タイトル: | 特許公報(B2)_植物用ベクター系 |
出願番号: | 2002532637 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 15/09,A01H 5/00,C12N 5/10 |
グレバ、ユーリ ドロコフ、ユーリィ イワノフ、ペテル アタベコフ、ヨセフ JP 4477824 特許公報(B2) 20100319 2002532637 20011008 植物用ベクター系 アイコン・ジェネティクス・ゲーエムベーハー 507254997 浅村 皓 100066692 浅村 肇 100072040 長沼 暉夫 100088926 池田 幸弘 100102897 グレバ、ユーリ ドロコフ、ユーリィ イワノフ、ペテル アタベコフ、ヨセフ DE 100 49 587.7 20001006 20100609 C12N 15/09 20060101AFI20100520BHJP A01H 5/00 20060101ALN20100520BHJP C12N 5/10 20060101ALN20100520BHJP JPC12N15/00 AA01H5/00 AC12N5/00 103 C12N 15/09 国際公開第98/054342(WO,A1) 国際公開第99/036516(WO,A1) 9 EP2001011629 20011008 WO2002029068 20020411 2004510438 20040408 52 20040930 松田 芳子 【0001】(発明の分野)本発明は、植物中の遺伝子の増幅と発現および/または抑制が可能なベクター、さらにはその使用、特にタンパク質を産生するための使用、並びに該ベクターを作成するための、方法と前駆ベクター(pro-vector)に関する。本発明はさらに、遺伝子発現系、特に薬剤学的タンパク質の発現用、または同一植物または植物細胞中の2つまたはそれ以上の遺伝子の発現用の遺伝子発現系に関する。【0002】(発明の背景)植物の遺伝子操作のためのベクターは、タンパク質の産生のために、宿主植物に新しい形質を賦与するために、宿主植物の遺伝子を抑制するために、または遺伝子、特にゲノム科学により決定される遺伝子の機能を測定するために、非常に望まれている。【0003】植物の遺伝子操作のための、ベクター、特にウイルス性ベクターは、既に知られている。これらは、遺伝子発現または抑制のための少なくとも1つの配列を有することに加えて、植物において感染、増幅および移動(細胞間および遠隔距離の両方)が可能でなければならない。先行技術のベクターは、転写要素としてサブゲノムプロモーターに基づいている。サブゲノムプロモーターは、トランスフェクションされた植物細胞において、ベクターの核酸配列の転写が、一部は該サブゲノムプロモーターで開始することにより、より短いRNAを生成させる作用を有し、従って植物翻訳機構による該プロモーターから下流の遺伝子の翻訳が、可能になる。次に、翻訳はcap依存性に進行してもよい。このような多重転写は、レプリカーゼ能力の浪費のため、動態学的に不利である。【0004】このようなベクターは、さらにいくつかの別の欠点を有する。ベクター配列へのウイルスサブゲノムプロモーターの導入は該配列を長くするために、効率が低下する。さらに、宿主での転写に充分に適応したいくつかの同一かまたは類似のサブゲノムプロモーターが存在すると、配列部分が消失されて、高頻度の組換えを引き起こし、不安定になる。これに反して、顕著に異なるサブゲノムプロモーターを使用すると、組換えは抑制されることもあるが、このようなプロモーターは、あまりに異なるため、転写系により有効に認識されないこともあり、このことは効率の消失を意味する。さらにベクターは通常、配列中に緊密に詰め込まれた、いくつかの相互依存性の機能性要素または遺伝子を含む、高度に統合された存在である。ある種の異種遺伝子などに対するベクターの機能が、多少独特でありそしてしばしば予測できない結果(特に感染性および発現に関して)を招くのは、このためである。さらに、上流遺伝子との配列の重複が存在するならば、プロモーターのための利用可能な配列のスペースは通常制限されている。【0005】従って、本発明の目的は、宿主植物中の効率的で安定な機能することができる、植物の遺伝子操作のための新規なベクターを提供することである。さらに別の目的は、植物中で遺伝子の高レベル発現が可能なベクターを提供することである。【0006】驚くべきことに、これらの目的は、発現すべき少なくとも1つの非ウイルス性遺伝子の配列を有し、かつその下流の遺伝子の翻訳に必要な少なくとも1つのIRES要素を有するかまたはコードする核酸を含む、植物中の遺伝子の増幅と発現が可能なベクターにより、達成できることが見い出された。【0007】遺伝子発現の機能のみを有する(宿主ゲノム中への組み込み後に)組換えDNA分子中で、植物IRES要素を使用することは、すでに示唆されている(WO 98/54342)。しかし、この発現レベルは低い。この低い発現レベルの正確な理由は不明である。いずれにしても発現は、形質転換されるその植物細胞に限定されており、このため植物全体における全効率は、極めて低い。【0008】驚くべきことに、植物ベクターは植物細胞中に導入されると、遺伝子発現の能力を持つだけでなく、植物全体の増幅および伝播に必要ないくつかの追加の機能を持ち、従って、全効率が極めて高い植物ベクターを構築できることが見い出された。これらの機能は、感染、増幅、細胞間移動および遠隔距離移動を含む。驚くべきことに、ベクター上の機能および構造要素の必要な高度の組み込みは、該ベクターからの遺伝子発現を障害しない。【0009】該ベクターのIRES要素は、その翻訳を直接支持するために、発現すべき非ウイルス性遺伝子の上流に位置することができる。あるいは、該IRES要素は、該ベクターの感染、増幅、ウイルス組み立て、植物細胞中のウイルス感染の発生のサイレンシングを抑制する能力、植物細胞中の代謝の方向を変える能力、および細胞間または遠隔距離移動よりなる群から選択される該ベクターの機能に必須である、別の遺伝子の翻訳を直接支持することにより、発現すべき該遺伝子の翻訳を間接的に支持してもよい。さらには該ベクターは、宿主植物の遺伝子を抑制するために、アンチセンス配向の宿主植物ゲノムの少なくとも1部分の配列を含んでもよい。【0010】さらに別の目的は、植物において遺伝子の有効な抑制が可能なベクターを提供することである。この目的は、該ベクターの増幅に必要であってIRES要素の下流に位置する遺伝子の翻訳に必要な、少なくとも1つの該IRES要素を有するかまたはコードする核酸を含み、植物中で増幅が可能なベクターにより達成されており、このベクターはさらに、宿主植物の遺伝子を抑制するために、アンチセンス配向の宿主植物ゲノムの少なくとも1部分の配列を含む。さらに別の好適な実施態様は、下位の請求の範囲に定義される。【0011】ここでは、植物活性翻訳(IRES)要素に基づく第1の植物発現と増幅ベクターが説明される。動物ウイルスから単離された既存のIRES要素は、植物細胞中での翻訳を支持できない。従って、動物発現系で蓄積された知識は植物には当てはまらない。動物IRES要素は、残存プロモーター活性のような、他の機能に関して試験されたことがないため、本発明は、その下流の遺伝子の発現に必要なサブゲノムプロモーターによる、転写ではなく翻訳にのみ基づく、植物中の遺伝子発現の最初の真正なケースを開示する。【0012】本発明のベクターは、cap依存性翻訳を抑制することにより、好ましくは植物中の目的の遺伝子の調節および優先的発現を可能にする。別の好適な実施態様では、非常に短い相同的なまたは人工のIRES要素が使用され、これによって生じるベクターの安定性が上昇する。【0013】この方法の好ましい利点は、IRES配列を、ウイルス性遺伝子(例えば、タバコモザイクウイルスのコートタンパク質遺伝子)の上流または下流に挿入することができるため、それぞれ下流の外来遺伝子またはウイルス性遺伝子の翻訳は、cap非依存性リボソーム内部侵入経路を介して起こりうる。即ち、外来遺伝子の該cap非依存性翻訳は、2シストロン性および/または多シストロン性RNAから起きる。【0014】(一般的な問題の状況と定義)植物がウイルスに感染すると、ウイルス感染の初期事象(侵入およびゲノム脱外被)が起こる。次にこのウイルスは、そのゲノムの発現および複製を可能にする活動にしなければならない。ウイルスのゲノムは、単成分のまたは多成分のRNAまたはDNA配列よりなっていてよく、そしてこれらのセグメントのそれぞれは、ある条件下で感染細胞中で複製可能である。ウイルスのレプリコンは、「ウイルス増殖サイクル中に宿主細胞中で複製されるウイルス配列の1つのポリヌクレオチド」として定義されている(フイスマン(Huisman)ら, 1992, 「植物ウイルスによる遺伝子操作」, ウィルソン(T.M.A. Wilson)とデービース(J.W. Davies)編, 1992, シーアールシープレス社(CRC Press, Inc.))。本発明において、我々は「増幅に基づく発現系」という用語を、(i)野生型親ウイルスにとって非固有の外来配列を含有し、かつこれを発現でき、(ii)それ自体で、またはヘルパーウイルスもしくはトランスジェニック植物宿主の産物による相補性の結果として複製する、完全長ウイルスゲノムまたはウイルスRNAもしくはDNAの任意の断片のいずれか、を示すために使用する。「増幅に基づく発現系」および「組換えウイルスベクター」という用語は非常に類似している。これらの系は、ウイルスゲノムに対して、同種(固有の)または外来の異種(非固有の)の追加配列を含む組換え核酸を表す。「非固有の」という用語は、この核酸配列が、ウイルスの野生型ゲノムにおいては自然発生せず、そして別のウイルスに由来するか、または人工の合成ヌクレオチド配列を表すことを意味する。ウイルス要素に由来するこのような増幅に基づく系は、複製することができ、そして多くの場合に、正常植物および/または遺伝子操作したトランスジェニック宿主植物のいずれかにおいて、細胞間移動さらには遠隔距離移動をすることができる。後者の場合に、トランスジェニック植物は、ある種の機能が欠乏しているベクターのウイルス成分を補足するはずであり、即ち、その遺伝子のベクター複製および/または発現あるいは遠隔距離移動に必須の、トランス遺伝子の産物がトランスジェニック植物により提供されるはずである。植物により提供されるであろう機能のさらに別の例は、以下のものである:ベクターの増幅、ウイルス組み立て、植物細胞中のウイルス感染発生のサイレンシングを抑制する能力、植物細胞中の代謝の方向を変える能力、および該ベクターの細胞間または遠隔距離移動。【0015】単成分(例えば、タバコモザイクウイルス、TMV)または多成分(例えば、ブロモウイルス科のメンバー)ゲノムに基づく、植物ウイルス増幅に基づくベクターは、宿主植物中で外来遺伝子を発現することが証明されている(総説については例えば、「植物ウイルスによる遺伝子操作」, ウィルソン(T.M.A. Wilson)とデービース(J.W. Davies)編, 1992, シーアールシープレス社(CRC Press, Inc.)を参照)。【0016】既知の植物ウイルスの大多数(約80%)は、遊離RNAの形でビリオンから単離されると感染性である正センス1本鎖RNA(ssRNA)ゲノムを含む。これは、ウイルス複製サイクルの最初の工程で、非感染植物細胞には存在せず、従ってウイルスRNA複製に必須であるウイルス特異的RNA依存性RNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)を産生させるために、ゲノムRNAが翻訳されなければならないことを意味する(総説に関しては、オカダ(Y. Okada), 1999, Philosoph. Transact. of Royal Soc., B, 354, 569-582を参照)。正センスssRNAウイルスは、ゲノム発現のために使用される翻訳方法において異なることを言及する:いわゆるピコルナ様ウイルスのゲノムは、リボソームにより翻訳されて大きなポリタンパク質になり、次にこれは、ウイルスにコードされる機能的に活性なタンパク質へとタンパク分解的にプロセシングされる、単一の連続する読み取り枠(ORF)を示す。このウイルス特異的プロテイナーゼは、ポリタンパク質プロセシングに関与する。ピコルナ様ウイルスの第2の独特な特色は、これらのゲノムRNAが、cap構造の代わりにゲノムの5’末端に共有結合した小ウイルス性タンパク質を含むことである。【0017】本発明において我々は、最も好ましくは、多くの植物ウイルス、特に、トバモウイルス(Tobamovirus)属に属する十種を超えるウイルスを含む、いわゆるシンドビス(Sindbis)様スーパーファミリーのウイルスに焦点を合わせる(総説に関しては、ギブス(A. Gibbs), 1999, Philosoph. Transact. of Royal Soc., B, 354, 593-602を参照)。この技術は、外来遺伝子のcap非依存性およびウイルスプロモーター非依存性発現を保証する。【0018】トバモウイルス(TMV U1は、この型のメンバーである)のゲノムは、4つの大きなORFを含む。レプリカーゼの2つの成分(130kDa およびその読み過し183kDa タンパク質)は、ゲノムRNAの5’近位領域によりコードされ、そしてゲノムRNAから直接翻訳される。TMV U1の180kDa タンパク質遺伝子の3’末端の15ヌクレオチドは、TMV感染の細胞間移動を担う30kDa タンパク質(移動タンパク質、MP)をコードするORFと重複する。TMV U1において、この遺伝子は、(TMV U1中の)204ヌクレオチドよりなる3’近位非翻訳領域(3’−NTR)の上流に位置する17kDa コートタンパク質(CP)をコードする最後の遺伝子の開始コドンの前の2つのヌクレオチドを終わらせる。【0019】トバモウイルスのRNAの翻訳は、大多数の真核生物mRNAに共通のリボソームスキャニング機構により起こる(総説に関しては、コザック(Kozak), 1989, J. Mol. Biol. 108, 229-241;パイン(Pain), 1996;メリック(Merrick)とハーシェイ(Hershey), 1996, 「翻訳制御」, ハーシェイ(Hershey), マシューズ(Matthews)とゾーネンバーグ(Sonenberg)編, コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbour Press), pp.31-69;サックス(Sachs)とバラニ(Varani), 2000, Nature Structural Biology 7, 356-360を参照)。この機構によると、構造的に多シストロン性のトバモウイルスRNAは、機能的にモノシストロン性、即ち複製タンパク質(130kDa タンパク質およびその読み過し産物)をコードする5’近位ORFだけが、完全長ゲノムRNAから翻訳することができる(パルカイチス(Palukaitis)とザイトリン(Zaitlin), 1986, 「植物ウイルス」, ファンレーゲルモーテル(van Regermortel)とフレンケル−コンラット(Fraekel-Conrat)編, vol.2, pp.105-131, プレナムプレス(Plenum Press), ニューヨーク州の総説がある)。オメガ(Ω)と呼ばれるTMV U1の68ヌクレオチドの5’末端非翻訳リーダー配列が、5’近位ORFの翻訳を刺激する効率的な翻訳エンハンサーの役割を果たすことが証明されていることを強調しておく。【0020】5’遠位MPおよびCP遺伝子は、完全長TMV U1 RNAにおいて翻訳上サイレントであるが、これらは、サブゲノムRNA(sgRNA)と呼ばれる別々のmRNAから翻訳される。明らかにトバモウイルスsgRNAは、負センスゲノムRNAから転写され、共通の3’末端を共有する。sgRNAから翻訳されるTMV遺伝子の発現は、量的および時間的に両方とも独立に調節される:MPは、感染の初期工程において一時的に産生され、比較的低いレベル(全植物タンパク質の約1%)まで蓄積するが、一方CPは、全植物タンパク質合成の70%までを占め、そしてCPは、全細胞タンパク質の10%まで蓄積する(フレーザー(Fraser), 1987, 「ウイルス感染植物の生化学」, pp.1-7, リサーチスタデイズプレス社(Research Studies Press Ltd.), レッチワース(Letchworth), イングランド)。【0021】各sgRNAの産生は、「サブゲノムmRNAプロモーター」(sgPR)と呼ばれる異なるシス作用性配列により制御されることは明らかである。一般に、この用語は、sgRNAを産生するために内部に位置するsgPR配列から転写を開始するために、レプリカーゼ複合体により認識可能であるウイルスゲノムの領域(恐らく負センスRNAコピー中)を示す。しかし便宜上、「サブゲノムプロモーター」という用語により、我々は従来から、通常、コード配列およびsgRNAの開始点の上流に位置し、そしてsgRNA合成の開始に機能的に関係する、正センスウイルスRNA中のヌクレオチド配列を意味する。しかし、いくつかのウイルスのsgPRは、制御されたウイルス遺伝子の上流に位置するだけでなく、この遺伝子と重複してもよいことを考慮すべきである(バルモリ(Balmori)ら, 1993, Biochimie (Paris) 75, 517-521)。各sgPRは、TMVゲノム中の異なる位置を占める。TMVのsgPRはいずれも正確にはマッピングされていないが、CP遺伝子の上流の250ヌクレオチドは、CPsgRNAの合成を促進することが証明されている(ドーソン(Dawson)ら, 1989, Virology 172, 285-292)。【0022】レト(Lehto)ら(1990, Virology 174, 145-157)は、CPsgPRのサイズを推定するために、TMVゲノムに(MP遺伝子の前に)CP遺伝子に先行する配列(253および49ヌクレオチド)を挿入した。この挿入は、未変性MPsgPRを除去しなかったが、これをMP ORFから分離した。挿入した253ntプロモーター領域を持つ変異体(KK6と呼ばれる)は安定に複製され、感染植物体全体に移動した。KK6変異体では、この挿入が、MPsgRNAリーダーの長さを変えることは、予想外ではなかった(レト(Lehto)ら, 1990, Virology 174, 145-157)(図9を参照)。CPsgRNAは9塩基対であったのに対し、KK6 MPsgRNAリーダーは、24ヌクレオチドであった。【0023】これとは対照的に、プロモーター領域の挿入された49nt断片を持つ変異体は、一時的にのみ複製し、その後、挿入配列の欠失した野生型ウイルスの子孫が増えた。さらに、CPsgPR由来の96nt領域を使用した時、CPsgRNAの産生が減少したことが証明されている(メシ(Meshi)ら, 1987, EMBO J., 6, 2557-2563)。CP遺伝子の上流の49〜96nt配列は、TMV U1 CP遺伝子の全sgPRを含まなかったが、一方250nt配列は、完全なsgPRを含んでいたと結論づけられる。【0024】TMV MP遺伝子の発現を制御するsgPRの構造およびマッピングに関する情報はほとんどない。推定MPsgPR配列は、183kDa レプリカーゼタンパク質と重複するために、MPsgPRの突然変異分析は、複雑であった。最近報告されたドーソン(W. Dawson)と共同研究者の予備実験結果は、最小および完全長のTMV U1のMPsgPRの境界を明確にした(グルゼリシュビリ(Grdzelishvili)ら, 2000, Virology 276, 印刷中)。MP遺伝子の上流の領域のコンピュータ折り畳みにより、MP遺伝子のAUGコドンに先行する75nt領域に対して5’近位に位置する、2つのステム−ループ構造が明らかになった。【0025】ゲノムRNAおよびCPsgRNAとは対照的に、MP遺伝子のsgRNA(いわゆるI2 sgRNA)は、cap構造がないことが推定される(総説に関しては、オカダ(Okada), 1999, Philosoph. Transact. of Royal Soc., B, 354, 569-582を参照)。本発明は、TMV U1およびcrTMV両方のI2 sgRNAにcap構造が存在しないことを確認する結果を提供する(図7)。【0026】ドーソン(W. Dawson)と共同研究者により、ベクターウイルスからの外来遺伝子の発現に影響を及ぼす重要な因子は、ウイルスゲノムの3’末端に対する外来遺伝子の位置であることが証明されている:発現の効率は、遺伝子が3’末端の近くに入れられると劇的に増大した(クルバー(Culver)ら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 2055-2059)。最も高率に発現した遺伝子は、3つのシュードノットとこれに続くtRNA様構造よりなる、3’−NTR(TMV U1 RNA中)に近接したCPの遺伝子である。3末端に対するよりもむしろシュードノット(pseudoknots)に対する遺伝子の近接性が、外来遺伝子の発現を増大させる主要な因子であることが示唆された(シブプラサド(Shivprasad)ら, 1999, Virology 355, 312-323)。TMVsgPR構造の多くの重要な側面は、ドーソン(W. Dawson)グループの努力によって明らかになったが、これらの著者の一般的結論は、「我々はまだ、ベクター構築の経験的な段階にいる」であった(シブプラサド(Shivprasad)ら, 1999, Virology 355, 312-323)。【0027】上記のことは、TMVゲノムの5’遠位遺伝子が、完全長RNAにおいて翻訳上サイレントであるため、sgRNAの合成は、これらの遺伝子の発現に必須であることを証明している。サブゲノム化による遺伝子の内因化の機構は、真核生物リボソームが、多シストロン性mRNAから5’遠位遺伝子の翻訳を開始できないことを克服するために、TMVにより使用される方法とみなすことができる。伝統的リボソームスキャニングモデル(コザック(Kozak), 1999, Gene 234, 187-208)では、多シストロン性真核生物mRNAの内部遺伝子は、リボソームに近づけない。【0028】最近、我々は、オレラチア・オフィチナリスL(Oleracia officinalis L.)植物から、クリーシファー感染性トバモウイルス(crTMV)を単離した。crTMVの特色は、アブラナ科(Brassicaceae)のメンバーの植物体全体に感染するその能力であった。さらに、このウイルスは、ナス科(Solanaceae)の植物およびTMV U1に感受性の他の植物を、植物体全体に感染することができた。crTMVのゲノム(6312ヌクレオチド)は配列決定(ドロコフ(Dorokhov)ら, 1994, FEBS Letters 350, 5-8)され、そして122kDa (ORF1)、178kDa (ORF2)、122kDa タンパク質の読み過し産物、30kDa MP(ORF3)、および17kDa CP(ORF4)のタンパク質をコードする4つの伝統的ORFを含むことが証明された。crTMV RNAの唯一の構造的特色は、他のトバモウイルスと異なり、crTMVのMPおよびCP遺伝子のコード領域が、75ヌクレオチドだけ重複していること、即ちCPコード領域の5’近位部分もまた、MPのC末端部分をコードすることであった。【0029】本明細書および請求の範囲の明白かつ一貫した理解を提供するために、このような用語に対して本明細書で与えられる範囲を含めて、以下の定義が提供される:【0030】近接した:所定配列に対してすぐ横の5’または3’のヌクレオチド配列にある位置。増幅ベクター:宿主細胞中に導入されると、そこで複製できる遺伝子ベクター。アンチセンス機構:翻訳されるmRNAの少なくとも一部に相補的なRNA分子の細胞内の存在による、タンパク質へのmRNAの翻訳の速度の制御に基づく遺伝子調節。キメラ配列または遺伝子:少なくとも2つの異種部分に由来するヌクレオチド配列。この配列は、DNAまたはRNAを含んでよい。【0031】コード配列:転写および翻訳されると、細胞内ポリペプチドを生成させるデオキシリボヌクレオチド配列、または翻訳されると細胞内ポリペプチドを生成させるリボヌクレオチド配列。適合性:系の他の成分と共に機能できること。宿主と適合性のベクターまたは植物ウイルス核酸は、その宿主中で複製できるものである。ウイルス性ヌクレオチド配列と適合性のコートタンパク質は、そのウイルス性配列をキャプシド化できるものである。【0032】遺伝子:別々の細胞性産物の基である別々の核酸配列。発現すべき遺伝子:発現すべき技術的に関係する遺伝子。宿主:ベクターまたは植物ウイルス核酸を複製することができ、そしてそのウイルスベクターまたは植物ウイルス核酸を含むウイルスで感染させることができる、細胞、組織または生物。この用語は、適宜、原核生物および真核生物細胞、器官、組織または生物体を含むことが意図される。宿主植物ゲノム:この用語は、好ましくは宿主植物細胞の核ゲノムを意味するが、またミトコンドリアまたはクロロプラストDNAを含んでもよい。感染:ウイルスまたは増幅に基づくベクターの、その核酸を宿主に移動させるか、または核酸を宿主に導入する能力であって、そしてそこでウイルス核酸またはベクターが複製し、ウイルス性タンパク質が合成され、そして新しいウイルス粒子が組み立てられる。これに関連して、「伝染性」および「感染性」という用語は、本明細書では互換的に使用される。【0033】リボソーム内部侵入部位(IRES)要素、またはIRES:翻訳の段階で内部開始の基になる、ウイルス、細胞または合成起源のヌクレオチド配列。その下流の遺伝子の翻訳に必要なIRES要素:このようなIRES要素なしには、この遺伝子の技術的に有意な翻訳は起こらないという意味で、該遺伝子の翻訳に有効なIRES要素。非ウイルス性遺伝子:ウイルスの生活環には機能しない遺伝子。表現型形質:遺伝子の発現により生じる観察可能な性質。植物細胞:プロトプラストおよび細胞壁からなる、植物の構造的および生理的単位。植物器官:根、幹、葉または胚のような、植物の別個の視覚的に識別される部分。植物組織:生育または栽培する植物の任意の組織。この用語は、植物体全体、植物細胞、植物器官、プロトプラスト、細胞培養物、または構造的および機能的単位に組織化した植物細胞の任意の群を含むことが意図される。産生細胞:ベクターまたはウイルス性ベクターを複製することができるが、そのウイルスにとって必ずしも宿主ではない、組織または生物体の細胞。この用語は、細菌、酵母、真菌および植物組織のような、原核生物および真核生物細胞、器官、組織または生物体を含むことが意図される。【0034】プロモーター:コード配列の転写の開始に関係している、コード配列の上流に機能的に連結されている5’非コード配列。プロトプラスト:細胞培養物または植物体全体に再生する能力を有する、細胞壁のない単離した植物細胞。組換え植物ウイルス核酸:非固有の核酸配列を含むように修飾されている、植物ウイルス核酸。組換え植物ウイルス:組換え植物ウイルス核酸を含む、植物ウイルス。【0035】レポーター遺伝子:その遺伝子産物を容易に検出できる、遺伝子。サブゲノムプロモーター(sgPR):ベクターまたはウイルス核酸のサブゲノムmRNAのプロモーター。実質的配列相同性:相互に実質的に機能的に同等であるように相同なヌクレオチド配列を意味する。実質的配列相同性を有するこのような配列の間のヌクレオチドの差は、このような配列によりコードされる遺伝子産物またはRNAの機能への影響が最小であろう。【0036】転写:DNA配列の相補的コピーとしての、RNAポリメラーゼによるRNA分子の産生。翻訳:リボソームによるポリペプチドの産生(しばしばメッセンジャーRNAのスキャニングによる)。【0037】ベクター:宿主細胞を遺伝子操作することができる核酸。ベクターは、1本鎖(ss)(+)、ss(−)または2本鎖(ds)であってよい。ウイルス:タンパク質中にキャプシド化された核酸を含む、感染性因子。ウイルスは、モノ−、ジ−、トリ−または多成分性ウイルスであってよい。【0038】(本発明の利点)本発明は、外来(異種、非先天的)遺伝子発現のための増幅に基づくベクターを作成するための新規な方法(これらの遺伝子の翻訳は、多シストロン性RNAからIRES介在性リボソーム内部侵入機構により、かつ/または感染細胞中のベクターから産生される2シストロン性および多シストロン性のsgRNAからIRES介在性cap非依存性リボソーム内部侵入機構により、起こりうる)を提供する。いずれの事象においても、IRES要素は、遺伝子の翻訳に必要である。この方法の利点の1つは、sgPRに関してどのような特別な操作も必要としないことである:ベクター中に挿入すべき唯一の配列は、翻訳すべき遺伝子の上流のIRES配列(固有のおよび/または非固有の)である。その結果、下流の遺伝子の翻訳は、挿入されたIRES配列により促進される、即ちこの翻訳は、cap非依存性である。IRES要素を収容する配列セグメントは、好ましくは技術的に有意なほどにはサブゲノムプロモーターとして機能しない。このことは、この配列セグメントが、対応するサブゲノムRNAの検出可能な産生を引き起こさないか、または該配列セグメントの任意の残存サブゲノムプロモーター活性により形成されても、任意のこのようなサブゲノムRNAの翻訳のために、このIRES要素は、下流の遺伝子の翻訳にやはり必要であることを意味する。従って、特別な場合には、ベクターにより産生される第1次の組換えRNAは、以下を含む:好ましくはウイルス起源の1つまたはそれ以上の構造遺伝子、該IRES配列、IRESの下流に位置する目的の(外来)遺伝子、および3’−NTR。この方法により、直列の2つ(またはそれ以上)の外来遺伝子(それぞれが、別々のIRES配列により制御される)の挿入により、2つ以上の外来遺伝子の同時発現が可能になることは重要である。本発明は、好ましくは、ウイルスゲノムまたはそのサブゲノムRNAまたは非固有の(外来)核酸配列のcap非依存性発現を特徴とし、そして追加の植物特異的IRES要素を介して、宿主植物で植物体全体でこのような外来配列を発現することができる、核酸および組換えウイルスに関する。【0039】第1の好適な実施態様において、固有のコートタンパク質コード配列および固有のCPサブゲノムプロモーターが、ウイルス核酸から欠失しており、そして植物ウイルスIRES要素が上流に位置する非固有の植物ウイルス性コートタンパク質コード配列が挿入されている植物ウイルス核酸が提供されており、このため宿主植物中のcap非依存性発現が可能になるが、一方組換え植物ウイルス核酸のパッケージング、およびこれに続く組換え植物ウイルス核酸による宿主の植物体全体の感染が維持される。【0040】組換え植物ウイルス核酸は、翻訳要素として機能し、そして転写活性のない(即ち、サブゲノムプロモーターとして有効に機能できない)、1つまたはそれ以上の追加の固有のまたは非固有のIRES要素を含んでもよい。各固有のまたは非固有のIRES要素は、宿主植物において隣接遺伝子または核酸配列のcap非依存性発現を提供することができる。【0041】第2の好適な実施態様において、外来核酸配列の上流に位置する固有のまたは非固有の植物ウイルスIRES要素が、固有のコートタンパク質遺伝子の下流に挿入された増幅および発現ベクターが提供される。挿入された植物ウイルスIRES要素は、宿主植物の隣接遺伝子のcap非依存性発現を指令する。非固有の核酸配列を、その配列が宿主植物中で、IRES要素の転写制御下で発現されて所望の産物を合成するように、IRES要素に隣接して挿入してもよい。【0042】第3の好適な実施態様において、組換えベクターの核酸が、第2の実施態様と同様に提供されるが、下流に存在する外来の核酸配列を有する固有のまたは非固有の植物ウイルスのIRES要素は、固有のコートタンパク質のサブゲノムプロモーターとコートタンパク質遺伝子の上流に挿入される。【0043】第4の好適な実施態様において、固有のまたは非固有の植物ウイルスのIRES要素が、下流の遺伝子の翻訳をcap非依存性とするように、ウイルスゲノムまたはウイルスサブゲノムRNAの5’末端で使用される、組換えベクター核酸が提供される。【0044】第5の好適な実施態様において、該ベクターからのcap非依存性翻訳のレベルを上昇させるために、cap依存性翻訳が使用されている。ウイルスに基づく増幅ベクターは、組換え植物ウイルスを産生するために、組換え植物ウイルス核酸によりコードされるコートタンパク質によりキャプシドに包まれる。組換え植物ウイルス核酸は、宿主中で複製され、宿主中で全体に広がり、かつ宿主中で外来遺伝子のcap非依存性発現またはウイルスゲノム全体またはサブゲノムRNAのcap非依存性発現をして、所望の産物を産生することができる。そのような産物には、特に限定されないが、酵素、複合生物分子、またはポリペプチド、またはアンチセンス産生に由来する形質もしくは産物のような治療的および他の有用なポリペプチドを含む。【0045】産生されるタンパク質の具体例には、抗体、抗原、受容体アンタゴニスト、神経ペプチド、酵素、血液因子、第VIII因子、第IX因子、インスリン、プロインスリン、ソマトスタチン、血液アルブミン、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、造血因子(例えば、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、インターロイキン3、インターロイキン11、トロンボポエチン、エリスロポエチンなど)がある。【0046】好ましい入力形質の例は、除草剤に対する耐性、昆虫に対する耐性、真菌に対する耐性、ウイルスに対する耐性、細菌に対する耐性、非生物的ストレスに対する耐性、および改良されたエネルギーと物質利用である。好ましい出力形質の例は、改質された炭水化物、改質された多糖、改質された脂質、改質されたアミノ酸含有率と含有量、改質された2次代謝物、および薬剤学的タンパク質であり、酵素、抗体、抗原などを含む。形質制御成分の例は、遺伝子スイッチ、遺伝子発現の制御、雑種の種子生産の制御、および無配偶生殖の制御である。【0047】本発明はまた、植物細胞(および、おそらく酵母または動物細胞でも)で目的の遺伝子のcap非依存性かつプロモーター非依存性発現を提供する、人工の非固有のIRES要素(生きている生物から単離されたIRESではない)の作成法に関する。人工のIRES要素は、いくつかの塩基の含量(特にアデニンとグアニン塩基の含量)に基づいて作成される(例14を参照)。IRESが単離される生きた生物の例は、動物ウイルスと植物ウイルスである。動物ウイルスの例は、C型肝炎ウイルス、感染性気管支炎ウイルス、ピコルナウイルス(例えば、ポリオウイルスと脳心筋炎ウイルス)およびレトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスおよびハービーマウス肉腫ウイルス)である。植物ウイルスの例は、ジャガイモウイルスX、ポティウイルス(例えば、ジャガイモウイルスYおよびターニップモザイクウイルス)、トバモウイルス(例えば、クリーシファー(crucifer)感染性トバモウイルス)、およびコモウイルス(カウピーモザイクウイルス)である。あるいは、固有のIRESは、アンテナペディアホメオティック遺伝子、ヒト繊維芽細胞増殖因子2、翻訳開始因子eIF−4G、またはエヌ・タバクム(N. tabacum)熱ショック因子1から得られるような、植物または動物細胞メッセンジャーRNAから単離される(例14を参照)。人工のIRESまたは植物と動物からのIRES要素に基づくIRESは、あまり顕著にサブゲノムプロモーター活性を示さない。そのようなIRESは、上記実施態様において植物ウイルスIRES要素の代わりに使用される。【0048】第6の好適な実施態様において、真核細胞(酵母、動物細胞および植物細胞を含む)の18S rRNAに対する相補性に基づいて、人工の非固有のIRES要素が作成される。第7の好適な実施態様において、アデノシン/グアノシン塩基の繰り返しの短いストレッチに基づいて、人工の非固有のIRES要素が作成される。本発明の第8の好適な実施態様において、植物細胞中でのウイルスゲノム発現が、植物特異的人工の転写プロモーターの制御下で起きる、ウイルスに基づく増幅ベクターの作成法と使用法が提供される。さらに具体的な実施態様において、植物起源の固有のIRESのセグメントであるかまたはこれを含むIRES要素が、本発明のベクターと方法で使用される。【0049】本発明の第9の好適な実施態様において、ウイルスに基づく増幅ベクターの構築法と使用法が提供され、このベクターは、1次核転写体プロセシングの結果として植物細胞中で形成されるレプリコンからの発現を可能にする。本発明の第10の好適な実施態様において、植物中での外来遺伝子のcap非依存性発現のための、環状1本鎖ウイルスに基づく増幅ベクターの使用法が提供される。【0050】本発明の第11の好適な実施態様において、cap非依存性翻訳を促進する条件下で、細胞中で目的の遺伝子の発現を可能にする方法が提供される。ある例では、増幅ベクターで感染される細胞が、cap依存性翻訳を阻害する化合物で処理される。別の例では、ベクター自体が、その生成物が宿主中のcap依存性翻訳に対して阻害作用を有する遺伝子、または該機能を有するアンチセンス配列を含有する。【0051】本発明の第12の実施態様において、インビボ遺伝子選択を使用することにより、発現ベクター中で目的の遺伝子またはレポーター遺伝子のcap非依存性発現を提供するIRES配列を同定することを可能にする方法が記載される。【0052】第13の実施態様において、ベクター中の配列の繰り返しを避け、ベクターの安定性を上昇させるために、本発明のベクターは、異なるウイルスから得られる配列から組み立てられる。この実施態様は、例13で例示される。【0053】第14の実施態様において、本発明のベクターまたは前駆ベクターと、該ベクターの増幅と発現を支持する固有のまたは遺伝子操作した植物とを含む、遺伝子発現系が提供される。該系は好ましくは、薬剤学的タンパク質(例えば、抗体、抗原、受容体アンタゴニスト、神経ペプチド、酵素、血液因子、第VIII因子、第IX因子、インスリン、プロインスリン、ソマトスタチン、血液アルブミン、組織型プラスモノーゲンアクチベーター、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、造血因子(例えば、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、インターロイキン3、インターロイキン11、トロンボポエチン、エリスロポエチンなど))の発現を支持する。【0054】さらに好ましくは該系は、同じ植物細胞または同じ植物中の2つ以上の遺伝子の発現を提供する。あるいは該遺伝子発現系は、本発明の1つ以上のベクターもしくは前駆ベクターの送達を支持するアグロバクテリウム(Agrobacterium)仲介宿主系をさらに含んでよい。該アグロバクテリウム(Agrobacterium)仲介宿主は、発現すべき遺伝子の発現に必要なまたは好適な他の形質の、輸送と一過性もしくは安定な発現を、さらに支持してもよい。【0055】(発明の詳細な説明)本発明の第1の目的は、外来(異種、非固有)遺伝子発現のための増幅に基づくベクターの新規構築法を提供して、多シストロン性のゲノムウイルスRNAから、および/または増幅ベクター(好ましくは植物細胞中のウイルスベクター)により産生される2シストロン性および多シストロン性のsgRNAからの、IRES介在cap非依存性内部リボゾーム侵入機構により、これらの遺伝子の翻訳が起きるようにすることである。【0056】植物での外来遺伝子の導入と発現のための組換え植物ウイルスRNAの構築と増幅に基づくベクターの作成は、多くの著者により、異なる分類群に属するウイルスのゲノムを使用して証明されている(総説については、「植物ウイルスを用いる遺伝子工学(Genetic Engineering With Plant Viruses)」、1992年、ウィルソン(Wilson)とデービース(Davies)編、シーアールシープレス社(CRC Press, Inc.)を参照)。トバモウイルスは、ウイルスベクターの構築のための便利な対象であると考えられる。ドンソン(Donson)ら(米国特許第5,316,931号;5,589,367号および5,866,785号)は、宿主植物中で異なる外来遺伝子を発現することができるTMVに基づくベクターを作成した。すなわち、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、α−トリコサンチンおよびいくつかの他の外来遺伝子が、TMV CPのサブゲノムプロモーター(sgPR)に隣接して挿入された。ドンソン(Donson)ら(1993年、PCT WO93/03161)は、トバモウイルスに基づいて、「固有の植物ウイルスサブゲノムプロモーターと、少なくとも1つの非固有の植物ウイルスサブゲノムプロモーターと、および植物ウイルスコートタンパク質をコードする配列とを含む組換え植物ウイルス核酸であって、該非固有の植物ウイルスサブゲノムプロモーターは、宿主植物中で隣接核酸配列の転写を開始することができ、組換え植物ウイルス核酸サブゲノムプロモーターと組換えすることができず、該組換え植物ウイルス核酸は、宿主植物で全体に感染することができる、組換え植物ウイルス核酸」を開発した。【0057】ドンソン(Donson)らの技術と異なり、本発明は、ウイルスレプリコンに基づく植物発現系を構築するために、sgPRに関係しない。sgPRの代わりに、我々の技術は、起源の異なる(ウイルスについて固有のまたは非固有の)IRES配列を操作し、その配列は、sgPR活性が効果的に欠如し、効果的にsgRNA産生を促進しない。従ってこれらのIRES配列は、sgPRの非機能性セグメントであっても、sgPRと見なすべきではない。【0058】cDNAクローンのインビトロ転写後に得られる完全長ウイルスRNAのcapの無い転写体は、一般的に完全な植物と単離されたプロトプラストに対して非感染性であると一般に考えられている。従って、ウイルス発現ベクターRNA転写体のキャッピングは、インビトロ転写体感染性の必要条件であると、一般に見なされる。capのあるRNA転写体は、植物へのウイルスベクターRNAの導入に一般的に使用される。ある場合には、ウイルスRNAは、インビトロ組み立ての簡単な方法を使用して、コートタンパク質によりキャプシドに包まれる。すなわち、ベクターRNAを含有するTMVウイルス粒子ならびに偽ウイルス粒子は、CPおよびインビトロ転写体または精製した真のウイルスRNAから、容易に産生することができる。約15年前、メシ(Meshi)ら(1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 5043-5047)により、インビトロで産生された完全長TMV RNAのcapの無い転写体は、cap類似体の非存在下で感染性であるが、その特異的感染性は非常に低いことが証明されている。【0059】本発明では、TMV CPで再組み立てされたcapの無い発現ベクターRNAは、その低い感染性を克服するために、植物接種物中で使用することができる。本発明に記載の少なくとも1つの追加のアプローチは、cap非依存性植物ウイルスベクターを用いる植物感染の技術的可能性を開く、これは、適当なDNAプロモーターの制御下で、ウイルスベクターの完全長1本鎖(ss)DNAのコピーを挿入する方法である。宿主植物に組換えウイルスDNAを接種後、植物ウイルスベクター(これは複製可能であり、植物全体に広がることができる)の感染性完全長RNAが産生されるであろう。すなわち、これらの方法は、IRES配列により促進される外来遺伝子のcap非依存性発現の事実とともに、両方のプロセス(すなわち、宿主植物接種と外来遺伝子発現)を完全にcap非依存性とする。【0060】本発明の重要な好適な目的は、CP遺伝子と3’NTRの間に挿入される「IRES−外来遺伝子」ブロックを用いる、一連のcrTMVゲノムに基づくウイルスベクターの作成である。2つの異なるレポーター遺伝子(GUSとGFP)と組合せて、種々のIRESと制御配列を使用した(図2を参照)。本発明のユニークな特徴は、ウイルスsgPR配列の外に位置する外来遺伝子は、感染された植物中で、ベクターにより産生されたゲノムおよびsgRNAの3’近位からcap非依存性に発現されたことである。特に、crTMVsgRNA I2 の5’非翻訳リーダー配列の3’末端部分であるIRESMP,75CR配列は、ウイルスベクターで感染された植物中で3’近位外来遺伝子のcap非依存性発現を仲介するのに効率的であった。該crTMVに基づくウイルスベクターは、感染植物中で3種類のウイルスとセンスssRNAを産生する:i)完全長ゲノムRNA、ii)3シストロン性I2 sgRNA(我々のデータは、完全長RNAと異なり、後者のsgRNAがcapの無いことを示す。)、およびiii)第1のCP遺伝子と第2の外来遺伝子とを含有する2シストロン性sgRNA。従って、これらのすべてのRNAは、3’末端が共通であり、capのある(完全長かつ2シストロン性)またはcapの無い(3シストロン性)RNAからの3’近位遺伝子のcap非依存性翻訳が、その前のIRES配列により促進される。【0061】ウイルスに基づくベクターの1つの重要な特徴は、その安定性である。しかし外来遺伝子を有するTMVに基づくベクターは、通常野生型ウイルスにより全体に感染することができる植物中で、篩部を介して効率的に移動することはない。これは、組換えウイルスRNAの長さの増加、および/または繰り返し配列の存在(このため、組換えと欠失が起きて、野生型ウイルスへの復帰が起きることがある)が原因かも知れない。子孫集団の野生型ウイルスへの変換は、感染された葉の全体で起きる。そのような組換えを抑制する1つの可能性は、異なる起源(例えば、例13に例示するようなウイルス起源)の配列要素を使用することである。ウイルスに基づくベクターの1つの重要な特徴は、外来タンパク質遺伝子の発現レベルとタンパク質蓄積のレベルである。ベクターは、SDS−PAGEで染色されたGUSに対応して容易に視覚化されるバンドを産生することができる。【0062】宿主植物中で外来配列を発現することができる増幅に基づくベクターの構築に適した技術が、異なるウイルスゲノムに基づいて開発されている(例えば、デッラ−チオッパ(Della-Cioppa)ら、1999年、PCT WO99/36516を参照)。これらの発明の主要な特徴は、組換え植物ウイルス核酸は、「宿主植物中で隣接核酸配列を転写または発現することができる、1つ以上の非固有のサブゲノムプロモーターを含有する。この組換え植物ウイルス核酸をさらに改変して、固有のコートタンパク質をコードする配列のすべてまたは一部を欠失させ、固有のまたは1つの非固有の植物ウイルスサブゲノムプロモーターの制御下で、非固有のコートタンパク質とコードする配列を含有させるか、または固有のコートタンパク質をコードする配列を非固有の植物ウイルスサブゲノムプロモーターの制御下に置いてもよい」ことである。すなわち、その発明の最も重要な要素は、ウイルスベクターにより人工のsgRNA産生のために使用される、固有のおよび非固有のsgPR配列である。本発明を他の発明から区別する重要な特徴は、WO99/36516では、外来遺伝子は必ずsgPR配列の直接下流に位置することが必要であり、すなわち宿主植物中でウイルスベクターにより産生されるキメラsgRNAの5’近位に位置する必要がある。これに対して我々の発明は、外来遺伝子が、3’近位に、またはベクターにより産生される機能活性のあるキメラsgRNA内に位置するように、外来遺伝子を、少なくとも1つ(またはそれ以上)のウイルスゲノムによりsgPR(もし存在するなら)から分離されることを、提唱する。すなわち、外来遺伝子発現は、野生型ウイルスの固有のまたは非固有のIRES配列により促進される。【0063】本発明の次の好適な目的は、真核生物の多シストロン性mRNAからの5’遠位遺伝子のcap非依存性翻訳を促進することができる、新規の非固有のIRES配列、すなわち人工の非固有の合成IRESの構築である。我々は、種々の長さと組成の18S rRNAに相補的なシストロン内スペーサーが、2シストロン性H−GFP−IRES−GUS mRNA中の3’近位GUS遺伝子の、cap非依存性翻訳を仲介することができることを示す(図13)。さらに、16コピーのGAAAセグメントからなるIRES要素を使用して、高いアデニンヌクレオチド含量を有する人工のIRES要素の翻訳制御下の遺伝子発現が証明される(例14)。【0064】本発明の最後ではあるが重要な利点は、2つ以上の外来遺伝子(それぞれが、増幅に基づくベクターゲノム中の固有のまたは非固有のIRES配列により先行される)の繰り返し配列を組合せる可能性である。「IRES−外来遺伝子」のそのようなカセットの発現は、ベクターによる2つ以上の外来タンパク質の同時産生を可能にする。【0065】本発明の原理に従って、ウイルスに基づくベクターの構築のために、異なる分類群に属するウイルスを使用することができる。これは、RNAおよびDNA含有ウイルスについても言えることであり、以下にその例を示す(本明細書を通して、それぞれの型の種の名前の前に、それが属する、目名、科名、および属名を記載する。目名、科名、および属名は、これらがICTVにより認められている場合は、斜体で示す。引用符中の分類名(斜体ではない)は、この分類が、ICTV国際認可名を持たないことを示す。種名(俗名)は、通常の書体で示す。属または科の正式な割り当ての無いウイルスは、それを記載する)。【0066】DNAウイルス環状dsDNAウイルス:科:カリモウイルス(Caulimoviridae)、属:バドナウイルス(Badnavirus)、代表種:コメリナイエローモットルウイルス(commelina ellow mottle virus)、属:カリモウイルス(Caulimovirus)、代表種:カリフラワーモザイクウイルス(cauiiflower mosaic virus)、属「SbCMV様ウイルス」、代表種:ソイビーンクロロチクモトルウイルス(Soybean chloroticmottle virus)、属 「CsVMV様ウイルス"」、代表種:カッサバベインモザイクウイルス(Cassava vein mosaicvirus)、属 「RTBV様ウイルス」、代表種:ライスツングロバシルフォルムウイルス(Rice tungro bacilliformvirus)、属:「ペチュニアベインクリアリング(Petunia vein clearing)様ウイルス」、代表種:ペチュニアベインクリアリングウイルス(Petunia vein clearing virus)。【0067】環状ssDNAウイルス:科:ジェミニウイルス(Geminiviridae)、属:マストレウイルス(Mastrevirus)(亜群Iジェミニウイルス)、代表種:メイズストリークウイルス(maize streak virus)、属:クルトウイルス(Curtovirus)(亜群IIジェミニウイルス)、代表種:ビートカーリートップウイルス(beet curl top virus)、属:ベゴモウイルス(Begomovirus)(亜群IIIジェミニウイルス)、代表種:ビーンゴールデンモザイクウイルス(bean golden mosaic virus)。【0068】RNAウイルスssRNAウイルス:科:ブロモウイルス(Bromoviridae)、属:アルファモウイルス(Alfamovirus)、代表種:アルファルファモザイクウイルス(alfalfa mosaic virus)、属:ラウイルス(llarvirus)、代表種:タバコストリークウイルス(tobacco streak virus)、属:ブロモウイルス(Bromovirus)、代表種:ブルモモザイクウイルス(brome mosaic virus)、属:ククモウイルス(Cucumovirus)、代表種:キュウリモザイクウイルス(cucumber mosaic virus)。【0069】科:クロステロウイルス(Closteroviridae)、属:クロステロウイルス(Closterovirus)、代表種:ビートイエローウイルス(beet ellows virus)、属:クリニウイルス(Crinivirus)、代表種:レタス感染性イエローウイルス(Lettuce infectious yellows virus)、科:コモウイルス(Comoviridae)、属:コモウイルス(Comovirus)、代表種:ササゲモザイクウイルス(cowpea mosaic virus)、属:ファバウイルス(Fabavirus)、代表種:ブロードビーンウィルトウイルス1(broad bean wilt virus 1)、属:ネポウイルス(Nepovirus)、代表種:タバコリングスポットウイルス(tobacco ringspot virus)。【0070】科:ポチウイルス(Potyviridae)、属:ポチウイルス(Potyvirus)、代表種:ポテトウイルスワイ(Potato virus Y)、属:リモウイルス(Rymovirus)、代表種:ライグラスモザイクウイルス(ryegrass mosaic virus)、属:ビモウイルス(Bymovirus)、代表種:オオムギイエローモザイクウイルス(barley yellow mosaic virus)。【0071】科:セキウイルス(Sequiviridae)、属:セキウイルス(Sequivirus)、代表種:パースニップイエローフレックウイルス(Parsnip yellow fleck virus)、属ワイカウイルス(Waikavirus)、代表種:ライスツングロスフェリカルウイルス(Rice tungro spherical virus)。【0072】科:トムブスウイルス(Tombusviridae)、属:カルモウイルス(Carmovirus)、代表種:カーネーション斑紋ウイルス(carnation mottle virus)、属:ディアンソウイルス(Dianthovirus)、代表種:カーネーションリングスポットウイルス(carnation ring spot virus)、属:マクロモウイルス(Machlomovirus)、代表種:メイズクロロティックモットルウイルス(maize chlorotic mottle virus)、属:ネクロウイルス(Necrovirus)、代表種:タバコネクロシスウイルス(tobacco necrosis virus)、属:トムブスウイルス(Tombusvirus)、代表種:トマトブッシィスタントウイルス(tomato bushy stunt virus)、ssRNAウイルスの割り当てられていない属。【0073】属:カピロウイルス(Capillovirus)、代表種:アップルステムグルービングウイルス(apple stem grooving virus);属:カルラウイルス属(Carlavirus)、代表種:カーネーション潜在ウイルス(carnation latent virus);属:エナモウイルス(Enamovirus)、代表種:ピーエネーションモザイクウイルス(pea enation mosaic virus)、属:フロウイルス(Furovirus)、代表種:ムギ類萎縮ウイルス(soil-borne wheat mosaic virus)、属:ホルデイウイルス(Hordeivirus)、代表種:ムギ斑葉モザイクウイルス(barley stripe mosaic virus)、属:イダエオウイルス(Idaeovirus)、代表種:ラズベリブッシィドワーフウイルス(Raspberry bushy dwarf virus);属:ルテオウイルス(Luteovirus)、代表種:オオムギイエローモザイクウイルス(barley yellow dwarf virus);属:マラフィウイルス(Marafivirus)、代表種:メイズラヤドフィノウイルス(maize rayado fino virus);属:ポテックスウイルス(Potexvirus)、代表種:ジャガイモウイルスX(potato virus X);属: ソベモウイルス(Sobemovirus)、代表種:インゲンマメ南部モザイクウイルス(Southern bean mosaic virus)、属:テヌイウイルス(Tenuivirus)、代表種:イネ縞葉枯ウイルス(rice stripe virus)、属:トバモウイルス(Tobamovirus)、代表種:タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)、属:トブラウイルス(Tobravirus)、代表種:タバコ茎えそウイルス(tobacco rattle virus)、属:トリコウイルス(Trichovirus)、代表種:リンゴクロロティックリーフスポットウイルス(apple chlorotic leaf spot virus)、属:ティモウイルス(Tymovirus)、代表種:ターニップイエローモザイクウイルス(turnip yellow mosaic virus)、属:ウンブラウイルス(Umbravirus)、代表種:キャロットモットルウイルス(carrot mottle virus)。【0074】陰性ssRNAウイルス:目:モノネガウイルス(Manonegavirales)、科:ラブドウイルス(Rhabdoviridae)、属:シトラブドウイルス属(Cyorhabdovirus)、代表種:レタス壊死性黄変病ウイルス(lettuce necrotic yellows virus)、属:ヌクレオラブドウイルス(Nucleorhabdovirus)、代表種:ポテトイエロードワーフウイルス(potato yellow dwarf virus);陰性ssRNAウイルス:科:ブニヤウイルス(Bunyaviridae)、属:トスポウイルス(Tospovirus)、代表種:トマト黄化えそウイルス(tomatc spotted wilt virus)。【0075】dsRNAウイルス:科:パルティティウイルス(Partitjvrridae)、属:アルファクリプトウイルス(Alphacryptovirus)、代表種:シロクローバ潜在ウイルス1(white clover cryptic virus 1)、属:ベタクリプトウイルス(Betacryptovirus)、代表種:シロクローバ潜在ウイルス2(white clover cryptic virus 2)、科:レオウイルス(Reoviridae)、属:フィジーウイルス(Fijivirus)、代表種:フィジーディジーズウイルス(Fiji disease virus)、属:フィトレオウイルス(Phytoreovirus)、代表種:ウンドテュモアウイルス(wound tumor virus)、属:オリザウイルス(Oryzavirus)、代表種:イネラギットスタントウイルス(rice ragged stunt virus)。【0076】割り当てられていないウイルス:ゲノムssDNA:種バナナバンチイトップウイルス(banana bunch top virus)、種ココナツフォリアーディケイウイルス(coconut foiiar decay virus)、種サブタレニアンクローバースタントウイルス(subterranean clover stunt virus)。【0077】ゲノムdsDNA、種キウリベインイエロイングウイルス(cucumber vein yellowin virus)、ゲノムdsRNA、種タバコ矮化ウイルス(tobacco stunt virus)、ゲノムssRNA、種ニンニクウイルス(Garlic viruses)A、B、C、D、種グレープバインフレックウイルス(grapevine fleck virus)、種トウモロコシホワイトラインモザイクウイルス(maize white line mosaic virus)、種オリーブ潜在ウイルス2(olive latent virus 2)、種オーミヤメロンウイルス(ourmia melon virus)、種テンジクアオイスポットウイルス(Pelargonium zonate spot virus)。【0078】サテライトとウイロイド:サテライト:ssRNAサテライトウイルス:亜群2サテライトウイルス、代表種:タバコネクロシスサテライト(tobacco necrosis satellite)、サテライトRNA、亜群2 B型mRNAサテライト、亜群3 C型線状RNAサテライト、亜群4 D型環状RNAサテライト、ウイロイド、代表種:ジャガイモやせいも病ウイルロイド(potato spindle tuber viroid)。【0079】特に本発明の方法は、好ましくはトバモウイルス(Tobamovirus)属、またはブロモウイルス(Bromoviridae)科、ポチウイルス(Potyviridae)科に属する正センスssRNAウイルス、ならびにDNA含有ウイルスの組換えゲノムを使用して、ウイルスのレプリコンに基づくベクターの構築に適用することができる。後者の場合、外来遺伝子は、ウイルス遺伝子の下流に位置し、その発現は、ゲノム転写プロモーターからDNA依存性RNAポリメラーゼにより転写される2シストロン性または多シストロン性のmRNAからのIRES配列により仲介することができる。【0080】本発明の別の好適な態様は、ssDNAに基づくベクターの構築への本発明の方法の適用に関する。IRES配列の制御下で外来遺伝子を発現するジェミニウイルス(geminivirus)に基づくベクターは、この態様を例示することができる。ジェミニウイルス(geminivirus)は、対になった準二十面体粒子を有する単成分または2成分の環状ssDNAを有する一群の植物ウイルスである(ハル(Hull)とデービース(Davies)の総説、1983, Adv. Virus Res. 28, 1-45;ムリノー(Mullineaux)ら、1992、「植物ウイルスを用いる遺伝子工学」、ウィルソン(Wilson)とデービース(Davies)編、1992、シーアールシープレス社(CRC Press, Inc.))。AおよびBと呼ぶ2成分ジェミニウイルス(geminivirus)の2つのssDNA成分は、それぞれ4つと2つのタンパク質をコードする。DNA Aは、DNA複製に関与するCP遺伝子と3つの遺伝子を含有し、DNA B遺伝子は、ウイルス移動に必須の2つのタンパク質をコードする。トマトゴールデンモザイクウイルス(tomato golden masaic virus)(TGMV)のようなベゴモウイルス(Begomovirus)に属する2成分ジェミニウイルス(geminivirus)のゲノムは、CP遺伝子が欠失しているにもかかわらず、複製し、ある宿主植物にわたって広がり得ることが証明されている(ガーディナー(Gardiner)ら、1988、EMBO J. 7, 899-904;ジェフリー(Jeffrey)ら、1996, Virology 223, 208-218;アッザム(Azzam)ら、1994, Virology 204, 289-296)。BGMVを含むいくつかのベゴモウイルス(Begomovirus)は、篩部制限を示し、管系の細胞に限定される。すなわち、BGMVは篩部限定されており、一方TGMVは、全体に感染した葉の葉肉組織に侵入することができる(ペティ(Petty)とモッラ(Morra)、2000、アメリカウイルス学会第19回ミーティングの抄録、127頁)。【0081】本発明は、2つの方法により、2成分ジェミニウイルス(geminivirus)ゲノムに外来遺伝子を挿入することを提唱する:(i)その1つの(例えば、BGMV)遺伝子の下流に、特にCP ORFが完全であるかまたは3’末端が切断され、IRES配列が外来遺伝子の上流に挿入されるように、CP遺伝子の下流に。従って、mRNA転写は、固有のDNAプロモーターから進行し、第1のウイルス遺伝子(またはその一部)、IRES配列、および3’近位外来遺伝子(その発現はIRESにより仲介される)を含む2シストロン性のキメラmRNAが産生される。あるいは(ii)ウイルスベクターのRNAゲノムの完全長DNAコピーを、CP遺伝子プロモーターの制御下で、CP欠損2成分ジェミニウイルス(geminivirus)のDNA中に挿入することができる。RNAベクターウイルスのRNAゲノムは、組換えDNA Aと非修飾DNA Bの混合物を接種した植物細胞中のDNA A転写の結果として産生される。この方法の利点は、1次接種細胞にベクターを送るためにのみ使用されるビヒクルとして、ジェミニウイルス(geminivirus)ベクターが必要なことである:すべての他の工程は、タバモウイルス(tabamovirus)自身により行われ、細胞性RNAポリメラーゼによるジェミニウイルス(geminivirus)ベクターDNA転写後の、IRESを有するベクターRNAの産生、その複製、翻訳、および宿主植物への全体的な拡散、および外来遺伝子発現がある。ssDNAベクターの作成の追加の可能性として、ウイルスcDNAと外来遺伝子のファジミドへのクローニング、および標準的方法によるssDNAの産生が、言及される。【0082】タバモウイルス(tabamovirus)由来IRES配列は、動物細胞中で機能活性があることが証明されている(我々の以前の特許出願)ことを考慮すると、本発明の方法は、植物ウイルス由来IRES配列の制御下で外来遺伝子を発現する新しいベクターを産生するために、組換えウイルスRNAを構築し、動物ウイルス(例えば、トガウイルス(Togaviridae)科、カリシウイルス(Caliciviridae)科、アストロウイルス(Astroviridae)科、ピコルナウイルス(Picornaviridae)科、フラビウイルス(Flaviviridae)科に属するウイルス)に基づいてウイルスベクターを産生するのに使用することができる。植物および動物のためのそのような動物ウイルスに基づくベクターは、ワクチン産生または遺伝子治療の分野で有用となり得る。【0083】しかし、トバモウイルス(Tobamovirus)の棹状ウイルス粒子、特に繊維状のポテックスウイルス(Potexvirus)、カルラウイルス(Carlavirus)、ポティウイルス(Potyvirus)およびクロステロウイルス(Closterovirus)の柔軟で長いウイルス粒子は、本発明の方法を実現するための最適のモデルを提供する。【0084】本発明の別の実施態様において、ウイルスに基づく増幅ベクターが、その5’NTR内にIRES配列を含有するように、使用される。IRES配列の挿入は、ウイルス複製を妨害しないが、ゲノムベクターRNAの転写体の効率的なcap非依存性翻訳を確実にすることができる。従って該構築体は、cap非依存性翻訳を促進するために、(i)該ウイルスベクターに固有または非固有であり、5’近位遺伝子(RdRp)のcap非依存性翻訳を促進する、5’非翻訳リーダー配列内または下流にIRES配列と、(ii)1つ以上のウイルス構造遺伝子の下流で外来遺伝子の上流に位置する、少なくとも1つの固有のまたは非固有のIRES配列とを、含んでよい。この方法では、capの無い完全長ベクター転写体の特異的感染性は、1次接種細胞中の親のRNA分子の効率的な5’−IRES介在翻訳のために、上昇するであろう。【0085】さらに好適な実施態様は、該外来遺伝子配列の上流に位置する植物の特異的なIRES配列により仲介される、モノまたは多シストロン性mRNA配列からの外来遺伝子の導入とcap非依存性発現に基づいて、植物細胞中で1個または数個の目的のタンパク質を産生する方法である。この方法の特徴は、この方法が、いくつかの化合物の助けにより、細胞性cap依存性mRNA翻訳を選択的にスイッチオフすることを可能にする方法を含むことである。しかしこの方法は、植物細胞中で人工的に導入されたmRNAのcap非依存性のIRES介在翻訳に影響を与えず、従ってcap非依存性発現を制御し増強することを可能にする。【0086】あるいは、細胞性のcapのあるmRNAの翻訳を阻害する手段を、cap非依存性に外来遺伝子を発現する該ウイルスベクター自体で感染された植物に、適用することができる。細胞性のcapのあるmRNAの翻訳が妨害される時の条件下で、該ウイルスベクターからの外来遺伝子の選択的発現が起きるであろう。【0087】本発明のベクターは、RNAまたはDNAベクターでよい。これは、ss(+)、ss(−)またはdsでもよい。これは、ウイルスからの既知の増幅法のいずれかを示す。これは、ベクター核酸の複製と、場合により、コートタンパク質の産生、および場合により細胞間の移動または遠隔距離移動のためのタンパク質の産生を含有する。必要な複製および/または被覆および/または移動のための遺伝子は、適切に作成した宿主植物中で、全体的または部分的にコードされる。こうして、互いに適合したベクターと宿主植物からなる系が作成される。【0088】ベクターは、ウイルスから改変されたものでも、または新たに合成されたものでもよい。これは、有効にサブゲノムプロモーター活性の無いIRES要素のみを有してもよい。しかしベクターは、シストロンの数がプロモーターの数より多くなるように、1個または数個のサブゲノムプロモーターを、有効に、サブゲノムプロモーター機能の無い1個または数個のIRES要素とを組合せてもよい。【0089】1つのIRES要素の最も単純な場合を考慮すると、該要素は、該IRES要素により直接発現される目的の(外来)遺伝子の上流、および場合により、IRES非依存性に発現されるように、例えば複製のための(ウイルス)遺伝子の下流に存在してもよい。あるいは目的の遺伝子は、IRES要素の上流であり、IRES要素非依存性に発現され、かつIRES要素は、下流ウイルス遺伝子の発現のために作用する。これらの最も単純な場合は、もちろん単独でまたは複数で、より複雑なベクター中に取り込まれてもよい。【0090】ベクターは、宿主遺伝子を抑制するために、アンチセンス方向に配列を含有してもよい。この抑制機能は、単独で、または目的の(外来)遺伝子の発現と組合せて存在してもよい。特に好適な場合は、宿主植物の翻訳機構が、全体にベクター遺伝子翻訳の範囲内にあるように、cap依存性翻訳に必須の遺伝子(例えば、cap依存性翻訳に関連した翻訳開始因子(例えば、eIF4)の遺伝子)の抑制を含む。この場合、ベクターは全体にcap非依存性でなければならない。もちろんベクターは、植物核酸プロセシング機構(例えば、イントロンスプライシング)により、前駆ベクターから植物細胞中で作成してもよい。【0091】翻訳後遺伝子スプライシング(PTGS)を阻害することにより、IRESを介して翻訳されるウイルス遺伝子の発現レベルを増加させることが可能である。1つの方法は、いわゆる抗サイレンシングタンパク質を、目的のタンパク質(例えば、タバコエッチウイルス(tabacco etch virus)からのHC−Pro、またはトマトブッシィスタントウイルス(tomato bushy stunt virus)によりコードされる19Kタンパク質、カスチャウ(Kasschau)とカリントン(Carrington)、1998, Cell, 95, 461-470;ボイネット(Voinett)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, n24, 14147-14152を参照)とともに、同時発現することである。PTGSのインヒビターは、安定に(トランスジェニック植物)または一過性に(ウイルスベクター、アグロイノキュレーション(agroinoculation))発現される。【0092】IRESに基づくベクターから発現されるタンパク質はまた、グリコシル化またはタンパク質分解切断などの、宿主植物により支持される翻訳後修飾機構を使用して、修飾してもよい。【0093】IRES要素は、植物ウイルス起源でもよい。あるいはこれは、植物細胞中の操作要件を満足するなら、他の任意のウイルス起源でもよい。さらに植物細胞中で機能するIRES要素は、合成または人工の要素でもよい。合成は、宿主植物の18S rRNAの配列(すなわち、IRES結合について機能するセグメント)に支配される。これは、充分相補的でなければならない。相補性が充分かどうかは、IRES機能を試験することにより簡単に追跡することができる。この意味で相補性は、GC、AU、およびある程度はGU塩基対合を含む。さらに、そのようなIRES要素は、効率を上げるためにそのような相補配列のマルチマーでもよい。マルチマーは、同一の基本的に相補配列単位または異なる基本的に相補配列単位からなる。さらに、高い翻訳効率を有しかつ有効にサブゲノムプロモーター活性を持たない人工のIRES要素は、指向性進化の方法により作成される(例えば、US6,096,548号またはUS6,117,679号に記載されている)。これは、それ自体が公知のようにランダム化されたIRES要素配列を有するベクターの集団を用いて、細胞培養でインビトロで行われる。IRES要素候補の機能的に連結したレポーター遺伝子を発現するクローンは、それ自体公知の方法により選択される。サブゲノムプロモーター活性を示すクローンは排除される。さらにランダム化と選択を行ってもよい。【0094】本発明のベクターのIRES要素は、プロモーター活性が有効に欠如している。これは、残存するサブゲノムプロモーター活性により、IRES要素に機能的に連結した遺伝子の発現が起きないことを意味する。この作用モードは、標準的な分子生物学的方法、例えばノーザンブロッティング、プライマー伸長分析(分子生物学の最近の進歩(Current Protocols in Molecular Biology)、アウスベル(Ausubel)ら編、1999,ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons))、5’RACE技術(ギブコビーアールエル(GibcoBRL)、アメリカ合衆国)などにより測定される。検出可能なサブゲノムプロモーター活性を示すが、基本的に、転写要素としてよりは翻訳要素として機能するIRES要素も、また本発明の対象であることをつけ加える。そのような区別は、例えばノーザンブロット上の2種類のmRNA(すなわち、sgPR活性による短いmRNAと、sgPR活性によらない長いmRNA)の相対量を定量測定することにより得られる。IRES要素が、基本的に残存ウイルスsgPRとして機能しないなら、対応する短いmRNAの相対量は、短いmRNAと長いmRNAの合計の20%未満、好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満でなければならない。すなわち我々は、好適な実施態様として、発現すべき少なくとも1つの非ウイルス遺伝子の配列を有し、植物中での該遺伝子の翻訳に必要な少なくとも1つのIRES要素を有するかまたはコードする核酸を含む植物中で、遺伝子の増幅が可能なベクターを提供するが、ただし、標準的な分子生物学方法により測定する時、該遺伝子の発現は、該IRES要素配列の転写性ではなく翻訳性から、基本的に得られる。【0095】本発明の新規ベクターは、植物の遺伝子操作の新しい道を開く。第1の可能性として、我々は、植物の構造遺伝子の機能測定に使用することを提案する。これは、遺伝子学に特に関係がある。すなわち、ゲノムが配列決定されている植物が特に関係がある。これは、小規模な(植物−植物)応用である。本発明のベクターは、目的の遺伝子の抑制および/または遺伝子の過剰発現を可能にし、遺伝子機能が強化された形で見つかるため、この用途に特に効果的である。【0096】大規模応用ではベクターは、宿主植物中で形質を生成するかまたはタンパク質を産生するのに使用される。ベクターによる植物の感染は、あらかじめ修飾されていない植物を植えた農場で行われる。これは、野外での植物の遺伝的改変を初めて可能にし、こうして農民は、所望のタンパク質または形質を作成するために、種々の供給源からの種子やベクターの選択において、最大の自由を得る。【0097】本発明の応用のための目的の植物種の例は、コムギ、トウモロコシ、コメ、オオムギ、オートムギ、キビなどの単子葉植物、またはナタネ、カノーラ、テンサイ、ダイズ、エンドウ、アルファルファ、綿、ヒマワリ、ジャガイモ、トマト、タバコなどの双子葉植物である。【0098】以下において本発明を、具体例を使用してさらに説明する。標準的な分子生物学的方法は、サムブルーク(Sambrook)ら(1989年,モレキュラークローニング、実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク州)に従って行った。本発明で使用されるプラスミドは、過度の実験をすることなく当業者が明細書の記載に従って、当該分野で容易に入手できる材料を使用して、調製することができる。【0099】(例1)アブラナ科植物に感染するトバモウイルスの構築アブラナ科植物の全体に感染することができるアブラナ科トバモウイルス(crTMV)と呼ぶ公知のトバモウイルスのウイルス粒子を、モザイク症状を有するオレアラシアオフィシナリス・エル(Olearacia officinalis L.)から単離した。crTMV宿主範囲試験の結果を、表1に示す。【0100】プラスミド構築crTMV cDNAを、ジデオキシヌクレオチド配列決定法(ドロクホフ(Dorokhov)ら、1994 FEBS Letters 350, 5-8)により性状解析した。T7 RNAポリメラーゼプロモーターに基づく感染性crTMV cDNAクローンは、crTMV RNAから、オリゴヌクレオチドcrTMV1−Kpn(上流)(ここで、斜体の太字は、KpnI部位の配列であり、下線を引いた小文字は、T7 RNAポリメラーゼプロモーターのヌクレオチド配列であり、大文字は、crTMV cDNAの5’末端由来であることを示す);およびcrTMV2(下流)(ここで、斜体の太字は、NotI部位の配列であり、大文字は、crTMV cDNAの3’末端由来であることを示す)を使用したRT−PCRと、KpnIとBamHI制限部位の間へのpUC19へのクローニングにより得られた(図1)。【0101】完全長SP6 RNAポリメラーゼプロモーターに基づく感染性crTMV cDNAクローンは、crTMV RNAからオリゴヌクレオチドcrTMV1−SP6(上流)(ここで、斜体の太字は、KpnI部位の配列であり、下線を引いた小文字は、T7 RNAポリメラーゼプロモーターのヌクレオチド配列であり、大文字は、crTMV cDNAの5’末端由来であることを示す);およびcrTMV2(下流)(ここで、斜体の太字は、NotI部位の配列であり、大文字は、crTMV cDNAの3’末端由来であることを示す)を使用したRT−PCRと、KpnIとBamHI制限部位の間へのpUC19へのクローニングにより得られた(図1)。【0102】完全長crTMV cDNAクローンは、ジデオキシヌクレオチド配列決定法により性状解析した。crTMV感染性転写体がニコチアナ(Nicotiana)とアブラナ科の種に全体に感染する能力は、それぞれニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)サムスン(Samsun)変種とシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)への感染試験により確認した。【0103】【0104】(例2)ウイルスIRESを介するタバコとアブラナ科植物中のGUS遺伝子の発現のためのトバモウイルスベクターの構築IRES介在発現ベクターT7/crTMV/GUSのシリーズを、以下のように構築した。第1に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と2対の特異的プライマーにより、T7/crTMVベクター(図1)のSacII/NotI断片のCP遺伝子の末端に、HindIIIとXbaI部位を挿入した。第2に、スクラチェフ(Skulachev)ら(1999, Virology 263, 139-154)が記載したIRESMP,75CR−GUS、IRESMP,75UI−GUS、IRESMP,228CR−GUS、IRESCP,148CR−GUS、IRESCP,148UI−GUS、PL−GUS cDNAを、T7/crTMVベクターのSacII/NotI断片を含有するHindIIIとXbaI中に挿入して、それぞれSacII−IRESMP,75CR−GUS−NotI、SacII−IRESMP,75UI−GUS−NotI、SacII−IRESMP,228CR−GUS−NotI、SacII−IRESCP,148CR−GUS−NotI、SacII−IRESCP,148UI−GUS−NotI、SacII−PL−GUS−NotI cDNAを得た。第3に、T7/crTMVベクターのSacII−NotI cDNA断片を、SacII−IRESMP,75CR−GUS−NotIまたはSacII−IRESMP,75UI−GUS−NotIまたはSacII−IRESMP,228CR−GUS−NotIまたはSacII−IRESCP,148CR−GUS−NotIまたはSacII−IRESCP,148UI−GUS−NotIまたはSacII−PL−GUS−NotI cDNAで置換して、それぞれベクターT7/crTMV/IRESMP,75CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESMP,75UI−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESMP,228CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESCP,148CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESCP,148UI−GUS(図2)、およびベクターT7/crTMV/PL−GUS(図2)を得た。【0105】(例3)トランスフェクションしたタバコとアブラナ科植物中のGUS遺伝子のウイルスIRESを介する発現この例は、crTMVに基づくベクター:T7/crTMV/IRESMP,75CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESMP,75UI−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESMP,228CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESCP,148CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESCP,148UI−GUS(図2)、およびベクターT7/crTMV/PL−GUS(図2)で感染させた、ニコチアナ・ベンタミアナ(Nicotiana benthamiana)とシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物中の、GUS遺伝子のトバモウイルスIRES介在発現を証明する。【0106】インビトロ転写プラスミドT7/crTMV/IRESMP,75CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESMP,75UI−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESMP,228CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESCP,148CR−GUS(図2)、ベクターT7/crTMV/IRESCP,148UI−GUS(図2)、およびベクターT7/crTMV/PL−GUS(図2)を、NotIで線状化した。ドーソン(Dawson)ら(1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 1832-1836)が記載したように、組換えプラスミドをインビトロで転写した。RNA転写体のアガロースゲル電気泳動は、これらが完全であることを確認した。RNA濃度を、アガロースゲル電気泳動と分光光度法により定量した。【0107】GUS検出capのある完全長転写体でトランスフェクションした10〜14日後に、接種した葉を採取した。既に記載されている(ジェファーソン(Jefferson)、1987, Plant Molecular Biology Reporter 5, 387-405)ように、GUS発現の組織学的検出により、IRES活性を追跡した。比色法用GUS基質を試料にしみこませたが、方法(デブロック(De Block)とデブロウワー(Debrouwer)、1992, Plant J. 2, 261-266)を改変して、反応の中間生成物の拡散を制限した:5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−Gluc)600μg/mlを含有する0.115Mリン酸緩衝液(pH7.0);3mMフェリシアン化カリウム;10mM EDTA。37℃で一晩インキュベート後、葉を70%エタノール中で脱色させ、光学顕微鏡で観察した。【0108】(例4)IRESMP,75CRはMPsgPRとして機能しないが、TMV感染植物中の翻訳のcap非依存性内部開始を介してMP遺伝子発現を提供する本例は、目的の遺伝子のcap非依存性発現のために、ウイルスベクター中で使用されるIRESMP,75CRの可能性を確認するために、異なるアプローチを使用する。crTMV MPサブゲノムRNAは、125ntの長さの5’非翻訳領域(5’NTR)を有し、翻訳阻害性ステムループ2次構造を含有する。【0109】TMV UIとcrTMV MPサブゲノムRNA(I2 sgRNA)5’NTRの長さとヌクレオチド配列を決定するために、レト(Lehto)ら(1990, Virology 174, 145-157)が記載したプライマー伸長実験のプロトコールを、以下のように改変した:(i)AMV逆転写酵素(RT);(ii)45℃未満でRT反応;(iii)GCリッチプライマー;(iv)dNTP濃度の上昇;(v)2次構造を避けるためのdITP。crTMVI2 sgRNAの5’UTRは125ヌクレオチドからなることが証明された(図3)。この結果は、直接5UTR RT配列決定により確認された。図3Bは、crTMV 5’NTRが、安定なヘアピンループ構造を有することを示す。これは、人工の転写体のMP遺伝子のすぐ上流に位置しているため、インビトロでMP遺伝子翻訳を阻害することができる(図4)。これは、5’HI2CRとMP遺伝子の間に位置するIRESMP,75CRが、翻訳の効率的なcap非依存性内部開始を提供することを意味する。図5は、5HI2CRと同様に、推定の翻訳阻害性ヘアピンループ構造が、他のトバモウイルスのMP遺伝子の上流125nt配列に露出されることを示す。【0110】crTMVとTMV UI MPサブゲノムRNAはcapがないTMVの30K移動タンパク質(MP)遺伝子をコードするサブゲノムRNAの5’末端の構造を調べるために、活性モチーフ(Active Motif)により与えられる「ジャンプ−スタート」法を使用した。ジャンプ−スタート(登録商標)は、capのあるmRNAの5’末端に、RNAタグを特異的に化学的連結する方法である。逆転写の間、既知の配列のリボオリゴヌクレオチドタグは、第1の鎖のcDNAの3’末端中に取り込まれる。こうして、PCRに適した公知のプライミング部位が作成される。【0111】まず、capのあるRNAの5’末端の2’−3’−シス−グリコール基を、過ヨウ素酸ナトリウム酸化によりジアルデヒドに変換した。試験RNA(1μg/μl)の1〜2μlを、14μlの純水および1μlの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)と混合し、次に4μlの0.1M過ヨウ素酸ナトリウムを加え、反応混合物を1時間インキュベートした。【0112】次に3’−アミノアルキル誘導体化合成リボオリゴヌクレオチドタグを、水素化シアノホウ素ナトリウムの存在下の還元的アミノ化により、酸化RNAのジアルデヒド末端に化学的に連結させた。5μlの 次亜燐酸ナトリウムを加え、反応混合物を10分インキュベートした。次に23μlの水、1μlの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)および2μlのリボ−オリゴヌクレオチドタグ5’−CTAATACGACTCACTATAGGG(28.5pmol/μl)を反応混合物に加え、15分インキュベートした。次に10μlの水素化ホウ素ナトリウムを加え2時間インキュベートした。次にアセトン中2%過塩素酸リチウム400μlを加え、−20℃で15分インキュベートし、5分遠心分離した。ペレットをアセトンで2回洗浄し、20μlの水に溶解した。【0113】多量のRNAタグを除去するために、0.3M NaClの存在下でCTAB沈殿を使用した。CTABは、核酸に結合して不溶性複合体を形成する強陽イオン性界面活性剤である。複合体形成は、塩濃度に影響される:塩濃度が1Mより高い時、複合体形成は起きない;これが0.2Mより小さいとき、すべての核酸は、効率的に複合体中に含まれる;そして0.3M〜0.4Mの時、複合体への小さい1本鎖核酸の取り込みは非常に非効率的である(ベルヤフスキー(Belyavsky)ら、1989, Nucleic Acids Res. 25, 2919-2932;ベルチオリ(Bertioli)ら、1994, BioTechniques 16, 1054-1058)。10μlの1.2M NaCl(最終濃度0.4Mまで)と3μlの10%CTAB(最終濃度1%まで)を加え、反応混合物を室温で15分インキュベートし、次に5分遠心分離した。ペレットを、10μlのNaClに再懸濁し、20μlの水、および3μlの10%CTABを加え、反応混合物を室温で15分インキュベートし、次に5分遠心分離した。ペレットを30μlの1.2M NaClに溶解し、80μlの96%エタノールを加え、反応混合物を−20℃で一晩インキュベートした。次にこれを5分遠心分離し、70%エタノールで洗浄した。次にタグRNAのペレットを24μlの水に溶解した。【0114】最後に、3’遺伝子特異的プライマーを用いる逆転写により、5’タグ配列が第1のcDNA鎖の3’末端に取り込まれた。逆転写のために、12μlのタグRNA、1μlの特異的3’末端プライマー、250mMのトリス−塩酸(pH8.3)、375mM KCl、15mM MgCl2 を含有するスーパースクリプト(登録商標)II(ギブコビーアールエルライフテクノロジーズ(Gibco BRL Life Technologies)のための4μlの5×緩衝液を混合し、95℃で30分加熱し、次に氷上にのせた。次に反応混合物に、0.5μlのDTT(最終濃度が1mMになるように)、2μlの10mM dNTP、0.5μlのRNAsine、0.5μlのスーパースクリプト(登録商標)IIを加え、42℃で15分インキュベートした。反応混合物中のMnCl2 の存在は、逆転写中でスーパースクリプト(登録商標)がより効果的にcap構造を克服することを可能にする。3mM MgCl2 と2mM MnCl2 を使用すると、逆転写酵素は、非常に高いcap依存性トランスフェラーゼ活性を示し、典型的にはこの酵素は、5’capのあるmRNA鋳型の存在下で3〜4個のシトシン残基を優先的に付加した(チェンチク(Chenchik)ら、1998、RT−PCRによる遺伝子クローニングと分析(Gene cloning and analysis by RT-PCR)、ポールシーバート(Paul Siebert)とジェームズラリック(James Larrick)編、BioTechniques Books, ナティック(NaticK)、マサチューセッツ州;シュミット(Schmidt)とミーラー(Mueller)、1999, Nucleic Acids Res. 27, 331)。【0115】PCR反応のために、各試験RNAについて2セットのプライマーを使用した(3’特異的/5’特異的プライマーと3’特異的/タグ特異的プライマー)(図6)。ウイルスRNAが、cap構造へ特異的に、タグの公知の配列を有するRNAを化学的連結する方法を使用する可能性を調べるために、capがあることが公知(ヅニガン(Dunigan)とザイトリン(Zaitlin)、1990、J. Biol. Chem. 265, 7779-7786)のタバコモザイクウイルス(TMV)U1株のゲノムRNAを使用した。特異的プライマーであるU1−Spnと対応するRNAタグプライマー779をPCR反応で使用すると、各PCRバンドが検出された(表2、図7)。【0116】【0117】対照として、TMV(U1)の完全なcDNAクローンのcapの無いRNA転写体を使用したが、予測したように、cap構造は見つからなかった(表2、図7)。crTMVのゲノムRNAの5’末端でのcap構造の存在を試験した。これらの実験のために、RNA−タグに対応する特異的PCRプライマーK5、2PMおよびプライマー779を取った(表1、図7)。興味深いことに、プライマー779と2PMで観察されたPCRバンドの移動度は、予測より速かった(図7)。これは、crTMVのゲノムRNAの5’末端での強い2次構造の存在を反映しているかも知れない(ドロクホフ(Dorokhov)ら, 1994, FEBS Letters 350, 5-8)。この2次構造は、関連するTMVの5’末端部分には存在しない(ゴエレット(Goelet)ら、1982、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 5818-5822)。TMVの完全なcDNAクローンのcapの無い転写体を用いる対照実験では、予測されたように各PCRバンドは観察されなかった。【0118】TMV(U1)MP遺伝子をコードするサブゲノムRNAについて、5’末端でのcap構造の欠如が提唱された。我々は、RNA−タグに対応する特異的プライマー2211、UM50−54およびプライマー779を用いて各sgRNAを試験した。cap構造は見つからなかった(表2、図7)。crTMVの各サブゲノムRNAを用いて、同じ結果が得られ(表2,図7)、これは、トバモウイルスのサブゲノムRNAの5’末端にcap構造が存在しないことを示している。MP遺伝子発現が欠如したTMV UIに基づくベクターであるKK6へのIRESMP,75CRの挿入は、効率的なcap非依存性MP遺伝子発現を提供する。【0119】KK6ベクター(レト(Lehto)ら、1990, Virology 174, 145-157)は、2つのCPサブゲノムプロモーター(sgPr)を含有する。最初のCPsgPr−1は、その正しい位置(CP遺伝子の上流)にあるが、第2のCPsgPr−2は、MP遺伝子の上流に置いた。MP遺伝子は、固有のMPsgPrではなくCPsgPr−2を介して発現されることが証明された。この挿入の結果として、KK6は、効率的な細胞間の移動能力を失なった。分析すると、I2 sgRNAは、その5’非翻訳リーダー中にIRESMP,75CR要素を含有しないことが証明された。IRESMP,75CRが欠如したKK6 I2 sgRNAは、MP遺伝子を効率的に発現できないと予測される。この仮説を調べるために、IRESMP,75CRを、KK6のCPsgPr−2とMP遺伝子の間に挿入すると、子孫中で安定なKK6−IRESMP75を得ることができた(図8)。KK6−IRESMP75は、crTMV IRESMP75を含有するI2 sgRNAの合成を与えることが証明された(図9)。【0120】KK6−IRESMP75 I2 sgRNAの開始は、KK6と比較して変化しておらず、これは、IRESMP75がMPsgPrとして機能しないことを意味する。この挿入は、細胞間の移動を大幅に改良した。KK6はサムスン(Samsun)植物を全体に感染したが、最初の症状は、野生型TMV(TMV304)で誘導された症状(約7日)と比較して、ゆっくり出現した(15〜17日)。KK6感染植物の上の葉の症状が顕著であり、野生型TMVで、モザイク症状ではなく黄色のスポットが生成した。【0121】KK6ウイルスの子孫は、エヌ・グルチノサ(N. glutinosa)で無数の傷害を発生させ、これは野生型TMV U1が同様した傷害より遅く出現した。KK6に誘導される局所的傷害の平均サイズは、TMV U1に誘導されるもの(1.1mm)と比較すると、約0.1mmであった。【0122】KK6−IRESMP75を接種された植物は、KK6感染したサムスン(Samsun)植物のように見えたが:(i)最初の全体的症状がより速く出現し(約10日)、そして(ii)これらは、黄色のスポットとモザイクを含み、はるかに明るかった。KK6と比較して、エヌ・グルチノサ(N. glutinosa)中でK86により誘導される局所的傷害の平均サイズは、0.6〜0.7mmに増加した。MP蓄積の経時変化を調べると、KK6−IRESMP75MPは、接種された葉ではKK6 MPより早く検出された(図10)。これらの結果から、KK6 MP遺伝子の上流のIRESMP75CRの挿入は、細胞間と長距離輸送に欠陥があるKK6の移動性を、部分的に回復させると結論することができる。【0123】TMV cDNAベクターのcap非依存性MP遺伝子発現と、トバモウイルスの生活環とにおける、IRESの基本的な役割のさらなる証拠を得るために、一連の追加のKK6に基づくベクターを構築した(図8)。KK6−IRESMP125 は、固有のヘアピンループ構造を含有し、これは、I2 sgRNA(図4)とIRESMP75のWTcrTMV 5’リーダーの存在下で、インビトロでMP遺伝子の翻訳を阻害することができる。KK6−H−PLは、固有のヘアピンループ構造と72ntの人工のポリリンカー配列を含有する。KK6−PLは、ポリリンカー領域のみを含有する。ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)の栽培種サムスン(Samsun)植物(全体的宿主)への感染性試験の結果を、表3に示す。【0124】図11は、KK6に基づくベクターで感染されたタバコの葉へのCP蓄積のウェスタン試験の結果を示す。IRESMP75CRを非機能性PL−配列で置換すると、ベクター複製が大幅に阻止された。【0125】【0126】(例5)サブゲノムプロモーター活性の無い人工の非固有のIRES要素の作成は、真核細胞中の目的の遺伝子のcap非依存性発現を提供する本例の目的は、サブゲノムプロモーター活性の無い非固有のIRES要素の作成法を示すことであり、これは、真核細胞中の目的の遺伝子のcap非依存性発現を提供する。【0127】IRESMP,75CRの18ntセグメントに基づく人工の非固有のIRES要素の構築IRESMP,75CRヌクレオチド配列の分析は、これがマルチマー構造を有し、要素(−72)GUUUGCUUUUUG(−61)の変種であり、シロイヌナズナ(A. thaliana)の18S rRNAに高い相補性を有する、4つのヌクレオチド配列セグメントを含有することを示す(図12)。人工の非固有のIRESを設計するために、18ntの配列CGUUUGCUUUUUGUAGUAを選択した。【0128】4つのオリゴを合成した:【0129】プライマーMP1(+)とMP1(−)を互いにアニーリングして、dsDNA断片Aを得た:【0130】プライマーMP2(+)とMP2(−)を互いにアニーリングして、dsDNA断片Bを得た。【0131】【0132】両方の断片をPstIで消化し、互いに結合させた。アガロース電気泳動を使用して、結合産物A+Bを抽出し、HindIIIとEcoRIで消化し、次にHindIIIとEcoRIクローニング部位を使用して、スクラチェフ(Skulachev)ら(1999, Virology 263, 139-154)が記載したhGFP−GUSベクター中に連結した(図13)。【0133】結果図13に示す転写体を、スクラチェフ(Skulachev)ら(1999, Virology 263, 139-154)が記載したように赤血球溶解物(RRL)中で翻訳し、合成した生成物をゲル電気泳動により分析した。図13に示した結果は、IRESMP,75CRの18ntセグメントに基づく人工の非固有の配列が、3’近位に局在化したGUS遺伝子発現を与えることを示す。これは、2つの特徴(すなわち、18S rRNAに対する相補性とマルチマー構造)が、IRESMP,75CR機能と有効性に必須であることを示す。18ntセグメントのテトラマーは、IRESMP,75CR活性のレベルに達しないが、18S rRNAに相補的な12ntセグメントGCUUGCUUUGAGを使用して、人工の非固有のIRES要素の活性を改良する方法がある。【0134】IRESCP,148CRの19ntセグメントを使用する人工の非固有のIRESの構築IRESCP,148CR活性に必須の構造要素(図14〜17)の分析は、ポリプリン(PP)セグメントがIRESCP,148CR機能に決定的に重要であることを示す。PP領域の顕著な要素として、19nt配列中の9ntの直接の繰り返し:AAAAGAAGGAAAAGAAGG(直接繰り返し(DR)と呼ぶ)を、人工のIRESの構築のために使用した。DRのテトラマーを得るために、以下のプライマーを使用した。【0135】【0136】上記実験法に従って、以下のIRES要素をシストロン間スペーサーとして使用した:【0137】結果図13に示す転写体を、スクラチェフ(Skulachev)ら(1999, Virology 263, 139-154)が記載したように赤血球溶解物(RRL)中で翻訳し、合成した生成物をゲル電気泳動により分析した。図13に示した結果は、IRESCP,148CRの繰り返し19ntセグメントに基づく人工の非固有の配列が、3’近位に局在化したGUS遺伝子の効率的な発現を与えることを示す。【0138】(例6)感染細胞中でレプリカーゼ遺伝子をcap非依存性に発現するTMV cDNA転写ベクター本例の主要な目的は、cap非依存性にレプリカーゼ遺伝子を発現させる5’UTRが修飾された2つの新しいTMV U1に基づくウイルスを得ることであった:【0139】1)TMVのオメガリーダーは、IRESMP,75CRにより完全に置換した。2)TMV 5’UTRの最初の8ヌクレオチドは、ウイルス複製に必須であると考えられている(ワタナベ(Watanabe)ら, 1996, J. Gen. Virol. 77, 2353-2357)ため、IRESMP,75CRは、最初の8ヌクレオチドを完全なまま残してTMVに挿入した:【0140】以下のプライマーを使用した:a)SP6−IRES−1(第1の変種の場合)b)SP6−IRES−2(第2の変種の場合)c)IRES−NcoI(3’末端にNcoI部位を持つIRESを得るための逆進プライマー):d)TMV−NcoI(TMVポリメラーゼを得るための前進プライマー、NcoI部位から開始):e)TMV−Xho(AUGからSphI部位までのレプリカーゼの5’部分を得るための逆進プライマー):【0141】クローニング方法:オリゴSP6−IRES1およびIRES−NcoIならびにcrTMVクローンを鋳型として用いて、PCR断片Aを得た。PCR断片Bは、オリゴTMV−NcoIおよびTMV−XhoIならびにTMV−304Lクローンを用いて得た。断片AおよびBは、pBluscriptSK+ベクター中にXbaIおよびXhoI部位を用いて同時にクローン化した(断片を、NcoI部位により連結した)。同じ手順を適用して、SP6−IRES2オリゴを用いてウイルスの第2の変種を得た。次の段階で、ウイルスゲノムを回復させるためにSphIおよびKpnI部位を用いて、TMV cDNA全体を、得られたベクター中にクローン化した(図18)。【0142】(例7)アクチン2転写プロモーターに基づくトバモウイルスベクター:Act2/crTMVおよびAct2/crTMV IRESMP,75CR−GUS本例の主要な目的は、新しいcrTMVに基づくベクターの作成方法を示すことであり、これにより、植物細胞中のウイルスゲノムが効率的なアクチン2転写プロモーターの制御下に来る。これによって、植物中の遺伝子発現のために、ベクターAct2/crTMV/IRESMP,75CR−GUSを使用することが可能になる。【0143】pUC19へのAct2のクローニングAct2転写プロモーター(約1000bp)は、KpnIおよびPstで消化してプラスミドpACRS029から切り出して、KpnIおよびPstIで消化したpUC19中にクローン化した。【0144】crTMVゲノム開始点の上流のプラスミドT7/crTMV(図1を参照)におけるPstI部位の作成前進プライマー:(PstI部位は下線を引いてある)および逆進プライマー:(PvuI部位も下線を引いてある)を使用して、PCRにより得たcrTMVゲノムの5’末端部分の334ntのcDNA断片を、MunIおよびPstIで消化して、T7/crTMVのKpnIとMunI制限部位の間にアクチン2プロモーター(pUCAct2からのKpnI−PstI断片)と一緒に挿入した。【0145】追加配列のないAct2転写開始点へのcrTMVの5’末端の融合この工程は、最終構築体Act2/crTMV(図19)を得るためにAct2およびcrTMVの両方に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて部位特異的突然変異誘発により行った。ベクターAct2/crTMV/IRESMP,75CR−GUS(図20)を得るために、プラスミドAct2/crTMV(図19)のXhoI−NotI cDNA断片を、IRESMP,75CRの制御下でGUS遺伝子を含むT7/crTMV/IRESMP,75CR−GUS構築体(図2)のXhoI−NotI DNA断片で置換した。【0146】(例8)環状1本鎖トバモウイルスベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75CR−GUS(図21)の作成本例の主要な目的は、植物中の外来遺伝子発現のために環状1本鎖DNAベクターの使用可能性を証明することである。KS/crTMV/IRESMP,75CR−GUS(図21)を構築するために、ベクターAct2/crTMV/IRESMP,75CR−GUSの9.2kbのKpnI−NotI cDNA断片を、KpnI−NotIで消化し、ファージf1複製開始点を含む、プラスミドpBluescriptII KS+(ストラタジーン(Stratagene))中に挿入した。ベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75CR−GUSの1本鎖DNAは、サムブルーク(Sambrook)ら, 1989(分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク)により調製して、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)の葉による微粒子衝撃実験において使用した(前記例を参照)。GUS発現は、射撃の2〜3日後に通常の組織化学染色により検出した。【0147】(例9)シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)からのオレオシン(oleosin)イントロンを含むトバモウイルスベクターKS/Act2/crTMV−Int/IRESMP,75CR−GUSの作成本例の主要な目的は、転写配列プロセシング後に除去すべきシロイヌナズナのオレオシン遺伝子イントロンを含むベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75CR−GUSを作成することである(図22)。【0148】クローニング方法は、以下の工程を含む:1.シロイヌナズナ(A. thaliana)のオレオシン遺伝子イントロンのクローニングシロイヌナズナのオレオシン遺伝子イントロンは、シロイヌナズナゲノムDNAおよび特異的プライマー:A. th./Int(前進)(PstI部位は下線が引かれており、小文字はcrTMVの5’末端配列を示す)およびA. th./Int(逆進)(StuIは下線を引いてある)を用いるPCRにより得た。【0149】2.crTMV cDNAの334ntの5’末端断片へのシロイヌナズナのオレオシン遺伝子イントロンの挿入シロイヌナズナのオレオシン遺伝子イントロンを含むcDNAは、PstI/StuIで消化して、crTMVゲノムの10〜334位に対応するプライマー:(Stu位部位は下線を引いてある)および(Pvu位部位は下線を引いてある)を用いるPCRにより得たDNA断片と連結した。次の工程は、例7に記載されるとおりとした(例18も参照)。【0150】(例10)2シストロン性転写ベクター、35S/CP/IRESMP,75CR/GUS(図23)および35S/GUS/IRESMP,75CR/CP(図24)を含むIRESMP,75CRでトランスフェクションしたタバコプロトプラスト中のGUS遺伝子発現に及ぼす、翻訳のcap依存性開始のインヒビターとしてのラパマイシン(rapamycin)の影響【0151】本例の目的は、目的の遺伝子のIRES介在性cap非依存性翻訳の効率を上昇させるために、cap依存性翻訳のインヒビターを使用することの主な可能性を証明することである。翻訳のcap依存性開始のインヒビターとして、ラパマイシンを選択した。最近、4E−BP1(eIF−4E結合タンパク質−1)またはPHAS−1と呼ばれるcap介在性翻訳の新規なリプレッサーが性状解析された(リン(Lin)ら, 1994, Science 266, 653-656;ポーズ(Pause)ら, Nature 371, 762-767)。4E−BP1は、熱−および酸−安定性タンパク質であり、その活性は、リン酸化により調節される(リン(Lin)ら, 1994, Science 266, 653-656;Pauseら, Nature 371, 762-767)。4EBP1をeIF−4Eと相互作用すると、インビトロでもインビボでもcap依存性翻訳の特異的阻害が起こる(ポーズ(Pause)ら, Nature 371, 762-767)。ラパマイシンが、4E−BP1の脱リン酸化およびその結果としての活性化を誘導することが証明されている(ベレッタ(Beretta)ら, 1996, EMBO J., 15, 658-664)。【0152】IRES−およびGUS遺伝子−含有ベクター35S/CP/IRESMP,75CR/GUS(図23)、35S/GUS/IRESMP,75CR/CP(図24)の作成ならびに35Sに基づくcDNAによるタバコプロトプラストトランスフェクションの方法は、スクラチェフ(Skulachev)らにより報告された(1999, Virology 263, 139-154)。ラパマイシンにより処理したタバコプロトプラストとGUS遺伝子を3’および5’近位の位置に含む2シストロン性cDNAでトランスフェクションしたものにおけるGUS遺伝子発現を比較すると、GUS遺伝子のIRES介在性cap非依存性翻訳を増大させる可能性が示される。【0153】(例11)2シストロン性転写ベクター35S/CP/IRESMP,75CR/GUS(図23)および35S/CP−VPg/IRESMP,75CR/GUSを含む、IRESMP,75CRでトランスフェクションしたタバコプロトプラスト中のGUS遺伝子発現に及ぼす、翻訳のcap依存性開始のインヒビターとしてのポティウイルスVPgの影響【0154】本例は、cap依存性翻訳を阻害するために遺伝子産物を使用することの主な可能性を証明する(図25)。最近、ターニップモザイクポティウイルス(TuMV)のゲノムに結合したウイルス性タンパク質(VPg)とシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の真核生物翻訳開始因子eIF(イソ)4Eの間の相互作用が、報告されている(ウィットマン(Wittman)ら, 1997, Virology 234, 84-92)。VPgの相互作用ドメインは、35アミノ酸のストレッチにマッピングされ、この領域内のアスパラギン酸の置換は、この相互作用を完全に破壊した。cap構造類似体m7GTP(GTPではない)は、VPg−eIF(イソ)4E複合体形成を阻害したが、このことは、VPgと細胞内mRNAが、eIF(イソ)4E結合に関して競合することを示唆している(レオナード(Leonard)ら, 2000, J. Virology 74, 7730-7737)。【0155】eIF(イソ)4Eに結合するVPgの能力は、cap依存性翻訳の阻害のために使用することができた。我々は、CPが、ポティウイルスジャガイモAウイルスからのVPgと融合した、ベクター35S/CP−VPg/IRESMP,75CR/GUS(図25)を使用することを提案する。35S/CP−VPg/IRESMP,75CR/GUSまたは35S/CP/IRESMP,75CR/GUSでトランスフェクションしたプロトプラスト中のGUS遺伝子発現を比較すると、IRES介在性およびcap非依存性GUS遺伝子発現を増大させることができるであろう。【0156】(例12)TMVベクターを用いるIRES配列またはサブゲノムプロモーターのインビボ遺伝子選択本例は、ウイルスベクターにおいて目的の遺伝子のcap非依存性発現を与える、サブゲノムプロモーターまたはIRES配列のインビボ遺伝子選択法または指数的濃縮によるリガンドの系統的進化法(Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment)(SELEX)の可能性を証明する。このアプローチは、多数のランダム配列からの並列選択法、さらには配列進化法を用いることを提案する(エリントン(Ellington)とゾスタック(Szostak), 1990, Nature 346, 812-822;ターク(Tuerk)とゴールド(Gold), 1990, Science 249, 505-510;カーペンター(Carpenter)とサイモン(Simon), 1998, Nucleic Acids Res. 26, 2426-2432)。【0157】このプロジェクトは、以下を包含する:1.以下の要素(5’−3’方向)を含む、crTMVに基づく欠乏−干渉(defective-interfering)(DI)転写配列のインビトロ合成:(i)T7転写プロモーター、(ii)ウイルスゲノム相補的(マイナス鎖)合成を担当する配列を含むTMVゲノムの5’末端部分、(iii)ウイルスレプリカーゼのN末端部分をコードする配列、(iv)75ntのランダム化塩基を含む配列、(v)ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子、(vi)集合体(Oa)のcrTMV開始点、および(vii)マイナス鎖ゲノムプロモーター配列を含むcrTMVゲノムの3’末端部分(図26)。2.crTMVゲノムRNA(図1)との、転写配列によるタバコプロトプラストの同時トランスフェクション。プロトプラストは、カナマイシンを含む培地中で増殖および再生する。3.カナマイシンの存在下でプロトプラストの生存および再生を可能にするIRESまたはサブゲノムプロモーター要素の選択および単離。【0158】(例13)異種ウイルスIRESを含むTMV−U1に基づくベクターの作成例2に記載したcrTMVに基づくベクターのセットは、同じcrTMVゲノムからとった相同的なウイルスIRES配列を含む。これは、異なる長さの直接反復を作成し、そしてこれが、植物感染中にしばしばベクターの不安定性を引き起こす(チャップマン(Chapman)ら, 1992, Plant J. 2(4), 549-557、シブプラサド(Shivprasad)ら, 1999, Virology 255, 312-323を参照)。これを避けるために、TMV−U1ゲノムと異種IRESMP,75CR配列の組合せを選択した。ベクター作成のために異なるトバモウイルスを試みる別の理由は、crTMVとは対照的に、TMV−U1は、宿主範囲がより限定されている(表1を参照)が、またニコチアナ種においては毒性が高い(例えば、これは、より高レベルまで蓄積し、ニコチアナ・ベンサミアナ(N. benthamiana)およびニコチアナ・タバクム(N. tabacum)において、より重篤な症候を示す)ためである。【0159】プラスミドTMV304(図27)(ドーソン(Dawson)ら, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 1832-1836;レト(Lehto)ら, 1990, Virology 174, 145-157)を出発物質として採用した。ウイルスゲノムに追加のHindIIIおよびXba位制限部位を導入するために、4つのプライマーを注文した:【0160】CPおよびMP遺伝子のC末端部分のPCR増幅のために、オリゴヌクレオチド1と2を使用し、3’非翻訳領域を増幅するために3と4を使用した(図28)。次に両方のPCR産物をNcoI/HindIIIまたはXbaI/KpnIで消化して、TMV304中に、IRESMP,75CR−GUS挿入配列(pICH766、HindIII/XbaIからとった)またはIRESMP,75CR−eGFP(pICH1041、HindIII/XbaI)挿入配列(4断片連結)(図28)のいずれかと一緒に、ユニークなNcoIおよびKpnIの間にクローン化した。その結果、構築体pICH1865(GFPを含む)およびpICH1871(GUSを含む)を得た(図29)。植物感染のために、これらのプラスミドをKpnIで線状にし、SP6プロモーターを用いてインビトロで転写して、前述のようにニコチアナ・ベンサミアナ植物体に接種した。接種の7日後(days post inoculation)(dpi)にGUS染色を実施した(例3を参照)。図31Aは、接種された葉ではGUS発現を示すが、植物の葉全体では示されない。GFP含有ウイルス構築体で同様の結果が得られた。【0161】(例14)TMV−U1に基づくベクター:外来遺伝子は、植物由来のIRESまたはサブゲノムプロモーター活性のない合成IRESを介して発現することができる2つの追加のTMV−U1に基づくベクターを作成した。クローニングのために異なる非ウイルスIRES配列を使用した:第1に、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)熱ショック因子1(NtHSF−1、EMBL/ジーンバンク(EMBL/Genbank)ヌクレオチドデータベース、受け入れ番号ABO14483)の453ntの5’非翻訳リーダー配列、そして第2に、人工配列(GAAA)×16。両方の配列とも、インビトロ(ウサギ赤血球溶解物、コムギ胚芽抽出物)およびインビボ(タバコプロトプラスト、HeLa細胞)でIRES活性を示した。【0162】TMV−U1に基づくベクターの新しいバージョンを得るために、pICH1871(TMV−U1−GUS)プラスミド(図29および前例を参照)をNcoIおよびSalIで消化して、2つの挿入配列:NcoI/HindIII断片(同一構築体由来、CPおよび部分的MP遺伝子)ならびにプラスミドhGFP−NtHSF−GUSおよびhGFP−(GAAA)×16−GUS(未発表)由来のHindIII/Sal断片(IRES−GUS)(図30)と連結した。【0163】pICH4235(NtHSF配列を含む)およびpICH4246(人工IRES GAAA×16を含む)から得られた転写配列のニコチアナ・ベンサミアナへの接種は、常法で実施した(前例を参照)。GUS発現は、7dpiに分析した。結果は、両方の場合にGUS遺伝子の発現レベルが、ウイルス起源のIRES(例えば、IRESMP,75CRまたはIRESCP,148CR、図31B、C)により達成されたレベルに匹敵することを示している。これらの構築体に使用されるIRES配列(植物ゲノムから採られたか、または人工的に作成された)は、サブゲノムプロモーター活性を全く含まないことは明らかである。pICH4246による感染はまた、GUS遺伝子を含む他の全てのウイルス性構築体と同様に、ベクターの不安定性を示し、これは、野生型に復帰して、まもなく全体性感染の症候が現れた(7〜8dpi)。pIC4235(NtHSF配列)の場合には、上部の葉の症候は、14dpiでも認識できないが、20〜21dpiにやっと出現し始めた。このことは、長く(453塩基対)高度に構造化された非ウイルスIRES配列を持つ4235が、他の関連ベクターよりもはるかに安定であり、そしてGUS(1.8kb)より小さい遺伝子(例えば、GFP)の安定な全体性発現の良好な機会を与えることを意味する。【0164】(例15)土壌浸潤は、植物中のIRESに基づくウイルス性ベクターを介して外来タンパク質を発現するための迅速で安価で効率的方法を提供する第1工程として、Act2/crTMV/IRESCP,148CR−GFP構築体(プラスミドpICH3011)を、二元ベクターpICBV10(アイコン・ジェネティクス社(Icon Genetics GmbH))中にクローン化した。pICBV10は、KpnIおよびHindIIIにより消化して、pICH3011からのKpnI/NotI断片およびnos転写ターミネーター(同一構築体からのNotI/HindIII断片)と連結した。生じたプラスミド(pICH4471)をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(GV3101株)中に形質転換した。5mlの液体培養液中でコロニーを一晩増殖させて、普通の手順を用いてニコチアナ・ベンサミアナ植物体への土壌浸潤を実施した。接種葉におけるGFP発現は、浸潤の6〜7日後にUV灯で検出できた。【0165】(例16)トバモウイルスベクターAct2/crTMV/IRESCP,148CRからの薬剤タンパク質の発現植物の葉における薬剤タンパク質発現のために、シロイヌナズナ(Arabidopsis)アクチン2プロモーターの制御下で、crTMVに基づくウイルス性ベクターを使用した(アン(An)ら, 1996, Plant J. 10, 107-121)。この作成した基本ベクターpIC3011は、内部翻訳開始を介して、IREScp148の下流に挿入された外来遺伝子(例えば、GFP)を発現することができる。B型肝炎タンパク質を植物中で発現するために、対応するcrTMVに基づくウイルス性ベクターを作成した。B型肝炎タンパク質遺伝子は、pIC3011中に挿入し、続いて追加のIREScp148を、CP遺伝子と3’末端非翻訳ウイルス性配列との間に入れた。生じるプラスミドは、pICP1260(#62C、Arab.Act2プロモーター:crTMV:IREScp148cr:B型肝炎タンパク質)と呼んだ。これは、タングステン粒子と共に沈殿し、微粒子衝撃実験に使用した。分離したニコチアナ・ベンサミアナの葉の微粒子衝撃法は、モロゾフ(Morozov)ら(1997, Journal of General Virology 78, 2077-2083)に記載されたように、高圧ヘリウムに基づくPDS−1000装置(バイオ−ラッド(Bio-Rad))によるフライングディスク法を用いて実施した。pICP1260を射撃したニコチアナ・ベンサミアナの葉は、射撃の4日後(days post bombardment)(d.p.b.)にウェスタンブロッティングにより試験して、B型肝炎タンパク質のある程度の発現を示した(全タンパク質の0.05%未満)。【0166】ヒト抗体(FATおよびOAT重鎖および軽鎖;スノール(Sunol)から受領)の発現のために、別のpIC3011に基づくベクターを作成した。植物シグナルペプチドと融合したヒト化抗TFメガIgG1(FAT)およびIgG4(OAT)の重鎖を、crTMV Arab.Act2駆動のベクター中にクローン化して、pICP1284(#101C、Arab.Act2プロモーター:crTMV:IREScp148(cr):pspFAT−HC)およびpICP1283(#89C、Arab.Act2プロモーター:crTMV:IREScp148(cr):pspOAT−HC)が得られた。軽鎖pspLCIgGE:Eを植物シグナルペプチドと融合して、crTMV Arab.Act2駆動のベクター中にクローン化して、pICP1288(#208C、Arab.Act2プロモーター:crTMV:IREScp148(cr):pspLCIgGE:E)が得られた。次にHCおよびLCをコードする構築体を、分離したニコチアナ・ベンサミアナの葉に射撃した。さらにHCとLC発現構築体の間の比を同時射撃で変化させ(1:1、2:1、3:1)、射撃葉を射撃の5、6、7、8日後に試験した。集合IgGに対するELISAおよびウェスタンブロットは、充分測定可能な量のタンパク質(重鎖および軽鎖断片の両方)の生成を示した。しかしHCに比較してLCの有意な過剰発現がウェスタンブロットにより検出された。最良の発現は、HC/LC比1:2で7d.p.b.であることが見い出された(データは示していない)。【0167】(例17)感染細胞中でレプリカーゼ遺伝子をcap非依存性に発現するTMV cDNA転写ベクターの構築本例の主要な目的は、cap非依存性にレプリカーゼ遺伝子を発現させる、5’UTRが修飾された6個の新しいTMV U1に基づくウイルスを得ることであった(TMV−U1オメガ配列の部分は下線を引いてある):【0168】1)野生型TMV−U1−NcoI部位の対照変異体を、レプリカーゼ遺伝子の開始コドンに導入する:2)TMV−U1のオメガ−リーダーを、IRESMP,75CRにより完全に置換された:3〜4)TMV−U1 5’UTRの最初の8ヌクレオチドは、ウイルス複製に必須であると考えられる(ワタナベ(Watanabe)ら, 1996, J. Gen. Virol. 77, 2353-2357)ため、IRESMP,75CRを、TMV−U1オメガの代わりに挿入して最初の8ヌクレオチドを完全なまま残す:または最初の18ヌクレオチドを完全なまま残す:5)IRESMP,75CRをオメガリーダーのヌクレオチド8と18の間に挿入した:6)IRESMP,75CRをオメガリーダーのヌクレオチド18と19の間に挿入した:【0169】以下のプライマーを使用した:1)H3−T7−オメガ(最初の変種の場合):2)H3−T7−IRESmp(第2の変種の場合):3)H3−T7−8U1−IRESmp(第3の変種の場合):4)H3−T7−18U1−IRESmp(第4の変種の場合):オメガバージョン5および6では、プライマー3および4に加えて、もう2つのオリゴヌクレオチドをが注文した:5)IRESmp−19U1−プラス:6)19U1−IRESmp−マイナス:オメガ変異体を得るために使用した残りのプライマー:7)IRESmp−NcoI(3’末端にNcoI部位を持つIRESを得るための逆進プライマー):8)U1−RepI−Nco−プラス(NcoI部位から開始する、TMV−U1ポリメラーゼを得るための前進プライマー):9)U1−RepI−Sph−マイナス(AUGからSphI部位のレプリカーゼの5’部分を得るための逆進プライマー):10)オメガ−Nco−マイナス(レプリカーゼAUGコドンにNcoI部位を持つオメガ配列の3’末端を得るための逆進プライマー):【0170】クローニング方法:TMV304クローン(図27)(ドーソン(Dawson)ら, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 1832-1836;レト(Lehto)ら, 1990, Virology 174, 145-157)は、オメガ特異的プライマーとの全てのPCR反応の鋳型とした;IRESMP,75CRは、プラスミドpICH766から増幅した。PCR断片1は、プライマー1と10を用いて得た;断片2はプライマー2と7で得た。断片3と4には、オリゴヌクレオチドの組合せ3+7と4+7を使用した。【0171】PCR断片5と6は、2工程で増幅した。最初に、中間体断片5a、6a(プライマー3+6と4+6)および5b(5+10)を得た。次に断片5a/5bと6a/5bを相互にアニーリングして、以下のプライマー組合せで増幅に使用した:3+10と4+10により、最終PCR産物5と6を得た。TMV−1UレプリカーゼのN末端部分(PCR断片7、ゲノム68〜450のヌクレオチド位置)を、オリゴヌクレオチド8と9により増幅して、レプリカーゼ遺伝子の始点にNcoI部位を導入した。断片1は断片7と一緒に、HindIIIとSphI部位を用いて、pUC19ベクター中に同時にクローン化した(断片はNcoI部位により連結して、プラスミドpICH4552が得られる)。中間体構築体の全ての他の変種(PCR産物2〜6)を得るために、同一のクローニング法を適用した(HindIII−T7プロモーター−オメガ変異体−NcoI−レプリカーゼ−SphI、プラスミドpICH4565、pICH4579、pICH4584、pICH4597、pICH4602)。【0172】次の段階でHindIII/SphI断片を、中間体構築体のそれぞれから、TMV304プラスミド(図27を参照)中にEheIおよびSphI制限部位の間に、EheI/HindIII断片と一緒にクローン化して、最終のTMV−U1変異体の完全長cDNA構築体を得た(IREScrmp75を含む(および含まない)6つの異なるバージョンのオメガ領域、プラスミドpICH4735、4744、4752、4765、4771、4788)。【0173】これらの構築体をインビトロで転写して、ニコチアナ・ベンサミアナ(全身性宿主)およびニコチアナ・タバクム・サムスンNN(Nicotiana tabacum Samsun NN)(壊死性宿主)への感染性に関してTMV−U1野生型クローン(TMV304)と一緒に試験した。野生型ウイルスおよびpICH4735(対照変異体、NcoI部位が、レプリカーゼ遺伝子の始点に導入されている)は、接種の3〜4日後(dpi)にニコチアナ・ベンサミアナの全身性感染およびサムスンNN植物の典型的な壊死性傷害を示した。他はどの変異体もNN植物への局所的傷害を引き起こさなかったが、少なくとも1つの構築体pICH4771(オメガ1〜8b.p./IRESMP75/オメガ18〜67b.p.)は、全身性に蔓延した明らかな症候を引き起こした;これらの症候の発生は、野生型TMV−U1とpICH4735感染に比較して遅延した(7dpi)。この結果は、cap非依存性にウイルスのレプリカーゼ遺伝子を発現させる、例えば、IRESMP,75CRまたは植物細胞中で機能性の他の任意の既知IRESから翻訳されるcapの無いRNA転写配列を持つ植物を感染させる、主要な可能性を示している。【0174】(例18)アクチン2転写プロモーターに基づく、トバモウイルスベクターAct2/crTMVおよびAct2/crTMV IRESMP,75CR(IRESCP,148CR)−GFPの構築本例の主要な目的は、植物細胞におけるウイルスゲノム発現が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)からの効率的アクチン2転写プロモーターの制御下で起こる、新しいcrTMVに基づくベクターの構築方法の証明である(アン(An)ら, 1996, Plant J., 10, 107-121)。これによって植物中の遺伝子発現のために、ベクターAct2/crTMV/IRESMP,75CR−GFPおよびAct2/crTMV/IRESCP,148CR−GFPを使用することができる。【0175】1.pUC19中へのAct2プロモーターのクローニングAct2転写プロモーターは、プラスミドpACRS029(pIC04)から、KpnIとPstでの消化により切り出して、KpnIとPstIで消化したpUC19中にクローン化した(構築体pICH1364)。2.追加の配列なしの、crTMVゲノムの5’末端のAct2転写開始点への融合。この工程のために、以下のプライマーを使用した:【0176】PCR断片1は、プライマー1と4を用いて得て、断片2は、オリゴヌクレオチド2と3を使用して増幅した。次に両方の断片を相互にアニーリングして、第2ラウンドの増幅に使用して、プライマー1と2によりPCR産物3を得て、これをpGEM−Tベクター(プロメガ(Promega))中にクローン化した。その結果、アクチン2プロモーターの3’末端(BsrGI部位から転写開始点まで)およびcrTMVゲノムの5’末端部分(ユニークなPvuI部位まで)を含む構築体pICH1823を得た。この構築体において、ウイルスゲノム(G)の最初のヌクレオチドは、アクチン2プロモーターの提唱される転写開始点(A)のすぐ下流に位置したため、予想されるウイルス特異的転写配列は、さらに1つのヌクレオチド(A)を5’末端に含むはずであるが、これは、通常ウイルスゲノムの効率的複製に影響しない。【0177】3.最後の構築体とために残りのゲノムのクローニング構築体pICH1364を、BsrGI/HindIIIで消化して、以下の断片と一緒に連結した:pICH1823からのBsrGI/PvuI、crTMV cDNAクローンからとられたPvuI/SacIとSacI/BamHI、ならびにプラスミドpIC02からのBamHI/HindIII挿入配列(nos転写ターミネーター)。最終構築体(pICH1983)は、既に報告されている(モロゾフ(Morozov)ら, 1997, Journal of General Virology 78, 2077-2083)ようにニコチアナ・ベンサミアナの葉による微粒子衝撃実験で試験して、感染性は、射撃の3日後ニコチアナ・ベンサミアナ葉材料によりニコチアナ・タバクム・サムスンNN植物(壊死性宿主)を再接種後にチェックした。【0178】4.GUSおよびGFP遺伝子を含むアクチン2プロモーターによるベクターのクローニング最終ベクター構築体を得るために、T7/crTMV/IRESMP,75CR−GUSとT7/crTMV/IRESCP,148CR−GUS(図2)またはT7/crTMV/IRESMP,75CR−GFPとT7/crTMV/IRESCP,148CR−GFPのいずれかからのXhoI/NotI断片を、pIC1823構築体中にクローン化した。生じたプラスミドも微粒子衝撃により試験すると、ニコチアナ・ベンサミアナ葉におけるGUSおよびGFP発現が示された。【図面の簡単な説明】【図1】 ベクターT7/crTMVとSP6/crTMVを示す。【図2】 ベクターT7/crTMV/IRESMP,75CR−GUS、T7/crTMV/IRESMP,75UI−GUS、T7/crTMV/IRESMP,228CR−GUS、T7/crTMV/IRESCP,148CR−GUS、T7/crTMV/SPACERCP,148UI−GUS、およびT7/crTMV/PL−GUSを示す。【図3】 プライマー伸長(A)とI2 sgRNA 5’NTRの推定2次構造によるcrTMVI2 sgRNAの5’末端のマッピング。【図4】 crTMV I2 sgRNA 5’NTRは、翻訳阻害性ヘアピン構造を含有する。(A)は、コムギ胚芽抽出物(WGE)中のインビトロ翻訳に使用される人工の転写体を示す;(B)は、WGE中で合成される翻訳産物を示す。【図5】 トバモウイルスは、MP遺伝子の上流の推定の翻訳阻害性ヘアピン構造を含有する。【図6】 capのあるmRNAの特異的検出法。A、B:既知配列を有するRNAタグを、試験されるRNAのcapに特異的に連結させる。C:3’特異的プライマーを用いる逆転写と、cDNAの第1の鎖の合成。タグ配列は、cDNAの配列に含まれる。D:タグ特異的かつ3’特異的プライマーを用いるPCR。各PCRバンドの出現は、試験したRNA中のcap構造の存在を示す。E:5’特異的かつ3’特異的プライマーを用いるPCR。PCRバンドの出現は、PCR反応の対照となり、反応物中の特異的な試験RNAの存在を示す。F:得られたPCRバンドの長さの相対的比較。【図7】 2%アガロースゲル中のウイルスRNAの5’末端でのcap構造の存在の検出。矢印は、各PCRバンドを示す。【図8】 KK6に基づくTMVベクターを示す。【図9】 KK6とKK6−IRESMP,75CR I2 sgRNAの5’NTRのヌクレオチド配列。【図10】 KK6−IRESMP,75CR(K86)、KK6およびTMV UIを接種した葉における、CPとMP蓄積の経時変化。【図11】 KK6、KK6−IRESMP,75CR、KK6−IRESMP,125CR、およびKK6−H−PLとKK6−PLを感染させたタバコにおける、CP蓄積。【図12】 crTMV IRESmpマルチマー構造と、18S rRNAとの相補性を示す。【図13】 IRESMP,75CR、IRESCP,148CRの18ntセグメントのテトラマー、IRESMP,75CRの19ntセグメント、シストロン間スペーサーとしてのポリリンカー(PL)を含有する2シストロン性転写体、およびRRL中のこれらの翻訳産物を示す。【図14】 IRESCP,148CR構造を示す。【図15】 インビトロとインビボのIRESCP,148CR配列要素試験で使用される構築体を示す。【図16】 図21に示す転写体の翻訳後のWGEでのGUS活性試験。【図17】 図21に示すものと類似の35Sプロモーターに基づく構築体でトランスフェクションした、タバコプロトプラストでのGUS活性試験。【図18】 5’NTRにIRESMP,75CRを含有する2つの感染性TMVベクターのクローニングのためのスキームを示す。【図19】 ベクターAct2/crTMVを示す。【図20】 pUCに基づくベクターAct2/crTMV/IRESMP,75CR−GUSを示す。【図21】 環状1本鎖ベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75CR−GUSを示す。【図22】 ベクターKS/Act2/crTMV/IRESMP,75CR−GUSを示す。【図23】 構築体35S/CP/IRESMP,75CR/GUSを示す。【図24】 構築体35S/GUS/IRESMP,75CR/CPを示す。【図25】 構築体35S/CP−VPg/IRESMP,75CR/GUSを示す。【図26】 発現ベクター中での目的の遺伝子のcap非依存性発現を提供する、ウイルスサブゲノムプロモーターまたはIRES配列を同定するための、インビボ遺伝子選択のための構築体を示す。【図27】 TMV−U1 cDNAクローンの制限地図を示す。【図28】 IRESMP,75CR−GUSとIRESMP,75CR−eGFP挿入体を含有する2つの感染性TMV−U1ベクターのクローニングのスキームを示す。【図29】 ベクターSP6/TMV−U1/IRESMP,75CR−GUS、SP6/TMV−U1/IRESMP,75U1−eGFPを示す。【図30】 植物起源(NtHSF)と人工のIRES((GAAA)x16)のIRESを含有するSP6/TMV−U1/GUSのクローニングのスキームを示す。【図31】 ウイルスベクターSP6/TMV−U1/IRESMP,75CR−GUS、SP6/TMV−U1/NtHSF−GUS、SP6/TMV−U1/(GAAA)X16−GUSからの、GUS発現の結果を示す。 植物細胞または植物中で目的の遺伝子を発現する方法であって、該植物細胞または該植物の細胞にベクターを導入することを含み、該植物細胞または該植物の細胞において複製する第1次の組換えRNAを産生し、 該RNAは、 (i)発現すべき少なくとも1つの非ウイルス性遺伝子の配列を有する核酸を含み、 (ii)その下流に位置する該非ウイルス性遺伝子の翻訳に必要な少なくとも1つのリボソーム内部侵入部位(IRES)要素を有し、 (iii)植物細胞中での該RNAの複製のためのレプリカーゼをコードし、 (iv)コートタンパク質をコードする遺伝子および細胞間または遠隔距離移動のためのタンパク質をコードする遺伝子を含み、そして (v)3’近位非翻訳領域(3’−NTR)を含む、上記方法。 宿主植物の遺伝子を抑制するために、アンチセンス配向の宿主植物ゲノムの少なくとも1部分の配列をさらに含む、請求項1記載の方法。 アンチセンス配向の該配列が、植物中のcap依存性翻訳に必須の遺伝子を抑制する、請求項2記載の方法。 ベクターが、その下流に位置し、かつ該ベクターの増幅に要求される遺伝子の翻訳に必要な少なくとも1つのIRES要素を有する核酸を含み、さらに、宿主植物の遺伝子を抑制するために、アンチセンス配向の宿主植物ゲノムの少なくとも1部分の配列を含む、請求項1記載の方法。 ベクターが植物ウイルスから得られる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 IRES要素が植物ウイルス由来である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 IRES要素が16コピーのGAAAセグメントからなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 IRES要素が、固有の18S rRNAのIRES結合セグメントに相補的な少なくとも1つの配列のマルチマーであるかまたはこれを含む、請求項7記載の方法。 ベクターによりコードされる1個または数個の遺伝子の翻訳がcap非依存性である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。