タイトル: | 特許公報(B2)_組換えトリプシンの製造方法 |
出願番号: | 2002561621 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/19,C12N 9/76,C12R 1/84 |
ミュラー,ライナー グラーゼル,シュテファン ガイペル,フランク タールホファー,ヨハン−ペーター レクサー,ベルンハルト シュナイダー,クラウス ラトカ,ミヒァエル ロニング,シュテファニー エックシュタイン,ヘルムート ギーセル,クラウディア JP 4159878 特許公報(B2) 20080725 2002561621 20020201 組換えトリプシンの製造方法 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 591003013 F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT 細田 芳徳 100095832 ミュラー,ライナー グラーゼル,シュテファン ガイペル,フランク タールホファー,ヨハン−ペーター レクサー,ベルンハルト シュナイダー,クラウス ラトカ,ミヒァエル ロニング,シュテファニー エックシュタイン,ヘルムート ギーセル,クラウディア EP 01102342.1 20010201 20081001 C12N 15/09 20060101AFI20080911BHJP C12N 1/19 20060101ALI20080911BHJP C12N 9/76 20060101ALI20080911BHJP C12R 1/84 20060101ALN20080911BHJP JPC12N15/00 AC12N1/19C12N9/76C12N1/19C12R1:84 C12N 15/00 C12N 1/00 C12N 5/00 C12N 9/76 PubMed Science Direct JSTPlus(JDreamII) 国際公開第99/010503(WO,A1) 特表平11−507207(JP,A) 国際公開第00/017332(WO,A1) Science, Vol. 255, p. 1249-1253,米国,1992年 Gene, Vol. 41, p. 305-310,1986年 Paul D. Boyer, "The Enzymes", Academic Press, 1971, p. 249-275,米国,1971年 Biotechnology, (1993), Vol. 11, No. 8, p. 905-910,1993年 5 EP2002001072 20020201 WO2002061064 20020808 2004520049 20040708 24 20031113 濱田 光浩記載 本発明は、トリプシンの組換え製造方法に関する。この目的のために、短縮型プロペプチド配列を有するトリプシノーゲンは、好ましくは、組換え宿主細胞において発現され、未切断形態で培養培地に分泌される。続いて、プロペプチド配列は、活性トリプシンを形成するために制御様式で切断される。 トリプシンは、塩基性アミノ酸、アルギニンおよびリジンのカルボキシル基でペプチドの加水分解性切断を触媒するセリンプロテアーゼ(Keil B., 1971)。ウシ膵臓由来のトリプシンは、正確な化学的および酵素的研究のために純粋な形態および適切な量で使用されうる最初のタンパク質分解酵素の1つであった(Northropら、1948)。続いて、他の高等脊椎動物由来のトリプシンファミリーに割り当てられ得るプロテアーゼを単離することも可能であった(ブタ-Charleら、1963/ヒツジ-Bricteux-Gregoireら、(1966); Travis (1968)/シチメンチョウ-Ryan(1965)/ヒト-Travisら、(1969)等)。この時、トリプシンファミリーに属する第1の酵素はまた、2種のストレプトマイセスから単離された(MoriharaおよびTsuzuki (1968); TropおよびBirk (1968); WaehlbyおよびEngstroem (1968); Waehlby (1968; Jurasekら、(1969))。 前記酵素は、脊椎動物の膵臓細胞において不活性前駆体、トリプシノーゲンとして合成され、続いて、プロペプチドの切断により活性形態に変換される(Northropら、(1948), Desnuelle (1959))。第1のトリプシノーゲン分子は、プロペプチドを切断する(Asp4)-Lys-↓-Ile間のペプチド結合を加水分解するエンテロペプチダーゼエンテロキナーゼにより天然で活性化された(Keil (1971))。エンテロキナーゼの認識配列(Asp4)-Lysは従ってほとんど全ての既知のトリプシノーゲン分子のプロペプチドのC-末端に直接位置する(Lightら、(1980))。活性化プロセスはまた、生理的pH値で自己触媒的に進行しうる。なぜなら、リジンは、エンテロキナーゼ認識配列のC-末端側に位置し、従って、Lys-↓-Ileペプチド結合もまたトリプシンによって加水分解されうるからである(Lightら、(1980))。 トリプシンは、種々の哺乳動物からのその即座の入手可能性、高い比活性(約150U/mg)とともに高い特異性(リジンまたはアルギニンのC末端側のみを切断)およびその良好な保存安定性のためにバイオテクノロジー適用のための常に興味深いプロテアーゼであった。トリプシンは、主として、配列決定用の小セクションへのペプチドのトリプシン切断のために、コート細胞培養皿から付着した細胞を剥離するために、および融合タンパク質を標的ペプチドおよび融合成分に切断するために、プロペプチドを活性化するために(例えば、トリプシノーゲンからトリプシン)、およびペプチドホルモンの組換え製造(例えば、プロインスリンからインスリン、WO99/10503参照)のために使用される。トリプシンはまた、いくつかの医薬調製物の成分である(ointments, dragees and aerosols for inhalation ("Rote Liste", 1997; The United States Pharmacopeia, The National Formulary, USP23-NF18, 1995))。動物供給源由来の酵素の使用は、多くの場合、もはや許容されないので(感染性因子での潜在的な汚染)、所望のバイオテクノロジー適用のための組換えトリプシン分子は微生物宿主から提供されなけらばならない。 種々の生物からのトリプシンの組換え製造方法がいくつか存在する。 Graf,L.ら (1987および1988)は、大腸菌におけるラットトリプシンおよびトリプシノーゲン変異体の発現および分泌を記載している。大腸菌の周辺質にトリプシノーゲン分子を分泌するために、天然のトリプシノーゲンシグナル配列は細菌アルカリホスファターゼ(phoA)のシグナル配列に置換される。分泌された不活性トリプシノーゲン分子は、周辺質から単離され、精製エンテロキナーゼを用いて酵素切断により活性化される。 Vasquez, J.R.ら (1989)は、大腸菌におけるアニオン性ラットトリプシンおよびトリプシン変異体の発現および分泌を記載している。活性トリプシン分子を発現させ、大腸菌の周辺質に分泌させるために、天然のトリプシノーゲンプレプロセグメント(シグナル配列および活性化ペプチド)が細菌アルカリホスファターゼ(phoA)のシグナル配列に置換され、ホスフェートにより調節されうるphoAプロモーターが使用される。活性トリプシンは、周辺質から単離される。しかし、収量は非常に低い(約1mg/l)。 Higaki,J.N.ら、(1989)は、tacプロモーターおよびS.typhimurium hisJシグナル配列を用いた大腸菌の周辺質へのトリプシンおよびトリプシン変異体の発現および分泌を記載している。活性トリプシンの収量は約0.3mg/lである。活性アニオン性ラットトリプシンの体積収量は、高細胞密度発酵により約50mg/lに増大しうる(Yee, L.およびBlanch, H.W., (1993))。しかし、著者は、大腸菌における活性トリプシンの発現および分泌における問題に言及している。酵素的活性トリプシンは、シグナル配列の切断および6つのジスルフィド架橋を形成するための天然のトリプシンタンパク質折りたたみ後に大腸菌の周辺質に形成される。活性トリプシンの形成は、細胞に対して毒性である。なぜならば、活性トリプシンは、周辺質の大腸菌タンパク質を加水分解し、細胞を溶解するからである。さらに、トリプシンのタンパク質折りたたみおよび特に6つのジスルフィド架橋の正確な天然の構造は、大腸菌の周辺質において妨害されるようである。この系は、比較的大量のトリプシンの単離には適切でない(>10mg;Willett, W.S.ら、(1995))。 X線結晶学的研究用に大量のトリプシン(50〜100mg)を製造するために、不活性トリプシノーゲン前駆体は、調節可能ADH/GAPDHプロモーターの制御下で酵母内で製造され、酵母α因子リーダー配列との融合物で分泌される。培地に分泌された発現産物は、エンテロキナーゼによりインビトロでトリプシンに定量的に変換される。収量は、10〜15mg/lである(Hedstrom, L.ら (1992))。 成熟ウシトリプシンおよび最初のメチオニン残基を有するウシトリプシノーゲンをコードするDNA配列がEP 0 597 681に記載される。さらに、大腸菌での発現は記載されているが、活性トリプシンを大腸菌においてどのようにして形成させるかのストラテジーは説明されていない。 ブタ膵臓由来のトリプシンまたはその誘導体をAspergillusにおいて組換え法により製造する方法がWO97/00316に記載されている。N末端で機能性シグナルペプチドに融合されたトリプシノーゲンまたはその誘導体をコードするベクターが形質転換に使用される。しかし、酵母培養は、Aspergillus培養と比べてより高いバイオマス濃度を達成し、相当により迅速に増殖し、従って、酵母細胞当たりの特異的発現量は、経済的発現方法に必要とされる収量を達成するためにAspergillus細胞に関するよりも低い。 天然には存在しない自己触媒的切断部位を含むプロテアーゼのチモーゲン前駆体の組換え製造方法は、WO99/10503に記載される。前記方法は、封入体の形態での大腸菌におけるチモーゲン性前駆体の発現、および続く精製ならびにチモーゲン性前駆体のプロテアーゼ部分が天然のコンフォメーションで形成され、次いで再天然化されたチモーゲン前駆体の切断が自己触媒的に起こる条件化での再天然化を含む。この方法の不利な点は、再天然化中にしばしば起こる大量の損失および工業的製造のために必要とされる大容積である。 Pichia pastorisにおけるトリプシンアナログの組換え産生は、WO00/17332に記載されている。プロペプチドのC末端のアミノ酸リジンが変異により別のアミノ酸(アルギニンまたはリジンは別として)に置換され、機能性シグナルペプチドにN-末端で融合しているトリプシノーゲンアナログ(ウシトリプシノーゲンの誘導体)をコードする形質転換用ベクターが使用される。この方法では、トリプシンアナログは、可溶性形態で培地に分泌され、取り込まれた変異の結果として、比較的高いpH値の発酵プロセスでも活性化されず、所望されない自己触媒によってさらに分解されない。次いで、アミノペプチダーゼが活性化のために使用される。しかし、この方法の不利な点は、不利な副作用を有するさらなるアミノペプチダーゼを最後のプロセスで除去する必要があることである。 Pichia pastorisに天然に存在するトリプシノーゲン遺伝子の発現は、WO01/55429に記載されている。自己触媒活性を回避するために、例では発酵は約6の弱酸性pH範囲で行われる。従って、これは発現期におけるより長いラン時間の間の自己触媒的活性化を妨げる最適pH範囲の外側である。前記方法の他の不利な点は、Pichia pastorisにおける発現についてコドン最適化されていないトリプシノーゲン遺伝子および関連する低発現収量である。 本発明の目的は、先行技術の不利な点が少なくとも部分的に除去され、活性なトリプシンが高収量および高活性でシンプルな様式で得られるトリプシンの組換え製造方法を提供することである。特に、発現宿主の培養培地から可溶性形態で中間体産物としてトリプシノーゲンを単離することが可能であるはずであり、それは発酵および精製の間にいかなる実質的な程度の自己触媒活性化にも曝されないはずである。さらに、トリプシノーゲンを自己触媒的に、および/または組換えトリプシンを添加することにより続いて活性化することができるはずである。 本発明の目的は、a)好ましくは分泌を媒介するシグナルペプチドと融合されて、分泌可能形態のプロペプチド配列内にエンテロキナーゼ認識部位を有するトリプシノーゲンをコードする組換え核酸で宿主細胞を形質転換する工程、b)組換え核酸の発現および培養培地への発現産物の分泌を可能にする条件下で宿主細胞を培養する工程、ここで、該条件は、プロペプチド配列の自己触媒的切断が少なくとも実質的に妨げられるように選択される、c)培養培地から発現産物を単離する工程、d)プロペプチド配列を切断して、活性トリプシンを形成する工程、およびe)任意に、非切断トリプシノーゲン分子と活性トリプシンとを分離する工程を含むトリプシンの組換え製造方法により達成される。 本発明の方法において使用される宿主細胞は、先行技術から公知であるもののような真核生物または原核生物の宿主細胞でありうる。宿主細胞は、好ましくは、真核生物細胞、特に好ましくは真菌細胞および最も好ましくは酵母細胞である。酵母の細胞の適切な例は、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombaeであり、ここで、Pichia pastorisまたはHansenula polymorpha等のメチロトローフ酵母および特にPichia pastorisが好適に使用される。 プロペプチド配列の自己触媒切断が少なくとも実質的に、好ましくは本質的に定量的に妨げられる条件下で、組換え核酸を発現し、培養培地に発現産物を分泌することができる宿主細胞を使用することが好都合である。かかる条件は、酸性pH値、特に好ましくは3〜4の範囲のpH値の培養培地を有利に含む。トリプシノーゲンは、酸性pH値、および特に4までのpH値で安定であり、一方、トリプシンは中性またはアルカリ性の培地で自己触媒的に活性化される(Keil, B.(1971))。 本発明の方法で生じる適切な条件下での培養は、宿主細胞により分泌される組換えトリプシノーゲンの成熟前活性化を妨げ、生じるトリプシンの不活性ペプチドまでのさらなる分解をも実質的に妨げうる。培養条件下での組換えトリプシノーゲンの安定性は重要である。なぜなら、発現は分泌に伴うはずであるからである。この関係で、宿主細胞からの分泌は、細胞膜を介する細胞質から培養培地へのトリプシノーゲンの漏出として理解されている。これは、通常、機能性シグナルペプチドとのトリプシノーゲンのN-末端融合により生じる。適切なシグナルペプチドの例は、酵母由来の公知のシグナルペプチドならびに特に好ましくはSaccharomyces cerevisiae由来のα因子のシグナルペプチドである。しかし、もちろん他のシグナルペプチド、例えば、トリプシノーゲンの分泌を天然に制御するシグナルペプチドを使用することも可能である。 組換えトリプシンの発現収量を改善するために、それぞれの宿主細胞に対して最適化されたコドン用法を有する組換え核酸が好ましくは使用される。従って、酵母に対して最適化されたコドン用法を有する酵母細胞のための核酸を使用することが有利である。最適化されたコドン用法を有するかかる核酸は、例えば、個々のオリゴヌクレオチドをパラレルに合成させ、引き続いてそれらを組み合わせることにより製造されうる。 本発明の方法は、宿主細胞により発現産物として分泌されるそれぞれのトリプシノーゲンが培養条件下で本質的に安定である場合、基本的に組換えトリプシンのいかなるタイプの製造にも適している。前記方法は、好ましくは、脊椎動物、特にブタ、ヒツジまたはヒト等の哺乳動物由来のトリプシンを製造するために使用される。ブタトリプシンが、特に好ましく製造される。 さらに、短縮型プロペプチド配列を有するトリプシノーゲンをコードする組換え核酸を使用することが好ましい。トリプシノーゲンは、タンパク質として理解され、これは実質的に正確なタンパク質構造を形成するが、活性トリプシンと比べて全くないか、または非常に低いタンパク質分解活性を有し、有利に活性形態のタンパク質分解活性の少なくとも5倍少ない、特に好ましくは少なくとも10倍少ない。プロペプチド部分の天然の長さ(例えば、ブタトリプシノーゲンの場合には25アミノ酸)は、エンテロペプチダーゼ、例えば、エンテロキナーゼの認識配列のみからなるプロペプチド、例えば、アミノ酸Asp-Asp-Asp-Asp-Lysに好ましくは短縮される。クローニングのためのいくつかのさらなるアミノ酸、例えば、5つまでのアミノ酸が、エンテロキナーゼ認識配列のN-末端に任意に付着されうる。 エンテロキナーゼ認識部位のN-末端のクローニングのために付着したアミノ酸Glu-Pheを含有する本発明の短縮型組換えトリプシノーゲンの発現は、本発明の方法における天然のトリプシノーゲンの発現に関する場合よりも有意に高い収量を生じることがわかった。従って、本発明の方法の特に好ましい態様では、短縮型プロペプチド配列を有するブタトリプシノーゲンをコードする配列番号:22に示されるヌクレオチド配列を有する組換え核酸が使用される。 本発明の方法では、組換えトリプシノーゲンの発現は、誘導性発現制御配列によって好ましくは制御される。従って、宿主細胞の増殖は、宿主細胞の増殖に対して好都合なまたは最適化された条件下で発現の誘導の前に起こりうる。従って、例えば、増殖は、調節可能な発現制御配列が抑圧される予め決められた光学密度まで、pH5〜7、特にpH5〜6で起こりうる。次いで、発現は、温度を変えることにより、および/またはインデューサーを添加することにより誘導されうる。好ましい発現制御配列の例は、メチロトローフ酵母における誘導発現に特に適切であるメタノールにより誘導されうるPichia pastoris由来のAOX1-プロモーターである。培養条件は、例えば、pHを3〜4の範囲に変更することにより、組換え核酸の発現により形成されるトリプシノーゲンが、培養培地において完全型で蓄積する様式で、発現制御配列の誘導前に有利に変更される。 本発明の方法における培養条件は、プロペプチド配列の自己触媒切断が実質的に妨げられるように選択される。培養培地から発現産物を単離した後、プロペプチド配列は、制御された条件下で切り離されうる。この切断は、例えば、組換えトリプシンを添加宇することにより、または/および自己触媒切断により行われうる。この関係で、自己触媒切断は、外来タンパク質を添加することなく小量の組換えトリプシンを添加することにより任意に加速されうる組換えトリプシンの自己活性化として理解される。この様式で、動物の生の材料供給源に通常由来し、続く適用において所望されない切断を引き起こし得、続いて再び除去されなければならないさらなる外来タンパク質を使用する必要はない。自己触媒活性化は、好ましくは、7〜8の範囲のpHで起こる。これは、発現の間に形成されるトリプシノーゲンが、強酸性範囲で最初に高度に精製され得、好ましくは、中性から弱塩基性pH範囲で少量、例えば、20mMのCaCl2の存在下で再緩衝化されることにより活性化が特異的に開始されうることを確実にする。活性化は、pHを再び強酸性範囲に変更することにより停止されうる。トリプシンは、例えば、SP-Sepharose(登録商標)XLまたはベンズアミジン-Sepharose等のイオン交換物質においてクロマトグラフィーにより精製されうる。 培養培地から発現産物を精製するために、培養上清が実施例6.1に記載される細胞から最初に分離されうる。トリプシノーゲンの自己触媒活性化を含む引き続く精製は、適切なクロマトグラフィー精製手順によって好ましくは行われる。特に好ましい態様では、クロマトグラフィーは、細胞の前分離なしに実施例6.2に記載されるように行われ、ここでは、好ましくは1〜30mMカルシウムの最終濃度でカルシウムイオンを含むバッファーが細胞をまだ含む培養培地に添加される。本発明の方法の続く工程(c)、(d)および任意に(e)は、例えば、適切なクロマトグラフィー精製手順および発現産物の自己触媒切断の再緩衝化工程を用いて行われる。 従って、本発明の方法の特に好ましい態様は:a)シグナルペプチド配列と融合され、エンテロキナーゼ認識配列に短縮されるプロペプチドを含むブタ由来のチモーゲン前駆体トリプシノーゲンをコードする組換え核酸で宿主細胞を形質転換する工程、ここで当該切断部位は所定のバッファー条件下で組換えトリプシンにより切断されるか、または自己触媒切断され、このプロセスにおいて、短縮型トリプシノーゲンは活性トリプシンを形成するために切断されうる、b)短縮型トリプシノーゲンが可溶性形態で存在し、培養培地に分泌されるが、自己触媒活性化が実質的に妨げられるように、酸性pH、好ましくはpH3〜4で発現期の間、宿主細胞を培養する工程、c)培養上清から短縮型組換えトリプシノーゲンを単離し、組換えトリプシンまたは自己触媒切断により短縮型トリプシノーゲンの効果的な切断を可能にする条件下でそれを活性化する工程およびd)任意に、非切断トリプシノーゲン分子と活性トリプシンとを分離する工程、により特徴づけられる。 本発明に記載されるプロペプチドの短縮型は、特に発現および自己触媒活性化において正の効果を有する。さらに、自己触媒活性化の後、所望されないさらなる自己溶解が、培養の増殖期および発現期の間に>4.0のpHで有意に増大する。 本発明の方法における発現収量のさらなる増大は、上述の組換え核酸を各々含むいくらかのベクターで宿主細胞を形質転換することにより達成され得、ここで、ベクターは、種々の選択マーカー、例えば、ZeocinおよびG418を含む。複数の選択条件下での培養は、驚くべきことに、組換えトリプシノーゲンの発現収量をさらに相当に増大させる。 本発明の別の主題は、プロペプチド配列内のエンテロキナーゼ認識部位を有するトリプシノーゲンをコードする組換え核酸であり、ここで、プロペプチド配列は、天然のプロペプチド配列と比べて短く、シグナルペプチド配列と好適に融合する。本発明の短縮型プロペプチド配列は、好ましくは、アミノ酸配列Asp-Asp-Asp-Asp-Lysを有するエンテロキナーゼ認識部位および任意に、そのN末端に並んで位置する5つまでのさらなるアミノ酸からなる。本発明の核酸は、特に好ましくは、配列番号:22に示されるヌクレオチド配列を有する。 本発明の核酸は、好ましくは、例えばPichia pastorisに由来するAOX1プロモーター等の酵母細胞における遺伝子発現のための適切な発現制御配列である調節可能な発現制御配列と作動可能に連結している。 本発明はまた、上述の組換え核酸の少なくとも1コピーを含む組換えベクターに関する。ベクターは、好ましくは、酵母細胞における遺伝子発現に適切なベクターである。かかるベクターの例は、Sambrookら、Molecular cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Sping Habor, New Yorkに記載されている。 組換え核酸に加えて、ベクターは、それぞれの意図される目的のために他の適切な遺伝子エレメントおよび特に選択マーカー遺伝子を含む。複数コピーで細胞内に存在しうるベクター、特に宿主細胞のゲノムに複数形態で組み込まれうるベクターが特に好ましく使用される。本発明はまた、種々の選択マーカー遺伝子を各々含み、宿主細胞において同時に増殖しうるベクターの組み合わせに関する。 さらに、本発明は、本発明の核酸または本発明のベクターで形質転換された組換え細胞に関する。組換え細胞は、好ましく酵母細胞、特にPichia pastorisまたはHansenula polymorpha等のメチロトローフ酵母細胞である。 最後に、本発明は、本発明の核酸によりコードされる組換えトリプシノーゲンに関する。組換えトリプシノーゲンは、天然のプロペプチド配列と比べて短いプロペプチド配列を有し、エンテロキナーゼ認識部位を含む。本発明の組換えトリプシノーゲンは、好ましくは、配列番号:23に示されるアミノ酸配列を有する。 本発明はまた、以下の図面および実施例により明らかになる。方法:組換えDNA技術 Sambrook,J.ら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の標準法を使用して、DNAを操作した。分子生物学的試薬を製造業者の使用説明書に従って使用した。タンパク質測定 精製トリプシンのタンパク質測定を、280nmの吸光度を測定することにより行なった。1cm通過長についてのA 1%/280nmに対して13.6の値を使用した。計算:タンパク質[mg/ml]=(10[mg/ml]*ΔAサンプル*希釈)/13.6Pichia pastorisおよびPichia pastorisの発現ベクター Pichia pastorisおよびその発現ベクターを扱うための使用説明書として、Invitrogenのカタログおよび指示マニュアルを使用した。短縮型組換えトリプシノーゲンを発現するためのベクターは、Invitrogen由来のベクターpPICZαAおよびpPIC9Kに基づく。実施例1:酵母における発現のために最適化コドン用法を使用した完全な組換えトリプシノーゲンの遺伝子合成 本発明の方法を提供するための好ましい方法の1つは、コドン最適化遺伝子配列の合成である。酵母における発現のために各コドンを最適化するために、完全な組換えトリプシノーゲンをコードする約700bp遺伝子の完全なデノボ合成を行なうことが必要であった。必要な場合、配列番号:1のブタトリプシノーゲンのアミノ酸配列の再翻訳において縮重コードを利用することにより、各コドンを最適化することが可能であった。この目的のために、遺伝子を、54〜90個のヌクレオチド長を有する18個のオリゴヌクレオチドに分けた。オリゴヌクレオチドを、その5'末端および3'末端が隣接するオリゴヌクレオチドと相補的な様式でそれぞれ重複するセンス鎖および逆鎖断片の代わりの配列として設計した。それぞれの場合において、続くPCR反応におけるアニーリング反応において非特異的結合が大いに妨げられるように、重複領域を選択した。遺伝子の5'末端および3'末端のオリゴヌクレオチドを、配列番号:2の合成遺伝子の発現ベクターへの後での挿入のために使用されうる制限エンドヌレアーゼの認識部位を有するコード領域の上流および下流に与えた。したがって、制限エンドヌクレアーゼEcoRIの認識部位を上流に組み込み、制限エンドヌクレアーゼのXbaIの認識部位を下流に組み込んだ。オリゴヌクレオチドの配列を、配列番号:3〜20に示す。 PCR反応により、遺伝子合成を行なった。このために、コード領域を最初に3つのセグメントに分け(オリゴヌクレオチド3〜8、9〜14、15〜20)、重複する相補性オリゴヌクレオチドを用いる別々のPCR反応において、これらのセグメントを作製した。このプロセスにおいて、十分な長さの産物が形成されるまで、逐次様式で遺伝子断片を伸張し、次に続くサイクルにおいて増幅した。アニーリング温度を、最も低い融点を有する重複領域にしたがって選択した。 続いて、3つのセグメントをアガロースゲル電気泳動により分析し、予期される長さを有する産物を、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)によりゲルから単離し、さらなるPCR反応において合成して完全な遺伝子産物を形成した。最初に、予期される長さの遺伝子産物の少しの断片が3つのセグメントから形成されるように、全遺伝子の5'末端および3'末端にプライマーを添加することなく、PCR反応の最初の5サイクルを行なった。最も低い融点を有する重複領域にしたがって、アニーリング温度を選択した。次に、末端プライマーを添加し、最も低い融点を有するプライマーのアニーリング温度にしたがってアニーリング温度を増大させた。次に、予期された長さの遺伝子断片を、さらなる25サイクルにおいて増幅した。PCR断片を配列決定により確認した。実施例2短縮型トリプシノーゲン遺伝子の作製 エンテロペプチダーゼエンテロキナーゼAsp-Asp-Asp-Asp-Lysの認識配列に対するコドンおよびEcoRI制限エンドヌクレアーゼ認識配列のためにPichia pastorisの発現ベクターにクローニングするのに必要なコドンGlu-Pheのみが、短縮型組換えトリプシノーゲンのN末端でプロペプチドの配列として残るように、天然トリプシノーゲンの最初の20アミノ酸に対するコドンを、配列番号:21の特別に設計した5'プライマーにより欠失した。この欠失を、配列番号:21の5'プライマーおよび配列番号:20の3'プライマーを用いる完全な組換えトリプシノーゲンのための遺伝子のPCR断片におけるPCR反応により導入した。短縮型組換えトリプシノーゲンのDNA配列およびアミノ酸配列を、配列番号:22および配列番号:23にそれぞれ示す。実施例3遺伝子合成により作製される完全な組換えトリプシノーゲンおよびPichia pastorisの発現ベクターへの短縮型組換えトリプシノーゲンのPCR断片のクローニング EcoRIおよびXbaI(Roche Diagnostics GmbH)を用いてPCR断片を再切断し、再び単離し(QIAquick Gel Extraction Kit/Qiagen)、続いてEcoRIおよびXbaI(Roche Diagnostics GmbH)を用いて線形化し、QIAquick Gel Extraction Kit/Qiagenを用いて単離した発現ベクターpPICZαA(Invitrogen)の断片にライゲートした。この1μl(20ng)のベクター断片および3μl(100ng)のPCR断片に対して、1μlの10×リガーゼバッファー(Sambrookら、1989 B.27)、1μlのT4 DNAリガーゼ、4μlの滅菌H2O再蒸留をピペットで取り、注意深く混合し、一晩16℃でインキュベートした。このベクターにおいて、合成遺伝子は、メタノールを用いて誘導されうるAOX 1プロモーター(Pichia pastoris由来のアルコールオキシダーゼ1のためのプロモーター) (Mallinckrodt Baker B.D.)の制御下にあり、Saccharomyces cerevisiae由来のα因子のシグナルペプチドの後ろの正しいリーディングフレームに位置する。このことを確認し、プラスミドを単離するために、次に、5μlのライゲーション混合物を大腸菌XL1Blue(Stratagene)のコンピテント細胞(Hanahan(1983) 200μlに形質転換した。30分の氷上でのインキュベーションに続き、熱ショック(42℃で90秒)を行なった。続いて細胞を1ml LB培地に移し、表現型発現のためにLB培地で1時間37℃にてインキュベートした。この形質転換混合物のアリコートを、選択マーカーとして100μg/mlのZeocinを用いるLBプレート上で培養し、37℃で15時間インキュベートした。プラスミドを増殖クローンから単離し(Sambrook, J.ら(1989) Molecular cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)、次に制限解析および配列決定により、エラーのない塩基配列について確認した。完全な組換えトリプシノーゲンまたは短縮型組換えトリプシノーゲンの合成遺伝子を含むこの様式で形成された発現ベクターを、pTRYP-9(図1を参照)およびpTRYP-11(図2を参照)と名づけた。Pichia pastorisへのpTRYP-9およびpTRYP-11の形質転換 Pichia pastoris X-33、GS115またはKM71HへのpTRYP-9およびpTRYP-11の形質転換、続くゲノムへの組込みのために、ベクターを、SacI (Roche Diagnostics GmbH)を用いて最初に線形化した。Gene Pulser II(Biorad)を用いるエレクトロポレーションにより、形質転換を行なった。このために、Pichia pastorisのコロニーを、5mlのYPD培地(Invitrogen)を用いて接種し、攪拌しながら一晩30℃でインキュベートした。続いて一晩培養物を200mlの新鮮なYPD培地(Invitrogen)に1:2000で再び接種し、OD600が1.3〜1.5に達するまで攪拌しながら一晩30℃でインキュベートした。細胞を遠心分離し(1500×g/5分)、ペレットを200mlの氷冷滅菌水中(0℃)で再懸濁した。細胞を再び遠心分離し(1500×g/5分)、100mlの氷冷滅菌水(0℃)中で再懸濁した。細胞を再び遠心分離し、10mlの氷冷(0℃)1Mソルビトール (ICN)中で再懸濁した。細胞を再び遠心分離し、0.5mlの氷冷(0℃)1Mソルビトール (ICN)中で再懸濁した。このように単離した細胞を氷上に保ち、直ちに形質転換に使用した。 80μlの細胞を約1μgの線形pTRYP-9またはpTRYP-11ベクターDNAと混合し、全混合物を氷冷(0℃)エレクトロポレーションキュベットに移し、さらに5分間氷上でインキュベートした。続いて、キュベットをGene Pulser II(Biorad)に置き、形質転換を1kV、1kΩおよび25μFで行なった。エレクトロポレーション後、混合物を1mlの1Mソルビトール (ICN)と共に混合し、続いて100〜150μlを、100μg/ml Zeocin(Invitrogen)を含むYPDS寒天プレート(Invitrogen)上で培養した。続いて、プレートを30℃で2〜4日間インキュベートした。 クローンをラスター(raster)MD(=最小デキストロース)プレート上に再び接種し、さらに解析した。増殖クローンを採集し、20μlの滅菌水に再懸濁し、17.5Uのリチカーゼ(lyticase) (Roche Diagnostics GmbH)を用いて溶解し(1時間、30℃、10分、-80℃)、PCRによる合成トリプシノーゲン発現カセットの正しい組込みに対して直接試験した。 次に、ゲノムへの形質転換の間に完全な発現カセットを組込んだクローンを、発現実験に使用した。完全な組換えトリプシノーゲンおよび短縮型組換えトリプシノーゲンの発現 3mlのBMGY培地(Invitrogen)に陽性クローンを接種し、攪拌しながら30℃で一晩インキュベートした。続いて、ODを600nmで測定し、得られるOD600が1になるように、10ml のBMMY培地(Invitrogen) pH3.0に再接種した。BMMY培地(Invitrogen) pH3.0はメタノールを含み(Mallinckrodt Baker B.V.)、AOX1プロモーターを介して完全な組換えトリプシノーゲンまたは短縮型組換えトリプシノーゲンの発現を誘導する。 振盪フラスコを攪拌しながら30℃でインキュベートし、試料を24時間ごとに取り、OD600を測定し、アリコートを取って、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により完全な組換えトリプシノーゲンおよび短縮型組換えトリプシノーゲンの発現を確認し、さらなる誘導のためにそれぞれ0.5%メタノールを補充した(Mallinckrodt Baker B.V.)。発現実験を72時間行なった。SDSゲル電気泳動による完全な組換えトリプシノーゲンおよび短縮型組換えトリプシノーゲンの発現の解析 各々の発現培養物から500μlを取り、OD600を決定し、細胞を遠心分離した。培養上清を保管し、OD600に対して適切な量のY-PERTM(50〜300μl/Pierce)中で細胞ペレットを溶解のために再懸濁し、室温で1時間振盪した。続いて、ライゼートを遠心分離して細胞デブリを分離し(15000×g/5分)、上清を新鮮な反応容器に移した。10μlのライゼートおよび10μlの培養上清をSDSポリアクリルアミドゲルに適用し、電場をかけることによりタンパク質をサイズに従って分離した。 驚くべきことに、完全な組換えトリプシノーゲンを含むクローンならびに短縮型組換えトリプシノーゲンを含むクローンの培養上清において、対照クローンでは生じない弱いバンドを同定することが可能であった。対照クローンは、開始ベクターpPICZαAで形質転換されており、トリプシノーゲンの発現クローンと類似して増殖および誘導しているPichia pastoris X33細胞であると理解されている。発現クローンにおける新規タンパク質バンドの移動特性は、計算された分子量に対応し、対照マーカーとして供されているウシトリプシノーゲンの分子量よりもわずかに高い。サイズにおけるこのわずかな差異は、インタクトな、非活性化トリプシノーゲンを示す。 驚くべきことに、組換え短縮型トリプシノーゲンは、組換え完全トリプシノーゲンよりも有意により強く発現した。実施例4複数の形質転換による発現収量の増大 組換え短縮型トリプシノーゲンを有する発現実験由来の最良クローンを、前記のようにエレクトロポレーションのために再び調製し、再び1μgの線形pTRYP-11ベクターDNAで形質転換し、1000〜2000μg/ml Zeocin(Invitrogen)を含むYPDS寒天プレート(Invitrogen)上で形質転換混合物を培養した。このことは、発現ベクターpTRYP-11のいくつかのコピー、およびよってまたそれぞれ耐性遺伝子(この場合Zeocin(登録商標))のいくつかのコピーをゲノムに組込んだクローンのみが増殖しうるように選択プレッシャーを増大する。Zeocin (登録商標)耐性タンパク質は、Streptoalloteichus hindustanus由来のブレオマイシン遺伝子の産物であり(Calmels, T.ら、(1991); Drocourt, D.ら、(1990))、これは化学量論濃度比でZeocin (登録商標)に結合し、したがってZeocin (登録商標)に対する細胞耐性を作製する。YPDS寒天プレート中のZeocin (登録商標) の濃度が高いほど、定量的にZeocin (登録商標)に結合し、したがって増殖を可能にするために、より耐性なタンパク質が細胞によって産生されるはずである。これは、耐性遺伝子の複数のコピーがゲノムに組込まれる場合に、特に可能である。クローンを、上記のようにラスターMDプレート上に再び接種した。続いて、これらのクローンを、上記のようにトリプシノーゲン発現および分泌に対して順番に確認した。 驚くべきことに、これらの測定後、培養上清に分泌された短縮型組換えトリプシノーゲンの非常に増大した発現収量を有するクローンを、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後に同定することが可能であった。実施例5第2の選択圧を用いることによる発現収量の増大 2000μg/mlを超えるZeocin (登録商標)濃度の増大は、短縮型組換えトリプシノーゲンの改善された発現収量をもたらさなかった。組換え短縮トリプシノーゲンをコードし、かつ酵母における発現に対してコドン最適化されている配列番号:22の遺伝子の発現クローンにおける遺伝子コピー数のさらなる増大のために、さらなる発現ベクターを、第2の選択プレッシャーにより最も高い発現収量を有する実施例3および4で調製した発現クローンのゲノム、好ましくはG418(Roche Diagnostics GmbH)に組込んだ。 この目的のために、AOX1プロモーターの一部からなるpTRYP-11由来の発現カセットの一部、Saccharomyces cerevisiaeのα因子のシグナルペプチドに対する遺伝子、配列番号:22の組換え短縮型トリプシノーゲンのコドン最適化遺伝子をpTRYP-11由来の制限エンドヌクレアーゼSacIおよびXbaIを用いて切断し、制限混合物を1%寒天ゲル上で分離し、1693bp断片をゲル (QIAquick Gel Extraction Kit/Qiagen) から単離した。SacIおよびNotIを用いて同時にベクターpPIC9K(Invitrogen)を切断し、制限混合物を1%寒天ゲル上で分離し、8956bpベクター断片をゲル (QIAquick Gel Extraction Kit/Qiagen) から単離した。pTRYP-11由来の断片のXbaI突出部とpPIC9K由来のNotI突出部をクレノウポリメラーゼ (Roche Diagnostics GmbH) を用いて埋め、製造業者の指示に従って平滑末端を形成した。 続いて、このようにして得られた2つの断片を上記のようにライゲートした。ライゲーション混合物を上記のように大腸菌XL1 Blue(Stratagene)に形質転換し(100μg/mlアンピシリン含有栄養プレートにより、プラスミドを含むクローンを選択した)、制限解析および配列決定により確認した。このように形成した配列ベクターをpTRYP-13と名づけた(図3を参照)。 発現ベクターpTRYP-13のPichia pastorisのゲノムへの組込みを、G418(Roche Diagnostics GmbH)によって選択した。 pTRYP-11(Zeocin耐性)を用いる複数の形質転換に由来する最も高いトリプシノーゲン発現収量を有するクローンを、上記エレクトロポレーションのために調製し、Sall(Roche Diagnostics GmbH)を用いて線形化したpTRYP-13(G418耐性)由来のベクター断片1μgを用いて形質転換した。続いて、形質転換混合物を1〜3日間4℃で1Mソルビトール (ICN) 中で保管し(G418耐性の形成のため)、次に100〜200μlを、1mg/ml、2mg/mlおよび4mg/mlのG418(Roche Diagnostics GmbH)を含むYPDプレート(Invitrogen)上で培養し、30℃で3〜5日間インキュベートした。そこから、好ましくは最も高いG418濃度を有するYPDプレートから得られるクローンを、上記のようにSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて短縮型組換えトリプシノーゲンの増大した発現に対して再び試験した。 驚いたことに、このプロセスの後、培養上清における短縮型組換えトリプシノーゲンの増大した発現収量を有するクローンを、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後に再び同定することが可能であった。実施例6培養上清からのトリプシノーゲンの単離および活性化6.1 培養上清を精密濾過、遠心分離または濾過により細胞から分離した。トリプシノーゲンをフェニルセファロース高速フロー(Pharmacia)におけるクロマトグラフィーにより精製した。pH2〜4の範囲でクロマトグラフィーを行なった。20mMのCaCl2の存在下でpHを7〜8に再緩衝させることにより、自己触媒活性を開始した。この自己触媒活性は、pHを2〜4の範囲に戻すように変化させることにより再度終結させうる。活性トリプシンをベンズアミドセファロース(例えば、SP-Sepharose(登録商標)、ff) (Pharmacia/パッケージ挿入)におけるクロマトグラフィーまたはイオン交換体により精製した。自己分解を避けるために、トリプシンをpH1.5〜3で保管する。精製したトリプシンの比活性は180〜200U/mgタンパク質である。6.2 5〜30mMの塩化カルシウム(pH3.5)を含む酢酸アンモニウムバッファー(5〜20mM)を用いて約1:2〜1:4の比で全発酵ブロスを希釈し、カチオン交換体 (例えば、Streamline(登録商標) SP, XL) を用いる拡張ベッド(expanded bed)クロマトグラフィー(McCornick(1993);EP 0 699 687)により精製する。この場合において、細胞の存在下でクロマトグラフィーを行なう。細胞をクロマトグラフィー工程により同時に分離する。続いて、手順は実施例6.1に記載された通りである(再緩衝化/活性化など)。実施例7活性測定 25℃の100mM Tris pH8.0、20mM CaCl2中のChromozym TRY (Pentapharm Ltd)を用いて、トリプシンの活性を決定した。光度測定を405nmで行なう。略語:YPD: 酵母ペプトンデキストロースYPDS: 酵母ペプトンデキストロースソルビトールBMGY: 緩衝化グリセロール複合培地BMMY: 緩衝化メタノール複合培地SDS: ドデシル硫酸ナトリウム図1は、完全な組換えトリプシノーゲンを含む発現プラスミドpTRYP-9のプラスミドマップを示す図である。図2は、短縮型組換えトリプシノーゲン(sh-トリプシノーゲン)およびZeocin耐性マーカー遺伝子(ZeoR)を含有する発現プラスミドpTRYP-11のプラスミドマップを示す図である。図3は、短縮型組換えトリプシノーゲン(sh-トリプシノーゲン)およびカナマイシン/G418選択マーカー遺伝子(KanR)を含有する発現プラスミドpTRYP-13のプラスミドマップを示す図である。配列表 a)宿主細胞であるピキア・パストリス(Pichia pastoris)を、該宿主細胞により分泌可能な形態のプロペプチド配列内にエンテロキナーゼ認識部位を有するトリプシノーゲンをコードする配列番号:22に示される核酸を含む組換え核酸で形質転換する工程、b)組換え核酸の発現および培養培地への発現産物の分泌を可能にする酸性条件下で宿主細胞を培養する工程、c)培養培地から発現産物を単離する工程、d)プロペプチド配列を切断して、活性トリプシンを形成させる工程、およびe)任意に、非切断トリプシノーゲン分子と活性トリプシンとを分離する工程、を含むトリプシンの組換え製造方法。 ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の細胞における、配列番号:22の組換え核酸の発現および培養培地への発現産物の分泌のための、プロペプチド配列内にエンテロキナーゼ認識部位を有するトリプシノーゲンをコードする、配列番号:22の組換え核酸の使用。 請求項2記載の核酸で、または該核酸の少なくとも1つのコピーを含有してなるベクターで形質転換されていることを特徴とする組換えピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞。 ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の細胞における、配列番号:23の組換えトリプシノーゲンの発現および培養培地への発現産物の分泌のための、配列番号:23のトリプシノーゲンをコードする組換え核酸の使用。 前記トリプシノーゲンが、配列番号:23のポリペプチド配列からなる、請求項1記載の製造方法。