タイトル: | 特許公報(B2)_メルファラン誘導体及び癌の化学療法薬としてのその使用 |
出願番号: | 2002510508 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07K 5/065,C07K 5/097,A61K 38/00,A61P 35/00,A61P 35/02 |
レウェンソーン ロルフ グルボ ヨアキム ラルソン ロルフ エールソン ハンス ルトマン クリスティナ JP 4798930 特許公報(B2) 20110812 2002510508 20010611 メルファラン誘導体及び癌の化学療法薬としてのその使用 オンコペプティド アクチボラグ 502450479 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 熊倉 禎男 100082005 宍戸 嘉一 100065189 今城 俊夫 100074228 小川 信夫 100084009 村社 厚夫 100082821 西島 孝喜 100086771 箱田 篤 100084663 レウェンソーン ロルフ グルボ ヨアキム ラルソン ロルフ エールソン ハンス ルトマン クリスティナ US 60/211,227 20000613 SE 0002202-0 20000613 20111019 C07K 5/065 20060101AFI20110929BHJP C07K 5/097 20060101ALI20110929BHJP A61K 38/00 20060101ALI20110929BHJP A61P 35/00 20060101ALI20110929BHJP A61P 35/02 20060101ALI20110929BHJP JPC07K5/065C07K5/097A61K37/02A61P35/00A61P35/02 CA/REGISTRY(STN) Br.J.Cancer,Vol.78,No.3(1998)p.328-335 9 SE2001001318 20010611 WO2001096367 20011220 2004503564 20040205 30 20080611 高堀 栄二 【0001】(発明の分野)本発明は、アルキル化された癌の化学治療薬として有用な新規なメルファラン誘導体に関する。(発明の背景)癌は、重大で、且つ時には致命的な病気である。従って、癌の治療の為の新しい治療方法を開発する為の努力は、研究分野の常に変わらぬ努力の一つである。癌の巨大な主要部は固体腫瘍、例えば、肺癌、乳癌、前立腺癌として存在し、一方、残りの部分は血液学的且つリンパ系悪性腫瘍、例えば、白血病及びリンパ腫である。化学療法は、病気を治療又は軽減しようとする時に使用される。殆どの場合、この治療法は、作用形態の異なる二種以上の薬が、抗腫瘍効果を最大限にし、且つ、副作用を最小限にする為に一緒に使用される時に、組合わせ化学療法の形態で行われる。化学療法で得られる結果は腫瘍のタイプによって変動する。幾つかの腫瘍は非常に敏感で、従って、その治療は治癒に繋がる可能性が高い。このタイプの腫瘍の例としては、急性白血病、悪性リンパ腫、精巣癌、睾丸癌及びウイルムス腫瘍がある。腫瘍の別のグループにおいては、化学療法は良好な治癒と長期の生存をもたらす事ができる。その様な腫瘍の例としては、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、小細胞肺癌、膀胱癌、多発性骨髄腫及びリンパ系及び骨髄系の両方の慢性白血病がある。主要な薬剤抵抗性腫瘍には、例えば、悪性神経膠腫、メラノーマ、前立腺癌、肉腫及び結腸直腸癌以外の胃腸腫瘍がある。【0002】アルキル化剤、例えば、ビス(2−クロロエチル)アミン誘導体であるナイトロジェンマスタードから誘導された薬剤は、広範囲の腫瘍性疾患の治療において化学療法薬として使用される。これらの薬剤は、全て、DNA又は蛋白質中で求核的ヘテロ原子との共有相互反応によって作用する。これらの二官能性試薬は、ストランド間の二重らせん内でDNA鎖を架橋し、或いは、DNAと蛋白質との間を架橋することができる。この架橋は、DNAの複製及び、その後の細胞死を伴う転写に抑制効果をもたらす。この薬剤は、単独試薬として、或いは、その他の抗腫瘍薬との組合わせで使用する事ができる。アルキル化剤は、早く成長する組織に対して幾らかの性向を有する様に思われる。それらは、広範囲の腫瘍において効果を発揮する。副作用は、主として、骨髄に限定され、非常に高い投与量では胃腸管に限定される。【0003】メルファラン、又は、p−ビス−(2−クロロエチル)−アミノフェニル−アラニンは、ナイトロジェンマスタードとアミノ酸フェニルアラニンの接合体であり、1950年の半ばに合成された(USA−3,032,584)。この古いアルキル化物質は、間もなく、化学療法分野において有益な薬剤となり、今尚、例えば、骨髄腫の治療にとって重要なものである。メルファランは、初め、メラニン合成において多量のフェニルアラニンを利用するメラノーマ細胞に対する選択的細胞毒剤として開発されたものである。転移性メラノーマの治療でのメルファランの臨床使用は、然しながら、限定された効力を持つものであった。悪性細胞に対する更なる選択的作用を研究する段階で、メルファラン誘導体が合成された。【0004】サルコリシン(sarcolysine)、即ち、m−ビス−(2−クロロエチル)アミノフェニルアラニンは、ビス−(2−クロロエチル)アミノ基をフェニルアラニンのパラ位からメタ位に移動させる事によって得られた。サルコリシンのアミノ基及びカルボキシレート基における異なるアミノ酸の共有結合によって、Peptichemio(PTC)として公知のペプチド混合物が調製された。PTCは、6個の異なるペプチドから成っていた(de Barpieri, "Proceedings of the symposium on Peptichemio", Milan, November 18, 1972)。PTCは、次いで、幾つかの腫瘍タイプ及びメルファランを含むアルキル化剤での治療に抵抗する腫瘍に活性である事が示され、見込みのある結果を伴う臨床試験に組み込まれた。PTCの効果及び用法を理解するに当って、それが6個のペプチドの混合物であると言う事が重大な欠点であった。PTC中に含まれる異なるペプチドのそれぞれの細胞毒効果が、従って、別々に測定され(Lewensohn et al., Anticancer Research 11: 321-324 (1991))、そして、このペプチドの細胞毒性には広い変動があることが分かった。このペプチドの一つである、L−プロリル−m−L−サルコリシル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(P2)は、その他のペプチドよりもRPMI8322メラノーマ細胞にとってより毒性であることが判明した。【0005】Lopatin et al., (CA 79:100709, Farmakol. Toksikol. (Moscow), 1973, 36(4), 479-480)は、メルファラン誘導体のアサリー(asaley)及びアスチロン(astyron)の投与が、ラットでの肉腫45の成長を抑制した事を開示している。アスチロン、即ち、N−アセチル−L−メルファラニル−L−チロシン、及び、アサリー、即ち、N−アセチル−L−メルファラニル−L−バリンエチルエステルは、一般的に、腫瘍に対するこの化合物の細胞毒性が、非アセチル化形態に比べて著しく減少している事を意味するアセチル化アミノ基を有する。Romanova et al.(CA 66:27517, Vopr. Med. ZKhim, 1966, 12(6), 586-91)は、サルコリシン又はサリン(salin)(西側の命名法によれば、L−メルファラニル−L−バリンと命名されるべきものである)と呼ばれる化合物に言及している。この化合物は、ラットのレバーホモジネートとジェンセン(Jensen)肉腫細胞由来のミトコンドリア中の酸化的リン酸化反応を中断させた。【0006】メルファラン誘導体の命名法に関しては少しだけ混乱が存在する。1955年に、英国の研究グループが、芳香族環のパラ−位においてビス−(2−クロロエチル)アミノ基で置換されたフェニルアラニン誘導体の合成と細胞毒活性を報告した時、DL、L及びD異性体は、それぞれ、メルファラン(merphalan)、メルファラン(melphalan)及びメドファラン(medphalan)と命名された。同じ頃に、ロシアのグループは、単独に、4−[ビス−(2−クロロエチルアミノ)]−フェニルアラニンサルコリシンのラセミ体(DL)を命名した。その後、この「サルコリシン」と言う用語は、又、メタ−フェニルアラニンマスタードの為に使用され始めた。この命名の混乱は続いているが、今日、メルファラン(melphalan)とサルコリシンは、普通、それぞれに、パラ−及びメタ−誘導体に対して使用される。【0007】Kupczyk-Subotkowska et al. (Journal of Drug Targeting, 1997, 4(6), 359-370)は、癌細胞中へのメルファランの蓄積を高める為に設計されたメルファランの誘導体を開示している。メルファランとバリン又はグルタミン酸を含む多数のジペプチドがテストされた結果、前記のジペプチド及びそのエステルの細胞摂取は、恐らく、アミノ酸又はオリゴペプチドトランスポーターによるのではなく、受動拡散を介して生起したものと結論付けられた。二官能性アルキル化剤の用法における一つの問題は、第一の、即ち、固有の、そして、第二の、即ち、後天的の治療に対する腫瘍抵抗である。患者に投与されるアルキル化剤の投与量を増加させる事によって抵抗を回避する試みが為されている。然しながら、腫瘍細胞水準において有効な投与量をどの程度増加させれば良いのかが明確ではない。【0008】様々な腫瘍疾患、特に、通常の治療に対して第一の抵抗を示す腫瘍、及び/又は、通常の癌化学療法での治療に応答した後に、抵抗、即ち、第二の抵抗を発達された腫瘍疾患において新しい抗腫瘍薬に対する緊急要請が存在する。(発明の開示)本発明の目的は、ヒト腫瘍細胞において、改善された細胞毒活性を有するメルファラン誘導体を提供することである。本発明は、メルファラン単位及び、1個又は2個の付加アミノ酸又はアミノ酸誘導体を含むジペプチド及びトリペプチド、医薬としての前記ペプチドの使用、及び、医薬、特に、様々な悪性腫瘍の治療の為の医薬として使用する為の、本発明のペプチドを含む薬理学的組成物に関する。【0009】本発明のメルファラン誘導体は、様々な腫瘍のタイプに多大な効力を示す。本発明のペプチドの腫瘍細胞の摂取及び細胞間の蓄積が増加すると言うのが本発明者の考えである。本発明は、アルキル化ジ−又はトリペプチドを形成する、1種又は2種のアミノ酸又はアミノ酸誘導体に共有結合した、p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンマスタード、即ち、L−PAM、及び、p−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−D−フェニルアラニンマスタード、即ち、D−PAMを含むフェニルアラニンマスタードの新規なペプチドに関する。然しながら、L−形態が好ましい。【0010】本発明は、新規なメルファラン誘導体、特に、式I:【化5】[ここで、R1は、アルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、NH2、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ又はアリールアミノであり、R2は、【0011】【化6】(ここで、R3は、独立的に、NH2、OH、O−アルキル、N−アルキル、O−アシル、NH−アシル、N(CH2CH2Cl)2、NO2、F、CF3又はHであり、nは1又は2である)であり、Xは、【0012】【化7】(ここで、R5はHである)であり、R4は、天然又は変性された環状又は芳香族アミノ酸、又はHである)である]を有するジ−又はトリペプチド及び薬理学的に受容可能なその塩に関する。【0013】前記式において、アルキルは、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。式Iのnが1である場合は、置換体R3は、オルト−、メタ−又はパラ−位にあることができる。nが2の場合は、二つの置換体R3は、同じである事もできれば、異なる事もできる。天然アミノ酸とは、生物中に普通に存在しその機能を発揮するアミノ酸を意味する。変性アミノ酸とは、幾つかの方法で、天然アミノ酸とは異なる化学構造及び化学組成に変性されたアミノ酸を意味する。天然の環状アミノ酸の例としては、プロリンがあり、芳香族アミノ酸の例としては、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン及びヒスチジンがある。【0014】メルファラン分子のN−末端は、アミド又はカルバメートとして保護されるべきではない。この事は、この化合物の保護された形態は、一般的に、相当する遊離形態よりも細胞毒活性が低いので、R4は、保護基、例えば、ホルミル、アセチル又はプロピオニル、又はベンゾイルの様な保護基であるべきではない事を意味する。薬理学的に受容可能な塩は、例えば、酸付加塩、例えば、HCl、HBr及びメタンスルホン酸の塩である。本発明の好ましいジ−又はトリペプチドは、式V:【0015】【化8】(ここで、R1は、アルキルオキシ、シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、NH2、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ又はアリールアミノ基であり、R3は、NH2、OH、O−アルキル、N−アルキル、O−アシル、NH−アシル、N(CH2CH2Cl)2、NO2、F、CF3又はHであり、R4は、天然又は変性された環状又は芳香族アミノ酸、又はHである)及び薬理学的に受容可能なその塩を有する。【0016】本発明のペプチドで特に興味のあるグループは、式I又はV(ここで、R3はFである)のペプチドである。本発明のジペプチドは、式I又はV(ここで、R1はアルキルオキシであり、R3は、F、CF3、H、OH、O−アルキル、NO2、N(CH2CH2Cl)2、NH−アシル又はNH2であり、R4はHである)のペプチドである。好ましいジペプチドの例は、L−メルファラニル−p−L−フルオロ−フェニルアラニンエチルエステル(J1)、L−メルファラニル−p−L−フルオロ−フェニルアラニンイソプロピルエステル(JV28)及び薬理学的に受容可能なその塩である。【0017】本発明のトリペプチドは、式1又はV(ここで、R1はアルキルオキシであり、R3は、F、CF3、H、OH、O−アルキル、NH−アシル、NO2、N(CH2CH2Cl)2又はNH2であり、R4は、天然又は変性された環状又は芳香族アミノ酸である)のペプチドである。好ましいトリペプチドの例は、L−プロリル−L−メルファラニル−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル(J3)及び薬理学的に受容可能なその塩である。【0018】本発明の全てのジペプチド誘導体は、t−ブトキシカルボニル(Boc)−保護のメルファランから合成できる。Boc−メルファランの、異なるエステル又はアミドへのカップリングは、カップリング剤として、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)/トリエチルアミン、又は1−[3−ジメチルアミノ]プロピル]−3−エチルカルボジイミドハイドロクロライド(EDC)/N−メチルモルフォリン(NMM)/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を使用して行われた。シリカゲルクロマトグラフィーを使用する精製方法で純粋生成物を単離した。Boc基の脱離は、HCl飽和エチルアセテート中で行った。ジペプチドハイドロクロライド塩は、エタノール/ジエチルエーテル中で再結晶化によって精製された。【0019】トリペプチド誘導体の合成において、Boc−保護アミノ酸は、カップリング剤としてEDC/NMM/HOBtを使用してジペプチド誘導体を含むメルファランにカップリングされた。HCl飽和エチルアセテートを使用する脱保護と、それに続く再結晶化(EtOH/ジエチルエーテル又はEtOAc/ジエチルエーテル)によって、純粋なトリペプチドハイドロクロライド塩が単離された。又、本発明は、医薬として、及び悪性腫瘍の治療用医薬の製造の為の上述のペプチドの使用に関する。本発明のアルキル化ペプチドは、異なる組織の腫瘍細胞系及びL−PAM抵抗を示す腫瘍細胞系において、メルファラン及びL−プロリル−L−サルコリシル−p−L−フルオロフェニルアラニンエチルエステル(P2)に比べて、効力の増加と共に広範囲の活性を示すことが分かった。更に、このアルキル化ペプチドは、以下で与えられるサンプルにおいて示される様に、血液学的及び固体の両方の、異なる組織から新たに得られたヒト腫瘍サンプルにおいて、メルファラン及びP2に比べて、著しく有効であることが分かった。【0020】本発明のペプチドは、以下の腫瘍疾患及び/又はそれぞれの疾患の段階の第一線の治療として、又は、放射線治療を併用した治療として、単独で、或いは、その他の薬剤との組合わせ、或いは、併用で使用されても良い。(I)固体腫瘍:新アジュバント又はアジュバントとして、手術可能な乳癌及び進行した手術不可能な乳癌の治療に対して、LD(限定疾患)又はED(拡大疾患)タイプの小細胞肺癌に対して、新アジュバント治療として非小細胞肺癌の手術可能な段階に対して、非小細胞肺癌の手術不可能なIIIB又はV段階に対して、手術可能な(新アジュバント)及び手術不可能な頭部と頚部の癌及び食道癌に対して、アジュバント治療として手術可能な卵巣癌と進行した卵巣癌に対して、進行した頚部癌に対して、手術による修正が出来ない皮膚の偏平上皮細胞及び基底細胞癌及び神経芽細胞腫に対して。上述の腫瘍タイプは、(1)アルキル化剤での治療には感応性を示すが、通常の治療では十分有効ではない腫瘍、或いは、(2)最初の緩解後にしばしば再発し、その段階で通常の治療に殆ど感応性を示さない(抵抗性)腫瘍を表す。新規なペプチドで治療することが妥当であると思われる腫瘍のその他のグループは、膀胱癌のそれぞれの段階、進行した前立腺癌、悪性メラノーマ、結腸直腸癌及び、アルキル化剤で一時的な結果がしばしば得られる軟組織肉腫である。治療する為の腫瘍の更にその他のグループは、腎臓癌の様な一般的に薬剤抵抗性の腫瘍及び脳腫瘍である。【0021】(II)血液及びリンパ性腫瘍:多発性骨髄腫、高度及び低度のリンパ腫、Mb.Hodgkin、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性又はリンパ性白血病及び慢性骨髄性白血病。本発明のその他の目的は、悪性腫瘍の治療の為の薬理学的に受容可能な組成物であり、この組成物は、少なくとも一種の上述のペプチドを、少なくとも一種の薬理学的に受容可能な担体及び/賦形剤と一緒に含む。本発明の薬理学的組成物は、乳癌、肺癌、卵巣癌、白血病、リンパ腫及び多発性骨髄腫の治療の為に使用することができる。この薬理学的組成物は、薬剤分野の熟練者に公知の方法で調製される。担体又は賦形剤は、固体、半固体又は、活性成分の為のビヒクル又は媒体として役立つ事のできる液体物質であることができる。適当な担体又は賦形剤は当該技術分野において公知である。この薬理学的組成物は、非経口、経口又は局所使用の為に適用することが出来、患者には、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、軟膏等で投与することができる。【0022】非経口投与の為には、本発明のペプチドは、溶液又は懸濁液の中に導入することができる。非経口投与は、注射による投与、例えば、静脈内、関節内、くも膜下腔内、胸膜内、腫瘍内、又は、腸腔内注射による投与又は膀胱内注射による投与を意味する。静脈内投与が好ましい。又、骨髄はin vitroで治療されてもよい。この薬理学的組成物は、本発明の活性ペプチドを、少なくとも0.001質量%、好ましくは0.1〜10質量%含むべきである。又、溶液又は懸濁液は、次のアジュバントを少なくとも一種含むことができる:注射用の無菌希釈液、例えば水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール又はその他の合成溶剤、アスコルビン酸又はナトリウムビサルファイトの様な耐酸化剤、アセテート、シトレート又はホスフェートの様な緩衝液及び、塩化ナトリウム又はデキストロースの様な緊張調整の為の試薬。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器又はガラス或いはプラスチックで造られた多重投与量容器の中に封入することができる。【0023】静脈内注射の為には、本発明の薬理学的組成物は、バイアルIが塩酸塩としてのペプチドと、任意に、担体又は、溶解度を増加するか安定性に有効な化合物を含み、バイアルIIが、プロピレングリコール/エタノールの混合物を含む二つのバイアルで投与されても良い。ペプチドは投与の直前に溶解され、5%グルコール又は生理食塩水と混合される。指定の投与量は、短時間注入の為には、0.1mg/kg〜1mg/kgの範囲であっても良い。局所投与の為には、本発明のペプチドは、溶液又は懸濁液中、或いは軟膏中に導入することができる。前記組成物は、活性ペプチドを、少なくとも0.1質量%、好ましくは0.1〜10質量%含むことができる。【0024】本発明のその他の目的は、上述のペプチドの薬理学的に有効な投与量を投与する事を含む、それを必要とする対象物における悪性腫瘍の治療方法である。対象は、哺乳類、好ましくはヒトである。(実施例)実施例−化合物の合成本発明のメルファラン誘導体の合成についての以下の実施例及び比較例において、全ての溶剤は分析又は合成グレードのものである。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、HOBt;N−メチルモルフォリン、NMM;及び/又は1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミドハイドロクロライド、EDC;又は、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、PyBOP;及びトリエチルがカップリング剤として使用された。融点は、Buchi Melting Point B-540装置で測定された。1H及び13C NMRスペクトルは、JEOL JNM−EX400 NMR分光計で測定された。1H−スペクトルは、400MHzで記録され、13C−スペクトルは100MHzで記録された。反応は、アルミニウムシートを基板としたシリカ上で、紫外線及び/又はエタノール中の2%ニンヒドリンによる斑点の検出と、その後の加熱により、薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターされた。カラムクロマトグラフィーは、フラッシュクロマトグラフィーを使用して、湿潤充填シリカ(シリカゲル 60(0.040〜0.063mm)、E. Merck)上で行われた。【0025】出発化合物として使用されたL−メルファランは、Sigma社から得たもので、使用前にエタノールから再結晶化された。中間体のN−t−ブトキシカルボニル−L−メルファランは、Pai, N.N.; Miyawa, J.H.; Perrin, J.H.. Drug Dev. Industr. Pharm. 1996, 22, 181-184によって合成された。L−メルファラン(500mg、1.64ミリモル)をTHFの50%水溶液(5ml)に溶解し、トリエチルアミン(201μl、1.44ミリモル)を添加した。この溶液を0℃に冷却し、THF(3ml)に溶解したジ−t−ジブチル−ジカーボネート(210mg、0.96ミリモル)を滴加した。この溶液を0℃で30分間攪拌し、次いで、室温(RT)で18時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、水を加え、この溶液を10%クエン酸でpH5に酸性化した。酢酸エチルで三回抽出した後、一緒にした有機抽出物をMgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発させ、残さを、溶出剤として、3:1と19:1のクロロホルム:メタノールを使用して、シリカ上でフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、48%の純粋生成物を得た。1H NMR(CDCl3):δ 7.05(d,2H,Ph−H),6.58(d,2H,Ph−H),4.98(br s,1H,NH),4.47(br s,1H,α−H),3.69−3.49(m,8H,4 CH2−マスタード),3.12−2.91(m,2H,CH2−Ph), 1.40(s,9H,CH3−Boc)。【0026】実施例1L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(J1)L−p−フルオロフェニルアラニン(217mg、1.18ミリモル)を、前以って塩酸で泡立たせたEtOH(5ml)に溶解した。反応を100℃に設定し、18時間還流させた。溶媒を蒸発させ、生成物を高真空下で乾燥し、乾燥白色結晶として、L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライドを得た(98%)。1H NMR(CD3OD):δ 7.30−7.26(m,2H,Ph−H),7.13−7.06(m,2H,Ph−H),4.29−4.22(m,2H,CH2−Ph),3.31−3.10(m,3H,CH2CH3,α−H), 1.24(t,3H,CH2CH3)。N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(157mg、0.387ミリモル)を、ジクロロメタン(4ml)に溶解した。PyBOP(201mg、0.387ミリモル)とトリエチルアミン(54μl、0.387ミリモル)を添加し、溶液を室温で1時間攪拌した。L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(92mg、0.387ミリモル)とジクロロメタン(4ml)中のトリエチルアミン(54μl、0.387ミリモル)の溶液を添加し、一晩中攪拌しながら反応を行った。飽和NaHCO3で、次いで、10%クエン酸での抽出によって反応を停止した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒を蒸発させ、200mgの黄色油を得た。これを、溶出剤として、エーテル:ペンタン(1:2、1:1、1:0)を使用して、勾配カラムクロマトグラフィーによって精製し、102mg(収率43%)のN−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルを得た。これを、更に精製する事無しに、次の工程に使用した。【0027】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル(64mg、0.11ミリモル)を、前以って塩酸(ガス)で泡立たせた5mlのEtOAcに溶解した。この混合物を、室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去し、残さをEtOH/Et2Oから再結晶化した。白色結晶として、L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(J1)が単離された。1H NMR(CD3OD):δ 7.23(d,2H,Ph−H, Phe),7.13(d,2H,Ph−H,Phe),7.01(d,2H,Ph−H,Mel),6.72(d,2H,Ph−H,Mel),4.68(dd,8H,1H,α−CH,Phe),4.61(br s,1H,α−CH,Mel),4.12(q,2H,CH2CH3), 3.80−3.62(m,8H,CH2−マスタード),3.22−2.86(m,4H,Ph),1.21(t,3H,CH2CH3)。元素分析:CHN 53.7;5.8;7.9(計算値:54.1;6.1;7.9)。【0028】実施例2L−プロリニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(J3)N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリン(12mg、0.054ミリモル)、L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(24mg、0.045ミリモル)、HOBt(8mg、0.054ミリモル)及びNMM(7μl、0.045ミリモル)をジクロロメタン(5ml)に溶解し、この溶液を0℃に冷却して、EDCハイドロクロライド(11mg、0.045ミリモル)を添加した。この溶液を0℃で1時間攪拌し、次いで、室温で一晩攪拌した。反応混合物を10mlのジクロロメタンで希釈し、10%のクエン酸水溶液、飽和NaHCO3及びブラインで順次抽出して反応を停止した。有機層を無水NaSO4で乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発させ、27mg(86%)のN−t−ブトキシカルボニル−L−プロリニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルを得た。これを、更に精製する事無しに、次の工程に使用した。1H NMR(CDCl3):δ 7.08−6.89(m,6H,Ph−H, Phe,Mel),6.67(br s,1H,NH),6.55(d,2H,Ph−H),6.24(br s,1H,NH),4.72(m,1H,α−CH),4.55(br s,1H,α−CH),4.20(br s,1H,α−CH),4.10(q,2H,CH2CH3), 3.74−3.54(m,8H,CH2−マスタード),3.42−3.20(m,2H,プロリン δ),3.10−2.86(m,4H,CH2−Ph),2.20−1.74(m,2H,プロリン β、γ),1.40(s,9H,CH3−Boc),1.18(t,3H,CH2CH3)。【0029】N−t−ブトキシカルボニル−L−プロリニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル(25mg)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(3ml)に溶解した。この混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去し、酢酸エチルとジエチルエーテルからの再結晶化によって、殆ど白色に近い結晶として、純粋なJ3を94%の収率(L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライドから計算した)で得た。1H NMR(CD3OD):δ 7.26−6.94(m,6H,Ph−H,Phe,Mel),6.68(d,2H,Ph−H),6.24(br s,1H,NH),4.62−4.55(m,2H,α−CH),4.20−4.05(m,3H,α−CH,CH2CH3),3.74−3.54(m,8H,CH2−マスタード), 3.25−2.75(m,6H,CH2−Ph,プロリン δ),2.40−1.85(m,4H,プロリン β、γ),1.23(t,3H,CH2CH3)。【0030】実施例3L−メルファラニル−L−フェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(JV22)N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(150mg、0.37ミリモル)を、2.6mlのジクロロメタンに溶解した。PyBOP(199mg、0.38ミリモル)とトリエチルアミン(104μl、0.75ミリモル)を添加し、室温で30分間攪拌した後、2.6mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(104μl、0.75ミリモル)と、フェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(89mg、0.39ミリモル)の溶液を添加した。4時間、室温で攪拌後、この反応を急冷した。20mlの飽和NaHCO3水溶液と20mlの10%クエン酸での抽出前に、ジクロロメタンを、20mlの合計容量まで添加した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、溶出剤として、エーテル:ペンタンの勾配(2:2→3:1)、次いで、エーテルで、その後、CHCl3:MeOH(19:1)を使用して、シリカ上でカラムクロマトグラフィーで精製した。適当画分を収集し濃縮して、白色固体の純粋なN−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−フェニルアラニンエチルエステルを得た(110mg、51%)。Mp:117−120℃。1H NMR(CDCl3):δ 7.29−7.16(m,3H,Ph−H,Phe),7.06−6.95(m,4H,Ph−H),6.57(d,2H,Ph−H,Mel),6.28(br s,1H,NH,Phe),4.92(br s,1H,NH,Mel),4.76(br s,1H,α−CH,Phe),4.26(br s,1H,α−CH,Mel),4.10(q,2H,CH2CH3),3.74−3.50(m,8H,CH2−マスタード),3.12−2.84(m,4H,CH2−Ph),1.40(s,9H,CH3−Boc),1.18(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.05(2 C:s)(アミド及びエステル中のC=O),155.10(C=O,Boc),145.10(C−4′),135.84(Ph),130.75(Ph),129.39(2 C:s),128.54(2 C:s)(Ph及びC−3′),127.13(Ph),125.07(C−1′),112.27(2 C:s)(C−2′),79.82(C−Boc),61.54(CH2CH3),55.51(α−CH),53.55(2 C:s)(N−CH2),53.32(α−CH),40.51(2 C:s)(CH2−Cl),38.13,36.73(CH2−Ph),28.35(3 C:s)(CH3−Boc),14.17(CH2CH3)。【0031】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−フェニルアラニンエチルエステル(100mg、0.17ミリモル)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(6ml)に溶解した。この混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去し、酢酸エチルとジエチルエーテルからの再結晶化によって、僅かに黄色/褐色の固体として、純粋なJV22を得た(37mg、42%)。Mp:123−125℃。1H NMR(CDCl3):δ 7.31−7.13(m,7H,Ph−H),6.72(d,2H,Ph−H,Mel),4.73−4.66(m,1H,α−CH−Phe),4.12(q,2H,CH2CH3),3.99−3.92(m,1H,α−CH,Mel),3.77−3.64(m,8H,CH2−マスタード),3.20−2.85(m,4H,CH2−Ph),1.18(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.05,168.42(アミド及びエステル中のC=O),145.96(C−4′),136.55(Ph),130.43(2 C:s)(C−3′),128.90(2 C:s),128.27(2 C:s),126.10(Ph),122.35(C−1′),112.58(2 C:s)(C−2′),61.23(CH2CH3),54.29,54.25(α−CH),53.06(2 C:s)(N−CH2),40.26(2 C:s)(CH2−Cl),37.12,36.29(CH2−Ph),13.10(CH2CH3)。【0032】実施例4L−メルファラニル−L−チロシンエチルエステルハイドロクロライド(JV24)N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(150mg、0.37ミリモル)を、ジクロロメタン(3ml)に溶解した。PyBOP(199mg、0.38ミリモル)とトリエチルアミン(104μl、0.75ミリモル)を添加し、室温で30分間攪拌した後、3mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(104μl、0.75ミリモル)と、チロシンエチルエステルハイドロクロライド(94mg、0.38ミリモル)の溶液を添加した。室温で100分攪拌後、この反応を急冷した。20mlの飽和NaHCO3水溶液と20mlの10%クエン酸での抽出前に、ジクロロメタンを、20mlの合計容量まで添加した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、溶出剤として、エーテル:ペンタン(2:1→4:1→1:0)、次いで、CHCl3:MeOH(19:1→97:3)の勾配溶出システムを使用して、シリカ上でカラムクロマトグラフィーで4回精製した。無色の油として純粋なN−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−チロシンエチルエステルが単離された(59mg、27%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.05−6.92(m,2H,Ph−H−Mel),6.86−6.74(m,2H,Ph−H−Phe),6.59−6.43(m,2H,Ph−H,Mel),6.42−6.36(m,1H,NH,Phe),5.00(br s,1H,NH,Mel),4.81−4.70(m,1H,α−CH,Phe),4.26(br s,1H,α−CH,Mel),4.12(q,2H,CH2CH3),3.70−3.53(m,8H,CH2−マスタード),3.03−2.85(m,4H,CH2−Ph),1.39(s,9H,CH3−Boc),1.21(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.21(2 C:s)(アミド及びエステル中のC=O),155.31(2 C:s)(C=O Boc及びC−4″),144.96(C−4′),130.70(2 C:s),130.47(2 C:s)(Ph及びC−3′),127.12(Ph),125.21(C−1′),115.52(2 C:s)(Ph),112.31(2 C:s)(C−2′),80.09(C−Boc),61.61(CH2CH3),55.84(α−CH),53.56(2 C:s)(N−CH2),53.25(α−CH),40.55,40.50(CH2−Cl),37.32(2 C:s)(CH2−Ph),28.36(3 C:s)(CH3−Boc),14.22(CH2CH3)。【0033】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−チロシンエチルエステル(48mg、81μモル)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(4ml)に溶解した。この混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去し、酢酸エチルとジエチルエーテルからの再結晶化によって、僅かに褐色な固体として、純粋なJV24を得た(13mg、30%)。Mp:150−154℃。1H NMR(CDCl3):δ 7.16−6.86(m,4H,Ph−H),6.75−6.65(m,4H,Ph−H),4.68−4.59(m,1H,α−CH−Phe),4.13(q,2H,CH2CH3),4.02−3.94(m,1H,α−CH,Mel),3.77−3.60(m,8H,CH2−マスタード),3.21−2.71(m,4H,CH2−Ph),1.20(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 170.94,168.08(アミド及びエステル中のC=O),156.12(C−4″),145.68(C−4′),130.41(2 C:s),129.68(2 C:s),127.03(Ph及びC−3′),125.86(C−1′),114.98(2 C:s)(Ph),112.34(2 C:s)(C−2′),60.80(CH2CH3),54.48,54.27(α−CH),53.07(2 C:s)(N−CH2),40.19(2 C:s)(CH2−Cl),36.32(2 C:s)(CH2−Ph),12.64(CH2CH3)。【0034】実施例5L−メルファラニル−L−p−メトキシフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(JV25)N−t−ブトキシカルボニル−L−チロシンエチルエステル(228mg、0.74ミリモル)を、15mlのアセトンに溶解し、K2CO3(123mg、0.89ミリモル)を添加した。硫酸ジメチル(77.5μl、0.81ミリモル)を注意深く添加し、溶液を20時間還流させた。濾過によって固体K2CO3を除去し、アセトンを真空で除去した。溶出剤として、CHCl3:MeOH:ヘプタン(4:1:5)を使用して、シリカ上でカラムクロマトグラフィーでの精製により、透明な油として、214mg(90%)のN−t−ブトキシカルボニル−L−p−メトキシフェニルアラニンエチルエステルを得た。この中間体を、更に精製する事無しに、次の工程に使用した。【0035】N−t−ブトキシカルボニル−L−p−メトキシフェニルアラニンエチルエステル(165mg、0.51ミリモル)を、CHCl3(8.5ml)に溶解し、ヨードトリメチルシラン(168μl、1.22ミリモル)を添加した。溶液を室温で40分間攪拌した。この反応を、MeOH(175μl、4.3ミリモル)を添加して急冷した。溶媒並びに過剰のヨードトリメチルシランを真空で除去し、褐色−オレンジ色の固体として、169mg(149%)の粗生成物(L−p−メトキシフェニルアラニンエチルエステル)得た。これを、更に精製する事無しに、次の工程に使用した。 1H NMR(CD3OD):δ 7.16(d,2H,Ph−H),6.90(d,2H,Ph−H),4.28−4.18(m,3H,CH2CH3,α−CH),3.78(s,3H,OCH3),3.21−3.08(m,2H,CH2−Ph),1.24(t,3H,CH2CH3)。N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(150mg、0.37ミリモル)を、3mlのジクロロメタンに溶解した。PyBOP(199mg、0.38ミリモル)とトリエチルアミン(104μl、0.75ミリモル)を添加し、室温で30分間攪拌した後、3mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(104μl、0.75ミリモル)と、L−p−メトキシフェニルアラニン(124mg、0.55ミリモル)の溶液を添加した。溶液を一晩中、室温で攪拌した。20mlの飽和NaHCO3水溶液と20mlの10%クエン酸での抽出前に、ジクロロメタンを、20mlの合計容量まで添加した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、溶出剤として、エーテル:ヘプタン(3:1)で2回、そして、CHCl3:MeOH(19:1)で2回使用して、シリカ上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで4回精製した。白色固体として、N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−メトキシフェニルアラニンエチルエステルを得た(150mg、66%)。Mp:125−127.5℃。1H NMR(CDCl3):δ 7.06(d,2H,Ph−H,Mel),6.90(d,2H,Ph−H,Phe),6.76(d,2H,Ph−H,Phe),6.59(d,2H,Ph−H,Mel),6.31(br s,1H,NH,Phe),4.97(br s,1H,NH,Mel),4.71(br s,1H,α−CH,Phe),4.27(br s,1H,α−CH,Mel),4.10(q,2H,CH2CH3),3.75(s,3H,OCH3),3.69−3.56(m,8H,CH2−マスタード),3.00−2.85(m,4H,CH2−Ph),1.40(s,9H,CH3−Boc),1.19(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.11,170.91(アミド及びエステル中のC=O),158.72(C−4″),155.30(C=O,Boc),145.03(C−4′),130.76(2 C:s),130.39(2 C:s)(Ph及びC−3′),127.75(Ph),125.36(C−1′),113.96(2 C:s)(Ph),112.28(2 C:s)(C−2′),80.12(C−Boc),61.50(CH2CH3),55.81(α−CH),55.27(OCH3),53.55(2 C:s)(N−CH2),53.46(α−CH),40.52(2 C:s)(CH2−Cl),37.33,37.23(CH2−Ph),28.34(3 C:s)(CH3−Boc),14.20(CH2CH3)。【0036】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−メトキシフェニルアラニンエチルエステル(140mg、0.23ミリモル)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(17ml)に溶解した。この混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去した。粗生成物をエタノールに溶解し、次いで、ジエチルエーテル中で沈殿させ、白色の固体として、JV25を得た(45mg、36%)。Mp:170−173℃。1H NMR(CDCl3):δ 7.17−7.07(m,4H,Ph−H),6.83(d,2H,Ph−H,Phe),6.72(d,2H,Ph−H,Mel),4.68−4.61(m,1H,α−CH,Phe),4.13(q,2H,CH2CH3),3.99−3.94(m,1H,α−CH,Mel),3.77−3.59(m,11H,OCH3及びCH2−マスタード),3.17−2.82(m,4H,CH2−Ph),1.19(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.11,168.41(アミド及びエステル中のC=O),158.91(C−4″),146.10(C−4′),130.44(2 C:s),129.94(2 C:s)(Ph及びC−3′),128.38(Ph),122.18(C−1′),113.67(2 C:s)(Ph),112.18(2 C:s)(C−2′),61.19(CH2CH3),54.45,54.37,54.29(α−CH及びOCH3),52.99(2 C:s)(N−CH2),40.31(2 C:s)(CH2−Cl),36.34,36.29(CH2−Ph),13.14(CH2CH3)。【0037】実施例6L−メルファラニル−L−p−ニトロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(JV26)N−t−ブトキシカルボニル−L−p−ニトロフェニルアラニン(395mg、1.27ミリモル)を、塩酸で飽和したエタノール(20ml)に溶解した。溶液を20時間還流しながら加熱した。混合物はCHCl3と1MHCl(pH4)に分配された。水性層を5%KOHでpH10に塩基性化し、次いで、CHCl3で4回抽出した。有機層を一緒にし、乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮して、薄い黄色状油として、L−p−ニトロフェニルアラニンエチルエステルを得た(195mg、65%)。これを、更に精製する事無しに、次の工程で使用した。1H NMR(CDCl3):δ 8.14(d,2H,Ph−H),7.37(d,2H,Ph−H),4.14(q,2H,CH2CH3),3.71(t,1H,α−CH),3.16−2.91(m,2H,CH2−Ph),1.22(t,3H,CH2CH3)。【0038】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(86mg、0.21ミリモル)を、3mlのジクロロエタンに溶解した。PyBOP(115mg、0.22ミリモル)とトリエチルアミン(58μl、0.42ミリモル)を添加し、室温で30分間攪拌した後、3mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(29μl、0.21ミリモル)と、L−p−ニトロフェニルアラニンエチルエステル(55mg、0.23ミリモル)の溶液を添加した。溶液を一晩中、室温で攪拌した。10mlの飽和NaHCO3水溶液と10mlの10%クエン酸での抽出前に、ジクロロメタンを、10mlの合計容量まで添加した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、溶出剤として、CHCl3:MeOH(9:1と19:1)を使用して、シリカ上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで2回精製した。明るい黄色の固体として、N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−ニトロフェニルアラニンエチルエステルを得た(90mg、69%)。Mp:152−155℃。1H NMR(CDCl3):δ 8.09−8.02(m,2H,Ph−H,Phe),7.21−7.01(m,4H,Ph−H),6.57(d,2H,Ph−H,Mel),6.50−6.44(m,1H,NH,Phe),4.92(br s,1H,NH,Mel),4.77(br s,1H,NH,α−CH,Phe),4.25(br s,1H,NH,α−CH,Mel),4.11(q,2H,CH2CH3),3.70−3.53(m,8H,CH2−マスタード),3.25−3.10(m,2H,CH2−Ph,Phe),2.97−2.84(m,2H,CH2−Ph,Mel),1.40(s,9H,CH3−Boc),1.19(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.31,170.40(アミド及びエステル中のC=O),155.46(C=O,Boc),147.14(Ph),145.10(C−4′)、143.85(Ph),130.68(2 C:s),130.41(2 C:s)(Ph及びC−3′),125.21(C−1′),123.62(2 C:s)(Ph),112.40(2 C:s)(C−2′),80.45(C−Boc),61.95(CH2CH3),55.98(α−CH),53.54(2 C:s)(N−CH2),53.03(α−CH),40.46(2 C:s)(CH2−Cl),37.86,37.00(CH2−Ph),28.33(3C:s),14.20(CH2CH3)。【0039】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−ニトロフェニルアラニンエチルエステル(80mg、0.13ミリモル)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(6ml)に溶解した。この混合物を室温で1.5時間攪拌した。溶媒を真空で除去した。粗生成物をエタノールに溶解し、次いで、ジエチルエーテル中で沈殿させ、明るいオレンジ色の固体として、JV26を得た(55mg、76%)。Mp:138−142℃。1H NMR(CDCl3):δ 8.20−8.06(m,2H,Ph−H,Phe),7.52−7.33(m,2H,Ph−H,Phe),7.17−6.85(m,2H,Ph−H,Mel),6.77−6.60(m,2H,Ph−H,Mel),4.16(q,2H,CH2CH3),4.00−3.94(m,1H,α−CH,Mel),3.79−3.54(m,8H,CH2−マスタード),3.19−2.71(m,4H,CH2−Ph),1.21(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 170.46,168.29(アミド及びエステル中のC=O),147.16(Ph),145.61(C−4′),144.67(Ph),130.96(2 C:s),130.24(2 C:s)(Ph及びC−3′),126.72(C−1′),123.26(2 C:s)(Ph),115.45(2 C:s)(C−2′),61.53(CH2CH3),54.76,54.08(α−CH),53.54(2 C:s)(N−CH2),39.22(2 C:s)(CH2−Cl),36.75,36.33(CH2−Ph),13.16(CH2CH3)。【0040】実施例7L−メルファラニル−L−メルファランエチルエステルハイドロクロライド(JV27)N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(35mg、86μモル)を、ジクロロメタン(2ml)に溶解した。PyBOP(43mg、83μモル)とトリエチルアミン(23μl、162μモル)を添加し、室温で30分間攪拌した後、2mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(23μl、162μモル)と、L−メルファランエチルエステルハイドロクロライド(32mg、87μモル)の溶液を添加した。室温で一晩攪拌し、10mlの飽和NaHCO3水溶液と10mlの10%クエン酸での抽出前に、更にジクロロメタン(10mlまで)を添加した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、溶出剤として、CHCl3:MeOH:ヘプタン(4:1:7)と、CHCl3:MeOH(19:1)を使用して、シリカ上でカラムクロマトグラフィーで精製し、褐色ゴムとして、純粋なN−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−メルファランエチルエステルを得た(29mg、49%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.06(d,2H,Ph−H),6.87(d,2H,Ph−H),6.61−6.46(m,4H,Ph−H),6.24(br s,1H,NH),4.99(br s,1H,NH),4.68(br s,1H,α−CH),4.25(br s,1H,α−CH),4.12(q,2H,CH2CH3),3.72−3.47(m,16H,CH2−マスタード),3.02−2.87(m,4H,CH2−Ph),1.40(s,9H,CH3−Boc),1.21(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.16,170.71(アミド及びエステル中のC=O),154.87(C=O, Boc),145.91(2 C:s)(C−4′及びC−4″),130.79(2 C:s),130.68(2 C:s)(C−3′及びC−3″),125.08,124.33(C−1′,C−″),112.30(2 C:s),112.04(2 C:s)(C−2′及びC−2″),79.65(C−Boc),61.50(CH2CH3),55.83(α−CH),53.57(2 C:s)(N−CH2),53.53(α−CH),40.55,40.47(CH2−Cl),37.04,36.98(CH2−Ph),28.36(3 C:s)(CH3−Boc),14.24(CH2CH3)。【0041】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−メルファランエチルエステル(20mg、28μモル)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(3ml)に溶解した。この混合物を室温で1.5時間攪拌した。溶媒を真空で除去し、粗生成物をエタノールに溶解し、次いで、ジエチルエーテル中で沈殿させて、僅かに褐色な固体として、純粋なJV27を得た(11mg、62%)。Mp:157−160℃。1H NMR(CDCl3):δ 7.19−7.01(m,4H,Ph−H),6.80−6.63(m,4H,Ph−H),4.66−4.61(m,1H,α−CH),4.13(q,2H,CH2CH3),4.02−3.96(m,1H,α−CH),3.83−3.54(m,16H,8 CH2−マスタード),3.18−2.81(m,4H,CH2−Ph),1.17(t,3H,CH2CH3)。【0042】実施例8L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンイソプロピルエステルハイドロクロライド(JV28)L−p−フルオロフェニルアラニン(266mg、1.45ミリモル)を、塩酸で飽和したイソプロパノール(10ml)に溶解した。溶液を2.5時間還流しながら加熱した。溶媒を蒸発させ、白色の綿状固体の生成物を得た(350mg、91%)。生成物を、更に精製する事無しに、次の工程で使用した。1H NMR(CD3OD):δ 7.31−7.23(m,2H,Ph−H),7.12−7.03(m,2H,Ph−H),5.10−5.00(m,1H,CH−イソプロピル),4.22(t,1H,α−CH),3.22−3.11(m,2H,CH2−Ph),1.25(d,3H,CH3−イソプロピル),1.18(d,3H,CH3−イソプロピル)。N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(52mg、0.13ミリモル)を、2mlのジクロロメタンに溶解した。PyBOP(71mg、0.14ミリモル)とトリエチルアミン(38μl、0.27ミリモル)を添加し、室温で30分間攪拌した後、2mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(38μl、0.27ミリモル)と、L−p−フルオロフェニルアラニンイソプロピルエステル(39mg、0.15ミリモル)の溶液を添加した。溶液を一晩中、室温で攪拌した。10mlの飽和NaHCO3水溶液と10mlの10%クエン酸での抽出前に、ジクロロメタンを、10mlの合計容量まで添加した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、溶出剤として、CHCl3:MeOH(19:1)を使用して、シリカ上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、薄オレンジ色の半固体として、N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンイソプロピルエステルを得た(57mg、71%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.06−6.85(m,6H,Ph−H),6.56(d,2H,Ph−H,Mel),6.40(br s,1H,NH,Phe),5.00−4.85(m,2H,CH−イソプロピル,NH,Mel),4.68(br s,1H,α−CH,Phe),4.27(br s,1H,α−CH,Mel),3.69−3.52(m,8H,CH2−マスタード),3.02−2.85(m,4H,CH2−Ph),1.37(s,9H,CH3−Boc),1.18(d,3H,CH3−イソプロピル),1.14(d,3H,CH3−イソプロピル)。13C NMR(CDCl3):δ 171.00,170.43(アミド及びエステル中のC=O),161.95(d,J=245.0Hz,C−4″),155.35(C=O,Boc),145.12(C−4′)、131.60(C−1″),130.99(2 C:s)(d,J=7.75Hz,C−2″),130.72(2 C:s)(C−3′),125.26(C−1′),115.29(2 C:s)(d,J=20.6Hz,C−3″),112.27(2 C:s)(C−2′),80.24(C−Boc),69.52(CH−イソプロピル),55.82(α−CH),53.53(2 C:s)(N−CH2),53.40(α−CH),40.48(2 C:s)(CH2−Cl),37.29(2 C:s)(CH2−Ph),28.33(3C:s)(CH3−Boc),21.81,21.73(CH3−イソプロピル)。【0043】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンイソプロピルエステル(48mg、79μモル)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(4ml)に溶解した。この混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去した。粗生成物をエタノールに溶解し、次いで、ジエチルエーテル中で沈殿させ、白色の固体として、JV28を得た(22mg、50%)。Mp:192−195℃。1H NMR(CDCl3):δ 7.28−7.17(m,2H,Ph−H,Phe),7.14(d,2H,Ph−H,Phe),7.04−6.96(m,2H,Ph−H,Mel),6.77−6.67(m,2H,Ph−H,Mel),4.68−4.60(m,1H,α−H,Phe),4.00−3.93(m,1H,α−CH,Mel),3.76−3.58(m,8H,CH2−マスタード),3.18−2.80(m,4H,CH2−Ph),1.24(d,3H,CH3−イソプロピル),1.15(d,3H,CH3−イソプロピル)。13C NMR(CDCl3):δ 170.49,168.42(アミド及びエステル中のC=O),162.06(d,J=242.4Hz,C−4″),146.13(C−4′)、132.48(C−1″),130.72(2 C:s)(d,J=7.64Hz,C−2″),130.40(2 C:s)(C−3′),122.10(C−1′),115.87(2 C:s)(d,J=21.2Hz,C−3″),112.45(2 C:s)(C−2′),69.27(CH−イソプロピル),54.28(2 C:s)(α−CH),52.97(2 C:s)(N−CH2),40.26(2 C:s)(CH2−Cl),36.31(2 C:s)(CH2−Ph),20.70,20.56(CH3−イソプロピル)。【0044】実施例9L−メルファラニル−L−p−アミノフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(JV29)N−t−ブトキシカルボニル−L−p−ニトロフェニルアラニン(510mg、1.64ミリモル)を、80%エタノール(12.5ml)に溶解した。水(1ml)中のCaCl2(150mg、1.35ミリモル)溶液を、粉末亜鉛(3.79g、58ミリモル)と共に添加した。還流で3.5時間加熱後、懸濁液を濾過し、亜鉛粉末を過剰のエタノールで洗浄した。濾過物を真空で濾過して、薄黄色の固体(未だ、幾らかのエタノールを含む)として、600mg(130%)のN−t−ブトキシカルボニル−L−p−アミノフェニルアラニンを得た。この生成物を、更なる精製無しに次の工程に使用した。1H NMR(CD3OD):δ 6.96(d,2H,Ph−H),6.63(d,2H,Ph−H),4.16−4.07(m,1H,α−CH),3.05−2.76(m,2H,CH2−Ph),1.38(s,9H,CH3−Boc)。N−t−ブトキシカルボニル−L−p−アミノフェニルアラニン(201mg、0.72ミリモル)を、塩酸で飽和したエタノール(10ml)に溶解した。溶液を3時間還流しながら加熱した。混合物はCHCl3と1MHCl(pH4)に分配された。水性層を5%KOHでpH10に塩基性化し、次いで、CHCl3で4回抽出した。有機層を一緒にし、乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮して、黄色状油として、L−p−アミノフェニルアラニンエチルエステルを得た(90mg、60%)。これを、更に精製する事無しに、次の工程で使用した。1H NMR(CDCl3):δ 6.97(d,2H,Ph−H),6.61(d,2H,Ph−H),4.13(q,2H,CH2CH3),3.71(t,1H,α−CH),3.04−2.78(m,2H,CH2−Ph),1.23(t,3H,CH2CH3)。【0045】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(44mg、0.11ミリモル)を、2mlのジクロロメタンに溶解した。PyBOP(55mg、0.11ミリモル)とトリエチルアミン(28μl、0.20ミリモル)を添加し、室温で30分間攪拌した後、2mlのジクロロメタン中のトリエチルアミン(14μl、0.10ミリモル)とL−p−アミノフェニルアラニンエチルエステル(21mg、0.10ミリモル)の溶液を添加した。溶液を一晩中、室温で攪拌した。10mlの飽和NaHCO3水溶液と10mlの10%クエン酸での抽出前に、ジクロロメタンを、10mlの合計容量まで添加した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を、溶出剤として、CHCl3:MeOH(9:1と19:1)を使用して、シリカ上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで2回精製した。褐色−オレンジ色の油として、N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−アミノフェニルアラニンエチルエステルを得た(28mg、47%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.03(d,2H,Ph−H,Mel),6.75(d,2H,Ph−H,Phe),6.59−6.52(m,4H,Ph−H),6.26(br s,1H,NH,Phe),4.96(br s,1H,NH,Mel),4.68(br s,1H,α−CH,Phe),4.26(br s,1H,α−CH,Mel),4.10(q,2H,CH2CH3),3.70−3.53(m,8H,CH2−マスタード),2.97−2.88(m,4H,CH2−Ph),1.38(s,9H,CH3−Boc),1.19(t,3H,CH2CH3)。13C NMR(CDCl3):δ 171.21,170.83(アミド及びエステル中のC=O),145.37,144.96(C−4′,C−4″)、130.78(3 C:s),130.21(2 C:s)(Ph及びC−3′),125.37(C−1′),115.22(2 C:s)(Ph),112.26(2 C:s)(C−2′),80.09(C−Boc),61.42(CH2CH3),55.61(α−CH),53.56(2 C:s)(N−CH2),53.48(α−CH),40.56(2 C:s)(CH2−Cl),37.37,37.17(CH2−Ph),28.34(3C:s)(CH3−Boc),14.21(CH2CH3)。【0046】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−L−p−アミノフェニルアラニンエチルエステル(20mg、34μモル)を、塩酸で飽和された酢酸エチル(3ml)に溶解した。この混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去した。粗生成物をエタノールに溶解し、次いで、ジエチルエーテル中で沈殿させ、明るい褐色の固体として、JV29を得た(4mg、22%)。1H NMR(CDCl3):δ 7.46−7.29(m,4H,Ph−H,Phe),7.18−7.07(m,2H,Ph−H,Mel),6.8−6.66(m,2H,Ph−H,Mel),4.73−4.66(m,1H,α−CH,Phe),4.10(q,2H,CH2CH3),4.06−3.99(m,1H,α−CH,Mel),3.79−3.56(m,8H,CH2−マスタード),3.22−2.83(m,4H,CH2−Ph),1.15(t,3H,CH2CH3)。【0047】実施例10L−メルファラニル−D−フェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(T4)D−フェニルアラニン(250mg、1.52ミリモル)を、前以って塩酸(ガス)で泡立たせたEtOH(5ml)に溶解した。溶液を100℃にまで持って行き、一晩中還流させた。溶媒を蒸発させ、280mgの粗生成物を得た。EtOH/EtOAc/ペンタンから再結晶化によって、白色結晶として、239mg(81%収率)のD−フェニルアラニンエチルエステルを得た。1H NMR:(CD3OD)δ 7.4−7.22(m,5H,Ph−H),4.31−4.14(m,3H,CH2CH3,α−H),3.35−3.08(m,2H,CH2−Ph), 1.25−1.20(t,3H,CH2CH3)。N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラン(65mg、0.16ミリモル)、D−フェニルアラニンエチルエステル(53mg、0.23ミリモル)、HOBT(32mg、0.24ミリモル)及びNMM(25μl、0.23ミリモル)を、ジクロロメタン(4ml)に溶解した。この溶液を0℃に冷却し、EDC(44mg、0.23ミリモル)を添加した。溶液を0℃で0.5時間攪拌し、次いで、室温で3時間攪拌した。次いで、反応混合物をジクロロメタンで20mlに希釈し、10%のクエン酸水溶液(25ml)、飽和NaHCO3(25ml)及びブライン(25ml)で順次抽出して反応を停止した。有機層を無水NaSO4で乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発させ、60mgの黄色油を得た。この粗生成物は、次いで、エーテル:ペンタン(2:3→1:1→1:0)の勾配溶出系を使用して、フラッシュクロマトグラフィーによって分離された。精製画分を集め、溶媒を蒸発させて、白色結晶として、25mg(25%)のN−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−D−フェニルアラニンエチルエステルを得た。【0048】N−t−ブトキシカルボニル−L−メルファラニル−D−フェニルアラニンエチルエステル(90mg、0.16ミリモル)を、前以って塩酸(ガス)で泡立たせた5mlのEtOAcに溶解した。この混合物を、室温で30分間攪拌した。溶媒を真空で除去し、残さをEtOH/Et2Oから再結晶化した。白色結晶として、L−メルファラニル−D−フェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(T4)が、62%の収率で単離された(46mg)。【0049】比較例N−アセチル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル(AcJ1)L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド(10mg、0.019ミリモル)を、ジクロロメタン(0.5ml)とピリジン(4μl、0.044ミリモル)に溶解した。無水酢酸(2μl、0.22ミリモル)を添加し、混合物を室温で1時間攪拌した。更にピリジン(2μl、0.022ミリモル)と無水酢酸(2μl、0.22ミリモル)を添加し、1時間攪拌後に透明な溶液を得た。この溶液を10%クエン酸水溶液とブラインで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で溶媒を蒸発させた。固体残さをEtOH/ジエチルエーテル中で再結晶化させ、白色結晶としてAcJ1を得た。1H NMR(CDCl3):δ 7.09−6.90(m,6H,Ph−H,Phe,Mel),6.60(d,2H,Ph−H,Mel),6.25(br d,1H,NH),6.04(br d,1H,NH),4.73(dd,1H,α−CH),4.55(dd,1H,α−CH),4.14(q,2H,CH2CH3),3.76−3.58(m,8H,CH2−マスタード),3.12−2.88(m,4H,CH2−Ph),1.98(s,3H,CH3CO),1.22(t,3H,CH2CH3)。【0050】生物学的テスト以下のテストにおいて、本発明のペプチドの細胞分裂阻止活性が分析され、メルファラン(ハイドロクロライドとして、アルケラン注射物質、Glaxo WEllcome)、P2(L−プロリル−m−L−サルコリシル−p−L−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド;Istituto Sieroterapico Milanese, Milan, Italyから)、サルコリシン(Istituto Sieroterapico Milanese, Milan, Italyから)及び患者からヒト腫瘍細胞(PHTC)及びヒト腫瘍細胞系の異なる一次培養における多数の標準薬の活性が比較された。テストされた標準薬は、ファルマシアアップジョン(Pharmacia & Upjohn)社のアラック(サイトサル)(AraC(Cytosar))、5-FU(フルラブラスチン)(Flurablastin)及びドキソルビシン(アドラマイシン)(doxorubicin(Adramycin))、ピエールファブレ(Pierre Fabre)社のビンクリスチン(オンコビン)(vincristine(Oncovin))及びビノレルビン(ナベルビン)(vinorelbine(Navelbine))、ローンプーランロレアル(Rhone Poulenc Rorer)社のドセタクセル(タクシテル)(docetaxel(Taxotere))及びブリストルマイヤースクイプ(Bristol-Myers Squibb)社のシスプラチン(プラチノール)(cisplatin (Platinol))及びエトポシド(ベペシッド)(etoposide(Vepesid))、及びスミスクラインビーチャム(SmithKline Beecham)社のトポテカン(topotecan)であった。蛍光微小培養細胞毒性アッセイ(FMCA)(Larsson, R., et al.,-1992: Int. J. Cancer, 50, 177-185)が、この化合物を評価する為に使用された。簡単に言えば、96−ウエルマイクロタイタープレート(NUNC, Roskilde, Denmark)が、所望濃度の10倍で、20μlの薬剤溶液で調製され、−70℃で二ヶ月までの間貯蔵された。一般的に、物質を、初めに、無水又は酸性エタノールに、4.0〜8.2mMの濃度に溶解し、更に、滅菌水又は滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS、シグマケミカル社(Sigma chemicals))で希釈する。水での希釈は全て、マスタード加水分解の影響を最小限にする為に、実験前に直接に行われる。最終のエタノール濃度は1%v/vを超えない。この実験のゼロ日で、180μlの適当な濃度の細胞懸濁液が、解凍されたプレートのウエルに添加され、六つのウエルが対照(細胞懸濁液のみ)とされ、六つのウエルがブランク(細胞媒体のみ)とされた。72時間の培養後、細胞を一度PBSで洗浄し、100μlの生理緩衝液中の蛍光ジアセテート(10μg/ml)が添加された。更に45分後に、発生した蛍光(ex 485nm; em 528nm)が、96−ウエル走査蛍光光度計(Fluoroscan II, Labsystem Oy, Helsinki, Finland)で測定される。発生した蛍光は生きている細胞の数に比例し、データは、生存指数(ブランクの値を引き算した対照ウエルにおけるテストウエル中の蛍光のパーセント)及びIC50(Inhibitory Concentration 50%、ソフトウエアのGraphPad Prism(Graphpad Software Inc., San Diego, CA, USA)で計算される)として示される。合格アッセイの為の品質判定基準は、ブランク(六つのウエル)、対照(六つのウエル)及びテストウエル(三つ)それぞれにおける30%未満の変動係数、ブランクの10倍より多い対照のシグナル及び、最後に、トリパンブルー排除テストで判定される、70%(一次のヒト腫瘍培養物)又は90%(培養細胞株)より多い初期細胞生存率を含む。【0051】蛍光ジアセテート(FDA、Sigma)がDMSOに10mg/mlで溶解され、暗所において貯蔵溶液として凍結保存された。10%の熱失活されたウシ胎児血清(FCS、Sigma chemical Co., St. Louis, MO)、2mMのグルタミン、100μg/mlのストレプトマイシン及び100μg/mlのペニシリンで補足された細胞成長媒体 RPMI−1640(Sigma)が使用された。FMCAでの多くの作業は、個々の患者に対する抗癌剤の臨床活性の予測に焦点が合わされた。本願のこのアッセイの予測可能性は、それぞれに、80〜90及び60〜70の範囲の感度及び特異度で、多くのその他の臨床的に受入れられるテスト方法と比肩できる事を示した。【0052】テスト1:新鮮なヒト腫瘍試料における細胞毒活性ヒト腫瘍サンプルでの、メルファラン、P2(L−プロリル−m−L−サルコリシル−p−L−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド)及びJ1(L−メルファラニル−p−L−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド)の細胞毒活性が、蛍光微小培養細胞毒性アッセイ(FMCA)を使用して比較された。それぞれの薬剤は、82〜0.131μMの範囲で六つの濃度で、それぞれ三通りの濃度でテストされた。【0053】異なる組織の、合計で27個の新鮮なヒト腫瘍試料が分析された:14個の血液(その内の少なくとも5個は前以って、クリニックで細胞毒薬剤で処理されたもの)と13個の固体腫瘍(5個が前以って処理されている)サンプルが分析された。濃度−応答曲線がプロットされて、IC50が決められた。この結果は図2で示され、対角線の実線は対等を表し、この線の上の点は、X−軸上の薬剤を奨励し、その逆も同様である。この結果は、全ての場合においてJ1はP2よりも活性であり、次いでP2はメルファランよりも活性である事を示す。【0054】同じFMCAアッセイを使用して、メルファラン、P2及びJ1の細胞毒活性が、今度は、合計64個の新鮮なヒト腫瘍試料について再度テストされた。この腫瘍は異なる組織のものである:42個の血液と、22個の固体腫瘍サンプルが分析された。平行して、幾つかの臨床的に良く知られ且つ使用される標準物質の活性が、0.92〜10.3μMの濃度で評価された。この標準薬剤は、アラック、ビンクリスチン、ビノレルビン、ドセタクセル、シスプラチン、ドキソルビシン及びエトポシドであった。活性の比較は、以下の表1において、定義された濃度での生存指数として表される。J1は、0.66μMにおいて優れた活性を示す。【0055】【表1】表1:PHTCにおける、J1、メルファラン、P2及び標準薬剤の活性【0056】テスト2:10個のヒト腫瘍細胞株のパネルにおける細胞毒活性本発明の9種の異なるペプチドの細胞毒活性を、FMCA法を使用して、10の培養細胞株において、メルファラン、P2(L−プロリル−m−L−サルコリシル−p−L−フルオロフェニルアラニンエチルエステルハイドロクロライド)、サルコリシン及び標準薬剤のドキソルビシ、ビンクリスチン、シスプラチン、5−FU及びトポテカンと比較した。それぞれの薬剤は、それぞれ二通りの濃度で、40〜0.013μM(メルファランは1.6mM〜0.51μM)の範囲で六つの濃度でテストした。実験は三回繰返され、全ての生存データが、それぞれの培養細胞株上のそれぞれの薬剤のIC50を計算するのに使用された。【0057】培養細胞株パネルにおける細胞の選択は、以前に開示されている(Dhar, S., et al., 1996: Br J Cancer, 74, 888-896)。異なる組織の四つの親株(リンパ腫 U−937 GBT;骨髄腫 RPMI 8226;小細胞肺癌 NCI−H69;及び白血病 CCRF−CEM)、様々な薬剤の為に選択された五つのサブライン及び一つの一次抵抗細胞株(腎癌 ACHN)が含まれた。サブラインU−937−vcrは、ビンクリスチン抵抗用に選択され、サブライン8226Dox40及びH6ARは、ドキソルビシン抵抗用に選択され、サブライン8226LR5は、メルファラン抵抗用に選択された。増殖細胞の成長及び形態は、週単位で、2〜3ヶ月毎に抵抗についてモニターされた。【0058】この結果は表2で示され、細胞毒活性が、ペプチドの内では変動し、そして、メルファラン、m−L−サルコリシン及びP2と有利に比較される事を示している。更に、幾つかのペプチドは、或種の増殖細胞株については、テストされた標準化学療法物質よりも高い活性を示す。【0059】【表2】表2:細胞毒薬剤抵抗の定義された形態を表示する増殖細胞株パネルにおいて、メルファラン、サルコリシン、P2及び標準薬剤と比較された本発明のペプチドの活性、IC50(μM)【0060】【表3】表2(続き)【0061】【表4】表2(続き)【0062】テスト3:肺癌増殖細胞株におけるJ1の細胞毒活性又、肺癌増殖細胞株のパネルにおけるJ1の細胞毒活性がテストされ、FMCAを使用して、メルファラン及び幾つかの標準化学療法剤と比較した。合計で4つの小細胞肺癌増殖細胞株(U−1906 L及びE、U−1285及びU−1690)及び7つの非小細胞肺癌増殖細胞株(NCI−H23、U−1752、NCI−H611、NCI−H157、U−1810、NCI−H125及びU−1568)が分析された。結果は表3に示される。【0063】【表5】表3:肺細胞癌株における細胞毒活性【0064】この結果は、J1は、モル基準において、メルファランと肺癌の臨床治療で使用された殆どの標準試薬と有利に比較される事、及び、後に肺癌治療に導入されたチュブリン活性薬剤であるドセタクセルに対して観察されたものに類似の全体的な活性を示す事を示す。J1とその他のメルファラン誘導体は、タキサンを伴う非交雑抵抗体であるので(活性パターンの相関分析から判定された)、これらの二つの薬剤クラスは、魅力のある治療の組合わせを形成するかも知れない。【0065】テスト4:患者由来のヒト腫瘍細胞(PHTC)の一次培養物におけるJ1とJV28の細胞毒活性別設定の実験で、J1、J3及びJV28の活性が、FMCAを使用して、31のPHTC培養物において、メルファラン、サルコリシン及びP2の活性と比較された。結果は表4で示される。【表6】表4:PHTCにおける薬剤の細胞毒活性(腫瘍細胞生存指数(%))【0066】この結果は、J3とJV28は、メルファランとサルコリシンの両方よりも血液学的PHTCサンプルに対して著しく(P<0.001 学生 t−テスト)活性である事を示す。J3とJV28は、又、メルファランとサルコリシンだけではなく、P2との比較においても、固体使用サンプルに対して著しく(P<0.01)活性である。J1とメルファラン及びサルコリシンとP2との間の差は、血液学的腫瘍と固体腫瘍の両方に対して統計的に顕著であった。この結果は、参照化合物とは共有される事のなかったグループとして、固体腫瘍に対する新規なペプチドの予期せぬ高い活性を証明するものである。【0067】テスト5:異なる腫瘍モデルにおける細胞毒活性抗腫瘍活性の腫瘍タイプの特定の範囲が、細胞株及び、患者からのヒトの使用細胞の一次培養物において分析された。メルファランは、全ての血液学的診断に対して活性があるものとして分類されなかったが、活性、即ち、腫瘍細胞の生存において<50%の減少は、固体腫瘍タイプに対して観察されなかった。一方、J3、J1及びJV28は、乳癌、卵巣癌及び肺癌を含む幾つかのタイプの固体腫瘍に対して活性を示した。J1、J3及びJV28対P2の間の腫瘍タイプの特定の活性における相違は、表5で示される。【表7】表5:異なる腫瘍モデルにおける細胞毒活性【0068】P2は、表5に記載の診断において不活性であると決定されたが、J3は活性である事が分かった。J1とJV28は、これらの診断の殆どにおいて活性である事が分かった。これらのデータは、J1、J3及びJV28に対する活性の、腫瘍タイプの特定の範囲が、参照化合物よりも広く、固体腫瘍の重要なタイプを含む事を示す。【0069】テスト6:メルファラン抵抗の包囲メルファラン抵抗を回避する為の能力が、血液学的腫瘍の9人の患者と、固体腫瘍の18人の患者からの27のPHTCサンプルにおいて研究された。このサンプルを、メルファランに対して前以ってテストされた数百のPHTCサンプルのFMCAテスト結果(生存指数)を基準として、メルファラン抵抗によって分類した。これらのデータは、そのデータベースから中央値及び中央値+1の標準偏差を使用して、サンプルを3つの範疇:低度、中庸又は極度な薬剤抵抗(LDR、IDR及びEDR)に分割する為の分岐線を確立する為に使用された。メルファラン及び新規な化合物のJ1、J3及びJV28は、順次に、これらのグループに分類された。メルファラン抵抗の分類は、Larsson and Nygren, Anticancer Research 13; 1825-1830, 1993に記載されている原理によって行われた。新規なペプチドとP2は、4μMの濃度で、そしてメルファランは10μMの濃度でテストされた。研究の結果は以下の表6に示される。【0070】【表8】表6:メルファラン抵抗の包囲【0071】この結果は、新規なペプチドの極少ないサンプルが、メルファラン抵抗を回避する為の能力を有する事を示すIDRとEDRとして分類された事を示す。この分析で、メルファラン濃度の少なくとも半分は、新規なペプチドを以って臨床設定に到達する事が考えられる。【0072】テスト7:J1とAcJ1の活性の比較N−末端に遊離のアミノ基を有する化合物と、前記アミノ基が保護されている同じ化合物間の活性の差を研究する為に、J1のアセチル化体が合成され、U−937とRPMI8226S増殖細胞株について、上述のFMCA方法を使用して比較した。この結果は、遊離のアミンを有するJ1に比べて、アセチル化体は数倍低い効力(高いIC50;0.61と2.9μM)を示し、抗癌活性に関してJ1の優先性を示した。【0073】結論全体の結果は、全ての参照化合物(メルファラン、サルコリシン及びP2)に対して、本発明を構成する新規な化合物の著しく高い活性を証明するものである。更に、又、この新規な化合物は、多くの固体腫瘍診断で観察された実証済の活性を持つ参照化合物と比較して、より広い範囲の腫瘍タイプの特定の活性を証明した。これらの化合物は、又、悪性(慢性リンパ性白血病)/正常なリンパ球で得られるIC50の比によって判定される、悪性対正常細胞における類似の或いは僅かに良好な相対的活性を示すので、これらの新規な化合物の臨床的可能性は高いと考えられねばならない。【図面の簡単な説明】【図1】 公知の化合物のメルファラン、サルコリシン及びP2の化学式、及び、本発明の化合物のJ1、J3及びJV28の化学式を示す。【図2】 27個のヒト腫瘍サンプルにおけるメルファラン、J1及びP2に対するIC50の比較を示す。 式Vを有する、ジ−又はトリペプチド、(ここで、R1は、アルキルオキシであり、R3は、NH2、OH、O−アルキル、N(CH2CH2Cl)2、NO2、F又はHであり、R4は、天然環状アミノ酸又はHである)又は薬理学的に受容可能なその塩。 医薬として使用する為の、請求項1に記載のペプチド。 悪性腫瘍の治療用医薬の製造の為の、請求項1に記載のペプチドの使用。 R3がFである、請求項1に記載のペプチド。 L−メルファラニル−p−L−フルオロ−フェニルアラニンエチルエステル又は薬理学的に受容可能なその塩である、請求項1に記載のペプチド。 L−メルファラニル−p−L−フルオロ−フェニルアラニンイソプロピルエステル又は薬理学的に受容可能なその塩である、請求項1に記載のペプチド。 L−プロリニル−L−メルファラニル−L−p−フルオロフェニルアラニンエチルエステル又は薬理学的に受容可能なその塩である、請求項1に記載のペプチド。 悪性腫瘍の治療用薬理学的組成物であって、請求項1又は4〜7の何れか一項に記載の少なくとも一種のペプチド化合物と、少なくとも一種の薬理学的に受容可能な担体及び/又は賦形剤を含む事を特徴とする組成物。 乳癌、肺癌、卵巣癌、白血病、リンパ腫及び多発性骨髄腫の治療の為の、請求項8に記載の薬理学的組成物。