タイトル: | 特許公報(B2)_細菌のグラム染色性判別法 |
出願番号: | 2002379749 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12Q 1/04 |
岡 本 晃 JP 4286531 特許公報(B2) 20090403 2002379749 20021227 細菌のグラム染色性判別法 ピジョン株式会社 000112288 鈴木 俊一郎 100081994 牧村 浩次 100103218 高畑 ちより 100107043 鈴木 亨 100110917 岡 本 晃 20090701 C12Q 1/04 20060101AFI20090611BHJP JPC12Q1/04 C12Q 1/04 BIOSIS/WPI(DIALOG) JSTPlus(JDreamII) Appl.Environ.Microbiol.,1998年,Vol. 64,No.7,p.2681-2685 4 2004208526 20040729 8 20051219 冨永 みどり 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、微生物のグラム染色性を簡単な操作で判別する方法に関する。【0002】【従来技術】微生物を取り扱う際には、その微生物の属および種を同定する必要があり、この微生物の同定において最初に行われるのが、その微生物のグラム染色性に関する試験である。このグラム染色性の結果によってこの微生物について次に行われる同定操作が異なってくる。【0003】従って、細菌についての最初の同定段階であるグラム染色性の判別法は、迅速かつ正確である必要がある。この細菌のグラム染色性の判別法は、クリスチャングラムによって見出されたものであり、このグラム染色性の判別法はその後、改良が重ねられているが、いずれの方法も、熱固定した塗抹細胞を塩基性のクリスタル紫と、次いで希薄ヨード溶液で染色し、次いで標本を有機溶媒で短時間処理することによりグラム陽性細胞は脱色に対して抵抗性があり、濃い青紫色に染まったままであるが、グラム陰性細胞は急速に完全脱色され、第3溶液(フクシン、サフラニンなど)で染色することで、青紫色もしくは青色で両者を判別する。この従来のグラム染色性の判別法では、増殖細胞を用いることが必須である。【0004】このように従来の方法では、判別に非常に多くの工程を経すると共に各工程を実施するには熟練を要するという問題がある。従って、細菌のグラム染色性の同定に関してより簡便な方法の開発が望まれていた。【0005】【発明の目的】本発明は、細菌のグラム染色性を容易に同定することができる方法を提供することを目的としている。【0006】【発明の概要】 本発明の細菌のグラム染色性判別法は、アルカリ金属の水酸化物の水溶液に、クリスタルバイオレット、塩基性フクシン、ゲンチアナバイオレットB、および、ゲンチアナバイオレットRよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の塩基性色素溶液を加えた判別液に、細菌を添加混合し、該混合液の退色によりグラム陰性菌とグラム陽性菌とを峻別することを特徴としている。 本発明の判別法において、アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。【0008】さらに、本発明では、判別液のpH値を、12以上に調整して使用することが好ましい。このような塩基性色素溶液中における塩基性色素の濃度は、本発明では好ましくは0.01〜0.2重量%の範囲内に調整される。本発明の細菌のグラム染色性を、塩基性色素の水溶液と水酸化アルカリ金属の水溶液とを用いて、塩基性色素に対するグラム陽性菌とグラム陰性菌の退色性の差を利用して峻別するものであり、顕微鏡などの特殊な装置を必要とせず、しかも操作が著しく簡単である。このように特異な装置を必要とせず操作が簡単であるけれども、グラム陽性菌とグラム陰性菌とを判別する精度は高い。【0009】【発明の具体的な説明】次に本発明のグラム染色性判別法について具体的に説明する。本発明のグラム染色性判別法は、細菌のグラム染色性を簡易な方法で判別するものであり、アルカリ金属の水酸化物の水溶液と塩基性色素の水溶液とを用いる。【0010】本発明の方法で使用するアルカリ金属の水酸化物としては、周期律表第IA属の金属の水酸化物であり、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。これらの中でも本発明では水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを単独であるいは組み合わせて使用することができる。この水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを比較すると、水酸化カリウムを用いた場合によりグラム染色性が判別しやすい傾向がある。【0011】上記のようなアルカリ金属の水酸化物は、水に溶解して水溶液として使用する。本発明では、この水溶液中におけるアルカリ金属の水酸化物の濃度が通常は0.1〜10重量/容量%、好ましくは1〜5重量/容量%、特に好ましくは2〜4重量/容量%になるように調整される。これとは別に、塩基性色素の水溶液を調製する。本発明で使用することができる塩基性色素としては、ゲンチアナヴァイオレット、塩基性フクシン、オーラミン、クリスタルバイオレット、サフラニン、トルイジンブルー、ニュートラルレッド、ビスマルクブラウン、メチレンブルー、メチレンヴァイオレットおよびローダミンのうちのいずれかの色素を使用することが好ましい。【0012】特に本発明では、ゲンチアナヴァイオレット、塩基性フクシン、クリスタルバイオレットのいずれかを使用することが好ましい。なお、ゲンチアナヴァイオレットには、ゲンチアナヴァイオレットR、ゲンチアナヴァイオレットBなどがあるが、本発明ではこれらのいずれをも使用することができる。これらの塩基性色素は、水に溶解して水溶液として使用する。本発明では、水溶液中におけるこの塩基性色素の濃度が、通常は0.001〜1.000重量/容量%、好ましくは0.005〜0.500重量/容量%、特に好ましくは0.010〜0.150重量/容量%の範囲内になるように調製される。なお、この塩基性色素の水溶液中における濃度は、この塩基性色素水溶液を上述のアルカリ金属の水酸化物の水溶液に添加して使用することから、上記よりも濃度の高い水溶液を調製して添加量を少なくすることもできるし、濃度を低くして添加量を多くすることもできる。【0013】本発明の判別法は、上記のようにして調製されたアルカリ金属の水酸化物の水溶液と、塩基性色素の水溶液とを用いて細菌のグラム染色性を判別する方法である。即ち、本発明の方法では、例えば長さ100mm、直径10mmの試験管(内容積;約8.5ml)を使用した場合には、上記のようにして調製したアルカリ金属の水酸化物水溶液を0.1〜1ml、好ましくは0.3〜0.5mlを複数の容器に採取する。ここで容器に対する水溶液の量は、少なくとも色の判別が可能な量であり、例えば上記の試験管における液高さ(液量)と添加するアルカリ金属の水酸化物水溶液の量との関係を参照して、容器の容積に対応して液量を調整することができる。【0014】次いで、上記のようにして調製した塩基性色素の水溶液をそれぞれの容器に加えてすばやく攪拌して判別液を調製する。このときの塩基性色素の水溶液の添加量は各容器に1滴程度であり、この量は、容器に採取した水溶液中のアルカリ金属の水酸化物1mgに対して、塩基性色素0.001〜0.005mg、好ましくは0.002〜0.003mgに相当する。即ち、塩基性色素の水溶液1mlは、水滴数にすると約30滴程度であり、従って、塩基性色素水溶液の1滴は通常は約0.03ml程度であり、例えば0.08g/100mlの溶液中から採取した溶液1滴中には塩基性色素がおよそ20〜30μg程度含有されている。【0015】こうして調製された判別液は、通常はアルカリ性を示すが、本発明の判別法では、この判別液のpH値を12以上、好ましくは13以上にすることにより、判定精度が向上するので、必要により緩衝液を加えて、この判別液のpH値を上記のように調製することができる。同定しようとする細菌を白金耳などで適量釣菌し、上記のようにして調製した判別液に投入して素早く混合する。【0016】ここで判別しようとする細菌は、細菌数105〜106個当たり、塩基性色素の量が通常は5〜50μg、好ましくは、9〜30μgの範囲内になるように釣菌し、判別液(0.33ml)中に通常は104〜107個、好ましくは105〜106個の細菌が存在するように釣菌する。本発明の判別法では、上記のようにして調製した混合液(細菌が懸濁している判別液)の退色速度と、細菌を添加していない判別液(ブランク)の退色速度とを比較して、ブランクよりも退色速度が早いもの(液の色が消える細菌)はグラム陽性菌であり、ブランクと同等もしくはブランクよりも退色速度が遅いもの(液の色が消えない細菌)はグラム陰性菌である。即ち、アルカリ金属の水酸化物の水溶液に塩基性色素の水溶液を滴下した判別液は、調製当初はその色は変わらないが、グラム陽性菌を接菌すると、この判別液は急速に消色(退色)し、この退色速度は、判別液自体(なにも接菌しない判別液)の退色速度よりもはやくなる。この判別液自体も時間の経過と共に退色(消色)するが、通常は、グラム陽性菌を接菌した場合よりも退色に時間を要する。他方、グラム陰性菌を接菌すると、この判別液の退色速度は、判別液自体の有する退色速度よりも著しく遅くなる。なお、本発明で使用する判別液は、上述のように経時的に退色し、この退色速度は、グラム陽性菌を接菌した際の退色速度とそれほど大きな差はないので、ブランクの退色とグラム陽性菌を接菌した際の退色とがほぼ同時あるいはブランクの退色がグラム陽性菌を接菌した判別液よりも早くなることがある。しかしながら、このような場合であってもグラム陰性菌を接菌した判別液の退色状態とは著しい差があるので判別を誤ることは殆ど生じ得ない。また、このように判別が微妙な場合には、同定しようとする細菌と、標準的なグラム陰性菌およびグラム陽性菌とを同時に接菌して、グラム染色性を判別しようとしている細菌の退色状態をこれらの標準的な陽性菌および陰性菌の退色状態と比較することにその判別性の精度が著しく高くなる。【0017】即ち、本発明の方法によれば、本質的にブランクとの退色性の差から、グラム陽性菌とグラム陰性菌とを峻別することができるが、判別しようとする細菌およびブランクのほかに、定型的なグラム陽性菌(例えば、黄色ブドウ球菌)とグラム陰性菌(例えば、大腸菌、緑膿菌)などを同時に別に容器に入れた判別液に適量釣菌し、これらの菌におけるブランクに対する退色速度と、判別しようとする細菌の退色速度とを比較することにより、より正確に細菌のグラム染色性を判別することができる。【0018】なお、前述のように本発明の方法で使用するアルカリ金属の水酸化物の水溶液、塩基性色素の水溶液は、空気中の酸素などによって経時的にその特性が変化するので、用時新たに調製することが望ましい。また、アルカリ金属の水酸化物の水溶液に塩基性色素の水溶液を添加した判別液は、経時的に退色するものであり、本発明の方法は、塩基性色素の水溶液を添加してからの退色性が、グラム陽性菌またはグラム陰性菌によって、促進するかあるいは遅延するかという特性をグラム染色性の判別基準にしていることから、判別液の調製、および、判別液への接菌は、同時に行うのが理想的であり、少なくとも調製工程および接菌工程において、これらの操作によって必要以上の時間差が生じないようにする。また、試験のために時間差が生じた場合には、判定に際しては、生じた時間差を考慮する必要がある。【0019】このように本発明によれば、細菌の同定の最初の段階で行われる細菌のグラム染色性を非常に簡単な方法でかつ正確に判別することができる。【0020】【発明の効果】本発明によれば、非常に簡単な操作で細菌をグラム陽性菌とグラム陰性菌とに判別することができる。従って、未知の細菌の属および種を同定するための最初の段階において本発明の方法を採用することによって、細菌の同定を効率的に行うことができる。【0021】即ち、本発明の方法は、色素によって細菌を染色するのではなく、細菌により塩基性色素溶液の退色状態が変化するという細菌の特性を利用しているので、色素で細菌を染色しその状態を固定するという操作が不要であり、短時間で細菌のグラム染色性の判別が可能になった。従って、本発明によれば、同時に調製したブランクにおける色素の退色時間との対比から細菌のグラム染色性を判別するので、高価な装置あるいは複雑な装置を必要とせず、目視により細菌のグラム染色性を短時間で正確に判別することができ、この判別には特に熟練を必要とはしていない。【0022】【実施例】次に本発明の細菌のグラム染色性の判別法について実施例を示して説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。【0023】【実施例1】水酸化カリウム(KOH)を3g秤量して、100mlのメスフラスコに入れ、蒸留水を加えて100mlとして3重量/容量%の水酸化カリウム溶液を調製した。これとは別に、クリスタルバイオレットB0.08gを秤量し、100mlのメスフラスコに入れ、上記と同様に蒸留水を加えて100mlとして、0.08重量/容量%のクリスタルバイオレット溶液を調製した。【0024】3本の試験管に、上記のようにして調製した水酸化カリウム水溶液0.3mlづつ入れ、次いで、上記クリスタルバイオレット溶液をスポイトに取り、それぞれの試験管に1滴ずつ滴下して素早く振盪して均一化して判別液を調製した。なお、この判別液のpH値は14であった。また、1滴の溶液に含有されるクリスタルバイオレットは約24μgである。【0025】上記試験管の一本に大腸菌(E.coli、グラム陰性菌)を白金耳で掬い取り投入し、他の一本の試験管には黄色ブドウ球菌(S.aureus、グラム陽性菌)を白金耳で掬い取り投入し、最後の試験管にはなにも入れずにこれらの試験管を振盪して、判別液の退色状態を観察した。なお、加えた細菌の数は、およそ105個程度である。【0026】上記のように操作することにより、およそ5秒でグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を投入した液の色が消え、次いで、ブランクとして何も加えなかった試験管の判別液の色が消え(およそ10秒後)、さらに、およそ15秒後にグラム陰性菌である大腸菌を投入した判別液の液色が消えた。上記のようにグラム陰性菌とグラム陽性菌では、判別液の退色状態が明らかに相違し、細菌のグラム染色性を容易にかつ確実に峻別することができた。【0027】【実施例2】実施例1において、水酸化カリウムに代えて水酸化ナトリウムを使用した以外は同様にして細菌のグラム染色性を調べた。その結果、およそ5秒でグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を投入した液の色が消え、次いで、ブランクとして何も加えなかった試験管の判別液の色が消え(およそ10秒後)、さらに、およそ15秒後にグラム陰性菌である大腸菌を投入した判別液の液色が消えた。【0028】上記のようにグラム陰性菌とグラム陽性菌では、判別液の退色状態が明らかに相違し、細菌のグラム染色性を容易にかつ確実に峻別することができた。【0029】【実施例3】実施例1において、水酸化カリウムに代えて水酸化リチウムを使用した以外は同様にして細菌のグラム染色性を調べた。その結果、およそ10秒でブランクとして何も加えなかった試験管の判別液の色が消え、次いで数秒後にグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を投入した判別液、グラム陰性菌である大腸菌を投入した判別液の順で液色が消えた。【0030】上記のように水酸化リチウムを用いることによりグラム陰性菌とグラム陽性菌とを判別することはできたが、退色時間の差が小さく、水酸化カリウムを用いた場合よりは、判別しにくいことがわかった。【0031】【実施例4〜6】実施例1において、クリスタルバイオレットに代えて塩基性フクシンを使用し、水酸化カリウム水溶液(実施例4)、水酸化ナトリウム(実施例5)、水酸化リチウム(実施例6)をそれぞれ独立に用いた以外は同様にして細菌のグラム染色性を調べた。【0032】その結果、水酸化カリウム水溶液(実施例4)、水酸化ナトリウム(実施例5)、水酸化リチウム(実施例6)のいずれを用いた場合においても、およそ5秒でグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を投入した液の色が消え、次いで、ブランクとして何も加えなかった試験管の判別液の色が消え(およそ10秒後)、さらに、およそ15秒後にグラム陰性菌である大腸菌を投入した判別液の液色が消えた。【0033】上記のように塩基性フクシンを用いることにより、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムのいずれを用いても、退色時間に差はなく、グラム陰性菌とグラム陽性菌とを峻別することができた。【0034】【実施例7〜8】実施例1において、クリスタルバイオレットに代えてゲンチアナバイオレットBを使用し、水酸化カリウム水溶液(実施例7)、水酸化ナトリウム(実施例8)をそれぞれ独立に用いた以外は同様にして細菌のグラム染色性を調べた。その結果、水酸化カリウム水溶液(実施例7)、水酸化ナトリウム(実施例8)のいずれを用いた場合においても、およそ5秒でグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を投入した液の色が消え、次いで、ブランクとして何も加えなかった試験管の判別液の色が消え(およそ10秒後)、さらに、およそ15秒後にグラム陰性菌である大腸菌を投入した判別液の液色が消えたが、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムはその時間差が比較的大きかった。【0035】【実施例9】実施例1において、クリスタルバイオレットに代えてゲンチアナバイオレットBを使用し、水酸化リチウムを用いた以外は同様にして細菌のグラム染色性を調べた。その結果、およそ10秒でブランクとして何も加えなかった試験管の判別液の色が消え、次いで数秒後にグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を投入した判別液、グラム陰性菌である大腸菌を投入した判別液の順で液色が消えた。【0036】上記のように水酸化リチウムを用いることによりグラム陰性菌とグラム陽性菌とを判別することはできたが、退色時間の差が小さく、水酸化カリウムを用いた場合よりは、判別しにくいことがわかった。【0037】【実施例10〜12】実施例1において、クリスタルバイオレットに代えてゲンチアナバイオレットRを使用し、水酸化カリウム水溶液(実施例10)、水酸化ナトリウム(実施例11)、水酸化リチウム(実施例12)をそれぞれ独立に用いた以外は同様にして細菌のグラム染色性を調べた。【0038】その結果、水酸化カリウム水溶液(実施例10)、水酸化ナトリウム(実施例11)、水酸化リチウム(実施例12)のいずれを用いた場合においても、およそ5秒でグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を投入した液の色が消え、次いで、ブランクとして何も加えなかった試験管の判別液の色が消え(およそ10秒後)、さらに、およそ15秒後にグラム陰性菌である大腸菌を投入した判別液の液色が消えたが、水酸化リチウムを用いた場合における時間差が最も大きく、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを用いた場合と比較すると判別が容易であった。【0039】【比較例1〜3】実施例1において、クリスタルバイオレットに代えて食用黄色5号(比較例1)、食用赤色3号(比較例2)、食用緑色3号(比較例3)を使用し、それぞれ水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムを用いた以外は同様にして細菌のグラム染色性を調べようとしたが、判別はできなかった。【0040】【実施例13〜16】実施例10において、ゲンチアナバイオレットRの濃度を0.03重量/容量%(実施例13)、0.05重量/容量%(実施例14)、0.08重量/容量%(実施例15)、0.10重量/容量%(実施例16)に代えた以外は同様にして細菌のグラム染色性判別を行った。【0041】その結果いずれの判別液でもグラム陰性菌とグラム陽性菌とを判別することは可能であったが、0.08重量/容量%(実施例15)が最も判別しやすく、0.03重量/容量%(実施例13)および0.10重量/容量%(実施例16)では時間差が小さくやや判別しにくかった。【0042】【実施例17】実施例10において、緩衝液を加えて判別液のpH値をそれぞれ12.5、13.0、13.5、14.0、14.0以上して細菌のグラム染色性の判別を行ったところ、いずれの判別液でもグラム陰性菌とグラム陽性菌との判別は可能であったが、pH値が14.0以上の場合に最も判別が容易であり、pH値12.5の判別液を用いた場合、最も判別がしにくく、pH値13.0、13.5、14.0では総じて判別は容易であるが、値が高くなるに従って判別がより容易になる傾向がある。【0043】【実施例18】実施例10において、グラム陽性菌としてBacilus属、グラム陰性菌としてBurkholderia cepacia、グラム陰性菌としてSerratia liquefaiensを使用した以外は同様にしてグラム染色性の試験を行ったが、いずれの細菌を用いた場合にも、グラム陰性菌とグラム陽性菌との判別は可能であった。【0044】上記のように、本発明の細菌のグラム染色性判別法によれば、非常に簡単な操作で細菌のグラム染色性を判別することができる。しかも、本発明の判別法は、細菌を染色するのではなく、細菌による判別液の退色時間の相違を視覚的に感知して判別するものであり、特別な装置も必要ではない。また、操作が簡単であり、特に本発明の判別法を実施するための熟練は必要としない。【0045】このような本発明の判別法は、殆ど全ての細菌に適応でき、判別の鮮明性に多少のばらつきはあるものの、確認した限りにおいては、得られた結果は用いた細菌のグラム染色性と一致した。 アルカリ金属の水酸化物の水溶液に、クリスタルバイオレット、塩基性フクシン、ゲンチアナバイオレットB、および、ゲンチアナバイオレットRよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の塩基性色素溶液を加えた判別液に、細菌を添加混合し、該混合液の退色によりグラム陰性菌とグラム陽性菌とを峻別することを特徴とする細菌のグラム染色性判別法。 上記アルカリ金属の水酸化物が、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項第1項記載の細菌のグラム染色性判別法。 上記判別液のpH値を、12以上に調整することを特徴とする請求項第1項記載の細菌のグラム染色性判別法。 上記塩基性色素溶液中における塩基性色素の濃度が0.01〜0.2重量%の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載のグラム染色性判別法。