タイトル: | 再公表特許(A1)_核効果抑制剤、結晶性樹脂組成物及び結晶性樹脂組成物の結晶化制御法 |
出願番号: | 2003008580 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C08K5/01,C07C13/62,C07C15/20,C07C35/44,C07C49/788,C07C50/16,C07C211/57,C07C211/60,C07C211/61,C07C217/64,C07C225/22,C07C225/34,C07F7/04,C08K5/07,C08K5/151,C08K5/34,C08K5/45 |
竹内 浩 須方 一明 JP WO2004005389 20040115 JP2003008580 20030707 核効果抑制剤、結晶性樹脂組成物及び結晶性樹脂組成物の結晶化制御法 オリヱント化学工業株式会社 000103895 高良 尚志 100095522 竹内 浩 須方 一明 JP 2002200674 20020709 7 C08K5/01 C07C13/62 C07C15/20 C07C35/44 C07C49/788 C07C50/16 C07C211/57 C07C211/60 C07C211/61 C07C217/64 C07C225/22 C07C225/34 C07F7/04 C08K5/07 C08K5/151 C08K5/34 C08K5/45 JP C08K5/01 C07C13/62 C07C15/20 C07C35/44 C07C49/788 C07C50/16 C07C211/57 C07C211/60 C07C211/61 C07C217/64 C07C225/22 C07C225/34 C07F7/04 K C08K5/07 C08K5/34 C08K5/45 C08K5/15 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20051104 2004519282 161 本発明は、結晶性樹脂組成物中に存在させることにより結晶化温度又は結晶化速度を低下させるための核効果抑制剤、その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物、及び、その核効果抑制剤を用いて結晶性樹脂の結晶化温度及び結晶化速度を低下させる結晶化制御方法に関する。 結晶性樹脂は、機械的及び化学的性質が優れているため、自動車や電気・電子製品の部品などの分野に広く用いられている。その中でも特に、エンジニアリングプラスチックの需要は、様々な分野でますます大きくなってきている。 また、結晶性樹脂に繊維状補強材を配合することにより、耐熱性や耐薬品性を向上させたり、各用途に合わせた機械的強度を与えたりして広範な工業的用途に適合させる試みがなされている。更に最近では、電子部品、自動車部品、電装部品等の分野において、軽量化、工程の合理化及び腐食の問題を解決するために、これまで金属を用いてきた部品を、繊維強化された結晶性樹脂に替える動きが顕著である。 成形材料として用いられる結晶性樹脂は、溶融状態から冷却していくと結晶化が起こる。結晶化の状態は、成形段階での冷却条件や結晶化の核となる微粒子、すなわち核剤の存在等により変化する。結晶性樹脂の物性は、結晶化状態に大きく影響されるので、結晶化をいかに制御するかが樹脂の特性を引き出す鍵となる。例えば前記のような核剤の存在は、結晶性樹脂の結晶化速度を増大させて結晶化温度を上昇させる効果(核効果)を有するため、成形時の冷却時間を短縮することができる。 ところで、結晶性樹脂に対しては、装飾効果、色分け効果、成形品の耐光性向上、並びに内容物の保護及び隠蔽等の目的で着色が行われる。着色剤としては、無機顔料、有機顔料、又は染料等が一般的に用いられ、特にカーボンブラックは黒色着色に広く用いられている。 結晶性樹脂の着色に用いられる無機顔料及び有機顔料等、特にカーボンブラック、並びに繊維状補強材(ガラス繊維、マイカ、タルクなどの無機充填材)は、核剤に類似した挙動を示す。従って、これらの材料の添加は、結晶化速度の増大及び微結晶化を引き起こし、靭性を著しく低下させることがある。また、これらの材料の添加は、結晶化温度の上昇を引き起こすため、射出成形における金型温度を高くすることが要求されることとなり、エネルギーコストの上昇を来たすだけではなく、成形物の冷却による収縮率を大きくすることにより成形精度を低下させることにもなる。 このような問題点を解決するためには、前述のような着色剤や繊維状補強材等の核剤としての働きを抑制すること、すなわち、結晶化速度を低下させて微結晶化を抑えると共に結晶化温度を低下させて金型温度を低くすることができる材料を結晶性樹脂中に共存させて結晶化を制御することが有効であると考えられる。なお、以下、このような効果を核抑制効果(結晶化遅延効果)と記し、このような効果を有する材料を核効果抑制剤(結晶化遅延効果剤)と記す。 このような考えに沿って、ニグロシン、アニリンブラック(特開昭57−115454号公報)、及び銅フタロシアニン誘導体(特開昭61−181861号公報)の使用が提案された。その後、これらの材料を用いた結晶性樹脂組成物に関する様々な改良が行われた。例えば、1)ポリアミド系車輌用部材(特開昭62−246958号公報)、2)強化良外観黒色ポリアミド樹脂組成物(特開平4−370148号公報)、3)ガラス繊維強化黒色ポリアミド樹脂組成物(特開平6−128479号公報)、4)黒色ポリアミド樹脂組成物(特開平9−255869号公報)、5)耐候性に優れた黒着色ポリアミド樹脂組成物(特開平11−343405号公報、11−343406号公報、11−349807号公報)、6)黒着色強化ポリアミド樹脂組成物(特開2000−53861号公報)等である。 ところが、核効果抑制剤としてこれまでに用いられてきたもののうちニグロシン及びアニリンブラックは黒色であり、銅フタロシアニン誘導体は濃青色である。そのため、着色結晶性樹脂組成物に用いる場合の色の選択幅が非常に狭く、ほとんどの場合、黒色又は黒に近い色の着色樹脂組成物に限られてきた。 しかし、結晶性樹脂を様々な色に着色するという要望は非常に強いので、無色若しくは淡色の又は様々な色を有する核効果抑制剤(結晶性樹脂中に存在することにより、その結晶性樹脂の結晶化温度及び結晶化速度を、その結晶性樹脂が存在しない場合よりも低下させる材料)、すなわちニグロシン、アニリンブラック、又は銅フタロシアニン誘導体のように着色結晶性樹脂の色選択幅を狭めない核効果抑制剤の開発が強く望まれていた。 本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、結晶性樹脂の結晶化温度及び結晶化速度を低下させる核効果抑制剤を含有させて結晶性樹脂を着色する場合の色の選択を自由に行い得る核効果抑制剤、その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物、及び、その核効果抑制剤を用いて結晶性樹脂の結晶化温度及び結晶化速度を低下させる結晶化制御方法を提供することにある。 本発明者は、結晶性樹脂に対する核効果を抑制し得る新たな物質をその立体構造に着目して研究した結果、特定の構造特性を持つ化合物を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度及び結晶化速度がその化合物を含有しない場合に比し低下することを見出し、本発明を完成するに至った。 上記目的を達成する本発明の核効果抑制剤は、結晶性樹脂組成物中において結晶性樹脂の結晶化を制御する化合物からなる核効果抑制剤であって、前記化合物が、4員環以上の環状構造が3個以上縮合環化した多環状構造から選ばれる少なくとも1つの構造を備えた化合物のうち、ニグロシン、アニリンブラック、及び銅フタロシアニン誘導体を除く何れかの化合物であることを特徴とする。 前記多環状構造としては、例えば、4員環の環状構造と6員環の環状構造が3個以上縮合環化したもの、5員環の環状構造と6員環の環状構造が3個以上縮合環化したもの、6員環の環状構造と7員環以上の環状構造が3個以上縮合環化したもの、4員環の環状構造と5員環の環状構造が3個以上縮合環化したもの、4員環の環状構造と5員環の環状構造と6員環以上の環状構造が縮合環化したもの、4員環の環状構造と6員環以上の環状構造が3個以上縮合環化したもの、5員環の環状構造と6員環以上の環状構造が3個以上縮合環化したものを挙げることができる。 また前記化合物は、前記多環状構造の1種を1又は2以上備えたもの(例えば、2以上の同一の多環状構造が単結合又は二重結合を介して直接結合したもの)でもよく、2種以上をそれぞれ1又は2以上備えたもの(例えば、2種以上の多環状構造が単結合又は二重結合を介して直接結合したもの)でもよい。 本発明の核効果抑制剤は、次の要件(A)を満たすものとすることができる。(A) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度よりも低下する また本発明の核効果抑制剤は、次の要件(B)を満たすものとすることができる。(B) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度よりも4℃以上低下する また本発明の核効果抑制剤は、次の要件(C)を満たすものとすることができる。(C) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化速度が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化速度よりも低下する また本発明の核効果抑制剤は、次の要件(D)を満たすものとすることができる。(D) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物の補外結晶化開始温度と補外結晶化終了温度の差が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの補外結晶化開始温度と補外結晶化終了温度の差よりも2℃以上増加する。 また本発明の核効果抑制剤は、次の要件(E)を満たすものとすることができる。(E) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における球晶の大きさが、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける球晶の大きさより大きくなる また本発明の核効果抑制剤は、次の要件(F)を満たすものとすることができる。(F) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物における球晶の平均径(例えば2軸平均径のメジアン径)が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける球晶の平均径の2倍以上となる また本発明の核効果抑制剤は、次の要件(G)を満たすものとすることができる。(G) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における所定面積(例えば一定の表面又は断面における所定面積)中の球晶の数が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける前記所定面積中の球晶の数より少なくなる また本発明の核効果抑制剤は、次の要件(H)を満たすものとすることができる。(H) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物における所定面積中の球晶の数が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける前記所定面積中の球晶の数に対して2/3倍以下に減少する 本発明の結晶性樹脂組成物は、結晶性樹脂中に本発明の何れかの核効果抑制剤を1種以上含有してなるものである。 また本発明の結晶性樹脂組成物の結晶化制御法は、結晶性樹脂中に本発明の何れかの核効果抑制剤を1種以上含有させることにより、その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度及び結晶化速度を、その結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度及び結晶化速度よりも低下させるものである。 結晶性樹脂の結晶化における結晶の成長は、まず不純物や溶融状態の高分子の濃度揺らぎ等によって結晶核が生じることにより始まる。結晶が成長し始める大きさをもつ結晶核が臨界核であり、臨界核よりも小さいサイズの核は、生成したり消滅したりする。また、臨界核ができるまでの期間を核生成誘導期という。結晶性樹脂中に核剤又はそれに相当する物質を含有させると、臨界核としての結晶核が予め存在するのと同様になる。そのため核生成誘導期を実質上経ることなく高い温度で結晶が成長し始める。 ところが、本発明における核効果抑制剤を結晶性樹脂中に含有させると、核生成誘導期が長くなり、結晶が成長を始める温度が低下すると共に結晶化速度が低下する。このような核効果抑制現象は、前記本発明の核効果抑制剤を構成する化合物の立体構造が大きく影響している。 本発明の核効果抑制剤における結晶性樹脂の結晶化を制御する化合物が備えることを要する構造は、4員環以上の環状構造(環状の原子配列からなる構造)が3個以上縮合環化した多環状構造から選ばれる少なくとも1つの構造である。 本発明の核効果抑制剤は以下の化合物と比較して、核効果抑制に有効性を示すことができる。4員環以上の環状構造が2個縮合環化した構造を有する化合物、4員環以上の環状構造が2個縮合環化した環状構造が単結合で繋がった構造を有する化合物、4員環以上の環状構造が単結合で3個繋がった構造を有する化合物は、何れも有効な核抑制効果を示さない。 結晶性樹脂中に本発明の核効果抑制剤を含有させると、結晶性樹脂の核生成誘導期が長くなり、結晶が成長し始める温度が低下すると共に結晶化速度が低下する。そのため、本発明の核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における球晶の大きさは、その核効果抑制剤を含有しない元の結晶性樹脂における球晶の大きさよりも大きくなる。核抑制効果が大きい場合、そのような球晶の大きさの相違は2倍以上となる。 図1は、実施例195の顕微鏡写真である。 図2は、実施例196の顕微鏡写真である。 図3は、実施例197の顕微鏡写真である。 図4は、実施例198の顕微鏡写真である。 図5は、実施例199の顕微鏡写真である。 図6は、実施例200の顕微鏡写真である。 図7は、実施例201の顕微鏡写真である。 図8は、比較例129の顕微鏡写真である。発明を実施するための形態 本発明の核効果抑制剤を構成する化合物は、下記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも1つ構造を備えてなるものとすることができる。(a)4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造(b)4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造(c)4員環以上の環状構造が5個縮合環化した多環状構造(d)4員環以上の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造 4員環以上の環状構造は、芳香環又はヘテロ環であることが望ましい。 また前記核効果抑制剤のうち、ポリアミド樹脂との相溶性及びその他の物性において好適なものとしては、4員環以上の環状構造が3個又は4個縮合環化した多環状構造であるものを挙げることができる。 また上記(a)乃至(d)は、それぞれ下記(a)乃至(d)とすることができる。(a)5員環および/または6員環の環状構造が3個縮合環化した多環状構造(例えば、5員環1つと6員環2つの組合せ、5員環2つと6員環1つの組合せ、6員環3つの組合せ等)(b)5員環および/または6員環の環状構造が4個縮合環化した多環状構造(例えば、5員環1つと6員環3つの組合せ、5員環2つと6員環2つの組合せ、6員環4つの組合せ等)(c)5員環および/または6員環の環状構造が5個縮合環化した多環状構造(5員環1つと6員環3つの組合せ、5員環2つと6員環3つの組合せ、5員環1つと6員環4つの組合せ、6員環5つの組合せ等)(d)5員環および/または6員環の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造(5員環1つと6員環5つの組合せ、5員環2つと6員環4つの組合せ、5員環3つと6員環3つの組合せ、5員環2つと6員環5つの組合せ、6員環6つ、6員環7つの組合せ等) 前記(a)乃至(d)の多環状構造は、2個以上の6員環を有する構造であることが好ましい。 また前記の5員環としては、シクロペンタジエン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、フラン環、オキソラン環、ジオキソラン環、チオフェン環、チオラン環、チアゾール環などが挙げられる。好ましくはシクロペンタジエン環、ピロール環である。 前記(a)乃至(d)の多環状構造は、それぞれ5員環を有するものであり、その5員環がシクロペンタジエン環および/またはピロール環であることが好ましい。 また上記の6員環としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピラジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、ピリドン環、ピラン環、ピロン環、オキサン環、ジオキサン環、オキサジン環、チアン環、ジチアン環、チアジン環等が挙げられる。好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。 前記(a)乃至(d)の多環状構造は、それぞれ6員環を有するものであり、その6員環がベンゼン環および/またはピリジン環であることが好ましい。例えば6員環と5員環からなる多環状構造又は6員環のみからなる多環状構造とすることができる。 本明細書では、多環状構造の例を示す上位表現として骨格構造を挙げ、その骨格構造の例に属する好ましい構造又はその他の好ましい構造の例を示す中位表現として基本構造を挙げている。また、その基本構造に属する好適な具体例又はその他の好適な具体例を化合物例として挙げている。骨格構造においては、骨格を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合であり、骨格を構成する原子の種類並びに置換基の種類及び位置は特定されない。基本構造においては、置換基の種類及び位置は特定されない。 骨格構造と基本構造と化合物例の具体的関係の例は次の通りである。 上記骨格構造a−5は、4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造に属する骨格構造の1つである。基本構造24は骨格構造a−5の多種にわたる基本構造の1つであり、化合物例1は、基本構造24に属する好適な具体例であって、1−位に置換基としてアミノ基を有するものである。 上記骨格構造b−1は、4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造に属する骨格構造の1つである。基本構造61は骨格構造b−1の多種にわたる基本構造の1つであり、化合物例2は、基本構造61に属する好適な具体例であって、1−位に置換基としてアミノ基を有するものである。は、化合物例1及び化合物例2に対する比較化合物である。化合物例1及び化合物例2は、共に分子内に比較化合物例1(1−アミノ−ナフタレン)の構造を有する。すなわち、4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造に属する骨格構造(化合物例1)よりも1つ縮合環が少ない比較化合物例である。 上記骨格構造a−6は、4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造に属する骨格構造の1つである。基本構造41は骨格構造a−6の多種にわたる基本構造の1つであり、化合物例29は、基本構造41に属する好適な具体例である。は、化合物例29に対する比較化合物である。すなわち、4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造に属する骨格構造(化合物例1)よりも1つ縮合環が少ない比較化合物例である。 本発明の核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度の変化及び結晶化速度の変化は、核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物(核効果抑制剤含有試料)と、結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂のみ(核効果抑制剤非含有試料)について示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより次のように知ることができる。 (1)結晶化温度の変化 核効果抑制剤含有試料が示す結晶化温度(TCP)と、核効果抑制剤非含有試料が示す結晶化温度(T0CP)の差(結晶化温度低下 ΔTCP=T0CP−TCP)でその大きさを表すことができる。ΔTCPが大きいほどその核効果抑制効果が大きいことを示し、ΔTCPが負の値をとるときは核効果が現れていることを示している。 (2)結晶化速度の変化 補外結晶化開始温度(TCIP)と補外結晶化終了温度(TCEP)との差すなわち結晶化温度幅をΔTC=TCIP−TCEPで表す。核効果抑制剤を含まない試料が示す補外結晶化開始温度(T0CIP)と補外結晶化終了温度(T0CEP)との差、すなわち核効果抑制剤を含まない試料の結晶化温度幅をΔT0C=T0CIP−T0CEPで表す。 ΔΔTC=ΔTC−ΔT0Cが大であるほど核効果抑制剤を含まない試料に比し、結晶化速度が遅くなったことを示し、負の値をとるときは速くなったことすなわち核効果が現れていることを示している。(1)結晶化温度の低下の検討・ポリアミド66(結晶性樹脂のみ)のT0CP:232.8℃・化合物例1添加のポリアミド66のTCP:217.7℃ΔTCP=T0CP−TCP=+15.1℃・化合物例2添加のポリアミド66のTCP:218.6℃ΔTCP=T0CP−TCP=+14.2℃・比較化合物例1添加のポリアミド66のTCP:232.2℃ΔTCP=T0CP−TCP=+0.6℃ 4員環以上の環状構造がそれぞれ3個及び4個縮合環化した多環状構造に属する化合物例1及び化合物例2をポリアミド66に添加した各結晶性樹脂組成物では、ポリアミド66のみのものに比し結晶化温度が大きく低下している。しかし、化合物例1より1つ縮合環が少ない2個縮合環化した構造を持つ比較化合物例1をポリアミド66に添加した結晶性樹脂組成物の結晶化温度は、ポリアミド66のみの場合とほとんど変わらず、結晶化温度を低下させることはできないことが分かる。・化合物例29添加のポリアミド66のTCP:220.0℃ΔTCP=T0CP−TCP=+12.8℃・比較化合物例6添加のポリアミド66のTCP:230.8℃ΔTCP=T0CP−TCP=+2.0℃ 4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造に属する化合物例29をポリアミド66に添加した各結晶性樹脂組成物では、ポリアミド66のみのものに比し結晶化温度が大きく低下している。しかし、化合物例29の縮合環のベンゼン環1つを1つメチル基に置き換えた(すなわち化合物例29より縮合環数が1つ少ない)比較化合物例6をポリアミド66に添加した結晶性樹脂組成物の結晶化点は、ポリアミド66のみの場合とほとんど変わっていない。(2)結晶化速度の低下の検討・ポリアミド66(結晶性樹脂のみ)のΔT0C(結晶化温度幅):9.5℃・化合物例1添加のポリアミド66のΔTC(結晶化温度幅):13.7℃ΔΔTC=ΔTC−ΔT0C=+4.2℃・化合物例2添加のポリアミド66のΔTC:15.8℃ΔΔTC=ΔTC−ΔT0C=+6.3℃・比較化合物例1添加のポリアミド66のΔTC:8.4℃ΔΔTC=ΔTC−ΔT0C=−1.1℃ 4員環以上の環状構造がそれぞれ3個及び4個縮合環化した多環状構造に属する化合物例1及び化合物例2をポリアミド66に添加した各結晶性樹脂組成物では、ΔΔTCが大きい。これは、ポリアミド66よりも結晶化速度が大きく低下していることを示している。しかし、化合物例1より1つ縮合環が少ない2個縮合環化した構造を持つ比較化合物例1をポリアミド66に添加した結晶性樹脂組成物の場合は負の値をとる。すなわち、ポリアミド66のみの場合よりもわずかではあるが結晶化速度を高めており、核効果を示している。・化合物例29添加のポリアミド66のΔTC:16.5℃ΔΔTC=ΔTC−ΔT0C=+7.0℃・比較化合物例6添加のポリアミド66のΔTC:9.5℃ΔΔTC=ΔTC−ΔT0C=0℃ 4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造に属する化合物例29をポリアミド66に添加した各結晶性樹脂組成物では、ΔΔTCが大きくなっており、ポリアミド66のみのものよりも結晶化速度が大きく低下している。しかし、比較化合物例6をポリアミド66に添加した結晶性樹脂組成物の場合には、ΔΔTC=0であり、ポリアミド66の結晶化速度を低下させることができないことが分かる。 上記データに示される通り、結晶性樹脂に添加する化合物中の4員環以上の環状構造が縮合環化した多環状構造における環の数が3以上であるか否かによって、結晶性樹脂の結晶化点(結晶化温度)と結晶化速度に与える影響が大きく変わる。前記環の数が2の場合には結晶化点及び結晶化速度への影響は非常に小さく、前記環の数が3以上の場合には結晶化点と結晶化速度は大きな低下が認められる。 また、化合物例1、化合物例2及び化合物例29をそれぞれ含有した結晶性樹脂組成物は、補外結晶化開始温度(TCIP)が、結晶性樹脂のみのものに比し非常に低くなっており(結晶性樹脂のみ:236.0℃、化合物例1:224.8℃、化合物例2:227.3℃、化合物例29:229.6℃)、それぞれ核誘導期間が長くなっていることがわかる。 これらを総合すると、4員環以上の環状構造が3個以上縮合環化した多環状構造を備えた化合物と4員環以上の環状構造が2個縮合環化した構造を備えた化合物とでは、核効果抑制上、極めて大きな相違があることがわかる。 次に、骨格構造及び基本構造の具体例を説明する。骨格構造 (a)4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造として下記の骨格構造a−1乃至a−8を例示することができる。なお、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である。 (b)4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造として下記の骨格構造b−1乃至b−12を例示することができる。なお、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である。 (c)4員環以上の環状構造が5個縮合環化した多環状構造として下記の骨格構造c−1乃至c−8を例示することができる。なお、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である。 (d)4員環以上の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造として下記の骨格構造d−1乃至d−10を例示することができる。なお、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である。基本構造 (a) 4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造の好ましい基本構造の例 (a−1) 骨格構造a−1に属する好ましい基本構造の例:基本構造1乃至8 (a−2) 骨格構造a−2に属する好ましい基本構造の例:基本構造9乃至11 (a−3) 骨格構造a−3に属する好ましい基本構造の例:基本構造12乃至17 (a−4) 骨格構造a−4に属する好ましい基本構造の例:基本構造18乃至23 (a−5) 骨格構造a−5に属する好ましい基本構造の例:基本構造24乃至38[基本構造28中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。][基本構造33中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。][基本構造38中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。] (a−6) 骨格構造a−6に属する好ましい基本構造の例:基本構造39乃至49 (a−7) 骨格構造a−7に属する好ましい基本構造の例:基本構造50 (a−8) 骨格構造a−8に属する好ましい基本構造の例:基本構造51乃至53 (a−9) 4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造のその他の好ましい基本構造の例:基本構造54乃至60 (b) 4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造の好ましい基本構造の例 (b−1) 骨格構造b−1に属する好ましい基本構造の例:基本構造61及び63 (b−2) 骨格構造b−2に属する好ましい基本構造の例:基本構造64乃至69[基本構造67中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。][基本構造68中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。] (b−3) 骨格構造b−3に属する好ましい基本構造の例:基本構造70乃至73 (b−4) 骨格構造b−4に属する好ましい基本構造の例:基本構造74及び75 (b−5) 骨格構造b−5に属する好ましい基本構造の例:基本構造76乃至78 (b−6) 骨格構造b−6に属する好ましい基本構造の例:基本構造79乃至81 (b−7) 骨格構造b−7に属する好ましい基本構造の例:基本構造82及び83 (b−8) 骨格構造b−8に属する好ましい基本構造の例:基本構造84 (b−9) 骨格構造b−9に属する好ましい基本構造の例:基本構造85 (b−10) 4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造のその他の好ましい基本構造の例:基本構造86及び87 (b−11) 4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造のその他の好ましい基本構造の例:基本構造88 (b−12) 4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造のその他の好ましい基本構造の例:基本構造89 (b−13) 員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造のその他の好ましい基本構造の例:基本構造90乃至93 (c) 4員環以上の環状構造が5個縮合環化した多環状構造の好ましい基本構造の例 (c−1) 骨格構造c−1に属する好ましい基本構造の例:基本構造94及び95 (c−2) 骨格構造c−2に属する好ましい基本構造の例:基本構造96 (c−3) 骨格構造c−3に属する好ましい基本構造の例:基本構造97 (c−4) 骨格構造c−4に属する好ましい基本構造の例:基本構造98及び99 (c−5) 骨格構造c−5に属する好ましい基本構造の例:基本構造100及び101 (c−6) 骨格構造c−6に属する好ましい基本構造の例:基本構造102 (c−7) 骨格構造c−7に属する好ましい基本構造の例:基本構造103 (c−8) 骨格構造c−8に属する好ましい基本構造の例:基本構造104 (c−9) 4員環以上の環状構造が5個縮合環化した多環状構造のその他の好ましい基本構造の例:基本構造105乃至112 (d) 4員環以上の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造の好ましい基本構造の例:基本構造113乃至131 本発明の核効果抑制剤は、カチオンとアニオンとがイオン結合した塩からなるものであってもよい。この場合の核効果抑制剤を構成する塩は、上記核効果抑制剤の基本構造における、置換基を有する若しくは非置換のアミノ基、スルホン基、又はカルボキシル基がイオン化して、アニオン又はカチオンを形成し、それが対イオンとしてのカチオン成分又はアニオン成分とイオン結合して塩を形成したものとすることができる。また前記対イオンとしてのアニオン成分は、カルボン酸又はスルホン酸に起因するアニオンであるものとすることができ、好ましいものとして、それぞれ芳香族又は脂肪族のスルホン酸及び芳香族又は脂肪族のカルボン酸から生じるアニオン成分を挙げることができる。 本発明の核効果抑制剤は、前記多環状構造に他の置換基等が結合した化合物からなるものであってもよい。多環状構造に結合する他の置換基等は、対象とする結晶性樹脂に重大な悪影響(例えば、ポリマー鎖の切断を起こすなど)を及ぼすものでないことを要するが、対象とする結晶性樹脂に対する相溶性を補うものであることが望ましい。このような置換基の具体例としては、水酸基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホン基、及びカルボキシル基の1種又は2種を例示することができる。好ましくは、アミノ基、ジメチルアミノ基、カルボニル基、メチル基、及びアセチル基の1種又は2種である。 前記ハロゲンの例としては、F、Cl、Br、I等が挙げられる。 前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1乃至18のアルキル基が挙げられる。 前記アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1乃至18のアルコキシ基が挙げられる。 前記アラルキル基の例としては、置換基を有する若しくは有しない、ベンジル基、α,α’−ジメチルベンジル基等が挙げられる。 前記アルケニル基の例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル等が挙げられる。 前記アリル基の例としては、−CH2CH=CH2、−C(CH3)=CH2等が挙げられる。 前記アリール基の例としては、置換基(例えば炭素数1乃至18のアルキル基又はCl、Br、I、F等のハロゲン原子等)を有する若しくは置換基を有しない、フェニル基、トルイル基、ナフチル基等が挙げられる。 前記アシル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。 前記アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基等が挙げられる。 前記アリールオキシカルボニル基の例としては、置換基を有する若しくは置換基を有しない、フェニルオキシカルボニル基、トルイルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。 前記アルキルアミノカルボニル基の例としては、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、イソプロピルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基等が挙げられる。 前記アリールアミノカルボニル基の例としては、置換基を有する若しくは置換基を有しない、フェニルアミノカルボニル基、トルイルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基等が挙げられる。 前記アルキルアミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ペンチルアミノ基、ドデシルアミノ基等が挙げられる。 前記アリールアミノ基の例としては、置換基を有する若しくは置換基を有しない、フェニルアミノ基、トルイルアミノ基、ナフチルアミノ基等が挙げられる。 本発明の結晶性樹脂組成物における核効果抑制剤の含有量としては、例えば結晶性樹脂100重量部に対し、0.05乃至30重量部とすることができる。好ましくは0.1乃至10重量部である。結晶化温度の十分な低下のために特に好ましいのは、1乃至5重量部である。 本発明に用いる結晶性樹脂としては、前記核効果抑制剤を添加することにより、核効果抑制効果を示す結晶性樹脂の何れをも用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。好ましい結晶性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂を挙げることができ、特にポリアミド樹脂において本発明の効果が顕著である。これらの結晶性樹脂は、単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。 また本発明においては、これらの結晶性樹脂を構成する重合体を主体とする共重合体又は混合物;これらの結晶性樹脂にゴム又はゴム状樹脂などのエストラマーを配合した熱可塑性樹脂;及びこれらの結晶性樹脂を10重量%以上含有するポリマーアロイ等を結晶性樹脂として用いることもできる。これら二種類以上のものの共重合体、例えば、ポリアミド6/66、ポリアミド6/66/610、ポリアミド6/66/11/12などでもよい。また本発明に使用する結晶性樹脂は、二種類以上の合成樹脂を混合したアロイであってもよい。そのようなアロイの例としては、ポリアミド/ポリエステルアロイ、ポリアミド/ポリフェニレンオキシドアロイ、ポリアミド/ポリカーボネートアロイ、ポリアミド/ポリオレフィンアロイ、ポリアミド/ポリスチレン/アクリロニトリルアロイ、ポリアミド/アクリル酸エステルアロイ、ポリアミド/シリコンアロイ等を挙げることができる。 上記のポリアミド樹脂(ナイロン)の具体例としては、ポリアミド6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド69樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド612樹脂、ポリアミド96樹脂、ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミドRIM樹脂等を挙げることができる。 本発明の結晶性樹脂組成物は、その目的に応じ所望の特性を付与するために、種々の添加剤が配合されてもよい。このような添加剤としては、例えば着色剤、結晶核剤、離型剤、滑剤、分散剤、充填剤、安定剤、可塑剤、改質剤、紫外線吸収剤又は光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、及び耐衝撃性改良用のエラストマー等が挙げられる。 繊維状補強材は、特に限定されず、用途及び目的に応じ従来の合成樹脂の補強材として用い得るものを適宜使用し得る。このような繊維状補強材の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、及び各種有機繊維を挙げることができる。例えばガラス繊維の場合、その含有量は、結晶性樹脂100重量部に対し、5乃至120重量部とすることが好ましい。5重量部未満の場合、十分なガラス繊維補強効果が得られ難く、120重量部を超えると成形性が低下することとなり易い。好ましくは10乃至60重量部、特に好ましくは20乃至50重量部である。 前記着色剤としては、無機顔料、有機顔料又は有機染料等を用いることができる。使用し得る着色剤の具体例としては、カーボンブラック、キノフタロン、ハンザイエロー、ローダミン6Gレーキ、キナクリドン、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、及び銅フタロシアニングリーン等の無機又は有機顔料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料等の各種の油溶性染料や分散染料の他、染料や顔料が高級脂肪酸や合成樹脂等で加工されたもの等が挙げられる。本発明の無色又は淡色の核効果抑制剤と種々の有彩色の有機顔料とを組み合わせることにより、フルカラーで、耐光性及び耐熱性が適正で、外観光沢の良好な成形物が得られる。 前記結晶核剤としては、マイカ、タルク、カオリン、ワラスナイト、シリカ、グラファイト等の無機質微粒子、ガラス繊維、カーボン繊維(結晶性樹脂に通常使用されているものを使うことができ、繊維径や長さには特に制限はしない)等の無機質繊維、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物等を例示することができる。 離型剤、滑剤としては、カルボン酸系のステアリン酸、パルチミン酸、モンタン酸等、アミド系のエチレンビスステアリルアミド、メチレンビスステアリルアミド等、カルボン酸エステル系のステアリン酸オクチル、ステアリン酸グリセリド、モンタン酸エステル等、カルボン酸金属塩系の、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸エステルの部分ケン化カルシウム塩等、アルコール系のステアリルアルコール等、ワックス系のポリエチレンワックス、ポリエチレンオキシド等を例示することができる。 紫外線吸収剤又は光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾエート系化合物、オギザアリド系化合物、ヒンダードアミン系化合物及びニッケル錯塩等が挙げられる。 難燃剤の例としては、テトラブロモビスフェノールA誘導体、ヘキサブロモジフェニルエーテル、及びテトラブロモ無水フタル酸等のハロゲン含有化合物;トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスファイト、赤リン及びポリリン酸アンモニウム等のリン含有化合物;尿素及びグアニジン等の窒素含有化合物;シリコンオイル、有機シラン、及びケイ酸アルミニウム等のケイ素含有化合物;三酸化アンチモン及びリン酸アンチモン等のアンチモン化合物等が挙げられる。 本発明の結晶性樹脂組成物は、原材料を任意の配合方法を用いて配合することにより得ることができる。これらの配合成分は、通常、できるだけ均質化させることが好ましい。具体的には、例えば、全ての原材料をブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、押出機等の混合機で混合し均質化させることにより、結晶性樹脂組成物を得たり、又は、一部の原材料を混合機で混合した後、残りの成分を加えて更に混合して均質化させることにより結晶性樹脂組成物を得ることもできる。また、予めドライブレンドされた原材料を、加熱した押出機で溶融混練して均質化した後、針金状に押出し、次いで所望の長さに切断して着色粒状物(着色ペレット)として得ることもできる。また、本発明の結晶性樹脂組成物を用いて、任意の方法により所望のマスターバッチを得ることができる。 本発明の結晶性樹脂組成物の成形は、通常行われる種々の手順により行い得る。例えば、結晶性樹脂組成物のペレットを、押出機、射出成形機、ロールミル等の加工機を用いて成形することができる。また、結晶性樹脂のペレット又は粉末、粉砕された着色剤、及び必要に応じ各種の添加物を、適当なミキサー中で混合し、この混合物を加工機を用いて成形することもできる。また例えば、適当な重合触媒を含有するモノマーに着色剤を加え、この混合物を重合により所望の結晶性樹脂とし、これを適当な方法で成形することもできる。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、発泡成形、ブロー成形、真空成形、インジェクションブロー成形、回転成形、カレンダー成形等、一般に行われる何れの成形方法を採用することも可能である。 本発明の核効果抑制剤及び本発明の結晶性樹脂組成物の結晶化制御法によれば、結晶性樹脂の結晶化温度及び結晶化速度を低下させることによって核剤の働きを抑制することができる。結晶化温度の上昇や成形物の表面光沢・外観の低下を招く核剤として作用する着色剤や繊維状補強材又はその他の添加剤を結晶性樹脂組成物に含有させる場合に、本発明の核効果抑制剤又は本発明の結晶性樹脂組成物の結晶化制御法を用いることにより、それらの核剤としての作用を抑制することができるので、結晶性樹脂組成物の設計の許容幅が広くなり、広範囲の用途に対応することが可能となる。また、本発明における核効果抑制剤は、無色若しくは淡色であるか又はその他の様々な色を有するので、結晶性樹脂を着色する場合の色の設計の許容幅が広い。 本発明の結晶性樹脂組成物は、核効果抑制剤を含有しない元の結晶性樹脂樹脂よりも結晶化温度が低下し(例えば4℃以上)、結晶化速度が低下する。そのため、冷却による成形物の収縮量が小さくなって成形の寸法精度が良くなると共に、成形物の強度の異方性が良好に低減して優れた熱時寸法安定性を示すので、寸法精度の要求が厳しい精密な成形物の製造上極めて有効である。また、成形時に、成形用の金型の温度を低くすることができるので、成形物の降温時間を短縮することができると共に金型の温度調整を容易化し、金型の温度調整設備費を低減させることができ、大型成形物の成形も比較的小さな設備で行い得る。また本発明の結晶性樹脂組成物は、含有する核効果抑制剤が無色若しくは淡色であるか又はその他の様々な色を有するものであるから、着色する場合の色の設計の許容幅が広い。 次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の記述においては、「重量部」を「部」と略す。測定試料作成並びに対照試料(ポリアミド66のみの試料)のΔT0Cの測定 ポリアミド66(デュポン社製 商品名:Zytel 101L)150gを、2,2,2−トリフルオロエタノール1160gと混合し、加熱により溶解させた(約70℃)。この溶解液を桐山濾紙NO.5Aで熱時濾過した。その濾液をクロロホルム3リットル中に投入した後、これにメタノール1リットルを加えてゲル状とした。このゲル状物を桐山濾紙NO.5Aで熱時濾過した後、メタノール3リットルに分散させた。この分散液を濾過することにより得られた粉体を、エバポレーターで溶媒を除去した後、70℃にて15時間以上真空乾燥させることにより、精製ポリアミド66を得た。 精製したポリアミド66(結晶性樹脂)100部及び本発明の核効果抑制剤(下記の各表に示された化合物例)又は比較化合物例10乃至30部(特に記載が無い場合は10部)を2,2,2−トリフルオロエタノールに加えて加熱溶解させた。これをシャーレに入れて室温にて静置し、2,2,2−トリフルオロエタノールを蒸発させた後、真空乾燥機を用いて70℃で15時間以上乾燥させることにより測定試料を得た。2,2,2−トリフルオロエタノールに加熱溶解しない化合物例又は比較化合物例の場合には次のようにして測定用試料を作成した。 精製した100部のポリアミド66及び化合物例又は比較化合物例10乃至30部を2,2,2−トリフルオロエタノールに加えて加熱し、ポリアミド66溶解させた。超音波を用いて該化合物を分散させ、次いでこれにテトラヒドロフランを加えてゲル状の分散状態としたものをシャーレに入れて室温にて静置し、2,2,2−トリフルオロエタノール及びテトラヒドロフランを蒸発させた。その後、真空乾燥機を用いて70℃で15時間以上乾燥させることにより測定試料を得た。 対照として、精製したポリアミド66のみを2,2,2−トリフルオロエタノールに加熱溶解させた後、シャーレに入れて室温にて静置した。2,2,2−トリフルオロエタノールを蒸発させた後、真空乾燥機を用い、70℃で15時間以上乾燥させることにより対照試料を得た。 本明細書では、上記の試料作成処理をキャスト法処理と言うものとし、下記の実施例及び比較例においては、この処理方法により試料を作成した。 各測定試料及び対照試料について、示差走査熱量計(SEIKO INSTRUMENTS INC.社製 商品名:DSC6200、COOLING CONTROLLER)を用いて結晶化温度(TCP)、補外結晶化開始温度(TCIP)、及び補外結晶化終了温度(TCEP)を測定した。この熱分析においては、20℃から300℃まで20℃/minで昇温し、300℃を3分間保持し、次いで300℃から20℃まで10℃/minで降温するというサイクルを5回繰り返した。各測定試料について得られた補外結晶化開始温度(TCIP)と補外結晶化終了温度(TCEP)の測定データから、結晶化温度幅(ΔTC)[補外結晶化終了温度と補外結晶化開始温度の差]を算出した。表1乃至表20に測定結果(数値の単位は全て℃)を示す。表1乃至表20に示す各化合物例及び各比較化合物例に関するTCP、TCIP、TCEP、ΔTCの測定値は以上のようにして得た。 同様に、対照試料についても結晶化温度(T0CP)、補外結晶化開始温度(T0CIP)、及び補外結晶化終了温度(T0CEP)を測定し、結晶化温度幅(ΔT0C)を算出した。 結晶化温度の低下は、ΔTCP(ΔTCP=T0CP−TCP)によって判断し、結晶化速度の低下は、ΔTCとΔT0Cを比較すること(ΔΔTC=TC−T0C)によって判断した。 結晶化温度(TCP)の測定値は、示差走査熱量計により昇温・降温を繰り返して得られた測定値のうち2乃至5回目の4回のものの平均値を用いた。補外結晶化開始温度(TCIP)及び補外結晶化終了温度(TCEP)の測定値は、前記2乃至5回目の各降温測定時の測定値の平均値を用いた。 対照試料についても、結晶化温度(T0CP)、補外結晶化開始温度(T0CIP)、及び補外結晶化終了温度(T0CEP)の測定値を前記と同様の方法により、以下のように得た。T0CP=232.8℃T0CIP=236.0℃T0CEP=226.5℃ΔT0C=9.5℃ 実施例1乃至56は、化合物例1乃至56に関するものであり、化合物例1乃至56は、比較例1乃至20における比較化合物例1乃至20の分子構造と同様の分子構造を含む。これらの化合物例と比較化合物例について結晶化温度及び結晶化速度の低下を対比することにより、本発明の核効果抑制剤の有効性が示される。実施例1乃至20並びに比較例1及び2 実施例1乃至20と比較例1及び2により、アミノナフタレン構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。実施例1乃至4と比較例1との比較考察 実施例1乃至4は、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分に1−アミノナフタレン構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例1乃至4における結晶化温度低下(ΔTCP)は+7.2乃至+14 3℃であり、大きな結晶化温度の低下が認められる。 また、実施例1乃至4の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.3乃至+6.3℃拡大しており、結晶化速度が低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例1乃至4の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例1の結晶化温度低下(ΔTCP)は+0.6℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−1.1℃であり、結晶化速度がやや上昇している。従って比較例1の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していないことが分かる。実施例5乃至20と比較例2との比較考察 実施例5乃至20は、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分に2−アミノナフタレン構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例5乃至20における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.1乃至+16.0℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例5乃至20の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.1乃至+6.7℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例5乃至20の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例2の結晶化温度低下(ΔTCP)は+0.8℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−1.3℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度がやや上昇している。従って比較例2の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。実施例21及び22比較例3及び4 実施例21及び22と比較例3及び4により、メチルカルボナフタレン構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。 実施例21及び22は、6員環が全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分にメチルカルボナフタレン構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例21及び22における結晶化温度低下(ΔTCP)は+9.2及び+18.1℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例21及び22の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+4.0及び+5.0℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例21及び22の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例3及び4の結晶化温度低下(ΔTCP)は+1.8及び+1.0℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.5及び−1.0℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度がやや上昇している。従って比較例3及び4の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、6員環が全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。実施例23乃至29並びに比較例5乃至7 実施例23乃至29と比較例5乃至7により、クロモン(1−ベンゾピラン−4(4H)−オン)構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。 実施例23乃至29は、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分にクロモン(1−ベンゾピラン−4(4H)−オン)構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例23乃至29における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.1乃至+11.9℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例23乃至29の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.0乃至+6.6℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例23乃至29の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例5乃至7の結晶化温度低下(ΔTCP)は+2.0乃至+1.7℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.3乃至+0.5℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらないか又はやや上昇している。従って比較例5乃至7の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。比較例8乃至10、実施例30乃至33 実施例1乃至20と比較例8乃至10及び2により、クマリン構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。 実施例30乃至33は、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分にクマリン構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例30乃至33における結晶化温度低下(ΔTCP)は+9.3乃至+6.5℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例30乃至33の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.3乃至+3.6℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例30乃至33の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例8の結晶化温度低下(ΔTCP)は+1.1℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.6℃であり、結晶化速度がやや上昇している。従って比較例8の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、6員環、又は、5員環及び6員環が、全部で3又は4つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。 また比較例9及び10は、クマリンに5員環又は6員環が単結合を介して繋がっている化合物である。 比較例9及び10の結晶化温度低下(ΔTCP)は+1.9及び+2.1℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.2及び+0.5℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度にほとんど変化はない。従って比較例9及び10の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 このように、5員環以上の環の総数が3であっても、比較例9及び10のように単結合を介して例えば芳香環又はヘテロ環等の環が繋がって環の総数が3となった化合物は、核効果抑制剤としての機能を有していないことが分かる。 また、実施例31及び33に示されるように、構造中に脂環構造を備えた化合物でも、核効果抑制剤としての機能を有する。実施例34乃至45並びに比較例11乃至13 実施例34乃至45と比較例11乃至13により、キノリン構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。 実施例34乃至45は、6員環が、全部で3、4又は5つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分にキノリン構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例34乃至45における結晶化温度低下(ΔTCP)は+4.3乃至+19.7℃であり、大きな結晶化温度の低下が認められる。 また、実施例34乃至45の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.5乃至+11.0℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例34乃至45の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例11の結晶化温度低下(ΔTCP)は+1.9℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.8℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度がやや上昇している。従って比較例11の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、6員環が、全部で3、4又は5つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。 比較例12の結晶化温度低下(ΔTCP)は+1.2℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)との差が−0.1℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度の変化はない。従って比較例12の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 これに対し実施例36の化合物は、比較例12の化合物における2つの単環を繋ぐ単結合を含む部分を閉環した多環状構造としたフェナントロリン構造であり、この実施例36の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有していた。(実施例36 ΔTCP:+19.7℃、ΔΔTC:+11.0℃ 比較例12 ΔTCP:+1.2℃、ΔΔTC:−0.1℃) 同様に、比較例13の化合物(2,2’−ビキノリン)の結晶化温度低下(ΔTCP)は+0.9℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて+0.3℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほぼ等しい。従って比較例13の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 実施例45の化合物は、比較例13の化合物における6員環2つが縮合環化した2つの環構造を繋ぐ単結合を含む部分を閉環した構造としたものであり、この実施例45の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していた。(実施例45 ΔTCP:+8.1℃、ΔΔTC:+6.1℃ 比較例13 ΔTCP:+0.9℃、ΔΔTC:0.3℃)実施例46乃至50並びに比較例14乃至17 実施例46乃至50と比較例14乃至17により、マレイック アンハイドライド構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。実施例46及び47と比較例14及び15との比較考察 実施例46及び47は、5員環及び6員環が、全部で3つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分にマレイック アンハイドライド構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例46及び47における結晶化温度低下(ΔTCP)は+6.3及び+5.4℃(ΔΔTC)であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例46及び47の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.6及び+2.2℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例46及び47の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例14の結晶化温度低下(ΔTCP)は+0.5℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて+0.1℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらない。従って比較例14の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 このように、5員環及び6員環が、全部で3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、5員環及び6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。 また比較例15は、マレイック アンハイドライドに2つの芳香環が単結合で繋がっている化合物である。この比較例15の結晶化温度低下(ΔTCP)は+1.8℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて+0.1℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらない。従って比較例15の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 このように、5員環及び6員環が、全部で3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、比較例15のように5員環以上の環の総数が3であっても1つの環が他の何れかの環に単結合で繋がった化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。実施例48及び49と比較例16との比較考察 実施例48及び49は、5員環及び6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備える化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例48及び49における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.9及び+5.1℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例48及び49の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.1及び+2.2℃拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例48及び49の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例16の結晶化温度低下(ΔTCP)は−0.3℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.6℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度がやや上昇している。従って比較例16の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤として働く。 このように、5員環及び6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、比較例16のように5員環及び6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。実施例50と比較例17との比較考察 実施例50は、5員環と6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備える化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例50における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.4℃であり、結晶化温度が低下している。 また、実施例50の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.5℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例50の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例17の結晶化温度低下(ΔTCP)は−0.7℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて+0.3℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度がやや上昇している。従って比較例17の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 このように、5員環と6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、5員環と6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。実施例51及び比較例18乃至20 実施例51と比較例18乃至20により、ベンゾチアゾール構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。 実施例51は、5員環及び6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分にベンゾチアゾール構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例51における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.2℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例51の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+3.1℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例51の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例18及び19の結晶化温度低下(ΔTCP)は+0.7及び+0.4℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.5及び−0.4℃であり、結晶化速度はほとんど変わらないか又はやや上昇している。従って比較例18及び19の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、5員環及び6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、5員環及び6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。 また比較例20は、ベンゾチアゾールに芳香環が単結合で繋がっている化合物である(環の総数は3つ)。この比較例20の結晶化温度低下(ΔTCP)は−0.5℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.6℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はやや上昇している。従って比較例20の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、5員環以上の環の総数が3であっても1つの環が他の何れかの環に単結合で繋がった化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。実施例52乃至56並びに比較例21及び22 実施例52乃至56と比較例21及び22により、インデン構造について比較検討した。各化合物例及び各比較化合物例の構造は下記の通りである。 実施例52乃至56は、5員環及び6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備え、その一部分にインデン構造を含んでいる化合物である。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例52乃至56における結晶化温度低下(ΔTCP)は+9.5乃至+12.1℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例52乃至56の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+3.2乃至+6.7℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例52乃至56の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。 これに対し比較例21の結晶化温度低下(ΔTCP)は+0.7℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−1.4℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はやや上昇している。従って比較例21の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 このように、5員環及び6員環が全部で3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核抑制効果の機能を有しているが、5員環及び6員環が全部で2つ縮合環化した化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。 比較例22は、インデンに単結合で芳香環が繋がっている化合物である(環の総数が3つ)。この比較例22の結晶化温度低下(ΔTCP)は+0.4℃であり、結晶化温度の変化はほとんどない。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−2.0℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はやや上昇している。従って比較例22の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 このように、5員環以上の環の総数が3であっても比較例22のように1つの環が他の何れかの環に単結合で繋がった化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。実施例57乃至98 実施例57乃至98は、5員環以上の環状構造が3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物例57乃至98に関する。各化合物例の構造は下記の通りである。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例57乃至98における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.0乃至+15.7℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例57乃至98の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.0乃至+8.5℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、実施例57乃至98の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。実施例99及び100 実施例99及び100は、4員環以上の環状構造が3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物例100及び101に関する。各化合物例の構造は下記の通りである。 ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例99及び100における結晶化温度低下(ΔTCP)は+6.8及び+5.4℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例99及び100の結晶化温度幅(ΔTC)は、ポリアミド66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.0及び+2.3℃拡大(ΔΔTC)しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。同時に、補外結晶化開始温度(TCIP)が元の結晶性樹脂より低く、核誘導期間が非常に長くなっていることを示している。従って、これらの化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。比較例23乃至114 実施例1乃至100及び比較例1乃至22によって、環構造と置換基の類似性を基礎に縮合環化した環の数の違いによる結晶化温度と結晶化速度への影響を比較検討してきた。その結果、縮合環化した数が2の場合には結晶化温度と結晶化速度を下げる効果はほとんどないにもかかわらず、縮合環化した環の数が3を越えると劇的とも言える大きな効果が認められた。 この縮合環化した環の数の違いによる核抑制効果の違いをさらに確認するために、比較例23乃至114では、実施例1から100で見出された環構造及び置換基と類似した環構造や置換基を持つ化合物の核抑制効果を調べた。比較例23乃至32では環の数は3つであるが2個のみ縮合環化した構造、比較例33乃至40では環の数は3つであるが何れとも縮合環化していない構造、比較例41乃至80では2個の環が縮合環化している構造、比較例81乃至99では2個の環が縮合環化していない構造、比較例100乃至114では環の数が1つのものを示している。比較例23乃至40 比較例23乃至40は、5員環と6員環で構成される環の総数が3以上であるが、この3つ以上の環が縮合環化していない化合物すなわち、5員環と6員環又は6員環同士が2つ縮合環化した環状構造と単環とが単結合を介して繋がった(若しくはスピロ結合した)化合物或いは5員環又は6員環の単環同士が単結合を介して繋がった化合物に関する。各比較化合物例の構造は下記の通りである。 比較例23乃至40の結晶化温度低下(ΔTCP)は−0.2乃至+2.0℃であり、結晶化温度の変化はほとんどないか又は僅かに低下している。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−1.6乃至+1.0℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらないか又はやや上昇している。従って比較例23乃至40の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 実施例57乃至98の結果から、5員環以上の環状構造が3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核効果抑制剤としての機能を有していた。これに対し、比較例23乃至40のように、5員環以上の環の総数が3以上であっても2つの環のみが縮合環化した環状構造を持つ化合物や環の数は3つであるが何れとも縮合環化していない構造を有する化合物では核効果抑制剤の機能を有していない。比較例41乃至80 比較例41乃至80は、これまでに示した核効果を抑制する化合物の構造に含まれる置換基や芳香環をもってはいるが、5員環と6員環の2つの環又は6員環2つで構成される縮合環化した化合物に関する。各比較化合物例の構造は下記の通りである。 比較例41乃至80の結晶化温度低下(ΔTCP)は−1.2乃至+1.7℃であり、結晶化温度の変化はほとんどないか又は僅かに低下している。また比較例41乃至80の結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−1.7乃至+0.7℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらないか又はやや上昇している。従って比較例41乃至80の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示しているものが多い。 実施例57乃至98の結果から、5員環以上の環状構造が3つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核効果抑制剤としての機能を有していた。これに対し、比較例41乃至80の結果から、5員環以上の環が2つ縮合環化した環状構造の化合物では核効果抑制剤の機能を有していないことが分かる。比較例81乃至114 比較例81乃至99は、比較例41乃至80と同様に2個の環構造で構成されているが、縮合環化していない化合物に関するものであり、比較例100乃至114は、5員環又は6員環の単環からなる化合物に関する。 比較例81乃至99の結晶化温度低下(ΔTCP)は、+0.1乃至+1.9℃であり、結晶化温度の変化はほとんどないか又は僅かに低下している。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−1.5乃至+0.8℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらないか又はやや上昇している。従って単環同士が単結合を介して繋がった比較例81乃至99の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 比較例100乃至114の結晶化温度低下(ΔTCP)は、−0.7乃至+2.0℃であり、結晶化温度の変化はほとんどないか又は僅かに低下している。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−1.7乃至+0.2℃であり、結晶化速度はほとんど変わらないか又はやや上昇している。従って単環からなる比較例100乃至114の化合物は核効果抑制剤としての機能を有しておらず、むしろ核剤としての働きを示している。 比較例23乃至114の結果をまとめると、3個以上の環構造が縮合環化した多環状構造を持つ化合物が大きな核抑制効果を持ち、環の数が3つであっても縮合環化していないものや2以下のものはほとんど核抑制効果の無いことが明らかとなった。実施例101乃至180 これまでに3個以上の環構造が縮合環化した多環状構造を持つ化合物が大きな核抑制効果を持つことを見出してきたが、実施例101乃至180では4個以上の環構造が縮合環化した多環状構造を有する化合物について検討した結果を示す。但し実施例156及び157は、3個の環構造が縮合環化した多環状構造同士が直接二重結合した化合物に関する。実施例101乃至125 実施例101乃至125は、5、6又は7員環が4つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物例101乃至125に関する。各化合物例の構造は下記の通りである。 ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例101乃至125における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.2乃至+15.6℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例101乃至125の結晶化温度幅(ΔTC)は、ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.0乃至+6.7℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。よって、実施例101乃至125の化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。すなわち、5、6又は7員環が4つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は、核効果抑制剤としての機能を有していることが示された。実施例126乃至148 実施例126乃至148は、5員環以上の環状構造が5つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物例126乃至148に関する。各化合物例の構造は下記の通りである。 ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例126乃至148における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.1乃至+9.4℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例126乃至148の補外結晶化温度差(ΔTC)は、ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の補外結晶化温度差(ΔT0C)9.5℃よりも+2.0乃至+4.8℃拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。従って、5員環以上の環状構造が5つ縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。実施例149乃至180 実施例149乃至180は、5員環以上の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造を備えた化合物例149乃至180に関する。但し実施例156及び157は、3個の環構造が縮合環化した多環状構造同士が直接二重結合した化合物に関する。各化合物例の構造は下記の通りである。 ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例149乃至180における結晶化温度低下(ΔTCP)は+5.0乃至+9.8℃であり、大きく結晶化温度が低下している。 また、実施例149乃至180の補外結晶化温度差(ΔTC)は、ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+2.0乃至+10.3℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。従って、5員環以上の環状構造が6以上縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。比較例115及び116 実施例101乃至180では、5員環または6員環が4つ以上縮合環化した化合物が核効果抑制剤として顕著な機能を有すること示してきた。これに対し比較例として、5員環又は6員環を4個以上有するが、それらを3個以上縮合環化した多環状構造を持たない化合物を挙げて比較する。 比較例115及び116の結晶化温度低下(ΔTCP)は+1.8及び+2.6℃であり、結晶化温度の変化はほとんどないか又は僅かに低下している。結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて+0.1乃至+0.2℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらない。従って比較例115及び116の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。 実施例101乃至180の結果から、5員環以上の環状構造が4つ以上縮合環化した多環状構造を備えた化合物は核効果抑制剤としての機能を有していた。これに対し、比較例115及び116の結果から、5員環または6員環を4個以上有するが、それらを3個以上縮合環化した多環状構造を持たない化合物では核効果抑制剤の機能を有していないことが分かる。 種々の環状構造が縮合環化した多環状構造化合物、並びにこれらに様々な置換基を導入した多環状構造を持つ化合物について行った示差走査熱量計による評価から以下のことが明らかとなった。すなわち、4員環以上の環状構造が3個以上縮合環化した多環状構造を有する化合物は、結晶性組成物中に含有されることにより、その結晶性組成物の結晶化点(結晶化温度)及び結晶化速度を有効に下げることができると共に、その核生成誘導期を長くすることができ、核効果を抑制する材料として有効に働く。一方、縮合環化した環状構造の数が2以下のものや、環状構造が3つ以上であっても縮合環化していないものでは結晶化速度を低下させることはできない。 結晶性樹脂として100部のナイロン66と、核効果抑制剤としてそれぞれ2.5部の4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、6,7−ジヒドロ−5,8−ジメチル[b,j][1,10]フェナントロリン、4−メチル−1,10−フェナントロリン、及び3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリンを用い、前記キャスト法により測定試料を得た。この実施例における核効果抑制剤である化合物例181は、それぞれが核効果抑制剤としての機能を有している下記構造の化合物の混合物である。 ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例181における結晶化温度低下(ΔTCP)は+14.5℃である。 また、実施例181の結晶化温度幅(ΔTC)は、ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+9.0℃拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。従って、前記化合物の混合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。実施例182乃至187 実施例182乃至187は、核効果抑制剤としての機能を有している多環状構造を備えた化合物とスルホン酸又はカルボン酸との塩の構造を有する化合物例182乃至187に関する。各化合物例の構造は下記の通りである。 ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は232.8℃、実施例182乃至187における結晶化温度低下(ΔTCP)は+13.2乃至+17.4℃である。 また、実施例182乃至187の結晶化温度幅(ΔTC)は、ナイロン66(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)9.5℃よりも+7.0乃至+10.1℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が大きく低下していることを示している。従って、これらの化合物は核効果抑制剤としての顕著な機能を有している。比較例117乃至125 比較例117乃至125は、長鎖脂肪族の化合物に関する。各比較化合物例の構造は下記の通りである。 比較化合物例120は第一工業製薬株式会社製のプライサーフA215C(商品名)であり、比較化合物例122は第一工業製薬株式会社製のアミラヂン(商品名)である。比較化合物例120及び122中、Rはアルキル基又はアルキルアリル基を示し、nはエチレンオキサイド付加モル数を示し、R’はH又はR(CH2CH2O)nを示す。 比較例117乃至125の結晶化温度低下(ΔTCP)は、+0.2乃至+2.8℃であり、結晶化温度の変化はほとんどないか又は僅かに低下している。また比較例117乃至125の結晶化温度幅(ΔTC)は対照(元の結晶性樹脂)と比べて−0.3乃至+2.1℃(ΔΔTC)であり、結晶化速度はほとんど変わらないか又はやや上昇している。従って比較例117乃至125の化合物は核効果抑制剤としての機能を有していない。実施例188乃至191 実施例188乃至191では、結晶性樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂[デュポン社製 商品名:クラスチン 6130NC]を用い、核効果抑制剤として5員環又は6員環が縮合環化した多環状構造を備えた化合物例188乃至191を用いたものである。各化合物例の構造は下記の通りである。 精製したPBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂[結晶性樹脂])100部及び本発明の核効果抑制剤(表21に示された化合物例)10部を1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールに加えて加熱溶解させた。これをシャーレに入れて室温にて静置し、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールを蒸発させた後、真空乾燥機を用いて70℃で15時間以上乾燥させることにより測定試料を得た。対照として、精製したPBTのみを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールに加熱溶解させた後、シャーレに入れて室温にて静置した。1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールを蒸発させた後、真空乾燥機を用い、70℃で15時間以上乾燥させることにより対照試料を得た(キャスト法)。 各測定試料及び対照試料について、示差走査熱量計(SEIKO INSTRUMENTS INC.社製 商品名:DSC6200、COOLING CONTROLLER)を用いて結晶化温度(TCP)、補外結晶化開始温度(TCIP)、及び補外結晶化終了温度(TCEP)を測定する熱分析を行った。この熱分析においては、20℃から245℃まで20℃/minで昇温し、245℃を3分間保持し、次いで245℃から20℃まで10℃/minで降温するというサイクルを5回繰り返した。各測定試料について得られた補外結晶化開始温度(TCIP)と補外結晶化終了温度(TCEP)の測定データから、結晶化温度幅(ΔTC)[補外結晶化終了温度と補外結晶化開始温度の差]を算出した。同様に、対照試料についても結晶化温度(T0CP)、補外結晶化開始温度(T0CIP)、及び補外結晶化終了温度(T0CEP)を測定し、結晶化温度幅(ΔT0C)を算出した。 結晶化温度の低下は、ΔTCP(ΔTCP=T0CP−TCP)によって判断し、結晶化速度の低下は、ΔTCとΔT0Cを比較すること(ΔΔTC=TC−T0C)によって判断した。 PBT(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度(T0CP)は183.6℃であり、実施例188乃至191における結晶化温度低下(ΔTCP)は+3.4乃至+5.3℃である。 また、実施例188乃至191の結晶化温度幅(ΔTC)は、PBT(対照:元の結晶性樹脂)の結晶化温度幅(ΔT0C)13.0℃よりも+1.4乃至+1.6℃(ΔΔTC)拡大しており、結晶化速度が低下していることを示している。従って、これらの化合物は核効果抑制剤としての機能を有している。実施例192乃至194並びに比較例126乃至128 実施例192乃至194並びに比較例126乃至128では、結晶性樹脂としてガラス繊維強化ナイロン66(ポリアミド樹脂:ガラス繊維=67:33の重量混合比の繊維強化ポリアミド樹脂 デュポン社製 商品名:70G33L)を用い、これに核効果抑制剤として化合物例36、29及び34(比較化合物例126乃至128)を添加し、射出成形により成形板を得た。この成形板と、ガラス繊維強化ナイロン66(元の結晶性樹脂)のみから射出成形により得た成形板とで、外観及び光沢を比較検討した。 射出成形は次のように行った。500gの前記ガラス強化ナイロン66に5gの化合物例36、29及び34並びに比較化合物例126乃至128の何れかを加え、ステンレス製タンブラーで20分間撹拌混合して得た混合物を、ノズル温度300℃、金型温度80℃(他の成形条件は通常の方法)で射出成形機(川口鐵工社製 商品名:KM−50C)を用いて射出成形した。得られた試験片[49×79×3mm]について光沢度を測定すると共に外観を評価して表22に示した。光沢度試験と評価 光沢度は、光沢度計(スガ試験機社製 商品名:HG−268)を用いて、試験片に対し60度入射角での光沢値を測定した。試験片における測定部位は成形物の中央部分とした。 一般に、光沢値の高いものが、表面の平滑性が高くて表面光沢が豊富であると判断される。また、この試験により、試験片の平滑性のみならず、繊維強化結晶性樹脂におけるガラス繊維などの繊維状補強材が浮き出る現象を把握することもできる。化合物例及び比較化合物例実施例192: 4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン(化合物例36)実施例193: β−ナフトフラボン(化合物例29)実施例194: アクリジン オレンジ ベース(化合物例34)比較例126: 1,2−ジフェニルインドール(比較化合物例126)比較例127: 2,3−ジフェニルキノキサリン(比較化合物例127)比較例128: N−フェニル−2−ナフチルアミン(比較化合物例128) 実施例192乃至194においては、元のガラス繊維強化ナイロン66より光沢度がかなり向上した。本発明の核効果抑制剤による結晶化温度の低下により、同一金型温度(80℃)において結晶性樹脂が溶融している期間が長くなるため、表面光沢が向上するものと考えられる。実施例195乃至実施例201及び比較例129 ナイロン66及び下記化合物例を用いて前記キャスト法によって得たフィルム状測定試料と、ナイロン66のみを用いてキャスト法によって得たフィルム状対照試料について球晶の数を比較した。 球晶の数は次のように計数した。すなわち、前記キャスト法によって得たフィルム状測定試料及び対照試料を、それぞれスライドガラスとカバーガラスの間に挟み、ホットプレートの上で加熱した。各フィルム状試料が融解したところで、上から押し、次いで室温で放冷した。十分に冷えた後、光学顕微鏡で偏光板を用いて観察した。この結果を表23に示す。図1乃至図7並びに図8は、それぞれ実施例195乃至201並びに比較例129における36354μm2の顕微鏡写真である。なお、各写真の右下の目盛りは、1目盛りが10μm、全長5目盛りで50μmである。これにより核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における球晶の大きさは、その核効果抑制剤を含有しない元の結晶性樹脂における球晶の大きさよりも大きくなることが確認された。使用試料実施例195:4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン(化合物例36)7実施例196:1−アミノピレン(化合物例15)実施例197:1−アミノアントラセン(化合物例1)実施例198:2−アセチルフルオレン(化合物例54)実施例199:2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(化合物例41)実施例200:3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン(化合物例40)実施例201:2−アミノアントラセン(化合物例9)比較例129:元の結晶性樹脂比較例130:1−アミノナフタレン(比較化合物例1)比較例131:2−アミノナフタレン(比較化合物例2)比較例132:4,4‘−ジメチル−2,2’−ジピリジル(比較化合物例12)比較例133:2,2’−ビキノリン(比較化合物例13) 表23に示されるように、本発明の核効果抑制剤を含有することにより、結晶性樹脂組成物の球晶の数が少なくなる。このことから、本発明の核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物において結晶核が生じにくくなるものと考えられる。 結晶性樹脂組成物中において結晶性樹脂の結晶化を制御する化合物からなる核効果抑制剤であって、前記化合物が、4員環以上の環状構造が3個以上縮合環化した多環状構造から選ばれる少なくとも1つの構造を備えた化合物のうち、ニグロシン、アニリンブラック、及び銅フタロシアニン誘導体を除く何れかの化合物であることを特徴とする核効果抑制剤。 上記核効果抑制剤が次の要件(A)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(A) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度よりも低下する 上記核効果抑制剤が次の要件(B)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(B) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度よりも4℃以上低下する 上記核効果抑制剤が次の要件(C)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(C) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化速度が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化速度よりも低下する 上記核効果抑制剤が次の要件(D)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(D) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物の補外結晶化開始温度と補外結晶化終了温度の差が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの補外結晶化開始温度と補外結晶化終了温度の差よりも2℃以上増加する 上記核効果抑制剤が次の要件(E)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(E) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における球晶の大きさが、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける球晶の大きさより大きくなる 上記核効果抑制剤が次の要件(F)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(F) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物における球晶の平均径が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける球晶の平均径の2倍以上となる 上記核効果抑制剤が次の要件(G)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(G) その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における所定面積中の球晶の数が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける前記所定面積中の球晶の数より少なくなる 上記核効果抑制剤が次の要件(H)を満たすものである請求項1記載の核効果抑制剤。(H) その核効果抑制剤を結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部含有する結晶性樹脂組成物における所定面積中の球晶の数が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける前記所定面積中の球晶の数に対して2/3倍以下に減少する 上記化合物が、下記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも1つの多環状構造を備えてなる請求項1記載の核効果抑制剤。(a)4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造(b)4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造(c)4員環以上の環状構造が5個縮合環化した多環状構造(d)4員環以上の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造 上記化合物が、下記(a)乃至(d)から選ばれる少なくとも1つの多環状構造を備えてなる請求項1記載の核効果抑制剤。(a)5員環および/または6員環の環状構造が3個縮合環化した多環状構造(b)5員環および/または6員環の環状構造が4個縮合環化した多環状構造(c)5員環および/または6員環の環状構造が5個縮合環化した多環状構造(d)5員環および/または6員環の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造 上記環状構造として芳香環構造又はヘテロ環構造を有する請求項10又は11記載の核効果抑制剤。 上記(a)乃至(d)の多環状構造が、2個以上の6員環を有する構造である請求項10又は11記載の核効果抑制剤。 上記(a)乃至(d)の多環状構造がそれぞれ6員環を有するものであり、その6員環がベンゼン環および/またはピリジン環である請求項10又は11記載の核効果抑制剤。 上記(a)乃至(d)の多環状構造がそれぞれ5員環を有するものであり、その5員環がシクロペンタジエン環および/またはピロール環である請求項10又は11記載の核効果抑制剤。 上記の4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造が、下記の骨格構造a−1乃至a−8から選ばれる1種以上であり、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記の4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造が、下記の骨格構造b−1乃至b−12から選ばれる1種以上であり、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記の4員環以上の環状構造が5個縮合環化した多環状構造が、下記の骨格構造c−1乃至c−8から選ばれる1種以上であり、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記の4員環以上の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造が、下記の骨格構造d−1乃至d−10から選ばれる1種以上であり、各骨格構造を構成するそれぞれの結合は単結合又は二重結合である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造a−1が、下記の基本構造1乃至8から選ばれる1種以上である請求項16記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造a−2が、下記の基本構造9乃至11から選ばれる1以上である請求項16記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造a−3が、下記の基本構造12乃至17から選ばれる1以上である請求項16記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造a−4が、下記の基本構造18乃至23から選ばれる1以上である請求項16記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造a−5が、下記の基本構造24乃至38から選ばれる1種以上である請求項16記載の核効果抑制剤。 [基本構造28中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。] [基本構造33中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。] [基本構造38中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。] 上記骨格構造a−6が、下記の基本構造39乃至49から選ばれる1以上である請求項16記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造a−7が下記の基本構造50である請求項16記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造a−8が下記の基本構造51乃至53から選ばれる1以上である請求項16記載の核効果抑制剤。 上記4員環以上の環状構造が3個縮合環化した多環状構造が、下記の基本構造54乃至60から選ばれる1種以上である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−1が、下記の基本構造61乃至63から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−2が、下記の基本構造64乃至69から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 [基本構造67中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。] [基本構造68中、Aは、S、N−R、N+(−R1)−R2又はOを示し、R、R1、及びR2は、それぞれH、置換基を有する若しくは有しないアルキル基、又は、置換基を有する又は有しないアリール基を示す。] 上記骨格構造b−3が、下記の基本構造70乃至73から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−4が、下記の基本構造74及び75から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−5が、下記の基本構造76乃至78から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−6が、下記の基本構造79乃至81から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−7が、下記の基本構造82及び83から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−8が下記の基本構造84である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−9が下記の基本構造85である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−10が下記の基本構造86及び87から選ばれる1種以上である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−11が下記の基本構造88である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造b−12が下記の基本構造89である請求項17記載の核効果抑制剤。 上記4員環以上の環状構造が4個縮合環化した多環状構造が、下記の基本構造90乃至93から選ばれる1種以上である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−1が、下記の基本構造94及び95から選ばれる1種以上である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−2が下記の基本構造96である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−3が、下記の基本構造97である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−4が、下記の基本構造98及び99から選ばれる1種以上である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−5が、下記の基本構造100及び101から選ばれる1種以上である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−6が下記の基本構造102である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−7が下記の基本構造103である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記骨格構造c−8が下記の基本構造104である請求項18記載の核効果抑制剤。 上記4員環以上の環状構造が5個縮合環化した多環状構造が、下記の基本構造105乃至112から選ばれる1種以上である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記4員環以上の環状構造が6個以上縮合環化した多環状構造が、下記の基本構造113乃至131から選ばれる1種以上である請求項10記載の核効果抑制剤。 上記化合物が備える多環状構造の少なくとも1つが、水酸基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホン基、及びカルボキシル基から選ばれる1種又は2種以上を置換基として有する請求項1乃至51の何れかに記載の核効果抑制剤。 上記基本骨格に、アミノ基、ジメチルアミノ基、カルボニル基、メチル基、及びアセチル基から選ばれる1種又は2種以上を置換基として有する請求項20乃至51の何れかに記載の核効果抑制剤。 上記核効果抑制剤が、カチオンとアニオンとがイオン結合してなる塩である請求項1乃至53の何れかに記載の核効果抑制剤。 上記塩が、上記核効果抑制剤の基本構造における、スルホン基、カルボキシル基、又は置換基を有する若しくは非置換のアミノ基がイオン化して形成された塩である請求項54記載の核効果抑制剤。 上記アニオンが、カルボン酸又はスルホン酸に起因するアニオンである請求項54記載の核効果抑制剤。 上記カルボン酸及びスルホン酸が、それぞれ芳香族又は脂肪族のスルホン酸及び芳香族又は脂肪族のカルボン酸である請求項56記載の核効果抑制剤。 色相が無色又は淡色である請求項1乃至57の何れかに記載の核効果抑制剤。 結晶性樹脂中に請求項1乃至58の何れかに記載の核効果抑制剤を1種以上含有してなる結晶性樹脂組成物。 結晶性樹脂100重量部に対し0.1乃至30重量部の上記核効果抑制剤を含有する請求項59記載の結晶性樹脂組成物。 上記結晶性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選ばれる1又は2以上の混合物である請求項59又は60記載の結晶性樹脂組成物。 上記ポリアミド樹脂が、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド69樹脂、ポリアミド610樹脂、又はポリアミド樹脂と他の合成樹脂とのアロイである請求項61記載の結晶性樹脂組成物。 上記結晶性樹脂組成物の結晶化温度が、その結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって上記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度よりも4℃以上低い請求項59乃至62の何れかに記載の結晶性樹脂組成物。 結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂がポリアミド樹脂であり、その結晶性樹脂組成物の結晶化温度が、その結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって上記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度よりも5℃以上低い請求項63記載の結晶性樹脂組成物。 上記結晶性樹脂組成物の補外結晶化開始温度と補外結晶化終了温度の差が、その結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって上記核効果抑制剤を含有しないものの補外結晶化開始温度と補外結晶化終了温度の差よりも2℃以上増加するものである請求項59乃至62の何れかに記載の結晶性樹脂組成物。 上記結晶性樹脂組成物における球晶の平均径が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって上記核効果抑制剤を含有しないものにおける球晶の平均径の2倍以上となる請求項59乃至62の何れかに記載の結晶性樹脂組成物。 上記結晶性樹脂組成物における所定面積中の球晶の数が、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって上記核効果抑制剤を含有しないものにおける前記所定面積中の球晶の数より少なくなるものである請求項59乃至62の何れかに記載の結晶性樹脂組成物。 着色剤を含有する請求項59乃至67の何れかに記載の結晶性樹脂組成物。 上記着色剤が有彩色の有機顔料である請求項68記載の結晶性樹脂組成物。 核剤を含有する請求項59乃至69の何れかに記載の結晶性樹脂組成物。 繊維状補強材を含有する請求項59乃至70の何れかに記載の結晶性樹脂組成物。 結晶性樹脂中に請求項1乃至58の何れかに記載の核効果抑制剤を1種以上含有させることにより、その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物の結晶化温度及び結晶化速度を、その結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものの結晶化温度及び結晶化速度よりも低下させる結晶性樹脂組成物の結晶化制御法。 上記結晶化温度の低下が4℃以上である請求項72記載の結晶性樹脂組成物の結晶化制御法。 結晶性樹脂中に請求項1乃至58の何れかに記載の核効果抑制剤を1種以上含有させることにより、その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における球晶の平均径を、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける球晶の平均径の2倍以上とする請求72又は73記載の結晶性樹脂組成物の結晶化制御法。 結晶性樹脂中に請求項1乃至58の何れかに記載の核効果抑制剤を1種以上含有させることにより、その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物における所定面積中の球晶の数を、前記結晶性樹脂組成物における結晶性樹脂であって前記核効果抑制剤を含有しないものにおける前記所定面積中の球晶の数より少なくする請求項72又は73記載の結晶性樹脂組成物の結晶化制御法。 4員環以上の環状構造が3個以上縮合環化した多環状構造から選ばれる少なくとも1つの構造を備えた化合物のうち、ニグロシン、アニリンブラック、及び銅フタロシアニン誘導体を除く何れかの化合物からなる核効果抑制剤、その核効果抑制剤を含有する結晶性樹脂組成物、並びにその核効果抑制剤を用いる結晶化制御法。