生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤
出願番号:2002537315
年次:2006
IPC分類:A61K 31/4152,A61P 19/02,A61P 21/00,A61P 25/00,A61P 25/14,C07D 231/26


特許情報キャッシュ

池田 憲 JP 3758164 特許公報(B2) 20060113 2002537315 20001113 筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療剤 三菱ウェルファーマ株式会社 000006725 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 池田 憲 JP 2000324476 20001024 20060322 A61K 31/4152 20060101AFI20060302BHJP A61P 19/02 20060101ALI20060302BHJP A61P 21/00 20060101ALI20060302BHJP A61P 25/00 20060101ALI20060302BHJP A61P 25/14 20060101ALI20060302BHJP C07D 231/26 20060101ALI20060302BHJP JPA61K31/4152A61P19/02A61P21/00A61P25/00A61P25/14C07D231/26 A61K 31/4152 A61P 19/02 A61P 21/00 A61P 25/00 A61P 25/14 C07D231/26 CAPLUS(STN) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN) 欧州特許出願公開第208874(EP,A1) 特開平3−215425(JP,A) 特開平3−215426(JP,A) 欧州特許出願公開第558861(EP,A1) The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutice,1997年,Vol.281, No.2,pp.921-927 Science,1994年,Vol.265,No.5175,pp.1107-1110 7 JP2000007994 20001113 WO2002034264 20020502 9 20051107 今村 玲英子 技術分野本発明は、運動ニューロン疾患の治療薬並びに運動ニューロン増強剤に関する。より詳細には、本発明は、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン疾患の治療薬並びに運動ニューロン増強剤に関する。背景技術運動ニューロン疾患には、一次運動ニューロン及び二次運動ニューロンの両方が障害される筋萎縮性側索硬化症(ALS)、二次運動ニューロンのみが障害される脊髄性筋萎縮症(SMA)があり、その他、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)などが知られている。これらの中でも、ALSは、中年以後に発症することが多く、数年の経過で筋萎縮、筋力低下が急速に進行し、最終的には呼吸不全等で死亡するという致死性の難病疾患であるが、その病因及び病態はまだ十分には解明されていない。ALSの主な病因としては、(1)自己免疫説(Caチャンネルに対する自己抗体の出現)、(2)興奮性アミノ酸過剰・中毒説(細胞外グルタミン酸の増加とグルタミン酸の運搬障害)、(3)酸化的ストレス障害説(Cu/Zn superoxide dismutase(SOD)遺伝子異常とフリーラジカルによる神経細胞障害)、(4)細胞骨格障害説(運動神経細胞へのneurofilamentの蓄積や封入体の出現、(5)神経栄養因子の欠損などが仮説として提唱されている。これらのALSに対する病因仮説の中で、酸化的ストレス障害説に基づき、antioxidantsがALSに有効かどうかが着目され、例えば、レシチン化SOD療法が試みられている(脳神経50(7):615-624,1998)。しかしながら、ヒト組み換え型Cu/ZnSODをALS患者に髄注投与した場合でも有効な治療効果は得られないことが判明している(脳神経50(7):615-624,1998)。また、既存のALS治療剤としては、リルゾール(特表平7−504655)(商品名:リルテック(ローヌ・プーラン・ローラー社))が存在する。この治療剤はペンゾチアゾール系化合物であり、グルタミン酸作動性神経においてグルタミン酸伝達を抑制し、神経変性に対する神経保護作用を有することが認められており、ALSを対象とした臨床試験も進められ、医薬品として承認されている。しかし、ALSに対する有効性が確認できない試験結果の報告もあり、さらに有効なALS治療剤の開発が望まれていた。発明の開示本発明の課題は、運動ニューロン疾患を治療することができる新規な医薬を提供することである。より具体的に言うと、本発明の課題は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)などの運動ニューロン疾患の進行を遅延させたり、あるいはその症状を緩和することができる新規な医薬を提供することである。本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを運動ニューロン疾患モデル動物(wobblerマウス(Ikeda K.ら、Ann.Neurol.34巻,304頁(1993年);Mitsumoto H.ら、Ann.Neurol.36巻,142-148頁(1994年);Mitsumoto H.ら、Science,265巻,1107-1110頁(1994年)))に投与した場合に、対照群に比し、前肢筋拘縮の進行および筋力の低下が遅延し、さらに上腕二頭筋の重量、筋肉繊維の平均直径および運動ニューロンの数が増加することを見い出した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。即ち、本発明によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン疾患の治療薬が提供される。本発明の好ましい態様では、本発明の治療薬は、運動ニューロン疾患の進行を遅延させるために使用される。本発明の別の側面によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン増強剤が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の有効量を患者に投与する工程を含む、運動ニューロン疾患の治療方法が提供される。本発明の好ましい態様では、本発明の治療方法は、運動ニューロン疾患の進行を遅延させるものである。本発明のさらに別の側面によれば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩の有効量を患者に投与する工程を含む、運動ニューロンを増強する方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、運動ニューロン疾患の治療薬の製造のための3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩の使用が提供される。本発明の好ましい態様では、運動ニューロン疾患の治療薬は運動ニューロン疾患の進行を遅延させる治療薬である。本発明のさらに別の側面によれば、運動ニューロン増強剤の製造のための3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又はその生理的に許容されるその塩の使用が提供される。本発明において好ましくは、運動ニューロン疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)であり、特に好ましくは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。【図面の簡単な説明】図1は、前肢の筋拘縮の程度を1〜4の4段階に分類して評価した結果を示す。上段のグラフは本発明の医薬の投与群の結果を示し、下段の3個のグラフは対照群の結果を示す。図2は、前肢筋力の測定結果を示す。図3は、右上腕二頭筋の重量の測定結果を示す。図4は、脊椎運動ニューロンの数の測定結果を示す。発明を実施するための最良の形態本発明の医薬は、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含み、運動ニューロン疾患の治療薬又は運動ニューロンの増強剤として用いられることを特徴としている。本発明の医薬において有効成分として用いる3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンは、脂質過酸化を抑制するフリーラジカルスカベンジャーの1種である。3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンは、例えば、特公平5-31523号公報第7欄の合成例に記載された方法により製造できる。上記化合物については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5-31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5-35128号公報、例1の化合物)、抗潰瘍作用(特開平3-215425号公報)、血糖上昇抑制作用(特開平3-215426号公報)、眼疾患抑制作用(特開平7-25765号公報)、急性腎不全治療・予防作用(特開平9-52831号公報)、移植臓器保存作用(特開平9-52801号公報)、皮膚組織障害の予防・治療作用(特開平10-279480号公報)、並びに移植皮膚又は移植組織の壊死防止作用(特開平11-79991号公報)が知られている。しかしながら、これらの各刊行物には、上記化合物の運動ニューロン疾患に対する作用は示唆も教示もされていない。本発明の医薬の有効成分としては、遊離形態の上記化合物の他、生理的に許容されるその塩を用いることができる。また、それらの任意の水和物又は任意の溶媒和物を用いてもよい。なお、上記化合物には特公平5-31523号公報第5欄上段の化学構造式に示されるような互変異性体が存在するが、本発明の医薬の有効成分には、これらの異性体のすべてが包含されることはいうまでもない。上記化合物の塩としては、酸付加塩または塩基付加塩を用いることができる。例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、若しくはリン酸塩などの鉱酸塩;メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、若しくはフマル酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、若しくはマグネシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;又は、エタノールアミン若しくは2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどの有機アミン塩などを用いることができるが、生理的に許容されるものであれば塩の種類は特に限定されることはない。本発明の医薬は、運動ニューロン疾患を罹患するヒトを含む任意の動物に投与することができるが、好ましくはヒトに投与される。本明細書で言う運動ニューロン疾患の治療とは、該疾患の治癒を目的とした治療のみならず、該疾患の進行を遅延することを目的とした治療、あるいは該疾患の症状の緩和・軽減を目的とした治療の全てを含む広い意味を有する。本発明で言う運動ニューロン疾患(motor neuron disease)とは、運動ニューロン障害(運動神経障害、motor neuropathy)をも包含する最も広義の意味を有する。運動ニューロン疾患は、随意運動神経系が選択的に侵される疾患群の総称である。運動ニューロン疾患は神経性の退行疾患で疾病により進行度は異なるものの増悪する傾向が強い。運動ニューロン疾患の具体例としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)等を挙げることができるがこれらに限定されるわけではない。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、中年以降に発症し、筋萎縮と線維束攣縮を主な特徴とする原因不明の疾患である。病理所見は、脊髄前角細胞および延髄運動核の変性と、錐体路の変性である。初発症状は、主として手の脱力、手指の運動障害、および上肢の線維束攣縮であるが、発症部位により上肢型、球型、下肢型および混合型に分けられる。いずれの型でも症状の進行とともに全身の筋群が侵される。脊髄筋萎縮(SMA)は、筋肉の萎縮にかかわる進行性の対称的四肢及び体幹麻痺を招く脊髄の前角細胞の変性を特徴とする、、嚢胞性線維症後の常染色体劣性障害である(6000人の新生児のうち1人)。子供のSMAは一般に、発症年齢及び臨床経過に基づいて3つの臨床グループに分類される。急性のウェルドニグ・ホフマン(Werdnig-Hoffmann)病(I型)は、重症の全身化筋肉虚弱並びに誕生時及び生後3ケ月内での緊張低下を特徴とするものであり、呼吸困難による死亡が2年以内に通常起こる。残りの2つは、中間型(II型)及び若年型(III型、クーゲルベルグ−ウェランダー(KugeIberg-Welander)障害)である。進行性球麻痺は、延髄の運動神経核の進行性萎縮に起因するもので、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄筋萎縮(SMA)と密接な関連を有する。中年以降の男性に多く発症し、時に家族性に出現する。経過の進行とともに、上位および下位運動ニューロンの変性を合併するため、最終的には筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床症状を呈するようになる。原発性側索硬化症(PLS)はALSの変種であり、高齢の散在性障害として認められる。PLSにおける神経病理上は皮質脊髄(ピラミッド)管の変性があり、これは脳幹レベルではほぼ正常であるが、それらが脊髄を下ると萎縮性が高まる。下肢は初期において、且つ最もひどく侵される。先天性多発性関節拘縮症(AMC)は先天的な関節固定(新生児3000人のうちの1人)を特徴とし、子宮内での胎児運動低下に由来する症状である。AMCは羊水過少症か、又は中枢神経系、骨格筋もしくは脊髄にかかわる様々な障害の何れかを原因とする。神経変性及び神経細胞侵食は前角において生ずるため、神経原起源のAMCは急逝脊髄筋萎縮、即ちI型SMAウェルドニグ−ホフマン障害に関連しうるものと仮定される。本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的(例えば、静脈内、筋肉内、皮下又は皮内等への注射、あるいは吸入等)に投与することができる。本発明の医薬としては、有効成分である上記化合物又はその塩をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、有効成分と薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物とを含む医薬組成物の形態の製剤として投与すべきである。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、又はシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する製剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、又は坐剤などを挙げることができる。経口投与に適する製剤には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D-マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。注射あるいは点滴用に適する製剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の製剤用添加物を用いることができる。本発明の医薬の投与量は、治療の対象となる疾患の種類、疾患の進行状況又は症状の程度、患者の年齢や体重などの諸条件に応じて適宜選択可能であるが、一般的には、成人に対して一日当たり0.01μg/kg〜10mg/kg、好ましくは0.1〜100μg/kg程度を注射または点滴により投与することが好ましい。注射剤としては、例えば、特開昭63-132833号公報に記載されたものが好適である。なお、本発明の医薬の有効成分である上記化合物は安全性が高く(マウス腹腔内投与LD502012mg/kg;ラット経口投与LD503,500mg/kg:Registry of Toxic Effects of Chemical Substances,1981-1982)、発癌性もないことが証明されている(National Cancer Institute Report,89,1978)。実施例以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されることはない。(A)材料と方法(1)動物Wobblerマウス(Ikeda K.ら、Ann.Neurol.34巻,304頁(1993年);Mitsumoto H.ら、Ann.Neurol.36巻,142-148頁(1994年);Mitsumoto H.ら、Science,265巻,1107-1110頁(1994年))を使用した。(2)薬物投与Wobblerマウスは3〜4週齢で身体が震える症状を呈し、これを発病と診断した。発病診断の直後に、罹患マウスに本発明の薬物(3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;図中ではMCI−186とも称する)(10mg/kg)または対照群としてビヒクルを、盲検法により連日4週間経口投与した。薬物の投与は生後7〜8週齢で完了し、各実験群はn=10で実施した。(3)症候学的評価前肢の筋拘縮の程度(forelimb deformity)は、1(肢の萎縮、paw atrophy)、2(足指の彎曲、curled digits)、3(足首の彎曲、curled wrists)、および4(前肢の胸側に屈曲、forelimb flexion to chest)の4段階に分類して評価した。1から4に進むにつれて症状が悪化することを示す。また、前肢の筋力(grip strength)を測定した(Ikeda,他、Neuromusc.Disord.,5(1995)383-390;K.Ikeda.他、J.Neurol.Sci.,160(1998)9-15;K.Ikeda,他、Neurosci.Lett.,250(1998)9-12;K.Ikeda.他、Muscle Nerve,18(1995)1344-1347;K.Ikeda.他、Neurol.Res.,17(1995)445-448;K.Ikeda.他、Ann.Neurol.,37(1995)505-511;K.Ikeda.他、Brain Res.,726(1996)91-97;H.Mitsumoto.他、Ann.Neurol.,36(1994)142-148:及びH.Mitsumoto.他、Science,265(1994)1107-1110)。これらの評価は、薬物投与の開始(投与前)から薬物投与の終了時まで毎週行なった。(4)右上腕二頭筋の形態学的検討薬物投与終了後に、Wobblerマウス(n=10/各群)をエーテルで麻酔し、右上腕二頭筋を解剖顕微鏡下で切除した。切除した二頭筋は正確に計量し、凍結した。10μmの連続切片を作成し、ATPase又はNADHで染色した。筋繊維の平均直径を既報の通り測定した(Ikeda,他、Neuromusc.Disord.,5(1995)383-390;K.Ikeda.他、J.Neurol.Sci.,160(1998)9-15;K.Ikeda,他、Neurosci.Lett.,250(1998)9-12;K.Ikeda.他、Muscle Nerve,18(1995)1344-1347;K.Ikeda.他、Neurol.Res.,17(1995)445-448;K.Ikeda.他、Ann.Neurol.,37(1995)505-511;K.Ikeda.他、Brain Res.,726(1996)91-97;及びH.Mitsumoto.他、Ann.Neurol.,36(1994)142-148)。(5)脊椎運動ニューロンの数右上腕二頭筋の形態学的検討に使用したWobblerマウス(n=10/各群)に、リン酸緩衝生理食塩水、続いて4%パラホルムアルデヒド/1%グルタルアルデヒド/0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を心臓内カテーテルにより灌流させた。椎弓切除を行い、頸部脊髄を解剖顕微鏡下で除去した。二頭筋を刺激する脊髄C5-6レベルを運動ニューロンの分析のために摘出後、パラフィン封埋し、横断面において8μmで連続的に切断・クレジルバイオレットで染色し、大型脊椎運動ニューロンの数を既報の通り測定した(Ikeda,他、Neuromusc.Disord.,5(1995)383-390;K.Ikeda.他、J.Neurol.Sci.,160(1998)9-15;K.Ikeda,他、Neurosci.Lett.,250(1998)9-12;K.Ikeda.他、Muscle Nerve,18(1995)1344-1347;K.Ikeda.他、Neurol.Res.,17(1995)445-448;K.Ikeda.他、Ann.Neurol.,37(1995)505-511;及びK.Ikeda.他、Brain Res.,726(1996)91-97)。(6)統計分析前肢の筋拘縮の程度のスケールはノンパラメトリックなWilcoxon符号付順位和検定により分析した。筋力、二頭筋重量、筋肉繊維の平均直径、及び運動ニューロン数の統計分析は対応のないStudent's t-検定により行なった。いずれの検定においても有意水準は両側5%とした。(B)結果(1)症候学的評価前肢の筋拘縮の程度を1〜4の4段階に分類して評価した結果を図1に示す。ベースライン(生後3〜4週齢)での評価は各群の間で差異はなかった。前肢の筋拘縮は、対照群のマウスでは進行的に悪化したが、本発明の医薬を投与することにより筋拘縮の進行は遅延した(図1)。前肢筋力の測定結果を図2に示す。筋力は、対照群では徐々に低下したが、本発明の医薬を投与することにより筋力の低下は遅延した(図2)。(2)右上腕二頭筋の重量および筋肉の形態学的検討右上腕二頭筋の重量の測定結果を図3に示す。二頭筋の重量は、本発明の医薬による処置により、対照群と比較して有意に増加した(図3)。筋肉繊維の平均直径も、対照群(平均±SEMで16.8±0.6μm、P<0.01)と比較して、本発明の医薬による処置群(平均±SEMで20.3±0.8μm、P<0.01)の方が有意に増加していた。(3)脊椎運動ニューロンの数運動ニューロンの数の測定結果を図4に示す。本発明の医薬で処置した群における運動ニューロンの数は、対照群と比較して、増加していた(図4)。(4)まとめWobblerマウスは、常染色体劣性遺伝形式を呈する運動ニューロン疾患のモデル動物である。本動物は生後3〜4週間に全身の震えで発症し、生後7〜8週間までに前肢を主体とした筋力低下や筋拘縮が急速に進行する。その後、これらの神経筋症状は緩徐に進行し寿命は約1〜1.5年間である。同マウスの神経筋病理学的な特徴は、頸髄を中心とした運動神経細胞の空胞変性、運動神経の軸索変性と骨格筋の神経原性変化である(H.Mitsumoto.他、Brain,105(1982)811-834)。従って、3〜4週齢から7〜8週齢の本マウスにおいて治療薬の神経保護作用を評価することは、運動ニューロン疾患に対する該治療剤の効果を評価する上で有用である。本実施例では、Wobblerマウスを3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンで処置することにより、前肢筋拘縮及び筋肉の弱体化が緩和し、上腕二頭筋の重量が増加することが実証された。従って、本発明の医薬は運動ニューロン疾患治療薬として有用である。産業上の利用の可能性本発明による3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む医薬は、運動ニューロン疾患の治療薬として有用である。また、本発明の医薬は、低分子化合物を有効成分として使用するため、脳への移行性が比較的良好であるという利点を有する。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン疾患治療薬。 運動ニューロン疾患の進行を遅延させるための、請求項1に記載の治療薬。 運動ニューロン疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、進行性球麻痺、原発性側索硬化症(PLS)、又は先天性多発性関節拘縮症(AMC)である、請求項1又は2に記載の治療薬。 運動ニューロン疾患が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である請求項1から3の何れかに記載の治療薬。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、運動ニューロン増強剤。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬。 3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン又は生理的に許容されるその塩を有効成分として含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行を遅延させるための治療薬。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る