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タイトル:特許公報(B2)_ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物を含む複合体を可逆的に分解させる方法
出願番号:2002561943
年次:2010
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/50,G01N 33/543,G01N 33/68,C12Q 1/68


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ホルムバーグ アンダース JP 4394879 特許公報(B2) 20091023 2002561943 20020201 ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物を含む複合体を可逆的に分解させる方法 マグネティック バイオソリューションズ スウェーデン エービー 503276528 牧村 浩次 100103218 高畑 ちより 100107043 鈴木 亨 100110917 ホルムバーグ アンダース GB 0102568.3 20010201 20100106 G01N 33/53 20060101AFI20091210BHJP G01N 33/50 20060101ALI20091210BHJP G01N 33/543 20060101ALI20091210BHJP G01N 33/68 20060101ALI20091210BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20091210BHJP JPG01N33/53 UG01N33/50 PG01N33/543 521G01N33/543 525UG01N33/543 541AG01N33/68C12Q1/68 Z G01N 33/53-577 特表平11−507920(JP,A) 特開平04−228076(JP,A) 特開平02−286100(JP,A) Bioconjugate Chem.,1999年,vol.10,p.395-400 23 GB2002000466 20020201 WO2002061428 20020808 2004527732 20040909 27 20050121 海野 佳子 本発明は、ストレプトアビジン(またはアビジン)といったビオチンを結合する化合物からの結合ビオチンの遊離に関する。とくに本発明はストレプトアビジン (またはアビジン) 被覆支持体からビオチン化部分を可逆的に遊離する方法に関する。 ストレプトアビジン(またはアビジン) およびビオチン(シス−ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ[3,4]イミダゾール-4-ペンタン酸)(cis−hexahydro−2−oxo−1H−thieno [3,4] imidazole-4-pentanoic acid)間の強力な相互作用はよく知られている。 実際、ストレプトアビジンおよびビオチン間の結合(解離定数、Kd、約10-15M)は、非共有結合で最強の生物学的相互作用のうちの一つと見なされる。 その結合の形成は極めて迅速であり、広範なpH、 温度および他の変性条件でも安定であると考えられている (Savage ら, 「アビジン-ビオチン化学」 A Handbook, 1992: 1-23, Rockford, Pierce Chemical Company)。このことが、ストレプトアビジン-ビオチンまたはアビジン-ビオチン技術を使用する多様かつ広範な応用を導いてきた。 ビオチン-ストレプトアビジンは、分子的、免疫的および細胞のアッセイにおいて最も広く利用されている親和力結合の一つである。ストレプトアビジンは、例えばそれを酵素または蛍光性、化学発光性または放射性の物質で標識することによりそのような複合体において高感度で検出しおよび定量することができる。標識ストレプトアビジンは、例えば細胞表面にあるタン白質を検出し、ブロット(blots)を可視化して定量するため、ならびに酵素結合免疫吸着剤アッセイ、ELISAを実施するために使用されてきた。 ストレプトアビジンはまた、ビオチン化部分、例えばビオチン化された分子または細胞を捕獲するためその表面に容易に固定化することができる。そのような表面は、複合体混合物から関心ある分子または細胞を検出または分離するために使用することができる。かくしてストレプトアビジン-ビオチン相互作用は、従来技術上、知れられている分離、精製および単離の操作の多数、例えばアフィニティクロマトグラフィーなどにおいて、利用が見出されてきた。 固定化、特にオリゴヌクレオチドおよび核酸の固定化は、分子生物学の多くの操作および多くの常用されてきた技術、例えば核酸の精製ばかりでなく、配列決定、インビトロ増幅、cDNA調製、鋳型の調製などにもしばしば利用され、固相、例えばストレプトアビジン被覆支持体での使用に適応されてきた。これが使用される特別の領域は、例えばストレプトアビジン固定化−磁性微小ビーズを使用する、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 産物の単離である(Hultmanら, Nucleic Acids Res.17 : 4937-4946,1989)。この方法は、サイクルシークエンス法の産物を精製するための従来方法(沈殿および/または遠心分離工程を往々用いる)と比べて、一般的に良好な収率を与え、しかも自動化が容易であることから、極めて関心が持たれている。 ビオチン-ストレプトアビジン(またはアビジン) 結合を使用するほとんどの応用はビオチンおよびストレプトアビジン(またはアビジン)の本質的に非可逆的結合に基づいている。しかしながら、ビオチン化された分子または細胞を回収するために、結合ビオチンの遊離が、望ましい場合が多々ある。 ビオチン-ストレプトアビジン結合を切断または逆行させる多数の代替的手法が報告されてきた (Lee ら, Anal Biochem. 206 : 206-207, 1992, Elgar ら, DNA Sequence 2 : 219-226,1992, および Conrad ら、 Nucleic Acids Res. 20 : 6423- 6424,1992)。 しかしながら、これらは部分的または完全に結合を切断するために、過酷な条件、例えば高塩条件またはホルムアミドおよびEDTAを使用して94°Cに数分間、煮沸することを要求する (Tong ら, Anal. Chem.64 : 2672-2677, 1992)。そのような条件は、一般にあらゆる結合した部分(例えばタン白質または核酸分子)にとり有害であるばかりでなく、ビオチンおよび/またはストレプトアビジン分子の変性にも至る。変性ストレプトアビジン分子は再使用できない。さらに変性条件下では、タン白質は回収しかされないため繊細なタン白質の精製には不向きである。したがって、ビオチン-ストレプトアビジン結合を逆行させる変性条件の使用は、とりわけ生物分野の分離には望ましくない。 US-A-5,387,505は、ビオチン化された標的核酸およびアビジン-被覆高分子粒子を含む複合体の分離方法を記載する。その方法は、複合体の加熱、少なくとも塩洗浄溶液、とりわけ塩化ナトリウム、SDSおよびEDTAを含む塩洗浄溶液の存在下で、少なくとも65°C、具体的には85〜100°Cの温度に加熱することを含む。これらの苛烈な条件も結果的に再使用できないビオチンおよびアビジン分子の変性を同様に招く。 ビオチン-ストレプトアビジン複合体をより温和な条件下で切断する様々の取り組みが報告されている。例えば、光感受性のビオチンホスホラミダイト(phosphoramidites)を導入するか(Olejnik ら、Nucleic Acids Res. 24 : 361- 366, 1996)、あるいは温度またはpH依存性の遊離を生じるストレプトアビジン変異体と共役した重合体の使用である。例えば、 Dingら (Bioconjugate Chem. 10: 395-400,1999)は、温度感受性重合体、poly (N- isopropyl acrylamide) (NIPAAm)を、遺伝子組換えストレプトアビジン (SAv)に共役させて、室温またはそれより低い温度でビオチンを結合し、ならびに結合したビオチンを37°Cで遊離することができる複合体を生成させた。この複合体は、温度がその重合体のより低い臨界溶解温度 (LCST) の中で循環するにつれ、繰返しビオチンを結合および遊離させることができる。 ごく最近、Bulmus ら (Bioconjugate Chem. 11 : 78-83,2000) は、pH-感受性重合体( NIPPAm およびアクリル酸の共重合体)を遺伝子組換えSAv分子の同一部位に共役させた。pHを低下させると、その重合体が崩壊してビオチンの結合を妨げるようになり、他方pHを上げるとその重合体は完全な水和物となり、ビオチンが結合することを受け入れることがわかった。 しかしながら、ビオチンおよびストレプトアビジン間の可逆的結合についてこれまで提案されている方法はいずれも、DNA配列の決定方法、例えば毛細管またはスラブゲル式のDNA配列決定測定装置を用いる方法に容易に利用されるものではない。その結果、ビオチンおよびストレプトアビジン(またはアビジン)の結合を可逆的かつ確実に切断する代替の方法には引き続き要望がある。特に比較的温和な条件を使用し、しかもストレプトアビジン被覆支持体の再使用を促進する、具体的にはDNA配列決定の自動化システムにおける方法である。 以前の知見に反して、ビオチン-ストレプトアビジンまたはビオチン-アビジン相互作用の可逆的切断が、充分に水性である溶液(substantially aqueous solution)を用いて、例えば制御された温度条件の下でなし得ることが今や見出されている。この知見は、ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物いずれかとの間の相互作用の破壊まで拡張される。 かくして本発明の一面からは、ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物を含む複合体を崩壊させる方法が提供される。該方法は、その複合体を分解させる条件下で、充分に水性である溶液の有効量と接触(例えばインキュベート)させる段階を含み、好ましくは、複合体は可逆的に分解して、これによりビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物を生成する。 本発明の好ましい面から、本発明はビオチン-ストレプトアビジンまたはビオチン-アビジン結合を含む複合体を分解させる方法を提供し、その方法は、該複合体を充分に水性である溶液の有効量と接触(例えばインキュベート)させる段階を含み、 それにより開裂、 好ましくは該結合の可逆的開裂を引起す。 よって本発明の方法の好ましい態様は、ビオチンを結合する化合物、例えばストレプトアビジン(またはアビジン)に、ビオチンの可逆的結合を実質的に提供する。この文脈において、可逆とは、パートナーの結合が可逆的である、すなわち分離するかもしれないことを意味するだけでなく、その結合がその後も再形成されるかもしれないことを意味することを意図している。 本明細書で"可逆的"または"可逆的に"などの用語は、ビオチンまたはビオチン化部分が切断され、遊離してまたはビオチンを結合する化合物、例えばストレプトアビジン(またはアビジン)から解離することを意味している。その際、結合しているペアのいずれかの分子の変性または不活性化、あるいはこれらのうちのいずれかが結合する部分の変性または不活性化が実質的に起こらない。遊離した後に、ビオチンが、再びビオチンを結合する化合物、例えばストレプトアビジン(またはアビジン)に結合する能力は損なわれない。しかしながら、どの生物系においてもそうであるように、ある程度の耐性は、小規模または無視し得る程度である変性または不活性化が許容されるほどには許容されるはずである。 本明細書で、"開裂(cleaving)"、"遊離(releasing)"または"切断(disrupting)"の用語は互換的に使用されており、具体的にはビオチン(またはビオチン化部分)およびビオチンを結合する化合物、例えばストレプトアビジン(またはアビジン) といった結合ペアでのその片割れの物理的な分離または引き離しまたは解離を意味することとしている。 本明細書で、"複合物(conjugate)"および"複合体"なる用語は、ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物、具体的にはストレプトアビジン(アビジン)とビオチンもしくはビオチン化部分との複合体を含有するすべての複合物または複合体を指すために使用され、これらではビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物が非共有結合で結びついている。 本明細書で、"ビオチン"または"ビオチン化合物(biotin compound)"なる用語は、ビオチン (cis-hexahydro-2- oxo-lH-thieno [3, 4] imidazole-4-pentanoic acid) およびすべてのビオチン誘導体およびアナログを言及するために用いられる。そうした化合物として、例えば、 ビオチン-ε-N-リジン、ビオサイチン(biocytin)ヒドラジド、2-イミノビオチンのアミノまたはスルフヒドリル誘導体、およびビオチニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミドイミノビオチン(sulfosuccinimideiminobiotin)、 ビオチンブロモアセチルヒドラジド(biotinbromoacetylhydrazide)、p-ジアゾベンゾイルビオサイチン(p-diazobenzoyl biocytin)、3- (N-マレイミドプロピオニル)ビオサイチン(3- (N- maleimidopropionyl) biocytin)およびビオチンと他の部分、例えば核酸 (DNA, RNA, DNA/RNAキメラ分子、核酸アナログおよびペプチド核酸を含む)、タン白質 (酵素、 ペプチドおよび抗生物質を含む)、炭水化物、脂質などの生体分子といった他の部分との共有結合もしくは非共有結合のあらゆる付加物が挙げられる。ビオチンと他の部分とのそうした付加物は、本明細書では"ビオチン化部分(biotinylated moiety)"ともいう。 "ビオチンを結合する化合物(biotin-binding compound)"なる用語を、本明細書では、ビオチンまたはいずれのビオチン化合物と強固に、しかし非共有結合的に結合できるあらゆる化合物を包含する意図で用いられる。好ましいビオチンを結合する化合物には、ストレプトアビジンおよびアビジンに加え、それらの誘導体およびアナログもまた含まれ、ストレプトアビジンおよびアビジンが他の部分、例えばタン白質と複合化したものも含まれる。 充分に水性である溶液の使用、 好ましくは本明細書で記載される温度条件下での使用は、ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物、例えばビオチン-ストレプトアビジン(またはアビジン) 結合を含む複合体を、さらに厳しい処理の必要がなく、つまり、追加的な処理段階がないままに分解するために有効であることが示されてきた。ビオチンの脱複合化(decomplexation)への該水性溶液の正確な作用様式はわかっていない。しかし、理論に拘泥するわけではないが、可逆的解離の背後にある機構は、ビオチンを結合する化合物 (例えばストレプトアビジン-被覆基質)におけるコンホメーション変化によるものであり、その結果、結合ビオチン (または ビオチン化部分)の遊離となるということが信じられている。この理論は、ビオチンを結合する化合物およびビオチン間の解離が、塩が添加されると完全に可逆的であるという事実により支持される。 結合のペアの遊離、引き離しまたは解離は、充分に水性である溶液、 好ましくは精製水または蒸留水でのインキュベーションによって首尾よく起こる。精製水がとりわけ望ましい。好ましくは、該精製水は、水、 好ましくは蒸留水を、適切なイオン交換体またはイオン交換系、例えば、適切なミリQマトリックス(Milli-Q matrix)あるいは商業的に入手でき、従来技術的に標準である系を通して得られる、または得ることが可能なものである。特に好ましくは、蒸留水をMillipore Purification Pak, QPAK1 (ベッドフォード, MA, 米国)を用いてMilli-Q plusシステムに通したものである。得られる水は、通常、およそ18.2M cmである。このような水の精製方法ならびにこれと等価な方法は、周知であり、標準技術である。このようにして精製された水は、往々Milli-Q水または脱イオン水と呼ばれる。 インキュベーション時間は、使用する温度に依存して変化し、当業者は所与の温度条件に対して容易に決定することができる。典型的には、インキュベーション 時間は10分まで、好ましくは5分まで、さらに好ましくは2分まで、例えば1分までである。1分までの、具体的には約1秒のインキュベーション時間は、ビオチン:ビオチンを結合する化合物の結合、具体的にはビオチン-ストレプトアビジン結合を約80°Cの温度で可逆的に切断するのに特に有効であることがわかった。 典型的にはインキュベーションは、約20〜95°C、好ましくは50〜90°C、さらに好ましくは60〜90°C、または70〜90°Cの温度の範囲で、具体的には約80°Cで行なわれる。とりわけ好ましくは、 インキュベーションが温度を徐々にまたは段階的に上昇させることによって行なわれる。具体的にはインキュベーションが行なわれる所望の温度に到達する温度勾配である。例えば、温度を毎2 秒に+1°Cだけ上げてもよい。通常、温度勾配を用いるこのような方法において、温度は、外界温度もしくは室温、具体的には大体20°Cから所望のインキュベーション温度まで上げられるであろう。 複合物が昇温でインキュベートされるこれらの場合において、一般的には本発明の方法は、さらに分離した成分を含む溶液を次に冷却(好ましくは外界温度まで、例えば25°Cまで)することを含む。通常は、急速冷却が好ましく、氷上でのインキュベーションを、好ましくは10分まで、例えば1〜5分間行なってもよい。 本発明に使用される好適な水性の溶液は、水を主要成分として含み、すなわち少なくとも 50容量% が水であり、より好ましくは水が少なくとも60%、または70%、例えば少なくとも80% または 少なくとも 90もしくは95%である。このような溶液は、通常固形溶解物 (例えばMg2+、Ca2+、Na+、Li+および一価および二価のイオン、一般には塩化物、硫酸塩など)を低含量で有する。好ましくはこれらの溶液は、蒸留またはイオン交換といった従来の精製技術を用いて精製され、化学的な不純物を実質的に含まないであろう。そうした化学的な不純物には、例えばアミンおよびアンモニウム化合物が含まれる。 好ましくは、上記水性溶液は、実質的にアンモニアもしくはアミンを含まず、具体的には5%未満のアンモニアもしくはアミンを含むか、あるいはより好ましくは4%、3%、2%もしくは1%未満のアンモニアもしくはアミンを含むだけである。該溶液は、 実質的にNH3フリーであるか、その塩のすべて、すべてのアンモニアイオン、具体的には、水酸化アンモニウムの形態のものを含まず、ならびに第一級、第二級、第三級もしくは芳香族のアミン、あるいは式 NR3またはN+R4で表されるあらゆる化合物(ここでR基は、同一でも異なってもよく、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリール基である。)を含まないのがよい。 精製水または蒸留水は、5 〜 7の範囲のpH 、好ましくは 6.5〜7、例えば約7であるものが一般に本発明の使用に向いている。低イオン強度の水性溶液がとりわけ好ましく、具体的には純水である (KW =10-14 、25°C)。 驚くことにインキュベーション溶液においてキレート化剤、特にEDTAの存在は、ビオチン:ビオチンを結合する化合物の結合、具体的にはビオチン-ストレプトアビジン(またはアビジン) 結合の切断の効率を低下させることがわかった。このことは、以前の知見(Tong ら, Anal. Chem. 64 : 2672-2677,1992)と反する。よって本発明の好ましい態様において、該水性溶液はいかなるキレート化剤、例えばEDTAおよびEGTAを実質的に含まない。本発明の使用において好ましい水性溶液は、キレート化剤(例えばEDTA) 濃度が、l0mM未満、好ましくは5mM未満のものである。本発明の好ましい態様における上記水性溶液は、キレート化剤を含まないか、あるいは痕跡量しか含まないものである。EDTAの存在は微量であっても本発明の方法にはとりわけ不利になるものである。その方法では、キャピラリー配列決定が解離した生成物について行なわれることが望ましい。これはあるタイプの配列決定用装置 (具体的にはMegaBACE1 1000)において使用される毛細管中への注入相に悪影響を及ぼすことが見出されているためである。このため、このような方法においてキレート化剤、例えばEDTAの存在は、通常避けるべきである。最も望ましいのは、上記水性溶液が実質的にEDTAといったキレート化剤を全く含まないことである。 好ましくは本発明に使用される水性溶液は、一価および二価の塩、例えば塩化ナトリウム、塩化リチウムおよび塩化マグネシウムもまた実質的に含まない。具体的には適切である該溶液は、典型的には100mM未満、 好ましくは50mM未満、より好ましくは25mM未満、具体的にはl0mM 未満しか、NaClを含まないであろう。LiClについても好ましい濃度は同様の範囲にあり、すなわち 100mM未満、 好ましくは 50mM未満、より好ましくは25mM未満、具体的には10mMであろう。MgCl2といった二価の塩が相対的に低濃度であっても、複合物の解離の効率に対して、著しい低下をもたらすことがわかっている。遊離させる溶液におけるこれらの塩の濃度は、典型的には10mM未満であろう。より好ましくは上記水性溶液は、実質的に二価の塩、例えばMgCl2 を含まない。 本方法による接触段階において、ビオチン化合物とビオチンを結合する化合物との複合物の分解を促進する適切な水性溶液およびインキュベーションの時間および温度は、当業者により容易に決定され得る。そのような溶液、時間および温度は、一般にビオチン化合物またはビオチン化部分の性質に依存して決められる。本発明の重要な利点の一つは、上記複合物が比較的温和な条件下で分解されるために、ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物ともにその構造は変化しないですむことである。よって、該複合物の両成分が安定であるような反応条件が選ばれる。例えば、該ビオチン化合物がビオチン化タン白質である場合、高い温度といった苛烈な条件は、タン白質部分を変性するはずであり、避けるべきである。換言すると、インキュベーション条件は、通常ビオチン化合物および/またはビオチンを結合する化合物の望ましくない分解または変性を回避するように選択されるだろう。 本明細書で記載される複合物において、典型的にはビオチンは、1個以上、好ましくは1個の生物学的または化学的な実体、例えば生体分子に結合または連結するであろう。上記に説明したように他の実体に結合したビオチンを含むビオチン化合物もまた本明細書では"ビオチン化部分"と呼ぶ。特に好ましくは、上記生体分子は、核酸分子、タン白質またはキメラ分子、すなわち核酸およびタン白質成分をともに含む分子であり、あるいは実際、キメラ分子は所望する化学的性質の成分、例えばタン白質 (本明細書で、その用語はあらゆるペプチドまたはポリペプチドを含むように広い意味で使用される。)、あるいは小さい有機分子(例えばタグなど)に結びついている(または何らかの方法で結合、連結した)核酸分子を含むものである。 上記核酸分子は、任意のヌクレオチド配列 (リボ−またはデオキシ−リボヌクレオチド配列のいずれか、すなわちDNA、RNAまたはそれらの混合体、つまりDNA/RNA、あるいはそれらの任意の修飾物)、あるいはあるヌクレオチド配列を含むか、または取り込んだ任意の分子、具体的にはペプチド核酸 (PNA)またはそれらの任意の修飾物であってもよい。核酸分子は、1本鎖でもまたは2本鎖であってもよい。したがって、"核酸分子"なる用語は、核酸 (ヌクレオチド配列)および別の成分、例えばタン白質、炭水化物、放射性または蛍光標識などを含む構築物をも包含すると見なされる。最も好ましくは、ビオチンが結合する上記生体分子は、DNA 配列決定の産物または任意のプライマー伸長産物である。 ビオチン分子を結合させてもよいタン白質の例として、抗体、酵素、 結合タン白質 (例えば、コンビナトリアル結合タン白質)、ライブラリーまたはディスプレーの産物、ペプチドなどが挙げられる。 生体分子、具体的には核酸分子またはタン白質分子をビオチンに結合させる方法 (つまり分子および実体のビオチン化の手法) は技術的には 公知である。ビオチンを結合する化合物、具体的にはストレプトアビジン(またはアビジン)もまた同様に、1つ以上の(好ましくは 1個の)生物学的、化学的または他の実体に結合、または連結させてもよい。よって本発明の方法における使用に好適である複合物は、ストレプトアビジン(またはアビジン)-ビオチン結合により結び付けられた任意の2つの部分(例えば生物学的または化学的部分)を含んでもよい。 本発明の好ましい態様では、ビオチンまたはビオチンを結合する化合物、例えばストレプトアビジン (アビジン)は、固定化部分、例えば固体支持体上に固定化される。好ましくは、ビオチンを結合する化合物、例えばストレプトアビジン(またはアビジン)が、固定化部分、例えば固体支持体上に固定化される。この支持体は、化学的または生化学的操作において、固定化、分離などに現在広範に使用されているか、または提案されている周知の担体、基体の任意の類であってもよい。したがって例えばこれらは、粒子、シート、ゲル、フィルター、膜、マイクロファイバー片、管、ウェルもしくはプレート、ファイバーもしくは毛細管、櫛状物(combs)、ピペット用チップ、マイクロアレーもしくはチップの形態をとってよく、ポリマー材料、例えばアガロース、セルロース、アルギン酸エステル、テフロン(R)、ラテックス、プラスチック、ポリスチレン、ガラスまたはシリカから都合よく作られる。バイオチップを、例えばNilssonら(Anal. Biochem. 224 : 400-408,1995)により記載されているような実験系を小規模化した系を提供するために固相担体または診断ツールとして用いてもよい。 好ましい固体支持体は、ビオチンまたはビオチンを結合する化合物の結合のために広い表面積を提供する材料である。そうした支持体は一般には不規則な表面を有するであろう。そのため該支持体は、例えば多孔状または微粒子からなってもよく、具体的には微粒子、ファイバー、ウェッブ(webs)、焼結物または篩である。一般的には微粒子材料、例えばビーズ、とりわけポリマーのビーズ/粒子がより大きい結合容量のために望ましい。よって微粒子材料、特にポリマーのビーズが好ましく、その幅広さは技術的に知られている。ポリマービーズとして例えばセファロースまたはポリスチレンビーズを使用してもよい。 本発明により用いられる微粒子の固体支持体は、都合上、球状のビーズからなるであろう。ビーズのサイズは特に重大にはならないが、例えばその直径として少なくとも1μmならびに好ましくは少なくとも 2μmのオーダーであってよく、最大直径として好ましくは10μm以下、より好ましくは6μm以下である。 例えば直径約2.8μmのビーズは充分に使えることが示された。固定化材料の操作および分離を支援するため、ならびに必要であれば自動化を促進するために、磁気化("magnetic")できるビーズが好ましい。好ましくはそのような磁性粒子は、磁気凝集(magnetic aggregation)または凝結を避けるために超常磁性である。さらに一様な動力学および分離を提供するために単分散(すなわちサイズが本質的に均一であり、具体的には標準偏差5%未満の直径を有することである)であることが有利である。超常磁性単分散の粒子の製造方法は、例えばEP- A-106873に記載されている。"ダイナビーズ(DYNABEADS)"としてDynal AS 社(オスロ、ノルウェー) から市販されているストレプトアビジン-被覆磁性ビーズは本発明の使用において特に好適である。本発明の方法における使用に好適な非磁性ポリマービーズは、Dynal Particles AS (Lillestrom、ノルウェー) 、Qiagen社、Amersham Pharmacia Biotech社、Serotec社、Seradyne社、Merc社、日本ペイント社、Chemagen社、Promega社、Prolabo社、 Polysciences社、Agowa社およびBangs Laboratories社から入手できる。 しかしながら、上記に示したように操作および分離を助力するためには磁性ビーズが好ましい。本明細書で 使用する"磁性"なる用語は、磁場に置かれたときに付与される磁気モーメントを持つ能力があり、したがってその場の作用のもとで位置を変えることができる支持体を意味する。そのような支持体は、磁気的集合によりサンプルの他の成分から容易に除去されるために有利であり、これにより任意のビオチンまたはビオチン化部分の結合に続き、その粒子を素早くしかも簡単かつ効率よい方式で分離することを提供する。加えて、そうした磁気的な集合は、ビオチン分子を結び付ける任意の部分、例えばタン白質または核酸を劣化させるかもしれないずり応力を生じる遠心分離法といった従来的技術よりもはるかに穏やかな分離方法である。 かくして、ビオチンを結合する化合物、例えばストレプトアビジン(アビジン)への結合を介してビオチンまたはビオチン化部分に結合した磁性粒子は、磁場の適用、具体的は永久磁石を使用することにより、適当な表面上に除いてもよい。普通は、サンプル混合物を収容している容器の側壁に磁石を付けるだけで充分であり、これで該粒子は容器内壁に集合し、サンプルの残り部分は除去でき、その結果残留しているサンプルおよび/または該粒子は、次の所望するいずれの段階にも供せられる。 上記固体支持体の表面は、疎水性でも親水性でもよく、あるいは正もしくは負に荷電していてもよい。かかる表面性質は、固体支持体の原料である材料固有のものであるかもしれない。例えばポリスチレンまたは他のポリマーあるいはスチレン/ジビニルベンゼンといった共重合体から作られる固体支持体は一般的に疎水性であり、ならびにシリカの支持体は通常親水性である。代替としてまたは追加的に、そうした表面性質は、固体支持体を適当な機能性の化学基でもって被覆することにより、さもなくば固体支持体の表面を改変して表面が適切な化学性質を示すようにして獲得することもできる。 一般にポリスチレンの表面または表面に何らかの硫酸基(-S04)を有する表面は、疎水的性質を示す。しかしながら親水性表面は、多種類の機能性の表面基から1以上用いて付与することができる。具体的には、そうした基は、アルデヒド(-CHO)、 脂肪族アミン(-CH2CONH2)、芳香族アミン (-φ-NH2)、カルボン酸(-COOH)、エポキシ基ヒドラジド (-CONH-NH2)、水酸基(-OH)、スルホン酸基 (-S03) およびトシル基である。 このような機能性表面は、従来技術として知られ、または記載された技術を用いて調製することができる。例えば本発明において使用される機能性被覆支持体は、米国特許4,336,173、4,459,378 および 4,654,267によるビーズを改変することにより製造することができる。 また、機能化された表面を有する支持体を、上述した粒子メーカーのような多くのメーカーから商業的に入手することができる。特に疎水性ビーズは、Dynal AS(オスロ、ノルウェー)から入手することができる。例えば、Dynabeads M-450 Epoxy(表面にグリシジルエーテル(エポキシ)基を有する)、Dynabeads M-450またはM-280 Tosylactivated(表面にp−トルエン−スルホニル(トシル)基を有する)、およびDynabeads M-500 Subcellular(表面にp−トルエン−スルホニル(トシル)基を有する)が挙げられる。親水性ビーズもDynal ASから入手することができる。例えば、Dynabeads M-270 Epoxy(表面にグリシジルエーテル(エポキシ)基を有する)、Dynabeads M-270 Carboxylic acid(表面にカルボン酸基を有する)およびDynabeads M-270 Amine(表面にアミノ基を有する)が挙げられる。 本発明に用いられる特に好ましい固体支持体は、親水性であるか、親水性もしくは実質的に親水性の表面を有し(例えば、Dynabeads M-270)、好ましくはカルボキシル化された親水性表面を有し、特に好ましくはDynabeads M-270 Carboxylic acidである。 関係する特定の方法における表面の好適な選択は、ビオチンまたはビオチンを結合する化合物と結合する部分のタイプに依存するかもしれない。例えば、標識疎水性ターミネーター・ダイがビオチン分子と結合した生体分子の部分に取り込まれる本発明の態様において、具体的には実施例1に記載する方法のような核酸配列決定を実施する方法では、取り込まれていない疎水性ターミネーター・ダイへの支持体の非特異的な結合を、可能な限り少なくすることを保証するためにも親水性表面が好ましい。 所望する場合、ストレプトアビジン(またはアビジン)(または他のビオチンを結合する化合物のいずれか)あるいはビオチンを、固定化用支持体に公知の方法で結合させてもよい。例えば、これには水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基またはアミノ基を介する結合が挙げられ、これらは前記固定化用支持体を好適な表面被覆を与えるように処理することで得られるであろう。 好都合な態様では、ビオチンを結合する化合物、例えば、ストレプトアビジン(またはアビジン)を、ビオチンまたはビオチン化部分を含むサンプルとの接触に先立って支持体に結合させる。さらに、ストレプトアビジン(またはアビジン)をあらかじめ結合させた好適な支持体も商業的に入手可能である。本発明に用いられる好ましい支持体は、Dynabeads M-270 Streptavidinであり、このものはDynal AS(オスロ、ノルウェー)から入手することができる。あるいは、ビオチンを結合する化合物、例えば、ストレプトアビジン(またはアビジン)を、ビオチンとの複合体を形成させた後で、支持体に結合させてもよい。 一旦、ビオチン:ビオチンを結合する化合物の複合体が分解されれば、当該ビオチンを結合する化合物を、例えばNaClまたはLiClなどの塩溶液を使用する再調整の後で再使用してもよい。例えば、ストレプトアビジン/アビジン支持体からのビオチン(またはビオチン化部分)の開裂後に、公知の技術を使用して、具体的には所望によりTE(10mM Tris、pH7.5、1mM EDTA)と組み合わせて用いてもよい1Mもしくは2MのNaClまたはLiClといった結合緩衝液を用いて洗浄することにより、支持体を再調整することができる。このような追加的な再調整の工程を含む方法は、本発明の好適な態様を形成する。再調整の後、ビオチンを結合する化合物(例えば、ストレプトアビジン/アビジン固体支持体)は、ビオチンまたはビオチン化部分を結合させる方法に引き続き再使用することができる。好ましくは、このような再調整された支持体は本発明のさらなる方法に再使用される。すなわち、ビオチンを結合する化合物とビオチンもしくはビオチン化された分子とを含み、支持体上に形成された任意の複合体が、上記の充分に水性である溶液の有効量とのインキュベーションによって分解されうることを特徴とする方法である。 本明細書で述べた方法と組み合わせて使用する、他の追加的および任意的な工程は、当業者には自明であり、実験の性格に応じて容易に決定することができるであろう。例えば、固体支持体上でビオチンを結合する化合物とビオチンとの間に複合体が形成されれば、その固体支持体に1回以上の洗浄工程を課してもよく、例えば、何らかの望ましくない不純物を除去したり、結合していない反応物を除去したりしてもよい。一旦形成された固体支持体上の複合体には、いずれかの適切な操作工程を課してもよい。例えば、核酸分子が存在する場合には、プライマーとの結合、増幅反応または配列決定反応の実施をいずれかの好適な方法に基づいて行うことができる。好適である典型的な方法について、以下により詳しく述べる。 さらに、以下により詳細に述べるように好ましい態様においては、ビオチンを結合する化合物とビオチンとの複合体の分解後、ビオチンまたはビオチン化部分を、何らかの好適な方法を用いて精製または単離してもよく、あるいは、さらなる操作または分析に供することができる。実際、ビオチンまたはビオチン化部分の単離および/または精製のために本発明の方法の使用は、本発明の好ましい態様を形成する。例えば、反応混合物を、固定化された(すなわち固体支持体と共有結合した)ビオチンを結合する化合物に単に接触させるだけで、ビオチン化部分を、非ビオチン化部分から容易に分離することが可能である。その後、ビオチン化合物とビオチンを結合する化合物との固定化複合体を分離し、洗浄する。次いでビオチン化部分は、本明細書で述べた本発明の方法を用いて、ビオチン:ビオチンを結合する化合物−複合体の解離によって単離することができる。無論、ビオチンを結合する化合物を類似の方法で精製できることは理解されるであろう。例えば、ビオチンを結合する化合物を含む反応混合物を、固定化されたビオチン化合物と接触させることによって複合体を形成させ、次いで精製ならびにその後の複合体の解離によって精製できる。ここで述べた複合体の望ましい使用に応じて、1以上の、ビオチンを結合する化合物(例えば、ストレプトアビジン(またはアビジン))あるいはビオチンを結合する化合物に付いた部分あるいはビオチン化合物またはビオチン化部分は、ラベル(標識)またはいずれかのレポーター分子でも付けて提供されてもよい。これは、公知のまたは文献に記載されたいずれかの標識であってよく、例えば、放射性ラベル、酵素マーカー、または他の検出可能な標識といったもの、具体的には有色ラベル、色素ラベル、発色性ラベル、蛍光ラベル、または化学発光ラベルなどが挙げられる。さらに、検出反応に寄与する何らかの「信号を発する」部分、例えば酵素基質、反応成分などもまた「標識」として含められる。 ここで述べた方法はいずれの適用にも使用してもよい。それらの適用では、結合、好ましくは、ビオチン(またはビオチン化部分)とビオチンを結合する化合物(例えばストレプトアビジン(またはアビジン))との可逆的な結合の分解が望ましい。これは例えば、標的のタン白質もしくは核酸分子、例えば、ビオチン化されたDNAのような標的ビオチン化部分を検出、同定、定量、精製、分離および/または単離する諸々の方法に使用してもよい。他の方法としては、標的核酸分子、例えば、標的ビオチン化核酸分子の製造、例えばコピーまたは複製または増幅が挙げられる。好ましくは、そのような使用において、結合ペアの解離後、すなわち、ビオチンまたはビオチン化部分の遊離後、ストレプトアビジン支持体を再使用できる。 本発明の方法を、例えば、従来の分離、精製、単離の技術、特に固体支持体上での使用に適応させたものに用いてもよい。そのような技術として、免疫アッセイ(例えば、免疫分離アッセイ)、DNAを基盤とするアッセイ、配列決定、インビトロ増幅などが挙げられる。前記方法の好ましい使用は、DNAアレイ用プローブの再生のための操作である。前記方法を使用できる精製操作としては、細胞、核酸、タン白質およびその他の生体材料、有機化合物などの分離に従来から使用されてきたもの、例えば、ハイスループット薬物スクリーニングが挙げられる。 本発明の方法は、PCRおよび類似の核酸増幅技術、あるいは実際、インビトロ増幅または鎖伸長の工程(すなわち、鋳型−指定ポリメラーゼが触媒するプライマー伸長反応(template-directed polymerase catalysed primer extension reaction)、例えば、該ポリメラーゼが逆転写酵素であるもの)を含むあらゆる操作において、特に有用性を有する。例えば、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用は、固相シークエンシング技術に用いてもよい。この技術では、ビオチン化されたssDNAシークエンシング産物またはdsDNAがストレプトアビジン−被覆磁性ビーズへ結合すること、次いで例えば、非ビオチン化鎖の溶出(例えばNaOHを使用する)を含む。本発明の方法を使用して、ビオチン化されたDNAシークエンシング産物を、可逆的な方法でストレプトアビジン−被覆ビーズに結合させ、その後遊離させてもよい。かくしてそれらのビーズは、(例えば該ビーズに上記の再調整工程を課した後に)ビオチン化されたサイクルシークエンシング産物の新しい組を捕獲するように再使用することができる。ビオチン化された一本鎖のシークエンシング産物についても同様に本発明の方法を使用して、ストレプトアビジンビーズに結合させ、その後に遊離させることができる。このような方法においては非ビオチン化鎖の溶出は必要とされず、ビオチン化されたシークエンシング産物は、本発明の方法を使用して簡単に遊離させることができ、例えば、配列決定装置を用いて分析することができる。このような技術の概略スキームを図1および実施例に記載する。本発明の方法は、配列決定技術に使用できるため、核酸分子の同定または定量に用いることができる。 さらに、本発明の方法は、所望のビオチン化産物、例えば、所望のビオチン化されたタン白質または核酸分子を精製または単離するために用いることができる。とくに該方法は、ビオチン化された一本鎖もしくは二本鎖形態のPCR産物を精製または単離するために使用することができる。例えば、所望する標的核酸配列のPCR増幅は、1以上のビオチン化されたプライマーを使用して、この技術分野における周知の方法および文献に開示された方法に従って、サンプルに実施できる。その場合これらのビオチン化されたPCR産物は、ストレプトアビジン(アビジン)固体支持体に結合させ、好適な方法(例えば、磁気分離)を使用することによりサンプルの残存物から分離させることができる。その後、これらを本発明の方法を使用して支持体から遊離させ、分析するかまたはさらなる操作工程に供することができる。選択的には、所望のPCR産物を固体支持体に結合させ、非ビオチン化鎖を溶出除去することにより一本鎖とすることも所望によりできる。その後、その一本鎖産物を溶出して分析するか、あるいは、溶出しさらに下流の操作工程、例えばさらなる増幅工程に供することができる。好適な場合には、このようなさらなる操作の諸工程は、一本鎖産物が固体支持体に結合している間に等しく実施することができ、その後、最終産物を本発明の方法を使用して溶出させることができる。このような技術例の概略スキームを図25および26に示す。これらの技術のすべてにおいて、固体支持体は、精製産物の量を増加させるため、あるいは、例えば異なる/別の産物を単離するために、上記のように実益上、再使用される。 さらなる面からみれば、本発明は、ビオチン化された部分、好ましくはビオチン化された分子または細胞(例えば、ビオチン化されたDNA)を、ビオチンを結合する化合物、例えば、ストレプトアビジンまたはアビジン支持体を含んでなる支持体から遊離させる方法を提供する。該方法は、前記支持体を充分に水性の溶液を用いて溶出する工程、好ましくは約20〜95℃の範囲の温度、より好ましくは50〜90℃、特に好ましくは60〜90℃または70〜90℃、具体的には約80℃で溶出する工程からなり、それにより前記部分の遊離をもたらし、好ましくは可逆的な遊離をもたらす。 よりさらなる面からみれば、本発明は、ビオチン化された部分、好ましくはビオチン化された分子または細胞(例えばビオチン化されたDNA)の可逆的な固定化方法を提供し、該方法は下記の工程を含む; (a)該ビオチン化された部分を、ビオチンを結合する化合物(例えば、ストレプトアビジンまたはアビジン支持体)を含んでなる支持体に結合させ、次いで、 (b)該支持体を充分に水性の溶液で、好ましくは約20〜95℃の範囲の温度、より好ましくは50〜90℃、さらにより好ましくは60〜90℃または70〜90℃、具体的には約80℃で溶出し、それにより該ビオチン化された部分の遊離をもたらし、好ましくは可逆的な遊離をもたらす。このような方法において、一旦遊離した前記ビオチン化部分に、好適な技術を用いてさらなる操作または分析を課してもよい。 さらになお別の面において本発明は、核酸増幅技術、好ましくはDNAの増幅方法、あるいは核酸配列決定技術(例えば、ダイターミネーター(dye terminators)を用いるサイクルシークエンス法)において、本明細書に記載したいずれかの方法の使用を提供する。 本発明の方法で用いられる、より穏和な溶出条件は、従来用いられてきた苛烈な条件に対して、2つの主要な利点を与える。第1には、遊離は可逆的であり、このことはビオチンを結合する化合物(例えば、ストレプトアビジン)およびビオチンの双方を再使用できることを意味する。例えば、溶出の後でストレプトアビジン−被覆ビーズを再使用し、ビオチン化された分子の新しい組(例えば、ビオチン化されたサイクルシークエンシング産物またはビオチン化されたPCR増幅産物)を捕獲できる。またビオチン分子は遊離後も無傷のままであるため、ビオチン化された分子はまた新しいビーズ・セットと結合することができ、2回目の遊離がなされる。 比較的温和な条件でストレプトアビジン支持体からビオチン化された分子を溶出し、ならびにビオチンとストレプトアビジンの双方を再使用できる可能性は、将来的な応用のために、新たな可能性を広げる。さらに、ストレプトアビジン支持体を再使用できることは、現存のアッセイ(例えば、自動化DNA配列決定アッセイ)のコストを著しく減少させる。 第2には、ビオチン−ストレプトアビジン結合を切断するために現在用いられている苛烈な条件に持ち耐えるには脆弱過ぎると以前は見なされて居た分子または細胞を、ビオチンを結合する化合物(例えば、ストレプトアビジン支持体)から首尾よく溶出させることができ、さらに所望する場合には下流の操作または分析を課すこともできる。これは、広範な分野における新しい途および新しい方法の発展の可能性を広げる。 本発明の方法が、ビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−アビジン結合を含んでなる複合体に関して専ら述べてきたにもかかわらず、親和性結合のペアを形成する能力のあるビオチン、ストレプトアビジンまたはアビジンの任意の既知誘導体を含んでいるいずれの複合体の分解に拡張してもよいことは、一般に理解されるであろう。例えばビオチンは、ストレプトアビジン(またはアビジン)支持体に対するその結合能力が著しく損なわれることなく、他の生物学的または化学的な実体へ結合させることによって改変してもよい。 ストレプトアビジンは、多数の異なる形態で商業的に入手可能であり、未変性の形態だけでなく変異の形態も含まれ、それぞれを本発明に用いることができる。ストレプトアビジンおよびアビジンの未変性および組換え形態(テトラマー、ダイマー、モノマーまたはこれらいずれかの組み合わせの形態)の双方を、本明細書で述べた方法に用いることができる。実際、ビオチンと結合する能力のある、ストレプトアビジンまたはアビジンのいずれかのフラグメントあるいは改変形態を使用してもよいことは予期される。例えば、ストレプトアビジン(またはアビジン)は、ビオチンと結合するその能力に顕著な影響を与えることない、いずれかの他の生物学的または化学的実体と結合してもよい。 したがって最も広範な面において、本発明は、少なくとも一つのビオチンを結合する化合物またはその誘導体(例えば、ストレプトアビジンまたはアビジン分子あるいはこれらの誘導体)に結合された少なくとも一つのビオチン分子またはその誘導体を含んでなる複合体の分解方法を提供する。その方法は、該複合体を、充分に水性の溶液と接触させる(具体的には、インキュベートさせる)工程を含み、これにより該複合体を分解し、好ましくは可逆的に分解する。好ましくは、該方法は、約20〜95℃の範囲の温度、より好ましくは50〜90℃、さらにより好ましくは60〜90℃または70〜90℃、例えば約80℃でもたらされるであろう。(実施例) これより、下記の実施例(これらにより本発明を限定的に解されるべきでない)において、さらに添付の図を参照して本発明をより詳細に説明する。 1.1 材料および方法ショットガン・ゲノムライブラリーからのDNAの調製 ここで述べる方法では、pCR4-BLUNTTM(Invitrogen)でサブクローニングされたショットガン・ゲノムライブラリーのコロニーに由来するDNAを使用した。そのコロニーを1×TE(10mM Tris-HCl(pH 7.5)、1mM EDTA)100μl中に拾い上げ、次いで電子レンジで40秒間加熱することによって溶解させた。10μlの溶解物(lysate)を、50μlのPCR反応のための鋳型として直接使用した。PCR産物の調製 50μlのPCR反応において、10μlの上記溶解物を鋳型として、RIT27(5'-GCTTCCGGCTCGTATGTTGTGTG-3')およびRIT28(5'-AAAGGGGGATGTGCTGCAAGGCG-3')プライマーとともに用いた。使用した増幅条件は、10mM Tris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、2mM MgCl2、0.1%Tween20、0.2mMの各dNTP、0.5UのAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer、Norwalk、CT、米国)および75nMの各プライマーであり、PTC225サーモサイクラー(MJ Research、Waltham、MA、米国)を使用した。使用した温度プロファイルは、95℃で5分、次いで、96℃で15秒、65℃で30秒、さらに72℃で2分のサイクル35回、72℃10分間で終えた。ダイターミネーターを用いたサイクルシークエンス法 ダイターミネーター・サイクルシークエンス(Dye terminator cycle sequencing)反応を、DYEnamicTM ETターミネーターサイクルシークエンシングキット(Amersham Pharmacia Biotech、Piscattaway、NJ、米国から入手可能)を用いて、下記の方法で実施した。5pmolのビオチン化されたM13(-28)(5'-CACACAGGAAACAGCTATGAC-3')リバースシークエンシングプライマー(reverse sequencing primer)を、8μlのシークエンシング反応予備混合物および1.5μlの粗PCR産物とともに合計量で20μlとなるように用いた。ビオチン化されたサイクルシークエンシング産物の捕獲と溶出 各反応について、70μgのM270ストレプトアビジンビーズ(Dynal AS、オスロ、ノルウェー)を使用した。ビーズを最初に一度洗浄して、保存緩衝液を除去し、20μlのB/W緩衝液(10mM Tris-HCl(pH7.5)、1mM EDTA、2M NaCl、0.1% Tween 20)に再懸濁し、サイクルシークエンス反応に移行させた。断続的な2回の混合を伴いながら、外界温度で15分間インキュベーションした後、結合したDNAを有するビーズを磁力的に集め、45μlの70%エタノールで2度リンスし、取り込まれなかったダイターミネーター、塩、ヌクレオチド、PCR鋳型、および酵素を除去した。洗浄サイクルに続いて、依然として結合したままのDNAを有するビーズを、20μlの蒸留水に再懸濁し、加熱/冷却ステーション内の新しいプレートに移した。最終的に、ビオチン−ストレプトアビジン結合を、再懸濁液を80℃に加熱することで解離させ、その後、外界温度まで冷却した。該ビーズを磁力的に分離し溶液から除去したところ、該プレート内に清澄な液体を得た。その後、ビーズをもとのビーズ管に移し、最後は1×TE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH 7.5)、1mM EDTA)7μl中に再懸濁しさらなる洗浄を何らすることなく、新たな回に再使用するための準備ができた。MegaBACE1000 DNAシークエンサーを用いる評価 遊離したDNAは、そのままMegaBACE1000 DNAシークエンサー(Amersham Pharmacia Biotech、Piscattaway、米国)に注入できる状態にあった。注入パラメーターは、3kVで25秒であった。稼動は9kVで合計120分間行った。使用したベースコーラー(basecaller)はCimarron Slim Phredify 2.6であった。Phredからの信頼値(Phred20)とともに使用した(Brentら、Genome Research 8: 175-185,1998およびBrentら、Genome Research 8: 186-194,1998)。1.2 結果および考察サイクルシークエンシング産物の精製および遊離の概要 ここに述べた方法の原理を、図1に概説する。一般的にその方法の最初の段階は、ストレプトアビジン−被覆磁性ビーズ上へのビオチン化されたDNAの結合を含む。これは、よく知られており、強固であることが証明されている(Hultmanら、Nucleic Acids Res.17: 4937-4946,1989およびFanganら、BioTechniques 26: 980-083,1999)。選ばれた磁性ビーズ(M270ストレプトアビジン・ダイナビーズ、Dynal AS、オスロ、ノルウェー)は、取り込まれていない疎水性ターミネーター色素との非特異的な結合を可能な限り少なくできるように親水性表面を特徴としていた。第2段階では、ビーズを上昇させた温度(80℃)にて水中でインキュベートし、サイクルシークエンシング産物の非変性的な遊離をもたらした。ストレプトアビジンおよびビオチンの双方は、遊離の後も結合能を保持していることが示された。 遊離されたシークエンシング産物を、MegaBACEキャピラリー・シークエンサーで分析し、約700塩基のベースコール(basecall)された配列読み取り長を与えることがわかった(図2)。ストレプトアビジンビーズが結合能力を保持しているかどうか調べるために、これらのビーズを結合緩衝液中で再調整し、新しいシークエンシング産物の2巡目の捕獲に再度使用した。図3は、ベースコールされた対応する配列決定結果を示す。約700塩基の読み取り長は、2回のストレプトアビジンビーズは、2回目も同様の結合能であったことを示した。 これらの知見を得た後、遊離されたビオチンのストレプトアビジンに再結合する能力についても検討した。最初に結合し、次いで遊離したシークエンシング産物をサンプルとして2回目の実施に使用した。得られた電気泳動図は、シグナル強度についてごくわずかな減少(5%まで)しか示さなかったが、おそらく手動上の支障が入り込んだことによると思われ、実質的には同一の読み取り長と塩基分離(base resolution)を示した(図4および5)。遊離緩衝液、温度およびインキュベーション条件の最適化 遊離緩衝液(EDTA濃度)、温度およびインキュベーション時間の影響を調べた。EDTAは効率的な溶出のために必要であることが以前に示されていたため(Tongら、Anal. Chem. 64: 2672-2677,1992)、当初の研究においてはEDTAを含めていた。しかし我々は、以前の知見とは異なり、EDTAは溶出に対し逆効果を有することを実証している。さらに、EDTAはキャピラリー・シークエンサー内への注入相にも影響を及ぼすことを見出した。 これらの実験において、シークエンシング産物を通常どおり捕獲した後、異なる濃度のEDTA(0〜20mM)を使用して80℃で溶出を行った。図6は、たとえ少量のEDTAであっても、溶出および/または注入における効率を減少させることを示す、生の対応データを表す。このことをさらに調べるために、すでに異なるEDTA濃度において溶出(上記に概説したように)した、一連のサイクルシークエンシング・サンプルを固相上に再捕獲し、今度は水中で溶出させた。その結果(図7)は、シークエンサーへの注入を水中で行ったにもかかわらず、溶出工程におけるEDTAの存在のため、より低いシグナルと読み取り長をもたらすこと示している。EDTAは、固体支持体への結合/溶出ならびにキャピラリー内への注入の双方に影響を与えると結論づけてもよい。これらの実験からの結論は、水だけの方がより優れた結果を与えるというものであった。 緩衝液組成の最適化に続き、純水中での溶出についてインキュベーション時間と温度を検討した。これらの目的のためにサイクルシークエンシング産物のプールを使用した。最初に、20℃〜90℃の範囲での異なる溶出温度について、MegaBACEシークエンサーから得られたデータの分析により調べた。図8に示すように、平均読み取り長を比べて決定した場合、最適な溶出は80℃で達成された(インキュベーション時間はすべての場合1分間であった)。しかしながら、操業により得られたシグナル強度を比較すると、差異はより顕著であった。この場合もまた80℃が最適であることが見出された。 引き続き80℃におけるインキュベーション時間の効果を検討し、そのデータを図9に示す。その結果は、80℃に加熱した後、直ちに外界温度まで冷却することが効率的な溶出には充分であることを示している。さらに、1分を超え2分間までのインキュベーション時間は読み取り長とシグナル強度を有意に減少させることを見出した。この減少はシークエンシング産物が分解することによるものとは考えられない。なぜならば、サイクルシークエンシング反応は、シークエンサーへの導入に先立って、通常94℃で2〜4分間加熱されるからである。 最適化された条件を使用して、ストレプトアビジンビーズの再使用について分析を行った。同じ組のビーズを、異なる6つのサイクルシークエンシング産物とともに、後続の6サイクルの再使用に用いた。再使用の6サイクル目の後に得られた配列の例を図10に示した。極めて低いバックブラウンドとともにおよそ700塩基が得られ、これは後続のサイクル間においても極めて効率的な溶出を示す。本発明の方法において観測される読み取り長に著しい影響を与えることなく、ストレプトアビジンビーズを少なくとも8回は再使用可能であることを実際に実験から示した(データは示さず)。 結論として、効率および性能を何ら損なうことなく、ストレプトアビジンビーズを複数回、成功裏に使用できることを明らかにした。ビオチン化された分子をストレプトアビジン支持体から比較的温和な条件で溶出できること、ならびにビオチンおよびストレプトアビジンともに再使用できることは、今後の応用に新しい可能性を切り開くものである。 2.1 材料および方法PCR産物の調製 675、900および1150bpの範囲のPCR産物は、PTC 225サーモサイクラー(MJ Reaserch, Waltham, MA, 米国)を用いて、標準的な条件の50μlのPCR反応(10mM Tris-HCl(pH8.3)、5mM KCl、2mM MgCl2、0.2mMの各dNTP、0.5U AmpliTaq DNA ポリメラーゼ(Perkin-Elmer, Norwalk, CT, 米国)および5pmolのビオチン化されたUSP(ユニバーサルシークエンシングプライマー)および5pmolのRSP(リバースシークエンシングプライマー))を使用して生成した。ビオチン化されたサイクルシークエンシング産物の捕獲および溶出 各実験のために、100μgのM270ストレプトアビジンビーズ(Dynal AS, オスロ, ノルウェー)を使用した。最初にビーズを一旦捕獲し、20μlの2×B/W緩衝液(10mM Tris-HCl (pH7.5)、1mM EDTA、2M NaCl、0.1% Tween20)中に再懸濁させ、次いで20μlのPCR産物へ移した。断続的に混合を3回行ないながら室温で15分間インキュベーションした後、dsDNAを捕獲したビーズを磁力的に収集し、1×TE(10mM Tris-HCl(pH7.5)、1mM EDTA)で2回リンスして、PCR反応および結合緩衝液からのあらゆる不純物および塩を除去した。洗浄操作の後、ビーズを現時の試験溶液20μlの中に再懸濁し、目下の試験基準(すなわち、検討される条件)に従って、種々の温度で、異なる時間インキュベートした。インキュベーションの後、ビーズを磁力的に収集し、その上清を新しい試験管に移し、分析のために保存した。その後、ビーズを20μlの精製水に再懸濁し、温度を2秒毎におよそ1℃上昇させて80℃(すなわち、最適条件)まで上げた。この後、外界温度まで冷却した。その後、ビーズを磁力的に収集し、その上清を新しい試験管に移し、分析のために保存した。 この操作は、(i)検討される条件で遊離された、ビオチン化dsDNA量の定量、および(ii)ビーズに結合されたままのdsDNA(80℃、純水中で1秒間という最適化された条件下で除去された)量の定量を可能にした。 下記のパラメーターおよび条件を試験した。 1.温度および時間;20〜80℃(10℃間隔)で1、10、30、60、120および300秒 2.pH;6、7、8、9、10(10mM Tris) 3.EDTA;0.25、1.0、5.0、10および50mM 4.NaCl;10、25、50、100および500mM 5.Tris;1、10、50および100mM(pH7.5) 6.TE緩衝液;0.5×、1×、5×、および10× 7.LiClおよびMgCl2;10および100mM 最初に標準的対照方法としてアガロースゲルを使用してすべての結果をスクリーニングした。Agilent 2100バイオアナライザーを用いる評価 遊離したdsDNAの相対的な量は、DNA7500 LabChipまたはDNA1000 LabChipを使用するAgilent 2100バイオアナライザー(Agilent Technologies, Palo Alto, CA, 米国)を用いて評価した。製造者の指示書に従って実験を実施した。最小のピーク高さを、全体としてDNA7500チップについては2.0、DNA1000チップについては1.0にセットした。 バイオアナライザーおよびアガロースゲルでの結果は常に一致していた。2.2. 結果および考察 結果を、添付した図11〜24に示した。図11に示したように、室温(20℃)では純水中において僅かな割合のdsDNAが遊離した(約3〜8%)。このことは、試験したすべてのインキュベーション時間(すなわち、1〜300秒間)にわたって一致していた。60℃では、ただちに50%が遊離し、30秒後には約90%が、およそ120秒後には100%が遊離した(図15参照)。70℃を超える温度では、ただちに100%が遊離した。 図19に示したように、pHの変化は6〜10の範囲(10mM Tris)でほとんど有意な効果を有しないように見える。残存している微量のDNAをpH6〜8の範囲で検出した。しかしながら、これはおそらくpHよりもむしろ、Tris-HCl緩衝液と、NaOHを使用する再滴定から生じる塩成分とに起因すると考えられる。 0.25 mMおよび1mM EDTAは、上記の遊離にほとんど影響を及ぼさないように見える(図20参照)。5mM EDTAは、繰り返し(repeats)の一つにおいて極めてわずかな減少(約1%)を与えた。10mMから50mMのEDTA濃度は、遊離を85%から50%に減少させる結果となった。 より高濃度のNaClでは、一層高い濃度において遊離の効率の明らかな減少が観察される(図21参照)。10mMでは約90%が溶出されたが、100mMではほとんど直線的に30%まで低下した。 図22に示すように、1mM Trisは遊離の効率にほとんど影響を及ぼさないように見える。濃度10mMのTrisでは、該効率は数%だけ低下した。50mMおよび100mM Trisでは、その遊離の効率は約50%まで低下した。 図23は、もっとも普通に用いられる濃度(1×TE:1mM EDTA;10mM Tris、pH7.5)でのTrisとEDTAとの組み合わせの遊離に対する効果を示す。興味深いことに、この組み合わせ(1×TE)では90%が遊離するに過ぎないことが見出された。 図24は、遊離に対する塩(LiClおよびMgCl2)の効果を示す。LiClは、NaClについて見出されたのと同様の効果を示した。しかしながら、MgCl2は10mMで10%が遊離するに過ぎなかった(参考、LiClおよびNaClでは90%である)。図1は、実施例1の方法の原理を説明するスキーム図である。図2は、水中での遊離後の配列決定結果を示す。図3は、再使用したストレプトアビジン・ビーズを用いた配列決定結果を示す。図4は、遊離後の変性していないビオチンを説明する。図5は、遊離後の変性していないビオチンを説明する。遊離したビオチンの2回目の捕獲後の結果を示す。図6は、EDTA中で遊離されて、MegaBACE1000に直接的に導入されたサンプルからの生データを示す。上から下へ、[水、0.25mM、0.5mM、1mM EDTA]である。図7は、最初にEDTA中で遊離され、再度捕獲され、今度は水中で遊離されてMegaBACE1000に直接的に導入されたサンプルからの生データを示す。上から下へ[水、0.25mM、0.5mM、1mM EDTA]である。図8は、1分間のインキュベーションにおける遊離の温度依存性を示す。図9は、80℃での遊離におけるインキュベーション時間依存性を示す。図10は、ストレプトアビジンビーズを6回再使用した後の配列決定の実施結果を示す。図11は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度(20℃)への依存性を示す。図12は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度(30℃)への依存性を示す。図13は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度(40℃)への依存性を示す。図14は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度(50℃)への依存性を示す。図15は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度(60℃)への依存性を示す。図16は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度(70℃)への依存性を示す。図17は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度(80℃)への依存性を示す。図18は、純水中での遊離に対するインキュベーション時間と温度への依存性を示す。図19は、遊離のpH依存性を示す。図20は、遊離に対するEDTA濃度の効果を示す。図21は、遊離に対するNaCl濃度の効果を示す。図22は、遊離に対するTris緩衝液濃度の効果を示す。図23は、遊離に対するTE緩衝液濃度の効果を示す。図24は、遊離に対する種々の塩濃度の効果を示す。図25は、本発明の方法がどのように使用されるかを説明するスキーム図である。図26は、本発明の方法がどのように使用されるかを説明するスキーム図である。 50〜90℃にある温度にて、ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物を含む複合体を分解させる条件下で、充分に水性であり、しかも100mM未満のNaClを含有する溶液の有効量と接触させる段階を含み、これによりビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物を生成することを含み、該ビオチンを結合する化合物がストレプトアビジン、アビジン、またはそれらの誘導体もしくは類似体である、ビオチン化合物およびビオチンを結合する化合物を含む複合体を可逆的に分解させる方法。 前記複合体が、ビオチン−アビジンまたはビオチン−ストレプトアビジンの結合を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記の充分に水性である溶液は、少なくとも50容量%の水を含むものであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。 前記の充分に水性である溶液は、10mM未満の濃度でキレート化剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 前記の充分に水性である溶液は、100mM未満の濃度の一価の塩および/または10mM未満の濃度の二価の塩を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。 前記の充分に水性である溶液は、精製水または蒸留水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。 前記の接触させる段階が、60〜90℃の範囲の温度での前記複合体のインキュベーションを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。 前記の接触させる段階が、80℃の温度での前記複合体のインキュベーションを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 前記ビオチン化合物が、1つ以上の生物学的実体または化学的実体と結合または連結することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。 前記生物学的実体は、核酸分子、タン白質またはキメラ分子であることを特徴とする請求項9に記載の方法。 ビオチンまたはビオチンを結合する化合物のいずれかが、固体支持体に固定化されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。 前記ビオチンを結合する化合物が、固体支持体に固定化されることを特徴とする請求項11に記載の方法。 前記固体支持体が粒子であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。 前記固体支持体が磁性ビーズを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。 前記固体支持体の表面が親水性であることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。 前記複合体の分解の後、該固体支持体は1回以上、再使用されることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。 前記固体支持体が再使用され得るように該支持体を再調整する追加的段階をさらに含む、請求項11〜16のいずれかに記載の方法。 標的タン白質または核酸分子を検出、同定、定量、精製、分離および/または単離する技術に使用する、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。 前記の標的タン白質または核酸がビオチン化されていることを特徴とする請求項18に記載の方法。 前記技術が核酸の増幅または配列決定を含むことを特徴とする請求項18または19に記載の方法。 50〜90℃にある温度にて、ビオチンを結合する化合物を含む支持体を、充分に水性であり、しかも100mM未満のNaClを含有する溶液で溶出する段階を含み、これによりビオチン化部分の遊離をもたらし、該ビオチンを結合する化合物がストレプトアビジン、アビジン、またはそれらの誘導体もしくは類似体である、該支持体から該ビオチン化部分を可逆的に遊離させる方法。 可逆的にビオチン化部分を固定化する方法であって、該方法が以下の段階:(a)該ビオチン化部分を、ビオチンを結合する化合物を含む支持体に結合させ、その後(b) 50〜90℃にある温度にて、該支持体を、充分に水性であり、しかも100mM未満のNaClを含有する溶液で溶出し、これにより前記ビオチン化部分の遊離を起こすを含み、該ビオチンを結合する化合物がストレプトアビジン、アビジン、またはそれらの誘導体もしくは類似体である、可逆的にビオチン化部分を固定化する方法。 前記の充分に水性である溶液、支持体および溶出条件が、先行する請求項2〜15のいずれかで定義されていることを特徴とする請求項21または22に記載の方法。


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