生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_β−カロテンの製造方法
出願番号:2002516345
年次:2009
IPC分類:C12P 23/00,A23L 1/272,C07C 7/14,C12R 1/645


特許情報キャッシュ

コスタ ペレス,ハビエル エステッラ カストロ,アントニオ マルコス ロドリゲス,アナ テレサ ゴンザレス デ プラド,ホータ.エミリアノ ペイロ セソン,エンリケ エー. コラドス デ ラ ビエハ,アルフォンソ エステバン モラレス,マヌエル JP 4287142 特許公報(B2) 20090403 2002516345 20010718 β−カロテンの製造方法 ビタテネ、ソシエダッド アノニマ 501473958 石田 敬 100077517 鶴田 準一 100092624 福本 積 100087871 西山 雅也 100082898 樋口 外治 100081330 コスタ ペレス,ハビエル エステッラ カストロ,アントニオ マルコス ロドリゲス,アナ テレサ ゴンザレス デ プラド,ホータ.エミリアノ ペイロ セソン,エンリケ エー. コラドス デ ラ ビエハ,アルフォンソ エステバン モラレス,マヌエル ES P 200001792 20000719 20090701 C12P 23/00 20060101AFI20090611BHJP A23L 1/272 20060101ALN20090611BHJP C07C 7/14 20060101ALN20090611BHJP C12R 1/645 20060101ALN20090611BHJP JPC12P23/00A23L1/272C07C7/14C12P23/00C12R1:645 C12P 23/00 A23L 1/27 -1/277 C07C 7/14 特開平05−284934(JP,A) 特開2000−106844(JP,A) 米国特許第05714658(US,A) 米国特許第03268606(US,A) 米国特許第02959521(US,A) 米国特許第03079380(US,A) 21 ES2001000284 20010718 WO2002010429 20020207 2004504853 20040219 16 20040723 田中 晴絵 【0001】発明の分野本発明は、ブラケスラ(Blakeslea)属のムコラーレス(Mucorales)目の菌の液内培養から、カロテノイド特にβ−カロテンを製造するための新しいプロセスに関する。培地内への大豆レシチンの取込みならびに発酵中の明確なpH制御戦略に基づいて、達成すべきβ−カロテンの製造及びその他のカロテノイドとの関係におけるその相対的濃度の増大を可能にする発酵方法が開示されている。同様にして、本発明は、精製プロセスの単純化及び、「天然」とみなされている溶剤及び/又はICH(国際調和会議)のクラスIIIに内含される溶剤を使用した回収収量の増大を用いて、先に得られた発酵ブロスから高純度の結晶質β−カロテンを精製し単離するための最適化されたプロセスを開示している。【0002】技術の現状カロテノイドは、それらを提供する主たる供給源である野菜の中に豊富な化合物である。これらは、酸化防止剤として及びビタミンA前駆物質としてのその特性に起因して、数多くの研究の対象となってきた。これらは、天然に存在する最も広範な天然色素である。これらは、マーガリン、オイル、ソース、スープなどの中で補助食品及び着色料として工業的に使用されている(Ninet L. 及びRenaut J., 1979. Peppler H.J., Perlman D.(編).微生物技術、第2版、第1巻、Academic Press. NY, p529〜544)。【0003】カロテノイドは、2つのゲラニルゲラニル前駆物質の縮合に由来する共役2重結合の特徴的ポリエン鎖を含有するイソプレノイドである(Pfander(1992). Meth. Enzimol.) 。2つのグループの色素つまりカロテン及びその含酸素誘導体、キサントフィルが存在する。β−カロテンの経験的分子構造式はC40H56であり、分子量は536.85であり、展開構造式は以下の通りである:【0004】【化1】【0005】トランスベータカロテン高純度の化合物としてのβ−カロテンの産生は、さほど強烈でない溶剤及び反応条件を用いた抽出方法と合わせた天然産物の発酵による天然供給源から出発した代替的経路がより有利であるとみなされていることから今日論議の的となっている方法において、古典的化学合成反応に結びつけられてきた。【0006】カロテノイド及びその他のテルペン誘導体成分全般そして特にβ−カロテンは、非常にわずかな百分率しか存在しないトマト及びニンジンといったような植物産物であれ、これらの成分の割合が増大しうる選択された藻類、真菌などの培養から出発するものであれ、天然の供給源から得ることが可能である。カロテノイドを及びβ−カロテンを富有するオレオレジンを野菜、オイル又は藻類から得るための方法は、さまざまな特許の中で記述されている。【0007】大部分のケースにおいて、記述された抽出物プロセスは、溶剤の抽出を容易にしβ−カロテンを富有する細胞内含有物を放出するために果物をすりつぶし押出す段階を必要とする。これらの成分のための抽出工程は、比較的濃度が低いこと及び細胞内団粒内へそれらが特に集合することに対処するものである。その結果、β−カロテンの抽出には、細胞壁貫入を通してか又は細胞壁を予め破壊して細胞内含有物を放出することによって、生成物を可溶化できるようにする適切な方法が必要である。【0008】US3268606号、US2959522号に記述されている方法は、固有の毒性という問題を有し、このことはすなわち薬品又は食品の利用分野において使用されている残留溶剤についての指針のI群及びII群の中に内含されるということを意味する(この指針によると、IV群に属するものを使用することが推奨されている)、ジクロロメタン、ジクロロホルムなど又は芳香族炭化水素つまりベンゼン、トルエンなどといったハロゲン化溶剤を使用している。【0009】藻類からのβ−カロテンの抽出のための方法の大部分は、油を使用している。これらの方法は、β−カロテンを結晶の形で得るには適していないが、むしろ、β−カロテンが可溶化されその状態で商品化されている米国特許第4680314号、US4713398号、US5019668号、US5378369号の中で記述されているもののようなオレイン酸抽出物を獲得するために適している。超臨界CO2の使用は、β−カロテンの可溶性が低いことによって制限されている。超臨界条件で加圧下の又は液化ガスとしてのその他の溶剤の使用が考慮されてきた。例としては、可溶性がより大きいものであるプロパン又はエチレンが含まれる。それでも、これらの炭化水素溶剤の使用は、食品業界におけるβ−カロテンの使用をより困難にすることになる。【0010】あるいは、β−カロテンは、フィコミセス(Phycomyces), ブラケスラ(Blakeslea)などといったような或る種のムコラーレス(Mucorales)目の菌の発酵ブロスから得ることができ、これは、上述の天然供給源に比べた場合、乾燥バイオマスの量との関係においてこの化合物の濃度が高いこと; ならびに、複合原料、或る種の産生誘発物質又はその産生を回避するその他の構造的に関連するカロテノイドの産生の阻害物質を用いた発酵プロセスの最適化を利用してか又は従来の突然変異誘発技術又は分子生物学によって得られる超産生菌株を用いて、産生を増大させることが可能であることといった利点を提供する。【0011】真菌ブラケスラ・トリスポラ(B.trispora)でのβ−カロテンの産生方法のいずれにおいても、単一の培養が利用される場合に比べ、菌株(+)及び(−)のものよりはるかに高いβ−カロテン収量が得られるという理由で、混合培養が使用される(Ciegler, A, 1965)。Advan. Appl. Microbiol. 7:19)及びUS5422247。生合成経路の化学的刺激物質であるβ−イオノンに対する代用品として、β−カロテンの発酵培地には、クエン酸粉末が添加された〔Ciegler, A.1965。Adv. Appl. Microbiol. 7. 1-34〕。予めアルカリで処理されたクエン酸誘導体の添加により、β−カロテンの含有量を1lあたり1.7gまで増大させることができた[Upjohn Co., 1965。オランダ特許65/00, 788] 。【0012】クエン酸粉末内に含まれたβ−カロテンの産生1又は複数の刺激因子を同定することをねらいとした分析研究により、クエン酸が、少量のリンゴ酸ならびにグルコン酸又は2−ケトグルコン酸に似たRfをもつ第3の未同定酸に加えた主要成分であることが判明した。この研究は、産生増加におけるクエン酸の機能が特異的でなく、生合成経路において早期代謝産物の前駆物質として作用しうるという結論を下した。さらに42%の炭水化物が発見され、そのうち50%がスクロースであり、残りは還元糖(グリコース及びフルクトース)であった[Pazola Z., Ciegler A., Hall H.H. 1996。Nature 5043;1367-1368]。【0013】レシチンは、グリセロフォスファチジルコリン構造を伴う化合物であり、全ての生体(植物及び動物)の体内に存在し、神経及び脳組織の有意な成分である。これらは、無色で触れると油っぽい物質であり、60℃前後で融解し、100℃を超えた後短時間加熱した時点で分解する。レシチン分子は、リン酸コリンエステルに結合したステアリン酸ジグリセリド、パルミチン酸、及びオレイン酸の混合物から成る。分子は、双極性をもつことから、それは、天然由来の表面活性剤及び食用乳化剤として広く使用され、一般的食品業界(チョコレート、マーガリンなど)、食事療法、薬品業界及び化粧品業界で応用されている〔Furia, T.E.(編). CRC食品添加物便覧、第2版. Cleveland : The Chemical Rubber Co., 1972, 879〕。【0014】市販のレシチンは主として、大豆油の製造における副作物として得られた大豆に由来するが、これは又、スイートコーン及びその他の野菜の種子から得ることもできる [Hawley, G.G. 要約化学辞典、第9版、New York : Van Nostrand Reinhold Co., 1977. 509]。大豆レシチンは、11.7%のパルミチン酸、4%のステアリン酸、8.6%のパルミトレイン酸、9.8%のオレイン酸、55%のリノール酸、4%のリノレン酸、C20-C22酸(アラキドン酸を含む)5.5%を含有する。[The Merck Index. 第9版、Rahway, New Jersey : Merck & Co., Inc., 1976. 712]。【0015】発酵に対する大豆レシチンの効果は、主として、リン脂質補給剤として飼料中でのその使用及び第一胃の発酵に対する効果に関してと共に、子ウシ及びヒツジにおける脂肪の消化性及び血清トリグリセリド及びコレステロールレベルに対する効果(Jenkins TC, Jimenez T 及び Cross DI (1989)「in vitroでの第1胃発酵及びヒツジの栄養消化及び血清脂質に対するリン脂質の影響」 J.Anim. Sci 67(2);529-537;Jenkins TC及びFotouhi W(1990) 「ヒツジにおける消化、第1胃発酵及び微生物タンパク質合成の部位に対するレシチン及びコーン油の効果」J.Arim. S.ci. 68121:460-466;Jenkins TC(1990)「水素添加脂肪及びレシチンの組合せで飼育された去勢ウシにおける栄養消化、第1胃発酵及び血漿脂質」J.Dairy Sci. 73(10):2934-2939)ならびに雌牛における牛乳の産生(Akel-Caines SF. Grant RJ 及びMorrison M(1998)「乳牛における第1胃発酵及び乳組成に対する大豆もみ殻、大豆レシチン及び石けん原料混合物の効果」J.Dairy Sci. 81(2);462-470)に対する効果に関して研究されてきた。【0016】放線菌類の発酵を用いたミルジオマイシンの産生においては、一部のケースで、Nメチルの性質をもつ成分(特にトリメチル、アンモニウム基)、なかんづくコリン、ペタイン、レシチン、テトラメチルアンモニウムなど、又はこれらの化合物を富有する天然物質さらにはその両方の組合せを培地に取込んで問題の天然物質のその他の成分の過剰用量を回避した後、大幅な産生増加が見られた[US.4,334,022]。【0017】80年代に開発されたその他の特許は、その加工及び消化の容易さを改善し[JP5811 6648] 食品加工において用いられる微生物の培養に対するその活性化効果を改善する[DE3546511;EP0223161]目的で脂肪を含まない大豆もみ殻内の発酵プロセスに有利に作用するためのレシチンの取込みに関するものである。一方で、この化合物の乳化する性質は、微生物による油の除去の利用分野[DE 149056]又は有機廃棄物廃液の酵素処理[EP0421223]及び高い脂肪含有率をもつ残渣からの堆肥の形成[JP7033570] において考慮に入れられてきた。【0018】最近の出願では、レシチンは、同じく、より大きな成長と同時にそのような条件下でインキュベートされた真菌の蚊に対する生物的制御剤としてのより大きな有効性を可能にするべくラゲニシウム・ギナンテウム(Lagenidium giganteum)真菌の培地を改善する目的でも使用されてきている[WO98/58049]。US2959521では、β−カロテンは、酸化防止剤としてレシチンを含有する栄養培地内でB.trisporaを培養させ、かくしてβ−カロテン産生を刺激することによって調製されている。【0019】ブラケスラ・トリスポラ(Blakeslea trispora)の発酵によるβ−カロテンの産生においては、菌糸体の分散成長を可能にすることを通して、産生を増大させるためのいくつかの表面活性剤(例えばSpan20, モノラウリン酸ソルビタン、SIGMA)の使用が記述されてきた(Seon-Won Kim, Woen-Taek Seo 及びYoung-Hoon Park(1997) 「Span20を用いたブラケスラ・トリスポラ(Blakslea trispora)からのβ−カロテンの増強された産生」Biotechnology Letters 19(61;561-562)。しかしながら、ブラケスラ・トリスポラ(Blakeslea trispore)の培養中に同じく存在するその他のカロテノイド (γ−カロテン、β−トウモロコシカロテンなど)との関係における産生されたβ−カロテンの含有量の比率に対する効果については全く記述されていない。【0020】今日までに記述されてきた発酵ブロスからβ−カロテンを得るためのプロセスは、一般に、抽出段階及び連続する結晶化及び再結晶化そしてさらには、それらの物質の性質に起因してこれらの物質の低い可溶性のために溶剤の高い消費量を必要とする(US 5310554;EP0242148;US3369974, Biochemistry and Molecular Biology International, 39, 1077-1084(1996)) クロマトグラフィーによる精製段階を包含しており、往々にして達成される産物の純度は過度に低いものである。【0021】さらに、通常用いられる溶剤すなわちジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ベンゼン又はトルエンは、その毒性のために、得られたβ−カロテンの食品業界における使用を困難にしている。最近になってUS 5714658号の中で、β−カロテンの抽出は、C1−C4アルコールの酢酸エステルを含む液体有機抽出剤によって達成された。【0022】β−カロテンの結晶が溶剤の直接的蒸発を通して発酵ブロスから有機抽出物の結晶化により直接得られる場合、得られた結晶は、合成β−カロテンに比べ所要の純度をもたず、その後の溶剤消費、工程の複雑性及び産物の損失を伴ういくつかの再結晶化及び/又は精製段階が必要とされ、低い回収収量がもたらされることになる。【0023】最近になって、PCT WO98/03480号において、非常に純度の高いβ−カロテン結晶を生み出すものの、酢酸エチル及びエタノールといったような溶剤の高い消費量、産物の低い回収収量を発生させる洗浄及び結晶化の連続的段階を必要とする、発酵ブロスからのバイオマスの抽出により得られる酢酸エチルの抽出物から出発した低分子量のアルコール又は水での連続的洗浄を通したβ−カロテンの結晶の調製が記述されてきた。WO98/50574では、93.9%の純度をもつβ−カロテンを産生するために使用されたβ.trispora のバイオマスから、低級アルコールを用いて脂質を除去する段階が開示されている。【0024】発明の要約本発明の目的は、発酵中のpHの制御のための明確な戦略を応用して、可変的な量のレシチン特に大豆レシチンを含有する発酵培地の中での真菌の培養を通して、ムコラーレス(Mucorales)目の菌(ブラケスラ(Blakeslea)、フィコミセス(Phycomyces)など)を用いた発酵プロセスの中でのβ−カロテンの産生を増大させることにある。同様にして、本発明では、天然のものとみなされている溶剤を用いた発酵ブロスからの高純度の結晶質β−カロテンの産生が記述されている。天然溶剤というのは、一方では毒物学的に無害性であるもの及び/又は、ICH指針(International Coferenee of Hormonization)のクラスIIIの中に内含されるものである。【0025】一般的に考慮した場合、プロセスは、以下の段階を含んで成る:(O) 予め定められたpH制御条件における、レシチンを用いた培地内での発酵;1) 生合成天然供給源(例えば発酵ブロス)からの湿潤バイオマスの分離2) アルコールでの処理による湿潤バイオマスの精製3) アルコールからの精製バイオマスの分離4) 乾燥及び粉末化又は破壊を通しての精製されたバイオマスの条件づけ5) 有機溶剤を用いたβ-カロテノイドの固体−液体抽出6) 富化された抽出物の濃縮7) アルコールの添加による沈殿/結晶化8) ろ過9) 乾燥ここで記述された方法は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の純度で結晶質β−カロテンを回収することを可能にする。【0026】発明の詳細な説明本発明は、ムコラーレス(Mucorales)目の菌(ブラケスラ(Blakeslea)、コアネホラ(Choanephora)又はフィコミセス(Phyncomyces), より特定的にはブラケスラ・トリスポラ(Blakeslea trispora)) での発酵プロセスにおけるβ−カロテンの産生を増大させるためのプロセスについて記述している。本発明は、水酸化カルシウムでの処理及び連続するpH変更処理を通してのペクチンの除去プロセスを用いて得られたクエン酸物質特にクエン酸粉末の操作から誘導された副産物を含有する発酵培地内で真菌Btrisporaを培養すること、及びβ−カロテンの産生を誘発する或る種の成分を濃縮するように洗浄することから成る。クエン酸粉末の中で、例えばオレンジ、グレープフルーツ、マンダリンなど由来の粉末、そしてこれらの各々の中でも、その各々の異なる品種例えばNavel, Naveline, Clementine, Washington, Valencia-lateなど由来の粉末を使用することができる。【0027】一方で、本発明は、培地が大豆レシチンをも含有すること、そして他方では発酵中のpHを制御するための明確な戦略を応用することから成る。これらの変数の合同効果により、その他の少数のカロテノイドとの関係におけるβ−カロテンの産生及びその相対的濃度の増加が可能になる。発酵に用いられる生体は、ムコラーレス(Mucorales)目の菌、より特定的にはB. trispora又はB. trisporaのβ−カロテン超産生性突然変異体の単離された菌株(+)又は(−)又はこれらの菌株(+)及び(−)の混合物であり得る。真菌の菌株(+)及び(−)のいくつかの混合物を、本発明の発酵プロセスの中で使用することが可能である。【0028】発酵プロセスは、単数又は複数の炭素供給源、単数又は複数の窒素供給源、鉱物塩、チアミン及び可変的割合の単一クエン酸供給源からのクエン酸粉末又は異なるクエン酸果実及び/又は品種からの粉末の混合物及び大豆レシチンを0.1 %〜10%, 好ましくは0.5%から5%、より好ましくは0.5%〜1.5%の範囲内の可変的割合で含有するあらゆる培地の中で実施可能である。【0029】単一又は複合栄養分として使用できる炭素供給物としては、でんぷん、グルコース、スクロース、フルクトース、動物及び植物油、デキストリンといった脂肪又は炭水化物が内含される。窒素供給源の中では、例えば大豆のもみ殻、トウモロコシ粉、可溶性留出物、酵母エキス、コットン粉、ペプトン、カゼイン又は硫酸アンモニウムといったような有機及び無機供給源が使用可能である。培地に添加できる鉱物塩には、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムといった一価のカチオン又はカルシウム又はマグネシウムといった二価のカチオンのリン酸塩、硫酸塩、塩化物が内含される。栄養物の割合は、微生物の成長の必要性及び産生レベルの関数として決定される。【0030】発酵は、好気性条件及び液内培養内で行なわれる。発酵温度は、20℃〜32℃の範囲内にあるが、25℃〜28℃の間の範囲が好ましい。培養のpHは、発酵装置内の真菌の初期成長が存在する最初の数時間自由に推移する。このときpHは、酸及び/又はアルカリを添加することによって、6.5〜7.2の範囲内で制御されるが、好ましくは6.7〜6.9の範囲で制御される。pH制御の開始は、成長の推移により左右されるが、一般に、それは12〜50時間、好ましくは24〜36時間の発酵後に起こる。【0031】培地内へのレシチンの取込みは、この分子の両親媒性に起因して、β−カロテンの発酵培地の場合が往々にしてそうであるように、高濃度でこれらが発見される培地中の油の乳濁に有利に作用する。この作用は、一方では微生物による油の使用に有利に作用し、他方では、驚くべきことに、カロテン生成経路を活性化させて、ベータ−カロテンへのガンマカロテンの変態に有利に作用し、このベータカロテンの産生及びその他のカロテノイド特にガンマカロテンとの関係におけるその相対的濃度を増大させ、かくして最終産物内のこの物質の存在の大幅な低減を導き、全てのトランスベータカロテンの純度を増大させることになる、ということが発見されてきた。【0032】さらに、この効果は、発酵の間に適切なpH制御が実施された場合に増強され、かくして24〜36時間の発酵後のpHの調整が、ガンマ−カロテンの低減にさらに顕著な形で有利に作用し、ベータ形態の相対的濃度を増大させることになる。【0033】静止期にある培養中のムコラーレス(Mucorales)目の菌の発酵液内のガンマ−カロテンの存在については、以前に記述されてきた。(Murillo FJ, Torres-Martinez S, Aragon CM及びCarda-olmedo E (1981) 「ヒゲカビ内でのカロテン生合成における基質移入」 Eur. J. Biochem. 119(3):511-516;Candau R., Bejarano ER, Carda-Olmedo E (1991) 「ベータカロテン生合成のための酵素集合体内の基質のin vivoチャネリング」. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88(11):4936-4940 ; Eraser PD, Ruiz-Hidalgo MJ, Lopez-Matas MA, Alvarez MI, Eslava AP and Bramley PM (1996)「ムコール属 citcinelloides の野生型及び突然変異体菌株におけるカロテノイド生合成」Biochim Biophys Acta1289(2):203-208)。【0034】この存在については、Blakeslea trisporaにおいても記述されてきた(Mehta BJ及び Carda-Olmedo E (1999)「ブラケスラ・トリスポラ(Blakeslea trispora)におけるリコペン環化」Mycoscience 40(3) 307-310)。両方のケースにおいて、これらの阻害効果は、ベータ−カロテンの産生に対してニコチン、2−(4−クロロフェニルチオ)−トリエチルアミン、アルファ−ピコリン及びイミダゾールといったようないくつかの物質について記述されているが、これらはリコペン−シクラーゼの遮断に起因してリコペン−ガンマ−カロテンの蓄積には有利に作用する。しかしながら、ブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)の発酵におけるガンマーカロテンの含有量を低減させ、ベータ−カロテンの産生ひいては得られた最終産物の純度を増大させることを目的とするプロセスはこれまでに全く記述されたことがない。【0035】本発明の成果であるブラケスラ・トリスポラ(Blakeslea trispora)の発酵ブロス内におけるガンマーカロテンの含有量の減少というこの効果は、それが、最終産物中少なくとも96%のベータ−カロテンの純度を要求する最終産物の食品業界向け及び薬局方レベルの両方で設定された仕様を満たすことができるようにするという意味で、重要なものである。【0036】発酵において生合成されたカロテノイド成分の特性がわかっていることから、現行のプロセスに従って調製された培養ブロスからの回収プロセスは、細胞内プロセスとなった時点で、バイオマス無くブロス内での損失を無くするか又は低減させる目的でプロスからバイオマスを分離させることを包含している。【0037】この分離は、A) ろ過用材料により構成されたバリヤがバイオマスを分離し液体がバイオマス無しで通過できるようにする、ストリップ、回転式、プレスなどのいずれかの現行のフィルタ技術を用いたろ過、又はB) ブロスとバイオマス(通常は密度がより高い)の間の異なる密度を使用して、できるかぎり低い量のバイオマスで重量相が濃縮され液相から分離される遠心分離機、デカンタ又はそれに類するものといったような機械が用いられる遠心分離、という実証済みのプロセスによって行なうことができる。損失を低減させ、それぞれの各相の収量を最適化しかくして乾燥残渣の最高の含有量を伴う最大量のバイオマスを達成し、発酵ブロスから最大量を除去することが、本発明の目的の1つである。【0038】結果として得られた湿潤菌糸体は、発酵において産生されたカロテノイドを95%以上、好ましくは97%以上、そして好ましくは99%以上含有する。水相のカロテノイドの含有量は、従って5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは1%未満である。この湿潤な菌糸体固体は、その後の段階を通して、ベータ−カロテンの分離を可能にするが、発酵に関連してそれが15〜20%という比較的高い百分率の脂質親和性成分(脂肪酸及び油)を維持すること及びその後の段階で精製の問題が発生することという発見事実は、この点に起因するバイオマス精製段階の導入を導くことになる。【0039】この精製段階は、脂質成分の最大の精製を達成するのに適した割合での、一定量のアルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はβ−カロテンの可溶性が非常に低いその他の任意のアルコール又はそれらの混合物でのバイオマスの再懸濁を包含しており、換言すると、ここで湿潤菌糸体は、その1gあたり1ml〜10mlの範囲内のアルコール量で再懸濁させられる。接触時間は、5分から24時間の範囲内にある。このように調製されたアルコール再懸濁液は、ろ過され、遠心分離に付され、かくして、ろ過物又は上清中の固体の含有量は事実上ゼロとなる。結果として得られた、異なる割合でアルコール及び水を含有することになる湿潤菌糸体は、発酵中に産生されたカロテノイドを93%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上含有する。【0040】結果として得られたアルコールとブロスの残留物の混合物中、カロテノイドの含有量は2%未満、好ましくは1%未満である。アルコールでのこの処理を通して、先行するきわめて重要な精製及び高純度の最終結晶質産物を得ることができるようにする精製を実施しながら、使用されたブロスの特性の関数として変動するアルコール中で可溶な一連の脂質親和性物質を除去することが可能である。さらに、当初の湿潤菌糸体から可変的な割合の水を除去することにより、乾燥プロセスが著しく容易になる。【0041】バイオマスの分離及び再懸濁による精製というこれら2つの段階のセットに対する代替案として、記述されたものと等価の精製効果が達成される最小接触時間を保ち、かくして固体/液体分離作業を削除することによってプロセスが単純化されるようにしながら、室温と混合物の沸点の間好ましくは、室温と50℃の間の温度で1:0.5及び1.5(ブロス/アルコール)の間の体積割合でアルコールと収獲済みブロスを直接混合する可能性が考慮されている。【0042】カロテノイド産物が細胞内のものであるという事実は、精製されたバイオマスが、溶剤との混合に有利に作用し抽出を容易にする乾燥とすりつぶし、乾燥と粉末化又は粉末化のみによる条件づけを必要とする、ということを意味する。脱水した精製済み菌糸体は乾燥させられる。固体バッチでの又は連続的な正規のプロセスを用いて、乾燥を行なうことができる。乾燥温度は、室温から150℃の範囲内にあり、好ましくは60℃を超えてはならず、さらに好ましくは、50℃未満でなくてはならない。乾燥時間は、1時間から72時間の範囲内で使用温度に左右される。大気中の酸素による酸化を通してこれらのカロテノイドが分解する可能性があることから、窒素雰囲気下又は少なくとも真空下で、酸素の無い状態でこの乾燥プロセスを実施するのが適切である。【0043】抽出されるべきカロテノイドに対し溶剤がうまくアクセスできるようにするためには、表面接触面積が最大になるように、菌糸体に対する破壊作業を予め行なうことが必要である。乾燥しかつ破壊された菌糸体の最適な粒度は、3mm未満、好ましくは1mm未満、より好ましくは0.5mm未満でなくてはならない。【0044】バイオマス粉末化は、例えば、回転又は固定部品を伴う機械的すりつぶし手段すなわち乳棒、ふるいなどを使用することによって、又は回転シリンダに通過させて互いにプレスすることによって、又は高温で循環ガス流に湿潤産物が補給されかくして液体成分の含有物の気化を達成するべく滞留時間が最小限になっており、産物の密度の差に起因してそれがサイクロンまで輸送されそこで回収されるようになっているジェット−ミル機器内のフラッシュタイプの乾燥によって、といったように従来の手段により乾燥産物に対して実施することができる。乾燥時間及びその走行の間、粒子が壁に衝突するにつれての質化効果が存在する。【0045】ここで記述されているように条件づけされた菌糸体からのβ−カロテンの抽出のためには、異なる有機溶剤を使用することができる。本発明は、カロテノイド成分についての適正に高い可溶性とICHのクラスIIIの群に含まれる溶剤としてのそれらの相溶性とを組合せる、アシルエステル、好ましくはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルエステル又はそれらの混合物といったような、天然とみなされる食品グレードの溶剤の使用に関する。これらの溶剤は、スペインでも欧州共同体内でも、薬品及び食品の両方の利用分野のために許容されているものである(RDL<マ>12/04/96及びRDl 16/10/96) 。【0046】抽出温度は、室温と溶剤の沸点の間、好ましくは50℃〜80℃の間で変動する。抽出時間は、1秒〜1時間の間、好ましくは1分〜15分の間の、可溶化を達成するのに必要な最小時間となる。使用される溶剤の量は、5ml/gと20ml/gの間の範囲内で、カロテノイド中の菌糸体の富有度及び温度により左右される。抽出の回数は1〜3回の間で変動する。抽出されたカロテノイドの量は85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。【0047】カロテノイドを富有する抽出物がひとたび得られたならば、それを或る一定の体積まで濃縮することが必要である。濃縮後の溶剤中のカロテノイドの最終濃度は、好ましくは10〜40g/l の間で変動する。濃縮温度は、80℃未満、好ましくは70℃未満、より好ましくは50℃未満であるべきである。濃縮時間は、1時間未満、好ましくは30分未満、より好ましくは15分未満であるべきである。【0048】抽出物がひとたび所要体積まで濃縮された時点で、カロテノイド不溶化剤、特定的にはアルコールそしてより特定的には無水メタノール、エタノール、イソプロパノール又はβ−カロテンの溶解度が低い任意のその他のアルコールを、濃縮後の溶剤の体積との関係において1/1〜6/1の割合で添加し、これにより結晶性β−カロテンの収量を著しく増大させることが必要である。アルコールの添加は同様に、精製効果があり、それが添加されない場合に比べ純度の高い産物を回収する。結晶化時間は、15分と24時間の間、好ましくは1時間と12時間の間、より好ましくは3時間〜8時間の間で変動する。結晶温度は、25℃未満、好ましくは5℃未満であるべきである。【0049】結晶化水からの結晶の分離は、ろ過又は遠心分離によって行なわれ、結晶をおおう結晶化水を移動させ、これらの結晶をその不溶化に用いられたものと同じアルコールで洗浄する。得られた結晶は、法律により設定された最大濃度の仕様に従った溶剤の残留含有量が達成され、β−カロテンの場合には、0.2%未満の乾燥時の損失が確定されるまで、少なくとも1時間、室温で真空下で乾燥される。【0050】得られた結晶のベータカロテン純度は、その他のカロテノイドの含有量が4%未満、好ましくは2%未満で、90%以上、好ましくは95%以上、そしてより好ましくは98%以上という、USP, EP, BPの分光光度方法に従ったシクロヘキサン(E1% 1cm=2500) 中に溶解させられた455nmでの吸収度を読取ることによって、分光光度法により決定された力価に対応する。【0051】同様にして、得られた結晶質産物は、そのままの状態で、又はβ−カロテンの割合が1〜85%の間で変動する製剤の一部を成すものとして、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油などといった異なる賦形剤又は化合物と混合した状態で、異なる純度で、そしてトコフェロールタイプの酸化防止剤が随伴する状態で、取扱われ商品化され得る。本発明の1つの目的は、安定した条件で包埋された粉末の中に内含されたβ−カロテンを提供する食品品質のでんぷんマトリクス内に包埋されたカロテノイドの乾燥粉末を約1〜25重量部分含有する水中に分散可能なカロテノイドの製剤を提供することにある。異なるタイプのでんぷんを使用することができる。【0052】本発明の製品は、水中に分散可能なβ−カロテンの固体製剤である。使用される好ましいでんぷんは、水中での有機相の単純な乳化を可能にする高分子量をもつ食品品質の改質コーンスターチである。溶剤を分離した後、分散は、β−カロテンの色範囲を満たす。この改質コーススターチは、乾燥粉末の充分な再分散性を生み出さない。かくして、もう1つのでんぷんも同様に添加される。第2の種類は、1000〜700,000の範囲内の異なる分子量をもつ食品品質のでんぷんの混合物である。この第2のタイプのでんぷんは、最終産物の優れた分散性を提供する。【0053】β−カロテンは、酸化に敏感であることから、劣化に対する安定性を強化するため、β−カロテンを含有する溶剤の中に酸化防止剤を溶解させることができる。本発明においては、なかでも天然又は合成由来のα−トコフェロールを含めた、食品に認可されたあらゆる酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤レベルは、β−カロテンを保護するのに充分なものとなる。これは、β−カロテンの量の0.1〜0.3倍でなくてはならない。2つの酸化防止剤の会合の相乗酸化防止効果のため、パルミチン酸アスコルビルを製剤に添加することもできる。【0054】本発明の方法は、特に、微生物供給源、好ましくは藻類、真菌又は酵母、より好ましくは、ムコール目の真菌、より好ましくはブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)からの結晶質β−カロテンの回収のために応用できる。当該方法及び天然とみなされる溶剤の使用によって得られる結晶において達成される極度の純度は、これらの結晶が、食品業界、薬品業界又は化粧品業界でも利用可能であることを意味している。【0055】例1.培地に対する大豆レシチンの添加は、フラスコで発酵された場合にガンマーカロテンの含有量を低減させる。1リットルあたり大豆もみ殻23g, トウモロコシ粉47g, 一カリウムリン酸塩0.5g、塩酸チアミン0.002gを含む接種材料培地を調製する。その初期pHは6.3である。培地を、500ml入りのエルレンマイヤーフラスコ内に、67ml又は100mlのいずれかで分配させる。殺菌後、これらに、分離したフラスコ内のブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)菌株(+)とB. trispora菌株(−)の胞子の懸濁を播種し、48時間25℃でインキュベートする。【0056】1リットルあたり大豆もみ殻 44g,トウモロコシ粉、19g;オレンジ粉10g;塩酸チアミン,0.002g;植物油100gを含む塩基発酵培地を調製する。前述のとおりに、大豆レシチンを含む培地を調製し、1%のレシチンを補足する。pHを6.3に調整する。培地を20mlの部分に分けて250ml入りのエルレンマイヤーフラスコ内に分配させる。【0057】β−カロテンの発酵のため、発酵培地を含むフラスコに、ブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)(+)及びブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)(−)の菌株の10%の混合培養を接種する。全てのフラスコを、250rpmの回転式振とう機の中で25℃でインキュベートする。48時間の発酵後、β−イオノンを、培地1リットルあたり1mlの比率でフラスコに添加し、発酵6日目で菌糸体を収集する。【0058】細胞内含有物を放出できるようにする任意の記述された細胞破壊方法を用いて、β−カロテンの抽出を実施する。例えばアセトンといったような、その中でそれが可溶であるような任意の溶剤の中で、それを可溶化する。その濃度は、分光光度法を用いて査定できるが、文献中に記述されている方法のいずれかを用いて、液体クロマトグラフィを使用することが好ましい(HPLC) 。大豆レシチンの添加により、β−カロテンの産生は5%増加し、γ−カロテンの産生は60%減少する(図1参照)。この実験は、レシチンは、β−カロテンの産生の増加を可能にし、より純度の高い産物の産生をも助長するということを示している。【0059】例2.培地内へのレシチンの取込みは、ベータ−カロテンの産生を増大させ、パイロット発酵装置内のガンマーカロテンの相対的レベルを低減させる。pHの制御と組合された場合、ガンマーカロテンの産生に対する効果は、さらに一層大きくなる。【0060】1リットルあたり大豆もみ殻23g,トウモロコシ粉47g、 一カリウムリン酸塩0.5g、塩酸チアミン0.002gを含む接種材料培地を調製する。その初期pHは6.3である。培地を、2000ml入りのエルレンマイヤーフラスコ内に、各フラスコに500mlの割合で分配させる。殺菌後、これらに、分離したフラスコ内のブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)菌株(+)とブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)菌株(−)の胞子の懸濁を播種し、5cmの離心距離及び250rpmで回転振とうさせながら48時間25℃でインキュベートする。菌株の各々1つずつを、1リットルあたりファルマメディア(Pharmamedia)29g;トウモロコシ粉47g;一カリウムリン酸塩0.5g;塩酸チアミン0.002g;消泡剤1g,という組成の培地の入った中間成長タンクに、無菌条件下で移す。その初期pHは6.0である。【0061】36〜48時間インキュベートした後、(+)及び(−)菌株の混合物を作り、1リットルあたり大豆もみ殻50g,トウモロコシ粉、25g;オレンジ粉 15g;一カリウム二塩基リン酸 0.5g;イソニアジド 0.28g;塩酸チアミン0.002g;植物油 80g,消泡剤0.175gという組成をもつ塩基性発酵培地を播種するために混合物の10%を使用する。この培地に、1%の大豆レシチンを補足する。【0062】150〜250rpmの可変的撹拌及び1〜1.5v/v/mの曝気を伴って、25〜28℃の温度で発酵を確認する。6.5〜7.5の範囲でpH制御無しでか又は36時間の発酵後6.8±0.1での制御を伴って、というテストに応じた2つの異なる条件を保ちながら、アンモニア又は硫酸を用いてpH制御を実施する。発酵40時間と50時間の間で、植物油中のβ−イオノン10%溶液を10g/L添加する。50〜60時間の間で、植物油中のエトキシキンの2.5%溶液10g/Lを添加する。【0063】発酵を100〜140時間延長し、この時間の後、β−カロテンの産生を検定する:すなわち細胞内含有物を放出できるようにする細胞破裂を伴う記述されたいずれかの方法によって、β−カロテンの抽出を実施する。例えば、アセトンといったような、その中でそれが可溶であるような任意の溶剤の中で、それを可溶化する。その濃度は、分光光度法を用いて決定できるが、文献中に記述されている方法のいずれかを用いて、液体クロマトグラフィを使用することが好ましい(HPLC) 。レシチンを伴う及び伴わない培地で実施されたテストの結果及び上述の2つのpH制御条件が、以下の表に紹介されている。【0064】【表1】【0065】これらのデータは、培地内へのレシチンの取込みが、ベータ−カロテンの産生を増大させ(5%の増加)ガンマーカロテンの相対的レベルを低減させる(43%)ということを明らかに示している。pH制御と組合せた場合、ガンマーカロテンの産生に対する効果は一層大きくなる(63%) 。【0066】例3.3リットルの発酵ブロスが収獲される。ブロスの力価は1リットルあたりβ−カロテン6gである。これらのブロスのバイオマスは、ブフナーろ過を用いて回収され、1000gの湿潤バイオマスが得られる。湿潤バイオマスを、3lの共沸イソプロパノール85/15中で再懸濁させ30分間振とうさせる。精製したバイオマスを再びBuchnerろ過により回収する。【0067】このバイオマスを、真空下のオーブン内で45°未満の温度で18時間、残留溶剤の含有量が1〜2%の範囲内となるまで乾燥させる。合計270gの乾燥バイオマスが得られ、6.5%の純度と同等のβ−カロテン含有量で精製される。乾燥バイオマスをハンマーミル及び1mmのふるい内ですりつぶして、同じ比純度をもつ固体を得、溶剤での抽出を可能にするべくこれを条件づけする。【0068】抽出は、5分間撹拌を保ちながら、70℃で4500mlの酢酸イソブチルと270gのすりつぶしたバイオマスを混合することによって実施される。涸渇したバイオマスを、ろ板を通してろ過することによって濃厚な溶剤から分離させる。涸渇したバイオマスは、フィルタ自体の上で500mlの暖かい酢酸イソブチルで洗浄2つの溶剤を混合する。濃厚な酢酸イソブチル全てを、体積が700mlに縮小されるまで、45℃未満に保った温度で真空下で濃縮させ、この時点でβ−カロテンの一部分が結晶化した。結晶化を完成させ、より純度の高いβ−カロテンを得るため、2100mlのイソプロパノールを添加する。混合物を0°〜5℃の間で、3時間、窒素下で振とう続ける。これをBuchner漏斗を通してろ過し、この漏斗上で25mlのイソプロパノールで結晶を洗浄する。結晶を収集し乾燥させ、分光光度法で測定したところ96%の純度をもつβ−カロテンの結晶14gが得られる。【0069】例4.約5.5g/lのβ−カロテン力価で、約500lの発酵ブロスを収獲する。これを、水85-15を伴う共沸イソプロパノール1500lと直接混合し、混合物を40℃まで加熱する。30分間撹拌した後、バイオマスを、デカンタでの遠心分離により液体から分離する。180kg前後の精製された湿潤バイオマスが収集される。このバイオマスを、残留溶剤含有量が1〜2%の範囲内に達するまで真空下で回転式乾燥機の中で乾燥させる。温度は45℃未満でなくてはならず、時間は12〜24時間でなくてはならない。わずかに低い純度である5.9%の比濃厚度と等価のβ−カロテン含有量をもつ45kgの乾燥バイオマスが得られる。【0070】乾燥バイオマスは、ハンマーミル及び1mmのふるい内ですりつぶして、同じ比純度をもつ固体を得、溶剤での抽出を可能にするべくこれを条件づけする。1変形形態としては、湿潤バイオマスを、フラッシュターボ乾燥機(ジェットミルタイプ)の中で乾燥させるが、この場合、すりつぶし段階は不要である。【0071】抽出は、15分間振とうを保ちながら、70℃で800lの酢酸イソブチルと45kgのすりつぶした固体を混合することによって実施される。涸渇したバイオマスを、デカンタでの遠心分離によって濃厚な溶剤から分離させる。酢酸イソブチルの全てを、体積が110lまで縮小されてしまうまで45℃未満に保たれた温度で真空下で濃縮させ、この時点で、β−カロテンの一部分が結晶化した。β−カロテンの結晶化を完成させるため、330lのイソプロパノールを添加する。混合物を0〜5℃で3時間、それが冷却する間振とうし続ける。これをBuchner漏斗を通してろ過し、β−カロテンの結晶を収集してこれを乾燥させる。分光光度法で測定した場合に96%の純度をもつ2.1kgの産物が得られる。【図面の簡単な説明】【図1】 図1において、Aは、レシチンを伴う(右欄)又は伴わない(左欄)状態でのβ−カロテンの生成百分率を示し、Bは、レシチンを伴う(右欄)又は伴わない(左欄)状態でのγ−カロテンの生成百分率を示す。 カロテノイドの製造方法において、 (1)液内培養においてブラケスラ・トリスポラ(Blakeslea trispora)に基づくバイオマスを発酵させる段階と、 (2)前記バイオマスを分離する段階と、 (3)アルコールを用いる抽出によって、カロテノイド以外の親油性物質を除去する事により前記バイオマスを精製する段階と、 (4)前記バイオマスを乾燥し、そして破砕する段階と、 (5)有機溶剤を用いて、前記バイオマスに含まれるカロテノイドを抽出する段階と、 (6)カロテノイドの豊富な抽出物を濃縮する段階と、 (7)アルコールを添加することによりカロテノイドを沈降-結晶化する段階と、 (8)ろ過し、最終乾燥する段階と、 を含み、 前記段階(1)において培地にレシチンを添加し、且つ発酵の開始後にpHの調整を行い、このpHの調整が、 (a)pHを6.5−7.2の範囲内で調整し、且つ (b)pHの調整を、発酵の24〜36時間後に開始する、 ことを特徴とする方法。 前記液内培養が、好気性条件下で実施され、そして得られるカロテノイドがβ-カロテンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 大豆レシチンが0.1−10%の割合で添加される、請求項1または2に記載の方法。 大豆レシチンが0.5−5%の割合で添加される、請求項3に記載の方法。 大豆レシチンが0.5−1.5%の割合で添加される、請求項4に記載の方法。 ブラケスラ・トリスポラ(B. trispora)の(+)株及び/又は(−)株あるいはそれらのカロテノイド高生産性突然変異株が培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 発酵中の温度が20−32℃の間である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 カロテン以外の親油性物質を取り除くための前記バイオマス精製の段階(3)が、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノ−ルから成る群から選択されるアルコール中にバイオマスを懸濁することから成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 前記バイオマスの精製の段階(3)が、段階(1)の直後に前記培地自体の中で実施されるか、あるいは段階(2)の後で、前記培地から分離した後実施される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。 添加されるアルコールの量が湿菌糸当り1ml/gから10ml/gまでの範囲にあり、懸濁中の温度が周囲温度と添加されるアルコールの沸点の間であり、接触時間が5時間から24時間までである、請求項1、8及び9のいずれか1項に記載の方法。 前記バイオマス精製が、培養液に対して直接行なわれ、培養液:アルコール比率が1:0.5〜1:5の間にあることを特徴する、請求項9に記載の方法。 前記バイオマス乾燥-粉状化段階(4)が、酸素なしで、周囲温度及び150℃の間の温度で、1時間から72時間までの時間、バッチ式に又は連続式に実施する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。 前記バイオマス破砕が、3mm未満の粒度に達するまで行なわれる、請求項12に記載の方法。 前記抽出段階(5)が、1回から3回までの間で反復され、周囲温度と溶剤の沸点との間の温度で、1秒から1時間までの間の時間、5ml/gから20ml/gまでの間の量で、食品グレードの有機溶剤を使って乾燥され破砕されたバイオマスを洗浄することから成り、カロテノイド含有量が85%を超えるカロテノイドの豊富な抽出物が得られることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。 前記カロテノイド含有量が90%を超える、請求項14に記載の方法。 前記カロテノイド含有量が95%を超える、請求項15に記載の方法。 前記抽出段階(5)において使用される前記有機溶剤がアシルエステルまたはその混合物である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。 前記アシルエステルが、酢酸エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルもしくはイソブチルまたはそれらの混合物である、請求項17に記載の方法。 前記カロテノイド豊富な抽出物が、10〜40g/lの範囲のカロテノイド濃度に達するまで80℃未満の温度で1時間未満の時間、濃縮段階(6)に付される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。 前記カロテノイド豊富な抽出物が、25℃未満の結晶化温度で、15分から24時間の間での結晶化時間の間、前記抽出段階(5)において使用される前記溶剤の体積に対して1/1から1/6の比率でアルコールを添加することにより、沈降-結晶化段階(7)に付される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。 前記pH調整が、6.7−6.9の範囲で行なわれる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る