーとすることである。【0031】この際、分散体におけるアルカリ金属水素化合物の純分濃度は、15重量%〜4重量%、好ましくは、11重量%〜4重量%とする。15重量%を超えてアルカリ金属水素化合物を添加すると、反応暴走は発生しないが、特に求核反応体としてアルコキシドを調製する際、アルコキシドの生成に伴い反応液がゲル化する事があるので好ましくない。また、アルカリ金属水素化合物の添加量が4重量%未満で問題はないが、経済的な点から上記範囲の量であれば十分である。【0032】調製された1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを含有する溶媒によってアルカリ金属水素化物がスラリー化した溶液に、活性水素含有化合物を液温が20〜50℃になる様に滴下して、滴下終了後徐々に温度を上げ、好ましくは70〜90℃で目的の求核反応体を調製する。【0033】本発明の求核反応体の調製方法は、活性水素含有化合物としてアルコール類を選択した場合に安全性のみならず、反応液がゲル化しないという顕著な性能が発現する。アルコキサイド類を調製時ゲル化しない特性が発現する理由は不明であるが、反応系には極性溶媒、原料アルコール、生成物であるアルコキサイドが共存するが、これらの存在比率により反応溶液中に構造体を構築してゲル化が進行すると考えられ、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを含有する極性溶媒は活性水素含有化合物とアルカリ金属水素化物の反応速度が、DMFを使用した場合の反応速度に比べて遅いので、アルコールを滴下してもしばらくアルコールのまま反応系内に存在してゲル化しない3者組成領域で反応が進んでいるか、或いはアルコールがゲル構造体を破壊しているためと推察している。【0034】【実施例】以下実施例により本発明を詳細に説明する。【0035】 アルカリ金属水素化物として水素化ナトリウム(以下、「NaH」と略称する)を使用して、本発明溶媒1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと比較例溶媒としてDMF、添加溶媒としてトルエンを用いて表1の量にてNaH分散溶媒を調製した。 尚、NaHの添加量は被覆油剤を除去した重量である。【0036】実験方法 反応容器に、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、DMF及びトルエンを仕込み、次いでNaHを所定量仕込んだ後、加熱して状態を以下の点に注意して観察した。【0037】(発熱温度)急激に系の温度が上昇し、反応暴走が起こっていると推定される温度【0038】(発泡温度)系から気体が発生して溶媒が分解反応を起こしていると推定される温度【0039】(スラリー固化)× 溶液の粘度が上昇して、次工程の求核反応が実質上不可能な状態○ 溶液に流動性があり問題の無い状態【0040】(冷却後メタノール添加)× NaH分散液を冷却後メタノールを加えたとき反応せず、NaHが失活○ NaH分散液を冷却後メタノールを加えたとき反応して、水素が発生し、メトキサイドが生成している。【0041】【表1】【0042】 表1は、活性水素含有化合物を入れない状態での各種溶媒と水素化ナトリウムの混合スラリーの安全性及び安定性を示している。表1から明らかなように、溶媒中に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを10重量%以上含有した物は、溶媒の分解、反応の暴走は発生しない。また、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを使用した系のスラリー溶液は、加熱安定性試験後冷却しても水素化ナトリウムが失活していないため、メチルアルコールを添加するとメトキサイドを生成しながら水素を発生させた。この事は該アルカリ金属水素化物スラリーを短期間であれば保存できる事も示唆している。【0043】実施例6300mL4つ口フラスコにトルエン112g、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン14g及び水素化ナトリウム5.3g(1.15当量)を仕込み、攪拌した。この中に2−(ジメチルアミノ)エタノール20.6g(1.2当量)を液温が20℃〜50℃になるように速度を調節して滴下した。滴下後90℃まで加熱し1時間熟成することにより、2−(ジメチルアミノ)エタノールナトリウム塩溶液が無色透明溶液として得られた。【0044】次に4−クロルベンゾニトリル 26.5g(1当量)を1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン26.5gで溶解した溶液を滴下し、110℃で2時間熟成すると4−(2−ジメチルアミノ)エトキシベンゾニトリルが定量的に生成する。反応液を水洗して副生する塩化ナトリウムを除去すると4−(2−ジメチルアミノ)エトキシベンゾニトリルトルエン溶液が得られた。この溶液についてガスクロマトグラフィーで定量すると反応収率は95%であることが確認できた。必要に応じてトルエンを除去し減圧で蒸留することにより純度99%以上の4−(2−ジメチルアミノ)エトキシベンゾニトリルが90%以上の収率(vs 4−クロルベンゾニトリル)で得られた。【0045】【発明の効果】本発明方法により、ゲル化や反応暴走を起こすことなく、求核反応体を製造することができる。 活性水素原子を有するアルコール類にアルカリ金属水素化物を作用させ、活性水素をアルカリ金属と交換し、求核反応体を調製する際、アルカリ金属水素化物を一般式(1)(但し、式中R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)で示される1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを含有する溶媒に分散させスラリーとした後、該スラリーと活性水素原子を有するアルコール類を反応させて求核反応体を得ることを特徴とする求核反応体の製造方法。 スラリーにおけるアルカリ金属水素化合物の純分濃度が15重量%〜4重量%であることを特徴とする請求項1に記載の求核反応体の製造方法。 アルカリ金属水素化物が、水素化ナトリウム、水素化リチウムまたは水素化カリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の求核反応体の製造方法。 前記アルコール類が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノールまたは2−(ジメチルアミノ)エタノールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の求核反応体の製造方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る