生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ヘモグロビンスカベンジャー受容体の活性化による血液細胞作製法
出願番号:2002575014
年次:2009
IPC分類:A61K 39/395,A61K 38/00,A61K 38/22,A61P 7/06,A61P 43/00,C12N 5/06


特許情報キャッシュ

ムエラー スーザン ジー. ベル デイビッド マシューズ キャスリン エマ JP 4326803 特許公報(B2) 20090619 2002575014 20020326 ヘモグロビンスカベンジャー受容体の活性化による血液細胞作製法 ヘモソル インコーポレーテッド 500461608 清水 初志 100102978 ムエラー スーザン ジー. ベル デイビッド マシューズ キャスリン エマ US 60/278,453 20010326 US 60/341,793 20011221 20090909 A61K 39/395 20060101AFI20090820BHJP A61K 38/00 20060101ALI20090820BHJP A61K 38/22 20060101ALI20090820BHJP A61P 7/06 20060101ALI20090820BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090820BHJP C12N 5/06 20060101ALI20090820BHJP JPA61K39/395 DA61K37/02A61K37/24A61P7/06A61P43/00 105A61P43/00 111C12N5/00 E A61K 39/395 A61K 38/00 A61K 38/22 C12N 5/06 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第02/032941(WO,A1) Journal of Leukocyte Biology (1999), Vol.66, p.858-866 KRISTIANSEN METTE,NATURE,2001年,V409N6817,P198-201 SANCHEZ C,JOURNAL OF IMMUNOLOGY,米国,1999年 5月 1日,V162N9,P5230-5237 Immunology (1992), Vol.75, p.588-595 Cytokine (2000), Vol.12, No.9, p.1312-1321 20 CA2002000411 20020326 WO2002076501 20021003 2004525932 20040826 19 20050324 佐久 敬発明の技術分野 本発明は、血液細胞の作成につながる幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激する方法および組成物に関する。より詳細に述べると、本発明は、幹細胞、ならびに赤血球前駆細胞および骨髄前駆細胞の刺激を通じて、各々、赤血球形成および骨髄造血(myelopoiesis)を刺激することを含む、造血を刺激する方法に関する。発明の背景 ヘモグロビンスカベンジャー受容体は、最近単球およびマクロファージ上で同定された(Kristiansen、2001)。この受容体は、ハプトグロビン−ヘモグロビン複合体のエンドサイトーシスを媒介することにより、ヘモグロビンを捕捉する。この受容体は、専ら単球およびマクロファージ上で発現されることが報告されている急性期調節性膜貫通タンパク質であるM130/CD163としても同定されてる。CD163は、グループBスカベンジャー受容体システインリッチスーパーファミリーに属しており、この受容体ファミリーは、CD5、CD6およびWC1を含み、これらは、各々、B細胞、T細胞およびCD4-8-γδTリンパ球上に存在する。ヘモグロビンおよび多量体ハプトグロビンの複合体はCD163に対して、ヘモグロビンおよび二量体ハプトグロビンの複合体の示すものよりもより高度の機能的親和力を発揮する。 培養した単球上のCD163の抗体が媒介した架橋に関する先行する研究は、表面CD163のライゲーションが、チロシンキナーゼ依存型シグナルを誘導し、その結果細胞内カルシウムの動員、イノシトール三リン酸生成、ならびにインターロイキン6(IL-6)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む抗炎症性サイトカイン類の分泌の促進を生じることを示している(van den Heuvelら、1999)。 造血は、赤血球、顆粒球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、巨核球、B細胞およびT細胞を含む、血液細胞の産生および発生と定義される(Wintrobe、1999)。造血は、造血幹細胞の増殖および分化の結果として生じる。造血幹細胞は、血液中に認められる複数の細胞系統を生じることができる多分化能細胞である。造血幹細胞は、骨髄中に存在し、かつそれらの成長、増殖および分化は、骨髄内で、造血増殖因子および間質細胞の両方の影響を受ける。幹細胞は、特異的増殖因子により刺激されるまでは、通常静止期の非分裂状態で存在するが、刺激されると、これらは分裂し、赤血球系、骨髄系またはリンパ系のような、1種または複数の系統の血液細胞の産生に方向ずけられた高度に増殖性の前駆細胞を生じると考えられている。 血球減少症と称されるある種の臨床障害は、循環血中の特定の細胞型のレベルの減少で特徴付けられる。例えば、好中球減少症は、これにより循環血中の好中球レベルの減少が生じる障害である。この障害は、ふたつの異なる造血増殖因子であるGM-CSFまたはG-CSFにより治療することができる。しかしこれらの増殖因子の投与は、有害な副作用の高い発生率が関与することが多い。例えば同種骨髄移植後のG-CSFの投与は、呼吸困難、胸痛、悪心、低酸素血症、発汗、アナフィラキシー、および潮紅を生じることがある(Khouryら、2000)。 好中球減少症はAIDSにも関連しており、現在増殖因子により治療されている(Dubreuil-Lemaireら、2000)。同じく重度の先天性好中球減少症型も存在し(Daleら、2000)、これらの患者の少ない割合は、増殖因子の投与に対して治療抵抗性である。 貧血は、体の酸素輸送要件に合致するには不充分なヘモグロビンの病理学的結果である。歴史的に、ある種の貧血は、血液または赤血球細胞の輸注により治療されてきた。疾患伝播の可能性と共に、溶血性、有熱性およびアレルギー性の反応を含む、輸血に関連した様々な合併症が、この治療を望ましくないものとしている。赤血球細胞の成長および発生(赤血球形成)の刺激は、貧血の治療において望ましい。貧血にはいくつかの原因があり、これは、過度の失血、増大した赤血球細胞の破壊、減少した赤血球細胞形成、および異常なヘモグロビンの生成がある。減少した赤血球細胞形成は、鉄欠乏(食事、胃腸管からの吸収障害、発生している赤血球細胞による不充分な鉄輸送または鉄利用のいずれか)、不充分なエリスロポエチン(Epo)産生(腎機能障害)または骨髄機能不全の結果であることがある。骨髄の赤血球形成活性は、鉄およびEpo-依存型貧血においては無傷であるので、このような貧血は、各々、鉄またはEpo療法に順応しやすい。 鉄欠乏に起因した貧血は、典型的には鉄の経口または経静脈投与により治療される。慢性腎不全患者は、典型的には腎のEpo産生不能が原因であるEpo-依存型貧血に罹患している。これらの患者は透析を受け、かつその90%が臨床的に貧血性である。複数回の輸血を含む透析患者の貧血の従来型の治療は、Epo投与に大きく置き換えられつつある。実際、全透析患者の〜88%が、Epoで治療されている。Epo療法を受けている患者の3分の1は、高血圧を発症しており、これは一般に降圧薬の使用により正常化することができる。赤血球前駆体はEpoにより刺激され、成熟赤血球細胞へと分化し、かつ主要な赤血球細胞タンパク質であるヘモグロビンを合成する。 Epo療法の大きい制約要因は、長期治療にかかる経費である。慢性腎不全患者に関する典型的Epo用量は、3回用量で投与される225ユニット/kg/週である。米国における医療保険制度の償還は、1,000ユニット当り10.00ドルであり、従って70kgの患者についての典型的経費は、年間8,000ドルにも及ぶ。1995年には、米国では患者175,000名が透析を受けており、その結果この適応のみで市場は8億8300万ドルを超えている。1996年にこの療法にかかった経費は、11億ドルに達すると推定される。従って貧血治療のEpo要求要件を低減する新規療法は、患者と医療保険制度のシステムにとって恩恵があるであろう。Epo-依存型貧血の治療のためのEpo要求要件を低減することが可能である他の物質の発見は、利点であろう。 更に、Epo療法に反応しない様々な貧血がある。これらの貧血型の例は、化学療法が誘導した貧血および悪性のものを含む慢性疾患の貧血である。後天性免疫不全症患者は、AZTで治療されているAIDS患者のように、貧血にも罹患し得る。これらの型の貧血は、抑制されたEpo産生または低下した骨髄のEpoに対する反応のいずれかの結果として赤血球形成が無効となることの結果であることがある。これらの型の貧血の治療は、原発性疾患の治療に関連している;しかし原発性疾患が容易に治療されない場合、次の貧血療法は、赤血球細胞の輸注を含むことができる。輸注の有害な副作用は、急性および遅延型の溶血反応および伝播性疾患の移入の可能性である。 前述の観点から、造血の刺激により、患者の血液細胞数を増加する改善された方法を開発することが当該技術分野において必要である。発明の概要 本発明者らは、ヘモグロビンスカベンジャー受容体であるCD163の活性化が、赤血球前駆体および骨髄前駆体の両方の成長、増殖および分化を刺激し、赤血球細胞形成の増強を導くことができることを決定した。本発明者らは、CD163が、CD34+造血幹細胞により発現されることも明らかにした。 従って本発明は、幹細胞上のCD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、CD163受容体を発現することが可能な幹細胞を成長、増殖、分化および/または動員する方法、またはこの受容体により刺激されたシグナル伝達経路に反応する方法を提供する。 本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、造血を刺激する方法も提供する。 本発明は更に、CD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、赤血球形成を刺激する方法も提供する。 また本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、骨髄造血を刺激する方法も提供する。 本発明は同じく、CD163を活性化することができる物質を有効量、適当な希釈剤または担体と混合して含有する薬学的組成物も含む。 本発明は更に、CD163を活性化することができる物質を有効量含有する、幹細胞ならびに/または前駆細胞および/もしくは細胞の成長、増殖、分化および/または動員の増強に有用な細胞培養添加剤を提供する。 本発明は、(a)試料を、CD163と結合することができる物質と接触させる工程、および(b)この物質に結合された細胞を選択する工程を含む、試料中の幹細胞または前駆細胞を選択する方法も提供する。 本発明の別の特徴および利点は、下記の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の好ましい態様を示しながら、単に例証を目的として提供されることは理解されるべきである。なぜなら、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修飾はこの詳細な説明の技術分野の業者には明らかであるからである。発明の詳細な説明I.発明の方法 先に説明したように、本発明者らは、CD34+幹細胞は、ヘモグロビンスカベンジャー受容体CD163を発現することを明らかにしている。従って、本発明は、幹細胞上のCD163を活性化することができる物質を有効量、それを必要とする細胞または動物に投与することを含む、幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激する方法を提供する。本発明は更に、幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激するための、有効量のCD163を活性化することができる物質の使用も提供する。本発明は更に、幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激する医薬品を調製するための、有効量のCD163を活性化することができる物質の使用も提供する。 本明細書において使用される語句「CD163を活性化することができる物質」は、細胞上のCD163ヘモグロビンスカベンジャー受容体またはCD163関連受容体に結合、架橋またはライゲーションし、かつその細胞の成長、増殖、分化および/または動員の刺激を生じることができる全ての物質を含む。この用語は、CD163またはCD163-関連受容体の活性化に反応して活性化されたシグナル伝達経路を活性化することができる物質も含む。例えばこの物質は、CD163の活性化に反応して活性化された下流のシグナル伝達経路を活性化することができ、チロシンキナーゼ、カルシウム動員ならびにイノシトール三リン酸(IP3)およびイノシトールテトラキスリン酸(IP4)の動員を含むが、これらに限定されるものではない。語句「CD163経路を活性化することができる物質」は、更にCD163またはCD163-関連受容体の活性化に反応して活性化されたシグナル伝達経路の不活性化をブロックするいずれかの物質を含む。 本明細書において使用される語句「幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員の刺激」は、その物質が、その物質が存在しない場合の幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員と比べて、幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激または増強することができることを意味する。 本明細書において使用される用語「有効量」は、所望の結果(例えば、幹細胞、赤血球前駆細胞および/もしくは骨髄前駆細胞の成長、増殖、分化および/もしくは動員の刺激、ならびに/または造血、赤血球形成または骨髄造血の刺激)を達成するのに必要な有効量および用量および期間を意味する。 本明細書において使用される用語「動物」は、動物界の全てのメンバーを含み、ヒトが好ましい。物質の動物への投与は、インビボおよびエクスビボ投与の両方を含む。 本明細書において使用される用語「細胞」は、単独の細胞に加え、複数のまたは集団の細胞を含む。細胞への物質の投与は、インビトロおよびインビボ投与の両方を含む。 本明細書において使用される用語「幹細胞」は、動物において造血細胞を含むいずれかの細胞に分化することが可能な細胞を意味する。幹細胞は、CD163受容体を発現するかもしくは発現可能であり、またはその受容体により刺激されたシグナル伝達経路に対し反応することが可能であろう。 好ましくは、幹細胞は、CD34+幹細胞である。CD34+細胞は、全ての造血系由来細胞により個体において自己再生および再集合(repopulation)が可能である点で従来から「幹」細胞と見なされる。CD34+細胞は、更にCD38のような他のマーカーの同時発現により、亜集団に明確に描写され(delineate)、ならびにこれらの亜集団には造血系を再移植および再集合する能力がある(例えば、Henonら、2001)。 幹細胞の刺激は、自家または異種移植のためにドナー末梢血を用いるプロトコールに必要とされる血管外骨髄部位から循環血への幹細胞の動員を促進することができる。組換えヒトG-CSFは、CD34+幹細胞の動員に広範に使用される(見本用、Korbling、1998参照)。本発明者らは、CD34+細胞によるCD163の発現を明らかにしているので、CD163経路のその細胞に対する刺激は、それらの成長および増殖ならびに末梢血への可能性のある動員を生じることは恐らく起こり得るであろう。G-CSFの代わりに、またはその減少量と一緒のCD163刺激物質(例えば、架橋抗体)の使用は、サイトカイン投与に関連し得る副作用を伴わずに移植可能な幹細胞の動員を生じるであろう。 本発明者らは、赤血球系および骨髄系の両前駆細胞はCD163の活性化により刺激することができることを示しているので、本発明者らは、CD163経路の活性化は、多系統造血の刺激に有用であってよいことを示した。造血の刺激は、赤血球、骨髄細胞(例えば、単球、マクロファージ、好酸球、好中球、好塩基球および巨核球)およびリンパ細胞(B細胞、T細胞およびNK細胞)に加え、骨髄性およびリンパ性の両方を起源とする樹状細胞を含む、血液細胞および免疫系の細胞の両方の形成において有用である。 従って本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、造血を刺激する方法を提供する。本発明は更に、造血を刺激するために、CD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。本発明は更に、造血を刺激するための医薬品の調製のためにCD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。 造血刺激は、血球減少症を含む広範な状態の治療に加え、移植において使用するための血液細胞の発生の刺激または免疫欠損症を治療する用途のための免疫系の細胞の刺激において有用である。 本明細書において使用される語句「造血の刺激」は、物質が、造血幹細胞または造血前駆細胞(例えば、赤血球系、骨髄系またはリンパ系前駆体)の成長、増殖、分化および/または動員を、その物質が存在しない場合の造血幹細胞または前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員と比べ、刺激または増強することを意味する。 当業者は、CD163を活性化することができる物質が、造血を刺激することができるかどうかを決定することができる。例えば、コロニー形成アッセイは、造血幹細胞および前駆体を定量する方法である(McCulloch、1984)。コロニー形成アッセイにおいて、細胞は、造血前駆細胞の成長、生存および分化を支持する様々なサイトカイン類が存在するメチルセルロースのような半固形培地に播種される。それが形成する造血コロニーの種類は以下を含む:赤芽球バースト形成単位(BFU-E)、赤芽球コロニー形成単位(CFU-E)、顆粒球マクロファージコロニー形成単位(CFU-GM)、マクロファージコロニー形成単位(CFU-M)、巨核球コロニー形成単位(CFU-Meg)および顆粒球、赤芽球、単球および巨核球(GEMM)コロニー。半固形アッセイにおいて、様々なサイトカインおよびこれらのサイトカインの様々な組合せに反応する幹細胞または前駆細胞は、赤血球前駆体(例えば、EPOと組合わせたIL-3)または顆粒球形成(granulopoeitic)/単球コロニー(例えば、IL-1β、IL-6およびSCF)の成長および分化を最適化している。一部の組合せは、骨髄系および赤血球系の両コロニーを独立して数え上げることに加え、より原始的な「混合型」コロニーの数え上げを必要としている(例えば、G-CSFおよびGM-CSFのいずれかを含むもの、検証についてMessner、7:18-22(1991)参照)。各幹細胞または前駆細胞は、増殖および分化し、形態学的に異なるコロニーを形成する。2種の機能的に異なる赤血球前駆体(BFU-EおよびCFU-E)は、半固形培地において増殖した場合に形態学的に認識可能なコロニーを形成するそれらの能力を基に同定される。BFU-Eは、最も原始的な赤血球前駆体を表わし、かつ大きい複数のクラスター化されたヘモグロビン化(hemoglobinize)されたコロニーを形成する。CFU-Eは、より小さいヘモグロビン化されたコロニーを形成するより分化した赤血球前駆体である。BFU-Eは、赤血球形成に完全に方向付けられた早期に同定可能な前駆体であり、赤血球前駆体に更に分化され、かつより成熟したCFU-Eを自己再生する比較的大きい能力を有する。発生するために、赤血球前駆体コロニーは、典型的には培地中にエリスロポエチン(Epo)が存在することを必要とする。しかし早期には、始原赤血球前駆体は、Epoと無関係の様式で増殖する。 コロニー形成アッセイは、造血幹細胞および前駆体を定量する手段を提供するとともに、幹細胞および前駆細胞の子孫の増殖および分化に影響を及ぼす因子に関する情報を得る手段も提供する。例えば赤血球前駆体コロニーは、分裂および分化する単独の前駆細胞から生じ、その結果成熟コロニーは、ヘモグロビン化した赤血球で主に構成される。形態学的には、赤血球コロニーのサイズは、赤血球前駆体の子孫の増殖の速度および程度に関する情報を提供することができる。同じくより赤い赤血球コロニーは、より大きいヘモグロビン含量、および赤血球のより大きい分化程度の可能性を示唆するであろう。 前述のように、本発明者らは、CD163の活性化は、赤血球系細胞の増殖および分化を促進することを示している。従って、別の態様において、本発明は、CD163を活性化することができる物質の有効量をそれを必要とする細胞または動物へ投与することを含む、赤血球形成刺激する方法を提供する。本発明は、赤血球形成を刺激するためのCD163を活性化することができる物質の有効量の使用も提供する。本発明は更に赤血球形成を刺激する医薬品を調製するために、CD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。 本明細書において使用される語句「赤血球形成の刺激」は、物質が、赤血球系細胞または赤血球前駆細胞または幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を、物質が存在しない場合の赤血球系細胞または赤血球前駆細胞または幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員と比べ、刺激または増強することができることを意味する。当業者は、CD163を活性化することができる物質が、赤血球形成を刺激するかどうかを決定することができる。例えば、先におよび実施例において説明したコロニー形成アッセイも使用することができる。 赤血球形成の刺激は、貧血の治療において有用である。従って具体的態様において、本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、貧血の治療法に関する。本発明は更に、貧血を治療するために、CD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。本発明は更に、貧血を治療する医薬品を調製するために、CD163を活性化することができる物質を有効量を使用する方法も提供する。 本発明者らは、CD163の活性化が骨髄系細胞の増殖を増強することも示している。従って別の態様において、本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、骨髄造血を刺激する方法を提供する。本発明は更に、骨髄造血を刺激するために、CD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。本発明は更に、骨髄造血を刺激する医薬品を調製するために、CD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。 本明細書において使用される語句「骨髄造血の刺激」は、物質が、骨髄系細胞または骨髄前駆細胞または幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を、物質が存在しない場合の骨髄細胞または骨髄前駆細胞または幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員と比べ、刺激または増強することができることを意味する。当業者は、CD163を活性化することができる物質が、骨髄細胞を刺激することができるかどうかを決定することができる。例えば、先におよび実施例において説明したコロニー形成アッセイも使用することができる。 骨髄細胞の成長、増殖、分化および/または動員の刺激は、好中球減少症の治療に使用することができる。CD163経路のCD163活性化による骨髄細胞の刺激は、比較的少ない副作用という追加の便益と共に、骨髄移植に関連した好中球減少症を克服する際の増殖因子の効果を置換え/増大することができる。この方法は、AIDSに関連した好中球減少症または重症の先天性好中球減少症を治療するために追加的に使用することができる。従って具体的態様において、本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、それが必要な細胞または動物に投与することを含む、好中球減少症の治療法を提供する。本発明は更に、好中球減少症を治療するために、CD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。本発明は更に、好中球減少症を治療する医薬品を調製するために、CD163を活性化することができる物質を有効量使用する方法も提供する。 本明細書において使用されかつ当該技術分野において良く理解されるように「治療する」または「治療」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得る方法である。有益なまたは望ましい臨床結果は、検出ができるか否かに関わらず、1種または複数の症状または状態の緩和または改善、疾患程度の減退、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患の広がりの防止、疾患の進行の遅延または緩徐化、病態の改善または軽減、および寛解(部分または完全のいずれか)を含むが、これらに限定されるものではない。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存と比べ、生存の延長も意味することができる。II.CD163を活性化する物質 本発明は、本発明の方法におけるCD163を活性化することができる(先に定義したような)いずれかおよび全ての物質の使用を含む。この物質は、タンパク質(抗体など)、ペプチド、核酸、糖質、有機化合物、無機化合物、小分子、薬物、CD163リガンド、CD163受容体の可溶性型、いずれかおよび全てのCD163アゴニストに加え、CD163アンタゴニストを阻害するいずれかおよび全ての物質を含むが、これらに限定されるものではなく、あらゆる種類の物質であることができる。 好ましい態様において、CD163を活性化する物質は、処理される細胞上のCD163受容体に結合する物質である。CD163に結合する物質の例は、抗体およびCD163リガンドを含む。(a)抗体 特定の態様において、CD163を活性化することができる物質は、CD163受容体に結合する抗体である。CD163に対する抗体は、例えばSerotec社またはMaine Biotechnology Services社のような、商業的給源から容易に入手可能なものであることができる。更に、当業者は、KohlerおよびMilsteinの論文(Nature、256:495(1975))ならびに米国特許第RE 32,011号;第4,902,614号;第4,543,439号;および、第4,411,993号に説明されたような、当該技術分野において公知の技術を用い、容易に調製することができ、これらは本明細書に参照として組入れられている。(同じく、「Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses」、Plenum Press社、Kennett、McKearn、およびBechtol(編集)、1980年、および「Antibodies: A Laboratory Manual」、HarlowおよびLane(編集)、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、1988年を参照のこと、これらも本明細書に参照として組入れられている)。 例えば、CD163のペプチドを使用することにより、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を、常法により作成することができる。哺乳類(例えば、マウス、ハムスターまたはウサギ)は、哺乳類における抗体反応を誘起するペプチドの免疫原性の型で免疫感作することができる。ペプチドに免疫原性を付与する技術は、担体または当該技術分野において周知の他の技術との複合を含む。例えば、このタンパク質またはペプチドは、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫感作の進行は、血漿または血清中の抗体力価の検出によりモニタリングすることができる。標準のELISAまたは他のイムノアッセイ法は、抗体レベルを評価するための抗原としての免疫原と共に使用することができる。免疫感作後、抗血清を得ることができ、望ましいならば、血清から単離されたポリクローナル抗体を得ることができる。 モノクローナル抗体を作成するために、抗体産生細胞(リンパ球)を、免疫感作した動物から収集し、かつ標準の体細胞融合法により骨髄腫細胞へ融合し、これによりこれらの細胞を不死化し、かつハイブリドーマ細胞を得ることができる。このような技術は当該技術分野において周知である技術(例えば、KohlerおよびMilsteinにより当初開発されたハイブリドーマ技術(Nature、256:495-497(1975))に加え、ヒトB-細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunol. Today、4:72(1983)、ヒトモノクローナル抗体を作成するEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら、「Monoclonal Antibodies in Cancer Therapy」、Allen R. Bliss社、77-96頁(1985))、およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huseら、Science、246:1275(1989)などの他の技術)がある。ハイブリドーマ細胞は、ペプチドと特異的に反応する抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、かつモノクローナル抗体を単離することができる。 本明細書において使用される用語「抗体」は、同じくCD163と特異的に反応するそれらの断片、またはそれらのペプチドを含むことが意図されている。抗体は、従来の技術を用いて断片化し、かつ断片を先に説明したものと同じ方法で有用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab')2断片は、ペプシンによる抗体の処理により作成することができる。得られるF(ab')2断片は、ジスルフィド橋を還元しFab'断片を生成するように処理することができる。 キメラ抗体誘導体、すなわち、非−ヒト動物可変領域およびヒト定常領域を一緒にしている抗体分子も、本発明の範囲内に企図されている。キメラ抗体分子は、例えば、マウス、ラットまたは他の種の抗体由来の抗原結合ドメインを、ヒト定常領域と共に含むことができる。従来型の方法は、CD163抗原を認識する免疫グロブリン可変領域を含むキメラ抗体の作出に使用することができる(例えば、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、81:6851(1985);Takedaら、Nature、314:452(1985)、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Tanaguchiら、欧州特許公開第EP171496号;欧州特許公開第0173494号、英国特許第GB 2177096B号を参照のこと。)。キメラ抗体は、対応する非キメラ抗体よりもヒト対象において免疫原性がより低いことが予想される。 本明細書に説明した本発明のタンパク質と特異的に反応性であるモノクローナル抗体またはキメラ抗体は、更にヒト定常領域のキメラの作出によりヒト化することができ、ここで可変領域の一部、特に抗原−結合ドメインの保存されたフレームワーク領域は、ヒト起源のものであり、かつ超可変領域のみが、非ヒト起源である。このような免疫グロブリン分子は、当該技術分野において公知の技術により作出することができる(例えば、Tengら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、80:7308-7312(1983);Kozborら、Immunology Today、4:7279(1983);Olssonら、Meth. Enzymol.、92:3-16(1982))、および国際公開公報第92/06193号または欧州特許第EP0239400号)。ヒト化された抗体は、商業的に作製することもできる(Scotgen社、2 Holly Road, Twickenham, Middlesex, 英国)。 CD163に対して反応性である特異的抗体、または抗体断片は、CD163またはその一部をコードしている核酸分子から作成されたペプチドを伴う細菌において発現された免疫グロブリン遺伝子、またはそれらの一部をコードしている発現ライブラリーのスクリーニングにより作成することもできる。例えば完全Fab断片、VH領域およびFV領域は、相発現ライブラリーを用い、細菌において発現することができる(例えば、Wardら、Nature、341:544-546(1989);Huseら、Science、246:1275-1281(1989);および、McCaffertyら、Nature、348:552-554(1990)参照)。あるいは、SCID-huマウス(例えばGenpharm社により開発されたモデル)を用い、抗体またはそれらの断片を作出することができる。 本発明の抗体は、幹細胞の表面上の別の抗原に特異的な別の抗体に直接連結されたCD163に特異的な抗体を含む二価抗体も含む。二価抗体は、ひとつの抗体の他方への化学的結合により、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)の使用により調製することができる。本発明の抗体は、二重特異性抗体も含む。二重特異性抗体は、CD163に特異的な抗体の可変領域および標的とされる幹細胞表面上の少なくとも1個の抗原に特異的な可変領域を含む。二重特異性抗体は、ハイブリッドハイブリドーマの形成により調製することができる。このハイブリッドハイブリドーマは、StaerzおよびBevanの論文(PNAS(USA)、83:1453(1986))ならびにStaerzおよびBevanの論文(Immunology Today、7:241(1986))のような、当該技術分野において公知の手法を用い調製することができる。二重特異性抗体は、Staerzら(Nature、314:628(1985))およびPerezら(Nature、316:354(1985))により説明されたような手法を用いる化学的手段によるか、または組換え免疫グロブリン遺伝子構築体の発現により、構築することもできる。(b)他の物質 抗体に加え、CD163を活性化することができる他の物質も、同定しかつ本発明の方法において使用することができる。例えば、幹細胞または前駆細胞上のCD163に結合することができる物質は、CD163の、強力にCD163に結合する物質との反応、その後のCD163とその物質の間に複合体が形成されたかどうかの検出により同定することができる。このアッセイにおいてCD163に結合する物質は、更にそれらが本発明の方法において有用であるかどうかを決定するために評価することもできる。 従って本発明は、下記の工程を含む、CD163に結合することができる物質を同定する方法も含む:(a)CD163および試験物質を、CD163と試験物質の間に複合体を形成することができるような条件下で反応する工程、および(b)CD163と試験物質の複合体について、遊離の物質についてまたは複合体化されていないCD163についてアッセイする工程であり、ここでこの複合体の存在は、試験物質がCD163と結合可能であることを示す工程。 物質とCD163の複合体を形成させる条件は、この物質およびタンパク質の性質および量などの因子を考慮し選択することができる。 試験物質-CD163の複合体、遊離の物質または複合体化されていないタンパク質は、例えば、塩析、クロマトグラフィー、電気泳動、ゲル濾過、分画、吸収、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、凝集、またはそれらの組合せのような、従来の単離技術により単離することができる。これらの成分のアッセイを促進するために、CD163もしくはその物質に対する抗体、または標識されたCD163、もしくは標識された物質を使用することができる。これらの抗体、CD163、または物質は、検出可能な物質で標識しても良い。 本発明の方法で使用されるCD163または試験物質は、不溶化することができる。例えば、CD163または物質は、適当な担体に結合しても良い。適当な担体の例は、アガロース、セルロース、デキストラン、Sephadex、Sepharose、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレン、濾紙、イオン交換樹脂、プラスチックフィルム、ガラスビーズ、シリカ、ポリアミン-メチルビニル-エーテル-マレイン酸コポリマー、アミノ酸コポリマー、エチレン-マレイン酸コポリマー、ナイロン、絹などがある。この担体は、例えば、チューブ、テストプレート、ビーズ、円板、球形などの形状であることができる。 不溶化されたCD163または物質は、例えば臭化シアンカップリングのような、公知の化学的または物理的方法を用いて、適当な不溶性担体とその物質を反応することにより調製することができる。 CD163または試験物質は、前述のアッセイにおいて細胞表面に発現することもできる。III.組成物 本発明は、造血刺激、赤血球形成の刺激、骨髄造血の刺激、または幹細胞および/もしくは前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員の刺激において使用するための、CD163を活性化することができる物質を含有する薬学的組成物も含む。従って、本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、適当な希釈剤または担体と混合して含有する、造血を刺激するための薬学的組成物を提供する。本発明は更に、CD163を活性化することができる物質を有効量、適当な希釈剤または担体と混合して含有する、赤血球形成を刺激するための薬学的組成物も提供する。本発明は更に、CD163を活性化することができる物質を有効量、適当な希釈剤または担体と混合して含有する、骨髄造血を刺激するための薬学的組成物も提供する。更に本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量、適当な希釈剤または担体と混合して含有する、幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激するための薬学的組成物も提供する。本発明は更に、CD163を活性化することができる物質を有効量、適当な希釈剤または担体と混合して含有する、赤血球および/または骨髄細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激するための薬学的組成物も提供する。 赤血球形成を刺激するために、この薬学的組成物は、1種または複数の造血増殖因子(エリスロポエチン)を追加的に含有しても良い。骨髄造血を刺激するために、この薬学的組成物は、G-CSF、GM-CSF、IL-3などのような1種または複数の造血増殖因子を追加的に含有しても良い。 このような薬学的組成物は、病巣内、静脈内、外用、経直腸的、非経口的、局所的、吸引または皮下、皮内、筋肉内、髄腔内、経腹膜、経口、および脳内の使用のためであることができる。この組成物は、液体、固形物または半固形物の形状であり、例えば丸剤、錠剤、クリーム剤、ゼラチンカプセル剤、カプセル剤、坐剤、ソフトゼラチンカプセル剤、ゲル剤、膜状、チューブ状、液剤または懸濁剤であることができる。 本発明の薬学的組成物は、ヒトまたは動物への投与のために意図することができる。投与されるべき用量は、個体の必要性、望ましい作用および選択された投与経路に応じて変動する。 薬学的組成物は、患者に投与することができる薬学的に許容できる組成物の調製に関するそれ自身公知の方法により調製することができ、その結果、有効量の活性物質が、薬学的に許容できる賦形剤との混合物において一緒にされる。適当な賦形剤は、例えば「レミントン薬科学」(Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing社、イーストン、Pa、米国、1985年)に説明されている。 これを基礎として、この薬学的組成物は、排他的ではないが、活性化合物または物質を、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤または希釈剤と会合して含み、かつ適当なpHおよび生理的液体と等浸透圧である緩衝溶液中に含まれる。この薬学的組成物は、追加的に造血、赤血球形成または骨髄造血を刺激することができる他の物質、もしくは幹細胞および/または前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激することができる他の物質などを含むことができる。IV.培養添加剤 CD163を活性化する物質は、哺乳類の前駆細胞または幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を増強するため、もしくは造血、赤血球形成または骨髄造血を刺激するために、培養培地への添加剤として使用することができる。従って、本発明は、CD163を活性化することができる物質を有効量含有する、前駆細胞および/または幹細胞の成長、増殖、分化および/または動員を増強するのに有用な細胞培養の添加剤を提供する。CD163を活性化することができる物質は、造血幹細胞の発現に従来使用されていた血清非含有培地に添加することができる。例えば、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3(IL-3)、GM-CSF、Fltリガンド(FL)、トロンボポエチン(TPO)および顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)のような増殖因子(Kobariら、2000に説明されたようなもの)が添加された血清−非含有培地は、CD163を活性化することができる物質を補充することができる。V.細胞濃縮または検出 前述のように、本発明者らは、臍帯血または成人骨髄もしくは末梢血由来のCD34+細胞上のCD163受容体の存在を明らかにしている。細胞のCD34+/CD163+亜集団は更にそれらの造血系の様々な区画を再生着(re-engraft)および再集合する能力について調べることができるので、これらの細胞上のCD163の存在は、重要な研究および臨床の道具を提供することができる。加えて、様々な給源(骨髄、動員された末梢血または臍帯血)由来の「幹」細胞は、CD163の発現について濃厚化されるか、もしくはそれにより選別される。 従って、本発明は、試料中の造血前駆細胞または幹細胞を選択する方法であり、(a)試料を、CD163に結合することができる物質と接触させる工程、および(b)その物質に結合した細胞を選択する工程を含む方法を提供する。 好ましい態様において、この物質は、CD163に結合することができる抗体であり、かつ細胞は免疫化学的技術を用いて選択される。例えば、CD163受容体を発現している幹細胞は、抗CD163抗体を用いることにより、この抗体を固形支持体に複合体化することにより、CD163陽性細胞を試料中の他の細胞から取り除いたのち固形支持体からCD163陽性細胞を取り除くことにより、「選別」または選択することができる。例えば抗CD163抗体は、磁気ビーズに複合体化することができる。CD163陽性細胞は、この抗体に結合され、かつCD163陽性細胞は、磁力源により、試料中の他の細胞から取り除くことができる。非CD163陽性細胞からの分離に際しては、CD163陽性細胞は、磁気ビーズから取り外すことができる。あるいは幹細胞上のCD163細胞の発現は、蛍光標識した抗CD163を使用することにより、蛍光表示式細胞分取器(FACS)を通じて、これらの細胞を選別するために使用することができる。CD163陽性細胞を精製する多くの他の方法は、当業者に明らかであろう。この方法は、赤血球系および骨髄系の両コロニーを形成することが可能である細胞、もしくは赤血球系および骨髄系の両方の細胞を伴う生体を再集合することが恐らく可能である細胞を選択するために使用することができる。従って、本発明は、赤血球系および骨髄系の両コロニーを形成することが可能である細胞を選択する方法であり、(a)試料を、CD163に結合することができる物質と接触させる工程、および(b)その物質に結合した細胞を選択する工程を含み、ここでこの結合した細胞は、赤血球系および骨髄系の両コロニー形成が可能である方法を提供する。本発明は更に、赤血球系および骨髄系の両方の細胞を伴う生体を再集合することが恐らく可能である細胞を選択する方法であり、(a)試料を、CD163に結合することができる物質と接触させる工程、および(b)その物質に結合した細胞を選択する工程を含み、ここで結合した細胞は、赤血球系および骨髄系の両方の細胞を伴う生体を再集合することが潜在的に可能である方法を提供する。 本発明は更に、試料から前駆細胞または幹細胞を取り除くための、陰性選択プロトコールにおける、抗体のようなCD163に結合する物質の使用も含む。従って、本発明は、造血細胞を試料から取り除く方法であり、(a)試料を、CD163に結合することができる物質と接触させる工程、および(b)試料から物質に結合している細胞を取り除く工程を含む方法を提供する。 下記の非限定的実施例は、本発明を例証するものである:実施例実施例1CD163はCD34+細胞により発現される 凍結保存された成人骨髄(ABM)由来のCD34+細胞を、Cytofix/Cytoperm溶液(Pharmingen Transduction Laboratories社、BO BioSciences部門;Becton, Dickson and Company)を用い、4℃で30分間かけて透過性とし、洗浄し、その後蛍光標識したアイソタイプ対照抗体(IgG1-FITC)または蛍光標識したMac-158マウス抗ヒトCD163モノクローナル抗体(MBS;Mac158-FITC)のいずれかと共にインキュベーションした。平行実験において、同じ骨髄試料由来の細胞を、蛍光標識した抗CD34(HPCA-2-PE)および抗CD45(H130-FITC)により細胞外染色した。試料は、EPICS XLフローサイトメーター(Beckman Coulter社)を用いて分析した(表1に示した結果は、骨髄細胞の95%以上がCD34+/CD45+であり、かつこれらの細胞の大半は同じく抗CD163抗体で染色される。)。 (表1)CD34+骨髄細胞のフローサイトメトリー分析実施例2CD34+細胞により発現されたCD163はウェスタンブロットにより検出可能である 細胞溶解液を、成人骨髄由来のCD34+細胞により、プロテアーゼインヒビターカクテルを含有するCHAPS緩衝液(0.5%CHAPS、10mM Tris、1mM MgCl2、1mM EDTAおよび10%グリセロール)中にこれらの細胞を再懸濁することにより、調製した。これらの再懸濁した細胞は、氷上で30分間インキュベーションした。溶解液を遠心し、上清を新たなチューブに移した。ウェスタンブロット分析のために、上清を、非還元性SDSの試料負荷緩衝液中に再懸濁した。その後試料を、8%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、ナイロンフィルターに移した。このナイロンフィルターを、スキムミルク含有溶液中でブロックし、かつその後最初にMac-158抗ヒトCD163抗体で、引き続きホースラディッシュペルオキシダーゼに複合したヤギ-抗マウス抗体(BIO-RAD Laboratories社)でプロービングした。結合した二次抗体を、Amersham社の増強型化学発光キットを用いて検出した。 図1に示したように、CD163免疫反応性は、CD34+細胞から調製した細胞溶解液中において検出可能であった。実施例3CD34+細胞上のCD163の細胞表面発現 CD34+細胞によるCD163の細胞外発現のレベルは、成人骨髄および臍帯血(UCB)低密度単核細胞(LDMNC)由来の凍結保存したCD34+細胞のフローサイトメトリー分析を用いて決定した。細胞は、蛍光標識した抗CD34(HPCA-2-PE)および抗CD163(Mac158-FITC)抗体により染色し、次にEPICS XLフローサイトメーターを用いて分析した。結果を表2に示す。 (表2)CD163およびCD34の同時発現n=試料の数 CD163+細胞の大部分は抗CD34抗体により同時染色され、これは、CD163は、CD34+細胞により発現されることを示している。ヒトCD163受容体はこれまでは、専ら単球/マクロファージ様細胞上に発現された受容体として説明されてきた。これらのデータは、CD163もヒト造血幹細胞の集団により発現されることを示している。実施例4CD163受容体の刺激は赤血球系細胞の成長を生じる マウス抗ヒト抗CD163モノクローナル抗体(EDHu-1、Serotec社)の作用を、赤血球前駆体コロニー(BFU-E)を支持する条件下でのコロニー-形成アッセイにおいて試験した。これらのコロニーは、半固形培地において、1個の始原赤血球前駆細胞により形成され、かつ比較的大きくかつ複数にクラスター化されている。コロニー内の細胞は、典型的には培養中12〜16日後にはヘモグロビン化される。臍帯血(UCB)から濃縮されたCD34+細胞、または成人骨髄(ABM)由来のCD34+細胞を、メチルセルロースに、10ng/mLインターロイキン-3(IL-3)および2U/mLエリスロポエチン(Epo)と共に、50μg/mLの抗CD163抗体の非存在または存在下で播種した。抗体の赤血球前駆体数に対する作用を評価し、かつその結果を表3に示した: (表3)CFAにおける抗CD163抗体(Ab)により刺激されたABMまたはUCB由来のCD34+細胞*増加の相対倍率 抗CD163抗体は、50μg/mlで、対応する対照プレートよりもより多くの数のBFU-Eを生じた。同様の結果が、CD163を刺激するために異なる抗CD163抗体(Mac158)を用いても得られた。CD163受容体を介したCD34+細胞の刺激は、臍帯血または成人骨髄中に存在する赤血球前駆体の増殖を促進する。実施例5CD163の刺激は赤血球系細胞の増殖および分化を促進する 活性化する抗CD163抗体の作用を、赤血球前駆体コロニーの形成を支持する条件下でのコロニー形成アッセイにおいて試験した。臍帯血LDMNC由来の濃縮されたCD34+細胞を、アイソタイプ対照抗体(50μg/mL)または抗CD163抗体(EDHu-1;50μg/mL)のいずれかが存在する、10ng/mL IL-3および2.0U/mL Epoを含有するメチルセルロースに播種した(1,000細胞/mL)。メチルセルロースプレートを、5%CO2の加湿したインキュベーター内においてインキュベーションし、37℃で維持した。14日後にコロニー(BFU-E)を数え上げ、かつそれらの形態を評価した。実施例4に示したように、赤血球系コロニーの数が増加することに加え、抗CD163抗体も、アイソタイプ対照と比較して、赤血球前駆体コロニーのサイズおよび赤さを増大した(図2)。同様の結果が、CD163を刺激するために異なる抗CD163抗体(Mac158)を用いても得られた。同じく同様の結果が、成人骨髄由来のCD34+細胞を用いても得られた。これらのデータは、CD163の刺激が、BFU-Eコロニー中に存在する赤血球系細胞の増殖(増大したコロニーサイズ)および分化(増大したヘモグロビン産生およびその結果としてのより赤いコロニー)が促進することを示唆している。実施例6CD163は赤血球系細胞により発現される 成人骨髄CD34+細胞を、10ng/mL IL-3および0.5または2.0U/mLのいずれかのEpoの存在下で、メチルセルロース上に播種した(1,000細胞/mL)。メチルセルロースプレートは、5%CO2の加湿したインキュベーター内においてインキュベーションし、37℃で維持した。14日後にBFU-Eコロニー由来の細胞をこのプレートから収集し、洗浄し、カウントし、かつペレット化した。細胞ペレットを-80℃で凍結した。細胞溶解液を、等数の細胞から調製し、および1条件につき等容量の溶解液に、実施例3に示したようにウェスタンブロット分析を施した。 図3に示したように、CD163免疫反応性は、BFU-Eコロニーから調製した細胞溶解液中で容易に検出可能であった。更に、低下したEpo濃度の条件下で、CD163免疫反応性のレベルは増大し、このことは、EpoはCD163の発現を変調し得ることを示唆している。実施例7CD163刺激は亜最適なEPO濃度を補償する CD163抗体の作用は、血清-非含有コロニー形成アッセイ法においても試験した。成人末梢血低密度単核細胞(APB LDMNC)を、1%BSA、10μg/mLインスリン、200μg/mLヒトトランスフェリン、10ng/mL IL-3、および0.2U/mLまたは2.0U/mLのいずれかのEPOを含有するメチルセルロースに、2種の異なる抗CD163抗体、EDHu-1またはMac158、を添加しまたは添加せずに、播種した(1x105細胞/mL)。プレートを、5%CO2、37℃で、14日間インキュベーションし、その後、赤血球前駆体コロニーを数えた。表4に示したように、細胞を抗CD163抗体で処理した場合に、未処理の細胞と比べ、より多くのBFU-Eコロニーが検出された。更に、抗CD163抗体の存在において形成されるコロニーは、抗CD163抗体非存在下で形成されるものよりもより大きくかつ赤かった。従ってCD163活性化は、血清-含有および血清-非含有コロニー形成アッセイ下でのBFU-Eコロニー内での、赤血球前駆体の増大した増殖、ならびに赤血球系細胞の増殖および分化の増大を生じる。低下したEpo条件下で、CD163のEDHu-1またはMac158のいずれかによる刺激は、赤血球前駆体コロニー数の増加を生じた(表4)。これらのコロニーは同じく、対照プレート中に存在するものよりもより大きくかつより赤かった。同様の結果が、成人骨髄または臍帯血から単離されたCD34+を用いて得られた。同様の結果は、血清-含有コロニー形成アッセイにおいても得られた。Epoが存在しない場合、赤血球系コロニーは、抗CD163抗体の存在または非存在のいずれにおいても、コロニー形成アッセイにおいて検出されなかった。 これらのデータは、CD163の刺激は、赤血球前駆体の増殖に加え、血清-含有および血清-非含有アッセイの両方において、EPO濃度を減少しても、赤血球系細胞の増殖および分化を促進することを示唆している。しかし、CD163の刺激は、赤血球系コロニー形成において、すべてのEpoと置き換わることはできない。 (表4)血清-非含有CFAにおける高および低濃度Epoでの抗CD163抗体(Ab)の非存在または存在下におけるBFU-Eの刺激*増加の相対率実施例8CD163刺激はCFU-GM前駆体の増殖を増加する 架橋している抗CD163抗体(EDHu-1)の作用を、コロニー形成アッセイにおいて、骨髄前駆体(CFU-GM)コロニーの成長について最適化された条件(50ng/ml SCF、4pg/ml IL-1β、6.25ng/ml IL-6)下で試験した。臍帯血に由来したCD34+は、50μg/mlの抗CD163抗体を伴うまたは伴わずに、メチルセルロース上に濃度2x103細胞/mlで播種した。抗CD163抗体のCFU-GM数に対する作用は、37℃で14日間培養した後評価し、かつ表5に示している。 (表5)抗CD163抗体はCFU-GM増殖を刺激する EDHu-1抗体は50μg/mlにおいて、CFU-GMの数に関して対照試料と比較して1.7倍の増加を生じた。このことは、初期の骨髄前駆体が、CD163受容体を発現すること、およびこの受容体の刺激がこれらの細胞の増殖を促進することを示唆している。実施例9CD163はCFU-GMコロニー内の骨髄細胞により発現され、その発現はCD14+細胞に制限されない 臍帯血細胞由来のCD34+細胞は、骨髄前駆体(CFU-GM)コロニーの成長に適した条件下(50ng/ml SCF、4pg/ml IL-1b、6.25ng/ml IL-6)で、濃度2x103細胞/mlでメチルセルロースに播種し、かつ加湿したインキュベーター内、5%CO2、37℃で培養した。14日後、得られたコロニーの細胞を収集し、洗浄し、数を数え、かつCD14およびCD163の発現について、各々、TUK4およびMac158蛍光標識した抗体を用い、フローサイトメトリーにより試験した。結果を表6に示す。 (表6)CPU-GMコロニーからの細胞上のCD163およびCD14の発現 本発明は、現在好ましい実施例であると考えられるものを参照し説明されているが、本発明は明らかにされた実施例に限定されるものではないことは理解されなければならない。対照的に、本発明は、添付された「特許請求の範囲」の精神および範囲に含まれた様々な修飾および同等の変更を対象とすることが意図されている。 全ての刊行物、特許および特許出願は、それらの全体が、各々個別の刊行物、特許および特許出願が具体的かつ個別にそれらの全体が本明細書に参照として組入れられていることが示されるのと同等に、本明細書に参照として組入れられている。 本発明は、下記図面に関連して説明される:図1は、抗CD163抗体を用いるCD34+細胞のウェスタンブロット分析である。図2は、造血コロニー形成アッセイにおけるCD163に対する抗体の作用を示す。図3は、BFU-Eコロニーから調製された細胞溶解物において、CD163免疫反応性が検出できることを示す。 造血幹細胞または造血前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員を刺激するための医薬品を調製するための、抗CD163抗体の有効量の使用。 造血幹細胞または造血前駆細胞がCD34陽性細胞である、請求項1記載の使用。 造血を刺激するための、請求項1または2記載の使用。 赤血球形成を刺激するための、請求項1記載の使用。 貧血を治療するための、請求項4記載の使用。 前記医薬品が1種または複数の造血増殖因子をさらに含む、請求項4または5記載の使用。 造血増殖因子がエリスロポエチンである、請求項6記載の使用。 骨髄造血を刺激するための、請求項1記載の使用。 前記医薬品が1種または複数の造血増殖因子をさらに含む、請求項8記載の使用。 造血増殖因子が、G-CSFまたはGM-CSFである、請求項9記載の使用。 赤血球前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員を増強することにおいて使用するための、抗CD163抗体を有効量含有する、造血幹細胞または造血前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員の増強に有用な細胞培養添加剤。 血清非含有である、請求項11記載の細胞培養添加剤。 血清を含む、請求項11記載の細胞培養添加剤。 更にエリスロポエチンを含有する、請求項11-13記載の細胞培養添加剤。 骨髄前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員を増強することにおいて使用するための、抗CD163抗体を有効量含有する、造血幹細胞または造血前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員の増強に有用な細胞培養添加剤。 血清非含有である、請求項15記載の細胞培養添加剤。 血清を含む、請求項15記載の細胞培養添加剤。 造血幹細胞または造血前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員を増強する際に使用するための、抗CD163抗体を有効量含有する、造血幹細胞または造血前駆細胞の成長、増殖、分化および/または動員の増強に有用な細胞培養添加剤。 血清非含有である、請求項18記載の細胞培養添加剤。 血清を含む、請求項18記載の細胞培養添加剤。


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