生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_振動膜濾過により不溶タンパク質を濃縮する方法
出願番号:2002556607
年次:2008
IPC分類:C07K 1/34,A61K 38/00,B01D 61/14,B01D 63/16,C07K 14/00,C07K 19/00


特許情報キャッシュ

チャンプルヴィエール,ブノワ パーマン,フィリップ,ジーン,ジェルベー,ギスレイン JP 4074519 特許公報(B2) 20080201 2002556607 20020107 振動膜濾過により不溶タンパク質を濃縮する方法 グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム 305060279 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 田中 夏夫 100111741 チャンプルヴィエール,ブノワ パーマン,フィリップ,ジーン,ジェルベー,ギスレイン GB 0100513.1 20010109 20080409 C07K 1/34 20060101AFI20080319BHJP A61K 38/00 20060101ALI20080319BHJP B01D 61/14 20060101ALI20080319BHJP B01D 63/16 20060101ALI20080319BHJP C07K 14/00 20060101ALN20080319BHJP C07K 19/00 20060101ALN20080319BHJP JPC07K1/34A61K37/00B01D61/14 500B01D63/16C07K14/00C07K19/00 C07K 1/34 A61K 38/00 B01D 61/14 B01D 63/16 C07K 14/00 C07K 19/00 JSTPlus(JDream2) PubMed BIOSIS/CA(STN) WPIDS/BIOENG(STN) CONFSCI/SCISEARCH(STN) 国際公開第99/036150(WO,A1) 特表平11−508488(JP,A) 国際公開第99/010088(WO,A1) 国際公開第98/002047(WO,A1) 国際公開第98/009717(WO,A1) 特開平06−030709(JP,A) 特開平08−038061(JP,A) 10 EP2002000063 20020107 WO2002055539 20020718 2004532183 20041021 28 20040727 中村 正展 本発明は、発酵槽ブロスから細胞を収穫し、不溶タンパク質を精製しかつ可溶タンパク質を清澄化する方法に関する。特に、本方法は振動膜濾過を利用する。特に、本方法は親水膜を利用する。親水膜、特に親水ポリエーテルスルホン膜を用いる振動膜フィルターは新規でありかつ本発明の一態様を形成する。 予防および治療用などの診断または生物医学上の目的をもつタンパク質の生産は、細菌、酵母、昆虫細胞、哺乳類細胞、およびその他の系の宿主細胞におけるクローニングおよび過剰発現により、経済的に達成される。細胞は、より容易な生産条件を可能にする自然の発現宿主または異種であってもよい。 一部のタンパク質はその自然環境からですら、可溶形態で単離することが困難であり、その理由は、それらが構造的な機能を有しているか、または膜と結合しているか、または特定の細胞区画に位置する故である。さらに、異種宿主におけるタンパク質の過剰発現はしばしば、不溶でありかつ非晶質沈殿もしくは封入体の形態で蓄積する産物をもたらす。後者は特に、大腸菌(E.coli)を発現宿主として用いた場合に、よく報告されている(Guise A. D.ら Mol Biotechnol 1996 Aug;6 (1):53-64)。 過剰発現条件におけるタンパク質不溶の原因は、常に正確に確認されているわけではない。不溶性は、非常に大きな翻訳速度、高い細胞内濃度での蓄積、都合の悪い細胞内環境(低い酸化還元電位など)、および宿主のフォールディング機構または翻訳後プロセシングの欠陥から生じうる。タンパク質が宿主細胞の細胞内小器官、膜およびその他の構造と結合することによっても、プロセシングの際に不溶となりうる。 遺伝子工学を利用すれば、突然変異、欠失または2つの無関係なポリペプチド配列の融合により、人工タンパク質の作製が可能になる。かかる構築物はしばしば不溶である。 このように、タンパク質の単離に伴う不溶性の問題は広範囲にわたる。不溶性は、タンパク質の自然物性により、非自然宿主における発現により、または欠失、付加もしくはポリペプチドエレメントの融合による天然構造の故意の改変により生じうる。 一般的に、不溶タンパク質の下流の処理工程としては、(1)産物からの可溶性夾雑物の分画除去、および(2)次いで極端なpHのバッファー、または界面活性剤およびカオトロープ剤などの可溶化剤を含有するバッファーを用いた目的の産物の可溶化が行われる。グアニジン塩および尿素がカオトロープ剤としてしばしば利用される。封入体処理法は、不溶タンパク質の精製に用いられる周知の方法の一例である。 古典的な方法は、タンパク質不溶性を利用して細胞の全可溶成分を分離する。不溶産物を処理するプロトコルは、複数の論文に記載されている(Wingfield 1997, Chap. 6 in Current Protocol in Protein Sciences;Misawa SおよびKumagai I. Biopolymers 1999; 51 (4):297-307;Mukhopadhyay A. Adv Biochem Eng Biotechnol 1997; 56:61-109)。 分離は遠心分離と再懸濁の工程を複数サイクル行うことにより実施することができ、可溶性夾雑物のほとんどの洗浄除去が可能である(Wong HH, O'Neill BK, Middelberg AP. Bioseparation 1996; 6 (6):361-72)。あるいは不溶画分を、深層濾過(depth filtration)またはタンジェント流精密濾過(tangential flow micro-filtration)などの濾過技術を用いて、可溶性夾雑物から分離することができる(Batas B, Schiraldi C, Chaudhuri JB. J Biotechnol 1999 Feb 19; 68(2-3):149-58)。 現行技術には明らかな欠点がある。遠心分離は本質的に、不溶タンパク質断片のサイズが小さいことによりおよび媒質の粘度により制限を受ける。一部の不溶タンパク質の構造体または微粒子は、媒質との密度差も小さい。上清からペレットを分離する機器の技術的能力に限界があることによって、遠心分離を繰返して得られる全産物の回収率が悪い場合もありうる。さらに、スケールアップを予測することが困難である。不溶タンパク質および他の微粒子状細胞成分を含有する抽出物の精密濾過は、膜の目詰まり(plugging)と汚れ(fouling)を被る。 洗浄した不溶産物を回収した後に界面活性剤もしくはカオトロープ剤を用いて標的タンパク質を可溶化すると、微粒子を含有する濁り抽出物を生じるが、これは、著しく目詰まりするためにクロマトグラフィカラムに負荷して直接処理することはできない。従って、かかる抽出物は遠心分離および/または精密濾過により清澄化する必要がある。しかし、これらの技術は上記と同じ欠点を有する。さらに、清澄化後でもなお浮遊物質が抽出物中に見られるので、その後のいかなる下流の精製工程もその前にさらなる濾過工程を必要とする。さらに、精密濾過膜の汚れによりしばしば濾液中への産物透過が乏しくなる。 タンジェント流精密濾過の能力を改良する試みの中で、新しい設計が開発された。KronerおよびNissinen(J. of Membrane Science, 1998 ; 36:85-100)、Leeら (Biotechnology and Bioengineering, 1995; 48:386-400)、ColeおよびBrandley(BioPharm, 1996; 5:66-71)は動的濾過デバイスの利用を記載しており、このデバイスによって濾過器が機械的に駆動されて、膜表面で高い剪断速度が生じ、そしてそれにより流束、タンパク質透過および汚れ耐性の点でより優れた濾過性能がもたらされる。しかし、これらのタイプの大規模操業用設備の製造は中止されている。 AlexおよびHoughney(Chap. 24 in Filtration in the Biopharmaceutical Industry 1998, Meltzer T. H.およびJornitz M.W.編, Marcel Dekker, NY)は、古典的な交差流精密濾過の有する制限のいくつかを克服しうる、振動膜濾過と呼ぶ新しいデバイスを記載している。優れた汚れ耐性、改良された流束とタンパク質透過についての利点が報じられている。その文献は、ほとんどの製薬用途に用いられる膜材料は微孔質PTFE(テフロン)膜であることを示す。細胞ホモジネートから可溶の細胞内産物を回収する実施例が記載されている。類似のデバイスは、複数の刊行物に記載されている。米国特許第4,952,317号「コロイド懸濁液を濾過するデバイスと方法(Device and Method for Filtering a Colloidal Suspension)」は振動濾過デバイスを記載し、同様に米国特許第4,872,988号「コロイド懸濁液を分離する方法とデバイス(Method and Device for Separation of Colloidal Suspensions)」は、特に小サンプルの清澄化用に適した様々な振動フィルターを記載している。米国特許第5,014,564号は、振動濾過システムの運転を可能にする偏心駆動機構を記載している。 本発明者らは、濾過膜が親水性であり水中で直接しめらせることができる振動膜フィルターを利用することにより、不溶タンパク質産物の精製が可能であることを見出した。換言すれば、水は膜の細孔に容易に浸入することができる。従来の振動膜フィルターはPTFEなどの疎水性材料を用いて構築していた。このような親水膜は、再生セルロース、酢酸セルロース、PVDF(例えばMillipore社からDuraporeの商標で販売される)などの親水化ポリマー材料、改質ナイロンから作ってもよいが、最も好ましくは親水ポリエーテルスルホン膜(以後、PESと呼ぶ)、さらに最も好ましいのはPall-Filtronから購入した親水膜「045PS10PESエレメント」またはそれと同等の0.2および0.8ミクロン膜である。 本発明はまた、濾過しうる夾雑物(すなわち、細胞片、核酸、脂質およびリポ多糖類)を、精製プロセスの初期に、遠心分離またはタンジェント流濾過などの従来の方法を用いて従来達成しうるよりも高い効率で除去する点で、従来の方法を超える利点を有する不溶タンパク質の精製方法も提供する。これにより清澄化後、産物をクロマトグラフィカラムに直接適用することができる。さらに、膜の目詰まりを起こしがちであるタンジェント流濾過と比較すると、産物損失が減少する。 本発明はまた、全プロセスをクローズドシステムとして維持できることにより、GMP(適正製造基準(Good Manufacturing Practices))に基づく操業および/または(生物学的)有害因子((bio)hazardous agents)の封じ込めが容易になるという利点も有する。本方法はまた迅速であるかつ手間がかからない。典型的には、粗抽出物5リットルを6時間未満、通常3〜5時間で処理することができる。振動膜フィルターアセンブリーの振幅は通常0.25〜1.25インチ、典型的には約0.75インチに設定する。得られる保持液(retentate)、すなわち不溶タンパク質の懸濁液から成る保持液を、例えば、ダイアフィルトレーション(diafiltration)により洗浄し、可溶化し、そして振動膜フィルターを通して濾過し、タンパク質を含有する濾液を収集すればよく、場合によっては、さらにクロマトグラフィカラムに直接適用することができる。 本発明の方法は80%以上の夾雑物を排除して、それにより、他のクロマトグラフィ技術によりさらに精製しうる比較的純粋なタンパク質調製物を得ることを可能にする。本発明はまた、サンプルから効率的に内毒素を除去し;典型的には、クロマトグラフィカラムを用いる最終精製の前に、内毒素の90%超をサンプルから除去することができる。適当なクロマトグラフィ技術としてはIMACカラム、Q-セファロースなどが挙げられる。 従って、本発明は不溶形態で存在するタンパク質を精製する方法であって、細胞抽出物あるいは細胞ホモジネートを、親水膜、好ましくはPall-Filtron親水膜「045PS10PESエレメント」からなる振動膜フィルターに適用し、タンパク質を保持液中に保持することを含んでなる前記方法を提供する。 膜の孔サイズは好ましくは、0.1〜1.2ミクロンである。好ましくは、孔サイズは0.9μm以下、しばしば約0.8μm、典型的には約0.65μm、さらに典型的には0.15μm〜0.50μmである。典型的には、名目孔径0.2もしくは0.45μmまたは0.8μmで製造業者が供給する膜である。これらは本発明において使用する上で好適なものである。 出発物質は、いずれの宿主細胞からのいかなる不溶タンパク質抽出物であってもよい。例えば、組換え発現により不溶形態で産生された次の抗原:前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌または黒色腫などの腫瘍拒絶抗原が挙げられる。抗原の例は、MAGE 1、3およびMAGE 4またはWO99/40188に開示された他のMAGE抗原、PRAME、BAGE、Lage(NY Eos 1としても知られる)SAGEおよびHAGE(WO 99/53061)またはGAGE(RobbinsおよびKawakami, 1996, Current Opinions in Immunology 8, pps 628-636;Van den Eyndeら, International Journal of Clinical & Laboratory Research (1997年に提出された);Correaleら (1997), Journal of the National Cancer Institute 89, p293)が挙げられる。実際これらの抗原は、黒色腫、肺癌、肉腫および膀胱癌などの広範囲の腫瘍型にて発現される。 MAGE抗原を、本発明に従って精製することができるし、また発現エンハンサーまたは免疫学的融合パートナーとの融合タンパク質として発現させることができる。本発明の一実施形態においては、その誘導体は、異種パートナーと連結したMAGEタンパク質ファミリー、好ましくはMAGE 3由来の抗原を含んでなる融合タンパク質である。それらのタンパク質は化学的に結合してもよいが、好ましくは組換え融合タンパク質として発現し、非融合タンパク質と比較して発現系で産生するレベルを増加させる。このようにして、融合パートナーは、Tヘルパーエピトープ、好ましくはヒトにより認識されるTヘルパーエピトープを供給するのを助ける(免疫学的融合パートナー)か、またはそのタンパク質が未改変の組換えタンパク質より多量に発現するのを助ける(発現エンハンサー)ことができる。融合パートナーは、免疫学的融合パートナーと発現増強パートナーとの両方であることが好ましいであろう。 免疫学的融合パートナーは、グラム陰性菌であるB型インフルエンザ菌(Haemophilus influenza B)の表面タンパク質であるプロテインDから得ることができる(WO91/18926)。好ましくは、プロテインD誘導体は、当該タンパク質のほぼ最初の1/3、特に最初のN末端の100〜110個のアミノ酸を含有する。プロテインD誘導体を脂質化してもよい。好ましくは、リポプロテインD融合パートナーの最初の109残基をN末端に含有させて、追加の外因性T細胞エピトープをもつワクチン候補抗原を提供し、かつ大腸菌(E.coli)内の発現レベルを増加させる(従って発現エンハンサーとしても作用する)。 他の融合パートナーとしては、インフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質、NS1が挙げられる。典型的には、N末端の81個のアミノ酸を利用するが、Tヘルパーエピトープを有する限り、異なる断片を利用してもよい。 他の実施形態においては、免疫学的融合パートナーはLYTAとして知られるタンパク質である。好ましくは、その分子のC末端部分を利用する。Lytaは、ペプチドグリカン主鎖内の特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素であるN-アセチル-L-アラニンアミダーゼ、もしくはアミダーゼLYTA(lytA遺伝子によりコードされる{Gene, 43 (1986) 265-272頁})を合成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)から誘導される。LYTAタンパク質のC末端ドメインは、コリンまたはDEAEなどのいくつかのコリン類似体とのアフィニティに関わる。この特性は、融合タンパク質の発現に有用な大腸菌(E.coli)C-LYTA発現プラスミドの開発に利用されている。C-LYTA断片をそのアミノ末端に含有するハイブリッドタンパク質の精製は記載されている{Biotechnology : 10, (1992) 795-798頁}。ここで使用される好ましい実施形態は、残基178にて始まるC末端に見出だされるLyta分子の反復部分を利用する。特に好ましい形態は残基188-305を組み込む。 上記の免疫学的融合パートナーはまた、発現を助ける上でも有利である。特に、かかる融合体は未改変の組換えMAGEタンパク質よりも多量に発現される。かかる構築物はWO99/40188に開示されている。 他の腫瘍特異的抗原を、本発明により精製することができる。 さらなる好ましい実施形態においては、他の抗原、より詳細には前立腺抗原、例えば、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、PSCA(PNAS 95 (4) 1735-1740 1998)、PSMAが使用され、好ましい実施形態においては、プロスターゼ(Prostase)として知られる抗原が使用される。 プロスターゼは254個のアミノ酸長の前立腺特異的セリンプロテアーゼ(トリプシン様)であり、保存されたセリンプロテアーゼ触媒性トライアッド(triad)H-D-Sおよび潜在的分泌機能を示すアミノ末端プレプロペプチド配列を有する(P. Nelson, Lu Gan, C. Ferguson, P. Moss, R. Gelinas, L. Hood & K. Wand, 「前立腺限定的発現を示すアンドロゲン調節セリンプロテアーゼである、プロスターゼの分子クローニングと特性決定(Molecular cloning and characterisation of prostase, an androgen-regulated serine protease with prostate restricted expression)」, In Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999) 96,3114-3119)。推定グリコシル化部位が記載されている。予測される構造は他の既知のセリンプロテアーゼと非常に類似し、成熟ポリペプチドが単一ドメインへとフォールドすることを示す。成熟タンパク質は、224個のアミノ酸長であり、天然でプロセシングされることが示される1つのA2エピトープを持つ。 プロスターゼ・ヌクレオチド配列および推定ポリペプチド配列ならびに相同体は、Fergusonら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96, 3114-3119)および国際特許出願WO 98/12302(およびまた、対応する付与された米国特許第5,955,306号)、WO 98/20117(および、対応する付与された米国特許第5,840,871号と米国特許第5,786,148号)(前立腺特異的カリクレイン)ならびにWO 00/04149 (P703P)に開示されている。 本発明は、プロスターゼタンパク質融合体を、プロスターゼタンパク質およびその断片ならびに相同体(「誘導体」)に基づいて精製する方法を提供する。かかる誘導体は、前立腺腫瘍治療用に適当である治療用ワクチン製剤に利用するのに適している。 一実施形態においては、本発明は、タンパク質の活性部位に、突然変異が存在する突然変異prestos抗原の精製を意図する。prestos抗原誘導体またはその断片および相同体は、タンパク質の活性部位にプロテアーゼ生物学的活性を実質的に低下させるかまたは好ましくは排除する突然変異を有している。好ましい突然変異は、セリン・プロテアーゼのヒスチジンおよびアスパラギン酸触媒性残基を置換することを伴う。好ましい実施形態においては、prestosはその活性部位中に、例えばプロスターゼ配列の残基71において、ヒスチジン-アラニン突然変異を含有する(Fergusonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96, 3114-3119)。例えばWO 00/041949に開示された、相同的タンパク質中の対応する突然変異を明らかに意図する。例えばこの突然変異はP703Pの位置43に対応する。この突然変異はタンパク質の触媒効率(酵素の比活性で表す)に大幅な低下をもたらしうる。好ましくは、触媒効率の低下は少なくとも103の係数、さらに好ましくは、少なくとも106の係数で生じる。ヒスチジン−アラニン突然変異を受けたタンパク質は、以後、*(星印)で示す。 一実施形態においては、突然変異したまたは突然変異してないプロスターゼが融合タンパク質の一部分であり、腫瘍関連プロスターゼもしくはその断片または相同体と、異種タンパク質、または融合パートナーとして機能するタンパク質の一部分とを含んでいる。タンパク質と融合パートナーは化学的に結合していてもよいが、好ましくは、異種発現系で組換え融合タンパク質として発現される。 好ましい実施形態においては、本発明は、Tヘルパーエピトープを提供するのを助ける免疫学的融合パートナーと連結したprestos融合タンパク質もしくはその断片または相同体の精製を意図した。従って、融合パートナーは、外来タンパク質もしくはペプチドに特異的な多数のT細胞による活性化シグナルの分泌と連携したバイスタンダーヘルパー効果を通して作用し、それにより、非融合タンパク質と比較して、プロスターゼ成分に対する免疫の誘導を増強することができる。好ましくは、異種パートナーは、大多数のヒトのT細胞により認識され得るように選択する。 他の実施形態においては、発現エンハンサーとして作用する融合パートナーと連結したプロスターゼタンパク質もしくはその断片または相同体を精製する方法を提供する。従って、融合パートナーは異種系におけるプロスターゼの発現を助ける上で役立ち、未改変の組換えタンパク質と比較して、発現系で産生されるレベルの増加を可能にする。 好ましくは、融合パートナーは、免疫学的融合パートナーでありかつ発現エンハンサーパートナーであろう。従って、本発明は、融合パートナーと連結した突然変異腫瘍特異的プロスターゼまたはその断片、を含んでなる融合タンパク質を提供する。好ましくは、融合パートナーは、免疫学的融合パートナーとしておよび発現エンハンサーパートナーとしての両方で作用する。従って、本発明の好ましい形態においては、融合パートナーはインフルエンザ・ウイルス由来の非構造タンパク質であるNS1(非構造タンパク質1)またはその断片である。典型的には、N末端の81個のアミノ酸を利用するが、Tヘルパーエピトープを含むものであれば異なる断片を用いてもよい(C. Hackett, D. Horowitz, M. Wysocka & S. Dillon, 1992, J. Gen. Virology, 73,1339-1343)。NS1が免疫学的融合パートナーであると、より高い発現量を達成することが可能になる点でさらに有利である。特に、かかる融合体は、未改変の組換えプロスターゼタンパク質よりも多量に発現される。 最も好ましい実施形態においては、融合タンパク質は、5〜226のカルボキシ末端アミノ酸と融合したNS1非構造タンパク質のN末端81個のアミノ酸を含んでなる。代わりの発現パートナーは、例えば、MAGE抗原の場合に使用される、プロテインDおよびその断片とC-Lytaが挙げられる。 さらに好ましい精製してもよい前立腺抗原は、P501S、WO98/37814の配列番号113として知られるものである。上に参照した特許出願に開示された、少なくとも20個、好ましくは50個、さらに好ましくは100個の連続アミノ酸を含んでなる免疫原性断片およびその部分である。例えば、PS108(WO 98/50567)を参照すること。 他の前立腺特異的抗原はWO 98/37418、およびWO/004149に記載されている。他に、STEAP (PNAS 96 14523 14528 7-12 1999)がある。 本発明との関連において有用である他の主要関連抗原は、Plu-1(J Biol. Chem 274 (22)-15633-15645,1999)、HASH-1、HasH-2、Cripto(Salomonら, Bioessays 199,21-61-70、米国特許第5,654,140号)、Criptin(米国特許第5,981,215号)が挙げられる。さらに、癌治療ワクチンに特に適した抗原はチロシナーゼおよびサービビン(survivin)が挙げられる。 Muc1などのムチン誘導ペプチド(例えば、米国特許第5,744,144号、米国特許第5,827,666号、WO 8805054、米国特許第4,963,484号)が挙げられる。特に意図するのは、Muc1誘導ペプチドであって、少なくともMuc1ペプチドの少なくとも1つのリピート単位、好ましくは少なくとも2つのリピートを含有しかつSM3抗体(米国特許第6,054,438号)により認識される前記ペプチドである。他のムチン誘導ペプチドは、Muc5由来のペプチドが挙げられる。 本発明はまた、乳癌抗原(her 2/Neu、マンマグロビン(mammaglobin)(米国特許第5,668,267号)またはWO/00 52165、WO99/33869、WO99/19479、WO 98/45328などに開示された抗原など)精製にも有用である。Her 2 neu抗原は、とりわけ、米国特許第5,801,005号に開示されている。好ましくは、Her 2 neuは、細胞外ドメイン全体(ほぼアミノ酸1-645を含んでなる)またはその断片、および少なくともその免疫原性部分、あるいは細胞内ドメイン全体(ほぼC末端の580個のアミノ酸)を含んでなる。特に、細胞内部分はリン酸化ドメインまたはその断片を含むはずである。かかる構築物はWO00/44899に開示されている。特に好ましい構築物はECD PDとして知られ、第2成分はECD ΔPDとして知られる。WO/00/44899を参照すること。 本明細書で使用されるher 2 neuは、ラット、マウスまたはヒトから得ることができる。 Her2-neu抗原はHer2-neu抗原全体であってもまたはその部分であってもよい。好ましい部分は細胞外ドメインを含む。さらに好ましい実施形態においては、WO 00/44899に開示されるような細胞内ドメインの一部分と連結した細胞外ドメインを含む融合タンパク質を提供する。 他の起源由来の抗原およびタンパク質を本発明の方法により精製することができる。好ましくは、本発明の方法を利用して、HIV-1の抗原(tat、nef、gp120またはgp160など)からなる群から得られる、ヒト病原体に対して免疫応答を誘発しうる抗原または抗原性組成物を精製する。好ましい実施形態においては、本発明の方法をNEF-TATとして知られかつWO99/16884に記載されたHIV融合タンパク質の精製に適用する。他の抗原としては、以下のものが挙げられる:ヒトヘルペスウイルス抗原、例えば、HSV1もしくはHSV2由来(gDもしくはその誘導体またはICP27などの最初期タンパク質)、サイトメガロウイルス由来(特にヒトの)(gBまたはその誘導体など)、ロタウイルス由来(弱毒化生ウイルスを含む)、エプスタインバーウイルス由来(gp350またはその誘導体など)、水痘−帯状疱疹ウイルス由来(Varicella Zoster Virus)(gpI、IIおよびIE63など)、あるいは、肝炎ウイルス由来のもの、例えば、B型肝炎ウイルス由来(例えばB型肝炎表面抗原またはその誘導体)、A型肝炎ウイルス由来、C型肝炎ウイルス由来およびE型肝炎ウイルス由来、あるいは他のウイルス病原体由来のもの、例えば、パラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス由来(FおよびGタンパク質またはその誘導体など)、パラインフルエンザウイルス由来、麻疹ウイルス由来、ムンプス・ウイルス由来、ヒト乳頭腫ウイルス由来(例えばHPV6、11、16、18、など)、フラビウイルス由来(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス由来(卵またはMDCK細胞中で増殖させたインフルエンザウイルスの、全生ワクチンまたは不活化ウイルス、ウイルス成分、あるいは全インフルエンザビロゾーム(R. Gluck, Vaccine, 1992,10,915-920に記載)、またはHA、NP、NA、もしくはMタンパク質などの精製もしくはその組換えタンパク質、またはそれらの組合わせなど)、あるいは細菌性病原体由来のもの、例えば、淋菌(N. gonorrhea)および髄膜炎菌(N. meningitidis)を含むナイセリア属(Neisseria spp.)由来(トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン);化膿連鎖球菌(S. pyogenes)由来(例えば、Mタンパク質またはその断片、C5Aプロテアーゼ、リポテイコ酸)、B群連鎖球菌(S. agalactiae)由来、ミュータンス菌(S. mutans)由来;軟性下疳菌(H. ducreyi)由来;カタル球菌(Branhamella catarrhalis)としても知られるモラクセラ・カタラーリス(M. catarrhalis)を含むモラクセラ属(Moraxella spp.)由来(例えば高および低分子量アドヘシンおよびインベーシン(invasin));百日咳菌(B. pertussis)(例えば、ペルタクチン(pertactin)、百日咳毒素またはその誘導体、繊維状赤血球凝集素(filamenteous hemagglutinin)、アデニル酸シクラーゼ、線毛)、パラ百日咳菌(B. parapertussis)および気管支敗血症菌(B. bronchiseptica)を含むボルデテラ属(Bordetella spp.)由来;ヒト結核菌(M. tuberculosis)(例えばESAT6、抗原85A、-Bまたは-C)、ウシ結核菌(M. bovis)、らい菌(M. leprae)、鳥結核菌(M. avium)、パラ結核菌(M. paratuberculosis)、スメグマ菌(M. smegmatis)を含むマイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.)由来;レジオネラ・ニューモフィラ菌(L. pneumophila)を含むレジオネラ属(Legionella spp)由来;毒素原性大腸菌(enterotoxic E. coli)(例えば、コロニー形成因子、熱不安定毒素またはその誘導体、熱安定毒素またはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸病原性大腸菌(例えば、志賀毒素(shiga toxin)様毒素とその誘導体)を含むエシェリキア属(Escherichia spp)由来;コレラ菌(V. cholera)(例えば、コレラ毒素またはその誘導体)を含むビブリオ属(Vibrio spp)由来;ソンネ赤痢菌(S. sonnei)、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(S. flexnerii)を含む赤痢菌属(Shigella spp)由来;ヒトエルジニア症菌(Y. enterocolitica)(例えばYopタンパク質)、ペスト菌(Y. pestis)、偽結核エルジニア菌(Y. pseudotuberculosis)を含むエルジニア属(Yersinia spp)由来;C・ジェジュニ菌(C. jejuni)(例えば毒素、アドヘシンおよびインベーシン)およびC・コリ菌(C. coli)を含むカンピロバクター属(Campylobacter spp)由来;腸チフス菌(S. typhi)、パラチフス菌(S. paratyphi)、豚コレラ菌(S. choleraesuis)、腸炎菌(S. enteritidis)を含むサルモネラ属(Salmonella spp)由来;リステリア菌(L. monocytogenes)を含むリステリア属(Listeria spp);ヘリコバクター・ピロリ菌を含むヘリコバクター属(Helicobacter spp)由来(例えばウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素);緑膿菌(P. aeruginosa)を含むシュードモナス属(Pseudomonas spp)由来;黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)を含むブドウ球菌属(Staphylococcus spp);E・ファエカリス菌(E. faecalis)、E・ファエシウム菌(E. faecium)を含むエンテロコッカス属(Enterococcus spp)由来;破傷風菌(C. tetani)(例えば破傷風毒素とその誘導体)、ボツリヌス菌(C. botulinum)(例えばボツリヌス毒素とその誘導体)、C・ディフィシル菌(C. difficile)(例えばクロストリジウム毒素AまたはBとそれらの誘導体)を含むクロストリジウム属(Clostridium spp)由来;炭疽菌(B. anthracis)(例えばボツリヌス毒素とその誘導体)を含むバシラス属(Bacillus spp);ジフテリア菌(C. diphtheriae)(例えばジフテリア毒素とその誘導体)を含むコリネバクテリウム属(Corynebacterium spp)由来;B・ブルグドルフェリ菌(B. burgdorferi)(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B・ガルニイ菌(B. garinii)(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B・アフゼリイ菌(B. afzelii)(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B・アンデルソニイ菌(B. andersonii)(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B・ヘルムシイ菌(B. hermsii)を含むボレリア属(Borrelia spp.)由来;ウマエールリヒア菌(E. equi)およびヒト顆粒球性エールリヒア症の病原因子を含むエールリヒア属(Ehrlichia spp.)由来;斑点熱リケッチア(R. rickettsii)を含むリケッチア属(Rickettsia spp)由来;トラコーマクラミジア(C. trachomatis)(例えばMOMP、ヘパリン結合タンパク質)、肺炎クラミジア菌(C. pneumoniae)(例えばMOMP、ヘパリン結合タンパク質)、オウム病クラミジア菌(C. psittaci)を含むクラミジア属(Chlamydia spp.)由来;L・インテロガンス菌(L. interrogans)を含むレプトスピラ属(Leptospira spp.)由来;梅毒トレポネーマ菌(T. pallidum)(例えば希外膜タンパク質)、T・デンティコーラ菌(T. denticola)、T・ハイオジセンテリア菌(T. hyodysenteriae)を含むトレポネーマ属(Treponema spp.)由来;あるいは寄生虫由来のもの、例えば、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)を含むプラスモディウム属(Plasmodium spp.)由来;T・ゴンジイ原虫(T. gondii)(例えばSAG2、SAG3、Tg34)を含むトキソプラスマ属(Toxoplasma spp.)由来;赤痢アメーバ(E. histolytica)を含むエントアメーバ属(Entamoeba spp.)由来;B・ミクロチ原虫(B. microti)を含むバベシア属(Babesia spp.)由来;クルーズトリパノソーマ(T. cruzi)を含むトリパノソーマ属(Trypanosoma spp.)由来;ランブル鞭毛虫(G.lamblia)を含むジアルジア属(Giardia spp.)由来;森林型熱帯リーシュマニア(L. major)を含むリーシュマニア属(Leishmania spp.)由来;ニューモシスティス・カリー(P. carinii)を含むニューモシスティス属(Pneumocystis spp.)由来;腟トリコモナス(T. vaginalis)を含むトリコモナス属(Trichomonas spp.)由来;マンソン住血吸虫(S. mansoni)を含む住血吸虫属(Schisostoma spp.)由来;あるいは酵母由来のもの、例えば、C・アルビカンス(C. albicans)を含むカンジダ属(Candida spp)由来;C・ネオフォルマンス(C. neoformans)を含むクリプトコックス属(Cryptococcus spp.)由来が挙げられる。 ヒト結核菌(M. tuberculosis)に対する他の好ましい特異的抗原は、例えば、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38-1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1(WO 99/51748)である。ヒト結核菌(M. tuberculosis)に対するタンパク質はまた、ヒト結核菌(M. tuberculosis)の少なくとも2つ、好ましくは3つのポリペプチドがさらに大きいタンパク質と融合している融合タンパク質とその変異体が挙げられる。好ましい融合体は、Ra12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14-DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTIが挙げられる(WO 99/51748)。 クラミジア属菌(Chlamydia)に対する最も好ましい抗原は、例えば高分子量タンパク質(HWMP)(WO 99/17741)、ORF3(EP 366 412)、および推定膜タンパク質(Pmps)が挙げられる。ワクチン製剤のその他のクラミジア属菌抗原は、WO 99/28475に記載の群から選択することができる。 連鎖球菌属菌(Streptococcus spp)から得られる好ましい細菌抗原は、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)(例えば、PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質)およびタンパク質抗原ニューモリシン(Biochem Biophys Acta, 1989,67,1007;Rubinsら, Microbial Pathogenesis, 25,337-342)、およびその突然変異無毒化誘導体(WO 90/06951;WO 99/03884)が挙げられる。他の好ましい細菌ワクチンは、ヘモフィルス属菌(Haemophilus spp.)から得られる抗原を含んでなり、B型インフルエンザ菌(H. influenzae type B)、不定型インフルエンザ菌(non typeable H. influenzae)、例えばOMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、プロテインDおよびリポプロテインD、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来のペプチド(米国特許第5,843,464号)またはそれらの多コピー変異体または融合タンパク質が挙げられる。 B型肝炎表面抗原の誘導体は当技術分野で周知であり、とりわけ、欧州特許出願EP-A-414 374;EP-A-0304 578、およびEP 198-474に記載のこれらのPreS1、PreS2 S抗原が挙げられる。 本発明の好ましい実施形態においては、本発明の方法を、生殖器いぼの原因と考えられているヒト乳頭腫ウイルス(HPV)(HPV6またはHPV11その他)、および子宮頚癌の原因となるHPVウイルス(HPV16、HPV18その他)から得られた抗原に適用することができる。特に、初期タンパク質E1、E2、E6およびE7ならびにそれらの融合体が挙げられる。 最も好ましい融合タンパク質の形態は、WO 96/26277に記載のL2E7、およびGB 9717953.5(PCT/EP98/05285)に開示されたプロテインD(1/3)-E7である。 特に好ましいHPV16抗原は、プロテインDキャリアーとの融合形態で初期タンパク質E6もしくはE7を含み、プロテインD-HPV16由来のE6もしくはE7融合体、またはそれらの組み合わせ;またはE6もしくはE7とL2との組み合わせを形成しているものである(WO 96/26277)。 あるいは、HPV16または18初期タンパク質E6およびE7を単独分子で、好ましくはプロテインD-E6/E7融合体で提供してもよい。 マラリアを引き起こす寄生虫由来の他の抗原を、本発明の方法によって精製することができる。例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodia falciparum)由来の好ましい抗原はRTS、SおよびTRAPが挙げられる。RTSは、B型肝炎表面抗原のプレS2部分の4個のアミノ酸を介して、B型肝炎ウイルスの表面(S)抗原と連結した、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)の外周スポロゾイト(CS)タンパク質の実質的にC末端部分の全体を含んでなるハイブリッドタンパク質である。その全構造は、英国特許出願第9124390.7号による優先権を主張する国際公開番号WO 93/10152のもとで公開された国際特許出願PCT/EP92/02591に記載されている。酵母で発現させると、RTSはリポタンパク質粒子として産生し、S抗原とともにHBVから同時発現させると、RTS,Sとして知られる混合粒子が産生する。TRAP抗原は、WO 90/01496のもとで公開された国際特許出願PCT/GB89/00895に記載されている。多段階マラリアワクチンの成分の候補となりうる他のプラスモディウム属抗原は、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セケストリン(Sequestrin)、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびプラスモディウム属におけるそれらの類似体であり、それらはその不溶形態から本発明の方法により分離精製することができる。 本発明の好ましい実施形態においては、本発明の出発物質は、不溶タンパク質:ProtD-Mage3-His、NS1-P703p*-His、ProtD-E7-His、protD-Mage1-His、Naf-TET、の1つを含有する大腸菌(E.coli)由来の細胞ホモジネートなどの細胞抽出物である。あるいは、出発物質は、ピチア・パストリス菌(Pichia pastoris)、酵母(Saccharomyces cerevisae)、または他の発現系由来の細胞ホモジネートであってもよい。あるいは、透過化処理した全細胞を出発物質として利用してもよい。 上記タンパク質は、ポリヒスチジン配列などのアフィニティ尾部を付加して好都合に生産することができる。 好ましい実施形態においては、本発明は以下に記載のように行われる: 振動膜フィルター、例えばPallSep VMFに1個以上の膜、例えば100個までの膜、典型的には5〜50個、しばしば1〜20個を取り付けるが、1〜10個の親水膜を使用してもよい。好ましくは、親水化ポリエーテルスルホン膜を用いる。最も好ましくは、Pall-Filtronから購入される親水膜「045PS10PESエレメント」を用いる。使用する膜は0.1ミクロン〜1.2ミクロン、最も好ましくは0.2〜0.8μ、しばしば0.2〜0.65ミクロンの細孔サイズを有するであろう。典型的には0.45または0.2ミクロン膜を使用するが、ある特定の実施形態においては、0.8μの名目細孔サイズを有する膜を使用する。 VMFユニットは、膜を通して最大の流束と透過量を得る振動数と振幅において運転する。理想的には、膜濾過デバイスの振幅は0.5〜1インチ、典型的には約0.75インチである。運転条件は製造業者の論文により提供される。 細胞を発酵槽ブロスから収穫して濃縮する。一実施形態においては、細胞を本明細書に記載のVMFフィルターを用いて濃縮しかつ洗浄する。細胞を取出すと、それをホモジナイズするかさもなくば抽出する。細胞ホモジネート抽出は、膜アセンブリーの保持液(retentate)サイドでポンプを使って循環させる。流速は、膜アセンブリー1平方メートル当たり0.2〜5 l/minの範囲である。穏やかな圧力を膜の保持液サイドにかけて、膜を経て液を通過させる。夾雑物の安定して高い透過量を考慮し、保持液サイドの圧力は25psi未満、好ましくは15psi未満とし、10psi未満であってもよい。(しばしば圧力は本方法の最初に最も低く、徐々に増加させる)。ミクロフィルターを通しての夾雑物の通過が有効である間は、抽出物の容量は濾過により減少する。次いで、適当なバッファーを用いてダイアフィルトレーションにより保持液を洗浄する。これは、バッファーを保持液に連続補給して、フィルターを通して排出される液の容量を補充する方法(連続ダイアフィルトレーション)によるか、またはバッファーを1回以上不連続に加え、次いで濾過プロセスを経て容量を減少させる方法(非連続ダイアフィルトレーション)によって行うことができる。洗浄工程のバッファー容量は、膜を通しての夾雑物の排出が最大となるように選択する。保持液容量を所望のレベルまで減少させて、洗浄操作を終えることができる。 上記のプロセスを通して得られる産物は、不溶タンパク質の懸濁液からなり、これは全ての可溶不純物およびフィルターを透過し得た微粒子が除かれて精製されている。バッファー組成はまた、ダイアフィルトレーション操作により調節することができる。 本発明は、5L/h/m2を超える平均浸透流速の達成を可能にする。この流束は、大規模工程にとって非常に効率的であり、同じサンプルでTFFにより達成される流速のほぼ2倍である。 従って、本発明は不溶タンパク質を精製する方法であって、タンパク質の懸濁液を、親水膜を用いる振動膜フィルターに適用し、不溶タンパク質を保持液中に収集することを含む前記方法を提供する。不溶産物を含有するこの精製抽出物は、さらに様々な方法で処理することができる。通常、塩化グアニジン、尿素、界面活性剤またはそれらの混合物などの可溶化剤を加え、そしてその抽出物を適当な時間、pHおよび温度条件に保持してタンパク質を可能なだけ最大限に溶解させる。可溶化抽出物は微粒子を含有し、それは細胞壁断片、核酸またはその他の物質でありうる。 それらは微粒子であるので、抽出物は厳しい目詰まりなしにクロマトグラフィカラム処理にかけることができない。微粒子対策には次のような複数の選択肢が存在する:すなわち流動床もしくはエキスパンド床吸着、バッチ吸着、遠心分離、濾過またはタンジェント流濾過がある。しかし、本発明者らは、上に詳述した条件のもとで利用する振動膜フィルターが、可溶化抽出物の清澄化を実施するのに特に適当であることを発見した。濾液流束および濾液中の産物透過は通常のタンジェント流濾過より大きかった。 従って、本発明の一態様では、タンパク質の可溶抽出物を清澄化するための、親水膜を含んでなる振動膜フィルターの使用を提供する。 清澄化の後、典型的には、固定金属イオンアフィニティクロマトグラフィ、Q-セファロースなどの1以上のクロマトグラフィカラムへ直接適用することにより、さらにそのタンパク質を精製することができる。 次いで、得られる精製タンパク質を、例えば、アジュバントまたは他の製薬上許容される賦形剤を用いて製剤化して、ワクチンまたは医薬組成物を製造することができる。あるいは、タンパク質を診断試薬として、または精製タンパク質が有用と思われる任意の目的のために使用することができる。総説 本発明による精製物質の生産を導く工程の組合せは、ミクロフィルターを通しての可溶汚染物の排除、所望のタンパク質の可溶化(図1)及び可溶化タンパク質のミクロフィルターを通しての清澄化(図2)を包含する。これを、図1と2のフローチャートで模式図により表現する。さらに細胞収穫も、同じ設備を用いて実施することができる(以下の実施例8を参照)。 清澄化後、典型的には、固定金属イオンアフィニティクロマトグラフィ、Q-セファロースなどの1以上のクロマトグラフィ工程を使って、タンパク質をさらに精製することができる。 次いで、得られる精製タンパク質を、例えば、アジュバントまたは他の製薬上許容される賦形剤を用いて製剤化して、ワクチンまたは医薬組成物を生産することができる。あるいは、タンパク質を診断試薬として利用することができる。実施例1:大腸菌(E.coli)に不溶物質として発現されたprotD-Mage3-Hisタンパク質の精製 WO99/40188に記載の組換え大腸菌(E.coli)株で、この融合タンパク質の細胞内過剰発現を得た。顕微鏡下で封入体は観察されなかった。精製の最初の工程だけを記載する(ペレット画分の洗浄/可溶化/可溶化物質の清澄化)。図3は主要工程を強調し、以下の分析で用いた主要サンプルのコードを示す。次いで、精製した抽出物を、目詰まりなしに、クロマトグラフィ吸着剤、例えば、Amersham Pharmacia製のセファロース・ファースト・フロー(Sepharose Fast Flow)に供給することができる。 実験手順の詳細は次の通りであった。細胞ペーストを、2M NaCl及び5mM EDTAを含有するpH7.5、20mMリン酸バッファー中に、光学密度120(約60g乾燥細胞重量/リットル)で再懸濁した。細胞懸濁液(5L)をRannieホモジナイザーに15000psiにて2回通過してホモジナイズした。細胞ホモジネートは不溶protD-Mage3-Hisを含有する抽出物を表す。10個の0.45μm細孔サイズポリエーテルスルホン(PES)膜アセンブリー(アセンブリー1個当たり0.1m2)を取り付けたPallSep PS10の保持液サイドで、抽出物を1 l/分にて再循環した。膜アセンブリーの振動振幅は0.75インチであった。操作は室温で実施した。保持液バルブを保持液サイドに2.5psiの過圧が生じるように設定し、抽出物の濾過を開始した。容積は、この濾過により5から2リットルに減少した。最大量の汚染物を排除する目的で、保持液を、界面活性剤を含有するダイアフィルトレーションバッファー(20mMリン酸バッファーpH7.5-Empigen BB 0.5%)15リットルを用いてダイアフィルトレーションにより洗浄した。濾液流速はほぼ10 L/h/m2であった。 本方法の第2フェーズは、可溶化バッファー2リットルを保持液(20mMリン酸バッファーpH7.5 Empigen BB 0.5%-グアニジン.HCl 8M-グルタチオン 20mM)に直接加えて開始した。溶液を1時間、PallSepの保持液サイドに再循環してタンパク質を完全に溶解した。この間、濾過はしなかった。 可溶化protD-Mage3-Hisの回収は、最初は濾過により実施して4から2リットルへ容積を減少し、次いで6リットルの10mMリン酸バッファー pH7.5-Empigen BB 0.5% グアニジン.HCl 4M-グルタチオン 10mMを用いてダイアフィルトレーションにより達成した。PallSepは、最初の濾過と同じ条件で操作した。全てのダイアフィルトレーションは連続モードで行った。 4つの異なる実験で得た結果を表1及び2に総括した。図4はこれらの実験の1つで採取したサンプルのSDS-PAGEパターンを示す。 表1は、本方法の主要工程でアッセイしたタンパク質の全量を示す。結果は、細胞ホモジネート(抽出物)中のタンパク質の量に対して100%に正規化している。図4は、本方法実施中に得た画分のSDS-PAGEパターンを示す。protD-Mage3-Hisの位置を矢印により示す。ゲルは、本方法の全工程中で収集したサンプルを含む。左のゲルは、大部分の汚染物が本方法の第1フェーズ中に洗浄されたことを示す(レーン9とレーン2と比較する)。右側のゲルによると、可溶化後に目的のタンパク質のほとんどが、膜を通して浸透液に回収されたようである(レーン7)。本方法の最後にVMFの保持液サイドに保持されたタンパク質のパターンは、主に大腸菌(E.coli)タンパク質不純物と少しの残留protD-Mage3-Hisを含有した(右ゲルのレーン9)。 表1でアッセイしたサンプルのSDS-PAGEパターンにより、表1のタンパク質量は、VMF浸透液(右ゲルのレーン7)の大部分のprotD-Mage3-hisとVMF洗浄液(左ゲルのレーン9)の主に大腸菌(E.coli)汚染物とに割り当てることができる。 これらのデータから得た主な結論は次の通りである。本方法は、汚染物の大部分(平均で抽出物由来のタンパク質のほぼ80%)をVMF洗浄液に排除させた。さらなる汚染物(抽出物由来のタンパク質のほぼ6%)を最終清澄化でVMF保持液に排除した。全体として、本操作により、抽出物からタンパク質汚染物のほぼ86%を浄化させた。さらに、protD-Mage3-hisの大部分をVMF浸透液に回収した。 処理した物質のLPS(内毒素)の量を表2に示す。4実験において、VMF操作後に見出した内毒素の量は著しく低くかつ一致した。 本方法における内毒素のクリアランスは、精製したProtD-Mage3 Hisで測定した残余量(約5x10exp9 EU)と細胞抽出物中の理論量(約10exp11 EU)との比較から、約95%と評価することができる。抽出物5L中の全内毒素を、大腸菌(E.coli)生物量;Neidhardt F. C.及びUmbargerが報じた3.4%LPS/大腸菌(E.coli)細胞乾燥重量の含量(Neidhardt F. C.及びUmbarger, Chapter 3 in Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology,第2版, Vol.1, ASM Press, Washington, 1996)を考慮しかつ平均値を10 EU/ng LPSと考えて評価した。 総括すると、記載した本方法は、粗大腸菌(E.coli)抽出物5Lを処理して、protD-Mage3-Hisの大部分を清澄溶液8Lとして含有する実質的に精製した調製物を生産することを可能にした。細胞デブリからの全粒子;ならびに宿主細胞汚染物の大部分(タンパク質、核酸の86%、約99%LPS)が排除された。 精製を、IMAC(亜鉛イオンキレート化セファロースクロマトグラフィ)のクロマトグラフィ技術、次いでQ-セファロース、次いで限外濾過を用いて続けた。その抗原をアジュバントとともにワクチンとして製剤化した。 この精製順序を用いてGMPのもとでの臨床供給する物質を生産することに成功した。本発明に記載の操作は、産物から可溶汚染物を排除する繰返し遠心分離及び再懸濁ならびにタンジェント流濾過による可溶化抽出物清澄化に基づく初期の方法と有利に取って代わった。 本発明に記載の方法の異なる工程は、従来の方法に対する2作業日と比較して、ほぼ1/2作業日(3〜5時間)しか要しなかった。本方法は連続であり、従来の方法より少ないマンパワーしか要しなかった。実施例2:大腸菌(E.coli)に封入体として発現されるNS1-P703P*-Hisタンパク質の精製 この融合タンパク質の細胞内発現を、組換え大腸菌(E.coli)株(PCT/EP00/06618)で得た。この場合、顕微鏡下で封入体が明らかに観察された。精製の第1工程(ペレット画分の洗浄/可溶化/可溶化物質の清澄化)だけを記載する。 細胞ペーストを、光学密度120(約60g乾燥細胞重量/リットル)にて2M NaCl及び5mM EDTAを含有するpH7.5、20mMリン酸バッファー中に再懸濁した。細胞懸濁物をRannieホモジナイザー中で15000psiにて2回通過してホモジナイズした。細胞ホモジネートは封入体を含有する抽出物を表す。抽出物を、2個のポリエーテルスルホン(PES)膜アセンブリー(アセンブリー1個当たり0.1m2)を備えたPallSep PS 10の保持液サイドで1 l/分で再循環した。膜アセンブリーの振動振幅は0.75インチであった。操作は室温で実施した。保持液バルブは、保持液サイドに5psiの過圧を生じるように設定して、抽出物の濾過を開始した。容積は、この濾過により1から0.5リットルへ減少した。最大量の汚染物を排除する目的で、保持液をダイアフィルトレーションにより、ダイアフィルトレーションバッファー(20mMリン酸バッファーpH7.5-Empigen BB 0.5%)3.75リットルを用いて洗浄した。 本方法の第2フェーズは、可溶化バッファー2リットルを保持液(20mMリン酸バッファーpH7.5-Empigen BB 0.5%-グアニジン.HCl 8M-グルタチオン 40mM)に直接加えることにより開始した。溶液を1時間、PallSepの保持液サイドで再循環してタンパク質を完全に溶解した。この間に濾過はしなかった。 可溶化NS1-P703P*-Hisの回収は、最初は濾過から実施して1から0.5リットルへ容積を減少し、次いでダイアフィルトレーションにより、1.5リットルの10mMリン酸バッファーpH7.5-Empigen BB 0.5%-グアニジン.HCl 4M-グルタチオン 10mMを用いて達成した。PallSepは、最初の濾過と同じ条件で操作した。 清澄した抽出物は最初の抽出物からのNS1-P703P*-Hisの大部分を含有し、清澄溶液2リットルであった。このように、実施例1のProtD-Mage3-Hisの無定形沈降物を処理するのに利用した精製順序は、封入体として発現されるタンパク質を処理するのにも効果的であることを示した。 このタンパク質について、実施例1と同じ利点:統合した連続プロセス、短い時間、低いマンパワー投入、及び効果的な汚染物の排除が立証された。清澄化抽出物をさらにクロマトグラフィにより精製した。この精製順序を用いて精製物質の複数の臨床バッチを生産し、次いでアジュバントを用いて製剤化して臨床品質のワクチンを生産した。 かかる規模で3つの異なる実験に対して得た典型的な結果を以下の表3にまとめる: この事例では、目的のタンパク質がゲル上にうまく検出される(主要可視バンドは約30Kdにある)(図5)。 図5第1ゲルから、再び、多くの汚染物が本方法の第1フェーズの間に洗浄されることが明らかである(レーン3〜8をレーン2と比較)。洗浄ペレット画分の可溶化後、目的のタンパク質のほとんどは濃縮時に膜を通して浸透液に回収される(レーン9)。可溶化物質の回収をダイアフィルトレーションを用いて実施する(ゲル2、(図5その2)レーン2〜7を参照)。操作終了時に、タンパク質の小画分だけがVMFの保持液サイドに保持される。分析に対する還元条件は、ゲル上のパターンに影響を与える(ゲル2、レーン6〜7及び8〜9を参照)。実施例3:ピキア・パストリス菌(Pichia pastoris)において不溶物質として発現されるNef-Tat-Hisタンパク質の精製 この融合タンパク質の細胞内発現を、組換えピキア・パストリス菌(Pichia pastoris)株で得た(WO99/16884)。 細胞ペーストを、OD100にて50mMリン酸バッファーpH7.5に懸濁した。細胞をビーズミル(Dynomill KDL)に4回通過して破砕した。抽出物(10リットル)を、Pallsep PS10において実施例1と本質的に同じ条件で10個の膜アセンブリーを用いて処理した。保持液圧はほぼ5psiとした。最初の容積減少工程は省いて、濾過操作の始めから連続ダイアフィルトレーションを開始した。30リットルのダイアフィルトレーションバッファー、10mMリン酸バッファーpH7.5-150mM NaClを用いた。 Nef-Tat-Hisは、10リットルの10mMリン酸バッファーpH7.5-150mM NaCl-グアニジン.HCl 8M-グルタチオン80mMを加えかつ本系の保持液サイドで再循環による1時間のインキュベーションにより、可溶化した。 可溶化タンパク質を濾過により初期容積を20から5リットルへ減少し、次いで10リットルの10mMリン酸バッファーpH7.5-NaCl 150mM-グアニジン.HCl 4M-グルタチオン40mMを用いてダイアフィルトレーションにより回収した。 清澄化、可溶化したNef-Tat-Hisを約25リットルに回収し、さらにクロマトグラフィにより精製することができた。 この精製順序は従来の方法に取って代わった;ここで従来の方法とは複数のサイクルの遠心分離と再懸濁工程を用いて可溶汚染物及び脂質を排除し、次いで可溶化し、遠心分離と上清の濾過によりNef-Tatを清澄化する方法であった。実施例1及び2に記載したのと同じ利点が観察された。例えば、2L-規模で、従来の「遠心分離」方法の8時間を上回る時間と比較して、VMF方法はほぼ3時間30分かかった。 3回の実行の結果を表4に記載する。目的のタンパク質はゲル上において約35Kd(図6レーン4清澄化可溶化物質の主要バンド)で目視しうる。本方法の第1フェーズの間(不溶画分の洗浄)に、多くの汚染タンパク質が洗浄される(レーン3)。 可溶化工程の後、目的のタンパク質を、濃縮とダイアフィルトレーションにより膜を通して浸透液に収集する(レーン4〜5及び6)。VMF操作の終了後には、ほんの少しの汚染タンパク質が保持液中になお検出可能である。実施例4:不溶タンパク質の精製に対する、非親水性PTFE膜と親水PES膜を用いる振動膜フィルターの性能比較非親水性PTFE膜を用いるVMF 実施例1〜3に記載したのと同様の方法を、大腸菌(E.coli)で細胞内生産したタンパク質HPV18 protD-E7-His WO99/10375の精製に対して評価した。 最初の実験において、PTFE 0.45μm膜を取付けたPallSepは、タンパク質を満足して処理できなかった:不溶物質の洗浄フェーズの間、許容しうる浸透流速が観察されたにも関わらず、目的のタンパク質は可溶化/清澄化フェーズの間、浸透液に回収されなかった。結果を以下に示す: 図7その2において、ゲル上のタンパク質位置を矢印により示す。 ゲル1(図7)及びゲル2(レーン1、3及び4)から、不溶画分の洗浄フェーズの間、複数の汚染タンパク質が洗浄除去されるようである。 それにも関わらず、ゲル2、レーン5〜8から、可溶化工程の後、目的のタンパク質の非常に低い量しか、膜を通過してVMF浸透液に回収されないようである。レーン9に明らかに見られるように、目的のタンパク質のほとんどは汚染タンパク質の多くとともに保持液サイドに滞留する。親水膜(PES)を用いるVMF しかし、本発明に記載の親水(hydrophilised)ポリエーテルスルホン膜(PES 0.2μ)を用いると、全プロセスの終了時に、濾液における目的のタンパク質の良い回収が可能となった。 VMF操作のSDS-PAGE分析(クーマシーブルー染色)追跡を参照すること:(図8及び8その2)。 ゲル上の該タンパク質位置を矢印により示す。 PTFE膜で実施した先の実験で観察されたのとは逆に、可溶化工程の後、目的のタンパク質のほとんどが膜を通過する(ゲル2、レーン6〜8)。目的のタンパク質はVMF保持液に残らない(ゲル2、レーン9)。 この比較は、期待する結果を得るために膜の選択が重要であり、疎水性であるPallSep用標準のPTFE膜と比較して、PESのような親水膜が必須であったことを強調するものである。実施例5:HPV16 protD-E7-Hisタンパク質精製の場合の、VMF用非親水性PTFE膜と親水PES膜の比較評価 実施例4に記載したのと同じ比較を、大腸菌(E.coli)で細胞内生産したタンパク質HPV16 protD-E7-His(WO 99/10375)精製の場合について実施した。 結論は同じであった:PTFE 0.45μm膜は目的のタンパク質を処理するのに成功しなかったが、PES 0.2μm膜は成功した。特に、洗浄工程は非常に効率的で抽出物から非常に小さい粒子を除去したので、浸透液は非常に濁った。PES膜を用いた最初の実行は、PTFE膜で観察したのと比較すると濾液が驚くほど高い濁度であったことに基づき、作業者は誤って実行を中断した。その濁度は膜が破壊したことを示したと思われたが、分析は、その判断が正しくなく、目的の不溶タンパク質は洗浄フェーズの間、保持液によく保たれていたことを帰納的に実証した。 この観察は、本発明に記載した方法が、非常に微細な粒子から目的の不溶タンパク質を分離するユニークな可能性を提供することを強く実証した。 また先の実施例でも記載したように、可溶化の後、目的のタンパク質の一部しかPTFE膜を通過しないようである。タンパク質のほとんどは、VMF保持液中に他の汚染タンパク質とともに回収される(図9その2、レーン14参照)。 他方、同じ実験をPESフィルターを用いて実施すると、目的のタンパク質は清澄化可溶化画分の主なバンドとして容易に検出しうる(例えば図10その2(レーン8))。 PTFE膜で実施した先の実験で観察されたのと逆に、可溶化工程の後、目的のタンパク質のほとんどは、膜を通過する(図10その2、レーン6〜8)。VMF保持液には非常にわずかのタンパク質しか残らない(レーン9)。実施例6:protD-Mage1-Hisタンパク質精製の場合の、本発明に記載した方法と標準TFF(タンジェント流濾過)技術との比較 protD-Mage1-His(WO99/40188)を大腸菌(E.coli)で無定形沈降物として細胞内に過剰発現させた。 最初の実験においては、不溶タンパク質を含有する細胞抽出物(OD120)を、実施例1及び2と非常に類似した条件のもとで、2個の0.2μm PES膜(2 x 0.1m2)を取付けたPallSep PS 10上で処理した。 他方、同じ抽出物の1Lを、同じ方法で、0.45μm PVDF膜(Millipore、0.5m2)を用いたTFFシステム上で処理した。 同じ洗浄及び可溶化条件を用いて、2つの実験を平行に実施した。 結果を以下に示した: 本発明に記載の方法の平均浸透流速はより優れていて、TFF技術の4.5 L/h/m2と比較して7.8 L/h/m2であった。 本発明に記載の方法の最終清澄化工程の間、SDS-PAGE分析で評価した可溶化した目的のタンパク質の透過は、より優れていた。この工程においてTFF膜を通過した目的のタンパク質はほんの少しでしかなかった。 この実施例は、古典的TFF技術を越える本発明に記載の方法の優位性を、収率、純度及び濾液流束の点から実証した。 複数の他の実験を同じプロセス条件、しかし10 L規模でかつ10個の膜を取付けたPallSep PS10 VMFシステムを用いて実施した。これらの試験の平均浸透液流速は6.8〜13.2 l/m2hであった。これらをTFFと比較し、結果を表5に示すが、この結果から、TFF方法は汚染物を除去する効率がより低いと結論することができる。 TFFにより得た抽出物が3152 EU/μgタンパク質の内毒素を含有するのと比較して、本発明に記載の方法から得た清澄化抽出物はより少ない内毒素を含有し、2.4〜21.4 EU/μgタンパク質であった(表6)。実施例7:HPV18 protD-E7-Hisタンパク質を精製する場合の、本発明に記載の方法とTFF技術との比較 既に上に記載したように、タンパク質HPV18 protD-E7-His(WO99/10375)を大腸菌(E.coli)中に無定形沈降物として細胞内に過剰発現させた。 第1の実験においては、不溶タンパク質を含有する細胞抽出物(OD60)を、2個の0.2μmPES膜(2 x 0.1m2)を取付けたPallSep PS10で、先の実施例と同様の条件で処理した。 比較として、細胞抽出物を同じ方法で次の異なるTFFシステムで処理した:0.3μm オメガ(Omega)膜(Pall-Filtron)、オープンチャネル(図11、11その2)、0.2μm PVDF膜(Millipore)、スクリーンチャネル(「C」)(図12)、0.2μm PVDF膜(Millipore)、オープンチャネル(「V」)(図13)。 同じ洗浄及び可溶化条件を用いて様々な実験を実施した。結果をSDS-PAGEにより分析して、図11、12及び13に示す。 図11その2、レーン6(TFF浸透液、清澄化可溶化画分)から、可溶化工程後に、非常に少ないタンパク質が0.3オメガ膜を通過したことが明らかであり、膜の目詰まりを示唆する。 実際、本操作の終了後に、全ての目的のタンパク質(矢印により示した)及び他の汚染タンパク質はTFF保持液画分中に回収された(図11その2、レーン7)。 0.2μPVDFチャネルCの実験においては、全プロセス終了後に、目的のタンパク質(矢印)はTFF浸透液中にほとんど検出されない(図12、レーン15を参照)。目的のタンパク質の透過は膜目詰まりにより害われた。 0.2 PVDF膜オープンチャネルを用いると、結果は、かろうじて改良されるのみであった(図13)。操作終了後のTFF保持液画分(レーン2)図13と清澄化可溶化タンパク質を含有するTFF浸透液画分(レーン15)とを比較すると、可溶化工程後に目的のタンパク質の部分的透過だけが得られたことが明らかである。従って、オープンチャネルはスクリーンチャネルより優れているが、タンパク質透過はまだ部分的でしかなかった。VMF 0.2μm PES膜(Pall-Filtron) 対照的に、0.2 PES膜(実施例4参照)で同じ操作を実施すると、本方法は、可溶化工程後に、目的のタンパク質の膜を通しての非常に優れた透過を実証し、操作終了時に、タンパク質のわずかの量しか保持液サイドに残らなかった。表7は、残留した内毒素を示す。内毒素は3つのTFFにおいては比較し得る値であったが、本発明によるVMFでは劇的に低下した。実施例8:発酵槽ブロスからの大腸菌(E.coli)細胞の収穫と次いで不溶物質としてのprotD-Mage3-Hisタンパク質の精製 典型的には、発酵槽ブロスを遠心分離により収穫し、その細胞ペーストを直接(または-20℃にて保存後)、実施例1に記載の崩壊バッファー中に再懸濁してもよい。 この実施例に記載したように、振動膜濾過を遠心分離の代替法として使用し、発酵ブロス中に存在する大腸菌(E.coli)細胞を濃縮しかつ洗浄した。次いでこれらの細胞をPallSep PS10設備から取出してホモジナイズした。この抽出物を直接同じPallSep PS10中に再導入して次の精製を行った。 全発酵ブロスを3倍まで、光学密度80(約40g乾燥重量/l)から約120g乾燥細胞重量/lまで濃縮した。全ブロスを、2個の0.45μm細孔サイズポリエーテルスルホン(PES)膜アセンブリー(1アセンブリー当たり0.1m2)を取付けたPallSep PS10の保持液サイドで、1 L/分にて再循環した。膜アセンブリーの振動振幅は0.75インチであった。本操作は室温で実施した。保持液バルブを保持液サイドで5psiの過圧を生じるように設定して、全発酵ブロスの濾過を開始した。この濾過により容積を3.22から1.07リットルに減少させた。保持液を、2M NaCl及び5mM EDTAを含有するpH7.5、20mMリン酸バッファー3.22リットルを用いてダイアフィルトレーションにより洗浄して、培地に存在する不純物を最大限に排除した。この濾液流速はほぼ11.5 L/h.m2であった。これらの操作中に、発酵ブロス中に存在する全タンパク質のほぼ5%を排除した。 保持液を濾過系から取り出して、15000psiにてRannieホモジナイザーを2回通過して直接ホモジナイズした。細胞ホモジネートは不溶protD-Mage3-Hisを含有する抽出物を表す。次いで抽出物を、細胞を収穫するのに用いたのと同じPallSep PS10の保持液サイドに1 L/分にて再循環した。いずれの残留細胞濃縮物も排除するために、収穫と精製操作の間に、PallSep PS10の膜アセンブリーとチューブ類を最初は水を用いて、2回目は崩壊バッファーを用いて洗浄した。膜アセンブリーの振動振幅は0.75インチであった。操作は室温で実施した。保持液バルブを保持液サイドで5psiの過圧を生じるように設定して、抽出物の濾過を開始した。この濾過により容積を0.85から0.7リットルに減少させた。最大限の量の汚染物を排除するために、保持液をダイアフィルトレーションにより、界面活性剤を含有するダイアフィルトレーションバッファー(20mMリン酸バッファーpH7.5-Empigen BB 0.5%)5.25リットルを用いて、5〜15psiの過圧のもとで洗浄した。濾液流速はほぼ4.2 L/h.m2であった。 次いで、可溶化フェーズを、可溶化バッファー0.7リットルを保持液(20mMリン酸バッファーpH7.5-Empigen BB 0.5%-グアニジン.HCl 8M-グルタチオン 20mM)に加えて開始した。溶液を1時間、PallSepの保持液サイドに再循環してタンパク質を完全に溶解させた。この間、濾過はしなかった。 可溶化protD-Mage3-Hisの回収は、最初は濾過により実施して1.4から0.7リットルへ容積を減少させ、次いで2.1リットルの10mMリン酸バッファーpH7.5-Empigen BB 0.5% グアニジン.HCl 4M-グルタチオン 10mMを用いるダイアフィルトレーションにより達成した。PallSepは、最初の濾過と同じ条件で操作した。全てのダイアフィルトレーションは連続モードで行った。 清澄化した抽出物は、最初の抽出物からのprotD-Mage3-Hisの大部分を、2.8リットルの清澄溶液(VMF浸透液)として含有した。細胞デブリからの全粒子:ならびに宿主細胞汚染物(タンパク質、核酸、LPS)の大部分が排除された。下記の表に示したように、全ブロス中に存在する全タンパク質のほぼ60%、ほとんどの宿主細胞汚染物が本方法で排除され(VMF洗浄液)、タンパク質のほぼ5%、主に細胞デブリがVMF保持液中に残った。不溶タンパク質を含有する抽出物を精製する方法を示す図である。可溶化抽出物を清澄化する方法を示す図である。protD-Mage3-His精製のフローシートを示す図である。SDS-PAGE分析の結果を示す図である(VMFプロセスの全工程中で収集したサンプルの(Tris-グリシン-12%-クーマシーブルー染色)(実験25))。SDS-PAGE分析によるVMF操作の典型的な追跡を示す図である((実験017):(P703P*の精製))。SDS-PAGE分析によるVMF操作の典型的な追跡を示す図である((実験017):(P703P*の精製))。SDS-PAGE分析によるVMF操作の典型的な追跡を示す図である((実験46):(NEF-TATの精製))。PTFEフィルターを使用するVMF操作のSDS-PAGE分析の結果を示す図である((クーマシーブルー染色)追跡を参照:(プロテインD E7))。PTFEフィルターを使用するVMF操作のSDS-PAGE分析の結果を示す図である((クーマシーブルー染色)追跡を参照:(プロテインD E7))。PESフィルターを使用するVMF操作のSDS-PAGE分析(クーマシーブルー染色)追跡を参照PESフィルターを使用するVMF操作のSDS-PAGE分析の結果を示す図である((クーマシーブルー染色)追跡を参照)。PTFE 0.45μm膜によるVMF操作のSDS-PAGE分析の結果を示す図である(クーマシーブルー染色)。PTFE 0.45μm膜によるVMF操作のSDS-PAGE分析の結果を示す図である(クーマシーブルー染色)。PSE 0.2μm膜によるVMF操作のSDS-PAGE分析(クーマシーブルー染色):(プロテインD-E7)PSE 0.2μm膜によるVMF操作のSDS-PAGE分析の結果を示す図である((クーマシーブルー染色):(プロテインD-E7))。SDS-PAGE分析による様々な実験の追跡を示す図である(TFF 0.3μmオメガ膜(Pall-Filtron)、オープンチャネル)。SDS-PAGE分析による様々な実験の追跡を示す図である(TFF 0.3μmオメガ膜(Pall-Filtron)、オープンチャネル)。SDS-PAGE分析による様々な実験の追跡を示す図である(TFF 0.2μm PVDF膜(Millipore)、スクリーンチャネル(「C」))。SDS-PAGE分析による様々な実験の追跡を示す図である(TFF 0.2μm PVDF膜(Millipore)、オープンチャネル(「V」))。 不溶タンパク質を精製する方法であって、タンパク質の懸濁液を、親水膜を含んでなる振動膜フィルターデバイスに適用しそして不溶タンパク質を保持液中に保持することを含んでなる前記方法。 膜が0.1〜1.2ミクロンの細孔サイズを有する、請求項1に記載の方法。 タンパク質の可溶または可溶化タンパク質抽出物を清澄化する方法であって、前記抽出物を親水膜を含んでなる振動膜フィルターに適用しそして可溶タンパク質を濾液中に収集することを含んでなる前記方法。 請求項1または2のいずれか1項に記載の不溶タンパク質を精製する方法であって、請求項1または2の方法により精製された保持液中の不溶タンパク質を可溶化し、可溶化タンパク質を振動膜フィルターに再適用し、そして濾液を収集することを含んでなる前記方法。 親水膜を含んでなる振動膜フィルターデバイスにおいて可溶化を行う、請求項4に記載の方法。 親水膜が再生セルロース、PVDF、改質ナイロンまたはポリエーテルスルホン膜から作られた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 親水膜がポリエーテルスルホン膜である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 不溶形態の前記タンパク質は、親水膜を含んでなる振動膜フィルターを利用して濃縮かつ洗浄された発酵ブロスから収穫された細胞で生産され、その後前記タンパク質は請求項1に記載の方法によって精製される、請求項1〜2および4〜7のいずれか1項に記載の方法。 医薬組成物を生産する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載のようにタンパク質を精製し、場合によっては前記タンパク質をさらに下流のクロマトグラフィ工程で処理し、そして製薬上許容される賦形剤と混合することを含んでなる前記方法。 製薬上許容される賦形剤がアジュバントである、請求項9に記載の方法。


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