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タイトル:特許公報(B2)_プレート型触媒反応器
出願番号:2002376639
年次:2009
IPC分類:B01J 8/02,C07C 27/14,C07C 45/35,C07C 47/22,C07C 51/25,C07C 57/05,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

坂倉 康之 川谷 洋治 斎藤 輝雄 JP 4212888 特許公報(B2) 20081107 2002376639 20021226 プレート型触媒反応器 三菱化学エンジニアリング株式会社 000176763 三菱化学株式会社 000005968 近藤 久美 100077078 長谷川 一 100068065 松田 寿美子 100077436 南野 雅明 100082186 坂倉 康之 川谷 洋治 斎藤 輝雄 20090121 B01J 8/02 20060101AFI20081225BHJP C07C 27/14 20060101ALI20081225BHJP C07C 45/35 20060101ALI20081225BHJP C07C 47/22 20060101ALI20081225BHJP C07C 51/25 20060101ALI20081225BHJP C07C 57/05 20060101ALI20081225BHJP C07B 61/00 20060101ALN20081225BHJP JPB01J8/02 ZC07C27/14 AC07C45/35C07C47/22 AC07C51/25C07C57/05C07B61/00 300 B01J 8/02 C07C 27/14 C07C 45/35 C07C 47/22 C07C 51/25 C07C 57/05 C07B 61/00 特開平7−251063(JP,A) 特開2002−306953(JP,A) 特開平7−144125(JP,A) 特開2001−129384(JP,A) 6 2004202430 20040722 14 20050617 富永 正史 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ペレット状或いは球状の不均一固体触媒を用いた発熱又は吸熱を伴う気相反応によって、ガス状の反応原料を転換し有用成分を製造するためのプレート型触媒反応器に係り、固体の不均一触媒が充填された触媒層において発生或いは消費される反応に伴う熱が、伝熱プレートで隔離された内部の熱媒体によって除熱或いは供給加熱され、該触媒層内の温度分布を効率的に制御することにより、反応成績の向上及び触媒寿命の延長が期待できるプレート型触媒反応器に関するものである。【0002】【従来の技術】これまでの、ペレット状或いは球状の固体触媒を用いる不均一触媒反応は一般的に固定床反応器や熱交換器機能を有する多管式反応器が用いられる。特に非常に大きい反応熱が発生し、触媒層温度の上昇が著しい反応の場合には、多管式反応器が用いられる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。これらの反応例としては、エチレンと酸素から酸化エチレンの製造、プロピレンの酸化によるアクロレイン或いはアクリル酸の製造、イソブチレン或いはターシヤリーブタノールの酸化によるメタクロレイン或いはメタクリル酸の製造、メタノールからのホルマリンの製造などがある。【0003】これらに用いられる触媒は、直径2〜15mmφの球状または円柱状であることが一般的であり、多管式反応器の反応管は、通常、内径は20〜50mmφ、長さは1〜5mの円筒状管で、工業的規模においては1基の反応器で、通常反応管の本数は数千本から数万本である。反応管を冷却又は加熱する為に、反応管の周囲で反応器のシエル(外殻)と反応管を固定する管板で囲まれた空間(シエル側)には、熱媒体が循環され、該熱媒体の一部が抜き出され、冷却又は加熱されて再度反応器に循環使用される。【0004】一般に、熱媒体としては硝酸塩混合物のような溶融塩、多核芳香族化合物を主成分とする有機熱媒体や沸騰水や沸騰有機媒体などが用いられる。反応に伴う吸熱によって、反応原料ガスの温度が低下し、反応の進行を遅らせ又到達反応率が低下する反応の例として、エチルベンゼンの脱水素によるスチレンの製造がある。この反応には従来、固定床反応器が用いられ、反応原料ガスが予め加熱された高温のガスが供給されることによって反応熱が供給される。多管式反応器が用いられることもあるが、600℃近い高温にする必要があるため、シェル側に供給する熱媒体が限定される。【0005】【特許文献1】特開2001−139499号公報【特許文献2】特開2001−137689号公報【0006】【発明が解決しようとする課題】このような、従来の多管式反応器には通常数千本から数万本の円筒状反応管を有し、該反応管にペレット状或いは球状の固体触媒を充填し、反応管の外側のシエル内に熱媒体を供給し該熱媒体の温度を調節することによって触媒層温度が制御されてきた。この様な多管式反応管を用いて不均一気相反応を実施する場合においては、反応管内の反応帯域の各領域では、反応原料ガスの入口から反応帯域の1/3の反応帯領域での反応量が最大であり、触媒層内の温度分布は図7に示すようになる。【0007】しかしながら、反応熱を除熱するための伝熱面積は、反応管表面積で決定されるため全反応帯域で同じである。更に、熱媒体が供給されるシェル側の温度はできる限り均一温度になるように工夫され、大多数の反応管を極力同じ温度で反応させる様に、反応管に対する直角の面上では、同じ熱媒温度を保つように熱媒体の供給方法や流動状態が工夫改良されてきたため、全反応帯域にわたって反応熱を除熱或いは加熱する効果としては、反応管の全反応帯域で同じに設計されている。然るに、反応管内の触媒層内温度分布は反応量の大きい反応管入口付近の反応帯域では、反応に伴う反応熱の除去が充分でなく触媒層に蓄積されて触媒層温度が高温となり、極端な場合には、高温のため触媒が損傷を受けることがあり、この現象がホットスポットと言われる。【0008】酸化反応の場合の様に反応による発熱が著しく大きい場合には、特に入口付近の反応帯域での触媒層温度が非常な高温となり、ホットスポットが形成されやすいという問題点があった。触媒層内でホットスポットができると触媒表面の温度上昇のため、この反応帯域で触媒の劣化を促進したり、反応の選択性が低下して目的物の生成量が減少する。従来からも、ホットスポットの対策として、反応管内の触媒層内温度分布を均等化する改良方法が提供されている。例えば、反応の反応成績を良くし、目的生産物の高い収量を得るための方法として、従来反応器のシェル側に供給される熱媒体の入口を複数設け、温度の異なる熱媒体を供給して、反応管の軸方向位置で、異なる温度に制御する改良がある。【0009】しかし、温度の異なる熱媒体を反応管の異なる位置から供給するためには、異なる温度の熱媒体と同じ数の熱媒体の供給設備が必要となる。更には異なる温度の供給される熱媒体と反応器内を循環する熱媒体を反応器のシエル側で急速混合することが困難なため、反応器シェル側の熱媒体温度の不均一性を助長することとなる欠点を有する。一方、同じ反応管内に複数の触媒を充填したり、触媒を不活性な希釈剤と混合して充填して、入口部の反応帯域での反応量を制限する方法がある。この方法は、反応帯域入口部で発生或いは消費する反応熱を制限して、触媒層の温度を制御しようとするものである。しかしながら、工業的規模の反応器には数千本から数万本の反応管があり、触媒の活性を調整した複数の触媒を該反応管内反応帯域に一様に充填しなければならないし、希釈剤を用いる場合も同じ反応管に複数の触媒と希釈剤の混合物を一様に充填しなければならず、反応器の触媒を交換する際には非常な労力と触媒の交換に長期間を要する。この間、反応は停止しなければならない。【0010】更に、反応活性の低い触媒を使用したり、触媒を不活性物質で希釈して反応活性を調節する場合には、本来の触媒量より多くの触媒を反応管に充填したり、本質的には不必要な不活性物質を反応帯域に充填しなければならない。触媒層を通過する反応原料ガスの圧力損失が大きくなり、特に、酸化反応の場合には、空気などの分子状酸素含有ガスの圧縮に必要な送風機や圧縮機の動力が増加するという問題があった。即ち、本発明はペレット状或いは球状の固体触媒を用いる不均一気相反応を実施する方法において、触媒層内の温度上昇を抑えホットスポットの形成を防止し、当該触媒層に充填された触媒の劣化を防ぐことによって触媒寿命の延長を可能ならしめるとともに、反応の選択性を最適に保ち、触媒層を通過する反応原料ガスの圧力損失の増大を防止することが可能な、新規のプレート型触媒反応器を提供することを目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題を解決した新規のプレート型触媒反応器であって、その要旨は、(1)円弧或いは楕円弧に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部が互いに接合して複数の熱媒体流路を形成された一対の伝熱プレートを、複数対配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成したことを特徴とするプレート型触媒反応器である。(2)波板に賦形された円弧或いは楕円弧の形状を変えることにより、触媒層に供給される反応原料ガスの入口から出口に向かって該触媒層の厚さを増大させたことを特徴とする上記(1)のプレート型触媒反応器である。(3)熱媒体を反応原料ガスに対して十字流の方向に流すことを特徴とする上記(1)〜(2)のいずれかのプレート型触媒反応器である。(4)複数の波形伝熱プレートを放射状に配置し、反応原料ガスを触媒層の内側から外側へ流し、熱媒体は波板プレートの流路内を反応原料ガスに対して、十字流の方向に流すことを特徴とする上記(1)〜(2)のいずれかのプレート型触媒反応器である。(5)波形伝熱プレートの熱媒体流路が垂直になる方向に配置し、下部より熱媒体供給して上昇流とし、熱媒体流路内にて熱媒体の少なくとも一部が沸騰することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかのプレート型触媒反応器である。(6)分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレインおよび(メタ)アクリル酸を製造する、或いは(メタ)アクロレインを分子状酸素含有ガスを用いて(メタ)アクリル酸を製造することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかのプレート型触媒反応器である。【0012】【発明の実施の形態】本発明で用いられるプレート型触媒反応器は、2枚の波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成された一対の伝熱プレート、及びこれを所定間隔を保って複数対配列して隣り合う伝熱プレート間に触媒層を形成したプレート型触媒反応器である。該プレート型触媒反応器に供給される反応原料ガスの方向は伝熱プレートの外側に沿って流れ、熱媒体は一対の伝熱プレートの内側に供給される。当該熱媒体の流れ方向は、反応ガスの流れに対して直角方向、即ち十字流の方向に流れる。【0013】一対の伝熱プレートと隣り合う伝熱プレートとの間隙、即ち、充填される触媒層の厚さ(触媒層厚さ)は反応原料ガスの流れと直角方向の距離であり、この伝熱プレートと隣り合う伝熱プレートとの間隙は、反応量に応じて変えられる。通常の反応に於ける反応量は、反応原料ガスの入口部分が最も大きく、反応に伴う反応熱の発生は最大で、反応原料ガスの出口方向に減少する。エチルベンゼンの脱水素反応のように、反応が吸熱の場合に適用する時は、反応転換化率の促進のために触媒層は熱媒体によって加熱される。この反応熱の除熱或いは加熱を効率よくするために、伝熱プレートと隣り合う伝熱プレートとに使用される波板の凹凸形状を変えることにより、両伝熱プレートの間隙を調整して触媒層厚さを変えて反応を制御することにより、触媒層温度を抑えることができる。【0014】以下、本発明のプレート型触媒反応器を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明のプレート型触媒反応器の塔内に挿入される伝熱プレートの縦断面図である。図2は2枚の波板を接合して形成された伝熱プレートの拡大図である。図3は図1のIII部の拡大図である。図4は図1のIV部の拡大図である。図5は図1のV部の拡大図である。図6は伝熱プレートを放射状に配置したプレート型接触反応器の横断面図である。【0015】図1においては、1は2枚の波板を対面させて形成された伝熱プレートであり、2は当該伝熱プレート1の内側に形成された複数の熱媒体流路であり、また3は隣り合った伝熱プレート1によって形成され、触媒が充填された触媒層である。反応原料ガスは反応ガス入口4より供給され触媒層3を通過し、反応によって目的生成物が生産された後、反応ガス出口5よりプレート型触媒反応器の外に排出される。当該反応原料ガスの流れ方向は制限はないが、通常本実施例に示す如く全体として下降流か、或いは上昇流に設定される。また、熱媒体は伝熱プレート1の内側に形成された多数の熱媒体流路2に供給され、反応原料ガスの流れ方向に対して十字流の方向に流されこの間に伝熱プレート1を通して、発熱反応の場合は触媒層3を冷却し反応熱を除去し、吸熱反応の場合は触媒層3を加熱した後プレート型触媒反応器の外に排出される。【0016】次ぎに、図2〜6によって伝熱プレート1の構成を更に詳しく説明する。図2は2枚の波板11を接合して形成された伝熱プレート1であって、波の形状は円弧の一部で構成されているが、製作の都合や反応原料ガスの流動を考慮して決定することができる。また波の高さHと波の周期Lには特に制限はないが、高さHは5〜50mmで周期Lは50〜200mmが適当であるが、触媒層3内での反応に伴う反応熱とそれを除熱或いは加熱する熱媒体の流量から決定される。熱媒体が液体の場合、熱媒体流路2内での熱媒体の流量は、流速が0.1〜5m/sの範囲になるように調整される。流速が低いと熱媒体の伝熱抵抗が大きくなり熱効率が低下する。熱媒体の線速度が大きすぎると熱媒体の圧力が大きくなり供給ポンプの負荷が大きくなる。【0017】図3は反応原料ガスの入口近傍部分の伝熱プレート1の形状を示し、円弧に賦形された波板11の2枚を対面させ、その波板11の凸面部aを互いに接合して複数の熱媒体流路2を形成した一対の伝熱プレート1である。当該伝熱プレート1の互いに隣り合った伝熱プレート1の波板凸面部aと凹面部bとを所定間隔で対面させて触媒層3を形成すると共に反応原料ガスのスロートS1を形成したものである。そして必要とする触媒層3の厚さ及び反応原料ガスのスロートS1は波板11に賦形される円弧の形状を適宜変えることにより得る。【0018】図4は反応原料ガスの流路の中間部における伝熱プレート1の形状を示し、楕円弧に賦形された波板11の2枚を対面させ、その波板11の凸面部aを互いに接合して複数の熱媒体流路2を形成した一対の伝熱プレート1である。当該伝熱プレート1の互いに隣り合った伝熱プレート1の波板凸面部aと凹面部bとを所定間隔で対面させて触媒層3を形成すると共に反応原料ガスのスロートS2を形成したものである。そして図3と同様に当該位置における必要とする触媒層3の厚さ及び反応原料ガスのスロートS2は波板11に賦形される楕円弧の形状を適宜変えることにより得る。またこの部分の触媒層3の厚さ及びスロートS2は図3に於けるそれよりも大きな寸法に設定されている。【0019】図5は反応原料ガスの出口近傍における伝熱プレート1の形状を示し、図4より波の高さH及び波の周期Lを遙かに短い寸法を有する楕円弧で賦形された波板11の2枚を対面させ、その波板11の凸面部aを互いに接合して複数の熱媒体流路2を形成した一対の伝熱プレート1である。当該伝熱プレート1の互いに隣り合った伝熱プレート1の波板凸面部aと凹面部bとを所定間隔で対面させて触媒層3を形成すると共に反応原料ガスのスロートS3を形成したものである。そして図4と同様に当該位置における必要とする触媒層3の厚さ及び反応原料ガスのスロートS3は波板11に賦形される楕円弧の形状を適宜変えることにより得る。またこの部分の触媒層3の厚さ及びスロートS3は図4に於けるそれよりも更に大きな寸法に設定されている。【0020】図6において、波形伝熱プレート1で囲まれた反応帯域が多数放射状に配置することによりコンパクトな装置とした実施態様であり、反応帯域に充填された触媒層3は垂直に伸びている。反応原料ガスはプレート型接触反応器の中心部の反応ガス入口4より供給され触媒層3を放射方向に通過した後、当該反応原料ガスはプレート型接触反応器の最外殻部を通って反応ガス出口5より反応器外へ排出される。温度制御された熱媒体は、供給口6から分配管より各伝熱プレート1で構成される熱流体流路へ分配され通過する。そして触媒層3での反応熱を熱交換した熱媒体は集液管を介して熱媒体出口(図には示されていない)より排出される。【0021】図6の場合は、熱媒体が沸騰や凝縮で相変化するときに好適に適用される。この時、熱媒体入口と出口の温度は沸騰や凝縮温度となり、熱媒体の入口と出口での温度差は極小となり、触媒層3の温度を均等に制御可能となる。熱媒体として水蒸気を使用して触媒層3を加熱し反応を促進する場合、加熱温度が100℃を超えることがほとんどで、高圧となることがある。この時水蒸気の圧力は触媒層3より高圧となり、伝熱プレート1は熱媒体流路と接触層の圧力差に耐える様に設計されなければならない。該水蒸気の温度が200℃の時には、水蒸気圧力、1.5MPa以上の圧力となり、波形伝熱プレート1の耐圧1.5MPaに設計しなければならない。本発明の波形構造の伝熱プレートを用いるときは、プレートの板厚を増加することなく、伝熱プレートの耐圧を向上させることが可能である。【0022】熱媒体によって反応熱を熱交換し触媒層3の温度を制御する場合に、熱媒体を沸騰させることも同様である。この時熱媒体としては、水や適当な沸点を有する有機液体が熱媒体として採用される。水を熱媒体として用いるときは250℃の沸騰圧力は40MPa程度で、これを超えると水の沸騰圧力は急激に上昇するので有機熱媒体が用いられる。有機物熱媒体の種類に特に制限はないが、熱媒体が200℃以上の温度に曝されるので、高温において有機物分子が分解反応などを励起して低分子化合物が生成し劣化しないものがより好適に選択される。波形伝熱プレートが垂直に、放射状に配置された図6においては、反応ガス入口である中心部から外周部へ触媒の層厚さは自動的に変化させる。しかし、触媒層厚さの変化は反応熱の発生程度によって変わるため、この時も図2に示す波の高さHと波の周期Lを調整することによって、触媒層厚さを変えることができる。【0023】図1において、伝熱プレート1に配列された隣り合う伝熱プレート1とのピッチは反応ガス入口4に位置におけるピッチP1と反応ガス出口5に位置におけるピッチP2とは同寸法である、即ち隣接する両伝熱プレート1は互いに平行に複数対配列して配置されている。また図1において、III〜V部に賦形された波形のパターンを2回繰り返して構成された2倍長の伝熱プレートをプレート型触媒反応器に組み込んで使用することも出来る。【0024】熱媒体の流量は反応熱量と伝熱抵抗から決定される。しかし、伝熱抵抗は、通常、液体である熱媒体より反応原料ガスの気体側にあるので問題になることは少ないが、熱媒体流路内の液線速度は好適には0.3m/s以上が採用される。反応原料ガス側伝熱抵抗に比較し、熱媒体側の抵抗が小さく問題にならない値とするには、0.5〜1.0m/sが最も適当である。大きすぎると熱媒体の循環ポンプの動力が大きくなって経済面で好ましくない。【0025】本発明は触媒層の温度制御が目的であるので、熱媒体の入口の温度と出口温度との差は非常に重要である。熱媒体流量は必要な入口温度と出口温度との差によって決定される。熱媒体の流量は、入口温度と出口温度との差で0.5〜10℃程度に設定されるが、好ましくは2〜5℃である。熱媒体流量が大きいと温度差は小さいが、熱媒体ポンプや熱交換器が大きく経済的に不利となる。流量が小さすぎると、入口温度と出口温度との差が大きくなり、熱媒体の入口付近の反応温度と出口温度の反応温度が異なり、触媒層温度の制御が均一では無くなる間題点が発生する。プレート型触媒反応塔の熱媒体流路は必要な流量と線速度を満足するように、その断面が決定される。【0026】熱媒体の循環は通常ポンプが用いられる。熱媒体は熱交換器を用いるか、温度の異なる媒体を混合することによって温度制御された後に、触媒反応器の波形の熱媒体流路2内のに供給される。熱媒体は伝熱プレート1を通じて触媒層3との間で反応熱を交換し触媒反応器から排出されて循環ポンプに戻る。熱媒体の循環系には熱媒体貯層を設置することもある。熱媒体流路2内での圧力は主として熱媒体ポンプの吐出圧力によって決まり、そして当該伝熱プレート1の板厚は熱媒体と触媒層3の圧力差により決定される。伝熱プレート1として平板を用いる場合には、熱媒体の圧力を保持するのに必要な厚さの金属プレートを用いなければならない。然るに本発明の伝熱プレート1は一定の間隙で平行に接合されている為、薄板の金属プレートを用いることができる。具体的には、熱媒体の圧力が3MPa程度でも、伝熱プレート1の板厚は2mm以下、好適には1mm以下の金属板を用いることができる。【0027】伝熱プレート1は通常、矩形の金属薄板が用いられ、反応原料ガスの流れ方向と直角方向の寸法には制限は無い。反応原料ガスの流れ方向が長すぎると触媒層の圧力損失が大きくなり、反応原料ガスの送風機或いは圧縮機の動力が大きくなり経済的に不利となる。工業的規模で化学品を製造する場合は、多管式反応器の場合と同様に、反応原料ガスの流れ方向の触媒層の長さは、1〜5mが採用される。目的の生産量のために必要なプレート型触媒反応器全体の触媒充填量は、用いる触媒の反応速度や反応原料ガス中の原料成分濃度などによって決定され、それぞれのプレート型触媒反応器によって異なる。一対の伝熱プレート1で形成される触媒量の最大量も反応性と触媒特性によって異なるが、経済的な伝熱プレート1の形状から単独の触媒量は最大5m3、好適には2m3以下である。【0028】充填される触媒の形状は、球状、円柱状或いはラシッヒリング形状のものが用いられることが一般的である。粒径は3〜20mmφであるものが多い。伝熱プレート1と隣り合った伝熱プレート1との最小間隔S1、S2、S3は用いる触媒の粒径によって変わり、通常、触媒粒径の1.5倍以上である必要がある。具体的には反応原料ガスの入口の伝熱プレート間距離のS1は5〜20mm、触媒層の中間部分のS2は10〜30mm、反応原料ガスの出口付近のS3は20〜50mm程度に設定される。好ましくは、S1は10〜15mm、S2は15〜20mm、S3は30〜40mmが選定される。【0029】それぞれの伝熱プレート1の間隙Sの詳細は、反応量の変化によって異なるが、触媒層3の入口から出口まで連続的に変化させても良いし、段階的に変化させても良い。寧ろ、触媒を製造する際の反応活性の不揃いを考慮すれば、段階的に伝熱プレート1の間隙Sを変化させた方が自由度を確保できて良い。それぞれの領域の分割数は2〜5段階が妥当であり、また各領域の長さは全触媒層長さに対してS1部分は1/10〜1/3、同S2部分は1/5〜1/3、同S3部分は1/4〜1/2の触媒層長さが適用されるが、S3部分の触媒層長さは反応の転換率の達成度によって異なる。また触媒層3の入口の前に、反応原料ガスを予熱ゾーンを設ける場合は、S1部分の層長に追加される。【0030】反応原料ガスの流れ方向に入口から出口までの、触媒層厚さの変化の詳細は、一概には決定できない。その理由は、反応速度、出口での最終転化率や副反応も含めた反応に伴う反応熱量などの反応因子、熱媒体の温度、流速や反応原料ガスの流速、熱容量及び除熱/加熱に伴う伝熱係数などの伝熱因子、更には触媒が損傷されない許容温度や触媒の劣化が促進されない温度などの触媒に関連する因子によって決定されるべきものである。理想的には、触媒層厚さの変化割合は触媒層の長さ方向の各領域における反応の吸/発熱量の逆数に比例させるべきと考えられる。上に示した因子の内、触媒層厚さの最適変化割合に影響を与える主要因子の1つは、反応原料ガス出口での最終転化率と考えられる。【0031】触媒層の温度分布は各段階の反応量によって変化するが、触媒に損傷を与えない温度や触媒の劣化を促進させない温度以下に制御すること及び目標である反応の最終転化率を得られることは実用上可能である。上記の影響因子のうち、伝熱に関する因子はプレート型接触反応器を設計する際には、十分に考慮される。触媒層の除熱/加熱の効率を上げるためには、反応原料ガスの流速を上げることが好ましいが、触媒層内を通過する際の圧力損失が大きくなるという欠点を有する。一般の反応器においても、触媒が高温で急速に劣化する懸念がある場合には、触媒を充填する際に触媒と不活性物質とを混合して、触媒の反応活性を抑え触媒層温度を制御することが行われる。触媒の希釈は本発明のプレート型触媒反応器にも適用可能である。【0032】酸化反応のように反応熱が非常に大きい反応は触媒層厚さを狭くする必要があるが、伝熱プレート対の多数が反応器内に設置され、反応器自体が大型化し経済的でない場合が考えられる。本発明においても、特に反応原料ガスの入口部において触媒を不活性物質で希釈し反応熱の発生を抑えることによって、触媒の寿命を改良することが行われる。触媒の希釈は、通常、段階的に行われ2〜5段階で、反応原料ガスの入口部が最も不活性物質の混合比率が高く、反応帯域の出口では不活性物質の混合はされない。不活性物質の混合比率は、入口部で0.7以下が採用される。触媒の反応活性を制御する方法は、不活性物質を混合するほか、活性の異なる触媒を用いることも可能である。不活性物質の混合や異なる触媒を用いてなす触媒活性の変化は、反応原料ガスの入口から出口に連続的に触媒活性を変えられることが理想ではある。しかし、段階的に異なる活性の触媒を分割充填することが実際的ではあり2〜3種類の触媒活性の異なる触媒が反応帯域の入口から順次充填される。【0033】プロピレン又はイソブチレンを分子状酸素含有ガスを用いて酸化反応によって、(メタ)アクロレインや(メタ)アクリル酸を製造する場合に、本発明の反応器は好適に使用される。プロピレン又はイソブチレンの酸化反応は反応熱が大きく、酸化反応器に充填された触媒層の温度分布を制御して、触媒の損傷を防ぎ高収率で(メタ)アクロレインや(メタ)アクリル酸を製造し、長期に安定して酸化触媒を使用することは、経済的観点から絶対に必要なことである。特に(メタ)アクロレインを分子状酸素で酸化して(メタ)アクリル酸を製造する工程では、用いる酸化触媒の特性から300〜350℃高温に曝されると短期間で触媒の活性が失われる場合もある。更に近年、アクリル酸を製造する反応器は大型化される傾向がある。反応器の大型化に伴って、触媒層の温度の均等に冷却することが可能な酸化反応器の開発は非常に重要な技術的ポイントである。【0034】プロピレンやイソブチレンの分子状酸素による不均一接触気相酸化反応は、従来公知の方法で行うことができる。 プロピレンの場合は、プロピレンと空気、水蒸気又は窒素を混合し反応原料ガスとする。プロピレン濃度は3〜14容量%で酸素は6〜18容量%で残りは水蒸気、窒素などの不活性ガス及びプロパンなどである。熱媒体温度は250〜350℃で空間速度(SV)は標準状態で500〜3000(1/hr)である。反応圧力は150〜250kPaで熱媒休としては硝酸塩混合物の溶融塩(ナイター)や多核芳香族系の有機熱媒体などが用いられることが多い。触媒層内温度は最高点で350〜400℃に抑えることによって、触媒の劣化を抑えることができるし、反応成績も向上し、アクリル酸及びアクロレインの収率も向上することが実証された。【0035】【実施例】(実施例1)プロピレンを分子状酸素により酸化してアクリル酸を製造するに当たり、前段触媒として、Mo(12)Bi(5)Ni(3)Co(2)Fe(0.4)B(0.4)K(0.1)Si(24)O(x)の組成の触媒粉末を製造し、これを成型し外径5mmφ、内径2mmφ及び高さ4mmのリング状触媒を製造した。同様にして、後段触媒として、Sb(100)Ni(43)Mo(35)V(7)Nb(3)Cu(9)Si(20)O(x)の組成の触媒粉末を製造し、これを前段触媒と同じ形状のリング状触媒を製造した。但し、ここで(x)は各々の金属酸化物の酸化状態によって定まる値である。一対の波形伝熱プレート1を2組準備した。またその波板形状の詳細と触媒及び不活性物質(イナート)の充填量を下記表1に示す。【0036】【表1】【0037】ここで、波板形状のLとHは図2に示した波形状の幅と長さを表し、触媒層の相当厚さは触媒充填量と触媒層高さから求めた。波板の幅は1mで、厚みは0.8mmの平板を成形した波板2枚を接合したものを伝熱プレートとした。波形伝熱プレート1の問隔(図1に示すP1及びP2)を45mmに調節して反応器とし、2組の伝熱プレートの間に触媒を充墳した。触媒は先ず後段触媒を23リットル充填したが、触最層の充填高さは1.2mであった。その上に反応に不活性なアルミナ製の球形イナートボール(直径5mmφ)を充填して層高を調整し、反応器の前段相当部分を埋めたが、充填量は5リットルとなった。同様にして、後段触媒の上に前段触媒を30リツトルとイナートを5リットル充墳した。前段触媒の層高は1.25mであった。不純物としてプロパンを含む純度99%のプロピレンを用いて、空気、窒素及び水蒸気を混合して反応に用いた。混合ガスの組成はプロピレン(プロパン含む):空気:水蒸気:窒素が7:73.5:10:9.5容量%となるように混合比率を調整した。該反応原料ガスを上記波形プレート反応器の上部より、65立方メ−トル(標準状態)/毎時の割合で供給した。プロピレンの供給量は毎時8.4kg/hrであった。【0038】熱媒体として、サ−ムエス900(新日織化学(株)製)を用い、波形伝熱プレートの熱媒体流路に供給した。熱媒体の流量は前段触媒部に100立方メートル/毎時、後段触媒部に85立方メートル/毎時とした。それぞれの反応部の転化率を測定しながら、熱媒体の供給温度を調節したところ、前段反応部ではプロピレンの転化率95%の時、287℃であった。後段反応部でのアクロレイン転化率を99.5%に調飾したところ、熱媒体温度は260℃であった。反応器内の触媒層温度を測定したところ、前段触媒層の最高温度は359℃で、後段触媒層での最高温度は297℃であった。この状態で1ヶ月間運転を継続したが、問題なく順調に推移した。【0039】(比較例1)実施例1において、反応器の波板の代わりに平板を用いた。平板は厚さ2mmで幅1m、高さ2mのもの2枚を16mmの間隙になるように接合し、その外側に熱媒体流路を設け反応器とした。熱媒体流路側には30cm間隔で補強板を取り付け、触媒層の層厚さの均一性及び熱媒体の圧力に耐えられる設計とした。触媒として実施例1と同じものを用い、前段触媒の30リットルを充填したところ、触媒層の層高は1.9mでその上にイナートを充填し触媒押さえとした。実施例1と同じ組成、流量の反応ガスを用いてプロピレンの酸化反応を行った。熱媒体の流量は、流路内での線速度が実施例1と同じに調節した。プロピレンの転化率を測定したところ熱媒体温度315℃でプロピレン転化率95%が得られた。触媒層に挿入した温度計から触媒層の最高温度は408℃であった。反応条件を固定して1週間反応を続けたが、触媒層の最高温度が低下し、プロピレンの転化率が徐々に低下した。プロピレン転化率を維持するには熱媒体温度を更に上げなければならなかった。【0040】(実施例2)及び(比較例2)実施例1と同じ波形伝熱プレートの反応器と伝熱板の高さが同じ3.05mである平板反応器(比較側1)を用いて、前段触媒の充填テストを行った。実施例1で製造した前段触媒をそれぞれの酸化反応器の上部から、投入充墳した。反応器の上部に横長ロート状の器具を取り付けて、触媒が反応器外にこぼれないようにした。投入方法は1リットルのビーカーに触媒を入れ、これを約6秒の時間で投入した。この投入を3回、3リットルの触媒を充填した後に、触媒を反応器下部より抜き出した。抜き出した触媒を篩(10メッシュ)及び目視にて、割れた触媒を分離し、その比率を側定した。この操作を3回繰り返し、その結果を表2に示す。【0041】【表2】【0042】上記表2の結果から、本発明の反応器に触媒を充填した時は、充填時の落下衝撃によって触媒が割れる確率が非常に小さいことが判明した。この原因は、本発明の波形伝熱プレートを用いた反応器の場合は触媒の充填時に触媒が落下する際に、薄板プレートの波形状の頂部にぶつかりながら落下し、触媒が反応器下部に到達する時に受ける落下衝撃が緩和される効果と考えられる。【0043】【発明の効果】以上説明したように、この本発明によれば、触媒層の最高温度を低く抑えることができて、反応成績を向上することが可能となった。長期連続して反応を実施しても、触媒の劣化による反応成績の低下や温度分布の変化が観測されないという効果が得られるプレート型触媒反応器である。また、本プレート型触媒反応器は、波板に賦形された凹凸面により反応原料ガスの流れが乱されて当該反応原料ガス側の伝熱効率がアップし、この結果触媒層厚さを大きくできて反応塔をコンパクトにできる。更に触媒を触媒層に充填する際に、当該触媒は波板の凹凸面に衝突しながら落下するので、落下速度が緩和されるので落下時の衝突による破損が少なく触媒の劣化が軽減される。【図面の簡単な説明】【図1】本発明のプレート型触媒反応器内に挿入される伝熱プレートの縦断面図。【図2】2枚の波板を接合して形成された伝熱プレートの拡大図。【図3】図1のIII部の拡大図。【図4】図1のIV部の拡大図。【図5】図1のV部の拡大図。【図6】伝熱プレートを放射状に配置したプレート型接触反応器の横断面図。【図7】従来の多管式反応器における触媒層内温度分布図。【符号の説明】1…伝熱プレート2…熱媒体流路3…触媒層4…反応ガス入口5…反応ガス出口6…熱媒体供給口11…波板a…波板の凸面部b…波板の凹面部S1、S2、S3…反応原料ガスのスロート 円弧或いは楕円弧に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成された一対の伝熱プレートを、複数対配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成したことを特徴とするプレート型触媒反応器。 波板に賦形された円弧或いは楕円弧の形状を変えることにより、触媒層に供給される反応原料ガスの入口から出口に向かって該触媒層の厚さを増大させたことを特徴とする請求項1に記載のプレート型触媒反応器。 熱媒体を反応原料ガスに対して十字流の方向に流すことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のプレート型触媒反応器。 複数の波形伝熱プレートを放射状に配置し、反応原料ガスを触媒層の内側から外側へ流し、熱媒体は波板プレートの流路内を反応原料ガスに対して、十字流の方向に流すことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のプレート型触媒反応器 波形伝熱プレートの熱媒体流路が垂直になる方向に配置し、下部より熱媒体供給して上昇流とし、熱媒体流路内にて熱媒体の少なくとも一部が沸騰することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプレート型触媒反応器。 分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレインおよび(メタ)アクリル酸を製造する、或いは(メタ)アクロレインを分子状酸素含有ガスを用いて(メタ)アクリル酸を製造することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプレート型触媒反応器。


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