タイトル: | 特許公報(B2)_エルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法とその用途 |
出願番号: | 2002546745 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C12P 19/26,C12N 9/80 |
渋谷 孝 福田 恵温 三宅 俊雄 JP 4109989 特許公報(B2) 20080411 2002546745 20011126 エルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法とその用途 株式会社林原生物化学研究所 000155908 渋谷 孝 福田 恵温 三宅 俊雄 JP 2000367725 20001201 20080702 C12P 19/26 20060101AFI20080612BHJP C12N 9/80 20060101ALI20080612BHJP JPC12P19/26C12N9/80 Z C12P 19/26 C12N 9/80 BIOSIS/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) 特表平01−502266(JP,A) 特開平05−084086(JP,A) 11 JP2001010270 20011126 WO2002044397 20020606 15 20041116 森井 隆信 技術分野本発明は、エルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法、エルソン−モルガン反応陽性物質を含んでなる組成物の製造方法、及び還元性糖質にアミノ基を導入する方法に関する。背景技術従来、アミノ基を含有する糖誘導体として知られる、例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−マンノサミン、D−アロサミン、D−フコサミン、D−グルコサミヌロン酸、D−フルクトサミン、D−ガラクトサミヌロン酸などのアミノ糖は、細菌の細胞壁、糖蛋白質、糖脂質、ムコ多糖類などの生体組織の重要な構成成分として、又、天然界では、カニやエビなどの甲殼類の外皮を形成するキチンなどの構成成分として広く分布している。これらアミノ糖は、「生化学辞典」、195頁、株式会社東京化学同人発行(1984年)に記載されているように、アルカリ性でアセチルアセトンと加熱縮合させた後、塩酸酸性条件下でp−ジメチルアミノベンズアルデヒド(エールリッヒ試薬)と反応(エルソン−モルガン反応)させると赤紫色を呈する物質であることが知られている。これらアミノ糖の内、例えば、既に工業化されているD−グルコサミンの製造方法としては、前記キチンを強アルカリ条件下で加熱処理して脱セチル化してキトサンとし、このキトサンを塩酸や硫酸などの鉱酸により加水分解してD−グルコサミンを得る方法、キトサンを微生物由来のキトサナーゼで加水分解してD−グルコサミンを得る方法などを例示できる。しかしながら、前者の化学的手法の場合、原料としての天然由来のキチン、キトサンを工業的に大量かつ安価に入手することは甚だ困難である上、強アルカリや強酸などの劇薬を用いることから、作業上、危険を伴うこと、耐アルカリ性や耐酸性の容器、装置を必要とすることから、操作が煩雑となり製造コスト高となる欠点があった。又、後者の生化学的手法の場合、キトサナーゼによるキトサンの加水分解率が低く、工業的な製造方法としては不適であった。発明の開示本発明者等は斯かる従来技術に鑑み、糖質を主原料として得ることのできるエルソン−モルガン反応で陽性を呈する物質、より詳細には、薄層クロマトグラフィー(TLC)上でエルソン−モルガン反応に供したとき、赤紫色を呈する物質(以下、単に「エルソン−モルガン反応陽性物質」と言う。)を工業的に安価、容易かつ安定して製造し得る新規な製造方法、エルソン−モルガン反応陽性物質を含んでなる組成物の製造方法、及び還元性糖質にアミノ基を導入する方法を提供することを課題とする。本発明者等は、糖質にアミノ基を直接導入する方法に着目して鋭意研究した結果、意外にも、還元性糖質と尿素とを含有する溶液にウレアーゼ(EC3.5.1.5)を作用させるか、又は還元性糖質とアンモニアとを接触させることにより、還元性糖質にアミノ基を直接導入でき、エルソン−モルガン反応陽性物質が容易に生成することを見出し、より好適には、前者のウレアーゼを作用させてエルソン−モルガン反応陽性物質を生成させる場合には、反応生成物の種類が比較的少ない上、エルソン−モルガン反応陽性物質以外の副産物の生成も少ないことから、所望のエルソン−モルガン反応陽性物質を単離し、精製することが容易で、工業的に実施する上で優れていることを見出し、このエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法を確立すると共に、斯かる製造方法により得られるエルソン−モルガン反応陽性物質を含有せしめる組成物の製造方法、及び還元性糖質と尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させるか、又は還元性糖質とアンモニアとを接触させて、還元性糖質にアミノ基を導入する方法を確立して本発明を完成した。発明を実施するための最良の形態本発明に於いて用いる還元性糖質について先ず述べる。斯かる還元性糖質とは、還元性を示す糖質を意味し、それがアルドースであろうとケトースであろうと、又D形、L形の何れの形態のものであっても、尿素と共にウレアーゼを作用させるか、アンモニアと接触させたとき、エルソン−モルガン反応陽性物質を生成し得る還元性糖質全てを包含する。具体的には、トレオース、エリスロースなどのテトロース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロース、キシルロースなどのペントース、グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、プシコース、ソルボース、ラムノース、タガトースなどのヘキソース、更にはマルトース、ラクトース、パラチノース、マルツロース、ツラノースなどの還元力を示す各種オリゴ糖を例示でき、これら還元性糖質に於ける結合様式として、α−結合、β−結合の何れの結合を有するものであってもよい。例えば、構成糖質が単一の糖質からなるホモオリゴ糖や、構成糖質が二種以上の糖質からなるヘテロオリゴ糖であってもよい。本発明で用いるこれら還元性糖質は、試薬特級や医薬品級及び最高純度の還元性糖質から、食品級の比較的高純度乃至低純度の製品であってもよく、通常、純度10%(w/w)以上、好ましくは、50%(w/w)以上、更に好ましくは、80%(w/w)以上のものを適宜選択して用いることができる。本発明に於ける最終製品としての組成物が、化粧品、医薬品、試薬を含む化学品である場合には、純度80%(w/w)以上の比較的高純度の還元性糖質を用いるのが望ましい。又、本発明で用いるウレアーゼは、還元性糖質共存下で尿素に作用してエルソン−モルガン反応陽性物質を生成し得る限り、その由来、起源、純度は特に問わず、動物、植物、微生物由来の天然型及び遺伝子組換え型の何れのものであってもよい。例えば、市販されているタチナタマメ由来のウレアーゼ、バチルス属に属する微生物由来のウレアーゼ、更には、土壌から分離して得られる各種微生物由来のウレアーゼ、或いは遺伝子組換え技術により得られるウレアーゼの一種又は二種以上を適宜用いることができる。これらウレアーゼは、必要に応じて適宜担体に固定化して用いることもできる。本発明で用いる尿素は、前記ウレアーゼが前記還元性糖質共存下で尿素に作用してエルソン−モルガン反応陽性物質を生成し得る限り、その由来、給源、純度は特に問わない。一般的には、試薬特級の最高純度の尿素製品、工業級の比較的高純度の尿素、又は飼料や肥料など比較的低純度の尿素含有製品であってもよく、通常、純度10%(w/w)以上、好ましくは、50%(w/w)以上、更に好ましくは、80%(w/w)以上のものを適宜選択して用いることができる。前記還元性糖質と同様、本発明に於ける最終製品としての組成物が、化粧品、医薬品、試薬を含む化学品である場合には、純度80%(w/w)以上の比較的高純度の尿素を用いるのが望ましい。本発明で用いる還元性糖質と尿素とを含有する溶液は、還元性糖質と尿素とを、エルソン−モルガン反応陽性物質が生成し得る量含んでいるものであればよく、通常、還元性糖質と尿素とをそれぞれ1%(w/w)以上の濃度、好ましくは、それらを合計で5乃至60%(w/w)の濃度で含む溶液を適宜選択して用いることができる。還元性糖質と尿素とは、通常、モル比で1:99乃至99:1の範囲で用いる。又、ウレアーゼを還元性糖質と尿素とに作用させるときの温度は、ウレアーゼがそれらに作用する温度であればよく、通常、0℃以上、好ましくは、10℃以上、より好ましくは、20乃至100℃以上、更に好ましくは、20乃至80℃の範囲の温度から選ばれる。尚、一般に高すぎる温度、例えば、100℃を越える温度に於いては、ウレアーゼの失活が著しくなることから好ましくない。ウレアーゼを作用させるpHは、ウレアーゼが作用するpHであればよく、通常、pH5乃至12、好ましくは、pH6乃至11の範囲のpHから適宜選択して用いる。又、ウレアーゼを作用させる際の媒体は、ウレアーゼが作用してエルソン−モルガン反応陽性物質を生成し得る限り特に問わない。工業的に好適な媒体としては水を例示できる。本発明で用いるアンモニア(NH3)は、前記した還元性糖質と直接反応してエルソン−モルガン反応陽性物質を生成し得る限り、その由来、給源、純度は特に問わない。具体例には、純アンモニアガス、液体アンモニア、圧縮アンモニア、アンモニア水、更には、媒体中でアンモニアを発生するアンモニア含有化合物などから選ばれる一種又は二種以上のアンモニアを適宜用いることができる。一般的には、試薬特級の最高純度のアンモニア、工業級の比較的高純度のアンモニア、又は飼料や肥料など比較的低純度のアンモニア含有製品などを用いることができる。本発明で用いるアンモニアの純度は、通常、ガス状の場合、10%(v/v)以上、好ましくは、50%(v/v)以上、更に好ましくは、80%(v/v)以上のものを、液状の場合、純度10%(w/w)以上、好ましくは、50%(w/w)以上、更に好ましくは、80%(w/w)以上のものが望ましい。前記還元性糖質及び尿素と同様、本発明に於ける最終製品としての組成物が、化粧品、医薬品、試薬を含む化学品である場合には、純度80%(w/w)以上の比較的高純度のアンモニアを用いるのが望ましい。本発明で用いる還元性糖質とアンモニアとの配合割合は、モル比で1:99乃至99:1の範囲から適宜選択して用いられる。還元性糖質とアンモニアとの反応温度は、それらが反応してエルソン−モルガン反応陽性物質を生成する温度であればよく、通常、0℃以上、好ましくは、10℃以上、より好ましくは、20乃至100℃、更に好ましくは、20乃至80℃の範囲から適宜選ばれる。尚、還元性糖質とアンモニアとの反応は、低温よりも高温の方がよく進行するところ、100℃を越える高温に於いては、副産物の生成量が増加することから好ましくない。又、還元性糖質とアンモニアとを接触させる反応系としては、エルソン−モルガン反応陽性物質が生成し得る条件であればよく、液相系又は固相系の何れをも採用することができる。しかしながら、反応効率及び反応生成物の分離のし易さの点で、適宜の媒体中で還元性糖質とアンモニアとを接触させるのが望ましい。媒体としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1乃至10程度の直鎖又は分岐アルコール類、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、トルエン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジメチルスルフォキシド、エチルセロソルブ、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒から選ばれる一種又は二種以上の溶媒を単独又は適宜組み合わせて用いることができる。媒体中で還元性糖質とアンモニアを接触させる際の反応pHは、通常、pH5乃至14、好ましくは、pH8乃至13の範囲から適宜選択される。又、無用な酸化物の生成を抑制するために、嫌気的条件下、脱酸素条件下、不活性ガス存在下で、還元性糖質とアンモニアとを接触させることも有利に実施できる。還元性糖質と尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させるか、還元性糖質とアンモニアとを接触させて生成するエルソン−モルガン反応陽性物質を採取する方法としては、前記反応により得られるエルソン−モルガン反応陽性物質を含有する溶液を、活性炭による脱色、濾過、薄層クロマトグラフィー(TLC)、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、吸着クロマトグラフィー、濃縮、結晶化などの一種又は二種以上の精製方法を適宜採用することができる。より好適には、前記反応により得られるエルソン−モルガン反応陽性物質を含有する溶液を、H形カチオン交換樹脂と接触させて、エルソン−モルガン反応陽性物質を吸着させて水洗した後、塩酸、酢酸、クエン酸、硝酸、硫酸等の酸でカラムから溶出し、濃縮して採取するか、必要に応じて、更に結晶化して採取する。又、塩形の強酸性カチオン交換樹脂及び/又はシリカゲルODSを充填したカラムに前記反応により得られるエルソン−モルガン反応陽性物質を含有する溶液をチャージした後、水又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール等の各種有機溶媒をカラムに流して、エルソン−モルガン反応陽性物質をカラムから溶出、分離し、濃縮して、更に、必要に応じて、結晶化して、高純度のエルソン−モルガン反応陽性物質を採取することも随意である。又、本発明の製造方法により得られるエルソン−モルガン反応陽性物質自体は、安全性の高い還元性糖質のアミノ誘導体として、それら単独で使用することも、又、水、アルコールなどの適宜の溶媒、賦形剤、増量剤、着香料、着色料、甘味料、呈味料、保存料、安定剤、pH調節剤、品質改良剤、防腐剤、ビタミン類、ホルモン類、エキス類、薬効成分、生理活性物質などの一種又は二種以上の成分と併用して、健康食品を含む飲食品、化粧品、医薬品、化学品などの各種組成物にして有利に用いることができる。これら各種組成物中のエルソン−モルガン反応陽性物質の含有量は、組成物重量当たり、0.001%以上、好ましくは、0.1%以上、更に好ましくは、1%以上とするのが好適である。又、これら各種組成物の形態としては、液状、シラップ状、ペースト状、固体状、粉末状、顆粒状、カプセル状などの各種形態のものを例示できる。以下、実験に基づいて、本発明をより詳細に説明する。実験1 ウレアーゼ又はアンモニア作用による糖質からのエルソン−モルガン反応陽性物質の生成試験D−グルコース又はD−フラクトースを110mgと試薬特級尿素(和光純薬工業(株)製)110mgとを50mMリン酸緩衝液(pH7)2mlに溶解し、これにタチナタマメ由来ウレアーゼ『タイプC−3』(シグマ社製)を尿素グラム当り1,000単位加え、40℃で24時間作用させた。このウレアーゼ反応液を限外濾過膜『ウルトラフィルターユニットUSY−1型』(アドバンテック(株)製)を用いて濾過し、ウレアーゼを除去して酵素作用を止めた。一方、アンモニア作用による場合は、100ml容三角フラスコに、D−グルコース又はD−フラクトースを2.5gとり、これに脱イオン水を50ml加え、室温下、穏やかに攪拌しつつ、アンモニアガスを常圧にて約30分間吹き込んだ。用いたアンモニアガスの生成は、200ml容三角フラスコに10N−水酸化ナトリウム水溶液100mlをとり、これに30%(v/v)アンモニア水を滴下して発生させ、これを前記個々の糖質水溶液内にガラス管を通じて導入した。ウレアーゼ及びアンモニア作用前後の溶液のTLC上でのエルソン−モルガン反応と、ウレアーゼ及びアンモニア作用後の溶液中に於ける原料糖質と生成物の組成(%(w/w))についてHPLCにより調べた。TLCの分析条件は、薄層プレートとして『キーゼルゲルF60』(メルク社製)を、展開溶媒としては2−プロパノール:ピリジン:水:酢酸(=8:8:3:1(体積比))を用い、ウレアーゼ及びアンモニア作用前後の溶液を、薄層プレートに2μlスポットして1回展開した後、エルソン−モルガン反応に供した。HPLC分析条件は、高速液体クロマトグラム装置『8020HPLCシステム』(東ソー(株)製)、カラムとして『アサヒパック NH2P−50(Φ6mm×250mm)』を、溶離液としてアセトニトリル/0.1M水酸化テトラプロピルアンモニウム−酢酸緩衝液(pH10)(=80:20(体積比))を用い、室温下、流速0.8ml/minで、ウレアーゼ及びアンモニア作用前後の溶液20μlをカラムに注入し、内容物を示差屈折計『ERC−7521』(エルマ光学(株)製)で検出すると共に、前記TLC分析によりエルソン−モルガン反応陽性物質の存在の有無を調べた。TLC及びHPLC分析結果を表1にまとめた。表1中、「+」は、TLC上でエルソン−モルガン反応陽性のスポットが検出されたことを、「−」は、TLC上でエルソン−モルガン反応が陰性であったことを示す。又、HPLCでのウレアーゼ及びアンモニア作用後の溶液に於ける原料糖質と生成物の組成(%(w/w))は、HPLCチャートに於けるピーク面積に基づいて求めた。その結果を表1に示す。又、D−グルコースについてのウレアーゼ及びアンモニア作用後の溶液のHPLCチャートをそれぞれ第1図及び第2図に、D−フラクトースについてのウレアーゼ及びアンモニア作用後の溶液のHPLCチャートをそれぞれ第3図及び第4図に示す。第1図乃至第4図から明らかなように、アンモニアを接触させる場合と比較して、ウレアーゼを作用させる場合には、生成物の種類が少なく、かつ、目的とするエルソン−モルガン反応陽性物質以外の副産物の生成も少ないことが判明した。したがって、アンモニアを接触させる場合と比べ、ウレアーゼを作用させる場合の方が、目的とするエルソン−モルガン反応陽性物質を単離し精製する上で優れていることが判明した。実験2 ウレアーゼ作用による各種糖質からのエルソン−モルガン反応陽性物質の生成試験下記に示す何れかの糖質(無水物)110mgと試薬特級尿素(和光純薬工業(株)製)110mgとを50mMリン酸緩衝液(pH7)2mlに溶解し、これにタチナタマメ由来ウレアーゼ(『タイプC−3』(シグマ社製))を尿素グラム当り1,000単位加え、40℃で24時間作用させた。この酵素作用液を限外濾過膜『ウルトラフィルターユニットUSY−1型』(アドバンテック(株)製)を用いて濾過し、ウレアーゼを除去して酵素反応を止めた。本酵素作用液に於いては、D−エリスロース、D−トレオース、エリスリトール、D−アラビノース、D−リキソース、D−リボース、D−キシロース、D−リブロース、D−キシルロース、D−アラビトール、リビトール、キシリトール、D−ガラクトース、D−マンノース、L−ラムノース、L−マンノース、D−プシコース、D−タガトース、L−ソルボース、ガラクチトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、トレハロース(α,α−トレハロース)、スクロース、マルチトール、マルトース、ラクトース、ツラノース、パラチノースの市販されている試薬29種類の糖質を用いた。ウレアーゼ作用前後の溶液をTLC上でのエルソン−モルガン反応に供し、ウレアーゼ作用後の溶液をHPLCに供した。TLCとHPLCの分析条件は、実験1と同様の条件で行った。その結果を表2に示した。表2から明らかなように、エルソン−モルガン反応陽性物質は、ポリオール及び非還元性糖質からは生成せず、還元性糖質から生成することが判明した。又、還元性糖質の中でも、ケトースよりアルドースの方がエルソン−モルガン反応陽性物質の生成量が多く、この傾向は単糖類だけでなく2糖類についても同様であった。還元性糖質の代表例として、D−アラビノース、D−ガラクトース、L−ラムノース、D−マンノース、マルトース及びラクトースを用いた場合のウレアーゼ作用後の溶液のHPLCチャートを第5図乃至第10図にそれぞれ示す。以下、実施例A及び実施例Bにより、本発明のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法、及びエルソン−モルガン反応陽性物質を含有してなる組成物の製造方法についてそれぞれ説明する。実施例A−1 D−フラクトースからのエルソン−モルガン反応陽性物質の製造試薬特級D−フラクトース(和光純薬工業(株)製)と試薬特級尿素(和光純薬工業(株)製)の各々10gを脱イオン水200mlに溶解し、タチナタマメ由来のウレアーゼ(『Type3』(シグマ社製))を1ml(5,000U/ml相当)加え、30℃で46時間作用させた。このウレアーゼ作用液を限外濾過膜『SEP−0013(分子量カットオフ3,000)』(旭化成(株)製)で濾過した。得られた濾液195mlをH形強酸性カチオン交換樹脂『SK−1B』(三菱化成工業(株)製)100mlを充填したカラムにチャージし、次いで、300mlの脱イオン水で水洗した。その後、0.2N−塩酸300mlをカラムに流して分画し、エルソン−モルガン反応陽性物質含有画分を回収した。この回収画分をエバポレーターで濃縮し、次いで、濃縮液の4倍量のエタノールを加え、4℃で3日間保持し、次いで、濾過して固形物当たりの純度が約95%(w/w)の結晶標品約100mgを回収した。得られた結晶標品は、下記に示すように、試薬D−グルコサミン・塩酸塩(キシダ化学(株)販売)をグルコサミン標準物質として比較することにより同定した。(1)TLC分析本結晶標品とグルコサミン標準物質とを前記したと同様のTLC条件で、エルソン−モルガン反応に供したところ、本結晶標品は、グルコサミン標準物質と同じRf値で、又同じ赤色のスポットとして検出された。(2)HPLC分析本結晶標品とグルコサミン標準物質とを前記HPLC条件と同じ条件で分析した。その結果、本結晶標品は、グルコサミン標準物質と同じ保持時間(13.1分)の位置に溶出した。(3)赤外線吸収スペクトルKBr錠剤法で測定した本結晶標品の赤外線吸収スペクトルを第11図に示した。このスペクトルは、第12図に示したグルコサミン標準物質の赤外線吸収スペクトルとよく一致した。これらの結果から、本実施例で得られたエルソン−モルガン反応陽性物質は、D−グルコサミンと同定された。実施例A−2 D−フラクトースからのエルソン−モルガン反応陽性物質の製造試薬特級D−フラクトース(和光純薬工業(株)製)25gを脱イオン水500mlに溶解した。アンモニアガスは、10N−カセイソーダ水溶液に30%アンモニア水を300ml滴下して発生させた。発生したアンモニアガスは室温下、常圧でD−フラクトースの水溶液に約1時間吹き込んだ。得られた反応液500mlをH形強酸性カチオン交換樹脂『SK−1B』(三菱化成工業(株)製)500mlを充填したカラムにチャージし、次いで、1Lの脱イオン水で水洗した。その後、0.2N−塩酸1.5Lをカラムに流して分画し、エルソン−モルガン反応陽性物質含有画分を回収した。この回収画分をエバポレーターで濃縮し、次いで、濃縮液の4倍量のエタノールを加え、4℃で7日間保持し、生成した結晶を濾別して結晶標品約80mg(固形物当たりの純度約96%(w/w))を回収した。本品をHPLCで分析すると共に、その赤外線吸収スペクトルを調べたところ、実施例A−1の方法で得たD−グルミサミンと同様の結果を得た。これらの結果から、本例で得られたエルソン−モルガン反応陽性物質は、D−グルコサミンと同定された。実施例A−3 D−フラクトースからのエルソン−モルガン反応陽性物質の製造試薬特級D−フラクトース(和光純薬工業(株)製)と試薬特級尿素(和光純薬工業(株)製)の各々1kgを20Lの脱イオン水に溶解し、これにバチルス属に属する微生物由来のウレアーゼ(シグマ社製)を25g加え、40℃で48時間作用させた。この酵素反応液を限外濾過膜『AIP−1010(分画分子量6,000)』(旭化成(株)製)で濾過した。得られる濾液25LをH形強酸性カチオン交換樹脂『SK116』(三菱化成工業(株)製)10Lを充填したカラムにチャージし、次いで、30Lの脱イオン水で水洗した。その後、0.2N−塩酸50Lをカラムに流して分画し、エルソン−モルガン反応陽性物質含有画分を回収した。この回収画分をエバポレーターで2Lまで濃縮し、次いで、濃縮液の6倍量のエタノールを加え、15℃で10日間保持した。生成した結晶をバスケット型遠心分離機で濾過して結晶を回収し、40℃で1夜真空乾燥して純度約96%(w/w)のエルソン−モルガン反応陽性物質を約25g得た。ウレアーゼ作用後の反応液中に含まれるエルソン−モルガン反応陽性物質に対する本品の回収率は35%であった。本品をHPLCで分析すると共に、その赤外線吸収スペクトルを調べたところ、実施例A−1で得たD−グルミサミンと同様の結果を得た。これらの結果から、本実施例で得られたエルソン−モルガン反応陽性物質は、D−グルコサミンと同定された。実施例A−4 D−マンノースからのエルソン−モルガン反応陽性物質の製造試薬特級D−マンノース(和光純薬工業(株)製)と試薬特級尿素(和光純薬工業(株)製)の各々100gを2,000mlの脱イオン水に溶解し、これにタチナタマメ由来のウレアーゼ(『Type3』(シグマ社製))を1g加え、25℃で25時間作用させた。得られた酵素作用液を限外濾過膜『AIP−1010(分画分子量6,000)』(旭化成(株)製)を用いて濾過した。この濾液をエバポレーターで300mlまで濃縮した。本濃縮液は、エルソン−モルガン反応陽性物質を無水物換算で70%(w/w)以上含有していた。実施例A−5 D−グルコースからのエルソン−モルガン反応陽性物質の製造試薬特級D−グルコース(和光純薬工業(株)製)と試薬特級尿素(和光純薬工業(株)製)の各々1kgを20Lの脱イオン水に溶解し、これにタチナタマメ由来のウレアーゼ(『Type3』(シグマ社製))を10g加え、25℃で25時間作用させた。この酵素作用液を限外濾過膜『AIP−1010(分画分子量6,000)』(旭化成(株)製)で濾過した。得られる濾液をエバポレーターで3Lまで濃縮した。本濃縮液は、エルソン−モルガン反応陽性物質を無水物換算で50%(w/w)以上含有していた。実施例B−1 錠菓実施例A−1の方法で得たエルソン−モルガン反応陽性物質(D−グルコサミン、純度約95%(w/w))60重量部を、バナナ香料粉末24重量部、2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸20重量部、結晶性トレハロース粉末(登録商標『トレハ』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)4重量部、クエン酸0.4重量部及び結晶セルロース90重量部からなる混合物と混合し、流動造粒し、打錠成形してD−グルコサミン含有錠菓(2g/錠)を得た。本品は、トレハロースによりD−グルコサミンが安定化された保存性の優れた風味良好な錠菓である。実施例B−2 飲料実施例A−2の方法で得たエルソン−モルガン反応陽性物質(D−グルコサミン、純度約96%(w/w))0.5重量部、α−グルコシルルチン0.1重量部、L−アスコルビン酸0.05重量部、結晶性トレハロース粉末(登録商標『トレハ』、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)15重量部、蔗糖2重量部、少量のレモン香料及び脱イオン水90重量部を混合し、滅菌濾過して飲料を得た。本品は、適度の酸味を有する喉ごし良好な飲料である。実施例B−3 健康食品脱脂乳10重量部を80℃で20分間加熱殺菌した後、40℃に冷却し、これに乳酸菌のスターター0.3重量部を加えて35乃至37℃で10時間発酵させた。次いで、これをホモゲナイズした後、結晶性トレハロース粉末(登録商標『トレハ』)、固形分重量当りのトレハロース含量98%以上、株式会社林原商事販売)6重量部、蔗糖1重量部、実施例A−3の方法で得たエルソン−モルガン反応陽性物質(D−グルコサミン、純度約95%(w/w))0.5重量部及び脱イオン水40重量部を加え、70℃に保って殺菌した。これを冷却した後、少量のバナナ香料を加えビン詰めして乳酸菌飲料を得た。本品は、呈味、風味共に良好で、健康を維持・増進するための健康食品、疲労回復剤などとして有利に利用できる。実施例B−4 粉末エキス実施例A−4の方法で得たエルソン−モルガン反応陽性物質含有濃縮液0.1重量部を薬用人参エキス0.5重量部、結晶性無水マルトース粉末1.5重量部及びα−グリコシル ヘスペリジン0.5重量部とを混捏した後、ブロック化し、粉末化して粉末薬用人参エキスを得た。次いで、この粉末薬用人参エキスを適量のビタミンB1およびビタミンB2粉末と共に顆粒成型機にかけ、ビタミン含有顆粒状薬用人参エキスを得た。本品は、長期間に亘って薬用人参エキスの有効成分が安定に保持された、エルソン−モルガン反応陽性物質含有薬剤として有利に利用できる。実施例B−5 化粧用クリーム実施例A−5の方法で得たエルソン−モルガン反応陽性物質含有濃縮液0.5重量部、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5重量部、無水トレハロース1重量部、α−グリコシル ルチン1重量部、流動パラフィン1重量部、トリオクタン酸グリセリル10重量部及び防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これにL−乳酸2重量部、1,3−ブチレングリコール5重量部、及び精製水66重量部を加え、ホモゲナイザーにかけて乳化し、更に香料の適量を加えて攪拌混合し化粧用クリームを製造した。本品は、抗酸化性を有し、安定性が高く、肌の老化防止剤、日焼け止め、美肌剤、色白剤などとして有利に利用できる。産業上の利用の可能性以上説明したように、本発明は、還元性糖質と尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させるか、又は還元性糖質とアンモニアとを接触させて、エルソン−モルガン反応陽性物質を生成させる新規な製造方法、当該製造方法により得られるエルソン−モルガン反応陽性物質を含有せしめる組成物の製造方法、及び還元性糖質にアミノ基を導入する方法を提供する発明である。本発明によれば、斯界に於いて有用なエルソン−モルガン反応陽性物質、及びこれを含有せしめた健康食品を含む飲食品、化粧品、医薬品、化学品等の各種組成物を工業的に安価、容易かつ安定して製造することが可能になった。とりわけ、ウレアーゼを用いるエルソン−モルガン反応陽性物質を製造する場合には、反応生成物の種類が比較的少ない上、エルソン−モルガン反応陽性物質以外の副産物の生成も少ないことから、所望のエルソン−モルガン反応陽性物質を単離し精製し易く、高品質のエルソン−モルガン反応陽性物質を工業的に容易、安価かつ安定して製造できると共に、これを含有せしめた高品質の各種組成物を工業的に容易、安価かつ安定して製造できるようになった。本発明は、斯くも優れた産業上の有用性を具備する発明であり、斯界に与える影響には多大なものがある。【図面の簡単な説明】第1図は、D−グルコースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第2図は、D−グルコースとアンモニアガスとを接触させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第3図は、D−フラクトースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第4図は、D−フラクトースとアンモニアガスとを接触させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第5図は、D−アラビノースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第6図は、D−ガラクトースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第7図は、L−ラムノースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第8図は、D−マンノースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第9図は、マルトースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第10図は、ラクトースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させた後の溶液のHPLCチャートを示す図である。第11図は、D−フラクトースと尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させて生成するエルソン−モルガン反応陽性物質の結晶標品の赤外線吸収スペクトルを示す図である。第12図は、グルコサミン標準物質の赤外線吸収スペクトルを示す図である。 還元性糖質と尿素とを含有する溶液にウレアーゼを作用させて、エルソン−モルガン反応陽性物質を生成せしめ、これを採取することを特徴とするエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 還元性糖質が、D−アルドース、L−アルドース、D−ケトース及びL−ケトースから選ばれる一種又は二種以上の還元性糖質であることを特徴とする請求項1に記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 還元性糖質と尿素とを含有する溶液が、還元性糖質と尿素とをそれぞれ1%(w/w)以上の濃度で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 還元性糖質と尿素とを含有する溶液が、還元性糖質と尿素とを無水物換算で合計5乃至60%(w/w)含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 ウレアーゼが、動物、植物及び微生物由来の天然型ウレアーゼ、及び遺伝子組換え型ウレアーゼから選ばれる一種又は二種以上のウレアーゼであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 エルソン−モルガン反応陽性物質を温度0乃至100℃の範囲から選ばれる温度条件下で生成せしめることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 エルソン−モルガン反応陽性物質を採取する方法が、活性炭による脱色・濾過、薄層クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、濃縮及び結晶化から選ばれる一種又は二種以上を含む精製方法であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 イオン交換クロマトグラフィーが、生成させたエルソン−モルガン反応陽性物質をH形強酸性カチオン交換樹脂と接触させて吸着させ、次いで水洗した後、これを酸で溶出し、得られるエルソン−モルガン反応陽性物質を採取するものであることを特徴とする請求項7記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 還元性糖質がD−フラクトースであって、エルソン−モルガン反応陽性物質がD−グルコサミンであることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法。 請求項1乃至9の何れかに記載のエルソン−モルガン反応陽性物質の製造方法により得られるエルソン−モルガン反応陽性物質を含有せしめることを特徴とする組成物の製造方法。 組成物が、飲食物、化粧品、医薬品又は化学品である請求項10記載の組成物の製造方法。