タイトル: | 特許公報(B2)_クレアチンおよびクレアチニンを含有する組成物 |
出願番号: | 2002568934 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | A23L 2/38,A23L 1/30,A23L 1/305,A23L 2/52,A61K 31/198,A61K 31/4168,A61K 36/896,A61P 21/00,A61P 43/00,C07D 233/88 |
ハワード,アラン・ノーマン ハリス,ロジャー・チャールズ JP 4975943 特許公報(B2) 20120420 2002568934 20020228 クレアチンおよびクレアチニンを含有する組成物 ザ・ハワード・ファウンデイション 501464853 深見 久郎 100064746 森田 俊雄 100085132 仲村 義平 100083703 堀井 豊 100096781 野田 久登 100098316 酒井 將行 100109162 ハワード,アラン・ノーマン ハリス,ロジャー・チャールズ GB 0105205.9 20010302 GB 0117868.0 20010723 US 09/917,634 20010731 20120711 A23L 2/38 20060101AFI20120621BHJP A23L 1/30 20060101ALI20120621BHJP A23L 1/305 20060101ALI20120621BHJP A23L 2/52 20060101ALI20120621BHJP A61K 31/198 20060101ALI20120621BHJP A61K 31/4168 20060101ALI20120621BHJP A61K 36/896 20060101ALI20120621BHJP A61P 21/00 20060101ALI20120621BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120621BHJP C07D 233/88 20060101ALI20120621BHJP JPA23L2/38 ZA23L1/30 ZA23L1/305A23L2/00 FA61K31/198A61K31/4168A61K35/78 VA61P21/00A61P43/00 111C07D233/88 A23L1/30,2/00 特表2000−511054(JP,A) 国際公開第00/074500(WO,A1) Milchwissenshaft(1991),Vol.46,No.8,p.493−494 日本食品工業学会誌(1992),Vol.39,No.4,p.327−332 臨床病理(1991),Vol.39,No.8,p.875−880 7 GB2002000884 20020228 WO2002069740 20020912 2004520060 20040708 22 20050106 2009013867 20090804 秋月 美紀子 杉江 渉 関 美祝 [発明の分野] この発明は、クレアチンおよびクレアチニンを含む、人間が消費するための組成物と、安定したクレアチン含有の組成物を生成する方法とに関する。 [発明の背景] 近年運動選手の間で、骨格筋内で豊富に生じるクレアチンに対する関心が高まっている。クレアチンは骨格筋エネルギ代謝の調節および恒常性に極めて重要な役割を果たし、今や、筋力の連続的な生成のためにはクレアチンリン酸を利用できるように維持することが重要であると一般に認められている。クレアチンはまた、タンパク質合成と、トレーニングでの筋繊維の肥大とに関する他のプロセスに関わることもある。クレアチンの合成は肝臓、腎臓および膵臓で行なわれるが、最近になって、クレアチンの経口摂取により全体的な人体のクレアチンプールが増加することが知られるようになっており、数日間、1日につき20g〜30gのクレアチン一水和物(Cr.H2O)を摂取することで、人骨格筋の総クレアチン含有量の増加が20%を上回ることもあると示されている。そこで国際公開(WO)第94/02127号では、筋肉強度増大のために、少なくとも2日間にわたる、1日につき少なくとも15g(または0.2〜0.4g/体重kg)の量のクレアチン一水和物の投与が開示されている。 この後実際に、組織貯蔵量の最初の上昇を達成するためにクレアチン一水和物を数日間補給(1日当り20g)した後、この新たに上昇した濃度を維持するには1日当り2〜3gしか必要ではないことがわかった。生物学的に利用可能なあらゆるクレアチン源を適当な用量で補給(すなわちクレアチン補給)すれば、急激な運動を伴う競技に関わる運動選手にとって向上をもたらすことができるが、これらの競技には、数秒から数分続くすべての競技(たとえば短距離競争、水泳、重量挙げなど)が含まれる。約30分よりも長く続く競技での耐久性成績はクレアチン補給にそれほど影響されないように見えるが、ただし、特に局所筋炭水化物貯蔵が枯渇してしまった時など、短期間の増大したエネルギ出力を伴う場合は例外である。クレアチンは通常の食品成分であって薬物ではなく、その使用は公の規制に反するものではない。クレアチン補給の最大の利益は、老人、菜食主義者、または肉や魚を全く食べない人々によって享受されると考えられるが、それはこれらの人々の筋クレアチン含有量が低い傾向にあるからである。 アロエベラ(Aloe Barbadensis)はユリ科の一員であり、暖かい、霜のない風土帯に生育するサボテンに似た多肉植物である。中央アメリカのメキシコ・インディアンはアロエベラを何世紀もの間火傷の際の水疱を防ぐために用いており、また消化性潰瘍や十二指腸潰瘍およびあらゆる種類の胃腸障害、腎臓感染症、局所潰瘍や胃潰瘍の治療、さらには長命の促進に用いてきた。今日アロエベラは極めて人気が高く、その利益は科学的に認められている。 過去におけるアロエベラの主な用途は、炎症特に皮膚の炎症、とりわけ火傷の際のそれを防ぐことであったが、その他にも多くの用途がある。アロエベラ汁を服用した後には、消化酵素の産出、および腸の細菌個体数が増大することが実験と研究によって示されている。このため、人々がアロエベラの薬効性に親しむにつれて、その抽出物を薬物として経口摂取することへの関心が高まっている。 これを提供するいくつかの方法の中で、果物の味付けをした清涼飲料に入ったアロエベラ抽出物を用いることが多くなっており、これらの飲料は極めて美味である。アロエベラ抽出物飲料は、補われていない通常の果汁飲料よりもはるかに健康に有益であろうことから、クレアチンを清涼飲料に含めることは極めて望ましいことであろう。 アロエベラ汁は酸性(一般に約pH3)である。クレアチン分子は酸性または中性のpHの水溶液中で不安定であり、関連化合物であるクレアチニンへ変換される。これは極めて重大なことであるが、それはクレアチニンが全く筋能力増大効果を有さず、人体から尿中で老廃物として排出されてしまうからである。以上のことから、欧州特許(EP)第0 669 083号では、人間が消費するためのクレアチンを含む水溶性飲料は、クレアチンからクレアチニンへの変換を制限するために弱アルカリ性でなければならないことが教示されており、これは一般に受入れられた考えとなっている。 さらにクレアチンおよびその誘導体は過去において、肉味または塩味の製品の調製のみに用いられてきた。たとえばトンズビーク(Tonsbeek)(米国特許第3,615,600号)は人工調味を開示およびこれに関し、食品に肉味を与える混合物を記載している。同様に、ディ・ロージ(de Rooji)(米国特許第4,464,409号)も肉味の味付けに関する。ヤマザキ(Yamazaki)(特開昭59−035663号)では、pH5.0〜7.0のクレアチンを含む混合物を、80〜130℃の温度下で30〜120分間加熱して肉味を調製する。これらの条件下では、ほとんどのクレアチンはクレアチニンに変換されてしまう。 発明者は、肉味または塩味以外の味(特に果物味)を有することを意図した組成物にクレアチニン(これまで肉味または塩味の調味料に用いられてきた)を添加することには、当業者は思い至らないであろうと考える。当業者は、クレアチニンを添加すると、その結果として美味でない果物味と肉味との組合せが生じるのではないかと考えるであろうが、これに対して発明者は、実は結果として生じる組合せは望ましくない肉味を与えるものではないことを発見した。 国際公開第97/45026号は、クレアチンおよびその誘導体を含む、人間が消費するための酸性組成物であって、乾燥粉末として、または液体もしくは半流動体の形で提供される組成物を開示している。ここに開示された組成物は、冷蔵温度(4℃)では長期間にわたって安定であるが、室温下で安定であるのは比較的短い期間(たとえば最大7日)にすぎない。 国際公開第00/74500号では、アロエベラのゲル中で懸濁したクレアチンおよびその誘導体を含む組成物が開示されており、この組成物は室温下で2週間以上安定(クレアチンからクレアチニンへの変換に関して)であるが、組成物内のクレアチンの初期濃度に依存するものであった。 国際公開第97/45026号および国際公開第00/74500号のいずれも、クレアチンからクレアチニンへの変換を防ぐことが望ましいと強調しているが、いずれの文献も、人間が消費することを意図したクレアチン含有組成物へのクレアチニンの意図的な添加を示唆してはいない。 人間が消費するための組成物であって、その中のクレアチンが酸性pHおよび室温下でも実質的に安定である組成物を提示することは大きな利益であろう。 [発明の概要] この発明は、クレアチンおよびその誘導体を含む、人間が消費するための組成物、特に水性溶媒中で提供される組成物に関し、より特定的には、クレアチンが水溶液中で提供される、またはクレアチンが可食支持基質内に懸濁される組成物(たとえば飲料)を生成することに関する。 ここで用いられる「クレアチン」という用語は、クレアチンのあらゆる生物学的利用可能な誘導体、たとえばクレアチン一水和物、クレアチンリン酸、およびその他のクレアチン塩などを包含することを意図する。クレアチン一水和物が特に好ましい。したがって「クレアチン」という用語は、文脈が許す限り広く解釈されるべきである。 先に説明したように、水溶液中のクレアチン分子は、特に酸性pH(すなわちpH7未満)で不安定であり、クレアチニンへ変換されることが周知である(エドガーおよびシバー、1925年米国化学協会報第47号、1179〜1188頁;カナンおよびショアー、1928年生化学報第22号、920〜929頁(Edgar & Shiver, 1925 J. Am. Chem. Soc., 47, p.1179-1188; Cannan & Shore 1928 Biochem. J. 22, p.920-929))。このことは、生理学的に有用な量のクレアチンを含有する飲料またはその他の組成物を生成しようとする際に問題を引起こすが、それは特に、飲料が通常7未満のpHを有するように調合されるからである。 エドガーおよびシバーは、水溶液中のクレアチンとクレアチニンとの間に存在する平衡、特にpHの異なる緩衝剤を使用することによる平衡位置への影響について、いくつかの研究を行なった。しかし残念ながらエドガーおよびシバーの研究は、飲料およびその他の栄養組成物の調合業者にとって何ら有用な実際的手引きも提供してはいないが、それはいくつかの理由による。第1に、エドガーおよびシバーによる刊行物は極めて古く、かつ純粋に学術的関心によるものであるため、飲料調合業者に参考にされるとは考えられず、飲料調合と直接の関係を有さない。第2に、および最も重要なことには、エドガーおよびシバーは極めて希釈したクレアチン/クレアチニン溶液(0.001M、0.0149gクレアチン/100mlと等価、分子量が149のクレアチン一水和物)を用いて実験を行なっている。これらは純粋に分析的な考察には適当であるが、高濃度のクレアチン(0.15gクレアチン一水和物またはそれと均等物/100mlを上回るもの)を含み、飲料中で生理学的に有用なクレアチン量をもたらすことを意図した系に対しては何ら関連性を有さない。第3に、エドガーおよびシバーは、クレアチンからクレアチニンへの変換およびその逆の際に生じるpHの変化を勘案することを怠っている。このような変化は、エドガーおよびシバーが用いた極めて希釈したクレアチン/クレアチニン混合物を使用すればおそらく無視できるであるが、この発明者が発見したように、飲料に望ましいような高濃度では重大な影響を有するであろう。カナンおよびショアーによる等しく古い刊行物にもほぼ同様の評価が当てはまる。 クレアチンの不安定性に対するすぐに考え付く解決法は、単に組成物中のクレアチンの初期濃度を増加させて、生理学的に有用なクレアチン量が長期間にわたり組成物中に存在するようにすることであろう。しかしこの手法は、クレアチンからクレアチニンへの変換の防止または抑制と全く無関係である。さらに、クレアチンがクレアチニンへ大量に変換するとおそらく組成物のpHが増加することになるが、それはこの反応が水素イオンの除去を伴うからである。これは美味性を変化させ得るため、消費者にとって望ましいことではないであろう。さらにクレアチンは、(特に通常飲料を貯蔵する低い温度、たとえば3〜5℃で)水溶性があまり高くなく、したがって超過してはならない有限の最大初期クレアチン濃度が存在する。加えて、飲料調合物内に溶解していないクレアチンがあることは消費者にとって魅力的ではないため、過度のクレアチンを含めることは望ましくない。クレアチンの溶液から始めると、結果として飲料の溶液中の最大クレアチン量はより少なくなるが、それはクレアチンのうちいくらかがクレアチニンに変換されるためである。発明者は以下に説明する代替的な手法を提供する。 第1の局面でこの発明は、人間が消費するための組成物であって、クレアチンと、その中のクレアチンを水性溶媒内で実質的に安定(以下に定義する通り)にするのに十分な量のクレアチニンとを含む、組成物を提供する。 組成物のクレアチニン内容物は、クレアチンからクレアチニンへの変換の結果として組成物の貯蔵中に生じるのではなく、最初から(すなわち最終組成物の形成時から)存在する。後に記載の教示から、少なくともいくつかの実施例で、組成物の生成(すなわち最終組成物の形成に先立つ処理)は、クレアチンからクレアチニンへの意図的な変換を伴い得ることが明らかであろう。最初からあるクレアチンが安定であることは商業的に望ましいが、それは、これにより組成物のクレアチン含有量の正確な特徴付け(たとえば包装などに表示され得るもの)が可能となり、さらに消費者が消費クレアチンの正確な用量を計算できるからである。 この組成物は、液体、半流動体、可食基質、または後に水で溶かすための固形物として生成され得る。クレアチンは液体をもたらすために水で溶解され得る。 半流動体または支持基質内でクレアチンが懸濁される組成物について、組成物のクレアチン内容物は、半流動体またはその他の支持基質内への混和に先立って微粉化プロセス(たとえば破砕、粉砕、粉末化など)を受けて、結果としての組成物の舌触りが受入れられないほどざらつくのを防ぐことが好ましい。 支持基質は、もしこれがある場合、認定された食材であり、こうしてこの発明に従う組成物は、固形クレアチンが食材内に懸濁するようにクレアチンおよびクレアチニンを補った、他では従来の食材の形をとることが好都合である。この発明の組成物に好適な支持基質を表わし得る食材の例には、延ばして塗ることができる固形物、たとえば乳塗布食品またはチーズ塗布食品、マーガリン、キャビア(主にダンゴウオキャビア)塗布食品、およびその他の練り魚肉、肉塗布食品などが含まれる。その他の好都合な支持基質としては、糖質またはその他の炭水化物を含む支持基質、たとえば液体もしくは固形の蜂蜜、廃糖蜜、シロップ(たとえばコーンシロップ、ブドウ糖シロップ)、糖蜜、グリセロールまたは「マキシム・エナジー・ジェル(Maxim Energy Gel)」(R)などがある。 所望であれば、溶液および/または組成物全体の粘度は、増粘剤、ゲル化剤などを添加して増大され得る。このような成分は食品業界では周知であり、これにはたとえば植物性多糖やガムなど、たとえばガラクトマンナン、デキストラン、グアールガム、イナゴマメガム、キサンタンガムなどが含まれる。 このような増粘剤やゲルなどは、所望であれば支持基質の形をとり得る。1つの好ましい可食基質は、濃縮したアロエベラ抽出物から調製したゲルを含む。すなわち、5gmのクレアチンを、(たとえば)60mlの濃縮アロエベラゲル(たとえばアロエ・コモディティーズ・インターナショナル・インコーポレイテッド、農家部門(Aloe Commodities Int. Inc., Farmers Branch)、TX75234から入手可能なものなど)と混合させることで、滑らかなクリーム状のペースト(練り出すことのできるチューブ内の包装に好適)を調製できる。加えて支持基質は、半流動体の食材、たとえばヨーグルトまたはその他の半流動体の食材などを含み得る。 以前に発明者は、水溶液中のクレアチンからクレアチニンへの変換はクレアチニン自体によって著しく抑制可能であり、すなわちクレアチンとクレアチニンとの混合物はすぐに平衡に達することができ、クレアチンは実質的に安定することを発見した。何らかの特定の理論に束縛されることを望んではいないが、発明者がこの所見の説明として考えるのは、クレアチンからクレアチニンへの変換が可逆反応であることである。今や発明者は、溶液中のクレアチンと、適当な量のクレアチニンとを与えることで、クレアチンからクレアチニンへの変換は(酸性組成物でも)、室温(すなわち2〜39℃)でも、または長期間(30〜95日以上)でも大幅に抑制、あるいは実質的に防止され得ることを発見した。したがっていくつかの実施例で、全体としての組成物は、組成物のクレアチン内容物の安定性に大きな悪影響を与えずに、酸性(すなわちpHが7.0未満)あるいはアルカリ性(たとえば7.0〜8.5)であるように都合よく選択可能である。特に組成物のpHは2.5〜8.5、好ましくは3.0〜7.0、最も好ましくは4.5〜6.5であることが望ましい。典型的に組成物のpHは4.5〜5.5の範囲であり、これは人の味覚にとってすっきりとした酸味を有し、かつ酸味が強すぎることもない。 この発明に従う組成物は実質的に安定であるため、クレアチンは、室温で長期間貯蔵した後、生理学的に有用な量で、当該技術の教示に反して酸性調合物中でも提供され得る。生理学的に効果的なクレアチン量は、初期基準線レベルに対して、組成物の反復的な消費後に主体の組織のクレアチン含有量を測定可能に増加させるのに十分な量である。主体の組織のクレアチン含有量の測定方法は公知である(たとえばハリス、ハルトマンおよびノーデスジョ(Harris, Hultman & Nordesjo)(1974年)「休息中の人大腿四頭筋の生検標本におけるグリコーゲン、糖分解中間物および高エネルギリン酸塩 方法および値の分散(Glycogen, glycolytic intermediates and high energy phosphates in biopsy samples of musculus quadriceps femoris of man at rest. Methods and variance of values)」スカンジナビア臨床実験研究報(Scand. J. Clin. Lab. Invest.)第33号、109〜120頁;ダネット、ハリスおよびオーム(Dunnett, Harris & Orme)(1991年)「馬の筋肉におけるクレアチンリン酸、クレアチンおよびクレアチニンの逆相イオン対の高性能液体クロマトグラフィ(Reverse phase ion-pairing high performance liquid chromatography of phosphocreatine, creatine and creatinine in equine muscle)」スカンジナビア臨床実験研究報第51号、137〜141頁)。 ここで「実質的に安定」という用語は、クレアチン/クレアチニン組成物であって、最終生成物の調合直後の組成物におけるクレアチンの少なくとも75%(好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%)が、少なくとも7日間の(好ましくはそれより長い)貯蔵期間変化せず、したがってクレアチニンに変換されない、クレアチン/クレアチニン組成物を指すものとして定義される。クレアチンの安定性はpHに依存し、pHは温度の上昇とともに減少する。(「最終生成物」とは、すべての処理および生成工程が完了した後に生成された組成物である。) 発明者は、20℃の温度上昇によってpHが0.3単位も減少し得ることを発見した。組成物がさらされることになる温度範囲(たとえば冷蔵庫または倉庫内)は典型的に2〜50℃である。組成物は、2〜50℃の温度範囲で、貯蔵中少なくとも30日、より好ましくは60日、最も好ましくは少なくとも120日の期間を経ても75%のクレアチンが残るのに十分に安定であることが望ましい。安定性を特定するには、pHであって、そこで安定性が必要とされるpH(これは溶液の貯蔵温度で測定されることになる)を特定する必要がある。緩衝液の加熱または冷却でpHは変わり、溶液が貯蔵され得る温度範囲にわたってクレアチン:クレアチニンの平衡比は大きく変動し得る。しかし組成物が50℃で安定であれば、そのクレアチン含有量はより低い温度で貯蔵しても減少しないであろう。 先に言及したように、クレアチンの安定性を達成するためのクレアチニン対クレアチンのモル:モル比は溶液のpHに依存するとわかっており、pH7の場合の1:2からpH4.25の場合の3.8:1の範囲にある。クレアチニン対クレアチンのモル:モル比は10:1以下が好ましい。5:1以下の比がより好ましい。(クレアチンは不活性成分であるため)クレアチニン対クレアチンの比はあまり高くないのが最も好ましく、最も好ましいpHは5〜7であり、ここでクレアチニン対クレアチンのモル:モル比は約1.2:1〜1:2の範囲である。 この発明の目的のためには、クレアチニンをクレアチンに純粋な物質として添加しても、または、好ましくは低いpH、たとえばpH2〜3で溶液中のクレアチンを加熱してクレアチニンを現場で(in situ)製造してもよい。溶液は少なくとも30分間、90℃以上に加熱またはここに保つことが最も好都合であるが、それは、これらの条件が商業販売用の液体の滅菌に最もよく用いられるものであるからである。(代替的に、より高い温度へより短い期間加熱、またはその逆によって、等価の滅菌「熱供給」を与えることもできる。)他の実施例では、クレアチン溶液をpH2〜3で数時間加熱してから、これをより高いpH(たとえばpH7)のクレアチン溶液に添加し、最終混合物を所望のpH(たとえばpH5)に調節することによって、クレアチニンを調製することもできる。必要であれば、次に溶液を上述の条件下で再滅菌してもよい。この調製方法によって、クレアチンからクレアチニンへのさらなる変換はほとんどまたは全くなくなるであろうし、これら2つの溶液の混合直後から安定性が確実となる。この方法には利点があるが、それは、クレアチンは冷蔵庫内で冷やされると水に対して溶解度があまり高くないのに対して、クレアチニンははるかに溶解度が高いからである。この方法で安定なクレアチン溶液をもたらすことにより、他で達成し得るよりも比較的大量の安定なクレアチンを含有する飲料を調合することが可能である。したがってこの手段により、最大1.2gクレアチン/100ml(または1.4gクレアチン一水和物)を含有する、冷蔵に好適な飲料、または最大1.5gクレアチン/100ml(または1.7gクレアチン一水和物/100ml)を含有する、18〜25℃の室温下での貯蔵に好適な飲料を生成することが可能である。 この発明のさらなる利点は、(pHおよび温度についての妥当な条件下で)利用可能な最大溶解クレアチン濃度を含む組成物を、最少限の必要クレアチン量の使用で、安定した調合物内に生成することが可能となり、このため過剰なクレアチンを使用する必要がないことである。 この発明の好ましい実施例は、特に酸性pH(すなわちpH7未満)の水溶性飲料であって、特にpHが4〜6.5、とりわけ4.5〜5.5の範囲であり、100ml当り少なくとも0.15gのクレアチン(またはクレアチン一水和物など)を含む水溶性飲料である。好ましくは、飲料は100ml当り少なくとも0.3gのクレアチン(またはクレアチン一水和物など)、より好ましくは100ml当り少なくとも0.4g、最も好ましくは100ml当り少なくとも0.5gを含む。 組成物は、追加の成分(たとえば調味料)のない水中のクレアチンおよびクレアチニン溶液、たとえば、当業者には周知のプロセスを用いた鉱水または炭酸水などの水中の溶液を含み得る。 しかし組成物は、美味、安定性、風味または栄養品質を向上させるための1つ以上のさらなる成分を含むことが好ましい。これらのさらなる成分は電解質を含むことができ、または、ビタミン、脂質、タンパク質、炭水化物、ポリオール(たとえばエチレングリコール、グリセロール、ソルビトールなど)、アミノ酸、微量元素、色素、調味料、人工甘味料、天然の健康および機能向上物質、酸化防止剤、安定剤、保存料、ならびに緩衝剤からなる群から選択され得る。 ビタミンをこの発明の組成物に含めることは有利である。ビタミンは、その1日所要量(RDA)のうち20〜100%の範囲の量で添加され得る。以下は有用なビタミンのうち典型的なものである。すなわちビタミンE、ビタミンC、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、フォラシン、ビタミンB12、ビオチン、およびパントテン酸である。 場合によっては、脂質成分が望ましいこともある。タンパク質内容物は(もしあるとすれば)大豆タンパク質または乳タンパク質(たとえば乳清またはカゼイン)として存在し得る。炭水化物内容物(もしあるとすれば)または組成物は、澱粉(特に可溶性澱粉)および/または糖質として存在し得る。組成物に存在し得る糖質には、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖および麦芽糖が含まれる。 使用できる人工甘味料には、アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリンおよびシクラメートが含まれる。ほとんどあらゆる所望の調味料が添加可能であり、最も好ましくは果物味、たとえば液果、レモン、オレンジ、パパイヤおよびグレープフルーツなどが添加可能である。しかしながら、より低い酸性pH(たとえば5.0を上回るもの)ではその他の味、たとえばチョコレート、麦芽、キャラメル、およびその他「乳状」飲料に好適な味を用いてもよい。酸味料としてクエン酸、ならびに緩衝剤としてクエン酸塩およびリン酸塩(たとえばクエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム)もまた使用可能である。飲料の酸性を調整するためにその他の緩衝剤を用いてもよい。また、生理学的に活性の量で他の天然の健康向上物質を加えてもよい。以下は有用な物質のうち典型的なものである。すなわちパウダルコ・ティー、人参、スマ・ティー、イチョウ、蜂花粉、没薬、酪酸ヒドロキシメチル、グルタミン、グルタミン含有のジ、トリ、ポリペプチド、リボース、カフェイン、およびリポ酸である。 保存料は、典型的に安息香酸カリウムおよび/またはソルビン酸カリウムでもたらされ得る。 色素は、典型的に冷水可溶の着色料、たとえばβカロチンを用いてもたらされ得る。その他の好適な色素が当業者には明らかであろう。 所望であれば、組成物の外観を向上させるために組成物内に混濁剤を含めてもよい。 鉱物および微量元素もまた、人間が消費するのに好適なあらゆる種類または形で添加可能である。グルコン酸塩、リン酸塩または水素リン酸塩の形でのカルシウムおよびカリウム、酸化物または炭酸塩としてのマグネシウム、ピコリン酸クロムとしてのクロム、亜セレン酸ナトリウムまたはセレン酸塩としてのセレン、ならびにグルコン酸亜鉛としての亜鉛を与えることが好都合である。典型的な量は、ナトリウムが400mg/リットル、カルシウムが100mg/リットル、塩化物が600mg/リットル、カリウムが200mg/リットル、マグネシウムが75mg/リットル、ならびにリン50mg/リットル、クロム125μg/リットル、セレン125μg/リットル、および亜鉛15mg/リットルである。 クレアチンが完全に溶解できる液体飲料については、調製された組成物のリットル当りまたはkg当りのクレアチン量(これからの一水和物として計算)は1.5gから24gの範囲であり得るが、好ましい含有量はリットル当り約12gである。通常の1杯分のサイズは200〜750mlの範囲であり、約2〜7g、好ましくは約5gのクレアチンをもたらす。クレアチン補給の最初の4日間は、目標消費量は1日当り約2.0リットルであり、これを1日につき4回または5回に分けてクレアチン飽和を達成する。この後、約2〜3gのクレアチンを含有する、1日につき250〜750mlの1杯分を与え、飽和維持に十分なレベルのクレアチンを与える。 半流動体またはその他の可食支持基質内のクレアチン懸濁物については、100g当りのクレアチン量は1〜80g(ここからのクレアチン一水和物として計算)の範囲であり得る。好ましい1回分のサイズは5〜100gの範囲であり、2〜10g(好ましくは5g)のクレアチンをもたらす。クレアチン補給の最初の4日間の目標消費量は、1日当り10〜25gを含有する懸濁物であり、これを1日に4回または5回に分けて組織内の最大クレアチン上昇を達成する。しかしより長い期間にわたり、より少ない量(たとえば4週間にわたり毎日3g)を服用しても同じ効果が得られる。この後、3〜5gのクレアチンを含有する懸濁物の一杯分を毎日与え、維持レベルのクレアチンをもたらす。 この発明はまた、上に定義した組成物の製造方法にも関する。これに従い第2の局面で、この発明は人間が消費するための組成物の製造方法を提供し、この方法は、同じ組成物内に、クレアチンと、組成物を水性溶媒と混合した際にクレアチニンを実質的に安定(ここに定義の通り)にするのに十分なクレアチニンとをもたらす工程を含む。水性溶媒は水または水溶液であることが好ましい。この発明は通常さらに、水または水溶液を、好ましくは組成物内の実質的にすべてのクレアチンおよびクレアチニンを溶解するのに十分な量で与える工程を含むことになる。 当業者には、組成物への成分の添加順序は一般に重要でなく、この発明の目的を達成するどのような工程の順番でもよいことが明らかであろう。したがって、たとえば水または水性溶媒に固形のクレアチンおよび固形のクレアチニンを、(同時にまたは別々に)添加でき、あるいは水または水性溶媒を固形のクレアチンおよび/またはクレアチニンに加えてもよい。 したがって、一実施例でこの発明の第2の局面は、人間が消費するためのクレアチン含有の組成物であって、クレアチンが実質的に安定(ここに定義の通り)である組成物の調製方法を提供することであり、この方法は、クレアチンの溶液を生成する工程と、部分的にクレアチンをクレアチニンへ変換するのに好適な条件下にクレアチン溶液を置く工程とを含み、こうして、結果として得られる組成物内のクレアチンを実質的に安定(ここに定義の通り)にするのに十分なクレアチニンを形成する。この方法は典型的に、好適な容器、たとえばガラスまたはプラスチックのビン、箔袋、アルミニウム缶などの中に、この組成物を包装する工程をさらに含む。 好ましくはこの方法では、クレアチン溶液を好適な条件下に置く工程は、溶液を平均室温よりも高温に加熱する工程を含む。好ましい一方法では、溶液を90℃に30分間加熱する。 第3の局面でこの発明は、人間が消費するためのクレアチン含有の組成物であって、クレアチンが実質的に安定(ここに定義の通り)である組成物の調製方法を提供し、この方法は、クレアチン溶液を生成する工程と、クレアチニン溶液を生成する工程と、これら溶液を混合して、結果として、クレアチンを実質的に安定(ここに定義の通り)にするのに十分なクレアチニンがある組成物を形成する工程とを含む。 この方法では、クレアチニン溶液のpHはクレアチン溶液のpHよりも低いことが好ましい。クレアチニン溶液のpHは2〜3の範囲であることが望ましく、クレアチン溶液のpHは4.5〜7の範囲であることが好ましく、必要であれば最終pHを所望のレベルへと調節する。 第4の局面でこの発明は、人間が消費するためのクレアチン含有の組成物であって、クレアチンが実質的に安定(ここに定義の通り)である組成物の調製方法を提供し、この方法は、固形のクレアチンを生成する工程と、固形のクレアチニンを生成する工程と、これら2つの固形物を混合して、その結果、固形組成物であって、水溶液中に溶解すると、クレアチンを実質的に安定(ここに定義の通り)にするのに十分なクレアチニンがある組成物をもたらす固形組成物を生成する工程とを含む。典型的にこの方法はさらに、結果としての固形組成物を実質的に溶解するのに十分な水または水溶液を加える工程を含む。所望であれば、水または水溶液を熱処理および/またはろ過によって予め滅菌してもよい。 第5の局面でこの発明は、人間が消費するためのクレアチン含有の組成物であって、クレアチンが実質的に安定(ここに定義の通り)である組成物の調製方法を提供し、この方法は、固形のクレアチンと固形のクレアチニンまたはクレアチニン水溶液とを生成する工程を含み、クレアチニンはクレアチンを実質的に安定(ここに定義の通り)にするのに十分な量であり、この方法はさらに、固形のクレアチニンまたはクレアチニン水溶液と固形のクレアチンとを混合する工程と、この混合物に可食支持基質を加える工程とを含む。 有利なことには、第2、第3、第4または第5の局面の方法を実行すれば、先に定義した第1の局面に従う組成物が得られるだろう。 [実施例] 実施例1 この実施例は、溶液内のクレアチン濃度を求めるのに便利な生体外検定方法に関する。 1.各溶液のpHをpH計で求めた。 2.混合物を、実験室で室温(約22℃)の暗室内に貯蔵した。 3.0〜124日の期間の後、2〜3mlの溶液を標本抽出し、直後または1〜2日以内に分析するまで−30℃で冷凍貯蔵した。 4.解凍した標本を蒸留水内で溶解して好適な希釈物をもたらし、各々についてのクレアチン濃度をハリス他による方法(スカンジナビア臨床実験研究報第33号、1974年、109〜120頁)で求めた。簡単には、(最終濃度で)100mMトリエタノールアミン緩衝液pH8.5、10mM酢酸マグネシウム、1mMのEDTA、30mMのKCl、1mMホスホエノールピルビン酸塩、2mMアデノシン三リン酸(ATP)、0.18mMニコチンアミド−アデニン−ジヌクレオチドの還元型(NADH)、クレアチンキナーゼ(CK)、ピルビン酸キナーゼ(PK)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の存在の下で検定を行なった。クレアチン濃度は、340nmで測光法的に測定したNADHの酸化から求めた。 CK:Cr+ATP→PCr+ADP PK:ADP+PEP→ATP+ピルビン酸塩 LDH:ピルビン酸塩+NADH→乳酸塩+NAD 実施例2 この試験の目的は、クレアチンを異なるpHにおいて90℃で加熱して、溶液を最大124日間室温で放置した際の、クレアチンの安定性を判定することであった。90℃では、クレアチンからクレアチニンへの変換は一般に極めて急速に起こる。 pH3,4,5,6,7の100ml、0.1Mクエン酸−0.1Mリン酸カリウムの緩衝剤における2gのクレアチン一水和物の水中の溶液を、90℃で30分間加熱した。溶液を急速に冷却し、(変化している)pHを再び測定してから、実施例1に記載のように室温に放置した。7,15,29,43,57,89,124日後に部分標本を取り、これらを−30℃で貯蔵してからクレアチンについて分析した。各標本のpHを測定した。クレアチニンの濃度を、開始レベル(2gクレアチン一水和物)とクレアチンの測定レベル(一水和物から計算)との差から算出した。 結果 図1および図2に示すように、30分の加熱後にはクレアチンからクレアチニンへの急速な変換があった。しかし変換の程度は溶液のpHに依存し、pHの低下につれて漸進的に大きくなった。30日間貯蔵すると、クレアチン濃度にはさらなる減少が起こった。30日目と124日目との間では、クレアチンのレベルはすべてのpHで安定性を達成した。図3は、異なるpHでの124日目(17.7週)でのクレアチニン対クレアチンのモル:モル比を示し、ここから、クレアチンを最大限に安定にするのに必要なクレアチニンの量を推定することが可能であった。 結論 クレアチンを含みクレアチニンを含まない組成物から始まって、22℃で保温した溶液が安定性を達成するには4週間以上かかる。安定性を達成するのにかかる時間はpHが下がるにつれて増加するが、それはより多くのクレアチンがクレアチニンへ変換されなければならないからである。クレアチン溶液を安定にするのに必要なクレアチニンの量は溶液のpHに依存する。一般に、必要なクレアチニンの量はpHの減少につれて増加する。しかし各々のpHについて、最大限の安定性を達成するであろうクレアチニン対クレアチンの比を予測することは可能である。 実施例3 この試験の目的は、90℃で30分間混合物を加熱した後、異なるpHでのクレアチンの安定性に対する、クレアチン一水和物と1:1(w/w)の割合にあるクレアチニンの影響を判定することであった。 pH3,4,5,6,7での0.2Mクエン酸塩−0.2Mリン酸カリウムの緩衝剤100ml内に、量にして1.5gのクレアチン一水和物と1.5gのクレアチニンとを溶解した。溶液を90℃で30分間加熱してから冷却し、pHを再び測定し、室温(22℃)で最大95日間放置した。 結果 図4および図5に示すように、pH6および7で加熱期間中クレアチンの損失はなかった。pH5,4,3では、時間とともに小さな、しかし漸進的に大きくなる損失が生じた。 すべてのpHでクレアチンの安定性が生じた。pH5,6,7では、クレアチン濃度が増加する傾向すら見られた。 結論 十分な量のクレアチン(すなわちpH5,6,7の場合は、重量比クレアチニン:クレアチン一水和物1:1以下)の存在の下では、クレアチンは、90℃で30分間加熱しても極めて安定である。クレアチニンの量が十分でない場合(pH3および4の標本の場合)90℃で30分間加熱した結果、残るクレアチンをこの後少なくとも95日間安定にするのに十分なクレアチニンがやはり生成された。 実施例4 この実施例は、クレアチン溶液を加熱してクレアチニンを形成し、クレアチンを含有する味付けした飲料に加えることで、実質的に安定な濃度をもたらす方法を例示する。同時に、残るクレアチンの濃度がその最大可溶度に近く、これが冷蔵庫内で3℃で沈殿しないようにすることが望ましい。これはほとんどの飲料についての要件であるが、それは、飲料は消費前に冷蔵庫内で冷やされるであろうからである。 工程1 5gのクレアチン一水和物を100mlの0.1Mクエン酸(pH3)内に溶解し、90℃で2時間加熱した。これによってほとんどのクレアチンがクレアチニンに変換した。溶液を室温まで冷却した。 工程2 加熱せずに、室温でpH5の650mlの0.1Mクエン酸緩衝剤内で5gのクレアチン一水和物を含有する溶液を調製した。さらに、溶液は15%のアロエベラ汁、調味料および甘味用デキストロースを含有した。 工程3 次に工程1および工程2からの溶液を混合し、90℃で30分間加熱して混合物を滅菌し、次にガラスまたはプラスチックのビンに入れて22℃で貯蔵した。工程2で添加された5gクレアチン一水和物は、最終生成物の調合後、実質的に安定であり続けた。 上述の飲料を3℃の冷蔵庫内に入れてもクレアチンは沈殿しなかった。クレアチニンの存在の下では、3℃の冷蔵庫内のクレアチンの最大溶解度は約1.2g/100ml(約1.4gのクレアチン一水和物と等価)であるとわかった。 実施例5 当業者には、緩衝溶液を加熱するとpHが減少することは周知である。したがって、20℃でpHが4.75である0.1〜0.2Mクエン酸リン酸緩衝剤は、40℃まで加熱するとpH4.5に変わる。逆に、緩衝溶液を冷却するとpHは上昇する。これらのpHの変化は、図3で図示した関係に従う安定性を達成するのに必要なクレアチン:クレアチニンのモル:モル比に影響する。したがってこの比はpH4.75での約1.7:1からpH4.5での2.5:1に変わる。したがって、20℃で安定な組成物は、40℃で貯蔵されると新たな安定の組成物に変わることになる。この実施例の目的は、3.8〜8.25を含むpH範囲にわたり、2℃、22℃および39℃で安定性に必要な比を確立および比較することである。 実験手順 1.pH3.8およびpH8.25での、0.2Mクエン酸−0.2Mリン酸カリウムの緩衝剤を調製した。 2.上記1の溶液を用いて、以下の溶液を室温で調製した。 a) pH3.8での緩衝剤内の67.06mMクレアチン一水和物(100ml中1g) b) pH3.8での緩衝剤内の67.06mMクレアチニン(100ml中0.758g) c) pH8.25での緩衝剤内の67.06mMクレアチン一水和物(100ml中1g) d) pH8.25での緩衝剤内の67.06mMクレアチニン(100ml中0.758g) 3.溶液2aおよび2cをさまざまな割合で混合し、以下のpH値を有する67.06mMクレアチン一水和物の溶液を得た。 3.8,4.0,4.2,4.4,4.6,4.8,5.0,5.2,5.4,5.6,5.8,6.0,6.25,6.5,6.75,7.0,7.25,7.5,7.75,8.0,8.25 4.同様に溶液2bおよび2dをさまざまな割合で混合し、上記3で特定したのと同じpH値での67.06mMクレアチニンの溶液を得た。 5.工程3からのクレアチン一水和物溶液と、工程4からのクレアチニン溶液とを混合し、ねじ蓋ガラス管内の10mlの最終体積で、表1に示すクレアチニン対クレアチンのモル:モル比(最初に図3から導き出したもの)をもたらすのに必要な正しいpH値の溶液を形成した。三部の標本を準備した。 6.標本に蓋をし、90℃で30分間加熱滅菌した。 7.1組の標本を2℃、別の組を22℃、そして最後の組を39℃で貯蔵した。 8.5週後および6週後に、pH測定と、実施例1に記載の酵素方法によるクレアチン分析とのための部分標本を取り、6週目にはアルカリピクリン酸法によるクレアチニンについての標本を取った(これには、英国ドーセット、プールのシグマ−オールドリッチ・カンパニー・リミテッド(Sigma-Aldrich Company Limited, Poole, Dorset, UK)により提供されたキットである「クレアチニン診断キット(Creatinine Diagnostic Kit)」終点法を用いた)。クレアチンとクレアチニンとの化学的な類似性にもかかわらず、クレアチンはアルカリピクリン酸法でいかなる反応も示さない。 表1 実施例5で最初に加えられるクレアチニン対クレアチンのモル:モル比(すべての場合においてクレアチニン+クレアチンの最終濃度合計は67.06mMである。) 結果 39℃で保温した溶液からの標本のクレアチン含有量の分析では、5週目と6週目との間でいかなる有意の変化も示されなかった。濃度変化の平均は+0.76(SD1.3)mmol/lであり、これはリットル当りのクレアチン一水和物のわずか0.113gの上昇に対応する。これら標本における5週目から6週目での百分率の変化は3.1(3.8)%であり、これはこの方法の分析誤差と同じオーダである。 図6に示すように、39℃でのクレアチニン対クレアチンの比は、最終pHが4.6(約2.1:1)から3.7(約10.0:1)である標本で急速に増加している。pH5.2からpH8.8では、比は1.0以下である。6.0を上回るpHでは、比はほぼ線形に0.9から、pH8.8での0.6の比へ減少する。 同じpHから、およびクレアチンとクレアチニンとの等しい濃度から始まっているにもかかわらず、2,22,39℃での6週間の保温後では、pHの明らかな違いがあった(表2)。すべての場合において、39℃で保温された溶液は最も低いpH、および2℃での溶液は最も高いpHを有していた。達成された最終pHは以下のa)およびb)の直接の結果である。 a) 溶液の水素イオン活動に対する温度の直接の影響。なぜなら温度の上昇はpHの減少を引起すからである。 b) 水素イオンを取除きpHを上昇させるプロセスであるクレアチンからクレアチニンへの変換、または水素イオンを放出しpHの減少を引起すクレアチニンからクレアチンへの変換の影響。これはクレアチンとクレアチニンとの濃度の平衡に達するまで生じる。あらゆる変化の程度は、クレアチンおよびクレアチニンの初期濃度がどれだけ平衡にあるものからであるかに依存し、クレアチンまたはクレアチニンのいずれかのみから開始した場合(たとえば実施例2)に最大となる。これは遅いプロセスであることがあり、図2に示すように、最初はクレアチンのみからなる低いpHの溶液で最大8週かかることがある。(実施例2の保温温度は22℃であるため、39℃では平衡に達するまでわずかに短い時間が予想される。)クレアチンからクレアチニンへの相互変換が引起すpHの変化の大きさは、クレアチンおよびクレアチニンの絶対濃度と、使用する溶媒の緩衝能とに依存する。しかしこれらの要因を知ることによって、既知の最終組成物ならびにpHを有するクレアチンおよびクレアチニンの溶液の調製が可能となる。 表2 平衡に達することを可能にするための6週間の保温後における0.2Mクエン酸リン酸カリウム緩衝剤中で生成したクレアチンおよびクレアチニンの67mmol/l(組合された濃度)の溶液のpHに対する温度の効果。 (開始pH値は実質的に、22℃で保温した標本について示したものと同じであった)。 同じ初期pHで調製された溶液のクレアチニン対クレアチンの最終モル:モル比は、3組の保温で同一ではなかった。しかし図7に示すように、3つの温度についてのクレアチニン対クレアチンのモル:モル比は、これらが各溶液の最終pHと比較された場合には互いに極めて近かった。したがって異なったpHのクレアチンとクレアチニンとの溶液の平衡のモル:モル比は主にpHにより影響を受け、温度からの影響は受けない。 図8は、22℃で6週間保温した後における異なるpHでの溶液のクレアチニン対クレアチンのモル:モル比と、このデータに最もよく一致する7次多項式曲線(回帰係数r=1.00)とを示す。この線で予想される比は、22℃で17.7週間保温した後に得た図3に示すものと同一であるが、ここでは溶液は最初クレアチンのみからなり、クレアチニンはなかった。これはこの実施例でのデータを裏付ける。 議論および結論 図3におけるのに近いモル:モル比のクレアチン対クレアチニンからなる溶液から始まってこれを平衡にすると、2℃から39℃で保温した際には6週以内に安定性に達し、39℃で保温した場合には5週目までに安定性に達した。3つの温度すべてにおいて、平衡にはもっと早く達していたと十分考えられる。図6から図8に示す結果は、互いに安定な平衡にある際のクレアチンおよびクレアチニンに関するものであり、これを用いて、3.8から8.8のどのpHについても、クレアチニン対クレアチンのモル:モル比であって混合後すぐに安定な平衡になるものを形成することができる。 室温(22℃)で最終pHが4.6の場合、クレアチニン対クレアチンの比は2.1:1であった。これはクレアチン含有の安定した飲料にとって実際的であると考えられる上限である。最終pH4.6未満では、クレアチンの安定性を維持するためのクレアチニン量は余りにも材料の無駄であり、実際的ではない。最終pHが5.2での比は、約1.0:1と実際的なレベルであり、酸性pHを有する美味な飲料をもたらす。比が1.0:1未満のpHを有する組成物もまた実際的であり、材料の経済性という利点を有するが、酸味がそれほどなく、美味で劣るという不利な点がある。 冷蔵(たとえば2℃)した場合、飲料に有用であると勧められる組成物は、室温での上述のものと類似する。39℃(高い室温の極値と考えられる)では、クレアチニン対クレアチンのモル:モル比1.0:1を支持する最低pHは5.2〜5.5であり、飲料にとって組成物の実際的な範囲の最低pHを定める。 平衡のクレアチン対クレアチニンの比に影響を与える最も重要な要因はpHである。クレアチンとクレアチニンとを、特定のpHでこれらが平衡になる割合で混合すると、これら組成物、さらにはpHもまたすぐに安定となる。初期組成物が平衡状態の一辺に片寄っていれば、各々についての濃度は平衡での濃度に向かって動く。これがクレアチニンの生成を伴う場合、組成物のpHは上昇し、一方でこれがクレアチンの生成を伴えばpHは減少する。pHが変わる程度は、平衡に達するために生じなければならないクレアチンまたはクレアチニンの絶対的変化と、溶媒の緩衝能とに依存することになる。平衡に達するのにかかる時間は、初期モル:モル比がどれだけ平衡での比と異なるかによって決定される。 加熱または冷却からのpHへの直接の影響は、逆にされなければ、クレアチン/クレアチニン相互変換を新たな平衡状態へと駆り立てることになる。既に平衡にある溶液に冷却(たとえば2℃での冷蔵)を行なうと、その影響として、クレアチニンを犠牲にしてクレアチン含有量が増加する。これにより、冷却に伴う初期(直後)のpH増加が或る程度引戻され、この後なお初期値よりも高い値で落ち着き、クレアチニン対クレアチンのより低いモル:モル比を支持する。新たな平衡に達するのにかかる時間は、低いpHで最大となる。加熱では逆のことが起こり、ここでpHの初期減少は、クレアチンおよびクレアチニンの組成物が最初に平衡にあれば、初期pHに向かって或る程度引戻される。最終的にpHは加熱前よりも低いpHで落ち着き、組成物のクレアチニン対クレアチンのモル:モル比はより高くなる。温度を上昇させることでpHを減少させることは常に、温度を減少させることでpHを(同じ大きさで)増加させるよりも、クレアチニン対クレアチンのモル:モル比でより大きな変化を引起こす。しかし平衡の達成は一般に、溶液が冷却されるよりも加熱される際に最も速い。低いpHの溶液の場合、新たな平衡に達するための時間はかなり長くなることがある。 クレアチンおよびクレアチニンの濃度が平衡からかなり離れた組成物を調製し、かつこれら溶液を次に長期間にわたり加熱または冷却する場合、上述の要因の両方が当てはまるであろう。しかしこれらの場合すべてにおいて、基礎液(すなわち添加したクレアチンおよびクレアチニンがない溶液)の加熱または冷却の、pHに対する直接の影響を知っていれば、かつ組成物の調製の際に図6から図8に記載のクレアチニン対クレアチンのモル:モル比を適用することによって、変化の程度を最小限にできる。 上で得られたデータに基づき、表3は、平衡にある異なるpHの溶液のクレアチニン対クレアチンのモル:モル比と、500ml飲料中のクレアチン(一水和物として計算)およびクレアチニンの対応する濃度とを示す。便宜上、クレアチン自体の濃度をすべての場合において5gクレアチン一水和物に固定し、クレアチニンの濃度をこれに従って変動させた。 表3 22℃で6週以上貯蔵した、異なるpHの500ml飲料のクレアチンおよびクレアチニンの推定含有量 実施例6 この実施例は、この発明に従う酸性組成物の詳細な調合を説明する。 組成物は乾燥粉末の形をとり、これを水に添加して、クレアチン、クレアチニンおよびアロエベラを含む食材であって、クレアチンが実質的に安定であるものを形成する。 材料 デキストロース一水和物 300g クエン酸(一水和物) 50g ペクチン(安定剤) 6.0g 塩 5.0g クエン酸三ナトリウム(二水和物) 130g ベータカロチン粉末 3.0g 塩化カリウム 2.9g グレープフルーツ調味料 2.9g リン酸三カルシウム 2.1g 重炭酸マグネシウム 2.1g 予混合ビタミン 1.8g レモン調味料 1.4g オレンジ調味料 1.4g アスパルテーム 1.0g クレアチン一水和物 149g クレアチニン 113g 凍結乾燥アロエベラ抽出物 44g 合計815.6g 上記混合物約75gは、1リットルの基質に懸濁、または1リットルの水に溶解すると、1杯分330mlにつき、約4.4gのクレアチン、8.5gの炭水化物、1.25gのアロエベラ抽出物(250ml汁と等価)、エネルギ34kcal(支持基質のカロリー含有量を0と仮定して)、カルシウム、カリウム、マグネシウムおよびビタミン(ビタミンE3.4mg、ビタミンC16.2mg、チアミン0.3mg、リボフラビン0.4mg、ナイアシン5mg、ビタミンB6 0.4mg、フォラシン85μg、ビタミンB12 0.9μg、ビオチン0.08mg、およびパントテン酸2.2mg)ならびに微量のタンパク質、脂肪および繊維質をもたらす。溶液は約5.0のpHを有する。 クレアチンは室温で少なくとも7日間実質的に安定である。 実施例7 この実施例では、可食支持基質内に、クレアチンと、室温でクレアチンを実質的に安定にするのに十分な量のクレアチニンとの懸濁物の生成方法を例示する。 100mlの0.1Mクエン酸(2.5〜3のpHをもたらす)の中に、クレアチン一水和物(1.7g)を溶解し、溶液を90℃で5時間加熱する。これによりクレアチンのうち75〜100%がクレアチニンに変換され、次に、100mlの0.1Mリン酸カリウム溶液を加えてpHを5.0まで上昇させる。次にキサンタンガム4gを添加し、ガムが溶解するまで加熱を続ける。次に混合物を40℃に冷却する。20mlの水中の微粉化したクレアチン22gのスラリーを添加し、混合物を3分間、ボルテックスミキサを用いてよくかき混ぜ、微粉化したクレアチンが均一に懸濁したゲルをもたらす。この後、混合物全体を急速に室温まで冷却し、この時点で懸濁物は100mlにつき10gのクレアチン含有量を有する固形または半流動体のゲルを形成し、これは22℃で少なくとも30日間実質的に安定である。(実施例2に記載のように)異なるpHの溶液中のクレアチン濃度(100ml当りのgとして)の、時間に対するグラフである。(実施例2に記載のように)異なるpHの溶液中のクレアチン濃度(初期濃度の百分率として)の、時間に対するグラフである。(実施例2に記載のように)124日の保温後における異なるpHの溶液中のクレアチニン(Cn)対クレアチン(Cr)のモル:モル比のグラフである。(実施例3に記載のように)クレアチン濃度(100ml当りのgとして)の、時間に対するグラフであって、異なるpHの溶液中のクレアチンとクレアチニンとの混合物が最大95日間保温されたものを示す図である。(実施例3に記載のように)クレアチン濃度(初期濃度の百分率として)の、時間に対するグラフであって、異なるpHの溶液中のクレアチンとクレアチニンとの混合物が最大95日間保温されたものを示す図である。(実施例5に記載のように)39℃で6週間保温した後に安定である溶液についての、クレアチニン対クレアチンのモル:モル比の、pHに対するグラフである。(実施例5に記載のように)2℃,22℃,39℃で6週間保温した後に安定である溶液についての、クレアチニン対クレアチンのモル:モル比の、pHに対するグラフである。(実施例5に記載のように)22℃で6週間保温した後に安定である溶液についての、クレアチニン対クレアチンのモル:モル比の、pHに対するグラフと、最適の7次多項式曲線 y=−0.001x7+0.077x6−1.693x5+20.594x4−149.615x3+649.397x2−1560.343x+1603.236 r=1.000とを示す図である。 人間が消費するための包装された水性液体組成物を調製する方法であって、 クレアチンと、クレアチニンとを含む水性液体組成物を準備する工程を含み、 前記水性液体組成物は、水性溶媒と、前記水性溶媒中に溶解したクレアチンと、前記水性溶媒中に溶解したクレアチンを安定にする量のクレアチニンとを含む飲料であり、 前記水性液体組成物中のクレアチニン対クレアチンのモル比が1:10以上かつ10:1以下であり、 調製直後の前記組成物内のクレアチンのうち、少なくとも75%が22〜39℃の温度範囲で少なくとも30日の期間保管される間に変化せず、 前記水性液体組成物のpHが2.5〜8.5であり、 前記クレアチニンの量は、前記水性液体組成物の調製完了時から存在し、 前記水性液体組成物中の前記クレアチンの含有量が包装に示されている、方法。 前記水性液体組成物のpHが3〜7であり、 前記水性溶媒とクレアチンとを混合してクレアチン溶液を生成する工程と、 前記クレアチン溶液を、pH2〜3の条件下で、少なくとも90℃で少なくとも30分間加熱して、前記クレアチンの少なくとも一部をクレアチニンに変換する工程とを含む、 請求項1に記載の方法。 前記水性液体組成物のpHが3.8〜8.25であり、 前記水性溶媒とクレアチンとを混合してクレアチン溶液を生成する工程と、 前記水性溶媒とクレアチニンとを混合してクレアチニン溶液を生成する工程と、 前記クレアチン溶液と前記クレアチニン溶液とを混合する工程とを含む、請求項1に記載の方法。 前記クレアチニン溶液のpHは、前記クレアチン溶液のpHよりも低い、請求項3に記載の方法。 前記クレアチニン溶液のpHは2〜3であり、前記クレアチン溶液のpHが4.5〜7である、請求項4に記載の方法。 固形のクレアチンを準備する工程と、 固形のクレアチニンを準備する工程と、 前記固形のクレアチンと、前記固形のクレアチニンとを混合して固形組成物を得る工程と、 前記固形組成物を水性溶媒に溶解させる工程とを含み、 前記水性液体組成物のpHが3.0〜7.0であり、 前記固形組成物は、前記水性液体組成物中のクレアチンが安定する量のクレアチニンを含む、請求項1に記載の方法。 包装に前記水性液体組成物中のクレアチン含有量を示す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。