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タイトル:特許公報(B2)_フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材及びその製造方法
出願番号:2002578485
年次:2010
IPC分類:C05F 17/00,B09B 3/00,C12N 1/00


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斉藤 尚秀 大倉 利明 高山 道文 小倉 邦彦 JP 4596737 特許公報(B2) 20101001 2002578485 20020327 フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材及びその製造方法 株式会社リオン 500314278 秋山 敦 100088580 斉藤 尚秀 大倉 利明 高山 道文 小倉 邦彦 JP 2001094168 20010328 20101215 C05F 17/00 20060101AFI20101125BHJP B09B 3/00 20060101ALI20101125BHJP C12N 1/00 20060101ALI20101125BHJP JPC05F17/00B09B3/00 304HB09B3/00 AC12N1/00 S C12P3/00,B09B3/00,C05F17/00,C05F9/00,C05F7/00 特開平10−338526(JP,A) 特開2001−072483(JP,A) 特開昭63−170293(JP,A) International Journal of Systematic Bacteriology(1999),vol.49,No.2,p729−735 Effect of Mineral−Organic−Microorganism Interactions on Soil and Freshwater Environments,Edited by Berthclin,et al,Kluwer Academic/Plenum Publishers,New York,1999,p47−53 11 JP2002002947 20020327 WO2002079483 20021010 15 20040609 2007016007 20070607 大黒 浩之 中澤 登 斉藤 信人 【0001】【技術分野】 本発明はフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材及びその製造方法に係り、特に有機物廃棄物の処理も同時に行うことが可能な有機系廃棄物を原料としたフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材及びその製造方法に関するものである。【0002】【背景技術】 近年、地球の環境汚染が深刻なものとなり、環境問題に関心が高まっている。環境汚染の一つとして、埋め立て処理される生活廃棄物、産業廃棄物、工業廃棄排水汚泥物等廃棄物中の有機物から発生するメタンガスによる二次汚染が問題となっている。また、廃棄物から流出した有機物の影響で、湖沼、河川等のBODが上昇するなどの汚染も問題となっており、これらの汚染を防止する対策について、活発な研究が行われている。【0003】 そして、最近の研究により、ゲータイト(Goethite;針鉄鉱;α−FeOOH)、フェリハイドライト(Ferrihydrite;非晶質鉄水和酸化物:5FeO2O3・nH2O)等の二次的鉄酸化物は、有機化合物のカルボキシル基やカルボニル基のOH端、O端と配位結合する性質があり、凝集体を形成して沈殿することから、有機物を含んだ懸濁液の物理的清澄化に効果があることが分かってきた。特に、これらの二次的鉄酸化物のうち、フェリハイドライトは、比表面積が大きく、化学反応の場を提供する触媒としての能力が大きいため、非晶質鉄水和酸化物の有機物の酸化重合や窒素酸化物の分解促進に特に効果があり、有機物廃棄物に起因する汚染に効果があることが分かってきている。【0004】 しかし、フェリハイドライトは、天然由来のものが採取されているだけであり、フェリハイドライトを製造する方法は、知られていない。有機化合物を吸着分解し、不活性化可能なフェリハイドライトの製造方法の開発が望まれている。 一方、環境汚染の原因となる有機物廃棄物は、現在では、埋め立て処理されているのが現状である。有機物廃棄物からのカドミウム、水銀、ダイオキシン類、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)、PCB(ポリ塩化ビフェニル)等の難分解物質の溶出や、有機物廃棄物が廃棄されたゴミ処理場近くの河川のBOD、CODの上昇が問題となっており、有機物廃棄物の効率的かつ確実な処理方法の開発が望まれている。【0005】 本発明の目的は、上記問題点を解決することにあり、有機化合物を吸着分解可能で、不活性化可能なフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材を工業的に製造するフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、製造工程において、有機物廃棄物の処理を同時に行うことができるフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法を提供することにある。【0006】【発明の開示】 本発明におけるフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法は、有有機物のpHを、5以上に調整するpH調整工程と、前記有機物のpHを5以上に維持すると共に酸素送入しながら、前記有機物を、金属中で鉄を最も多く含み、該鉄が液中で、pH5より高いpHで、Fe(OH)3として存在し、玄武岩および安山岩を含む群からなる少なくとも一の堆積岩土壌を無機酸で抽出して得たミネラル液を、pH5〜7に調整したミネラル液水溶液に、浸漬させるミネラル液水溶液浸漬工程と、前記有機物のpHを5以上に維持すると共に前記有機物を攪拌しながら、該有機物に発酵助剤及び前記ミネラル液を水で希釈したミネラル液水溶液の混合液を散布する一次発酵工程と、前記有機物のpHを5以上に維持すると共に前記有機物を堆肥場内に堆積して発酵させながら、前記有機物が所定温度に達したときに切り返しをしながら前記ミネラル液を水で希釈したミネラル液水溶液を散布して、完熟発酵堆肥を得る二次発酵・完熟工程と、を備えることを特徴とする。【0007】 上記のように、有機物に、ミネラル液水溶液を添加するため、ミネラル液に含まれるFe(OH)3と有機物とから、土壌回復資材として利用可能なフェリハイドライト腐植複合体を形成させることが可能となる。 一次発酵工程及び二次発酵・完熟工程で、ミネラル液水溶液の添加と同時に、有機物の発酵による堆肥化をおこなっているため、フェリハイドライト特有の土壌回復資材としての性能のほか、一般的な堆肥としての性能を有するフェリハイドライト腐植複合体を製造することが可能となる。 また、本製造方法では、有機物を原料とするため、有機物として有機物廃棄物を用いれば、フェリハイドライト製造だけでなく、堆肥化による有機物廃棄物処理をも同時に行うことが可能となる。 さらに、本発明に係るミネラル液は、徴量ミネラルを含むため、このミネラルが補酵素として作用し、高い微生物活性が得られ、一次発酵工程、二次発酵・完熟工程において、効率的な発酵が行われる。【0008】 また、pH調整工程を行っているため、後のミネラル液水溶液浸漬工程,一次発酵工程,二次発酵・完熟工程において、ミネラル液水溶液中に含まれる鉄を、フェリハイドライトの原料となるFe(OH)3の形態とすることが可能となり、フェリハイドライトを形成させることが可能となる。 また、ミネラル液水溶液浸漬工程の前に、pH調整工程で、有機物のpHを5以上に調整しているため、ミネラル液水溶液浸漬工程で、ミネラル液水溶液のpHを5以上とすることが可能となり、ミネラル液水溶液中に、フェリハイドライトの原料となるFe(OH)3(水酸化鉄)を存在させることが可能となる。その結果、有機物がアルミニウム、マグネシウム等の他の元素と複合体を形成してしまうことを防止できる。腐植複合体を、生体や生態系に悪影響を及ぼす可能性が極めて小さい鉄を含むものとすることが可能となるのである。さらに、反応が起こる表面積が大きく、またpH変化によって起こる変異荷電特性に起因する物理化学反応力が大きいフェリハイドライトを含む腐植複合体を形成することが可能となるのである。【0009】 更に、一次発酵工程,二次発酵・完熟工程の前に、ミネラル液水溶液浸漬工程を行うため、有機物により多くのミネラル液水溶液を接触させ、より多くのフェリハイドライトを形成させることが可能となる。 嫌気的条件下では、3価鉄は2価鉄になるが、本発明では、このようにミネラル液水溶液浸漬工程を、酸素送入しながら行うため、ミネラル液水溶液浸漬工程において3価鉄が2価鉄になることを防止することが可能となる。 また、ミネラル液水溶液浸漬工程で、ミネラル液水溶液のpHを5〜7にしているため、後の一次発酵(ミネラル液添加)工程4,二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5の堆肥化過程で発酵を行う菌が死滅することを防止できる。【0010】 鉄は、ミネラル液中で、pH3以下では、Fe3+として、pH3〜pH4では、Fe3+とFe(OH)2+として、pH4〜pH5では、Fe3+とFe(OH)2+とFe(OH)2+として、pH5より高いpHでは、Fe(OH)2+とFe(OH)2+とFe(OH)3として存在し、pH5以上でフェリハイドライトの原料となるFe(OH)3を含むため、このミネラル液を用いてフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材を製造することが可能となる。【0011】 また、ミネラル液に含まれる鉄はpH5以上でFe(OH)3になるため、フェリハイドライト形成のためには、ミネラル液水溶液と有機物とを混合したもののpHを5以上としておく必要があるが、一次発酵工程及び二次発酵・完熟工程において、有機物のpHを5以上に維持しているため、フェリハイドライトの形成が可能となる。 また、二次発酵・完熟工程では、有機物が所定温度に達したときに切り返しを行うため、酸素を十分供給でき、フェリハイドライト形成のために必要な3価の鉄が減少することを防ぐことができる。【0012】 また、前記所定温度は、65℃以上であると好適である。 これにより、有機物から完熟発酵堆肥を得ることが可能となる。【0013】 また、前記二次発酵・完熟工程後に、40〜50℃で、前記完熟発酵堆肥を攪拌しながら前記ミネラル液水溶液を散布すると共に前記完熟発酵堆肥の水分調整を行う堆肥化後ミネラル添加工程を行うと好適である。 このように構成しているので、完熟発酵堆肥の水分を蒸発させて堆肥として適当な水分量にし、完熟発酵堆肥に含まれる種々の成分が溶脱することを防ぐことができる。【0014】 また、前記pH調整工程では、前記有機物のpHを、7以上に調整すると好適である。 ミネラル液のpHを、低pHから徐々に上昇させたとき、フェリハイドライトの生成の原料となるFe(OH)3は、pH5ででき始め、pH7で、略最大の量に達するからである。 また、前記pH調整工程の前に、前記有機物のC/N調整を行うと好適である。【0015】 また、前記一次発酵工程および前記二次発酵・完熟工程は、前記ミネラル液中の鉄を3価の状態に維持して行うと好適である。 このように構成しているため、鉄が2価になって有機物とミネラル液との混合物から溶脱することを防止することが可能となる。【0016】 前記ミネラル液に含有されるマグネシウム量およびカルシウム量の和が、前記ミネラル液に含有される鉄の量の30重量%未満であると好適である。 マグネシウムまたはカルシウムが多く含まれていると、Fe(OH)3の形成が阻害されるため、フェリハイドライトが形成されなくなるからである。【0017】 前記pH調整工程の前に、玄武岩および安山岩を含む群からなる少なくとも一の堆積岩土壌を無機酸で抽出して前記ミネラル液を調製する無機酸抽出工程を行い、該無機酸抽出工程では、純鉄(Fe(3+))と非結晶質の針鉄鉱(α−FeOOH)とを含む残渣と、前記ミネラル液とを得ると好適である。 このような残渣が分離されたミネラル液は、フェリハイドライト原料Fe(OH)3の基となるFe3+を含むため、フェリハイドライト形成が可能となる。【0018】 さらに、本発明のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材は、請求項1の製造方法によって製造され、pH5〜7の堆積岩土壌の無機酸抽出物の水溶液存在下で、有機物を発酵処理することにより形成された完熟有機物堆肥であると共に、フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材であって、前記無機酸抽出物は、金属の中で鉄を最も多く含むと共に、前記鉄を、pH5より高いpHで、Fe(OH)3として含むことを特徴とする。 このように構成していることにより、フェリハイドライト特有の土壌回復資材としての性能のほか、一般的な堆肥としての性能を有するフェリハイドライト腐植複合体を得ることが可能となる。また、フェリハイドライトは、比表面積が約200(m2/g)と大きく、有機化合物のOH端、O端との反応に供される場が広いという性質を有するため、触媒能、凝集体を形成する能力の高い土壌回復資材を得ることが可能となる。 また、このフェリハイドライト腐植複合体は、無機酸抽出物由来のミネラルを含むため、微生物や酵素の活性の促進、微生物の環境改善が可能な土壌回復資材を得ることが可能となる。 さらに、フェリハイドライトは、生物濃縮有害物質の無毒化と沈降を行う性質を有するため、有機物廃棄物に含まれる難分解物質の固定、不活性化させることができる土壌回復資材を得ることが可能となる。【0019】 なお、前記無機酸抽出物に含有されるマグネシウム量およびカルシウム量の和が、前記無機酸抽出物に含有される鉄の量の30重量%未満であると好適である。 このように、Fe(OH)3の形成を阻害するマグネシウムおよびカルシウムの量が少ないため、フェリハイドライトを多く含む腐植複合体とすることが可能となる。【0020】 また、水分量が10〜20重量%であると好適である。 このように構成しているので、フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材を、堆肥として適当な水分量にすることができ、有機物堆肥の水分量が多過ぎて、有機物堆肥に含まれる種々の成分が溶脱することを防ぐことができる。【0021】【発明を実施するための最良の形態】 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。(実施の形態1) 本実施形態は、ミネラル液水溶液と有機物を原料として、この有機物の堆肥(粗腐植)製造過程を通じて、人工的に鉄水和酸化物の一種であるフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材を製造する方法である。 ここで、本明細書において、フェリハイドライト腐植複合体とは、非晶質フェリハイドライト(以下フェリハイドライトという)と有機物との複合体をいう。また、「腐植」とは、本明細書では、土壌有機物を意味し、堆肥と同義である。 フェリハイドライト(Ferrihydrite)とは、一般式5FeO2O3・9H2Oで表される非晶質水和酸化物である。一般的には、地球表層において初期段階で形成される低結晶度の鉄鉱物として知られている。 フェリハイドライトは、有機化合物のカルボキシル基やカルボニル基のOH端、O端と配位結合する性質があり凝集体を形成する。比表面積が約200(m2/g)と大きく、有機化合物のOH端、O端との反応に供される場が広いため、触媒能が高く、凝集体を形成する能力が高いことが分かっている。【0022】 本実施形態では、ミネラル液として、玄武岩、安山岩等の堆積岩土壌に、無機酸を添加して抽出した天然由来のイオン化ミネラル濃縮液を用いる。本明細書では、このイオン化ミネラル濃縮液を、ミネラル液と称する。ミネラル液としては例えば、株式会社リオン製のクレイエクストラクトW.Wを使用する。 ミネラル液は、玄武岩、安山岩等の堆積岩土壌(粘土)に、濃度10〜20重量%の硫酸水溶液を添加して酸可溶成分を抽出したものである。なお、硫酸の代わりに、塩酸、硝酸、これらの無機酸を混合したもの、またはその水溶液等を用いてもよいが、濃度10〜20重量%の硫酸水溶液を用いると、後述する本実施形態のミネラル液を効率よく得ることができる。【0023】 本実施形態のミネラル液は、鉄(Fe)を主要構成成分とし、その他マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等のカチオンも含む。ただし、マグネシウム量およびカルシウム量の和は、ミネラル液に含有される鉄の量の30重量%未満である。 本実施形態のミネラル液は、鉄を7000〜13000(ppm)程度含み、pHは、0.1〜0.2程度である。 また、本実施形態のミネラル液に含まれる高分子の径は、3〜5(nm)程度である。【0024】 本実施形態のミネラル液に含まれる鉄は、pHによって異なる形態で存在する。pH3以下では、鉄は、Fe3+、pH3〜pH4では、Fe3+とFe(OH)2+、pH4〜pH5では、Fe3+とFe(OH)2+とFe(OH)2+、pH5より高いpHでは、Fe(OH)2+とFe(OH)2+とFe(OH)3として存在する。【0025】 また、本実施形態のミネラル液の母材である土壌を硫酸抽出した残渣は、純鉄(Fe(3+))と、非結晶質の針鉄鉱(α−FeOOH)とを含んでいる。ここで、純鉄(Fe(3+))とは、変化しにくい安定した鉄をいい、酸化されず、溶出しないという性質を有する鉄をいう。 本実施形態では、有機物として、畜糞、生ゴミ、食品廃棄物、剪定枝や廃材チップ、浄化槽汚泥等の有機廃棄物を用いる。ただし、有機物として、廃棄物以外の有機物を用いてもよいことは当然である。【0026】 次いで、本実施形態にかかるフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法について説明する。 本製造方法では、まず、有機物廃棄物を公知のシュレッダーで破砕する有機物の破砕工程1を行う。この破砕工程1は、後工程の一次発酵工程、二次発酵・完熟工程で、有機物の分解を容易にすることを目的として、有機物廃棄物のうち大きなものを予め破砕しておくものである。【0027】 破砕工程1に続いて、有機物のpH調整工程2を行う。この工程では、消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH)2)を添加して、有機物のpHを、5以上に調整する。なお、有機物のpHが5以上である場合には、pH調整工程2では、消石灰等pH調整用の化合物を添加する必要はない。 ミネラル液は、pH5未満では、Fe(OH)3が存在せず、Fe3+とFe(OH)2+とFe(OH)2+の形態となる。Fe3+とFe(OH)2+とFe(OH)2+の形態のときには、有機物は、鉄ではなくアルミニウム、マグネシウム、カルシウム等の他の元素と複合体を形成してしまうため、鉄と有機物との複合体であるフェリハイドライトができない。したがって、フェリハイドライトを形成させるためには、後工程のミネラル液浸漬工程以降の各工程において、有機物とミネラル液希釈水を混合したもののpHが、5以上になっていることが必要である。 特に、最近は、アルミニウムの使用を好まない傾向が社会で一般的となっているが、有機物をpH5以上に調整しておくことで、アルミニウムと有機物との複合体の生成を防止することが可能となる。 ミネラル液浸漬工程以降の各工程でpHを5以上とするためには、pH調整工程2で、有機物のpHを5以上としておけばよい。ミネラル液希釈水浸漬工程以降の各工程では、ミネラル液と有機物との混合を行うが、ミネラル液希釈水は、発酵を司る菌の死滅の防止のためにpH5以上としておくので、このpH調整工程2で有機物のpHを予め5以上に調整しておけば、ミネラル液と有機物との混合物のpHは、全体として5以上となるからである。【0028】 なお、本実施形態では、有機物をpH5以上に調整しているが、pH7以上に調整すると、更に好適である。本実施形態のミネラル液のpHを、低pHから徐々に上昇させたとき、フェリハイドライトの生成の原料となるFe(OH)3は、pH5ででき始め、pH7で、略最大の量に達するからである。なお、この有機物のpH調整工程2では、pHの調整を行う前にC/N調整を行う。C/N調整は、一般的な堆肥製造工程における工程と同様の工程で行う。C/N調整工程は、破砕工程1の前に行ってもよい。【0029】 pH調整工程2の後、pH5以上に調整された有機物を、ミネラル液希釈水槽に浸漬するミネラル液希釈水浸漬工程3を行う。 この工程では、まず、水槽で、ミネラル液を5000倍に水で希釈したミネラル液希釈水1000(l)を調製する。 このように、ミネラル液を水で希釈するのは、ミネラル液は、pHが0.1〜0.2程度であるため、ミネラル液原液に有機物を添加すると、堆肥化過程で発酵を行う菌が死滅してしまい、後の一次発酵(ミネラル液添加)工程4,二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5で、堆肥化することができなくなるからである。 このミネラル液希釈水は、菌死滅防止のためには、pH5〜7とすると好適である。【0031】 5000倍ミネラル液希釈水1000(l)を貯留した水槽に、pH5以上に調整された有機物1000(l)を投入して浸漬し、5時間以上放置する。 このミネラル液希釈水浸漬工程3を行うことによって、フェリハイドライト形成を進行させることが可能となる。 この工程において、5000倍ミネラル液希釈水とpH5以上の有機物との混合物のpHは5以上となるため、ミネラル液に含まれる鉄は、フェリハイドライトの原料であるFe(OH)3となり、フェリハイドライトが形成される。 なお、鉄と硫酸根(SO42−)とを含む溶液に、嫌気性菌の繁殖を抑える効果があることが知られているが、本実施形態のミネラル液希釈水は、鉄と硫酸根とを含むため、ミネラル液希釈水浸漬工程3を行うことによって、悪臭除去、病原菌、腐敗菌の減菌、メタンガス等のガス吸着、塩分の中和等の効果を得ることも可能となる。【0032】 ミネラル液希釈水浸漬工程3の後、有機物を発酵させる一次発酵(ミネラル液添加)工程4を行う。一次発酵(ミネラル液添加)工程4では、次に説明するように、混合液調製工程と混合工程を行う。 一次発酵(ミネラル液添加)工程4では、予め、有機物に添加するための発酵助剤とミネラル液希釈水とを混合する混合液調製工程を行う。混合液調製工程では、不図示の水槽に、ミネラル液を10000倍に水で希釈したpH約3.5のミネラル液希釈水100(l)を投入する。次いで、この水槽に、微生物資材、酵素資材等を含む発酵助剤1kgを投入し、混合させる。その後、12時間公知の方法でエアレーションを行い、混合液を得る。発酵助剤としては、糸状菌、乳酸菌等の好気性菌と、繊維分解菌等の嫌気性菌と、アミラーゼ等の酵素とを含む市販の発酵助剤(株式会社リオン製、商品名:マイクロザイムF)を用いる。【0033】 本実施形態で、発酵助剤をミネラル液希釈水に添加するのは、次の理由による。一般的な有機物廃棄物は、塩分、油分、化学物質等の物質を含んでおり、これらの物質によりスムーズな発酵が妨げられる恐れがあるため、発酵助剤をミネラル液希釈水に添加して、スムーズな発酵を行うようにしているものである。なお、発酵助剤の代わりに、一次発酵を終えた切戻し品を、戻し堆肥として加えてもよい。【0034】 混合液調製工程を行った後、図2および図3のブレンダ11で、有機物に混合液を添加し、攪拌混合する混合工程を行う。なお、図2は、ブレンダ11を斜め上方から見た図、図3は、ブレンダ11の断面図である。 ブレンダ11は、有機物を貯留する発酵槽13と、有機物を投入するための投入口であるホッパ12と、混合液を導入するためのパイプ15と、有機物を攪拌するためのカッタ14と、空気を導入するための不図示のファンとを備えている。【0035】 カッタ14は、図2に示すように、発酵槽13の長手方向に延びるカッタ軸14aと、このカッタ軸14aの周囲に放射状に固定されたカッタ刃14bとからなり、カッタ軸14aが、不図示のモータにより回転することによって、カッタ刃14bが発酵槽13に貯留された有機物を切るように攪拌するように構成されている。 パイプ15は、図3に示すように、発酵槽13内の上壁付近に、発酵槽13の長手方向に直交するように複数固定されている。各パイプ15には、不図示の孔が複数穿孔されており、この孔から、パイプ15内を通る混合液を、発酵槽13内に散布可能に構成されている。 なお、図2は、発酵槽13の図面右手前側の壁面が開放されているように描かれているが、理解を容易にするためであり、混合工程中は、閉じられているものである。【0036】 混合工程では、まず、発酵槽13に、ホッパ12から有機物を投入する。その後、不図示のモータにより、カッタ14を回転させ、攪拌する。次いで、攪拌しながら、パイプ15から、混合液100(l)を散布する。その後、更に0.5〜1時間の間攪拌をする。 なお、本実施形態では、一次発酵(ミネラル液添加)工程4において、混合液に発酵助剤を添加しているが、発酵助剤を添加せずに、ミネラル液希釈水のみを有機物に添加してもよい。 また、本実施形態では、混合工程を横置型のカマボコ型,即ち断面が半円からなる横長の筒体のブレンダ11を用いて行っているが、有機物の攪拌と混合液の散布を実施可能な装置であればよく、縦型、多段型のブレンダ、丸形、直方体形のブレンダ、ドラム式のブレンダ等、公知の他の混合装置を用いてもよいことは当然である。【0037】 一次発酵(ミネラル液添加)工程4の後、有機物をブレンダ11から取りだし、二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5を行う。 二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5では、ブレンダ11から取り出した有機物を、屋根のある堆肥場内に堆積して発酵させながら、ミネラル液希釈水を更に添加する。 ブレンダ11から取り出した有機物は、既に発酵が始まり相当な高温となっている。二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5では、有機物の温度が65℃〜70℃に達した時点で、ブルドーザー、ショベルカー等を用いた攪拌による切り返しをしながら、ミネラル液希釈水の補給を行う。【0038】 切り返しのタイミングは、季節によっても異なるが、通常は、次のように行う。すなわち、有機物を堆積して二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5開始後、3日後頃に、有機物の温度が70℃程度となるので、ミネラル液希釈水を散布して切り返しを行う。散布及び切り返しの後、一旦温度が下がるが、二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5開始から10日目頃と17日目頃に、有機物の温度が70℃程度となるので、ミネラル液希釈水を散布して切り返しを行う。その後、二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5開始から3週間程度で有機物は完熟堆肥となる。 散布するミネラル液希釈水には、ミネラル液の7000倍希釈水を使用し、散布量は、有機物量の10重量%程度とする。 ミネラル液希釈水の添加は、フェリハイドライト形成のための鉄の供給を目的として行う。 ミネラル液希釈水添加時には、切り返しにより充分攪拌し、酸素を充分供給しておく必要がある。鉄は、嫌気条件下では、2価の状態となって溶出し、フェリハイドライト形成のために必要な3価の鉄が減少してしまうためである。 以上の二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5までの工程により、完熟発酵堆肥、通常の土壌改良資材としては完成する。【0039】 二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5の後、完熟した有機物堆肥の堆肥化後ミネラル添加工程6を行う。 堆肥化後ミネラル添加工程6では、まず、図2のブレンダ11に、有機物堆肥を投入し、攪拌を開始する。攪拌は、ブレンダ11内の温度を40〜50℃、好ましくは40〜45℃に維持して行う。攪拌しながら、ブレンダ11に、ミネラル液5000倍希釈水を、堆肥量の10重量%散布し、さらに攪拌し、有機物堆肥に含まれる水分を蒸発させる。このとき、不図示のファンで、空気を導入しながら堆肥化後ミネラル添加工程6を行ってもよい。【0040】 このミネラル液5000倍希釈水を散布しながら水分を蒸発させる手順を5回繰り返し、堆肥化後ミネラル添加工程6を完了する。堆肥化後ミネラル添加工程6では、得られた有機物堆肥の水分が発酵に適当な水分となるように水分調整も併せて行う。浸漬工程3〜堆肥化後ミネラル添加工程6では、ミネラル液希釈水を散布しているので、有機物堆肥の水分量が増えており、この水分を蒸発させて堆肥として適当な水分量にするためである。なお、有機物堆肥の水分量が多いと、有機物堆肥に含まれる種々の成分が溶脱してしまうため、通常この工程では、水分量が10〜20重量%、好ましくは12%程度となるように、有機物堆肥中の水分を調整する。 以上で、フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法が完了する。 その後、必要に応じて、包装等行い、フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製品とする。【0041】 本実施形態で製造されたフェリハイドライト腐植複合体は、重金属、有害高分子有機化合物、塩害、残留農薬や有害化学物質等の問題汚染土壌を浄化するための土壌回復資材として使用することが可能である。土壌回復資材として使用する場合には、本実施形態で製造されたフェリハイドライト腐植複合体を、問題汚染土壌に混合して用いる。 また本実施形態で製造されたフェリハイドライト腐植複合体は、河川や湖沼の汚染浄化資材として用いることもできる。フェリハイドライト腐植複合体特有の吸着能力や触媒能力により、河川や湖沼に浮遊・沈殿する有機物主体の懸濁物の凝集を促し、リン酸化合物とも複合体を形成沈殿するため、水質の透明度向上が図られる。【0042】 本実施形態のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法では、ミネラル液希釈水浸漬工程3の前に、pH調整工程2で、有機物のpHを5以上に調整しているため、有機物をミネラル液希釈水に浸漬した場合に、ミネラル液希釈水のpHを5以上とすることが可能となり、ミネラル液希釈水中に、フェリハイドライトの原料となるFe(OH)3(水酸化鉄)を存在させることが可能となる。その結果、有機物がアルミニウム、マグネシウム等の他の元素と複合体を形成してしまうことを防止できる。腐植複合体を、生体や生態系に悪影響を及ぼす可能性が極めて小さい鉄を含むものとすることが可能となるのである。さらに、反応が起こる表面積が大きく、またpH変化によって起こる変異荷電特性に起因する物理化学反応力が大きいフェリハイドライトを含む腐植複合体を形成することが可能となるのである。【0043】 また、フェリハイドライトは、酸素吸着による酸化防止効果、肉類の鮮度保持効果、嫌気性菌の繁殖抑制による抗菌・制菌効果等を有することが知られており、本実施形態により製造されたフェリハイドライト腐植複合体は、これらの効果をも奏する。 本実施形態に係るフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法では、ミネラル液中のFe3+イオンが、ミネラル液希釈水浸漬工程3〜堆肥化後ミネラル添加工程6のpH上昇により正の価数が減少して沈積する過程において、沈積速度が速かったために結晶化の進んでいない非晶質のフェリハイドライトが形成されたものである。このフェリハイドライトは、既に述べたように、キレート結合による非晶質水和酸化物である。【0044】 なお、本実施形態で用いられるミネラル液の一例の組成を、図4に示す。 また、本実施形態で用いられるミネラル液を硫酸で抽出した残渣の一例を、メスバウア分光分析法で測定した結果、常磁性のFe(3+)と、スピネル8面体位置のFe3O4、スピネル・4面体位置のFe3O4と、α−Fe2O3とを含んでいることが分かった。残渣に含まれるFeのうち、6%が常磁性のFe(3+)、38%がスピネル・8面体位置のFe3O4、31%がスピネル・4面体位置のFe3O4、25%がα−Fe2O3であるとの測定結果を得た。【0045】(実施例1) 以下、フェリハイドライト腐植複合体を製造した実施例について説明する。 本例では、ミネラル液として株式会社リオン製のクレイエクストラクトW.Wを用いた。 本例の製造方法の手順について説明する。 まず、一般的なゴミ処理場から入手した有機物廃棄物をC/N調整し、有機物廃棄物1000(l)を準備した。次いで、この有機物廃棄物を公知のシュレッダーで破砕して有機物の破砕工程1を行った後、pHを測定するとpHは6.0であった。そこで消石灰0.5kgを添加して有機物のpHを7.0に調整しpH調整工程2を行った。【0046】 次いで、水槽にミネラル液の5000倍希釈水1000(l)を調製し、このミネラル液希釈水に有機物を5時間浸漬してミネラル液希釈水浸漬工程3を行った。 その後、有機物を発酵させる一次発酵(ミネラル液添加)工程4を行った。この工程4では、まず水槽に、ミネラル液の10000倍希釈水100(l)(pH約3.5)と発酵助剤(株式会社リオン製、商品名:マイクロザイムF)1kgを投入し、混合させる。その後、12時間公知の方法でエアレーションを行い、混合液を作製した。ブレンダ11に有機物を投入後攪拌しながら、混合液100(l)を散布した。その後、更に1時間攪拌した。 次いで、有機物をブレンダ11から取りだし、屋根のある堆肥場内に堆積し、ブルドーザーで切り返しを行いながら、ミネラル液の7000倍希釈水300(l)を100(l)ずつ3回に分けて散布する二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5を行った。このときの有機物量は約1000kgであった。この工程5で、完熟した有機物堆肥を得た。【0047】 その後、堆肥化後ミネラル添加工程6を行った。この工程6では、有機物堆肥をブレンダ11に投入し、ブレンダ11内の温度を43℃に維持して攪拌しながらミネラル液5000倍希釈水100(l)を散布し、さらに攪拌する手順を5回繰り返して行った。 以上の工程で、水分量が約12%のフェリハイドライト腐植複合体400kgを得た。【0048】 完成したフェリハイドライト腐植複合体50gをサンプルとして肥料分析法の酢酸アンモニウム法でCEC(陽イオン交換容量)を測定したところ、CECは78(meq)であった。 CECが30(meq)以上のものは、フェリハイドライトを含むことが一般的に知られていることから、本例の製造方法で得られた腐植複合体にフェリハイドライトが含まれることが実証された。【0049】 本例のフェリハイドライト腐植複合体製造過程で製造されるフェリハイドライト量を概算すると、次の通りになる。 本例で用いた有機物廃棄物1000(l)に対し、各工程では、次の量のミネラル液を添加している。 ミネラル液希釈水浸漬工程3では、ミネラル液5000倍希釈水1000(l)を、一次発酵(ミネラル液添加)工程4では、ミネラル液10000倍希釈水100(l)を、二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5では、ミネラル液7000倍希釈水約100(l)を3回、堆肥化後ミネラル添加工程6では、ミネラル液5000倍希釈水を水約100(l)を5回添加している。これを、ミネラル液原液の量に換算すると、ミネラル液希釈水浸漬工程3ではミネラル液200(ml)、一次発酵(ミネラル液添加)工程4ではミネラル液10(ml)、二次発酵・完熟(ミネラル液添加)工程5ではミネラル液約45(ml)、堆肥化後ミネラル添加工程6では、ミネラル液100(ml)を添加している。 したがって、全工程では、約355(ml)を添加していることとなる。 なお、これは、有機物量を1000(l)として試算したものであり、有機物のガス化分解による減量は、無視して計算している。【0050】 o−フェナントロリン吸光光度法による分析の結果、ミネラル液原液1(l)中には、鉄は、約10(g)含まれることが分かっている。また、鉄1(g)は、フェリハイドライト約1.5(g)に対応することが、実験により実証されている。 以上より、全工程で355(ml)のミネラル液原液を添加している本例では、15(g/l)×0.355(l)より、約5(g)のフェリハイドライトが形成されることとなる。 また、フェリハイドライトの比表面積は約200(m2/g)であるから、1(t)のフェリハイドライト腐植複合体中フェリハイドライトの持つ表面積は、5(g)×200(m2/g)より、約1000(m2)となる。【0051】【産業上の利用性】 以上のように本発明によれば、フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法において、有機物に、ミネラル液水溶液を添加する一次発酵工程、二次発酵・完熟工程、堆肥化後ミネラル添加工程を行っているため、ミネラル液に含まれるFe(OH)3と有機物とから、土壌回復資材として利用可能なフェリハイドライト腐植複合体を形成させることが可能となる。 また、pH調整工程を行っているため、後のミネラル液水溶液浸漬工程、一次発酵工程、二次発酵・完熟工程において、ミネラル液水溶液中に含まれる鉄を、フェリハイドライトの原料となるFe(OH)3の形態とすることが可能となり、フェリハイドライトを形成させることが可能となる。 また、ミネラル液水溶液浸漬工程の前に、pH調整工程で、有機物のpHを5以上に調整しているため、ミネラル液水溶液浸漬工程で、ミネラル液水溶液のpHを5以上とすることが可能となり、ミネラル液水溶液中に、フェリハイドライトの原料となるFe(OH)3(水酸化鉄)を存在させることが可能となる。その結果、有機物がアルミニウム、マグネシウム等の他の元素と複合体を形成してしまうことを防止できる。腐植複合体を、生体や生態系に悪影響を及ぼす可能性が極めて小さい鉄を含むものとすることが可能となるのである。さらに、反応が起こる表面積が大きく、またpH変化によって起こる変異荷電特性に起因する物理化学反応力が大きいフェリハイドライトを含む腐植複合体を形成することが可能となるのである。【0052】 一次発酵工程、二次発酵・完熟工程で、ミネラル液水溶液の添加と同時に、有機物の発酵による堆肥化をおこなっているため、フェリハイドライト特有の土壌回復資材としての性能のほか、一般的な堆肥としての性能を有するフェリハイドライト腐植複合体を製造することが可能となる。 また本発明によれば、pH5〜7の堆積岩土壌の無機酸抽出物の水溶液存在下で、有機物を発酵処理することにより形成された完熟有機物堆肥であると共に、フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材であって、無機酸抽出物は、金属の中で鉄を最も多く含むと共に、鉄を、pH3以下では、Fe3+として、pH3〜pH4では、Fe3+とFe(OH)2+として、pH4〜pH5では、Fe3+とFe(OH)2+とFe(OH)2+として、pH5より高いpHでは、Fe(OH)2+とFe(OH)2+とFe(OH)3として含んでいるので、フェリハイドライト特有の土壌回復資材としての性能のほか、一般的な堆肥としての性能を有するフェリハイドライト腐植複合体を得ることが可能となる。また、フェリハイドライトは、比表面積が約200(m2/g)と大きく、有機化合物のOH端、O端との反応に供される場が広いという性質を有するため、触媒能、凝集体を形成する能力の高い土壌回復資材を得ることが可能となる。 また、このフェリハイドライト腐植複合体は、無機酸抽出物由来のミネラルを含むため、微生物や酵素の活性の促進、微生物の環境改善が可能な土壌回復資材を得ることが可能となる。【0053】【図面の簡単な説明】図1は本発明のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法の一実施形態の流れを説明するブロック図であり、図2は本発明のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法の一次発酵工程と堆肥化後ミネラル添加工程で用いるブレンダの一例を示す説明図であり、図3は図2に示すブレンダの断面説明図であり、図4は本発明のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法で使用するミネラル液の組成を示す表である。 有機物のpHを、5以上に調整するpH調整工程と、 前記有機物のpHを5以上に維持すると共に酸素送入しながら、前記有機物を、金属中で鉄を最も多く含み、該鉄が液中で、pH5より高いpHで、Fe(OH)3として存在し、玄武岩および安山岩を含む群からなる少なくとも一の堆積岩土壌を無機酸で抽出して得たミネラル液を、pH5〜7に調整したミネラル液水溶液に、浸漬させるミネラル液水溶液浸漬工程と、 前記有機物のpHを5以上に維持すると共に前記有機物を攪拌しながら、該有機物に発酵助剤及び前記ミネラル液を水で希釈したミネラル液水溶液の混合液を散布する一次発酵工程と、 前記有機物のpHを5以上に維持すると共に前記有機物を堆肥場内に堆積して発酵させながら、前記有機物が所定温度に達したときに切り返しをしながら前記ミネラル液を水で希釈したミネラル液水溶液を散布して、完熟発酵堆肥を得る二次発酵・完熟工程と、を備える ことを特徴とするフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 前記所定温度は、65℃以上である ことを特徴とする請求項1記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 前記二次発酵・完熟工程後に、40〜50℃で、前記完熟発酵堆肥を攪拌しながら前記ミネラル液水溶液を散布すると共に前記完熟発酵堆肥の水分調整を行う堆肥化後ミネラル添加工程を行う ことを特徴とする請求項1記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 前記pH調整工程では、前記有機物のpHを、7以上に調整する ことを特徴とする請求項1記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 前記pH調整工程の前に、前記有機物のC/N調整を行う ことを特徴とする請求項1記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 前記一次発酵工程および前記二次発酵・完熟工程は、前記ミネラル液水溶液中の鉄を3価の状態に維持して行う ことを特徴とする請求項1記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 前記ミネラル液に含有されるマグネシウム量およびカルシウム量の和が、前記ミネラル液に含有される鉄の量の30重量%未満である ことを特徴とする請求項1記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 前記pH調整工程の前に、玄武岩および安山岩を含む群からなる少なくとも一の堆積岩土壌を無機酸で抽出して前記ミネラル液を調製する無機酸抽出工程を行い、 該無機酸抽出工程では、純鉄(Fe(3+))と非結晶質の針鉄鉱(α−FeOOH)とを含む残渣と、前記ミネラル液とを得る ことを特徴とする請求項1記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材の製造方法。 請求項1の製造方法によって製造され、pH5〜7の堆積岩土壌の無機酸抽出物の水溶液存在下で、有機物を発酵処理することにより形成された完熟有機物堆肥であると共に、フェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材であって、 前記無機酸抽出物は、金属の中で鉄を最も多く含むと共に、前記鉄を、pH5より高いpHで、Fe(OH)3として含む ことを特徴とするフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材。 前記無機酸抽出物に含有されるマグネシウム量およびカルシウム量の和が、前記無機酸抽出物に含有される鉄の量の30重量%未満である ことを特徴とする請求項9記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材。 水分量が10〜20重量%である ことを特徴とする請求項9記載のフェリハイドライト腐植複合体からなる土壌回復資材。


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