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タイトル:特許公報(B2)_間葉系幹細胞を神経細胞に分化させる方法
出願番号:2002583623
年次:2007
IPC分類:C12N 5/06


特許情報キャッシュ

キム、ヒュン−ソー ヨーン、ヒー−ホーン JP 3976190 特許公報(B2) 20070629 2002583623 20020419 間葉系幹細胞を神経細胞に分化させる方法 キム、ヒュン・ソー 503352028 鈴江 武彦 100058479 河野 哲 100091351 中村 誠 100088683 蔵田 昌俊 100108855 峰 隆司 100075672 福原 淑弘 100109830 村松 貞男 100084618 橋本 良郎 100092196 エフシービー−ファーミセル・カンパニー、リミテッド 507148984 FCB−Pharmicell Co., Ltd. 鈴江 武彦 100058479 河野 哲 100091351 中村 誠 100088683 蔵田 昌俊 100108855 峰 隆司 100075672 福原 淑弘 100109830 白根 俊郎 100095441 村松 貞男 100084618 野河 信久 100103034 砂川 克 100140176 橋本 良郎 100092196 風間 鉄也 100100952 キム、ヒュン−ソー ヨーン、ヒー−ホーン KR 2001/21064 20010419 20070912 C12N 5/06 20060101AFI20070823BHJP JPC12N5/00 E C12N 5/06 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) PubMed JSTPlus(JDream2) 国際公開第99/047163(WO,A1) 医学のあゆみ, (2001.2), 196, [5], p.367-372 現代医療, (2000), 32, [9], p.2281-2287 Stem Cells, (2000), 18, [4], p.295-300 中枢神経系の損傷修復促進のための開発的研究研究報告書 平成9-11年度,(2000), p.39-42 Nature Neurosci., (1999), 2, [3], p.213-217 Exp. Neurol., (2000), 164,p.247-256 J. Neurosci. Res., (2000), 61, p.364-370 Science, (2000), 290, p.1175-1179 Science, (2000), 290, p.1779-1782 Biotherapy, (2001.3), 15, [2], p.119-125 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1993), 90, p.3602-3606 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2000), 97, [21], p.11307-11312 実験医学, (2001.2), 19, [3], p.350-356 月刊 組織培養工学, (2001.3), 27, [3], p.124-129 厚生省精神・神経疾患研究委託費による研究報告集 平成9年度 2年度班・初年度班,p.565 7 KR2002000718 20020419 WO2002086108 20021031 2004527250 20040909 20 20031020 柴原 直司 本発明は、骨髄中の間葉系幹細胞を上皮細胞成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および肝細胞成長因子(HGF)を含む培地で培養することにより神経細胞に分化させる方法、および前記神経細胞を有効成分として含む神経疾患治療用組成物に関する。 幹細胞(stem cell)は、培養液中で無限増殖が可能であり、特定の分化刺激によって組織を構成する細胞に分化し得る。幹細胞は分化可能性によって胚性幹細胞(ES cells)と組織特異的幹細胞に分類される。ES細胞は、胞胚期(blastocyst stage)胚芽の内部細胞塊(inner cell mass; ICM)から分離され、有機体で発見されるほとんどすべてのタイプの細胞に分化し得る多能性(pluripotent)細胞である。 反面、組織特異的幹細胞は、肺発生中の臓器形成段階に現れ、臓器−特異的であり、特定の臓器を構成する細胞のみに分化する多機能(multipotent)細胞である。このような組織−特異的幹細胞は、大部分の成人の臓器に残り、正常、或いは病理的に発生する細胞の損失を持続的に補充する重要な役割を果たす。代表的な組織−特異的幹細胞としては、骨髄(bone marrow)に存在する造血幹細胞(hematopoietic stem cell)と間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)がある。造血幹細胞は赤血球、白血球などの各種の血球細胞に分化し、間葉系幹細胞は骨芽細胞(osteoblast)、軟骨芽細胞(chondroblast)、脂肪細胞(adipocyte)および筋芽細胞(myoblast)などに分化する。 最近、ヒト胚性幹細胞の分離が成功して以来、幹細胞の臨床的適用に関心が高まっている。幹細胞の適用分野として最も注目されていることは細胞代替療法(cell replacement therapy)のための完璧な細胞供給源としての利用である。難治性疾患、たとえば、パーキンソン病、アルツハイマー病のような神経退行性疾患、脊椎の損傷による四肢麻痺、白血病、脳卒中、小児糖尿病、心筋梗塞、肝硬化などの疾患は組織を構成する細胞の破壊および永久的機能障害によってもたらされるが、このような細胞の消失を外部から補充してくれる細胞代替療法が効果的な治療法として提示されている。 しかし、細胞代替療法の明白な利点にもかかわらず、それの臨床的適用には多くの限界がある。具体的に、供給者の組織から分離された、完全に分化した細胞を患者に移植する伝統的な方法は患者に供給する十分な量の細胞を得ることが難しいという問題がある。このような問題を解決するために、分離された胚性幹細胞から分化した特定の組織の細胞、または分離されて増殖された組織−特異的幹細胞から分化した細胞を細胞代替療法に使用できる。 これまで、マウスの胚性幹細胞が培養皿上で造血細胞、心筋細胞、インスリン−分泌膵臓細胞および神経細胞に分化し得ることが証明されている。また、いくつかの報告は幹細胞から分化した細胞の移植が細胞の損失によってもたらされた疾病の治療に効果的であることを証明している。たとえば、胚性幹細胞から分化した髄鞘(myelin)−乏突起膠細胞(oligodendrocyte)をマウスに移植した場合、マウスにおいて髄鞘生成が増加した(非特許文献1)。胚性幹細胞から分化したインスリン分泌細胞を糖尿病モデルマウスに移植して血糖の水準を調節した(非特許文献2)。また、胚性幹細胞から分化した神経細胞を、脊椎に損傷を受けたマウスに移植して脊椎損傷による運動障害を著しく改善した(非特許文献3)。 しかし、ヒト胚性幹細胞は最近になって成功的に分離され、ヒト胚性幹細胞が培養皿上で神経細胞外の特定の細胞に分化したことは報告されていないので、細胞代替療法において胚性幹細胞から分化した特定の組織細胞を臨床的に使用することはまだ可能性の水準にとどまっているだけである。 また、胚性幹細胞から標的細胞に分化する効率が低いので、移植中に標的細胞以外の他の細胞によってもたらされる副作用の危険性がある。したがって、胚性幹細胞から分化した細胞のより安全な臨床適用のためには精巧な分化方法を開発する必要がある。 なお、細胞代替療法に組織特異的な幹細胞を用いる場合は、長期間培養時、細胞増殖能力が減少するか、所望しない細胞への分化が起こるという問題がある。さらに、パーキンソン病のような神経退行性疾患(neurodegenerative disease)の治療のためには神経細胞の移植が必要である。神経幹細胞(neural stem cell)を患者から直接得ることが難しいため、神経細胞は主に死んだ胎児の脳組織から分離した神経幹細胞を培養し、神経細胞に分化させることによって得る。しかし、胎児の脳を用いることは倫理的な問題をもたらすだけでなく、供給が制限的であり、免疫拒絶反応を引き起す可能性がある。また、大部分の神経幹細胞はニューロンよりも星状膠細胞(astrocytes)に分化しやすい。 したがって、患者自身の骨髄にある間葉系幹細胞を細胞代替療法に使用する神経細胞に分化させることが可能であれば、神経細胞が容易に供給でき、治療過程における免疫拒絶反応のような問題も起こらないであろう。 これまで、1種類の幹細胞は特定の系統に属する組織の細胞のみに分化するとされてきた。間葉系幹細胞の場合、血小板由来成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、転換成長因子(TGF−β)および上皮細胞成長因子(EGF)のような様々な成長因子の存在下でインビトロ(in vitro)群集を形成し(非特許文献4)、初期付着細胞の約1/3程度が多分化能力を有しているため、骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞のような結合組織細胞に分化したと報告されている(非特許文献6)。また、フェラーリ(Ferrari G.)らは、骨髄が新しい筋肉を形成する筋形成前駆細胞(myogenic precursor cell)の源泉であると報告した(非特許文献7)。 最近の研究は、間葉系幹細胞が神経系統の細胞にも分化し得ることを報告した。たとえば、サンチェス−ラモス(Sanchez-Ramos)らは、レチノイン酸(retinoic acid)と脳−由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor, BDNF)の存在下で培養したとき、骨髄間葉系幹細胞が神経細胞および星状膠細胞に分化することを報告した(非特許文献8)。デールス・ウッドバリー(Dale Woodbury)らは、β−メルカプトエタノールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)のような抗酸化物質の存在下で骨髄間葉系幹細胞が神経細胞に分化したことを報告した(非特許文献9)。しかし、DMSOのような強力な分化誘導剤を用いることは臨床への適用において問題を引き起す。 本発明者らは、非常に安全で、骨髄中の幹細胞を神経細胞に分化させる物質を発見するために鋭意努力し、HGFが骨髄間葉系幹細胞の神経細胞への分化を促進するということと、HGFとともにEGFおよびbFGFを培養培地に添加する場合、幹細胞の神経細胞への分化および生成した神経細胞の増殖が著しく増進するということを発見した。 EGFとbFGFは脳組織から分離された神経幹細胞を培養するための無血清培地に添加する場合、神経幹細胞がニューロンまたは星状膠細胞に分化するように刺激すると知られている(非特許文献10)。 HGFは海馬と中脳にあるニューロンの生存能力を向上し、新皮質外植(neocortical explant)において神経突起(neurite)の成長を誘導する(非特許文献11)。また、抹消神経系において、肝細胞成長因子は運動性ニューロンの生存因子として機能し(非特許文献12)、感覚ニューロンと副交感神経ニューロンの成長と生存にも関与する(非特許文献13)。 しかし、EGF、bFGFおよびHGFを含む培地で間葉系幹細胞を培養することにより神経細胞に分化できるという事実はまだ報告されていない。Brustleら著、1999年発行、Science 285:754-756Soriaら著、2000年発行、Diabetes 49:157-162McDonaldら著、1999年発行、Nat. Med. 5(12): 1410-1412Kuznetsovら著、1997年発行、Br. J. Haematol. 97:561Van den Bosら著、1997年発行、Human Cell 10:45Pittenger MFら著、1999年発行、Science 284:143Ferrari G.ら著、1998年発行、Science 279:1528Sanchez-Ramos著、2000年発行、Exp. Neurology 164:247-256Dale Woodbury著、2000年発行、J. Neuro. Res. 61:364-370Melissaら著、1999年発行、Exp. Neurology 158:265-278Hamanoue Mら著、1996年発行、J. Neurosci. Res. 43:554-564Ebens Aら著、1996年発行、Neuron 17:1157-1172Fleur Daveyら著、2000年発行、Mol. Cell Neurosci. 15:79-87 したがって、本発明の目的は、骨髄中の間葉系幹細胞または単核細胞を神経細胞に分化させる方法を提供することである。 本発明の他の目的は、前記方法で分化した神経細胞、およびこの神経細胞を有効成分として含む神経疾患治療用医薬組成物を提供することである。 本発明のまた他の目的は、前記方法で生産された神経細胞をそれを必要とする対象に投与することを含む、哺乳動物において神経疾患を治療する方法を提供することである。 本発明の一実施態様によって、本発明では、間葉系幹細胞を上皮細胞成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および肝細胞成長因子(HGF)を含む培地で培養することを含む、骨髄中の間葉系幹細胞を神経細胞に分化させる方法が提供される。 本発明は、間葉系幹細胞を上皮細胞成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および肝細胞成長因子(HGF)を含む培地で培養することを含む、骨髄から分離された間葉系幹細胞を神経細胞に分化させる方法を提供する。 また、前記方法によって分化した神経細胞およびこの神経細胞を有効成分として含む神経疾患治療用医薬組成物を提供する。 本明細書で用いられる用語の「神経細胞」とは、ニューロン、星状膠細胞および微細神経膠細胞を含む神経−類似細胞をいう。 間葉系幹細胞を神経細胞に分化させるためには、間葉系幹細胞を1〜1,000ng/ml、好ましくは5〜10ng/mlのEGF、1〜1,000ng/ml、好ましくは10〜20ng/mlのbFGFおよび1〜1,000ng/ml、好ましくは5〜20ng/mlのHGFを含む培地で1週間以上培養することが好ましい。幹細胞を4週間以上培養することがさらに好ましい。培養を開始してから約4週間後にはいくつかの細胞で構成された神経細胞コロニーが形成され、約8週間後には、前記神経細胞コロニーの連続的な成長および増殖によって大量の神経細胞が生産される。 反面、HGFに欠ける同一の培地で間葉系幹細胞を培養すると、神経細胞に分化しない。また、これらをHGFのみで処理すると、早期分化が起こるため、増殖が妨げられる。このような結果は、神経細胞を得るために間葉系幹細胞を培養する本発明の方法において、EGFおよびbFGFは細胞が増殖するように刺激し、HGFは幹細胞が神経細胞に分化するように刺激するということを暗示する。また、前記因子のうち一つのみを用いると、十分な量の神経細胞が得られない。 8週間培養後、神経細胞が完全に分化および増殖すると、EGFおよびbFGFのみで処理しても神経細胞としてのユニークな特性を失わずにさらに増殖できる。一方、完全に分化および増殖した神経細胞をHGFのみで処理し続けると、細胞は増殖せずに引き続いて分化し、結果として細胞の数が減少する。したがって、8週間培養した後には、神経細胞をEGFおよびbFGFを含む培地でさらに培養することにより増殖させることが好ましい。 EGF、bFGFおよびHGFを用いる本発明の方法によれば、細胞数に基づいて総分化細胞の80%以上が神経細胞であり、これは60〜80%、好ましくは65〜75%のニューロン、および20〜40%、好ましくは25〜35%の星状膠細胞で構成され、微細神経膠細胞は含まない。 本発明において、間葉系幹細胞は、好ましくはヒトの骨髄から得られる。骨髄から分離された単核細胞は造血幹細胞および間葉系幹細胞を含み、これらを1〜2週間培養すると、造血幹細胞は容易に成熟した血球細胞に分化する。したがって、その後増殖される幹細胞は間葉系幹細胞であり、これらは20回の継代培養後に増殖し続ける。間葉系幹細胞は骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞を含む様々な結合組織細胞に分化する。また、分離された間葉系幹細胞の代わりに、間葉系幹細胞を含む骨髄の単核細胞を本発明の方法に用いても神経細胞を大量生産できる。 本発明では、DMSOのような有害な分化誘導剤を用いることなく、人体内に存在する特定のタンパク質、すなわち、EGF、bFGFおよびHGFを誘導剤として用いて間葉系幹細胞から神経細胞を分化させるので、本発明の方法は特に安全性の面で有利である。また、疾患の治療に必要な十分な量の神経細胞を患者自身の骨髄から生産できるため、神経細胞の容易な利用可能性および免疫拒絶反応の危険性が減少することによって臨床適用が可能になる。 本発明に従って間葉系幹細胞から分化した神経細胞は神経疾患の治療のための細胞代替療法用細胞組成物の有効成分として利用できる。本発明の神経細胞を用いて治療できる神経疾患の非制限的な例としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピック病(Pick's disease)、ハンチントン病(Huntington's disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)および虚血性脳疾患(ischemic brain disease)のような神経退行性疾患が含まれる。本発明の神経細胞は神経細胞の非正常な消失によって引き起こされる各種の疾病はもちろん、脊椎損傷による運動障害などの治療にもまた利用できる。 本発明の方法によって分化した神経細胞を、通常の方法に従って薬剤学的に許容可能な賦形剤(excipient)または担体(carrier)と混合するか、薬剤学的に許容可能な希釈剤で希釈することにより神経疾患の予防または治療用細胞組成物を製造できる。適切な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラル油などを挙げることができる。剤形は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、遅速または遅延放出を提供するために当業界で公知の方法を用いて剤形化することができる。したがって、剤形は滅菌注射剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤などの形態であり、滅菌注射剤が好ましい。 したがって、本発明はまた本発明の方法によって生産された神経細胞を、それを必要とする患者に神経疾患の治療のための有効量で投与することを含む、哺乳動物において神経疾患を治療する方法を提供する。 本発明の方法によって生産された神経細胞は公知の方法に従って患者の体内に注入できる。たとえば、ダグラスコンジオルカの方法(Douglas Kondziolka et al., Neurology 55: 556-569, 2000)を用いることができる。具体的には、患者の頭蓋骨を切開して直径が約1cmの開口部を設け、神経細胞を含むHBSS(Hank's balanced salt solution)を3ヶ所ぐらいに注入する。この際、注入は長い針付きの注射器と、正確な位置で脳の深部に目的とする細胞溶液を挿入するための定位フレーム(stereotactic frame)を用いて行われる。本発明の細胞組成物は経皮、皮下、静脈内および筋肉内導入、手術的定位導入、血管カテテル挿入法による病巣内導入を含む様々な経路を通じて投与できる。 前記神経細胞の通常の1回投与量は1×106〜1×109細胞の範囲であり、毎週または毎月投与し得る。しかし、活性成分の実際投与量は治療する疾患、患者の症状、選択された投与経路、および個別患者の年齢、性別および体重を含む色々な関連因子を考慮して決定され、したがって、前記投与量は本発明の範囲を制限しない。 下記実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。 また、下記固体混合物中の固体、液体中の液体、および液体中の固体に対して下記に与えられた百分率は、各々重量/重量、体積/体積および重量/体積に基づいたものであり、別に言及しない限りすべての反応は室温で行われた。実施例1:骨髄中の単核細胞の分離 健康なボランティアのそれぞれの骨盤(pelvis)から骨髄約10mlを採取してヘパリンを含有するガラス管に貯蔵した。骨髄10mlにリン酸塩緩衝食塩水(PBS)30mlを加え、生成した混合液20mlをフィコール−パキュープラス溶液(Ficoll-Paque(登録商標)plus solution, 1.077g/ml, Amersham Pharmacia Biotech)10ml上に徐々に移動させた後、2000rpmで20分間密度勾配遠心分離(density gradient centrifugation)した。最上層とフィコール−パキュープラス層の間の界面にある単核細胞層を回収し、1800rpmで5分間遠心分離して単核細胞を得た。実施例2:単核細胞の培養 実施例1で得られた単核細胞を基本培地を含む培養フラスコに1×106細胞/cm2の密度で接種した。フラスコを37℃、5%CO2で培養した。4時間後、フラスコを新しい基本培地で洗浄して付着しなかった細胞を除去した。前記基本培地としては、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone, Sigma)3.5μM、脂肪酸−欠乏ウシ血清アルブミン(fatty acid-free bovine serum albumin, Gibco BRL)と同一のモル比で混合した50ng/mlのリノール酸(linoleic acid, Sigma Co.)、0.1μM CuSO4・5H2O(Sigma)、50pM ZnSO4・7H2O(Sigma)、3ng/ml H2SeO3(Sigma)、1.05mg/ml NaHCO3(Sigma Co.)、1.19mg/ml HEPES(Sigma)、100U/mlペニシリン(Gibco BRL)、10mg/mlストレプトマイシン(Gibco BRL)および25μg/mlアムホテリシン(Gibco BRL)を含むウィリアムズE培地(Williams' E medium, Gibco BRL)を用いた。実施例3:単核細胞の神経細胞への分化 実施例2で得られた単核細胞が神経細胞に分化するかを確認するために、単核細胞を上皮細胞成長因子(Gibco BRL)10ng/ml、塩基性線維芽細胞成長因子(R&D Systems)20ng/mlおよび肝細胞成長因子(R&D Systems)20ng/mlを含む基本培地(「分化培地」)で37℃、5%CO2で培養した。分化培地は一週間に2回ずつ入れ替えた。 約4週間後、神経細胞コロニーが示され、引き続き増殖した(表1および図1参照)。約8週間後、軸索(axon)のような長い突起および神経突起(dendrite)のような短い突起で構成されたニューロン型細胞と、短い神経突起のみで構成された星状膠細胞型細胞が観察された(図2および図3参照)。また、8週間後にはEGFおよびbFGFのみを含む基本培地で培養したが、細胞は形態の変化なしに増殖した(表2参照)。 しかし、間葉系幹細胞をEGFおよびbFGFのみを含む培地で培養する場合、細胞は神経細胞分化に分化しなった。また、間葉系幹細胞をHGFのみを含む培地で培養する場合、細胞は早期に分化するので、成長も増殖もしなかった(表1参照)。実施例4:免疫細胞化学(immunocytochemistry) EGF、bFGFおよびHGFを含む培地で8週間培養することにより、骨髄の単核細胞から分化した、実施例3で得られた神経細胞を1cm2カバーガラス上に1×104細胞/cm2の密度で付着した。細胞を0.1Mリン酸塩緩衝液(phosphate buffer)で5分間洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを含む0.1Mリン酸塩緩衝液で15分間固定し、0.1Mリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した。この細胞を1%BSAと0.2%Triton X−100を含む0.1M PBSで5分間処理した後、一次抗体、すなわち、マウス抗−ヒトニューロン−特異的エノラーゼ(NSE)(Chemicon Inc.)、マウス抗−ヒトニューロン−特異的核タンパク質(NeuN)(Chemicon Inc.)、マウス抗−ヒトβ−チューブリンIII(Sigma Co.)およびマウス抗−ヒト神経膠繊維性酸性タンパク質(GFAP)(Sigma Co.)抗体と16時間反応させた。 一次抗体との反応が完了した後、残っている抗体を除去し、細胞を0.5%BSAを含む0.1M PBSで各15分ずつ2回洗浄した。二次抗体であるウサギ抗−マウスIgG(Sigma Co.)を加えて30分間培養した。細胞を0.5%BSAを含む0.1M PBSで各5分ずつ2回洗浄した。アビジン−ビオチン(avidin-biotin)の入っているキット(Vectastain Elite ABC kit; Vector Laboratory Inc.)を用いて30分間反応を行った。細胞を0.1Mリン酸緩衝液で各5分ずつ2回洗浄し、発色基質としてDAB(3,3’-diaminobenzidine tetrahydrochloride dehydrate, Sigma Co.)を加え、混合物を5分間反応させた。反応液を0.1Mリン酸塩緩衝液で5分間処理し、この緩衝液で各5分ずつ2回洗浄することにより反応を中止した。生成した反応物を乾燥し、蒸留水で5分間洗浄した。細胞を脱水し、蒸留水および、70%、80%、95%および100%エタノールで順次処理することにより固定した。 前記細胞免疫化学染色の結果を図4A〜4Cに示し、ここから分化した細胞は神経細胞マーカーであるNeuN、NSEおよびβ−チューブリンIIIと星状膠細胞マーカーであるGFAPに対して陽性を示した。このような結果は、前記細胞がそれらの形態学的特徴だけでなく、生化学的特徴からも分かるように、ニューロンと星状膠細胞に分化したことを示す。しかし、前記細胞は微細神経膠細胞マーカー(microglia marker)であるOX−42に対しては陰性であるため、単核細胞が微細神経膠細胞には分化しなかったことを示す。 EGF+bFGF+HGFまたはEGF+bFGFを含む培地で8週間培養することにより、骨髄の単核細胞から分化した細胞のうち、神経細胞(NeuNおよびNSEに対して陽性である)および星状膠細胞(GFAPに対して陽性である)の比率を調査して表3に示す。 前記表3から分かるように、EGF+bFGF+HGFを含む培地で8週間培養した場合、全体分化細胞の約80%が神経細胞である。神経細胞は約70%のニューロンおよび約30%の星状膠細胞から構成されている。実施例5:間葉系幹細胞の分離および培養 骨髄の単核細胞中の間葉系幹細胞が神経細胞に分化するかどうかを確認するために、単核細胞を培養し、それから間葉系幹細胞を分離した。間葉系幹細胞の各種細胞への分化能を次のように調査した。実施例2のように培養した単核細胞を、10%FBS(fetal bovine serum)を加えたDMEM(Gibco BRL)を含む培養フラスコに1×103細胞/cm2の密度で接種した。細胞を37℃で5%CO2の存在下で培養した。1〜2週間後、増殖した細胞を継代培養し、20回の継代培養後にも増殖が継続した。 骨髄で得られる単核細胞は成熟した白血球、リンパ球、造骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞はもちろん、これらの細胞に分化できる幹細胞を含むが、前記幹細胞は造血幹細胞と間葉系幹細胞に分けられる。赤血球、白血球、リンパ球のような血球細胞を造る造血幹細胞は一般的な培養培地では増殖できないが、成熟した血球細胞には容易に分化する。したがって、前記のように持続的に増殖する細胞は間葉系幹細胞であることが分かる。 増殖する細胞がほんとうに間葉系幹細胞であるかどうかを確認するために、細胞を各種サイトカインおよび化学薬品で処理し、これらが骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞のような各種の結合組織細胞に分化するかをピテンガー(Pittenger)らの方法(Science, 284: 143-147, 1999)に従って調査した。 幹細胞を骨芽細胞に分化させるために、細胞を100mMデキサメタゾン(dexamethasone)、10mM β−グリセロールリン酸塩(β-glycerol phosphate)および50nMアスコルビン酸−2−リン酸塩(ascorbate-2-phosphate)および10%FBSで処理した。 また、幹細胞の軟骨芽細胞への分化能を確認するために、培養された幹細胞を遠心分離して細胞ペレットを得、これを無血清状態で100nMデキサメタゾンおよび10ng/ml TGF−β3で処理した。 幹細胞の脂肪細胞への分化は幹細胞を0.5mM 1−メチル−3−イソブチルキサンチン(1-methyl-3-isobutylxanthine)、1mMデキサメタゾン、10g/mlインスリン、100nMインドメタシン(indomethacine)、および10%FBSで処理することによって誘導した。 骨芽細胞はアルカリフォスファターゼ染色法(alkaline phosphatase staining; Jaiswal et al., J. Cell Biochem. 64(2):295-312, 1997)で確認し、軟骨芽細胞は2型コラーゲン逆転写酵素重合酵素連鎖反応(type II collagen RT-PCR; Mackay et al., Tissue Eng. 4(4):415-428, 1998)およびトルイジンブルー(toluidine blue)染色法で確認し、脂肪細胞はオイルレッドO染色法(oil red O staining)で確認した。 その結果、図5A、5Bおよび5Cから分かるように、すべての試料の場合、光学顕微鏡の下で陽性結果が観察された。このような結果は、インビトロで培養および増殖された間葉系幹細胞が依然として骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞のような様々な結合組織に分化し得る幹細胞の特性を有することを示す。実施例6:間葉系幹細胞の神経細胞への分化 実施例5で分離された間葉系幹細胞が神経細胞に分化できるかを調査するために、間葉系幹細胞を実施例3の方法に従ってEGF、bFGFおよびHGFを含む培地で8週間培養した。 その結果、骨髄中の単核細胞から神経細胞の分化と同様に、4週間後に神経細胞コロニーが形成され、神経細胞は8週間まで持続的に増殖した。図6および図7はそれぞれ接種直後および8週間培養後に得られた細胞の顕微鏡写真である。 8週間後には、細胞をEGFおよびbFGFのみで処理しても神経細胞の形態学的特徴を維持したまま継続的に増殖した。 また、前記分化した細胞に対して実施例4と同様な方法で免疫細胞化学染色法を行った。その結果、骨髄中の単核細胞から由来した神経細胞に対して得られた結果と同様に、分化した細胞は神経細胞マーカーであるNeuN、NSEおよびβ−チューブリンIIIと星状膠細胞マーカーであるGFAPに陽性として示された。したがって、間葉系幹細胞は、神経細胞(neuron)と星状膠細胞(astrocyte)の両方に分化したことが確認された(図8A〜8C参照)。図8A〜8Cは免疫化学染色法の結果を示すもので、図8AはNSE陽性細胞、図8BはNeuN陽性細胞、図8CはGFAP陽性細胞である。10ng/ml EGF、20ng/ml bFGFおよび20ng/ml HGFを含む培地で4週間培養した骨髄単核細胞から由来する付着細胞の光学顕微鏡写真(×100;以下、同一の倍率が適用される)である。10ng/ml EGF、20ng/ml bFGFおよび20ng/ml HGFを含む培地で8週間培養した骨髄単核細胞から分化した神経細胞の光学顕微鏡写真である。図2の神経細胞から分離されたニューロンおよび星状膠細胞のそれぞれの光学顕微鏡写真である。図2の神経細胞から分離されたニューロンおよび星状膠細胞のそれぞれの光学顕微鏡写真である。図2の分化した神経細胞の免疫細胞化学染色結果であって、図4AはNSE陽性細胞である。図2の分化した神経細胞の免疫細胞化学染色結果であって、図4BはNeuN陽性細胞である。図2の分化した神経細胞の免疫細胞化学染色結果であって、図4CはGFAP陽性細胞である。それぞれ骨髄間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞である。それぞれ骨髄間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞である。それぞれ骨髄間葉系幹細胞から分化した骨芽細胞、軟骨芽細胞および脂肪細胞である。10ng/ml EGF、20ng/ml bFGFおよび20ng/ml HGFを含む培地に接種した直後の間葉系幹細胞の光学顕微鏡写真である。10ng/ml EGF、20ng/ml bFGFおよび20ng/ml HGFを含む培地で8週間培養した間葉系幹細胞から分化した神経細胞の光学顕微鏡写真である。図7の分化した神経細胞の免疫細胞化学染色結果であって、図8AはNSE陽性細胞、陽性細胞である。図7の分化した神経細胞の免疫細胞化学染色結果であって、図8BはNeuN陽性細胞、である。図7の分化した神経細胞の免疫細胞化学染色結果であって図8CはGFAP陽性細胞である。 間葉系幹細胞を上皮細胞成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)および肝細胞成長因子(HGF)を含む培地で培養することを含む、間葉系幹細胞を神経細胞に分化させる方法。 間葉系幹細胞を1〜1000ng/mlのEGF、1〜1000ng/mlのbFGFおよび1〜1000ng/mlのHGFを含む培地で1週間以上培養する請求項1記載の方法。 培養を4週間以上行う請求項2記載の方法。 間葉系幹細胞をEGF、bFGFおよびHGFを含む培地で1週間以上培養した後、生成した分化神経細胞をEGFおよびbFGFを含む培地で増殖させる請求項1記載の方法。 間葉系幹細胞がヒトの骨髄から分離されたものである請求項1記載の方法。 骨髄から分離され、間葉系幹細胞を含む単核細胞を間葉系幹細胞の供給源として用いる請求項1記載の方法。 神経細胞がニューロン(neuron)および星状膠細胞(astrocyte)を含む請求項1記載の方法。


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