タイトル: | 特許公報(B2)_パルスオキシメータ及びその操作方法 |
出願番号: | 2002531905 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 21/35,A61B 5/145,G01N 21/27 |
メンデルソン イザック JP 4903980 特許公報(B2) 20120113 2002531905 20010827 パルスオキシメータ及びその操作方法 コンメド コーポレイション 502308815 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 熊倉 禎男 100082005 宍戸 嘉一 100065189 小川 信夫 100084009 西島 孝喜 100086771 箱田 篤 100084663 メンデルソン イザック IL 138884 20001005 20120328 G01N 21/35 20060101AFI20120308BHJP A61B 5/145 20060101ALI20120308BHJP G01N 21/27 20060101ALI20120308BHJP JPG01N21/35 ZA61B5/14 310G01N21/27 Z G01N 21/00-21/01 21/17-21/61 33/48-33/98 A61B 5/14 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 国際公開第00/032099(WO,A1) 特表2003−505115(JP,A) 特表平11−507568(JP,A) 特表平10−500323(JP,A) 特開平10−337282(JP,A) 特開平06−038947(JP,A) 特表平05−507216(JP,A) 特開平05−261088(JP,A) 特表平05−228129(JP,A) 特開平05−212016(JP,A) 実開平06−066633(JP,U) 30 US2001026642 20010827 WO2002028274 20020411 2004514116 20040513 22 20080827 西村 直史 【0001】(技術分野)本発明は、一般にパルス酸素計測(pulse oximetry)の分野に属するものであり、パルスオキシメータ(pulse oximeter)で使用されるセンサ及びパルスオキシメータの操作方法に関する。【0002】(発明の背景)酸素計測は、血液の色の変化の分光光度測定に基づくものであり、これにより、患者の血液内の酸素飽和を非侵襲的に判定することが可能となる。一般に、酸素計測は、可視スペクトル(500nmから700nmの間)及び近赤外スペクトル(700nmから1000nmの間)における血液の光学的特性が血液中の酸素量に強く依存することに基づくものである。【0003】図1を参照すると、酸素計測に基づく技術によって測定されたヘモグロビンスペクトルが示されている。グラフG1及びG2は、それぞれ、還元ヘモグロビン、即ちデオキシヘモグロビン(Hb)のスペクトルと、酸化ヘモグロビン、即ちオキシヘモグロビン(HbO2)のスペクトルに対応する。図示するように、デオキシヘモグロビン(Hb)は、オキシヘモグロビン(HbO2)と比較すると、660nm周りのスペクトルの赤色領域においてより高い光学的吸光度を有する(即ち、光の吸収量が多い)。一方、940nm周りのスペクトルの近赤外領域において、デオキシヘモグロビン(Hb)による光学的吸収は、オキシヘモグロビン(HbO2)の光学的吸収よりも低い。【0004】パルスオキシメータ(SpO2と呼ばれる)によって動脈血オキシヘモグロビン飽和度(SaO2)を測定するための従来技術による非侵襲的光学センサは、通常、一対の小型の廉価な発光ダイオード(LED)、及び単一の感度の高いシリコン光検出器から構成される。660nm周りのピーク発光波長を中心とした赤色(R)LEDと、940nm周りのピーク発光波長を中心とした赤外(IR)LEDとが、光源として使用される。【0005】パルス酸素計測は、患者の心臓の周期的な収縮及び弛緩に関連した動脈血量の変動によって発生する、光プレチスモグラフ信号の検出に依存している。この信号の大きさは、各収縮期サイクルで心臓から抹消血管床に吐出される血液量、血液の光学的吸収、皮膚及び組織成分による吸収、及び組織を照射するのに使用される特定の波長に依存する。SaO2は、R及びIR光電式指尖容積脈波の相対的な大きさを計算することによって決定される。パルスオキシメータ内部の電子回路によって、R及びIR光電式指尖容積脈波は、それぞれの拍動(AC)信号成分及び非拍動(DC)信号成分に分離される。パルスオキシメータ内のアルゴリズムは、各波長における時間的に変動するAC信号を、これに対応する、主として無血組織、心臓が弛緩期にあるときの残存動脈血、静脈血、及び皮膚色素沈着によって吸収及び散乱された光から生じる時間的に変動しない、DC成分で除算する数学的正規化を行う。【0006】AC部分は、動脈血成分からのみ生じると仮定されることから、この基準化方法によって、正規化されたR/IR率(即ち、それぞれ、R及びIRスペクトル波長に対応するAC/DC値の比率)が得られ、このR/IR率は、SaO2に大きく依存するが、弛緩期中に組織に入る動脈血量、皮膚色素沈着、皮膚の厚み及び血管構造には概ね依存しない。従って、この測定装置は、異なる患者の測定に対して再較正する必要がない。SaO2と正規化されたR/IR率との間の経験的関係で示されるパルスオキシメータの一般的な較正を、図2に示す。これは、パルスオキシメータの製造業者によってプログラムされる。【0007】パルスオキシメータには、透過モードと反射モードの2種類の動作がある。透過モードパルス酸素計測においては、SaO2を測定するための光学センサは、組織が光源と光検出器との間に挟まれるように、通常指先、足又は耳朶に取り付けられる。【0008】反射モード、即ち後方散乱式パルス酸素計測において、図3に示すように、LED及び光検出器は、いずれも、同じ平面基板上に互いに隣り合って取り付けられている。この配置により、身体上の複数の都合の良い位置(例えば、頭部、胴、又は上肢)からSaO2を測定することが可能になり、この場合、従来の反射モードによる測定は不可能である。このような理由により、非侵襲的な反射型パルス酸素計測は、近年、胎児及び新生児のモニタリングにおいて、潜在的な利点を有する重要な新しい臨床技術となっている。唯一のアクセス可能な部位が胎児の頭皮又は頬である出産中の胎児において、又は抹消潅流が弱い幼児の胸部でSaO2を測定するために反射型パルス酸素計測を用いることにより、センサ取り付けのためにより好都合な部位が幾つか得られる。【0009】反射型パルス酸素計測は、透過型パルス酸素計測と類似の分光光度原理に基づいているが、実行はより困難であり、透過モードパルス酸素計測に関連した問題に対する適切な解決策で解決できるとは限らない、独自の問題がある。一般に、透過モードパルス酸素計測と反射型パルス酸素計測とを比較すると、反射型パルス酸素計測に関連した問題は、以下から成る。【0010】反射型パルス酸素計測において、拍動AC信号は、一般に非常に小さく、センサ構成及び配置によって左右され、透過型パルス酸素計測と比較すると、より大きなDC成分を有する。図4に示すように、血液による光学的吸収及び反射に加えて、反射型パルス酸素計測におけるR及びIR光電式指尖容積脈波のDC信号は、骨からの強い反射による悪影響を受ける可能性がある。この問題は、額及び頭皮などの身体の部位での測定を行う場合、又はセンサを胸郭上の胸部に取り付ける場合により顕著となる。同様に、皮膚表層近くの血液の一部は、通常センサハウジングから離れてより深い皮下構造へ変位している可能性があることから、センサと皮膚との間の接触圧の変動によって、反射型パルス酸素計測の方が(透過型パルス酸素計測と比較すると)より大きな誤差を引き起こす可能性がある。従って、皮膚の表面に近い反射性の高い無血組織の区画は、骨が離れた位置にあり、センサで発生した入射光に影響を与えることができない身体位置においてでさえも大きな誤差を引き起す可能性がある。【0011】現在入手可能な反射型センサに関する別の問題は、センサと皮膚との間に間隙が存在する場合の皮膚の表層によって、或いは、過度の発汗又は分娩中に存在する羊水に起因する流体の薄い層を介して、LEDと光検出器との間の光の直接的な逸脱によって引き起こされる正反射が生じる可能性があることである。【0012】従来の二波長パルス酸素計測の根底にある、2つの基本となる前提に留意することは重要であり、これらの前提は以下の通りである。(1) 組織内の異なる照射波長を有する光線の光路は、実質的に等しく、従って相殺され、(2) 各光源は、動脈血容量の同じ拍動変動を照射する。【0013】更に、光学測定とパルス酸素計測における組織吸収との相関関係は、光の伝播が、主に、生物学的組織における多重散乱の影響を無視するLambert−Beerの法則による吸光度によって決まるという基本的な前提に基づく。しかしながら、実際には、生物学的組織内の異なる波長の光路は、透過型酸素計測と比較すると、反射型酸素計測において変動が大きいことが知られており、これは、反射型酸素計測が、照射組織の光散乱特性及びセンサ取り付けに大きく左右されるからである。【0014】動物調査によって裏付けられた、幾つかのヒトに関する有効性の研究は、制御不能な生理学的及び身体的パラメータにより、主として70%を下回る低い酸素飽和値において、反射型パルスオキシメータの較正曲線の大きな変動を引き起こす可能性があることを示唆している。臨床上の使用におけるパルスオキシメータの精度は、額、胸部又は臀部領域に取り付けられたセンサから測定が行われた場合に、多くの生理学的なパラメータによる悪影響を受ける可能性があることが観察された。これらの変動の正確な発生源は、十分には分かっていないが、一般に、これらの誤差の主要な発生源となる可能性のある、幾つかの生理学的及び解剖学的な要因が存在すると考えられている。また、例えば、血液対無血組織容量の比率の変動は、静脈うっ血、血管収縮/血管拡張を通じて、又は、センサによって皮膚に加わる機械的な圧力を通じて起こる可能性があることが良く知られている。【0015】更に、実験的に導出されたパルスオキシメータの較正曲線は、プローブによって皮膚に加わる接触圧の影響によって変わる可能性がある。これは、以下と関連する。反射型パルス酸素計測における光路は、(透過型酸素計測と比較すると)十分に規定されておらず、従って、赤色波長と赤外波長との間で異なる可能性がある。更に、額及び頭皮領域は、頭蓋骨が下にある比較的に薄い皮下層から成り、一方、臀部及び手足などの他の解剖学的構造組織は、強力な光反射体として機能する隣接する骨支持体の無い、皮膚及び皮下組織のはるかに薄い層から成る。【0016】幾つかの生体内及び生体外の研究では、制御不能な生理学的及び身体的なパラメータ(例えば、センサによって皮膚に加わる接触圧の異なる量、無血組織対血液含有量の比率の変動、又は部位間の変動)により、通常、単一の内部プログラムの較正曲線に基づいて導出される、パルスオキシメータの酸素飽和読み取りの大きな誤差を引き起こす可能性がある場合が多いことが確認されている。当該の生体内での研究は、以下の出版物で開示されている。【0017】1. Dassel他、「Effect of location of the sensor on reflectance pulse oximetry」、British Journal of Obsterics and Gynecology、第104巻、910頁から916頁(1997年);2.Dassel他「Reflectance pulse oximetry at the forehead of neWborns: The influence of varying pressure on the probe」、Journal of Clinical Monitoring、第12巻、421頁から428頁(1996年)。【0018】当該の生体外による研究は、例えば、以下の出版物で開示されている。3.Edrich他、「Fetal pulse oximetry influence of tissue blood content and hemoglobin concentration in a neW in−vitro」、European Journal of Obstetrics and Gynecology and Reproductive Biology、第72巻、補遺1、S29頁からS34頁(1997年)。【0019】二波長反射型パルス酸素計測における用途向けの改良型センサがこれまで開発されてきた。以下の出版物、即ち、Mendelson他、Noninvasive pulse oximetry utilizing skin reflectance photoplethysmography、IEEE Transactions on Biomedical Engineering、第35巻、第10号、798頁から805頁(1988年)で示すように、反射型センサが検出可能な後方散乱光の総量は、LEDの回りに配置される光検出器の数に正比例する。更なる信号対雑音比の改善は、光検出器のアクティブ領域を増大させ、光源と光検出器間の離間距離を最適化することによって達成された。【0020】別のアプローチは、以下の出版物で開示されている、LEDの周りに対称に配置された6つのフォトダイオードを有するセンサの使用に基づくものである。: 4.Mendelson他,「Design and evaluation of a neW reflectance pulse oximeter sensor」、Medical Instrumentation、第22巻、第4号、167頁から173頁(1988年)、5.Mendelson他,「Skin reflectance pulse oximetry in vivo measurements from the forearm and calf」、Journal of Clinical Monitoring、第7巻、7頁から12頁(1991年)。【0021】このアプローチによれば、センサによって集められた僅かな後方散乱光を最大にするために、6つの全てのセンサからの電流は、パルスオキシメータの内部回路によって電子的に積算される。この構成によって、本質的に、平行に接続された6つの離散的なフォトダイオードで作られた広領域の光検出器を形成し、皮膚からの後方散乱光量に比例する単一の電流を生成する。幾つかの研究によって、このセンサ構成を使用して、問題なく、人間の額、前腕、及びふくらはぎからSaO2を正確に測定可能であることが分かった。しかしながら、このセンサでは、局部血流量を増大させるために、皮膚を加温する手段が必要であるが、これは、皮膚の火傷を引き起こす可能性があることから、実際には幾つかの制限がある。【0022】更に別の試作の反射型センサは、8つの二波長LED及び単一のフォトダイオードに基づいており、以下の出版物、即ち、Takatani他、「Experimental and clinical evaluation of a noninvasive reflectance pulse oximeter sensor」、Journal of Clinical Monitoring、第8巻、257頁から266頁(1992年)で開示されている。本明細書では、4つのR LED及び4つのIR LEDを基板回りに90度間隔で且つフォトダイオードから等しい半径方向の距離に離間されている。【0023】LED回りにセンサの中心に取り付けられた6つの光検出器に基づく類似のセンサ構成が、以下の出版物、即ち、Konig他、「Reflectance pulse oximetry−principles and obstetric application in the Zurich system」、Journal of Clinical Monitoring、第14巻、403頁から412頁(1998年)で開示されている。【0024】上記の出版物の全てにおいて開示されている技術によれば、2つの波長R及びIRのLEDのみが光源として使用され、SaO2の計算は、センサを構成するのに使用されるフォトダイオードが1つ又は複数であるかに関係無く、単一の光検出器によって測定された反射型光電式指尖容積脈波に基づく。これは、光検出器要素からの個々の信号が、パルスオキシメータ内で全て電子的に積算されるという理由による。更に、半径方向に対称の光検出器配置は、皮膚からの後方散乱光の検出を最大化し、局部組織の不均質性による差異を最小化するのに役立てることができるが、ヒト及び動物に関する研究によって、この構成では、圧力差及び部位間の変動によって引き起こされる誤差を、完全には排除できないことが確認された。【0025】米国特許第5,782,237号及び米国特許第5,421,329号において、735/890nmの公称二波長対の使用は、精度並びに二波長反射型パルス酸素計測における感度を最適化するための最良の選択をもたらすことが示唆された。このアプローチでは、組織不均一性の影響が最小限に抑えられ、組織吸光度における摂動から生じる光路長変動の均衡が得られる。これは、以下の出版物で開示されている。:6.Mannheimer他「Physio−optical considerations in the design of fetal pulse oximetry 」、European Journal of Obstetrics and Gynecology and Reproductive 、第72巻、補遺1、S9頁からS19頁(1997年)、7.Mannheimer他「Wavelength selection for loW−saturation pulse 」、IEEE Transactions on Biomedical Engineering、第巻44、第3号、48頁から158頁(1997年)。【0026】しかしながら、HbとHbO2の吸光係数の差が最大であるスペクトル領域と一致する、660nmの従来のR波長の代わりに、735nmで発光する波長を使用しても、パルスオキシメータの全体的な感度がかなり低下するばかりでなく、センチ配置及び接触圧の変動による誤差は完全には排除されない。【0027】雑音を濾過し、血流に注入される一酸化炭素ヘモグロビン又は種々の指示染料のような、他の機能をモニタリングするための3つ以上のLEDを備える形式のパルスオキシメータプローブが開発されており、例えば、国際特許WO 00/32099及び米国特許第5,842,981号で開示されている。これらの公報で開示されている技術は、センサによって生成される入力信号から直接的にデジタル信号を形成し、且つ雑音を濾過するための、改良された方法を提供することを目的とするものである。【0028】上述の先行技術のいずれの技術も、接触圧及び部位間の組織不均一性の変動に関わらず、正確且つ再生可能な酸素飽和値が導出される内部較正曲線の自動的な補正が必要な、反射型パルス酸素計測における最も本質的な制限を克服する解決策を提供するものではない。【0029】実際には、反射型パルス酸素計測で使用される大半のセンサは、異なる波長の光路長の差異を最小限に抑えるために、近接して離間したLEDの波長に依存している。それにも関わらず、酸素計測に必要とされる波長範囲内で、同じ基板上に取り付けられ、近接して離間した波長を有し、近接して離間したLEDでさえも、SaO2の最終的な決定において大きな不規則性誤差が生じる可能性がある。【0030】(発明の概要及び利点)本発明の目的は、反射型パルスオキシメータの較正関係を補正し、一般に測定の不正確性を低減するように機能する、新規のセンサ設計及び方法を提供することである。本発明の別の目的は、反射型パルスオキシメータの較正関係を補正し、新生児及び胎児のための用途において支配的な範囲である、酸素飽和値の低い範囲(通常70%を下回る)における、測定の不正確性を低減するように機能する新規のセンサ及び方法を提供することである。【0031】本発明の更なる別の目的は、接触圧又は部位間の組織不均一性の変動が大きな測定の不正確性を引き起こす可能性がある状況において、酸素飽和がオキシメータ内部で導出される内部較正曲線の自動補正を提供することである。【0032】本発明の別の目的は、接触圧によって引き起こされる摂動が、未だ反射型パルスオキシメータにおける主な誤差発生源の1つであることから、被検者間での反射型パルスオキシメータ較正の変動の影響を排除又は軽減することである。胎児パルス酸素計測において、酸素飽和の正確且つ信頼性のある測定を行うために、適正に補償されなければならない要因が更にある。例えば、胎児の頭部は、通常、先進部であり、反射型パルス酸素計測を適用する上でかなり容易にアクセス可能な部位である。しかしながら、子宮収縮により、頭部に加わる圧力及び皮膚上のセンサによる、大きく且つ予測不可能な変動を引き起こす可能性があり、これにより、二波長反射型パルスオキシメータによる酸素飽和測定の大きな誤差を生じる可能性がある。本発明の別の目的は、分娩中に胎児の酸素飽和の正確な測定を提供することである。【0033】二波長パルスオキシメータの酸素飽和読み取りの誤差に関する原理は、実際の状況においては、反射型センサを適用することにより、皮膚表層の血液分布に影響を与えることである。これは、反射型センサによって、血液及び無血組織成分の均質な混合部から後方散乱した光を測定する、理想的な状況とは異なるものである。従って、実際に光検出器によって測定されたR及びIRDC信号には、無血組織区画から吸収及び反射された比較的大きな割合の光が含まれている。これらの制御不能な実際の状況において生じる変動は、圧力又は部位間の変動によって、各光電式指尖容積脈波のAC部分及び対応するDC成分が受ける影響は異なることから、正規化されたR/IR比率を計算しても自動的に補償されるものではない。更に、これらの変動は、波長に左右されるばかりでなくセンサの形状寸法にも左右され、従って、通常二波長パルスオキシメータにおける場合と同様に、正規化されたR/IR比率を計算しても完全には排除することができない。【0034】発明者は、この非線形の作用の最終的な結果として、較正曲線の勾配における大きな変動を引き起こすことが分かった。このため、これらの変動が自動的に補償されない場合、特に胎児のための用途で通常見られる低酸素飽和レベルでのSpO2の最終計算において、大きな誤差を引き起こすことになる。【0035】本発明の別の目的は、これらの変動を補償し、酸素計測値の正確な測定を提供することである。本発明は、660nm(赤色スペクトル)及び940nm±20nm(IRスペクトル)のピーク発光値を中心とした、2つの波長を用いた測定に基づくパルス酸素計測において、通常実施される2回の測定に加えて、追加の波長を用いた更に1回の追加測定を実施することから成る。少なくとも1つの追加の波長は、電磁スペクトルのIR領域、即ち、NIR−IRスペクトル(700nmを上回るピーク発光値を有する)に実質的にあるように選択されることが好ましい。好適な実施形態において、少なくとも3つの波長の使用により、2つのIR波長の組み合わせによって形成される少なくとも1つの追加の比率の計算が可能となり、この比率は、接触圧の変化又は部位間の変動に大きく左右される。好適な実施形態において、この比率が、発生の可能性がある動脈酸素飽和の変動に応じて若干左右されることは、少なくとも2つのIR光源のピーク発光波長及びスペクトル特性を適正に選定し、及び適合させることによって、容易に最小限に抑えられるか、又は完全に排除される。【0036】IR波長の選択は、特定の判定基準に基づくことが好ましい。IR波長は、HbO2がHbよりも若干多く吸収する吸光曲線の領域と一致するように選択される。IR波長は、Hb及びHbO2の両方の吸光係数がほぼ等しく、それぞれ、波長の関数として相対的に一定を維持するスペクトル領域にある。【0037】好適な実施形態において、2つのIR波長によって形成された比率の変動を追跡すると、リアルタイムで、R波長とIR波長の各々とから得られた正規化された比率の誤差を自動的に補正することができる。用語「比率」は、2つの異なる波長に対応するAC/DCの2つの値の比率を意味する。これは、少なくとも3つの未知数(即ち、SaO2を計算するに使用される、HbO2とHbの相対濃度、SaO2の正確な決定に影響を与える血液対組織容量の未知の変数割合)に関する問題を解決するために、別の方程式を追加することと同様のことであり、さもなければ、これらの未知数は、従来の二波長パルス酸素計測で使用される2つの波長だけの場合の2つの方程式のみに依存しなければならない。好適な実施形態において、第3の波長によって、R波長及び2つのIR波長のいずれかから形成される比率に基づいて、SaO2を計算する能力が更に得られる。好適な実施形態において、これらの比率の変動が追跡され、いずれの比率の方がより安定した又は雑音の少ない信号を生成するかを判定するために、リアルタイムで比較される。この比率は、主としてSaO2の計算に使用される。【0038】本発明は、LED又はレーザ源とすることができる発光素子回りの閉路に沿って配置された、異なる検出位置で、測定部位から反射された光の集光を利用している。これらの検出位置は、発光素子回りにいわゆる「近位」と「遠位」リングの2つの同心リングで配置されるのが好ましい。この配置によって、高品質の測定のための検出器の最適な位置決めが可能となり、光検出器が受け取る、「良い」情報(即ち、結果としてSpO2の正確な計算が得られるAC及びDC値)と「悪い」情報(即ち、結果としてSpO2の不正確な計算となるAC及びDC値)との識別が可能となる。【0039】従って、本発明の一態様によれば、血液パラメータの非侵襲的測定のための光学測定装置で使用するセンサであって、(1)少なくとも3つの波長の入射光で測定位置を照射するための、第1の波長が赤色(R)スペクトル内にあり、少なくとも第2の波長及び第3の波長が実質的に赤外線(IR)スペクトル内にある、光源と、(2)光源回りに少なくとも1つの閉路に沿って複数の検出位置を定めるように配置される、照射位置から戻る光を検出するための検出器組立体と、を備えることを特徴とするセンサが提供される。【0040】本明細書で使用される用語「閉路」は、リング、楕円、又は多角形などのような、閉じた曲線を意味する。【0041】検出器組立体は、少なくとも1つの閉路、又は閉路を形成する少なくとも1つの連続した光検出器に沿って収容された、離散的な検出器(即ち、フォトダイオード)の少なくとも1つのアレイから構成される。【0042】本明細書で使用される用語「実質的にIRスペクトル」は、近赤外線及び赤外線領域を含むスペクトル範囲を意味する。【0043】本発明の別の態様によれば、上記で定義されたような構成のセンサを利用するパルスオキシメータと、及びそのセンサを操作し、それにより生成されたデータを分析するための制御ユニットとが提供される。【0044】本発明の更なる別の態様によれば、血液パラメータを非侵襲的に決定するための方法であって、第1の波長λ1が赤色(R)スペクトル内にあり、少なくとも第2の波長λ2及び少なくとも第3の波長λ3が実質的に赤外線(IR)スペクトル内にある、少なくとも3つの異なる波長λ1、λ2及びλ3で測定位置を照射する段階と、測定位置周りに少なくとも1つの閉路を定めるように配置された、異なる検出位置で、測定位置から戻る光を検出して、該検出光を示すデータを生成する段階と、生成されたデータを分析して、前記血液パラメータを決定する段階と、を含むことを特徴とする方法が提供される。【0045】本発明の他の利点は、添付図面と共に以下の詳細な説明を参照することによって、より良く理解できることが容易に分かるであろう。【0046】(好適な具体例の詳細説明)図を参照すると、幾つかの図面を通じて同じ参照番号は同じ又は対応する部分を示し、図1及び図2は、パルス酸素計測で利用される一般的なヘモグロビンスペクトル及び較正曲線を示す。【0047】本発明は、反射モード又は後方散乱式パルスオキシメータで使用されるセンサを提供する。反射モードパルスオキシメータにおける光源と検出器の相対的な配置を図3に示す。【0048】図4は、血液による吸光及び反射に加えて、R及びIR光電式指尖容積脈波のDC信号が骨からの強い反射の悪影響を受ける可能性がある反射モードパルスオキシメータの光の伝播を示す。【0049】図5A及び図5Bは、それぞれ、理想的な条件及び実際的な条件で動作するパルスオキシメータ反射型センサを示す。ここで図5Aを参照すると、理想的な条件下では、反射型センサは、血液及び無血組織成分の均質な混合部から後方散乱した光を測定することが示されている。従って、二波長反射式パルスオキシメータにおける正規化されたR/IR比率は、光電式指尖容積脈波内のAC/DC成分の比例変化に依存するが、動脈血酸素飽和度の変化のみを表す。【0050】ここで図5Bを参照すると、実際的な状況において、センサの適用は、皮膚表層の血液分布に影響を与える。従って、光検出器によって測定されたR及びIRDC信号には、無血組織区画から吸収及び反射された比較的大きな割合の光が含まれている。この為、DC信号の変化は、波長に左右されるばかりでなくセンサ形状にも左右され、従って、一般に二波長パルスオキシメータと同様に、正規化されたR/IR比率の計算によっても完全には排除することができない。その結果、図6に示すように、較正曲線の勾配における大きな変化が生じる。ここで図6を参照すると、グラフC1、C2、及びC3は、50%から100%までの酸素飽和値の勾配の変化を表す3つの較正曲線を示す。【0051】図7を参照すると、反射型パルスオキシメータにおける測定の不正確性の一部を最小限に抑えることを目的とした、本発明によって設計された光学センサ10が示されている。センサ10は、それぞれ、3つの異なる波長の光を生成する、3つの近接して離間する発光素子(例えば、LED又はレーザ源)12a、12b、12cと、発光素子を取り囲む2つの同心リング状配列(閉路を構成する)で配置された離散的な検出器(例えば、フォトダイオード)アレイ、即ち「遠位」検出器16及び「近位」検出器18と、遮光部14とから構成された光源12などの主要構成部品を備える。本実施例において、6つのフォトダイオードは各々リングを形成する。これらの全ての素子は、センサハウジング17に収納される。遮光部14は、フォトダイオードと発光素子との間に位置し、これらの間の直接的な光結合を防止し、それにより、検出光において、動脈が分布する繊管束組織を通過する僅かな後方散乱光が最大となる。【0052】センサにおいて4つ以上の波長を利用することができる点に留意されたい。光源として使用される波長の実際の数及び各リング内の光検出器の数には制限がなく、オキシメータ内の電子回路にのみ依存する。離散的なフォトダイオードアレイは、1つ又はそれ以上の連続した光検出器リングで代替することができる。【0053】従来のパルスオキシメータセンサで使用されるR及びIR発光素子12a及び12bに加えて、センサ10は、NIR−IRスペクトルで発光する第3の基準発光素子12cを組み込んでいる。R及びIR発光素子12a及び12bの波長λ1及びλ2は、それぞれ、660nm及び940nmのピーク発光値周りに中心があり、第3の発光素子12cの波長λ3は、700nm(一般に800nmから900nmまでの範囲)を超えるピーク発光値を有する。以下の説明において、発光素子12b及び12cは、2つのIR発光素子と呼び、波長λ2及びλ3は、2つのIR波長と呼ぶ。【0054】センサ10の動作中、異なる発光素子は、異なる波長で測定位置(図示せず)を照射するために選択的に操作される。光検出器の各々は、異なる波長の反射光を検出し、異なる波長の検出光の強度Iを示すデータを生成する。【0055】センサは、CMOS技術によって製造された集積回路を利用する小型設計のものとすることができる点に留意されたい。この技術は、本出願の譲受人に譲渡された同時係属中の出願に開示されている。この技術によれば、センサは、光源と、他方の内側に一方が同心状に位置がずれて光源を取り囲む、異なる直径の2つの光導波管のブロックと、他方の内側に一方が同心状に配置されたフォトダイオードの2つのリング状領域を備えた集積回路プレートとを含むパッケージを備える。また、集積回路には、複数のプリント接点領域と、光源を取り付け、該光源を制御し、更なる処理のためにフォトダイオード領域によって生成された電気信号を伝達することを意図する導電体とが装備されている。【0056】図8は、上述のセンサ10を利用するパルスオキシメータ20のブロック図を示す。一般に、パルスオキシメータは、センサ10に接続可能なA/D及びD/A変換器を含む電子ブロック22と、測定されたデータを分析するためのマイクロプロセッサ24と、測定結果を示すための表示装置26とから構成された制御ユニット21を含む。測定されたデータ(即ち、検出光を示すセンサ10の電気出力)は、ブロック22において直接処理され、変換された信号は、更にマイクロプロセッサ24によって処理される。マイクロプロセッサ24は、測定されたデータの分析、及び基準データ(即ち、メモリ内に記憶された較正曲線)の利用のための適切なソフトウェアモデルによって動作して、酸素飽和値を計算し、その後、この酸素飽和値は表示装置26上に示される。測定されたデータの分析には、図9及び図10Aから図10Cまでを参照しながら、より具体的に更に以下で説明するように、各波長λ1、λ2、及びλ3に対する検出光のAC成分及びDC成分の測定結果、即ち、それぞれ、I1(AC)、I1(DC)、I2(AC)、I2(DC)、I3(AC)、I3(DC)と、各波長に対するAC/DC比率の計算結果、即ち、W1=I1(AC)/I1(DC)、W2=I2(AC)/I2(DC)、W3=I3(AC)/I3(DC)とが利用される。【0057】図7に示すセンサ配置を有するパルスオキシメータ20によって、次の3つの可能比率、即ち、W1/W2、W1/W3、及びW2/W3が得られる。W1/W2及びW1/W3は、酸素飽和に対して一般に最も高い感度を有する比率である点に留意されたい。これは、図1を参照しながら上述したように、HbとHbO2との間の吸光の変化が最も大きい場合には、λ1は電磁スペクトルの赤色領域で選択されることによるものである。従って、原則的には、波長対λ1及びλ2、又は波長対λ1及びλ3のいずれかによって形成された吸光比率を使用してSaO2値を計算することができる。【0058】発明者は、広範囲に及ぶヒトと動物に関する研究を行い、2つの比率W1/W2及びW1/W3のいずれかは、動脈血酸素飽和度の変化だけでなく、センサ配置及びセンサによって皮膚に印加される圧力量による影響も受ける可能性があることを確認した。2つの比率W1/W2及びW1/W3のいずれか1つに基づくSaO2の任意の計算には(市販されている二波長パルスオキシメータにおいて通常行われるように)、結果的に大きな誤差が生じる可能性がある。更に、動脈血酸素飽和度の計算には少なくとも2つの波長が必要であることから、SaO2を計算するのに既に使用された同じ2つの波長を利用して、接触圧又は部位間の変動による変動に対して、較正曲線を自己補正することは実現可能ではない。【0059】発明者は、2つのIR波長の組み合わせによって形成された第3の比率W2/W3は、接触圧又は部位間の変動の変化に殆ど依存することが分かった。更に、この比率は、かなり小さな程度ではあるが、動脈血酸素飽和度の変動に依存する可能性がある。しかしながら、この動脈血酸素飽和度への依存は、例えば、2つのIR発光素子12b及び12cのピーク発光波長及びスペクトル特性の選定及び適合によって、容易に最小限に抑えられるか、又は完全に排除される。【0060】一般に、2つのIR波長λ2及びλ3は、HbO2がHbよりも若干多く光を吸収する吸光曲線の領域と一致するように、しかしスペクトル領域においては、それぞれ、Hb及びHbO2の両方の吸光係数がほぼ等しく、波長の関数として相対的に一定のままであるように選択される。例えば、940nmと880nmでは、Hb及びHbO2の光の吸光係数は、それぞれ、0.29と0.21にほぼ等しい。従って、理想的には、W2/W3の比率は、λ2及びλ3から測定されたAC/DC信号が不均一な影響を受けて比率W2及びW3が1から逸脱してしまう状況を除き、1に近いものであるべきである。【0061】幸いなことに、比率W2/W3の変動は、比率W1/W2及びW1/W3の変化に似た動きを示し、これは、これらの比率が、一般的に酸素飽和が導出される較正曲線において通常大きな誤差を生じる可能性がある他の制御不能な要因、又はセンサ位置決めにおける、類似の変動による影響を全て受けることによる。従って、波長λ2及びλ3によって形成された比率の変化を、リアルタイムで追跡することによって、波長λ1及びλ2、又はλ1及びλ3から得られた正規化された比率の誤差に対して自動的に補正することが可能となる。【0062】センサ内で追加の第3の波長を使用することは、以下に関連する別の重要な機能(従来の二波長パルスオキシメータでは利用不能である)に役立つ。反射型パルスオキシメータは、比較的低品質の光電式指尖容積脈波信号の処理を検出し、及び依存することができなければならない。従って、電子的又は光学的な雑音により、SaO2の最終的な計算において大きな誤差を引き起こす可能性がある。センサからの電子的又は光学的な雑音の捕捉量は、ある程度最小限に抑えることができるが、完全に雑音がない状態でパルスオキシメータによって測定された信号を与えることは不可能である。従って、パルスオキシメータは、測定中に捕捉されるどのような雑音も、光検出器によって測定されたR及びIR光強度間の比率を計算することによって無効にするという前提に依存する。しかし、実際的には、R及びIR光電式指尖容積脈波上に重畳される雑音の量は、完全には無効にすることができず、従って、二波長パルスオキシメータにおいては2つの波長間比率だけに基づく、SaO2の最終的な計算においてかなりの誤差を引き起こす可能性がある。【0063】第3の波長を利用することによって、本発明は、W1/W2又はW1/W3のいずれかから形成された比率に基づいてSaO2を計算する、追加の能力を有する。本発明によるパルスオキシメータにおいて利用されるアルゴリズムは、いずれの比率の方が安定した又は雑音が少ない信号を生成するかを判断し、SaO2を計算する上での最良の比率を選択的に選定するように、W1/W2とW1/W3のリアルタイムの変化を追跡及び比較する能力を有する。【0064】本発明による方法では、複数の光検出器で得られた測定データに基づく信号処理技術の一環として、いわゆる「選択プロセス」を利用する。この選択プロセスの主な段階を明白な様態で図9に示す。ここで、記号iは、複数の離散的な光検出器要素のアレイにおける単一の光検出器要素に対応し、用語「第1」は、このアレイ内の最終光検出器要素を表し、用語「DATA」は、3つの波長、即ち、W1、W2及びW3の各々について個別に計算された3つの比率(AC/DC)を表す。【0065】この選択プロセスは、以下と関連があり、即ち、実際には、発光素子の1つが動作位置にある(即ち、スイッチオンになる)度毎に、センサ内の全ての光検出器は、皮膚からの後方散乱光を受ける。しかしながら、各光検出器によって測定された後方散乱光の強度は、センサ下の解剖学的構造及びこれらの構造に対する配向次第で、他の光検出器による測定されたものとは異なる可能性がある。【0066】従って、本選択プロセスは、光検出器が受け取る、「良い」信号(即ち、「良い」信号とは、電気光学的信号(AC)及び一定の部分(DC)の脈動部分からのSpO2の計算の結果として、正確な値が得られるようになることを意味する)と「悪い」信号(即ち、結果的に不正確なSaO2の計算結果となるAC及びDC値を有する)とを判別するために使用される。従って、各データ点(即ち、対応するi番目の検出器で検出された比率W1i、W2i又はW3i)は、例えば、AC/DC値の特定の比率に基づく特定の判定基準を満足する場合(例えば、AC信号の強度が、DC信号の強度の約0.05から2.0%であるような)には、受諾されるか、又は却下される。全ての受諾されたデータ点(受諾された検出位置からのデータ)は、次に、図10Aから図10Cを参照して更に以下で説明するように、信号処理技術と併せて、比率W1/W2、W1/W3、及びW2/W3を計算するため、及びSpO2を計算するために使用される。【0067】パルスオキシメータの内部較正曲線の変化を補償するために、第3のIR波長を使用するだけでなく、本発明によるセンサを利用するパルスオキシメータによって、センサ位置決め及び圧力変動による誤差を補償する独自の新しい方法が提供される。この方法は、単一の光検出器に依存する従来のアプローチに替わって、複数の光検出器要素に基づくものである。【0068】反射型パルス酸素計測での用途のための複数の光検出器を有する光学センサを、先に説明したが、該センサの主要な制限は、これらの光検出器から導出された情報を処理する方法に関するものである。複数の光検出器を利用する主たる目的は、皮膚からの後方散乱光の大きな部分を集光することであるが、実際には、各光検出器の個々の強度を積算して、結果として得られる値を用いてSaO2を計算すると、大きな誤差がこの計算結果に入り込む可能性がある。これらの誤差は、例えば、センサが胸部に取り付けられた場合のような、不均質な組織構造上にセンサが配置される状況で引き起こされる可能性がある。この問題は、連続した光検出器リングを使用して後方散乱光を集光する場合、光検出器の一部が肋骨の上にあり、これが、強力なDC成分の原因となる強力に反射する構造として作用し、光検出器の残りの部分が肋間腔上にあり、このDC信号がはるかに小さいような場合とすることができる。この場合、SaO2の最終的な計算が行われる前に、この光検出器によって生成された電流がDC値を計算するために無差別に使用された場合には、SaO2のこの最終的な計算は、不正確なものになる。従って、センサ10は、3つの異なるLED(1つのR波長及び2つのIR波長)を使用して上記で概説したように、較正曲線の誤差を自動的に補正するばかりでなく、離散的な光検出器の各々から個別に得られたR/IR比率の変化を、自動的に追跡して比較する光学的な能力を有する。例えば、2つの同心的に配置されたアレイ内の近位又は遠位光検出器のいずれかの一部によって、センサ内の他の光検出器と比較すると光検出器の1つの動作中に通常よりも大きいDC信号が検出された場合、以下の状況の1つを示すことができる。即ち、センサが不規則に配置されているか、センサが部分的に骨構造を覆っているか、或いは不均等な圧力がセンサによって皮膚に加わり、部分的な皮膚「白化」が引き起こされ、従って、血液対無血組織比率がSaO2の正確な測定が可能となるには高すぎる可能性がある。このような状況が検出された場合、オキシメータは、対応する光検出器から得られた読み取り値を選択的に無視する能力を有する。そうでない場合、アレイ内の各光検出器から測定されたDC及びAC信号の大きさが類似のものであれば、これは、センサが皮膚上の均一な領域上に配置されていることを示し、SaO2の最終的な計算は、アレイ内の全ての光検出器からの等しい寄与に基づくものとすることができる。【0069】ここで図10A、図10B、及び図10Cを参照すると、本発明において利用される信号処理技術の3つの主要段階が示されている。ここで、TH1及びTH2は、それぞれ、W2/W3及び(W1/W2−W1/W3)に関係する2つの異なる閾値(実験的に決定された)である。【0070】段階1(図10A)では、波長λ2及びλ3の検出光(後方散乱光)を示す「近位」及び「遠位」光検出器によって生成された測定データが分析され、2つの比率W2/W3(遠位及び近位)を計算する。計算された比率の1つ(遠位又は近位)が、1±TH1(TH1は例えば、0.1)の範囲内にない場合、このデータ点はSpO2計算から却下されるが、その両方が上述の範囲内にない場合は、センサ位置を調整すべきであることを示す対応するアラームが生成される。計算された比率が1±TH1の範囲にある場合に限り受諾され、本プロセス(データ分析)は、段階2を実行することによって進む。【0071】段階2(図10B)は、各光電式指尖容積脈波の品質が、受諾可能か否かを判断することから成る。この品質の判定は、対応するDC成分と比較した各AC成分の相対的大きさに基づくものである。品質が許容可能ではない(例えば、任意の検出器によって検出された信号状態が、測定期間の時間枠内、例えば、3.5秒とすることができる、で変動する)場合、該データ点は却下され、対応するアラーム信号が生成される。W1、W2及びW3のAC/DC比率が、受諾可能な範囲内にある場合、それぞれのデータ点は受諾され、本プロセスは段階3を実行することによって進む。【0072】段階3(図10C)では、測定されたデータが分析され、遠位及び近位光検出器によって生成されたデータから、比率W1/W2及びW1/W3を計算し、更に差分(W1/W2−W1/W3)を計算する。【0073】理想的な状況においては、W1/W2(遠位)は、W1/W3(遠位)に非常に近く、W1/W2(近位)は、W1/W3(近位)に非常に近い。実際の状況においては、この条件は正確には満足されないが、測定状況が「良い」場合には、全ての比率は互いに近いものになる。【0074】次に、計算された差異は、分析されて、受諾される値(遠位及び近位光検出器に対応する)を判定し、更に、SpO2計算でこれらを使用する。場合、条件ABS(W1/W2−W1/W3)<TH2(ABSは絶対値を意味する)を満足する各検出器については、それぞれのデータ点は受諾され、表示されることになる酸素飽和値を計算するために使用される。この条件が満足されなかった場合、データ点は却下される。全てのデータ点が却下された場合、別の測定が行われる。【0075】上述の段階1から段階3までは、近位及び遠位の両方の光検出器による信号検出に関して例示したが、これらの段階の各々は、閉路に沿った検出位置の1つのアレイのみを利用することによって実行することができる点に留意されたい。しかしながら、このような2つのアレイを備えることにより、より高い測定精度が可能となる。【図面の簡単な説明】【図1】 酸素計測に基づく技術によって測定されたヘモグロビンスペクトルを示す図である。【図2】 通常パルスオキシメータメーカーによってプログラムされる、パルス酸素計測で使用される較正曲線を示す図である。【図3】 反射率モード又は後方散乱式パルス酸素計測における光源及び検出器の相対的な配置を示す図である。【図4】 反射型パルス酸素計測における光の伝播を示す図である。【図5A】 それぞれ、理想条件及び実際の条件で動作するパルスオキシメータ反射型センサを示す図である。【図5B】 それぞれ、理想条件及び実際の条件で動作するパルスオキシメータ反射型センサを示す図である。【図6】 反射型パルス酸素計測による測定における較正曲線の勾配の変化を示す図である。【図7】 本発明による光学センサを示す図である。【図8】 図7のセンサを利用するパルスオキシメータの主構成品のブロック図である。【図9】 本発明による信号処理技術で使用される選択プロセスのフローチャートである。【図10A】 本発明による信号処理方法の、それぞれ3つの主要段階のフローチャートである。【図10B】 本発明による信号処理方法の、それぞれ3つの主要段階のフローチャートである。【図10C】 本発明による信号処理方法の、それぞれ3つの主要段階のフローチャートである。 血液パラメータを非侵襲的に決定するための方法であって、 (i) 第1の波長λ1が赤色(R)スペクトル内にあり、少なくとも第2の波長λ2及び第3の波長λ3が実質的に赤外線(IR)スペクトル内にある、少なくとも3つの異なる波長で測定位置を照射する段階と、 (ii) 異なる検出位置で前記測定位置から戻る光を検出して、前記第1の波長λ1、第2の波長λ2、及び第3の波長λ3で反射した前記放射線の値をそれぞれ示す第1の信号、第2の信号、及び第3の信号を含む、該検出光を示すデータを生成する段階と、 (iii) 生成された前記データを分析して前記血液パラメータを決定する段階と、を含み、前記異なる検出位置は、前記測定位置の周りに少なくとも1つの閉路を定めるように配置され、前記血液パラメータの決定が、 前記少なくとも3つの波長に対して前記検出位置の各々で検出した光のAC/DC比率を示すデータを計算する段階と、 前記計算されたデータを分析して、受諾される検出位置を決定し、前記少なくとも3つの波長λ1、λ2、λ3の各々に対して対応するAC/DC比率を選定する段階と、を含み、前記各位置において、W1が波長λ1に対するAC/DC比率であり、W2が波長λ2に対するAC/DC比率であり、W3が波長λ3に対するAC/DC比率であり、前記血液パラメータの決定が、 少なくとも1つの閉路内の前記受諾された検出位置に関して第3の比率W2/W3の値を計算する段階と、 前記計算された値の各々を分析して、前記第1の所定条件を満足しているか否かを判定し、第1の所定条件が満足されていない場合には、センサ位置を調整すべきであることを示す信号を生成するようにする段階と、 前記条件が満足されている場合には、光電式指尖容積脈波の品質が受諾可能であるか判定する段階と、 前記品質が受諾可能である場合、第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3を少なくとも1つの閉路で検出された前記データから計算するための前記選定された比率を分析して、差分ABS(W1/W2−W1/W3)を計算する段階と、 前記所定条件が満足されている場合には、前記計算された差分を分析して、前記差分の各々が第2の所定条件を満足するか判定して前記血液パラメータを決定する段階と、によって特徴付けられ、 前記第1の所定の条件は、前記計算された値のW2/W3が前記値の1つの周りで所定の範囲内にあることから成り、該所定の範囲は第1の閾値によって定義され、前記第2の所定の条件は、前記計算された差分ABS(W1/W2−W1/W3)が特定の第2の閾値を下回ることから成る、方法。 所定の波長の放射線を放射し、前記前記第1の波長λ1、第2の波長λ2、及び第3の波長λ3の反射放射線を検出して、前記第1の信号、前記第2の信号、及び前記第3の信号を生成するようになっているセンサを使用して、前記方法が、 前記第1の信号、第2の信号、及び第3の信号を受け取る段階と、 前記第1の信号、第2の信号、及び第3の信号の第1の比率W1/W2、第2のW1/W3、及び第3の比率W2/W3を計算する段階と、 前記血液のパラメータを第1の比率W1/W2、第2の比率W1/W3、及び第3の比率W2/W3の関数として応答的に判定する段階と、を含む、請求項1に記載の方法。 前記複数の第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号を受け取る段階と、 前記第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号を分析して、前記第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号のいずれが有効であるかを判定する段階と、 前記有効な第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号の関数として前記血液のパラメータを決定する段階と、を含む、請求項1に記載の方法。 前記有効な第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号の第1の比率W1/W2、第2の比率W1/W3、及び第3の比率W2/W3を計算し、前記第1の比率、第2の比率、及び第3の比率の関数として前記血液のパラメータを応答的に決定する段階を含む、請求項3に記載の方法。 センサ信号が、前記AC部分と前記DC部分との比率が所定の範囲内である場合は有効である、請求項3又は4のいずれかに記載の方法。 前記所定の範囲が、0.05パーセントから2.0パーセントまでである、請求項5に記載の方法。 前記血液のパラメータが、前記第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3と、較正曲線との関数として決定される、請求項2から6のいずれかに記載の方法。 前記較正曲線を前記第3の比率W2/W3の関数として調整する段階を含む、請求項7に記載の方法。 前記血液のパラメータが、前記第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3のうちのより安定した方の比率の関数として決定される、請求項2に記載の方法。 前記血液のパラメータが更に、較正曲線との関数として決定される、請求項9に記載の方法。 前記較正曲線を第3の比率W2/W3の関数として調整する段階を含む、請求項10に記載の方法。 前記第1の比率W1/W2と第2の比率W1/W3とを追跡し、前記第1の比率と第2の比率のいずれがより安定しているかをリアルタイムで判定する段階を含む、請求項9に記載の方法。 前記第1の波長は赤色波長範囲にあり、前記第2の波長は赤外線波長範囲にあり、前記第3の波長は近赤外線波長範囲にある、請求項1から12のいずれかに記載の方法。 前記第2の波長λ2が940nm±20nmの周りのIRスペクトル領域にあり、前記第3の波長λ3が700nmを上回る、請求項13に記載の方法。 血液のパラメータの値を検出するためのパルスオキシメータであって、 センサハウジングと、 前記ハウジングに結合され、所定の波長の放射線を放射するようになっている放射線源と、 前記ハウジングに結合され、前記第1の波長λ1、第2の波長λ2、及び第3の波長λ3で反射した放射線を検出して、それぞれ第1の信号、第2の信号、及び第3の信号を生成するようになっており、該第1の信号、第2の信号、及び第3の信号が前記第1の波長λ1、第2の波長λ2、及び第3の波長λ3での前記反射した放射線のそれぞれの値を示し、前記第1の波長λ1が赤色スペクトルにあり、前記第2の波長λ2及び第3の波長λ3が実質的に赤外スペクトルにある検出器組立体と、 前記検出器組立体に結合され、前記第1の信号、第2の信号、及び第3の信号を受け取り、該第1の信号、第2の信号、及び第3の信号の第1の比率、第2の比率、及び第3の比率を計算して、前記血液のパラメータを第1の比率、第2の比率W1/W3、及び第3の比率の関数として、応答的に判定するようになっている制御ユニットと、を備えたパルスオキシメータにおいて、前記制御ユニットが、 前記少なくとも3つの波長に対して前記検出位置の各々で検出した光のAC/DC比率を示すデータを計算する段階と、 前記計算されたデータを分析して、前記少なくとも3つの波長λ1、λ2、λ3の各々に対して対応するAC/DC比率を選定するために、受諾される検出位置を判定する段階と、によって前記血液パラメータを決定するようになっており、前記各位置において、W1が波長λ1に対するAC/DC比率であり、W2が波長λ2に対するAC/DC比率であり、W3が、波長λ3に対するAC/DC比率であり、前記制御ユニットは、 少なくとも1つの閉路内の前記受諾された検出位置に関して第3の比率W2/W3の値を計算し、 前記計算された値の各々を分析して、前記第1の所定条件を満足しているか否かを判定し、第1の所定条件が満足されていない場合には、センサ位置を調整すべきであることを示す信号を生成するようにし、 前記条件が満足されている場合には、光電式指尖容積脈波の品質が受諾可能であるか判定し、 前記品質が受諾可能である場合、第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3を少なくとも1つの閉路で検出された前記データから計算するための前記選定された比率を分析して、差分ABS(W1/W2−W1/W3)を計算し、 前記所定条件が満足されている場合には、前記差分の各々が第2の所定条件を満足するか判定して前記血液パラメータを決定するために、前記計算された差分を分析する、ようになっており、前記第1の所定の条件は、前記計算された値の第3の比率W2/W3が前記値の1つの周りで所定の範囲内にあることから成り、該所定の範囲は第1の閾値によって定義され、前記第2の所定の条件は、前記計算された差分ABS(W1/W2−W1/W3)が特定の第2の閾値を下回ることから成る、ことを特徴とするパルスオキシメータ。 前記制御ユニットが、前記第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3と、較正曲線との関数として決定されるようになっている、請求項15に記載のパルスオキシメータ。 前記較正曲線は第3の比率W2/W3の関数として調整される、請求項16に記載のパルスオキシメータ。 前記第1の波長が赤色波長範囲にあり、前記第2の波長が近赤外線波長範囲にあり、前記第3の波長が赤外線波長範囲にある、請求項15から17のいずれかに記載のパルスオキシメータ。 前記制御ユニットが、前記血液のパラメータを前記第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3のうちのより安定した方の比率の関数として決定するようになっている、請求項15から18のいずれかに記載のパルスオキシメータ。 前記制御ユニットが、前記血液のパラメータを較正曲線との関数として更に決定するようになっている、請求項19に記載のパルスオキシメータ。 前記較正曲線が第3の比率W2/W3の関数として調整される、請求項20に記載のパルスオキシメータ。 前記制御ユニットが、前記第1の比率W1/W2と第2の比率W1/W3とを追跡し、前記第1の比率と第2の比率のいずれがより安定しているかをリアルタイムで判定するようになっている、請求項15から18のいずれかに記載のパルスオキシメータ。 前記ハウジングに結合され、第1の波長、第2の波長、及び第3の波長の反射された放射線を検出し、前記第1の波長の前記反射放射線を示す複数の第1のセンサ信号と、前記第2の波長の前記反射放射線を示す複数の第2のセンサ信号と、前記第3の波長の前記反射放射線を示す複数の第3のセンサ信号とを、応答的に生成するようになっている複数の検出器を備え、前記制御ユニットが、前記複数の検出器に結合され、前記複数の第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号を受け取り、該第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号を分析して前記第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び第3のセンサ信号のいずれが有効であるかを判定し、有効な第1のセンサ信号、有効な第2のセンサ信号、及び有効な第3のセンサ信号それぞれの関数として第1の波長信号、第2の波長信号、及び第3の波長信号を生成し、前記有効な第1のセンサ信号、有効な第2のセンサ信号、及び有効な第3のセンサ信号の関数として前記血液のパラメータを決定するようになっている、請求項15に記載のパルスオキシメータ。 前記制御ユニットが、前記有効な第1のセンサ信号、有効な第2のセンサ信号、及び有効な第3のセンサ信号の第1の比率W1/W2、第2のW1/W3、及び第3の比率W2/W3を計算し、前記血液のパラメータを第1の比率2、第2の比率、及び第3の比率の関数として応答的に判定するようになっている、請求項23に記載のパルスオキシメータ。 前記制御ユニットが、前記血液のパラメータを前記第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3と、較正曲線との関数として決定するようになっている、請求項24に記載のパルスオキシメータ。 前記較正曲線が前記第3の比率W2/W3の関数として調整される、請求項25に記載のパルスオキシメータ。 前記第1の波長が赤色波長範囲にあり、前記第2の波長が近赤外線波長範囲にあり、前記第3の波長が赤外線波長範囲にある、請求項23から26のいずれかに記載のパルスオキシメータ。 前記制御ユニットが、前記血液のパラメータを前記第1の比率W1/W2及び第2の比率W1/W3のうちのより安定した方の比率の関数として決定するようになっている、請求項24に記載のパルスオキシメータ。 センサ信号が、前記AC部分と前記DC部分との比率が所定の範囲内である場合は有効である、請求項15に記載のパルスオキシメータ。 前記所定の範囲が、0.05パーセントから2.0パーセントまでである、請求項29に記載のパルスオキシメータ。