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タイトル:特許公報(B2)_生体異物代謝の調節物質を同定するためのスクリーニングシステムおよび方法
出願番号:2002528817
年次:2012
IPC分類:A01K 67/027,C12N 15/09,G01N 33/15,G01N 33/48,G01N 33/50,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

ムーア、デイビッド、ディー. ウェイ、ピング チュア、スティーブン、エス. JP 4884640 特許公報(B2) 20111216 2002528817 20010921 生体異物代謝の調節物質を同定するためのスクリーニングシステムおよび方法 ベイラー カレッジ オブ メディスン 391058060 BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 110000729 梶崎 弘一 100104422 尾崎 雄三 100105717 谷口 俊彦 100104101 ムーア、デイビッド、ディー. ウェイ、ピング チュア、スティーブン、エス. US 09/666,250 20000921 20120229 A01K 67/027 20060101AFI20120209BHJP C12N 15/09 20060101ALI20120209BHJP G01N 33/15 20060101ALI20120209BHJP G01N 33/48 20060101ALI20120209BHJP G01N 33/50 20060101ALI20120209BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20120209BHJP JPA01K67/027C12N15/00 AG01N33/15 ZG01N33/48 NG01N33/50 ZC12Q1/68 AC12Q1/68 Z C12N 15/09 WPI PubMed 国際公開第01/051045(WO,A1) 国際公開第01/071361(WO,A1) CHOI,HS. et al.,Differential transactivation by two isoforms of the orphan nuclear hormone receptor CAR.,J. Biol. Chem.,1997年 9月19日,Vol.272, No.38,pp.23565-71 MOORE,L.B. et al.,Orphan nuclear receptors constitutive androstane receptor and pregnane X receptor share xenobiotic and steroid ligands.,J. Biol. Chem.,2000年 5月19日,Vol.275, No.20,pp.15122-7 XIE,W. et al.,Humanized xenobiotic response in mice expressing nuclear receptor SXR.,Nature,2000年 7月27日,Vol.406, No.6794,pp.435-9 BAES,M. et al.,A new orphan member of the nuclear hormone receptor superfamily that interacts with a subset of retinoic acid response elements.,Mol. Cell. Biol.,1994年 5月,Vol.14, No.3,pp.1544-52 WEI,P. et al.,The nuclear receptor CAR mediates specific xenobiotic induction of drug metabolism.,Nature,2000年10月19日,Vol.407, No.6806,pp.920-3 WAXMAN,D.J.,P450 gene induction by structurally diverse xenochemicals: central role of nuclear receptors CAR, PXR, and PPAR.,Arch. Biochem. Biophys.,1999年 9月 1日,Vol.369, No.1,pp.11-23 23 US2001029672 20010921 WO2002025270 20020328 2004510416 20040408 23 20080430 幸田 俊希 【0001】(連邦政府の資金提供を受けた研究に関する陳述)本発明は、NIH 助成金NIDDK RO1 DK46546 として米国政府の資金提供を受けて行なわれた。したがって、米国政府は本発明に一定の権利を有する。【0002】(発明の背景)本発明は、概して、生体異物と総称される広範囲にわたる外来化合物のいずれかの代謝の調節物質を同定するためのスクリーニング方法に関する。【0003】多様な基質を代謝することができる数多くのシトクロムP450(CYP )酵素は、生体異物化合物の潜在的に有害な効果に対する一次防御として役立つ。特定の生体異物に応答して起こる個々のCYP 遺伝子の発現の誘導は、この代謝機構の中心的要素である。これらの応答のうち最もよく特徴付けられているものの1 つは、「フェノバルビタール様」誘導物質と呼ばれる多様な薬剤群による特異的CYP 遺伝子の誘導である。動物がフェノバルビタール(PB)をはじめとする化学的に多様な一連の化合物のいずれかにばく露すると、CYP 酵素および生体異物代謝に関係する他のタンパク質の特定サブセットの発現が強力に活性化される。マウスの場合、これらのPB様誘導物質は、CYP2B10 と他の数個の遺伝子の発現を増加させる。TCPOBOP と呼ばれる農薬不純物1,4-ビス[2-(3,5-ジクロロピリジルオキシ)]ベンゼンは、この誘導物質群のなかでも最も強力な物質であると一般に考えられている。【0004】治療薬、殺昆虫剤、多環式炭化水素、および一部の天然物質などといった生体異物は、多くの場合、CYP 酵素によって触媒される酸化反応を経由して代謝される。これらの反応は生体異物に親水性基を付加して、身体がこれらの有害な物質または単に不溶な物質を除去できるようにする。例えば、多環式芳香族化合物の酸化は、極めて反応性の高い求電子性基であるエポキシドを生成する。通常、これらのエポキシドはヒドロキシル基に迅速に加水分解され、そのヒドロキシル基が他の基に結合して、排泄されるのに十分な水溶性を持つ化合物を生成する。残念なことに、この中間体エポキシドは細胞中に放出される場合もあり、高い反応性を持つ求電子物質であるために、DNA 中の負に荷電した基と反応してDNA 配列を変化させることもありうる。人体において、CYP 酵素によるコカインの代謝中に生成する反応性酸素種は、突然変異生成および染色体切断に関係づけられている。【0005】CYP が媒介する代謝は、例えば治療活性化合物の迅速な分解、その生体内半減期の減少など、他にも望ましくない効果をもたらす。あるいは、CYP 酵素は、プロドラッグを望ましい速度よりも速く活性薬物に変換して、生体内の活性薬物濃度を毒性濃度にするかもしれない。さらに、治療活性化合物の投与または他の外来化合物へのばく露によるCYP 酵素の活性化は、第2 の治療活性化合物の代謝を促進して、その有効性を低下させるか、またはその毒性を増加させる可能性もある。【0006】CYP 酵素を活性化する化合物は潜在的に有害な効果を持つので、どの化合物がCYP による代謝を活性化し、よってヒトに投与された時に副作用を引き起こす可能性があるかを決定するために、改良された方法が必要である。そうすることにより、これらの化合物を薬物開発から除外するか、またはこれらの化合物を化学的に修飾して、CYP 酵素を活性化する能力が低下した類縁化合物を生成させることができる。【0007】(発明の概要)本発明は、CAR 受容体を活性化または阻害する化合物の同定を容易にするスクリーニングシステムおよび方法を提供する。そのようなCAR 受容体活性化化合物は、哺乳動物に単独でまたは他の化合物と組み合わせて投与すると、毒性を示す可能性があるので、候補薬物または薬物開発プログラムからは除外することが好ましい。また、CAR 受容体を阻害する化合物は、CAR が媒介する治療活性化合物の代謝を低下させ、よって副作用を潜在的に軽減し、その化合物の生体内での治療半減期を回復させるために、哺乳動物に投与することができる。そのような代謝活性の低下は、適切な前駆体化合物からの毒性産物の生成を減少させるためにも役立ちうる。【0008】したがって、第1 の側面として、本発明は、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスを特徴とする。関連する一側面として、本発明は、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスを特徴とする。【0009】本発明の動物は、ある化合物がCAR 受容体の活性を調節するかどうかを決定するために使用することができる。さらに、ある化合物の代謝がCAR 受容体の活性の調節によって制御されるかどうかを決定する方法も提供する。【0010】したがって本発明は、ある化合物がCAR 受容体を活性化するかどうかを決定するためのスクリーニグ方法も特徴とする。この方法では、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスに化合物を投与し、CAR 標的遺伝子の誘導を測定する。化合物がCAR 標的遺伝子の誘導を媒介する場合、その化合物はCAR 受容体を活性化すると決定される。好ましい一態様では、ヒトCAR 受容体を発現させるマウスに、CAR 受容体インバースアゴニストも投与される。このCAR 受容体インバースアゴニストは、好ましくは、クロトリマゾールである。【0011】もう一つの側面として、本発明は、ある化合物がCAR 受容体を阻害するかどうかを決定するためのスクリーニング方法を特徴とする。この方法では、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスに化合物を投与し、化合物の存在下および不在下でCAR 標的遺伝子の発現を測定する。化合物がCAR 標的遺伝子の発現を減少させる場合、その化合物はCAR 受容体を阻害すると決定される。好ましい一態様では、ヒトCAR 受容体を発現させるマウスに、CAR 受容体アゴニストも投与される。好ましくは、このCAR 受容体アゴニストはヒトCAR に特異的な機能的CAR 受容体アゴニストであり、アゴニストは上記化合物がマウスに投与された後に投与される。【0012】さらにもう一つの側面として、本発明は、ある化合物がCAR 受容体の活性を調節するかどうかを決定するためのスクリーニング方法を特徴とする。この方法では、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスに化合物を投与し、その化合物の投与によって媒介される生理学的効果を測定する。ヒト受容体を発現させるマウスにおける生理学的効果の大きさが、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスにおける生理学的効果の大きさとは異なる場合、その化合物はCAR 受容体の活性を調節すると決定される。好ましい態様では、化合物の投与によって媒介される毒性または活性を測定するか、または化合物の半減期を測定することによって、生理学的効果がアッセイされる。他の好ましい態様では、毒性または活性が、化合物の代謝産物によって媒介される。ヒトCAR 受容体を発現させるマウスにおける生理学的効果の大きさと、低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける生理学的効果の大きさとの相違は、少なくとも2 、5 、10、または20倍であることが好ましい。他の好ましい態様では、低下したCAR 活性を持つマウスにおける生理学的効果の大きさが、ヒトCAR 受容体を発現させるマウスにおける効果の大きさよりも、少なくとも10、25、50または75%は小さいか、または大きい。【0013】さらにもう一つの側面として、本発明は、ある化合物の代謝がCAR 受容体の活性の調節によって制御されるかどうかを決定するためのスクリーニング方法を特徴とする。この方法では、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスに化合物を投与し、その化合物の代謝速度を測定する。ヒト受容体を発現させるマウスにおける代謝速度が、低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける代謝速度より速い場合、その化合物の代謝はCAR 受容体の活性の調節によって制御されると決定される。ヒトCAR 受容体を発現させるマウスにおける代謝速度は、低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける代謝速度より、少なくとも2 、5 、10または20倍は速いことが好ましい。好ましい態様では、化合物の投与によって媒介される毒性または活性を測定すること、化合物の半減期を測定すること、または肝酵素の血清レベルを測定することによって、代謝速度が決定される。これらの測定は、化合物の投与後に、1 、3 、または5 時点より多い時点で行なわれることが好ましい。【0014】もう一つの側面として、本発明は、第1 化合物の代謝が第2 化合物によって調節されるかどうかを決定するためのスクリーニング方法を提供する。この方法では、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスに、第2 化合物の存在下および不在下で第1 化合物を投与する。第1 化合物の投与によって媒介される生理学的効果を第2 化合物の存在下または不在下で測定する。第2 化合物が第1 化合物の投与によって媒介される生理学的効果の変化をもたらす場合、その第2 化合物は、第1 化合物の代謝を調節すると決定される。好ましい態様では、第1 化合物の投与によって媒介される毒性または活性を測定すること、または第1 化合物の半減期を測定することによって、生理学的効果がアッセイされる。種々の好ましい態様では、毒性または活性が第1 化合物の代謝産物によって媒介される。さらにもう一つの好ましい態様では、第2 化合物の存在下および不在下で第1 化合物の半減期を測定することによって、生理学的効果がアッセイされる。第2 化合物が半減期を減少させる場合、その第2 化合物は第1 化合物の代謝を活性化すると決定され、第2 化合物が半減期を増加させる場合、その第2 化合物は第1 化合物の代謝を阻害すると決定される。【0015】ある化合物がCAR 受容体の活性または別の化合物の代謝を調節するかどうかを決定するための同様の方法を、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスを使って行なうこともできる。例えば本発明は、ある化合物がCAR 受容体を活性化するかどうかを決定するためのスクリーニグ方法を特徴とする。この方法では、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスに化合物を投与し、CAR 標的遺伝子の誘導を測定する。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける誘導が野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける誘導より小さい場合、その化合物はCAR 受容体を活性化すると決定される。好ましい態様では、低下したCAR 受容体活性を持つマウスにCAR 受容体インバースアゴニストも投与される。インバースアゴニストはアンドロスタノールであることが好ましい。【0016】もう一つの側面として、本発明は、ある化合物がCAR 受容体を阻害するかどうかを決定するためのスクリーニング方法を特徴とする。この方法では、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスに化合物を投与し、その化合物の存在下および不在下でCAR 標的遺伝子の発現を測定する。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける化合物によって達成される発現の減少が、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける発現の減少より小さい場合、その化合物はCAR 受容体を阻害すると決定される。好ましい一態様では、低下したCAR 受容体活性を持つマウスに、CAR 受容体アゴニストも投与される。好ましくは、CAR 受容体アゴニストはTCPOBOP であり、TCPOBOP は化合物の後に投与される。【0017】さらにもう一つの側面として、本発明は、ある化合物がCAR 受容体の活性を調節するかどうかを決定するためのスクリーニング方法を特徴とする。この方法では、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスに化合物を投与し、その化合物の投与によって媒介される生理学的効果を測定する。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける生理学的効果の大きさが、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける生理学的効果の大きさとは異なる場合、その化合物はCAR 受容体の活性を調節すると決定される。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける生理学的効果の大きさと、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける生理学的効果の大きさとの相違は、少なくとも2 、5 、10または20倍であることが好ましい。他の好ましい態様では、低下したCAR 活性を持つマウスにおける生理学的効果の大きさが、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける効果の大きさよりも、少なくとも10、25、50または75%は小さいか、または大きい。さらに他の好ましい態様では、化合物の投与によって媒介される毒性または活性を測定すること、または化合物の半減期を測定することによって、生理学的効果がアッセイされる。もう一つの好ましい態様では、毒性または活性が、化合物の代謝産物によって媒介される。【0018】さらにもう一つの側面として、本発明は、ある化合物の代謝がCAR 受容体の活性の調節によって制御されるかどうかを決定するためのスクリーニング方法を提供する。この方法では、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスに化合物を投与し、その化合物の代謝速度を測定する。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける代謝速度が野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける代謝速度より遅い場合、その化合物の代謝は、CAR 受容体の活性の調節によって制御されると決定される。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおける代謝速度は、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける代謝速度よりも、少なくも2 、5 、10または20倍は遅いことが好ましい。【0019】好ましい態様では、化合物の投与によって媒介される毒性または活性を測定すること、化合物の半減期を測定すること、または肝酵素の血清レベルを測定することによって、代謝速度が決定される。これらの測定は、化合物の投与後に、1 、3 または5 時点より多い時点で行なわれることが好ましい。【0020】さらにもう一つの側面として、本発明は、第1 化合物の代謝が第2 化合物によって調節されるかどうかを決定するためのスクリーニング方法を特徴とする。この方法では、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスに、第2 化合物の存在下および不在下で第1 化合物を投与する。第1 化合物の投与によって媒介される生理学的効果を第2 化合物の存在下または不在下で測定する。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおいて、第2 化合物によってもたらされる、第1 化合物の投与によって媒介される生理学的効果の変化が、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける変化より小さい場合、その第2 化合物は、第1 化合物の代謝を調節すると決定される。好ましい態様では、第1 化合物の投与によって媒介される毒性または活性を測定すること、または第1 化合物の半減期を測定することによって、生理学的効果がアッセイされる。種々の好ましい態様では、毒性または活性が第1 化合物の代謝産物によって媒介される。もう一つの好ましい態様では、第2 化合物の存在下および不在下で第1 化合物の半減期を測定することによって、生理学的効果がアッセイされる。低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおいて第2 化合物がもたらす半減期の減少が、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける半減期の減少よりも小さい場合、その第2 化合物は第1 化合物の代謝を活性化すると決定され、低下したCAR 受容体活性を持つマウスにおいて第2 化合物がもたらす半減期の増加が、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける半減期の増加よりも小さい場合、その第2 化合物は第1 化合物の代謝を阻害すると決定される。【0021】本発明の種々の側面の好ましい態様において、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスは、トランスジェニック動物である。CAR 受容体活性を低下させる突然変異は、CAR 受容体活性を実質的に排除することが好ましい。さらに他の好ましい態様として、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスと、野生型CAR 受容体活性を持つマウスとは、CAR 受容体遺伝子、プロモーターまたは制御配列中の突然変異を除いて、同じ遺伝子型を持つ。さらに他の好ましい態様では、野生型CAR 受容体活性を持つマウスは、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスである。ヒトCAR 受容体を発現させるマウスは、実質的に活性なネズミCAR 受容体を発現させないか、またはいかなるネズミCAR 受容体も発現させないことが好ましい。【0022】好ましいCAR 標的遺伝子は、ネズミCYP2B10 (配列番号11、アクセッション番号NM_009998)、およびヒトCYP2B6(配列番号12、GenBank アクセッション番号AC023172)を含む導入遺伝子である。他の好ましいCAR 標的遺伝子として、ネズミCYP3A11 (配列番号13、アクセッション番号NM_07818 )、およびヒトCYP3A4(配列番号14、アクセッション番号A34101)を含む導入遺伝子が挙げられる。他の考え得るCAR 標的遺伝子として、他のCYP 酵素または生体異物代謝に関与する他の酵素が挙げられるが、これらに限るわけではない。CAR 標的遺伝子には、レポーター遺伝子、例えばヒト成長ホルモン、分泌型アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、CYP2B6、または他の任意のレポーター遺伝子に作動可能に連結されたCAR 応答性プロモーターを含めることもできる(例えばAusubel ら「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,2000 )の第9 章を参照されたい)。適切なプロモーターの例としては、天然CYP プロモーター、例えば、先に記載されたフェノバルビタール応答配列(Honkakoskiら,Mol.Cell.Biol.18:5652-5658,1998)を含むCYP2B10 プロモーター(GenBank アクセッション番号U48732、Honkakoskiら,J.Biol.Chem.271,9746-9753,1996 )、CYP2B6プロモーター(GenBank アクセッション番号AC023172)、CYP3A11 プロモーター(Toide ら,Arch.Biochem.Biophys.338(1):43-49,1997 )、CYP3A4プロモーター(アクセッション番号AF185589)など、またはCAR/RXR ヘテロ二量体に対するDNA 結合部位が機能的な基礎プロモーターに作動可能に連結されている合成プロモーターコンストラクト(Tzameli ら,Mol.Cell.Biol.20:2951-2958,2000)が挙げられる。【0023】他の好ましい態様では、本発明のスクリーニング方法で試験される化合物の少なくとも1 つは、全て同時にマウスに投与される少なくて2 または5 化合物ないし多ければ10、20、または50以上の化合物のライブラリーの1 構成要素である。化合物の好ましい投与経路には、経口、筋肉内、静脈内、非経口、動脈内、腹腔内、皮下、または他の任意の適切な経路が含まれる。CAR 受容体を活性化する化合物、またはCAR 受容体の活性の調節によってその代謝が制御される化合物は、薬物開発から除外される。第1 化合物が第2 化合物の代謝を活性化する場合は、その第1 化合物、第2 化合物、または両化合物を、薬物開発から除外することが好ましい。低下したCAR 受容体活性を持つかヒトCAR 受容体を発現させる他の動物モデル、例えばラット、または他の齧歯類動物も、本発明の種々の側面のいずれにも、使用することができると考えられる。【0024】「CAR 受容体活性」とは、「CAR 標的遺伝子」と呼ばれる遺伝子またはCAR 応答性プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子の、CAR 媒介性の誘導を意味する。CAR 標的遺伝子または導入遺伝子の誘導レベルは、コードされているmRNAまたはタンパク質のレベルを測定するための標準的アッセイを使って決定することができる(例えばAusubel ら「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley & Sons,ニューヨーク,2000 )を参照されたい)。もう一つの選択肢として、CAR 標的遺伝子の酵素活性、例えばCYP2B10 CAR 標的遺伝子の7-ペントキシレゾルフィンO-デアルキラーゼ活性などを測定してもよい(Pellinenら,Hepatology 23:515-23,1996)。CAR 標的遺伝子の例としては、CYP2B10 、CYP2B6導入遺伝子、CYP3A11 、およびCYP3A4導入遺伝子が挙げられ、CAR 応答性プロモーターの例としては、CYP2B10 、CYP2B6、CYP3A11 およびCYP3A4プロモーター、およびCAR/RXR ヘテロ二量体のDNA 結合部位に作動可能に連結されたプロモーターが挙げられる。もう一つの選択肢として、体重に対する肝重量の増加、アラニンアミノトランスフェラーゼなどの肝酵素の血清中への放出量の増加、または肝臓におけるDNA 合成の増加を、本明細書に記載するアッセイで決定することによって、CAR 受容体活性の増加をアッセイすることもできる。TCPOBOP を含む数多くの生体異物化合物に応答して起こるCAR 媒介性の誘導を測定することができる。【0025】「突然変異」とは、当該核酸配列によってコードされるアミノ酸配列が天然の配列と比較して少なくとも1 つのアミノ酸改変を持つような核酸配列の改変を意味する。突然変異は、例えば挿入、欠失、フレームシフト突然変異、またはミスセンス突然変異などであってよいが、これらに限るわけではない。あるいは、突然変異は、CAR 受容体プロモーター、転写制御配列の配列または翻訳制御配列を、CAR mRNAまたはタンパク質の発現量が減少するように変化させてもよい。突然変異は、コードされているCAR 受容体の活性を、天然CAR 受容体の活性と比較して少なくとも25、35、50、70、80、90、95、99または100 %低下させることが好ましい。もう一つの好ましい態様として、CAR 受容体に突然変異を持つマウスに投与された生体異物に応答して起こるCAR 標的遺伝子の誘導のレベルは、CAR mRNAまたはタンパク質を発現させないCAR ヌルマウスにおける対応する誘導のレベルの10、5 または2 倍未満である。【0026】「トランスジェニック」とは、細胞中に技術的手段によって挿入され、かつその細胞から発生する生物のゲノムの一部となるDNA 配列を含む、任意の細胞または生物を意味する。本明細書にいうトランスジェニック生物は、概してトランスジェニック非ヒト哺乳動物であり、好ましくはマウスなどの齧歯類動物である。【0027】「CAR 受容体活性を実質的に排除する」とは、CAR 受容体活性を天然CAR 受容体の活性と比較して25、35、50、70、80、90、95、99または100 %低下させることを意味する。もう一つの好ましい態様では、残存CAR 受容体活性レベルが、CAR mRNAまたはタンパク質を発現させないCAR ヌルマウスにおける対応するCAR 受容体活性レベルの10、5 または2 倍を越えない。【0028】「実質的に活性なネズミCAR 受容体」とは、正常ネズミ宿主においてGenBank アクセッション番号2267575 がコードする天然ネズミCAR 受容体(Choiら,J.Biol.Chem.272:23565-23571,1997 )(配列番号1 )のCAR 受容体活性の少なくとも30、60、80、90、95または100 %を持つことを意味する。【0029】「ヒトCAR 受容体」とは、GenBank アクセッション番号458541によってコードされる天然ヒトCAR 受容体のアミノ酸配列(Baesら,Mol.Cell.Bio.14:1544-1551,1994 )(配列番号2 )と少なくとも75、80、90、95、99または100 %同一なアミノ酸配列を持ち、かつ同一条件でのアッセイで、天然ヒトCAR 受容体のCAR 受容体活性の少なくとも50、75、80、90、95または100 %を持つタンパク質を意味する。発現されるヒトCAR 受容体は、天然ヒトCAR 受容体の対応する領域と少なくとも75、80、90、95、99または100 %同一なアミノ酸配列を持ち、かつ天然ヒトCAR 受容体のCAR 受容体活性の少なくとも60、80、90、95または100 %を持つ断片であってもよいと考えられる。さらに、ヒトCAR 受容体はクロトリマゾールによって阻害される。クロトリマゾールはヒトCAR のインバースアゴニストであるが、ネズミCAR のインバースアゴニストではない(Moore ら,J.Biol.Chem.275:15122-15127,2000 )。【0030】「CAR 受容体の活性化」とは、CAR 標的遺伝子またはCAR 応答性プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子のCAR 媒介性誘導率の増加を意味する。マウスにおけるCAR 標的遺伝子または導入遺伝子の誘導の増加は、本明細書に記載するアッセイを用いて測定した場合に、コードされているmRNAまたはタンパク質のレベル、CAR 標的遺伝子の酵素活性、相対的肝重量、アラニンアミノトランスフェラーゼなどの肝酵素の血清中への放出量、または肝臓におけるDNA 合成の2 、5 、10または20倍の増加をもたらすことが好ましい。もう一つの好ましい態様では、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける誘導の増加は、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスにおける誘導の増加よりも、2 、5 、10または20倍大きい。【0031】好ましい一態様では、CAR 受容体の候補活性化物質およびCAR 受容体インバースアゴニストを、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスまたはヒトCAR 受容体を発現させるマウスに投与する。CAR 標的遺伝子の誘導レベルを、候補活性化物質の存在下および不在下で測定して、その候補活性化物質がCAR 標的遺伝子の誘導レベルの上昇をもたらすかどうかを決定する。CAR 受容体インバースアゴニストの投与は、CAR 標的遺伝子の初期誘導レベルを低下させ、よって候補活性化物質が媒介する誘導の増加を検出しやすくするだろう。【0032】「CAR 受容体を阻害する」とは、CAR 標的遺伝子またはCAR 標的遺伝子のプロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子の誘導率を低下させることを意味する。マウスにおけるCAR 標的遺伝子または導入遺伝子の誘導の減少は、本明細書に記載するアッセイを用いて決定した場合に、コードされているmRNA、タンパク質、酵素活性、相対的肝重量、肝酵素の血清中への放出、または肝臓におけるDNA 合成のレベルを2 、5 、10または20倍減少させることが好ましい。もう一つの好ましい態様では、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける誘導率の低下は、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスにおける誘導率の低下よりも、2 、5 、10または20倍大きい。【0033】好ましい一態様では、CAR 受容体の候補阻害物質およびCAR 受容体アゴニストを、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスまたはヒトCAR 受容体を発現させるマウスに投与する。CAR 標的遺伝子の誘導レベルを、候補阻害物質の存在下および不在下で測定して、その候補阻害物質がCAR 標的遺伝子の誘導レベルの低下をもたらすかどうかを決定する。CAR 受容体アゴニストの投与は、CAR 標的遺伝子の初期誘導レベルを上昇させ、よって候補阻害物質が媒介する誘導の減少を検出しやすくするだろう。【0034】「野生型CAR 受容体活性を持つ」とは、天然のネズミまたはヒトCAR 受容体の活性と実質的に同じ活性を持つことを意味する。ここで使用する「実質的に同じ」とは、天然CAR 受容体の活性の少なくとも80、90、95、99または100 %を意味する。CAR 標的遺伝子またはCAR 応答性プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子を誘導するというCAR 受容体の能力は、コードされているmRNA、タンパク質もしくは酵素活性に関するアッセイ、または相対的肝重量、血清中に放出された肝酵素、またはDNA 合成に関するアッセイを使って、ごく普通に測定することができる。【0035】「代謝を調節する」とは、化合物のCYP 触媒反応、例えば化合物の酸化反応などの速度を上昇または低下させることを意味する。例えば、化合物の代謝速度は、酸化生成物の生成速度または酸化中間体から生成する後続の生成物の生成速度として測定することができる。あるいは、代謝速度は、初期化合物の半減期もしくは消失速度として、または初期化合物もしくは初期化合物からCYP 依存的に生成する代謝産物の毒性もしくは活性の変化として表してもよい。例えば、第1 化合物の半減期、毒性または活性が第2 化合物の存在下で増加または減少する場合、その第2 化合物は第1 化合物の代謝を調節するという。第1 化合物または第1 化合物の代謝産物の半減期、毒性、または活性の変化は、第2 化合物の不在下での対応する半減期、毒性または活性の少なくとも25、50、100 、200 、500 または1000%であることが好ましい。もう一つの好ましい態様では、野生型CAR 受容体活性を持つマウスにおける半減期、毒性または活性の変化が、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を持つマウスにおける半減期、毒性または活性の変化よりも、少なくとも2 、5 、10または20倍大きい。種々の好ましい態様では、本明細書に記載するアッセイのいずれかによる測定で、第2 化合物は、第1 化合物または第1 化合物の代謝産物の半減期、活性または毒性の大きさを少なくとも2 、5 、10または20倍変化させる。【0036】半減期は、様々な時点でマウスから採取した試料中に存在する化合物の量を決定することによって測定することができ、化合物の量は、高速液体クロマトグラフィー、質量分析法、化合物特異抗体を用いるウェスタンブロット解析などの標準的方法、または他の任意の適切な方法を使って定量することができる。好ましい態様では、第1 化合物または第1 化合物の代謝産物の毒性または活性に必要な反応(例えば活性化された代謝産物とDNA 、RNA 、またはタンパク質との反応)が、第2 化合物の不在下での対応する速度の少なくとも25、50、100 、200 、500 または1000%である。第1 化合物または第1 化合物の代謝産物の毒性は、相対的肝重量、血清中に放出された肝酵素の量、またはマウスの肝臓におけるDNA 合成速度を決定することによって測定することもできる。また、CAR 受容体の下流にあって生体異物代謝に関与する別の酵素によって触媒される反応の速度が上昇または低下する場合もあると考えられる。好ましい一態様では、第2 化合物が、CAR 受容体を活性化または阻害することによって第1 化合物の代謝を調節する。【0037】「化合物の活性」とは、化合物によって媒介される生物学的効果を意味する。考え得る化合物の活性の例としては、他の分子への結合、分子間の結合相互作用の調節、酵素の触媒速度の調節、生理的変化または行動変化の誘導、または化合物の他の任意の治療関連活性が挙げられる。【0038】「生理学的効果」とは、上述のように、ある化合物によって媒介される毒性効果、活性、またはCAR 標的遺伝子の発現の調節を意味する。代謝を受けて、初期化合物とは異なる毒性または活性レベルを持つ代謝産物を生成する化合物の場合、化合物の生理学的効果は、化合物の半減期を決定することによって測定することもできる。【0039】「プロモーター」とは、作動可能に連結された遺伝子の転写を指示するのに十分な最小配列を意味する。プロモーターは遺伝子の転写を調節する5'制御配列に作動可能に連結することもできる。【0040】本発明により、数多くの利点が得られる。例えば本発明の方法を使用することにより、ある化合物の類似体であって、CAR 受容体を活性化する能力が低下しているか、または検出不可能であるために、生体内での副作用が減少しているか、または半減期が長くなっていると予想されるものを、容易に同定することができる。さらに、ネズミおよびヒトCAR 受容体は多少異なる基質特異性を持つので、本発明の方法において、ヒトCAR 受容体を発現させるトランスジェニックマウスを使用することにより、ある化合物の、ヒトに投与した場合の半減期またはCAR 受容体毒性の調節を、より正確に予測することができる。さらにまた、本アッセイは容易かつ迅速に実行することができる。【0041】本発明の他の特徴および利点は、特許請求の範囲および以下の詳細な説明から明らかになるだろう。【0042】(詳細な説明)本スクリーニング方法およびスクリーニングシステムは、核ホルモン受容体CAR (NR1I4 )遺伝子を欠くマウスが、古典的CYP 基質ゾキサゾラミンの代謝の低下を示し、フェノバルビタールまたはより強力な誘導物質TCPOBOP による処置時に、CYP2B10 遺伝子の発現を活性化することまたは肝臓の肥大もしくは過形成応答を引き起こすことができないという発見に由来している。これに対し、野生型マウスでは強い活性化と毒性がみられた。さらに、どちらかの誘導物質の存在下でコカイン処置を施すと、野生型マウスでは急性肝毒性が生じたが、CAR-/-「ノックアウト」マウスでは検出可能な毒性は生じなかった。したがって本発明は、CAR 受容体活性が低下しているかまたはCAR 受容体活性を持たないマウスへの投与後対野生型マウスへの投与後のCAR 標的遺伝子の活性化、毒性、および化合物の半減期を比較するためのスクリーニング方法を提供する。これらの方法により、CAR 受容体を活性化し、哺乳動物(例えばヒト)にとって潜在的に毒性である化合物、およびCAR 受容体を阻害し、哺乳動物に投与された医薬活性化合物の毒性またはCYP 媒介性代謝を低下させる化合物の同定が可能になる。【0043】CAR 受容体ノックアウトマウスCAR の機能的役割を評価するために、本発明者らは、DNA 結合ドメインの一部を含むCAR 遺伝子のプロモーター近接セグメントがβ- ガラクトシダーゼのコーディング領域で置換されている2 つの独立したマウス株を作出した(図1A)。予想どおり、これらのβ- ガラクトシダーゼ「ノックイン」動物は、CAR mRNAを発現させることができなかった(図1C)。このCAR 発現の喪失は顕性な表現型を何ももたらさず、ホモ接合性CAR-/-動物は、予想されるメンデル比で生まれ、雄および雌-/- 動物はどちらも繁殖能を持っていた。【0044】CAR は主に肝臓で発現されると、先に報告されている。CAR 発現パターンをより詳しく記述するために、CAR+/-ヘテロ接合体におけるβ- ガラクトシダーゼ発現を調べた。予想どおり、β- ガラクトシダーゼマーカーは肝臓で発現され、発現は門脈付近が最も高かった。β- ガラクトシダーゼ発現は小腸の上皮細胞にも見られた。【0045】PB様誘導物質に対する応答におけるCAR の役割を調べるために、野生型動物およびCAR-/-動物をPBまたはTCPOBOP で処置した場合の効果を調べた。これら2 つの化合物のいずれかに応答して野生型雄または雌動物で起こるCYP2B10 mRNA発現の強い誘導は、ノックアウト動物では完全に欠けていた(図2A)。独立したCAR-/-株のどちらでも同様の結果が得られた。このCAR 要求性は、インサイチューハイブリダイゼーションを使って、小腸でも実証された。図2Bに示すように、PBまたはTCPOBOP は、野生型動物のこの組織でもCYP2B10 発現を誘導したが、CAR-/-動物ではCYP2B10 発現を誘導しなかった。特異的ハイブリダイゼーションの上皮細胞への限局は、先の結果と合致し、上述したCAR 発現パターンとも合致した。【0046】CYP2B10 の誘導と同様に、PBまたはTCPOBOP に応答して起こるネズミCYP3A11 mRNAの実質的な誘導も、野生型マウスでは観察された(図5A)。これに対し、対照CAR-/-マウスで検出されるCYP311の誘導は、無視できるレベルだった(図5B)。【0047】PB様誘導物質、特にTCPOBOP による急性処置は、総体重に対する肝重量の2 倍までの増加を引き起こす。この肝腫大は、細胞肥大と有糸分裂の両方を反映していると考えられる。CAR-/-マウスは、PBまたはTCPOBOP による処置の3 日後に、野生型マウスにみられる肝重量増加の徴候を示さなかった(図3A)。野生型動物におけるBrdUの取込み量の増加によって明らかになったDNA 合成の生体異物誘導も、CAR-/-動物では完全に欠けていた(図3B)。【0048】これらの結果は、PB様誘導物質に対するこれらの応答にとって、CAR が不可欠であることを証明している。この結論は、CAR 発現の喪失が2 つの生体異物の代謝に及ぼす効果を調べることによって確認され、拡張された。1 つは古典的基質ゾキサゾラミンである。CYP 酵素活性の増加が、ゾキサゾラミン誘発性麻痺の持続時間の減少に反映されるこの筋弛緩剤の代謝的不活性化の増加をもたらすことは、多くの研究によって証明されている。表1 および2 に示すように、野生型動物をPBまたはTCPOBOP で前処置すると、予想どおり、麻痺の持続時間が有意に減少した。無処置CAR-/-マウスにおける麻痺の持続時間は、野生型マウスにおける持続時間より有意に長くて上述の結果と合致し、麻痺はPBまたはTCPOBOP での前処置による影響を受けなかった。例えば、野生型対照雌マウスでは麻痺が12時間以上続いたが、生体異物前処置を受けた野生型雌マウスでは麻痺が起こらなかった。CAR-/-雌マウスのうち、対照群、PB処置群またはTCPOBOP 処置群のそれぞれ2 匹は死亡し、生残マウスにおける麻痺は12時間以上続いた。【0049】【表1】【表2】これらの実験では、マウスをPBまたはTCPOBOP で3 日間前処置した後、ゾキサゾラミン(300mg/kg)を単回腹腔内注射した。麻痺時間は、マウスが繰り返して起き直ることができた時の時間として記録した。【0050】PB様誘導物質で処置すると、動物は、コカインを含む多くの化合物の肝毒性効果に対して敏感にもなる。図4 に示すように、PBまたはTCPOBOP による処置は、コカイン投与に対する急性応答として、肝酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT )の血清レベルを有意に増加させた。この肝損傷の証拠はCAR-/-動物では観察されなかった。【0051】これらの結果から、生体異物代謝のPB様誘導物質に対する応答にはCAR が必要であり、したがってCAR は、生体内でPB様誘導物質に対する応答を媒介する生体異物受容体として機能することが、明解に証明された。したがって、外来化合物に対する第1 相代謝酵素の応答の一次決定因子として、先に記載されたペルオキシソーム増殖剤応答性受容体αおよびアリール炭化水素受容体に、CAR を加えることができる。CAR は、異なる生体異物群に対する応答を媒介することが最近明らかにされた、受容体スーパーファミリー内で最も近縁なPXR/SXR と共に、これに加えられる。CAR とPXR/SXR のDNA 結合特異性および生体異物応答はどちらもある程度は重なっていると報告されているが、CAR ノックアウト動物において後者の補償効果を示す証拠は何も観察されていない。したがって、特定の生体異物が、異なる受容体を活性化することによって、特定の代謝応答を誘導できることは、今では明らかである。【0052】この機序は、ある化合物、例えばフェノバルビタールなどの存在が、他の薬物または外来化合物の代謝の増加をもたらす臨床的に重要な数多くの薬物- 薬物相互作用の説明になるかもしれない。特定の生体異物へのばく露の相違に基づく個体間の生体異物受容体の活性化レベルの相違は、特定シトクロムのレベルが個体間でかなり変動することの説明にもなるかもしれない。マウスCYP2B10 の基礎レベルが極めて低いことと呼応して、ほとんどのヒトでは、CAR 活性化のヒト標的であるCYP2B6のレベルは低いか、検出不可能である。しかし、一部の個体には、この酵素が最高100 倍高いレベルで存在する。ここに記載する結果から、この変動性は、高レベルのコカインにばく露された一部の個体に観察される比較的稀ではあるが臨床的に重要な肝毒性の根拠となりうることが示唆される。より一般的に述べると、広範囲にわたるPB様誘導物質に応答して生じるCAR 活性の変動は、広範囲にわたる医薬および他の外来化合物の代謝に対して、有意な影響を持つかもしれない。本明細書に記載するCAR マウスは、生体内でCAR を活性化することができる化合物の同定を容易にすると共に、その効果を媒介する新たな特異的下流標的遺伝子の同定も可能にする。【0053】上記の実験は以下のように行なった。【0054】ターゲティングベクターの構築CAR 遺伝子座用のターゲティングベクターを構築するために、ベクターpPD46.21由来の核局在性β- ガラクトシダーゼ遺伝子を含むXbaI-EagI 断片を、pGKneoプラスミドのXbaIおよびEcoRI 部位にサブクローニングした。AB1 ES細胞から得たDNA を使って、5'アームおよび3'アーム用のCAR ゲノム断片を増幅した。5'アームとして、3kb CAR プロモーター断片をApaIおよびXbaI部位にクローニングした。3'アームとして、エキソン3 〜9 をまたぐ5kb 断片をSalIおよびNotI部位にクローニングした。5'アーム用のプライマーは5'-gcgcgcgggccctggcatacattaacacaaacacatacatat-3'(配列番号3 )および5'-gcgcgctctagaaggacccagactctggacccagggcaaaga-3'(配列番号4 )とした。3'アーム用のプライマーは5'-gcgcgcgtcgacaggtgaagtgcttctccccaacagaaacaa-3'(配列番号5 )および5'-gcgcgcgcggccgctgtcctgggagcagcctctgcagccgct-3'(配列番号6 )とした。【0055】CAR 受容体ノックアウトマウスの作出Bio-Rad Gene Pulser (500 μF 、230V)を使用し、0.9ml のPBS 中で、AB1 ES細胞(107 個)に、25μg のターゲティングコンストラクトを使ったエレクトロポレーションを行なった。次に、それらの細胞を、照射STO フィーダー細胞の単層を含む1 または2 枚の10cmプレートに播種した。24時間後に、それらを9 日間のG418選択(350 μg/ml、Gibco )にかけた。HindIII 消化後に、耐性クローンを、図1Aに示す3'プローブを使ったサザンブロット法によって解析した(図1B)。3'プローブ用のプライマーは5'-ggacaacctcagcccacagtgatgc-3' (配列番号7 )および5'-tcctttggttaccacctgactctgc-3' (配列番号8 )とした。2 つの陽性クローンを増殖させ、C57BL/6 胚盤胞に注入した。雄キメラを雌C57BL/6 に戻し交配した。ヘテロ接合体をサザンブロット法によって決定し、交雑してホモ接合体を作出した。【0056】動物の処置各処置には8 〜10週齢のマウスを少なくとも3 匹は使用した。マウスを、トウモロコシ油、PB(100mg/kg、Sigma )またはTCBOPOP (3mg/kg)の腹腔内注射により、表示した時間にわたって、前処置した。3 日間のPB処置の場合は、マウスにPBを毎日1 回、計3 回腹腔内注射した。【0057】ゾキサゾラミン麻痺試験トウモロコシ油、PBまたはTCPOBOP で前処置したマウスに、ゾキサゾラミン(300mg/kg、Sigma )の単回腹腔内注射を、PBの最後の投与の24時間後に施した。マウスを仰向けに置き、麻痺時間は、動物が十分な意識を回復して繰り返し起き直るのに必要な時間と定義した(Liang ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:1671-6,1996)。【0058】コカイン処置およびALT アッセイトウモロコシ油、PBまたはTCPOBOP で前処置した雄マウスに、PBの最後の投与の24時間後に、コカイン塩酸塩(30mg/kg )を腹腔内注射した。コカイン処置の24時間後にマウスを麻酔した。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT )活性を決定するために、眼から血液を採取した。【0059】RNA 解析個々のマウス肝臓から得た20μg の全RNA をノーザンブロット解析にかけた(図1C)。マウスCAR cDNAプローブを使って、CAR ヌルマウスにCAR 転写物が存在しないことを明らかにした。CYP2B10 用のプローブは、Superscript One-step RT-PCR System(Life Technologies )を使用し、マウス肝臓全RNA を使ったRT-PCRによって調製した。PCR プライマーは5'-ccgcctctagaagtcaacattggttagac-3' (配列番号9 )および5'-ccgccggatcccacactaagcctcataat-3' (配列番号10)とした。インサイチューハイブリダイゼーションを行なうために、小腸組織を厚さ7 μm の横断切片に薄切した。スライドを[35S] 標識CYP2B10 アンチセンスプローブによるインサイチューハイブリダイゼーションにかけた。プローブを調製するために、CYP2B10 RT-PCR産物をBluescript(登録商標)SK(-) ファージミド(Stratagene)のXbaIおよびBamHI 部位にサブクローニングした。そのプラスミドをXbaIで線状化した。T7 RNAポリメラーゼを使って、[35S] 標識アンチセンスプローブを合成した。【0060】PBまたはTCPOBOP 処置後の肝細胞増殖の決定トウモロコシ油、PBまたはTCPOBOP で前処置したマウスに、BrdU/FdU(2ml/100g、Amersham)を単回腹腔内投与した。BrdU投与の2 時間後にマウスを屠殺した。マウス抗BrdUモノクローナル抗体(DAKO Corporation)およびVectastain ABC Kit(Vector Laboratories Inc.)を使って、標準的方法により、BrdU取込み量を決定した(図3B)。【0061】ヒトCAR 受容体を発現させるマウスの作出ヒトとマウスのCAR 遺伝子のリガンド結合ドメインはアミノ酸配列が多少異なり、これら2 つのタンパク質は一部の活性化物質に異なる応答をすることが知られている。具体的に述べると、TCPOBOP はネズミCAR 受容体のアゴニストリガンドであるが、ヒトCAR 受容体のアゴニストリガンドではない(Tzameli ら, 前掲)。同様にクロトリマゾールはヒトCAR 受容体のインバースアゴニストであるが、ネズミCAR 受容体のインバースアゴニストではない(Moore ら, 前掲)。そのため、機能的なヒトCAR 受容体を発現させるCAR-/-ノックアウトマウスも、薬物スクリーニングの有用なモデルになる。というのも、薬物または他の生体異物化合物に対するそれらの応答は、ネズミCAR 受容体ではなく、ヒトCAR 受容体に基づくはずだからである。そのような「ヒト化」CAR マウスは、マウスでは顕性でないかもしれない潜在的に有害な効果を人体で示す化合物(例えば臨床開発中の化合物)の同定を可能にする。【0062】ネズミCAR は持っていないがヒトCAR 受容体を発現させるヒト化CAR マウスは、いくつかの標準的方法のいずれによっても作出することができる(例えばAusubel ら(前掲)の第9 章を参照されたい)。例えば、肝臓などの適切な組織で活性なプロモーターからヒトCAR 遺伝子を発現させる通常のトランスジェニック動物を作出することができる。そのようなプロモーターの例としては、アルブミン(Xie ら,Nature 406:435-439,2000)、トランスチレチン(Yeら,Mol Cell Biol.19:8570-8580,1999)、またはCAR 自体の発現を指示するプロモーターが挙げられる。次に、このヒトCAR 導入遺伝子を、ホモ接合性CAR-/-マウスに、通常の繁殖によって導入することができる(Pierson ら,Mol.Endocrinol.14:1075-1085,2000 ;Sleeら,Proc Natl Acad Sci USA. 96:8040-8045,1999)。考え得るもう一つの方法として、ヒトCAR 導入遺伝子を、ホモ接合性CAR-/-マウスから得た受精卵母細胞に注入して、所望のトランスジェニックマウスを直接作出してもよい。第3 の方法として、ホモ接合性CAR-/-動物から胚性幹細胞を作製してもよい(Ausubel ら(前掲)の第9 章)。次に、通常の相同組換え技術を使って、不活性ネズミCAR 遺伝子を機能的なヒトCAR 受容体遺伝子で置き換えることができる(Fiering ら,Methods Enzymol.306:42-66,1999 )。CAR-/-動物はG418に対する耐性を付与するneo 遺伝子を持つので、ヒトCAR 置換コンストラクト中にハイグロマイシンなどの適切な遺伝子をもう1 つ使って、不活性ネズミCAR 遺伝子がヒトCAR 遺伝子に置き換えられている細胞を選択することができるようにしてもよい。さらにもう一つの考え得る方法として、遺伝子治療法と、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、非ウイルスベクター、または他の任意の適切なベクターに含まれている、適切な組織中で活性なプロモーター、例えば上述のプロモーターとを使って、機能的なヒトCAR 受容体遺伝子を、ホモ接合性CAR-/-マウスに導入してもよい(例えばSarkarら,Hum Gene Ther.11:881-894,2000;Goddard ら,Gene Ther.4:1231-1236,1997 を参照されたい)。【0063】ヒトCAR 受容体を発現させるマウスを作出するための導入遺伝子コンストラクトヒトCAR 受容体を発現させるマウスを作出するために取りうる方法の一つとして、図6 に示す導入遺伝子コンストラクトを使用した。このトランスジェニックコンストラクトは、肝臓特異的アルブミンプロモーターに作動可能に連結されたヒトCAR 受容体のコーディング配列を含んでいる。さらに、ヒトCAR 受容体の発現を増進するために、大量に発現される遺伝子ウサギβ- グロビンに由来する領域を、プロモーターとCAR 受容体コーディング配列との間に加えた。ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化(ポリA )配列もヒトCAR 受容体コーディング配列の下流に加えた。このウシ成長ホルモン配列は、mRNA転写物の転写の終結および安定性を確実にする強いポリA 配列である。さらに、異種ポリA 配列を使用することにより、ヒトCAR の内因性ポリA 配列に相当するゲノム配列を単離する必要がなくなる。【0064】トランスジェニックヒトCAR コンストラクトを、先に記載されたいくつかのプラスミドから作製した。出発ベクターを作製するために、ウサギβ- グロビン遺伝子のエキソン2 の一部、イントロン2 、およびエキソン3 からなるBamHI-EcoRI 640 塩基対断片[Entrezアクセッション番号V00878のヌクレオチド約551 〜1190、先に記載されたベクターpKCR(Nikaido ら,Nature 311:631-635,1984)に由来]を、pBluescript プラスミド(Stratagene)の対応する部位に挿入して、ベクターKCR-KSを作製した。ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル由来の350 塩基対の平滑末端XbaI-XhoI 断片[「bGHpA 」、Entrezアクセッション番号AF335419のヌクレオチド1671-1867 を含む]をPGKNeoプラスミド(Mortensen ら,Mol.Cell Biol.12(5):2391-5,1992)から取り出し、KCR-KSベクターのEcoRV 部位に挿入して、KbpAベクターを作製した。【0065】KbpAベクターへのヒトCAR cDNAインサートのクローニングを容易にするために、本発明者らは、制限部位AvrII 、StuI、BglII 、EcoRV およびEcoRI からなるアニールしたオリゴヌクレオチドを、元のEcoRI 部位の下流、bGHpA 部位の上流に導入して、KbpA1bベクターを作製した。次に、XbaI-NotI (ギャップ充填(gap-filled))ヒトCAR cDNA(「hCAR」、1.2 キロ塩基、GenBank アクセッション番号458541)を、KbpA1bベクターのAvrII-EcoRV 部位にサブクローニングして、KbpA1b-hCAR コンストラクトを得た。次に、KCR 、hCAR cDNA およびbGHpA からなる2.5kb のHindIII-BamHI 断片を、改変bluescript 3'sk ベクターの対応する部位に連結して、ベクターKbpA1b-hCAR3'sk を得た。このステップに使用した改変bluescript 3'sk ベクターでは、元のbluescript SK ベクターの3'末端のClaI-Acc65I 領域が、AscI、SwaIおよびPacI切断部位などのユニークな8 塩基対クラスターに置き換えられている。最後に、NotIおよびBamHI で消化されたアルブミンプロモーターを含む2.3kb 断片(Ronald Evansから入手したもの、Xie ら, 前掲)を、KbpA1b-hCAR3'sk ベクターのNotIおよびBamHI 部位にクローニングして、Alb-hCARトランスジェニックコンストラクトを得た。このプラスミドはアンピシリン耐性遺伝子とColE1 複製起点とを含んでいる。【0066】Alb-hCARトランスジェニックコンストラクトを用いたヒト化CAR マウスの作出および特徴づけヒト化CAR マウスを作出するために、C57BL/6 雄と交配したC57BL/6 ドナー雌マウスから収集した受精単細胞胚をM2培地中に集め、上述の線状化Alb-hCARトランスジェニックコンストラクトを顕微注入した。その結果得られたマウスを下記のように試験して、それらがヒトCAR を発現させるかどうかを決定した。所望であれば、ヒト化CAR マウスを上述のCAR-/-ノックアウトマウスと交配することによって、ヒトCAR を発現させるがマウスCAR は欠いているマウスを作出することができる。あるいは、ヒト化CAR マウスから得たES細胞または胚を上述のように遺伝子改変して、内因性マウスCAR 遺伝子を破壊することもできる。【0067】マウスにおけるトランスジェニックコンストラクトの組込みと保持を、標準的なサザンブロット解析によって確認した。この解析を行なうために、ゲノムDNA をBamHI およびAsp718で消化した後、ヒトCAR リガンド結合ドメイン(LBD )をコードするBamHI-EcoRI 制限酵素消化配列を含む1kb 断片でプローブした。ヒトLBD 領域はネズミCAR に対する相同性が最も低い領域なので、このLBD をプローブとして使用した。予想される約1.7kb のバンドは、マウスがヒトCAR コーディング配列を持つトランスジェニックマウスであることを示す(図7Aおよび7C、*は、トランスジェニックマウスに由来するDNA を含むと同定されたレーンを表す)。この解析に基づいて、9 匹のトランスジェニックファウンダーマウスが同定された。【0068】これらのトランスジェニックマウスがヒトCAR をコードするDNA を含んでいることをさらに確認するために、PCR 解析を行なった。プライマーhCAR-hinge5'(5'-CCGGAATTCAGGAAAGACATGATACTGTCGGCAGAAGCC-3' 、配列番号15)およびhCAR3'(5'-cgcggatccGGCCGCTGCAGGCGCAGAACTGGTAGGTATGG-3' 、配列番号16)を使って、ヒトCAR cDNA配列を特異的に増幅し、1000塩基対のPCR 産物を生成させた(図7B)。陽性対照として、プライマーSCBF(5'-GAT GTG CTC CAG GCT AAA GTT-3' 、配列番号17)およびSCBR(5'-AGA AAC GGA ATG TTG TGG AGT-3' 、配列番号18)を使って、内因性マウスβ- アクチンを増幅することにより、600 塩基対のPCR 産物を生成させた。この解析により、9 匹のファウンダーマウスはヒトCAR DNA を持つことが確認された。【0069】9 つのマウス株のうち4 株はノーザンブロット解析でも試験することにより、それらが予想されるサイズ(約1.5kb )のヒトCAR mRNA転写物を発現させるかどうかを決定した。この解析を行なうために、細胞mRNAを、サザンブロット解析に使用したものと同じLBD 領域に対するプローブでプローブした。マウス株の一つが予想されるサイズのヒトCAR mRNA転写物を発現させた(図8 )。予想どおり、肝臓特異的アルブミンプロモーターの制御下にあるヒトCAR mRNAは、このトランスジェニック株の肝臓で特異的に発現した。他の3 株は予想されるサイズより大きいmRNA転写物を発現させるようであった。予想より大きいこれらのmRNA転写物は、導入遺伝子の再配列または不適切にスプライスされた構造を示すのかも知れない。4 株全てを少なくとも以下の器官におけるヒトCAR 発現について解析した:肝臓、脾臓、小腸、および膵臓。【0070】CAR 受容体活性のアッセイ本明細書に記載するホモ接合性CAR-/-動物は、CYP2B10 、CYP3A11 または他のCAR 標的遺伝子の発現を野生型動物では誘導するがCAR-/-動物では誘導しない薬物または他の生体異物化合物の同定を可能にするので、薬物代謝アッセイに役立つ。CYP2B10 またはCYP3A11 誘導の検出は、CYP2B10 またはCYP3A11 タンパク質レベルのアッセイ(例えばウェスタンブロット解析によるアッセイ)、mRNAレベルのアッセイ(例えばノーザンブロット解析によるアッセイ)、または酵素活性のアッセイ(例えばPellinenら,Hepatology 23:515-23,1996などに記載されているように7-ペントキシレゾルフィンO-デアルキラーゼ酵素活性を測定することによるアッセイ)を含むいくつかのアッセイのいずれで行なってもよい。あるいは、総体重に対する肝重量の増加または肝臓におけるDNA 合成の増加を本明細書に記載するように測定してもよい。他のCAR 標的遺伝子の同様のアッセイも使用することができる。【0071】さらにまた、内因性ネズミCAR 標的遺伝子が関わるアッセイに代わる方法として、野生型マウス、CAR-/-マウス、ヒト化CAR マウス、CAR と近縁関係にある受容体(SXR 、PXR または他の名称で知られているもの(Kliewer ら,Cell 92:73-82,1998 ;Blumbergら,Genes Dev.12:3195-3205,1998))をコードする遺伝子を欠くマウス、または他の任意の適切な株に、任意の標準的技術(例えば上述の技術)を使って挿入された適切なレポーター導入遺伝子を測定するアッセイを行なってもよい。これらのレポーター導入遺伝子は、容易に測定できるレポーター遺伝子に作動可能に連結されたCAR 応答性プロモーターからなる。適切なプロモーターの例としては、先に記載されたフェノバルビタール応答性エレメントを含んでいるCYP2B10 プロモーター(Honkakoskiら, 前掲)、CYP2B6プロモーター、CYP3A11 プロモーター、CYP3A4プロモーターなどの天然CYP プロモーター、またはCAR/RXR ヘテロ二量体のDNA 結合部位が機能的な基礎プロモーターに連結されている合成プロモーターコンストラクト(Tzameli ら, 前掲)が挙げられる。適切なレポーター遺伝子の例としては、ヒト成長ホルモン、分泌型アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、CYP2B6、CYP3A11 、および他の任意のレポーター遺伝子が挙げられる(例えばAusubel ら(前掲)の第9 章を参照されたい)。CAR 標的遺伝子のアッセイは標準的手順を含み(例えばAusubel ら(前掲)の第9 章を参照されたい)、マウスから採取された適切な試料、例えば肝臓または血清試料などに基づいて行なうことができる。もう一つの選択肢として、肝細胞または他の適切な細胞タイプを動物から収集して増殖させ、それらの細胞に化合物を投与して、その化合物がCAR 標的遺伝子またはレポーター導入遺伝子の発現を変化させるかどうかを決定することもできる。【0072】候補化合物は、ヒトCAR をコードするトランスジェニックコンストラクトを一過性にまたは安定にトランスフェクトした細胞を用いる細胞アッセイで、ヒトCAR を活性化または阻害する能力について試験することもできる。例えば、アルブミンプロモーターの制御下にあるヒトCAR をコードする図6 のAlb-hCARトランスジェニックコンストラクトを使って、ヒト肝癌由来HepG2 細胞株を一過性にトランスフェクトした。HepG2 細胞株は、CAR 応答性プロモーターの制御下にあるルシフェラーゼレポーター遺伝子を含むbetaRAREluciferaseと呼ばれる先に記載されたレポーターコンストラクトを有するプラスミドを含んでいる(Formanら,Nature 395(6702):612-5,1998)。図9 に示すように、Alb-hCAR導入遺伝子コンストラクトを細胞にトランスフェクトすると、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現レベルが、ヒトCAR コーディング配列を欠く対応する対照コンストラクトをトランスフェクトした細胞より5.2 倍高くなった。この結果は、このトランスジェニックコンストラクトが、CAR 応答性プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現を活性化できる機能的ヒトCAR をコードすることを示している。Alb-hCARコンストラクトをトランスフェクトした細胞は、ヒトCAR の活性化物質としてルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を増加させる候補化合物を同定するため、およびヒトCAR の阻害物質としてルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を減少させる候補化合物を同定するために、使用することができる。【0073】他の態様種々の用法および条件に対して本発明を採用するために、本明細書に記載した発明に改変および変更を加えうることは、上記の説明から明らかだろう。そのような態様も本願特許請求の範囲に包含される。【0074】本明細書で言及した刊行物は、個々の刊行物または特許出願について参照により本明細書に組み込まれることを個別に明示した場合と同様に、いずれも参照により本明細書に組み込まれるものとする。【図面の簡単な説明】【図1】 図1A マウスCAR 遺伝子の標的破壊の概略図である。四角い枠はエキソンを表す。エキソン2 および3 (斜線付きの枠)はDNA 結合ドメインを含んでいる。相同組換えにより、β-galおよびneo 耐性遺伝子によるエキソン1 および2 の置換が起こった。ApaI(A )、HindIII (H3)、NotI(N )、SalI(S )およびXbaI(X )について制限酵素部位を示す。図1B サザンブロット法による遺伝子型解析を示すゲルの写真である。尾試料から得たゲノムDNA をHindIII で消化し、3'プローブとハイブリダイズさせた。野生型および突然変異型対立遺伝子から、それぞれ10Kbおよび15Kbのバンドが生成した。図1C ノーザンブロット解析を示すゲルの写真である。プローブとしてネズミCAR cDNAを使用して、野生型およびCAR+/-または-/- 動物の肝臓で発現されるCAR mRNAのレベルを決定した。【図2】 図2A 肝試料におけるCAR によるCYP2B10 遺伝子の生体異物活性化を示す代表的ノーザンブロットの写真である。マウス(8 〜10週齢、各処置につき3 匹)をトウモロコシ油(CO)で6 または24時間、PBで24時間、またはTCPOBOP で6 時間処置した。図2B PBまたはTCPOBOP で3 日間処置したマウスから採取した小腸片のインサイチューハイブリダイゼーションを示す一連の写真である。インサイチューハイブリダイゼーションは[35S]標識アンチセンスCYP2B10 リボプローブを使って行なった。CAR-/-動物における1 細胞あたりの粒子数は、生体異物処置の有無によって有意に相違しない。無処置の野生型マウスにおける1 細胞あたりの粒子数はCAR 受容体ノックアウトマウスより約2 倍高く、生体異物処置した野生型マウスにおける1 細胞あたりの粒子数は無処置の野生型マウスより約2 倍高い。【図3】 図3A PBまたはTCPOBOP による肝臓肥大および肝細胞増殖を示す棒グラフである。マウス(8 〜10週齢)をPBまたはTCPOBOP で3 日間処置した後、肝重量と体重の両方を測定した。データを総体重に対する肝重量のパーセンテージとして表す。図3B 肝臓組織を収集する前にBrdUで2 時間処置したPB処置マウス、TCPOBOP 処置マウスまたは対照マウスを表す一組の写真である。代表的顕微鏡写真により、PBまたはTCPOBOP 処置した野生型動物にのみ、BrdU陽性肝細胞が存在することがわかる。【図4】 血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT )活性として測定したコカイン媒介性肝細胞毒性に対するPBまたはTCPOBOP の効果を示す棒グラフである。雄マウスをPBまたはTCPOBOP で3 日間処置した。最後の投与の24時間後に、動物にコカインを単回注射した。コカイン処置の20時間後に血液を採取して、血清ALT 活性を決定した。【図5】 図5AおよびB 肝試料におけるネズミCAR によるネズミCYP3A11 遺伝子の生体異物活性化を示す代表的ノーザンブロットの写真である。マウス(8 〜10週齢、各処置につき3 匹)をトウモロコシ油(CO)で6 または24時間、PBで24時間、またはTCPOBOP で6 時間処置した。【図6】 ヒトCAR を発現させるマウスを作出するために使用した導入遺伝子コンストラクトの概略図である。このトランスジェニックコンストラクトは、ヒトCAR のcDNA配列に作動可能に連結された肝臓特異的アルブミンプロモーターを含んでいる。ヒトCAR 転写物の発現および安定性を増大させるために、大量に発現する遺伝子ウサギβ- グロビン由来の領域と、ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化(ポリA )配列も、このコンストラクトに付加した。【図7】 図7AおよびC ヒトCAR 導入遺伝子コンストラクトを使って作出したマウスから得たゲノムDNA の代表的サザンブロットの写真である。ヒトCAR プローブに結合したDNA を含むレーンをアステリスクで示す。図7B ヒトCAR 導入遺伝子コンストラクトを使って作出したマウスから得たゲノムDNA のPCR 増幅を示す代表的ゲルである。ヒトCAR に特異的なプライマーを使ったPCR 産物の生成により、図7Aおよび7Cにおけるサザンブロット解析の結果が確認された。これらの解析に基づいて、9 匹のマウスが、ヒトCAR をコードするDNA を保有するトランスジェニックマウスであると同定された。【図8】 ヒト化CAR マウス株の一つ(6210株)におけるヒトCAR mRNA転写物の発現を表すノーザンブロットである。予想どおり、ヒトCAR mRNAは肝臓で特異的に発現された。【図9】 図6に示すヒトCAR トランスジェニックコンストラクトを一過性にトランスフェクトしたHepG2 細胞におけるCAR レポーター遺伝子の誘導体を表す棒グラフである。これらの結果は、このトランスジェニックコンストラクトが、CAR 応答性プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子の発現を活性化することができる機能的ヒトCAR をコードすることを示している。これらのトランスフェクト細胞は、候補化合物がヒトCAR を活性化または阻害するかどうかを決定するために行なわれる候補化合物のスクリーニングに使用することができる。 配列表の配列番号2のヒトCAR受容体または配列表の配列番号2に少なくとも95%以上の同一性を有する変異体をコードする核酸配列をプロモーターに動作可能に結合した配列を含むトランスジーンを含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスであって、ここで、該核酸配列の発現によって、該マウスの肝臓中にヒトCAR受容体の産生がもたらされる、トランスジェニックマウス。 前記ヒトCAR受容体がCAR標的遺伝子の発現を誘導する、請求項1記載のトランスジェニックマウス。 前記マウスのゲノムが、内在するマウス受容体遺伝子の破壊を含み、該マウスが、機能的な内在性マウスCAR受容体の産生を欠く、請求項1または2記載のトランスジェニックマウス。 前記CARの標的遺伝子が、CYP2B10またはCYP2B6をコードする遺伝子である、請求項1から3までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウス。 前記CAR標的遺伝子が、CYP2B10である、請求項4記載のトランスジェニックマウス。 前記CAR標的遺伝子が、CYP3A11またはCYP3A4である、請求項1から5までのいずれかに記載のトランスジェニックマウス。 前記トランスジーンがさらに、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウス。 前記トランスジーンが、さらにウサギ β− グロビン遺伝子のイントロン配列を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウス。 前記トランスジェニックマウスが、誘導物質の存在下において、体重に対する肝重量の増加、肝酵素の血清中への放出量の増加、肝臓におけるDNA合成の増加、化合物の活性による生理的変化あるいは行動変化、または他の任意の治療関連活性を誘導する、請求項1から8までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウス。 前記体重に対する肝重量の増加、肝酵素の血清中への放出量の増加、肝臓におけるDNA合成の増加、化合物の活性による生理的変化あるいは行動変化、または他の任意の治療関連活性の誘導が、CAR標的遺伝子の誘導または活性化によってもたらされる、請求項9記載のトランスジェニックマウス。 前記CAR標的遺伝子が、CYP2B10である、請求項10記載のトランスジェニックマウス。 前記誘導物質が、フェノバルビタールである、請求項9から11までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウス。 ある化合物がヒトCAR 受容体を活性化するかどうかを決定するためのスクリーニング方法であって、(a )請求項1から12までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウスに化合物を投与する工程、および(b )CAR 標的遺伝子の誘導を測定する工程を含み、前記化合物が前記CAR 標的遺伝子の誘導を媒介する場合に、前記化合物は前記CAR 受容体を活性化すると決定する方法。 工程(a )が、前記トランスジェニックマウスにCAR受容体インバースアゴニストを投与することをさらに含む、請求項13記載の方法。 前記CAR 受容体インバースアゴニストがクロトリマゾールである請求項14記載の方法。 ある化合物がCAR 受容体を阻害するかどうかを決定するためのスクリーニング方法であって、(a )請求項1から12までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウスに化合物を投与する工程、および(b )前記化合物の存在下および不在下でCAR標的遺伝子の発現を測定する工程を含み、前記化合物が前記CAR標的遺伝子の発現を減少させる場合に、前記化合物は前記CAR受容体を阻害すると決定する方法。 工程(a )が、前記トランスジェニックマウスに、フェノバルビタール様インデューサーを投与することをさらに含む、請求項16記載の方法。 フェノバルビタール様インデューサーが、該化合物の後に投与される、請求項17記載の方法。 ある化合物がCAR 受容体の活性を調節するかどうかを決定するためのスクリーニング方法であって、(a )請求項1から12までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウスに化合物を投与する工程、および(b )前記化合物の投与によって媒介される生理学的効果を測定する工程を含み、前記ヒトCAR受容体を発現させる前記マウスにおける前記生理学的効果の大きさが、ヒトCAR受容体活性を低下させる突然変異を含むマウスにおける生理学的効果の大きさとは異なる場合に、前記化合物は前記CAR 受容体の活性を調節すると決定する方法。 前記生理学的効果の前記測定が、前記化合物の投与によって媒介される毒性または活性の測定、または前記化合物の半減期の測定を含む、請求項19記載の方法。 前記毒性または活性が前記化合物の代謝産物によって媒介される請求項20記載の方法。 ある化合物の代謝がCAR 受容体の活性の調節によって制御されるかどうかを決定するためのスクリーニング方法であって、(a )請求項1から12までのいずれか1項記載のトランスジェニックマウスに化合物を投与する工程、および(b )前記化合物の代謝速度を測定する工程を含み、前記ヒト受容体を発現させる前記マウスにおける前記代謝速度が、CAR 受容体活性を低下させる突然変異を含むマウスにおける代謝速度より速い場合に、前記化合物の前記代謝は前記CAR 受容体の活性の調節によって制御されると決定する方法。 前記代謝速度の前記測定が、前記化合物の投与によって媒介される毒性または活性の測定、前記化合物の半減期の測定、または肝酵素の血清レベルの測定を含む、請求項22記載の方法。


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