タイトル: | 再公表特許(A1)_アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル、その製造法、およびそれらを含有する組成物 |
出願番号: | 2003005443 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12P23/00,A23K1/16,A23L1/30,A61K7/00,A61K7/027,B01D11/00,B01D11/02 |
角田 元男 中尾 正宏 冨森 菜美 並川 耕士 深見 治一 JP WO2003093229 20031113 JP2003005443 20030428 アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル、その製造法、およびそれらを含有する組成物 サントリー株式会社 000001904 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 山本 修 100118902 角田 元男 中尾 正宏 冨森 菜美 並川 耕士 深見 治一 JP 2002128989 20020430 7 C12P23/00 A23K1/16 A23L1/30 A61K7/00 A61K7/027 B01D11/00 B01D11/02 JP C12P23/00 A23K1/16 301H A23L1/30 A A23L1/30 Z A61K7/00 C A61K7/00 K A61K7/027 B01D11/00 B01D11/02 A EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),AU,CA,CN,ID,IL,JP,KR,SG,US 再公表特許(A1) 20050908 2004501368 31 技術分野本発明は、アスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルまたはアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルの製造方法および組成物に関する。更に詳細にはリパーゼの転移反応を用いて、遊離アスタキサンチンあるいはアスタキサンチン脂肪酸エステルあるいはこれらが種々混合されたアスタキサンチン類と中鎖脂肪酸あるいは中鎖脂肪酸トリグリセリドあるいはそれらの混合物とのエステル化あるいはエステル交換反応を行うことによって得られるアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルまたはアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルの製造方法、甲殻類からの抽出によるアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルまたはアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルの製造方法、およびそれらを含有する組成物に関する。背景技術遊離型アスタキサンチンは一般には次式(1)で示される色素である。天然界には上記記載の遊離型と水酸基に脂肪酸が結合したエステル型が知られている。このエステル結合した脂肪酸は通常炭素数が16以上の長鎖脂肪酸であり、結合する脂肪酸の数により、モノエステル型とジエステル型に分類されている。アスタキサンチンはカロチノイドの1種として、顕著な抗酸化作用とプロビタミンAとしての活性を持つことが知られており、その色と生理機能(抗酸化作用)から天然着色料、化粧料、健康食品および/またはサプリメントとして利用されている。アスタキサンチンはオキアミ、エビ、カニ、酵母のファフィア、緑藻類のヘマトコッカスから抽出されたものがこれらの用途に用いられている。アスタキサンチンはエビ・カニなどの甲殼類、サケ・マスの筋肉、卵、タイ・コイ・キンギョなどの体表などに広く分布する赤橙色の色素である。既に化学合成されており、合成したアスタキサンチンは養殖魚の色付けの用途に飼料添加物として利用されている。天然には、アスタキサンチンは遊離型アスタキサンチンとして、或いはアスタキサンチンの脂肪酸エステルとして単独、あるいは混合物として存在する。また、脂肪酸エステルは一般的にパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、EPA,DHAなどの長鎖脂肪酸エステルの混合物として存在する。また、天然由来のアスタキサンチンは、ファフィア由来のものが遊離型アスタキサンチンとして知られている他、アスタキサンチンのいわゆる長鎖脂肪酸エステルの混合物、もしくは長鎖脂肪酸エステルと遊離型アスタキサンチンとの混合物として存在することが知られている。そして、アスタキサンチンはその遊離型よりもエステル型の方が、腸管吸収率がよく、経口吸収性に優れていることも知られている(食品と開発,Vol.27,No.3,38−40(1992)、化学と生物,Vol.28,No.4,219−227(1990))。エステル型アスタキサンチンを得る方法についてもいくつか方法が公表されている。すなわち、リパーゼを触媒としたアスタキサンチンと長鎖脂肪酸とのエステル化方法(特開平11−290094)、パルミチン酸エステルの化学合成法(特開平1−202261)も開示されている。一方、カプリン酸、ラウリン酸などの中鎖脂肪酸エステルについてはある種の緑藻や植物に存在していることが示されているが、微量にしか存在しない。特にカプリル酸の中鎖脂肪酸エステルについてはその存在の可能性は示唆されているが化合物としては特定されていない(Comp.Biochem.Physiol.,B:Comp.Biochem.(1987),86B(3),587−591)。またこれらのエステル類は化学的にも酵素的にも合成されたことがなく、それらの物性や機能は調べられてはいない。発明の開示本発明は、食品、化粧品、医薬品の分野で応用が期待でき、しかも長鎖脂肪酸エステル型アスタキサンチンに比べて、経口吸収性がよく、肝臓組織への移行率が高いアスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステル、例えばアスタキサンチンオクタン酸モノエステルまたはアスタキサンチンオクタン酸ジエステルを新規物質として提供する。本発明はまた、リパーゼの触媒作用を利用して、アスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステルを合成する方法、または甲殼類、好ましくはオキアミから中鎖脂肪酸エステルを抽出により製造する方法、およびそれらを含有する組成物およびそれら組成物を含有する食品や化粧品を提供する。発明を実施するための最良の形態本発明者らはアスタキサンチンの欠点とされる経口吸収性の悪さが、そのエステル類すなわちアスタキサンチン長鎖脂肪酸エステルにおいては遊離型アスタキサンチンより改善されていることに注目し、さらに顕著に経口吸収性を向上させる手段を鋭意検討した結果、とりわけ経口吸収性に優れたアスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステルにより達成されることを見出し本発明を完成させた。すなわち、アスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステル類は経口投与時に天然から得られるヘマトコッカス由来アスタキサンチン(長鎖脂肪酸エステル混合物)と比較して、良好な経口吸収性を示す。さらに、消化吸収時にエステル体が遊離型アスタキサンチンと遊離中鎖脂肪酸とに切断され、遊離型で吸収される。この時遊離してくる中鎖脂肪酸は大量に摂取しても体内で分解されてエネルギーに変換され、体脂肪として蓄積されないこともよく知られており、近年高まっている健康志向にも十分マッチしたものである。さらに、本発明によって得られたアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルは、それ自体新規な物質として提供されるほか、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含有する組成物は市販されている天然のアスタキサンチン類に比較して経口吸収性、肝臓組織移行性に優れたアスタキサンチンの代替物として食品、食品添加物、化粧品、等に広く利用可能である。アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル本明細書において、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルとは、前記式(1)で示される化合物が、中鎖脂肪酸によってモノエステル化またはジエステル化されたものを意味する。好ましい中鎖脂肪酸は、炭素数8〜12の脂肪酸であり、炭素数が偶数の直鎖の飽和脂肪酸、すなわち、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)である。なお、本明細書において長鎖脂肪酸とは、中鎖脂肪酸より炭素数が多いもの、即ち炭素数14以上の脂肪酸を意味する。酵素反応による中鎖脂肪酸エステル型アスタキサンチンの合成本発明者らは、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルが長鎖脂肪酸エステルに比べ、消化吸収性、組織への移行性が優れていることを上記記載の実験によって見出した。これら中鎖脂肪酸エステル型アスタキサンチンの有用性および食品の分野での応用に鑑み、リパーゼによるアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルの合成方法を鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明の合成方法には以下の態様がある。(1)エステル化反応本発明の方法の一つの態様は、アスタキサンチン類と脂肪酸類とからリパーゼを用いてエステル化反応を行うに際して、脂肪酸として中鎖脂肪酸を用いることを特徴とする、アスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルまたはアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルの製造方法である。中鎖脂肪酸としては炭素数が8から12の直鎖の飽和脂肪酸である。一般的にリパーゼを用いたエステル化反応では水分をできる限り排除して行うことが知られている。特開平11−290094に開示されている方法においてもアスタキサンチンエステルはごく少量の水分(0.02〜0.1%)を加えて合成されている。しかしながら、この先行技術の方法では長鎖脂肪酸の代わりに中鎖脂肪酸を用いるとエステル化が十分に行われない。本発明ではこの問題を解消するため、表1に示すように、数%の水分を反応系に加える。すると驚くべきことに、アスタキサンチンと中鎖脂肪酸とからエステルが形成される。(2)中鎖脂肪酸トリグリセリドとのエステル交換反応上記のような水分添加の顕著な効果は、リパーゼによるエステル交換反応についても存在する。すなわち、脂肪酸を供与する基質(脂肪酸ドナー)を遊離の脂肪酸から中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)に代えても、水分添加量を増やすことによってエステル交換反応が進行し、アスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステルが得られる。この態様において、反応系に加える水分の量は、後に詳述する。エステル交換反応は、中鎖脂肪酸のトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド以外に中鎖脂肪酸のアルコールエステルを用いても行うことができる。そのようなエステルとして、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール)とのエステルが好ましい。エステル交換反応を、イオン交換樹脂等に固定化して安定化させたリパーゼを用いて行うことができる。遊離型やアルコールエステル型の中鎖脂肪酸を用いるときも固定化酵素の使用は可能であるが、遊離型中鎖脂肪酸に比べ、中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いたリパーゼのエステル化反応は目的とするアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル生成収率はさらに向上する。(3)他のアスタキサンチンエステルとのエステル交換反応先行技術(特開平11−290094)の方法は、エステル化されていない遊離型のアスタキサンチンを使ってエステル化したり、長鎖脂肪酸が結合したモノエステル型のアスタキサンチンを用いてジエステル型を製造する方法に限られている(特開平11−290094の方法はモノエステル体にさらに脂肪酸がエステル化される反応であり、エステル交換反応ではない)。これに対して、本発明の方法は、後に詳述するとおり、水分添加量や酵素反応条件を適宜定めることにより、長鎖脂肪酸モノエステルやジエステル型のアスタキサンチンからそれらの脂肪酸部分をエステル交換反応により、中鎖脂肪酸へ変換することもできる。例えば、化学的に調製したアスタキサンチンオレイン酸ジエステルからアスタキサンチンオクタン酸モノエステル(アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル)にエステル交換することができる。他のアスタキサンチンエステルとのエステル交換反応の場合も、リパーゼはそのまま用いてもよく、あるいは好ましくは固定化して用いてもよい。また、中鎖脂肪酸は遊離脂肪酸として用いてもよく、または好ましくはトリグリセリドとして、あるいはまたトリグリセリド以外のアルコールエステルとして用いてもよい。本発明の方法は、上記のようにエステル交換反応で行うと実用上の利点がある。なぜなら、アスタキサンチンの供給源として、現在最も入手が可能なアスタキサンチンは緑藻類の培養物から調製されるものやオキアミから抽出したものであり、これらは異なった種類の長鎖脂肪酸エステルの混合物(モノエステル、ジエステルの混合物)を含むからである。このようなアスタキサンチンを反応原料に用いても、特開平11−290094の方法を用いる限り、長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸の混合ジエステル体ができるに過ぎず、さらに原料に含まれるジエステル体はそのまま残存することになる。しかし、本発明の方法では上で述べた水分添加の効果からリパーゼによるエステル交換反応により、天然抽出アスタキサンチンと中鎖脂肪酸またはそのトリグリセリドとからもアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを得ることが可能である。上記リパーゼを用いて合成されるアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルまたはアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルが0.1%以上含有される組成物を提供する。本発明は、化粧品や食品の分野で応用が期待でき、リパーゼによる脂肪酸エステル交換反応により得られたアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルおよびアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルの製造方法、およびこれらアスタキサンチン類を含有する組成物を提供するものである。さらに本発明は、アスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルおよびアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステル、好ましくはアスタキサンチンオクタン酸モノエステルまたはアスタキサンチンオクタン酸ジエステルの天然物、好ましくは甲殻類、特に好ましくはオキアミからの抽出による製造方法を提供するものである。以下、発明の内容について詳細に説明する。酵素法によるアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルおよびアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルを含む組成物の製造は次の通り行う。酵素本発明者らが、市販の酵素剤を使って検討した結果では、Candida属の酵母由来のリパーゼ{例えば、Candida rugosa由来のリパーゼ(名糖産業(株)販売名:リパーゼOFなど)、Candida rugosa由来のリパーゼ(名糖産業(株)販売名:リパーゼMYなど)、Candida rugosa由来のリパーゼ(天野エンザイム(株)販売名:リパーゼAY「アマノ」30Gなど)、Candida antarctica由来のリパーゼ(ノボインダストリー(株)販売名:Novozym435など)}、Chromobacterium属の微生物由来のリパーゼ{例えば、Chromobacterium viscosum由来のリパーゼ、旭化成工業(株)販売名:リパーゼACなど}、Alcaligenes属の微生物由来のリパーゼ{例えば、Alcaligenes sp.由来のリパーゼ(名糖産業(株)販売名:リパーゼPLなど)、動物の膵臓由来のリパーゼ等の酵素剤が脂肪酸転移に使用できる。しかし、これらに限らず、本発明に用いられるリパーゼは、アスタキサンチンのOH基と中鎖脂肪酸やそのエステル類を含む溶液に作用させ、脂肪酸類のエステル交換反応によってアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルもしくはアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルを合成するものであればよく、起源、種類は限定されない。収率の点からCandida属由来のリパーゼが好ましい。酵素活性を高めたり、原料の変性を抑えたり、反応収率を上げたりする目的でこれらのリパーゼに精製操作を加えて使用してもよい。たとえば、水不溶物の除去、塩析、カラムクロマトグラフィーによる精製操作があげられる。本発明で用いるリパーゼは、水性溶媒に溶解または分散して用いても、粉末のものをそのままで用いても、あるいは担体に固定化した固定化リパーゼとして用いることもできる。固定化して用いると酵素は安定化され、酵素のリサイクル使用ができ、製造コストが低減できる。リパーゼの固定化方法は公知の方法によって行われ、固定化担体としてシリカゲル、セライト、K−カラギナン、キチン、アルギン酸ナトリウムなど公知の担体{バイオリアクター福井三郎監修・編講談社サイエンティフィック(1985年)、実践バイオリアクター,食品産業バイオリアクターシステム技術研究組合編食品化学新聞社(1990年)}を用いることができる。さらに、水処理に使われるようなイオン交換樹脂にリパーゼを固定化して用いることもできる。その他に吸着クロマトグラフィーや疎水吸着クロマトグラフィーに用いる樹脂にリパーゼを固定化して用いることもでき、一般にタンパク質を吸着することができる樹脂担体に固定化して用いることもできる。反応原料 アスタキサンチンエステル化反応の原料に使うアスタキサンチンは遊離型のアスタキサンチンでもアスタキサンチン脂肪酸エステルでもよく、単品でも混合物であってもよい。遊離型アスタキサンチンは合成品(ロッシュ、シグマ(Sigma)の市販品)であっても、天然から抽出されるものであってもよい。さらに、ファフィア酵母を培養し菌体内に蓄積させ、これから抽出または精製したものを用いてもよい。さらにまた、遺伝子工学的に育種した微生物・酵母・カビ・植物を培養したり育てたりし、これらから抽出または精製したものを使ってもよい。アスタキサンチン脂肪酸エステルはその脂肪酸エステルがモノエステルであってもジエステルであっても、あるいは両者の混合物であってもよい。さらにアスタキサンチン脂肪酸エステルは合成品、天然抽出物を問わず使うことができる。例えば、緑藻類のヘマトコッカスやオキアミ、エビ、カニ等の甲殻類や魚類の卵のような天然から抽出されるアスタキサンチン脂肪酸エステルはモノエステル体とジエステル体の混合物であり、かつ、エステル化している脂肪酸も種々の脂肪酸の混合物であるが問題なく使うことができる。さらに上記記載の遊離型のアスタキサンチンおよびアスタキサンチン脂肪酸エステルを2種類以上混合して用いることもできる。反応原料 脂肪酸類エステル化反応で用いるもう一方の原料の中鎖脂肪酸は炭素数8〜12の直鎖飽和脂肪酸が望ましい。具体的にいえば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸から選ばれる脂肪酸またはそれらから選択される2種類以上の混合脂肪酸が挙げられる。さらに本発明では遊離脂肪酸よりさらに反応性を高めることができるものとしてトリグリセリドやそれ以外のエステルの形態をとった脂肪酸も使うことができる。より具体的には炭素数8〜12の直鎖脂肪酸のトリグリセリドあるいはそのアルコールエステルが挙げられる。反応温度一般に酵素を用いたエステル交換反応は、20〜55℃の反応温度条件下で行う。本酵素反応においてはそれぞれのリパーゼが持つ至適温度や至適pH等の条件において行うことが望ましい。しかしながら、反応温度が50℃より高いと反応原料のアスタキサンチンの劣化や異性化が促進されるため好ましくない。逆に反応温度が20℃以下の場合、リパーゼ活性の低下と原料の脂質(脂肪酸やトリグリセリド等)の固化が起こるため好ましくない。これらを勘案して37〜50℃で酵素反応を行うことがより好ましい。本発明ではアスタキサンチンの酸化劣化反応を防ぐため、窒素やアルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことも好ましい。反応に用いるリパーゼ量本発明で用いるリパーゼの量は、アスタキサンチンに対して100u(=単位)/μmol〜30000u/μmol、好ましくは1000〜30000u/μmolであり、100u/μmolより少ないと、アスタキサンチン脂肪酸エステルを高収率で得られない。遊離型アスタキサンチンを原料とする場合は50000u/μmolより多く使用しても著しい効果の向上は期待できないので好ましくない。一方、混合型のアスタキサンチン脂肪酸エステルを原料に用いた場合、使う酵素の量に比例して合成量は上昇する。しかし、固定化担体への酵素の負荷量や酵素の使用量の経済性から考えると上記記載量が適切量と考えられる。反応におけるアスタキサンチン/脂肪酸比率本発明で用いるアスタキサンチンと脂肪酸類のモル比は使う脂肪酸類の脂肪酸基の数によって大別できる。すなわち、脂肪酸残基が一つの遊離型中鎖脂肪酸とアルコールエステル型中鎖脂肪酸の場合と、脂肪酸残基が3分子結合した中鎖トリグリセリドの場合に大別できる。前者の場合、遊離型換算のアスタキサンチンに対してモル比で30〜10,000倍であり、好ましくは30〜3,500倍である。後者の場合、遊離型換算のアスタキサンチンに対してモル比で10〜3,000倍であり、好ましくは30〜1,000倍である。アスタキサンチンが上記倍率より濃い場合、アスタキサンチンが十分溶けきれず、反応には適さない。上記倍率より薄い場合、著しい効果の向上が望めず、アスタキサンチン濃度の希薄化に伴ってエステル交換反応が進まない。反応時間本発明で行う酵素反応の反応時間は12時間以上が望ましい。反応時間が少ないと反応が充分に進まないので好ましくなく、酵素反応は比較的遅く、反応中のアスタキサンチンエステル類の分解反応も比較的遅いため、目的物の生成収率をあげるためには反応を長めにすることが望ましい。本発明ではアスタキサンチンの酸化劣化反応を防ぐため、窒素やアルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことも好ましくあげられる。反応に用いる有機溶媒と量本発明で行う酵素反応では反応時に有機溶媒を用いても差し支えない。反応時のリパーゼの安定性から無極性溶媒が好ましい。具体的にはn−ヘキサン、ベンゼン、四塩化炭素、アセトンなどがあげられる。これらの溶媒を用いることができるが、食品等への利用を考えた場合、毒性や安全性の面からn−ヘキサンがより好ましい。反応に用いるアスタキサンチンや脂肪酸エステル類(基質)の溶液の粘度が高いため、n−ヘキサン等の有機溶媒で基質溶液を希釈することで粘度を下げることができ、反応の効率化が望める。特に融点が高く、通常の反応温度では固体になるようなラウリン酸やラウリン酸のトリグリセリドを反応に用いる場合には有効である。本発明で用いる有機溶媒は反応する油脂(アスタキサンチンと脂肪酸類の合計)の1000倍量以下の量で使用することが望ましく、好ましくは200倍以下の量が望ましい。この量より多くしても、反応の促進は見られず、反応終了後のヘキサン除去により多くの労力を有し、得策でない。リパーゼ反応における水分添加量リパーゼ反応は可逆反応であり、水分が多いと生成したアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル類が加水分解されるため、このような合成反応やエステル交換反応においては水分量は極力制限して行うことが常識であった。しかし、上記のように、本発明者による鋭意検討の結果、水分を一定範囲内で積極的に添加することでエステル合成反応やエステル交換反応の進行が促進されることが判明した。添加する水分量は反応油脂類(アスタキサンチンと脂肪酸類)の0.5〜20%の割合が望ましい。より好ましくは2〜15%が望ましい。水分含量が20%を超えても反応は進むが生成されたエステル類の分解が進むため、アスタキサンチン中鎖エステルの生成収量が減少するので好ましくない。反応終了後の精製本発明の酵素反応液から目的とするアスタキサンチンに1ないし2分子の中鎖脂肪酸残基が共有結合したアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステル、アスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルを得る方法としては脱ガム、脱酸、水蒸気蒸留等の一般的な油脂の精製法や分子蒸留等の真空精密蒸留、さらにはシリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト的な精製方法、これらの組合せがある。これによりエステル転移の時に切り出された原料アスタキサンチンエステル体に結合していた長鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸トリグリセリドから切り出された遊離中鎖脂肪酸、過剰の反応基質の中鎖脂肪酸トリグリセリドもしくは遊離中鎖脂肪酸を取り除くことができる。天然物からの抽出によるアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルおよびアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルの製造原料としての天然物は、好ましくは甲殻類、特に好ましくはオキアミである。オキアミは市販のオキアミを使用することができる。抽出に用いる溶媒は、アスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルおよびアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルを抽出することができる溶媒であれば用いることができるが、好ましくはアセトンである。さらに、抽出工程では、有機溶媒に限らず、超臨界CO2を用いる方法も用いることができる。アスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルおよびアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステルの精製は、たとえばシリカカラムクロマトグラフィー、ODSカラムクロマトグラフィーにより行うことができる。酵素法によるアスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルおよびアスタキサンチン中鎖脂肪酸ジエステル含有組成物を含む食品食品原料としての使用本発明のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含む油脂は用途に関しては無限の可能性があり、この用途の一つとして食品原料ならびに添加物として使用することもできる。アスタキサンチンはカロテイド系色素の中でも最も赤色色調が高く、熱、光、pH等に対する安定性も比較的良いため、ファフィア色素(遊離型アスタキサンチン)やヘマトコッカス色素(長鎖脂肪酸エステル型アスタキサンチン)はこれまで着色料として使われている。さらに、アスタキサンチンは強力な抗酸化性を示すため、天然色素としてこれまでにない新しい機能性色素として注目されている。これら有用な機能を有するアスタキサンチンに中鎖脂肪酸を酵素的にエステル化することにより、消化吸収性に優れたアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂を作ることが出来た。このような、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルの赤色色調は従来から使われているファフィア色素やヘマトコッカス色素に含まれるアスタキサンチン類と同じである。このため、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂はファフィア色素やヘマトコッカス色素と同じように食品に添加することが可能である。抗酸化力に加え、消化吸収性に富む性質を有するアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂は従来から使われているファフィア色素等よりも食品で高機能が期待される。実際、ジュース等の飲料食品・リキュール等の酒類飲料・菓子類・ソーセージ等の水産練り製品・ドレッシング、ケチャップ等の調味料への添加が可能である。上記アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂は必要に応じて、乳化物の形で、あるいは粉末の形で使用することができる。アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂に以下で示す食品用乳化剤を添加して攪拌し、乳化物にすることができる。食品衛生法で認められている食品用乳化剤としては、脂肪酸モノグリセリド類、ポリグリセリン脂肪酸類、ソルビタン脂肪酸エステル類(スパン等)、ショ糖の脂肪酸エステル等の非イオン活性剤およびレシチン、酵素処理レシチン、アラビアガム、キラヤ抽出物、卵黄等の天然物がある。健康食品および/またはサプリメント原料としての使用本発明のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含む油脂は用途に関しては無限の可能性があり、健康食品および/またはサプリメントの原料ならびに添加物としても使用することもできる。アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含む油脂の主成分の母体構造はアスタキサンチンであり、上記の食品原料としての使用でも述べたように、機能性色素として注目されている。使用においては食品原料の場合と同様、乳化して添加してもよく、粉末化して添加してもかまわない。本発明においては、添加する健康食品および/またはサプリメントに応じて最適な食品用乳化剤を選択して最適量使用する。アスタキサンチン中鎖脂肪エステル含有油脂に以下で示す食品用乳化剤を添加して攪拌し、乳化物にすることができる。食品衛生法で認められている食品用乳化剤としては、脂肪酸モノグリセリド類、ポリグリセリン脂肪酸類、ソルビタン脂肪酸エステル類(スパン等)、ショ糖の脂肪酸エステル等の非イオン活性剤およびレシチン、酵素処理レシチン、アラビアガム、キラヤ抽出物、卵黄等の天然物がある。またカプセル化等に際しては、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含む油脂の皮膜剤、エマルジョンの安定化剤としてのタンパク質は大豆、トウモロコシなどの植物性蛋白、脱脂乳、卵白アルブミン、カゼイン、ホエー、ゼラチンなどの動物性蛋白などが用いることができる。同じく炭水化物はトウモロコシ、タピオカ、甘薯、馬鈴薯、などのデンプン、粉あめ、デキストリン、ショ糖、ブドウ糖、乳糖などである。この他にエマルジョンの安定化剤としてリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの塩類、さらにアラビアガム、ペクチンなどの天然ガム、アルギン酸ソーダなどの安定化剤を用いることもできる。酸化防止のためにはトコフェロールなどの抗酸化剤を使用することもできる。実施例以下、製造例および実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものではないことは言うまでもない。リパーゼ活性の測定オリーブ油乳液5ml(オリーブ油22.9gとポリビニールアルコール溶液75mlを乳化器にいれ、5〜10℃で乳化したもの)と0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)4mlとを50ml容共栓三角フラスコにとり、よく混合し37℃の恒温水槽に入れて、10分間予熱する。攪拌しながらこの溶液に酵素溶液1mlを加え、20分間反応する。反応の停止はアセトン・エタノール混液20ml(アセトンとエタノールを1:1(V/V)で混合)の添加で行う。フェノールフタレイン溶液を数滴加え、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して、リパーゼ反応で生成した遊離の脂肪酸量を求める。盲検として上記記載のオリーブ油乳液とリン酸緩衝液のみで反応させ、アセトン・エタノール混液を加えたのちに酵素溶液を加えたものを滴定する(対照液滴定値)。酵素力価は以下の数式で計算する。力価(単位/g)=(試料溶液滴定値−対照液滴定値)/(酵素溶液1ml中の酵素g)x2.5アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルの化学合成製造例1 アスタキサンチンオクタン酸ジエステルの化学合成乾燥塩化メチレン(20ml)中のアスタキサンチン(995.2mg、1.67mmol)および塩酸1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド(WSC・HCl)(1.28g、6.68mmol)の溶液に、アルゴン気流下室温でオクタン酸(0.73g、5.06mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(218.7mg、1.79mmol)を加えた。19時間後、反応混合物を酢酸エチル(200ml)に注下し、1M塩酸(100ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)および飽和食塩水(100ml)で順次洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した後、塩化メチレン−ヘキサン(1:1、V/V)10mlに溶解し、シリカゲル(175g)を用いてカラムクロマトグラフィーを行なった。酢酸エチル−ヘキサンによって溶出することにより、酢酸エチル−ヘキサン(1:2、V/V)よりアスタキサンチンオクタン酸ジエステルの暗赤色固形物(1.27g、90%)を得た。アスタキサンチンオクタン酸ジエステル1H−NMR:δ(TMS)0.88(t、6H、J=7Hz)、1.20−1.45(m、16H)、1.22(s、6H)、1.35(s、6H)、1.65−1.75(m、4H)、1.90(s、6H)、1.95−2.1(m、4H)、1.99(s、6H)、2.00(s、6H)、2.35−2.55(m、4H)、5.53(dd、2H、J=6Hz、14Hz)、6.15−6.7(m、14H)。製造例2 アスタキサンチンオクタン酸モノエステルの化学合成乾燥塩化メチレン(20ml)中のアスタキサンチン(976.2mg、1.64mmol)およびWSC・HCl(0.48g、2.50mmol)の溶液に、アルゴン気流下室温でオクタン酸(0.27g、1.87mmol)およびDMAP(107.5mg、0.88mmol)を加えた。18時間後、反応混合物を塩化メチレン(250ml)に注下し、1M塩酸(100ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)および飽和食塩水(100ml)で順次洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した後、塩化メチレン−ヘキサン(2:1、V/V)15mlに溶解し、シリカゲル(250g)を用いてカラムクロマトグラフィーを行なった。酢酸エチル−ヘキサンによって溶出することにより、酢酸エチル−ヘキサン(1:2、V/V)よりアスタキサンチンオクタン酸ジエステルの暗赤色固形物(304.2mg、22%)を、酢酸エチル−ヘキサン(1:1、V/V)よりアスタキサンチンオクタン酸モノエステルの暗赤色固形物(377.3mg、32%)を得た。アスタキサンチンオクタン酸モノエステル1H−NMR:δ(TMS)0.89(t、3H、J=7Hz)、1.20−1.45(m、8H)、1.21(s、3H)、1.22(s、3H)、1.32(s、3H)、1.35(s、3H)、1.65−1.75(m、2H)、1.81(dd、1H、J=13Hz、13Hz)、1.90(s、3H)、1.94(s、3H)、1.95−2.1(m、2H)、1.99(s、6H)、2.00(s、6H)、2.15(dd、1H、J=6Hz、13Hz)、2.35−2.55(m、2H)、3.67(d、1H、J=2Hz)、4.32(ddd、1H、J=2Hz、6Hz、13Hz)、5.53(dd、1H、J=6Hz、14Hz)、6.15−6.75(m、14H)。製造例3 アスタキサンチンデカン酸ジエステル、アスタキサンチンデカン酸モノエステル製造例2と同様にして、アスタキサンチン(20.6g、34.5mmol)、WSC・HCl(14.9g、77.7mmol)、デカン酸(9.8g、56.9mmol)およびDMAP(2.8g、22.9mmol)よりアスタキサンチンデカン酸ジエステルの暗赤色固形物(17.5g、56%)およびアスタキサンチンデカン酸モノエステルの暗赤色固形物(9.6g、37%)を得た。アスタキサンチンデカン酸ジエステル1H−NMR(CDCl3):δ(TMS)0.88(t、6H、J=7Hz)、1.20−1.45(m、24H)、1.22(s、6H)、1.35(s、6H)、1.65−1.75(m、4H)、1.90(s、6H)、1.95−2.1(m、4H)、1.99(s、6H)、2.00(s、6H)、2.35−2.55(m、4H)、5.53(dd、2H、J=6Hz、14Hz)、6.15−6.7(m、14H)。アスタキサンチンデカン酸モノエステル1H−NMR(CDCl3):δ(TMS)0.88(t、3H、J=7Hz)、1.20−1.45(m、12H)、1.21(s、3H)、1.22(s、3H)、1.32(s、3H)、1.35(s、3H)、1.65−1.75(m、2H)、1.81(dd、1H、J=13Hz、13Hz)、1.90(s、3H)、1.95(s、3H)、1.95−2.1(m、2H)、1.99(s、6H)、2.00(s、6H)、2.15(dd、1H、J=6Hz、13Hz)、2.35−2.55(m、2H)、3.69(bs、1H)、4.32(dd、1H、J=6Hz、14Hz)、5.53(dd、1H、J=6Hz、14Hz)、6.15−6.75(m、14H)。アスタキサンチン長鎖脂肪酸エステルの化学合成製造例4 アスタキサンチンパルミチン酸ジエステル製造例1と同様にして、アスタキサンチン(348.3mg、0.584mmol)、WSC・HCl(0.46g、2.40mmol)、パルミチン酸(0.46g、1.79mmol)およびDMAP(57.0mg、0.467mmol)よりアスタキサンチンパルミチン酸ジエステルの暗赤色固形物(582.9mg、93%)を得た。アスタキサンチンパルミチン酸ジエステル1H−NMR:δ(TMS)0.89(t、6H、J=7Hz)、1.20−1.45(m、48H)、1.23(s、6H)、1.35(s、6H)、1.65−1.75(m、4H)、1.91(s、6H)、1.95−2.10(m、4H)、1.99(s、6H)、2.00(s、6H)、2.35−2.55(m、4H)、5.54(dd、2H、J=6Hz、14Hz)、6.15−6.7(m、14H)。製造例5 アスタキサンチンオレイン酸ジエステル製造例1と同様にして、アスタキサンチン(376.1mg、0.630mmol)、WSC・HCl(0.49g、2.56mmol)、オレイン酸(0.53g、1.89mmol)およびDMAP(58.2mg、0.476mmol)よりアスタキサンチンオレイン酸ジエステルの暗赤色油状物(615.6mg、87%)を得た。アスタキサンチンオレイン酸ジエステル1H−NMR:δ(TMS)0.88(t、6H、J=7Hz)、1.15−1.45(m、40H)、1.23(s、6H)、1.35(s、6H)、1.65−1.80(m、4H)、1.90(s、6H)、1.95−2.15(m、12H)、1.99(s、6H)、2.00(s、6H)、2.35−2.55(m、4H)、5.30−5.45(m、4H)、5.54(dd、2H、J=6Hz、14Hz)、6.15−6.7(m、14H)。リパーゼの固定化酵母を起源とするリパーゼが数種市販されており、その一例として名糖産業(株)から得ることができるCandida属由来のリパーゼ:Lipase OF(販売名)のイオン交換樹脂等への固定化例を以下に示す。『イオン交換樹脂への固定化(ダイレクト法)』イオン交換樹脂担体(Dowex MARATHON WBA:ダウケミカル)100g(湿重量)を、Candida rugosaリパーゼ水溶液(Lipase OF原末、12.5%:名糖産業(株))80ml(5,760,000単位)に懸濁し、減圧下で乾燥させて固定化酵素(71.0g)を得た。『イオン交換樹脂への固定化(透析法)』16g(5,760,000単位)のCandida rugosaリパーゼ(粉末、名糖産業(株)、販売名:Lipase OF)を80mlの蒸留水に溶かし、一夜5Lの蒸留水で透析した。透析終了後、不溶物を遠心分離機によって除去し、リパーゼ溶液を得た。得られたリパーゼ溶液に100g(湿重量)のイオン交換樹脂担体(Dowex MARATHON WBA:ダウケミカル)を懸濁し、減圧下で乾燥させ固定化酵素(62.8g)を得た。『イオン交換樹脂への固定化(カラム法)』上記記載より効率的にリパーゼを固定化するために以下の固定化方法で固定化酵素を得た。32g(11,520,000単位)のCandida rugosaリパーゼ(粉末、名糖産業(株)、販売名:Lipase OF)を160mlの蒸留水に溶かし、一夜10Lの蒸留水で透析した。透析終了後、不溶物を遠心分離機によって除去し、リパーゼ溶液を得た。100g(湿重量)のイオン交換樹脂担体(Dowex MARATHON WBA:ダウケミカル)をカラムにつめ、リパーゼ溶液を1ml/minの流速で送液してリパーゼをイオン交換樹脂担体に吸着させた。この吸着担体を減圧下で乾燥させ固定化酵素(66.7g)を得た。『疎水性吸着樹脂・吸着樹脂・ろ過助剤への固定化』(phenyl)疎水性吸着樹脂担体(Phenyl Toyopearl 650S:東ソー(株))100mlを、Candida rugosaリパーゼの透析水溶液(Lipase OF原末、12.5%:名糖産業(株))80ml(5,760,000単位)に懸濁し、減圧下で乾燥させて固定化酵素(24.9g)を得た。(HP20)芳香族系吸着樹脂担体(ダイヤイオンHP20:三菱化学(株))100g(湿重量)を、Candida rugosaリパーゼ水溶液(Lipase OF原末、12.5%:名糖産業(株))80ml(5,760,000単位)に懸濁し、減圧下で乾燥させて固定化酵素(60.3g)を得た。(HP1MG)メタクリル系吸着樹脂担体(ダイヤイオンHP1MG:三菱化学(株))25g(湿重量)を、Candida rugosaリパーゼ水溶液(Lipase OF原末、12.5%:名糖産業(株))80ml(5,760,000単位)に懸濁し、減圧下で乾燥させて固定化酵素(13.1g)を得た。(HPA25)ハイポーラス型芳香族系吸着性イオン交換樹脂担体(ダイヤイオンHPA25:三菱化学(株))25g(湿重量)を、Candida rugosaリパーゼ水溶液(Lipase OF原末、12.5%:名糖産業(株))80ml(5,760,000単位)に懸濁し、減圧下で乾燥させて固定化酵素(12.3.g)を得た。(ろ過助剤:セライト)セライト(ハイフロスーパーセル:ナカライテスク(株))43gを、Candida rugosaリパーゼ透析水溶液(Lipase OF原末、12.5%:名糖産業(株))80ml(5,760,000単位)に懸濁し、減圧下で乾燥させて固定化酵素(45.5g)を得た。『微生物由来Lipaseの固定化』酵母以外を起源とするLipaseが多数存在し、その一例としてAlcaligenes属細菌由来のリパーゼは名糖産業(株)から市販され使用することができる。この固定化例も以下に示す。16g(1,440,000単位)のAlcaligenesのリパーゼ(粉末、名糖産業(株)、販売名:Lipase PL)を80mlの蒸留水に溶かし、一夜5Lの蒸留水で透析した。透析終了後、不溶物を遠心分離機によって除去し、リパーゼ溶液を得た。得られたリパーゼ溶液に100g(湿重量)のイオン交換樹脂担体(Dowex MARATHON WBA:ダウケミカル)を懸濁し、減圧下で乾燥させ固定化酵素(64.0g)を得た。酵素反応の実施例実施例1遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及び遊離脂肪酸としてオクタン酸300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼ80mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase OF)を加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン94.0%、モノエステル6.0%、ジエステルは1%以下であった。Sigma社製の遊離アスタキサンチンの代わりに、ファフィア酵母から抽出した遊離型アスタキサンチンもほぼ同様の結果を与えた、その場合の組成比はアスタキサンチン93.5%、モノエステル6.5%、ジエステルは1%以下であった。実施例2遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼ120mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase OF)を加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン84.9%、モノエステル13.6%、ジエステルは1.5%であった。実施例3製造例5に記載したアスタキサンチンオレイン酸ジエステル2mg及び遊離脂肪酸としてオクタン酸300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼ80mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase OF)を加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン61.1%、モノエステル8.2%、ジエステルは1%以下であった。実施例4製造例5記載したアスタキサンチンオレイン酸ジエステル2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼ80mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase OF)を加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン73.4%、モノエステル15.3%、ジエステルは1%以下であり、変換されずに残ったアスタキサンチンオレイン酸ジエステルは7.9%であった。残ったアスタキサンチンオレイン酸ジエステルが酵素反応的に完全になくなるかを確認するため、本反応を一週間行い、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン72.8%、モノエステル27.2%、ジエステルは1%以下で、原料のアスタキサンチンオレイン酸ジエステルは検出できなかった。実施例5天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及び遊離脂肪酸としてオクタン酸276mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼ270mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase OF)を加え、水22.5μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン42.6%、モノエステル10.5%、ジエステルは1%以下であった。実施例6天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン276mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼ270mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase OF)を加え、水22.5μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン55.9%、モノエステル25.0%、ジエステルは1%以下であった。実施例7遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及び遊離脂肪酸としてオクタン酸300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにリパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgを加え、水22.5μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で振とう(170rpm)しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン95.8%、モノエステル4.2%、ジエステルは1%以下であった。実施例8遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここに水30μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で振とう(170rpm)しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン69.6%、モノエステル21.9%、ジエステルは2.6%であった。実施例9天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及び遊離脂肪酸としてオクタン酸276mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにリパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgを加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。4日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン23.6%、モノエステル2.0%、ジエステルは1%以下であった。実施例10天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン276mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにリパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgを加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。4日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン64.0%、モノエステル12.2%、ジエステルは1%以下であった。実施例11天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン276mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにAlcaligenes属由来のリパーゼ80mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase PL)を加え、水15μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン79.3%、モノエステル4.0%、ジエステルは1%以下であった。実施例12天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン276mgを褐色ガラス瓶にとった。ここに水15μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼPL 300mgを加え、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン23.9%、モノエステル1%、ジエステルは1%以下であった。実施例13遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼを固定化した固定化酵素:Novozym435 300mg(ノボザイムズジャパン(株)製、)を加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの溶液をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン99.0%、モノエステル1.0%、ジエステルは1%以下であった。実施例14遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにリパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgを加え、水30μLと12mlのn−ヘキサンを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、固定化酵素をデカントで除去し、上清のヘキサンを除去し、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン64.1%、モノエステル23.9%、ジエステルは2.3%であった。実施例15天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン276mgを褐色ガラス瓶にとった。ここに12mlのn−ヘキサンを添加し、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgと水30μLとを加え、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、固定化酵素をデカントで除去し、上清のヘキサンを除去し、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン15.2%、モノエステル1%であった。実施例16遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及び遊離脂肪酸としてラウリン酸(C12:0)300mgを褐色ガラス瓶にとった。これまでの実施例ではこの段階ではアスタキサンチンと脂肪酸は溶液状態になっている。しかし、ラウリン酸自体が反応温度以下では固体のため、反応原料は粉の状態である。ここに12mlのn−ヘキサンを添加して初めて溶液状態になり、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgと水30μLとを加え、反応できる状態になった。反応は45℃で攪拌しながら行った。3日後にこの反応物をとり、固定化酵素をデカントで除去し、上清のヘキサンを除去し、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン93.6%、モノエステル6.4%、ジエステルは1%以下であった。実施例172種類の中鎖脂肪酸トリグリセリド(C8:0:トリカプリリンとC10:0:トリカプリン)の混合物が市販され、反応原料に用いることができる。そこでこの混合中鎖トリグリセリドを試薬的に1:1の割合で調製し、遊離のアスタキサンチンから2種類の中鎖脂肪酸エステル体の合成を行った。すなわち、遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリカプリリン300mgとトリカプリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにCandida属由来のリパーゼ80mg(名糖産業(株)製、販売名:Lipase OF)を加え、水60μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン93.1%、C8モノエステル3.9%、C10モノエステル3.0%、ジエステルは1%以下であった。実施例182種類の中鎖脂肪酸トリグリセリド(C8:0:トリカプリリンとC10:0:トリカプリン)の混合物が市販され、反応原料に用いることができる。そこでこの混合中鎖トリグリセリドを試薬的に1:1の割合で調製し、遊離のアスタキサンチンから2種類の中鎖脂肪酸エステル体の合成を行った。すなわち、遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリカプリリン300mgとトリカプリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここにリパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgを加え、水30μLを添加し、よく攪拌した後、45℃で振とうしながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン86.7%、C8モノエステル7.2%、C10モノエステル6.1%、ジエステルは1%以下であった。実施例192種類の中鎖脂肪酸トリグリセリド(C8:0:トリカプリリンとC10:0:トリカプリン)の混合物が市販され、反応原料に用いることができる。そこでこの混合中鎖トリグリセリドを試薬的に1:1の割合で調製し、ヘキサン中で遊離のアスタキサンチンから2種類の中鎖脂肪酸エステル体の合成を行った。すなわち、遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリカプリリン300mgとトリカプリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここに12mlのn−ヘキサンを添加し、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製した固定化リパーゼ300mgと水30μLとを加え、よく攪拌した後、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン81.4%、C8モノエステル9.5%、C10モノエステル9.1%、ジエステルは1%以下であった。実施例20天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)40mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン1.5mlを褐色ガラス瓶にとった。ここに水90μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製したPhenyl Toyopearlの固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で攪拌しながら反応させた。4日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン61.6%、モノエステル14.1%、ジエステルは2.8%であった。実施例21遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン300mgを褐色ガラス瓶にとった。ここに水30μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製したHP20固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で振とう(170rpm)しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン96.1%、モノエステル3.9%であった。実施例22天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)40mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン1.5mlを褐色ガラス瓶にとった。ここに水90μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製したハイフロスーパーセルの固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で攪拌しながら反応させた。4日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン28.6%、モノエステル1.8%、ジエステルは1%以下であった。実施例23天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン1.3mlを褐色ガラス瓶にとった。ここに水90μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製したHPA25樹脂固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン39.3%、モノエステル2.9%、ジエステルは1%以下であった。実施例24遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン1.3gを褐色ガラス瓶にとった。ここに水90μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製したHPA25樹脂固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で振とう(170rpm)しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン79.8%、モノエステル19.2%、ジエステルは1.0%であった。実施例25天然から抽出したアスタキサンチンエステル類の混合物(イタノ社製、販売名:Astax9000H)24mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン1.3mlを褐色ガラス瓶にとった。ここに水90μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製したHP1MG樹脂固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で攪拌しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン54.9%、モノエステル5.4%、ジエステルは1%以下であった。実施例26遊離アスタキサンチン(Sigma社製)2mg及びトリグリセリド型の脂肪酸としてトリカプリリン1.3gを褐色ガラス瓶にとった。ここに水90μLを添加し、よく攪拌した後、リパーゼの固定化例で記載した方法で調製したHP1MG樹脂固定化リパーゼ300mgを加え、45℃で振とう(170rpm)しながら反応させた。3日後にこの反応物をとり、HPLCによってアスタキサンチンの組成比を分析した。それらの組成比はアスタキサンチン79.5%、モノエステル18.7%、ジエステルは1.8%であった。以上の実施例の結果を表2〜6にまとめて示した。これら結果から本発明のリパーゼを用いたエステル交換反応の方法はアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを効果的に合成できることがわかる。実施例27 アスタキサンチンエステルの天然物からの抽出、分画および精製乳鉢中で乳棒を用いて破砕した市販のオキアミ(356.3g)を5倍量のアセトンで3回抽出し減圧濃縮を行った後、飽和食塩水と酢酸エチルで液−液分配を3回行うことにより酢酸エチル層から粗抽出物(52.13g)を得た。このオキアミ抽出物について以下の順番でカラムクロマトグラフィーを行った。1)1stシリカカラムクロマトグラフィーシリカゲル(メルク社製Silica gel 60、500g)を用いてカラムクロマトグラフィーを行った。溶出溶媒は各濃度のヘキサン:アセトン(90:10,85:15,80:20,75:25,70:30,60:40,50:50,40:60,30:70,20:80,10:90,0:100)の順にステップワイズ溶出を行った。同一溶媒系による溶出はカラム容積の3倍量の溶出液を順次添加することにより行った。各溶出液を減圧濃縮した後、アスタキサンチンモノエステル画分(116.32mg)を得た。2)ODSカラムクロマトグラフィーODSゲル(センシュー科学製ODS−SS−1020T、50g)を用いてカラムクロマトグラフィーを行った。溶出溶媒は100%メタノールを用いて、カラムから溶出される暗赤色の画分を分取し減圧濃縮した後、アスタキサンチンモノエステル画分(8.84mg)を得た。3)2ndシリカカラムクロマトグラフィーシリカゲル(メルク社製Silica gel 60、30g)を用いてカラムクロマトグラフィーを行った。溶出溶媒はジクロロメタン:酢酸エチル(8:2)を用いて、カラムから溶出される暗赤色の画分を分取し減圧濃縮した後、アスタキサンチンモノエステル画分(2.87mg)を得た。4)3rdシリカカラムクロマトグラフィーシリカゲル(メルク社製Silica gel 60、30g)を用いてカラムクロマトグラフィーを行った。溶出溶媒はヘキサン:アセトン(7:3)を用いて、カラムから溶出される暗赤色の画分を分取し減圧濃縮した後、高純度のアスタキサンチンモノエステル画分(0.48mg)を得た。実施例28 アスタキサンチンエステル画分の分析実施例27で調製したオキアミ抽出液からのアスタキサンチンエステル画分を1mlのメタノールに溶解させ、80℃で攪拌しながら1mol/lのナトリウムメトキシド0.5mlを少量ずつ加えた。反応物中のアルカリを除去するため酢酸エチルと水で液−液分配を行い、酢酸エチル層を減圧濃縮しGC−MS(ヒューレットパッカード製G1800A)で脂肪酸分析した。また、アスタキサンチンモノエステル画分に遊離脂肪酸が混在していないか確認するためメチルエステル化しないでGC−MS分析を行った。『測定メソッドデータ』Injection温度;200℃、Detection温度;300℃、初期カラム温度;40℃、上昇温度;2.5℃/分、カラムサイズ;30.0m x 0.25mm、ガス;ヘリウムガス、ガス流量;1.0ml/分、マスレンジ;45:200m/z、溶媒待ち時間;5分オクタン酸メチルエステル標品のGC−MSデータを図3に、オキアミ由来のアスタキサンチンモノエステルサンプルのGC−MSデータを図4に示す。これらの図が示すように完全に一致した。なお、標品もサンプルも親イオンピーク(m/z158)は出ないが、特異的なフラグメンテーション・パターン(m/z127)が観察され、同時に脂肪酸メチルエステル化物に由来するm/z55,m/z59,m/z87も観察された。また、メチルエステル化していないサンプルも同様に分析した結果、相当するピークは認められず、本サンプル中には遊離オクタン酸およびオクタン酸メチルエステルが存在しないことを確認した。以上の結果から、オキアミ中にアスタキサンチンオクタン酸エステルが存在することを確認した。化粧品利用の実施例以下に示す方法で酵素反応後、精製操作を加え得られたアスタキサンチンオクタン酸モノエステルを1%含有する組成物を用いて口紅を製作した。次に示す油性基剤を混合し加熱融解した後、あらかじめヒマシ油(2.1g)に顔料(50mg)とアスタキサンチンオクタン酸モノエステルを1%含有する組成物(150mg)とをよく混合し、溶解分散したものを加え攪拌し、香料(150mg)と酸化防止剤(50mg)を加え、さらによく攪拌混合し均等にした。この液を型に流し込み急止剤(50mg)を加え、さらによく攪拌混合し均等にした。この液を型に流し込み急冷した。冷却して得られた口紅を容器に入れ、小さなバーナーで表面を短時間加熱して光沢を生じさせ、口紅とした。油性基剤の混合比率ミツロウ 1.0gセレシン 2.4gカルナウバロウ 0.8gラノリン 1.0g流動パラフィン 2.05gエオシン酸 0.25g食品利用の実施例健康食品および/またはサプリメント用ソフトカプセル以下に示す方法で酵素反応後、精製操作を加え得られたアスタキサンチンオクタン酸モノエステルを10%含有する組成物を用いてソフトカプセルを製作した。次に示す割合で基剤を調合し、アスタキサンチンオクタン酸モノエステルを10%含有する組成物(30mg)を加えて、健康食品および/またはサプリメントに使われるようなソフトカプセルを調製した。調合比率(一粒あたりの量)基剤(植物性油脂):130mg乳化剤(ミツロウ):30mg被包材(ゼラチン/グリセリン=100/35):150mg食品原料の実施例食品、化粧料や飼料用等に用いるため、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂を食品原料として調製した例を以下に示す。酵素反応の実施例14で記載した方法をさらにスケールアップし、原料の遊離型アスタキサンチン2gと中鎖脂肪酸トリグリセリド300gとを反応し、脱ヘキサン後に約300gの反応で生成した油脂を得た。130℃、0.2mmHgで分子蒸留することによって反応中に遊離化したカプリル酸を除去し、10gのアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂を得た。これを水蒸気蒸留による脱臭操作を行い、中鎖脂肪酸トリグリセリドを10g加えて、3%のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含有する油脂を得た。なお総アスタキサンチンとしては10%の濃度である。これを各種用途向けの食品原料(アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル含有油脂)とした。アスタキサンチンの消化吸収性の改善ヘマトコッカス属緑藻類から抽出され市販されているアスタキサンチン(イタノ、販売名:Astax9000H)と、中鎖脂肪酸でそれぞれモノおよびジエステル化されたアスタキサンチン(Asta−C8−monoesterおよびAsta−C8−diester)を用いて、ラットでの吸収性について検討した。実験的にはこれらアスタキサンチンを遊離型アスタキサンチン換算で100mg/kgの割合になるようにオリーブオイルで希釈してラット(Wister系)に経口投与した。投与3,5,7,10時間後に各々ラットの血中(血漿中)、肝臓中に存在するアスタキサンチンの含量をHPLCを用いて測定した。図1に血漿中、図2に肝臓中のアスタキサンチンの取り込み量を示した。図1、図2で示されるようにヘマトコッカス属緑藻類抽出アスタキサンチンに比べて、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステル類ははるかに良好な消化吸収性を示した。中でもアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルのモノエステル体が最もよく吸収された。さらに、投与したエステル体アスタキサンチンは遊離型アスタキサンチンとして検出された。従って、アスタキサンチン中鎖脂肪酸モノエステルは消化吸収性に優れたアスタキサンチンであることが見出された。産業上の利用可能性本発明のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルの製造方法は、リパーゼを用いるため温和な条件下で反応することができ、原料のアスタキサンチンの分解や異性化などを引き起こすことなく高い収率でアスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステルを製造することができる。また、天然物から抽出し、製造することができる。さらに本発明のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含む組成物を食品等に付加することにより消化吸収性、組織移行性の優れたアスタキサンチンを添加した食品、健康食品および/またはサプリメントおよび化粧品を提供することができる。【図面の簡単な説明】図1は、ヘマトコッカス属緑藻類から抽出され市販されているアスタキサンチン(イタノ、販売名:Astax9000H)と、中鎖脂肪酸でそれぞれモノおよびジエステル化されたアスタキサンチン(Asta−C8−monoesterおよびAsta−C8−diester)を用いて、これらを遊離型アスタキサンチン換算で100mg/kgの割合になるようにオリーブオイルで希釈してラットに経口投与し、投与3,5,7,10時間後に各々ラットの血中(血漿中)に存在するアスタキサンチンの含量をHPLCを用いて測定した結果を示すグラフである。図2は、図1と同じ実験で、肝臓中に存在するアスタキサンチンの含量をHPLCを用いて測定した結果を示すグラフである。図3は、オクタン酸メチルエステル標品のGC−MS結果を示す。図4は、オキアミ精製サンプルのGC−MS結果を示す。 リパーゼを用いて製造される、アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルおよびそれらを含有する組成物。 中鎖脂肪酸エステルが、中鎖脂肪酸モノエステルまたは中鎖脂肪酸ジエステルである請求項1記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルおよびそれらを含有する組成物。 中鎖脂肪酸が炭素数8から12の間の脂肪酸である請求項2記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルおよびそれらを含有する組成物。 炭素数が偶数の中鎖脂肪酸である、請求項3記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルおよびそれらを含有する組成物。 炭素数が8の中鎖脂肪酸である請求項4記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルおよびそれらを含有する組成物。 アスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを少なくとも0.1%以上含有する請求項1ないし請求項5記載の組成物。 アスタキサンチンオクタン酸モノエステルまたはアスタキサンチンオクタン酸ジエステル、またはそれらの少なくとも一つを含有する組成物。 リパーゼを用いて、請求項1ないし請求項6記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルおよびそれらを含有する組成物を製造する方法。 遊離型アスタキサンチン、中鎖脂肪酸エステルとは異なるエステル型アスタキサンチン、および中鎖脂肪酸エステルとは異なるエステル型アスタキサンチンの混合物から選ばれるひとつまたはそれ以上のアスタキサンチン原料と、遊離型中鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸モノグリセリド、中鎖脂肪酸ジグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、および中鎖脂肪酸低級アルコールエステルから選ばれる、ひとつまたはそれ以上の中鎖脂肪酸原料を用いて、エステル化反応および/またはエステル交換反応を行うことによる請求項8記載の方法。 リパーゼが、Candida属の酵母由来のリパーゼ、Chromobacterium属の微生物由来のリパーゼ、Alcaligenes属の微生物由来のリパーゼ、動物の膵臓由来のリパーゼから選ばれる1種以上のリパーゼである、請求項8または請求項9記載の方法。 リパーゼがCandida属の酵母由来のリパーゼである請求項10記載の方法。 アスタキサンチン原料が、遊離型アスタキサンチンおよび/または異なる種類のエステル型アスタキサンチン混合物であり、中鎖脂肪酸原料が、中鎖脂肪酸トリグリセリドである、請求項9ないし請求項11記載の方法。 水分を添加することを特徴とする請求項8ないし請求項12記載の方法。 水分添加量が原料油に対し0.5w/wから20w/w%である請求項13記載の方法。 請求項1ないし請求項6記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含有する組成物、または請求項7記載の組成物を含有する組成物を特別な栄養需要に応じて配合してなる食品組成物またはその食品。 請求項1ないし請求項6記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含有する組成物、または請求項7記載の組成物を含有する組成物を含む食品添加物。 請求項1ないし請求項6記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含有する組成物、または請求項7記載の組成物を含有する組成物を含む化粧料。 請求項1ないし請求項6記載のアスタキサンチン中鎖脂肪酸エステルを含有する組成物、または請求項7記載の組成物を含有する組成物を含む動物用飼料。 請求項7記載のアスタキサンチンオクタン酸モノエステルまたはアスタキサンチンオクタン酸ジエステル、またはそれらの少なくとも一つを含有する組成物の製造方法であって、(a)甲殼類から溶媒もしくは超臨界CO2を用いて前記化合物を抽出する工程、(b)工程(a)により得られた抽出液から、前記化合物を精製する工程、を含む、前記方法。 甲殼類がオキアミである、請求項19記載の方法。 食品、化粧品、医薬品の分野で応用が期待でき、しかも長鎖脂肪酸エステル型アスタキサンチンに比べて、消化吸収性、組織移行性が高いアスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステルを提供する。 従来の方法では、リパーゼの触媒作用を利用して、アスタキサンチンの中鎖脂肪酸エステルを合成しようとしても、エステルが形成されなかったが、本発明では反応系内に所定量の水を添加して、アスタキサンチンまたはその長鎖脂肪酸エステルと、中鎖脂肪酸またはそのトリグリセリドまたは適当なエステルを反応させることにより、アスタキサンチン中鎖脂肪酸のモノエステルおよび/またはジエステルを含む組成物を製造する。さらに必要に応じてこれらのモノエステルおよび/またはジエステルを単離する。本発明の組成物を含有する食品や化粧品も提供する。