生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_内視鏡用注射剤
出願番号:2002557421
年次:2008
IPC分類:A61K 47/36,A61L 31/00,A61P 41/00


特許情報キャッシュ

山本 博徳 JP 4176475 特許公報(B2) 20080829 2002557421 20020118 内視鏡用注射剤 山本 博徳 598066857 社本 一夫 100089705 今井 庄亮 100071124 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 富田 博行 100096013 栗田 忠彦 100075236 山本 博徳 JP 2001011524 20010119 20081105 A61K 47/36 20060101AFI20081016BHJP A61L 31/00 20060101ALI20081016BHJP A61P 41/00 20060101ALI20081016BHJP JPA61K47/36A61L31/00 TA61P41/00 A61K 47/36 A61L 31/00 BIOSIS(STN) CAplus(STN) MEDLINE(STN) H. YAMAMOTO,GASTROENTEROLOGY,1998年,V114 N4 PT2,P A706 8 JP2002000333 20020118 WO2002056914 20020725 7 20050117 清野 千秋 [技術分野]本発明は、胃や腸などの粘膜組織を内視鏡にて切除する際に、該粘膜組織を隆起せしめるために使用する、内視鏡用注射剤に関するものである。[背景技術]胃や腸などの消化管粘膜上に形成されたポリープや癌などの小さい病変を、開腹手術を行うことなく、内視鏡的に切除する方法(内視鏡的粘膜切除術)が臨床的に行われている。その際、粘膜病変部位は、必ずしもはっきりと突出しているわけではなく、また、粘膜表面は滑り易いために、内視鏡でのぞきながら遠隔操作で切除するには、相応の技術的困難が伴い、病変の取り残しや手技による出血、穿孔などの合併症といった危険が生じうる。従来、内視鏡的粘膜切除術の切除効率、操作性、安全性を改善するため、切除を予定する部位の下層に生理的食塩水を注入し、病変部を隆起、突出(以下、単に「隆起」という。)せしめ、該病変部位を切除する方法が行われていた。しかしながら、この方法によると、隆起部位は、切除に際して圧迫を加えると容易に変形し易く、また、隆起の度合いも低く、時間と共にすぐに拡散して隆起が消失してしまうため、狙った部位を確実に切除することが難しかった。また、より長い隆起持続のために高張食塩水や50%ブドウ糖液等が用いられていた。しかし、これらの高張液の隆起持続効果はあまり高くないばかりか、組織障害性があり、壁の薄い大腸では穿孔の危険性もあり、安全性に問題があった。そこで、本発明者は、先に、平均分子量が80万程度の低分子量ヒアルロン酸を注入することを提案した(Gastrointest.Endosc.50(5),701−704,1999、Gastrointest.Endosc.50(2),251−256,1999、特願2000−37240号)。生体中にも多く存在するヒアルロン酸は分子量が大きく、低濃度で高い粘性を発揮するため、浸透圧にほとんど影響しない。従って、生理食塩水で希釈することにより、体液と等張の製剤を作ることが可能となり、内視鏡下粘膜切除術(EMR)の際に、粘膜下に注入する生体に安全な溶液を与えることができる。本発明者が提案した、上記の方法によれば、従来の方法に比べ、病変部の隆起の度合いおよび隆起時間が改善され、切除効率が向上する。しかしながら、病変部の隆起時間は、好適な条件(0.5w/v%の濃度)でもせいぜい10〜20分程度であり、20mm以上の病変部を一括切除する場合などのように手術に時間がかかるような場合には必ずしも十分とはいえず、更に隆起時間の延長された注入剤の開発が望まれていた。関節腔内に高分子量のヒアルロン酸を注入するための溶液注射剤が知られている(特開平8−188534号)。しかしながら、この注射剤の注射針はその長さが短く、したがって、ヒアルロン酸の注入圧はさほど問題にはならない。これに対して、内視鏡用注射針の場合、注射針のチューブの有効長が通常1000mm以上と極めて長いため、注射剤の注入圧が操作性の観点から特に大きい問題となる。従って、前記のように隆起時間を延長できる注入剤であって、しかも注入圧が高すぎることなく、操作性に問題のない注入剤の開発が望まれている。[発明の開示]本発明者等は、鋭意研究の結果、注入による病変部の隆起の時間が延長され、しかも、注入時の操作性にも優れた注入剤を開発した。切除予定の粘膜組織部分の隆起時間を延長する方法として、低分子量(約80万)ヒアルロン酸の濃度を上げることが考えられる。しかしながら、ヒアルロン酸の濃度を1w/v%程度に上げると、隆起時間は約30分程度まで延長できるものの、当該ヒアルロン酸溶液の粘度が著しく上昇し、内視鏡用注射針にて注入する際の注入圧が高くなるため注入が困難となり、操作性の観点から、実用的に使用するのは難しい。また、隆起時間の延長のために、高分子量(約120万以上)のヒアルロン酸を使用することが考えられるが、低分子量ヒアルロン酸の場合に比べてさらに注入圧が高くなることが予想された。高分子量ヒアルロン酸を使用する場合、注入圧を小さくするためにその濃度を低くすることが考えられる。例えば、低分子量のヒアルロン酸と同程度の注入圧を得るために、高分子量ヒアルロン酸の濃度をおよそ半分以下に下げることが考えられるが、その場合、隆起された部位の圧迫時の変形が大きくなり、また、隆起時間の延長もあまり期待できないことが予測された。しかしながら、実際に特定の高分子量ヒアルロン酸を使用して検討したところ、当初の予想とは異なり、低分子量のヒアルロン酸とほぼ同程度の濃度であるにもかかわらず、実用的に十分使用し得る注入圧で注入でき、かつ、隆起された部位の圧迫時の変形が起こらず、隆起時間の延長も向上できることを見出した。この理由は、必ずしも解明されているわけではないが、低分子量ヒアルロン酸と高分子量ヒアルロン酸との理化学的性質、例えば、粘弾性や摩擦係数などの性質が、分子量100万〜120万付近を境に大幅に異なっていることがその要因の1つと考えられる。すなわち、高分子量のヒアルロン酸の方の粘弾性が高く、摩擦係数が低いため、注射容器のような円筒状の中を予想以上に小さな圧力で移動させることができるものと考えられる。また、本発明者は、ヒアルロン酸に塩を存在させることにより粘弾性が低下すること、特に高分子量ヒアルロン酸において著しいことに着目し、実際の手術において使用される塩濃度(0.9%NaCl)付近で、適当な注入圧を与える粘弾性を示し、かつ、隆起時間を延長させることができるようなヒアルロン酸について種々検討した結果、塩濃度が0.8〜1%、好ましくは、約0.9%の場合、特定の分子量のヒアルロン酸、すなわち、粘度平均分子量が150万〜300万、好ましくは、190万〜220万で、かつ、濃度が0.05〜0.8w/v%、好ましくは、0.1〜0.7w/v%、特に好ましくは、0.3〜0.5w/v%のときに、所期の目的が達成されることを知得し、本発明を完成するに至った。本発明のより具体的態様は下記に列挙する通りである。所定の粘膜組織にゲル状高粘性物質を注入して隆起せしめ、該粘膜組織部分を内視鏡的に切除する方法に使用するゲル状高粘性物質含有注射剤であって、該ゲル状高粘性物質が、粘度平均分子量が150万〜300万のヒアルロン酸またはその塩であることを特徴とするゲル状高粘性物質含有内視鏡用注射剤。ゲル状高粘性物質を、0.05〜0.8w/v%含有している該注射剤。ゲル状高粘性物質が、0.8〜1%の塩化ナトリウムを含有する水溶液に溶解されている該注射剤。ゲル状高粘性物質が、微生物発酵法により得られた粘度平均分子量が150万〜300万のヒアルロン酸またはその塩である該注射剤。ヒアルロン酸産生微生物が、ストレプトコッカス・エキ(Streptococcus equi)である該注射剤。内視鏡用注射剤を注入するための内視鏡用注射針が、径が20〜22Gで、注射針のチューブの有効長が1000mm以上である該注射剤。径が20〜22Gで、注射針のチューブの有効長が1000mm以上の内視鏡用注射針で注入したときの注入圧が、0.5〜4気圧となるように調整された該注射剤。径が20〜22Gで、注射針のチューブの有効長が1000mm以上の内視鏡用注射針で、2〜3気圧の圧力で注入したときの注射剤の流入速度が、0.05〜0.1ml/secとなるように調整された該注射剤。以下本発明を更に説明する。[発明の実施の形態]本発明においては、粘度平均分子量が150万〜300万、好ましくは、190万〜220万のヒアルロン酸が使用される。本発明においては、微生物発酵法により得られる高分子量ヒアルロン酸、特にストレプトコッカス・エキ(Streptococcus equi)が産生する高分子量ヒアルロン酸(例えば、特公平4−39997号、特公平6−30604号)の内、上記分子量の範囲のものを使用することが好しい。かかる高分子量ヒアルロン酸は、本発明の注射剤中、0.05〜0.8w/v%、好ましくは、0.1〜0.7w/v%、特に好ましくは、0.3〜0.5w/v%の範囲で使用できる。濃度がこれより低いと、隆起された部位の圧迫時の変形が起きやすくなり、切除の際の操作性が低下し、また、隆起時間の延長効果が期待できない。濃度がこれより高いと注入圧が高くなり注入時の操作性が低下する。また、かかる高分子量ヒアルロン酸は、0.8〜1w/v%、好ましくは、約0.9w/v%の塩化ナトリウムを含有する水溶液に溶解して使用するのがよい。あまり高いと、粘弾性が低下し、圧迫時の変形が大きくなり、また、あまり低いと、注入圧が高くなる。本発明の注射剤には、本発明の目的を損なわない範囲で任意の成分を併用してもよい。例えば、注入時の目視観察を容易にするために、インディゴカーマイン、メチレンブルー等の色素や切除時の出血を予防するためにエピネフリン、ノルエピネフリン、イソプロテレノール等の止血あるいは血管収縮作用を有する薬効成分等を併用してもよい。本発明の注射剤は、径が20〜22G、好ましくは、21Gで、注射針のチューブの有効長が1000mm以上、好ましくは、1500〜2500mm、特に好ましくは、1600〜2400mmの注射針を有する内視鏡用注射針にて使用できる。本発明においては、注射剤は、上記内視鏡用注射針を使用して注入したときの注入圧が、0.5〜4気圧、好ましくは、2〜3気圧となるように適宜調整して使用するのが操作上好ましい。また、本発明においては、上記内視鏡用注射針を使用して、2〜3気圧の圧力で粘膜組織に注入したときの注射剤の流入速度が、0.05〜0.1ml/sec、好ましくは、0.07〜0.09ml/secとなるように適宜調整して使用するのが操作上好ましい。その際、注射剤の調整は、ヒアルロン酸の濃度、塩濃度、pH(pH4.5〜8.0の範囲で適宜調整する)などを適宜選択することによって行うことができる。本発明の内視鏡用注射剤は、胃や腸などの粘膜組織の切除に好適に使用することができる。すなわち、ポリープや癌などの切除予定の粘膜下層に、上記内視鏡用注射針を介して注入し、切除予定部位を隆起せしめ、該隆起部分をスネア(輪状の針金)やニードルナイフ等で切除する。本発明においては、隆起時間が注入後、90分経過しても隆起状態が維持され、また、切除時に隆起部位が圧迫されても実質的に変形が起きないので、20mm以上の大きな粘膜部位の一括切除も確実、かつ、安全に行うことができる。以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。[実施例1]径が21G、注射針のチューブの有効長が1600mmの内視鏡用注射針に5mlの注射器を用いて下記の注射剤を3気圧の圧力で注入した際のその注射剤の流入速度(ml/sec)をそれぞれ測定した。流入速度の計測は安定した5回の計測の平均値を求めて流入速度とした。なお、予め上記5mlの注射器を用いて注入圧を実測し、特に困難無く注入できる注入圧は0.5〜4気圧、特に2〜3気圧が好ましいことを確認した。(注射剤の調製例)(1)低分子量ヒアルロン酸(分子量約80万)(以下「HA80」と略す)を0.9w/v%NaCl水溶液(pH約6.0)に溶解して0.5w/v%の注射剤を調製した。(2―1〜3)高分子量ヒアルロン酸(分子量約190万)(以下「SVE」と略す)を0.9w/v%NaCl水溶液(pH約6.0)に溶解して、それぞれ、0.25w/v%、0.33w/v%および0.4w/v%の3種の注射剤を調製した。なお、SVEはストレプトコッカス・エキ(Streptococcus equi)を培養して得られた高分子量ヒアルロン酸である。(結果)上記のようにして求めたそれぞれの注射剤の流入速度は以下の通りであった。以上の実験結果から、実用的に使用しうる注入圧で充分注入できる濃度としての0.5w/v%の低分子量ヒアルロン酸と同程度の注入抵抗が、高分子量ヒアルロン酸の場合でも0.4w/v%と比較的近い濃度で得られることが判明した。[実施例2]粘膜隆起度の比較実験豚の切除胃を用いて粘膜隆起度の比較実験を行った。 注入抵抗が同程度であることが上記実験にて確認された0.5w/v%の低分子量ヒアルロン酸(HA80)と0.4w/v%高分子量ヒアルロン酸(SVE)とで粘膜隆起の程度及びその持続に差があるのかどうかを検討した。0.5w/v% HA80、0.4w/v% SVE、及び対照としての0.9w/v%NaCl水溶液(pH約6.0)を、それぞれ1.5mlずつ粘膜下に注入し、注入直後、5分後、10分後、30分後、60分後、90分後でその注入による粘膜隆起を観察した。粘膜隆起は目視(写真で記録)および超音波断層装置で観察した隆起の断面の形状で評価した。注入は径が21Gの通常の注射針で5mlの注射器を用いて行い、その際の注入速度は約0.1ml/secとした。2回同じ実験を行い、その平均値を求めて結果とした。(結果)(a)目視による評価目視観察による粘膜隆起の急峻さを(−)から(+++)までの段階表示を示した。(b)超音波断層装置による評価超音波断層装置(オリンパス社製)を使用し、粘膜隆起の下の粘膜下層に注入された液体による低エコー域の垂直断面の高さ(縦径:mm)と拡がり(横径:mm)を上記の所定の時間毎に計測し、(縦径)と(横径)との比を算出し、各サンプルを比較した。結果を図1のグラフにて示す。以上の結果より、粘膜隆起をきたすために粘膜下に注入する物質として、生理食塩水よりもヒアルロン酸が優れていることが示された。また0.5w/v%の低分子量ヒアルロン酸よりも0.4w/v%の高分子量ヒアルロン酸の方が注入抵抗に差がないにもかかわらず、遙かに優れた粘膜隆起の持続をもたらすことが示された。[産業上の利用の可能性]本発明の内視鏡用注射剤を使用すれば、操作上実用的な圧力で粘膜組織に注入することができ、注入によって隆起した部位の隆起時間が90分経過しても良好な隆起状態で維持され、更にまた、隆起部位は切除時に圧迫されても実質的に変形がおきないので、20mm以上の大きな粘膜部位の一括切除も確実、かつ、安全に行うことができる。【図面の簡単な説明】図1はブタの切除胃を用いて実施例2によって作られた粘膜隆起度を、超音波断層装置で断面形状を観察して得た、隆起の持続時間を示すグラフである。 所定の粘膜組織にゲル状高粘性物質を注入して隆起せしめ、該粘膜組織部分を内視鏡的に切除する方法に使用するゲル状高粘性物質含有注射剤であって、該ゲル状高粘性物質が、粘度平均分子量が150万〜300万のヒアルロン酸またはその塩であることを特徴とするゲル状高粘性物質含有内視鏡用注射剤。 ゲル状高粘性物質を、0.05〜0.8w/v%含有している、請求項1記載の注射剤。 ゲル状高粘性物質が、0.8〜1w/v%の塩化ナトリウムを含有する水溶液に溶解されている、請求項1又は2記載の注射剤。 ゲル状高粘性物質が、微生物発酵法により得られた粘度平均分子量が150万〜300万のヒアルロン酸またはその塩である、請求項1、2又は3記載の注射剤。 ヒアルロン酸産生微生物が、ストレプトコッカス・エキ(Streptococcus equi)である、請求項4記載の注射剤。 内視鏡用注射剤を注入するための内視鏡用注射針が、径が20〜22Gで、注射針のチューブの有効長が1000mm以上である、請求項1〜5のいずれかの項に記載の注射剤。 径が20〜22Gで、注射針のチューブの有効長が1000mm以上の内視鏡用注射針で注入したときの注入圧が、0.5〜4気圧となるように調整された、請求項1〜5のいずれかの項に記載の注射剤。 径が20〜22Gで、注射針のチューブの有効長が1000mm以上の内視鏡用注射針で、2〜3気圧の圧力で注入したときの注射剤の流入速度が、0.05〜0.1ml/secとなるように調整された、請求項1〜5のいずれかの項に記載の注射剤。


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