生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法
出願番号:2002368986
年次:2009
IPC分類:C12G 3/00,C12C 11/00,C12G 3/02,A61K 31/045,A61K 31/197,A61K 36/899,A61P 9/02,A61P 9/12,A61P 25/24


特許情報キャッシュ

三浦 裕 JP 4210514 特許公報(B2) 20081031 2002368986 20021219 高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法 アサヒビール株式会社 000000055 友松 英爾 100094466 岡本 利郎 100116481 三浦 裕 JP 2001397949 20011227 20090121 C12G 3/00 20060101AFI20081225BHJP C12C 11/00 20060101ALI20081225BHJP C12G 3/02 20060101ALI20081225BHJP A61K 31/045 20060101ALN20081225BHJP A61K 31/197 20060101ALN20081225BHJP A61K 36/899 20060101ALN20081225BHJP A61P 9/02 20060101ALN20081225BHJP A61P 9/12 20060101ALN20081225BHJP A61P 25/24 20060101ALN20081225BHJP JPC12G3/00C12C11/00C12G3/02A61K31/045A61K31/197A61K35/78 UA61P9/02A61P9/12A61P25/24 C12G 3/00 A61K 31/045 A61K 31/197 A61K 36/899 A61P 9/02 A61P 9/12 A61P 25/24 特開平08−280394(JP,A) 特開2001−321159(JP,A) 特開2001−231501(JP,A) 特開2000−201651(JP,A) 特開2000−210075(JP,A) 特開2000−014356(JP,A) 特開2003−169659(JP,A) 特開2002−360289(JP,A) Journal of Chromatography A 881,81−91(2000) 3 2003250512 20030909 9 20050927 今村 玲英子 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、ほろ酔い程度に飲むことにより高血圧症や血圧低下症の改善、鬱状態などの神経障害の改善などが期待できる、ギャバを高濃度で含むアルコール飲料の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】ギャバ(GABA、すなわちガンマアミノ酪酸)は自然界に広く分布しているアミノ酸の一種で分子式はNH2CH2CH2CH2COOHである。生体内において、抑制系の神経伝達物質として作用することが知られている。また、血圧降下作用、精神安定作用、腎、肝機能改善作用、アルコール代謝促進作用などが知られている。しかし、胚芽米や緑茶など植物由来の食品に含まれる量は少なく、薬理作用を発揮するのに必要な量(30mg以上)を通常の食品から摂取するのは困難である。そこで、医薬品としてギャバの合成品を、脳の血流改善作用を基に、脳卒中等の後遺症改善薬として経口投与されている。また、健康食品では、米が発芽するときに、胚芽中でギャバが産出されるので、発芽玄米が売られている。この場合、茶碗一杯の量である80g摂取するとギャバが10mg程度とれるといわれている。また嫌気状態で緑茶のギャバ量を増やしたギャバロン茶というお茶があるが、ギャバ量は少ない。最近、グルタミン酸を乳酸菌の作用や米胚芽中の酵素の作用でギャバに変換した、高ギャバエキス(ギャバ含量2〜5%)が開発された。本発明者らによれば、ギャバを食品として高血圧や鬱的精神状態の改善に使う場合の推奨使用量は、1日あたり30mg以上、好ましくは50mg以上、とくに好ましくは100mg以上と考えられる。なお、ギャバは多く摂っても、余剰分は尿とともに体外に排出され過剰症はなく無害である。【0003】精神的、肉体的健康を保持するためには、ギャバを食品として日常的に摂取すると効果的であるが、現時点では特定の薬品や健康食品を買い求めて、それからギャバを意識的に摂取する必要がある。【0004】特許文献1によれば、発芽させた玄米に麹菌、酒酵母菌を混ぜ、これを発酵させたガンマアミノ酸含有健康酒が提案されている。しかし、この公報記載の内容は、実質的に単なるアイディアを開示するにとどまり、具体的内容は記載されていないに等しい。一般に発芽玄米中に含まれているギャバ含有量は12mg/100g程度であるから、発芽玄米を50g使用し、アルコール濃度15%の酒100mlを作ったとしてもそのギャバ含有量は6mg/100mlであり、薬理作用を充分期待できる量をそれから摂取しようと思えば、最低でも約500mlも飲まなければならない。また、ビールは、大麦を発芽させて得られた麦芽を原料として用いるから、通常ビール中にはギャバが4〜6mg/100ml程度含まれている。ビールはギャバの宝庫と言ってよい高ギャバ食品であるが、ほろ酔い程度に飲んで薬理作用が十分に期待できるように長所を伸ばすことは意義深いことである。【0005】ギャバの効果である血流の改善と鬱的精神の改善効果はアルコールの作用である血行促進効能と重ってギャバの効果を一層増強することが期待でき、さらにギャバはアルコール代謝改善効果もあることから、ギャバはアルコールとの相性が非常に良いと考えられる。しかし、前記特許文献1記載の酒を含め、いままで知られているアルコール飲料では、ほろ酔い程度になる量を飲んだだけでは、薬理作用に必要な量をそれから摂取することはできない。【0006】【特許文献1】特開2001−231501号公報【0007】【発明が解決しようとする課題】 そこで本発明の目的は、アルコール飲料を気軽に楽しみながら、ギャバの薬理効果の期待できる新規な高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法を提供する点にある。【0008】【課題を解決するための手段】 本発明の第1は、麦芽を含むアルコール飲料用原料を用いて通常の発酵方法によってアルコール飲料を製造する方法であって、その麦芽の仕込み工程において、仕込み工程終了時の系中におけるグルタミン酸類の存在量に対してギャバ(すなわちガンマアミノ酪酸)の存在量が2倍以上になる時点まで仕込み工程を行うことを特徴とする高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法に関する。 本発明の第2は、麦芽を含むアルコール飲料用原料を用いて通常の発酵方法によってアルコール飲料を製造する方法であって、麦芽を低分子化してマイシェに変える工程の開始前および/または工程中に、グルタミン酸類を添加することを特徴とする高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法に関する。 本発明の第3は、麦芽を含むアルコール飲料用原料を用いて通常の発酵方法によってアルコール飲料を製造する方法であって、麦芽を低分子化してマイシェに変える工程の開始前および/または工程中に、トウモロコシタンパク質分解物および/または小麦タンパク質分解物を添加することを特徴とする高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法に関する。 前記アルコール飲料の通常の製造方法は、例えば、1996年9月30日 株式会社養賢堂発行、大塚謙一編著「醸造学」1〜188頁の記載を参考にすることができる。【0009】本発明における高ギャバ含有アルコール飲料としては、とくに制限はなくビール、発泡酒、リキュール、スピリッツ、日本酒、蒸留酒などを挙げることができる。ほろ酔い程度で所期のギャバがもつ鬱状態改善効果、血流改善効果などの薬理効果を充分発揮させるためには、アルコール濃度の高い飲料の場合は当然ギャバ濃度もアルコール濃度に比例して高くすることが必要である。すなわち、ギャバ(すなわちガンマアミノ酪酸)の100ml当たりの含有量は、2≦Y<5.5のときについてみれば最低でも下記式10×(Y÷5.15)(単位mg)で示される量以上であるが、通常下記式15×(Y÷5.15)(単位mg)で示される量以上、好ましくは下記式20×(Y÷5.15)(単位mg)で示される量以上、とくに好ましくは下記式30×(Y÷5.15)(単位mg)で示される量以上、最高で下記式2000×(Y÷5.15)(単位mg)で示される量以上である。【0010】例をあげると、350mlの缶に入った本発明の高ギャバ含有ビール(アルコール濃度5.15V/V%の場合)であれば、最低でもその中に35mgのギャバが含まれていることになる。【0011】本発明の高ギャバ含有アルコール飲料は、糖、酸、柑橘などのフレーバー、炭酸ガス、各種の有用植物エキス、ビタミンなどの添加剤を配合してもよい。【0012】本発明の高ギャバ含有アルコール飲料を製造するための発酵用原料としては、大麦を発芽させて得られた麦芽、玄米を発芽させて得られた発芽玄米など植物の種子を発芽させたものが主流となるが、これのみでは得られたアルコール飲料のギャバ含有量が不足する場合には、麦芽や米胚芽を酵素処理してギャバ含有量を高めたエキスを発酵用原料に配合したり、麦汁や米胚芽を乳酸発酵したものを発酵用原料に配合したり、あるいはアミノ酸類、とくにグルタミン酸類(グルタミン酸やその塩たとえばNa塩、K塩など)を発酵用原料に配合したりすることにより、グルタミン酸類をギャバに変換してギャバ含有量を増強することができる。また、グルタミン酸類の添加と同様の要領で系にビタミンB6を添加することによりギャバ生成速度を高め、結果的にギャバ生成量を向上することができる。さらに必要に応じて化学合成法により得られたギャバあるいは天然ギャバ含有物を濃縮精製したギャバをアルコール飲料に配合してもよいし、アルコール発酵用原料に化学合成法により得られたギャバまたは天然ギャバ含有物をそのままであるいは濃縮精製したものを配合してアルコール発酵に供してもよい。これらの補強手段は、単独でもよいが併用することもできる。なお、前記グルタミン酸類は、発酵に用いられる乳酸菌や米胚芽または麦芽中の酵素デカルボキシラーゼの作用によりギャバに変換される。【0013】高ギャバ含有アルコール飲料の基本的な製造方法は、麦芽および/または発芽玄米それ自体のもつ酸素によって、麦芽および/または発芽玄米を低分子化してマイシェに変える工程を通常の処理時間の倍程度長くすることである。また麦芽由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼがグルタミン酸類をギャバに変換する効率を高めるため、グルタミン酸デカルボキシラーゼの反応の好適温度、好適pHに近づけるように、タンパク質分解工程の温度、pHを通常よりやや低めにすることが好ましい。それにより通常の麦汁中の(ギャバ)/(グルタミン酸類)の比率が0.7〜1.5であるところを2.0以上に高めることができる。【0014】高ギャバ含有アルコール飲料を製造しようとする場合には、タンパク質含有量とくにグルタミン酸含有量の高い大麦を用いた麦芽を原料とすることが好ましい。タンパク質含有量の1つの指標であるトータル窒素量は、麦芽では8〜14%であるから、なるべくトータル窒素量の高い麦芽を選択使用することが好ましい。また、トータル窒素の高い麦芽のなかでもアミノ酸等の水溶性窒素化合物割合の高い麦芽が好ましい。アミノ酸等の水溶性窒素化合物は通常の麦芽では0.6〜0.8重量%程度しか含まれていないが、発芽を良くするなど麦芽製造工程を工夫し、充分な発芽期間や嫌気処理などをして、これを1重量%程度に高め、ギャバとグルタミン酸類の含有を高めたものを原料とすることが好ましい。【0015】ギャバの生成原料の1つはグルタミン酸またはその塩であるから、これを直接タンパク質分解工程またはそれ以前の工程において添加しておくことができる。グルタミン酸またはその塩の添加はそれ自体直接添加してもよいが、その供給源となる材料を添加してもよい。このような材料としては、トウモロコシのタンパク質またはそのタンパク質分解物(通常、トウモロコシのタンパク質を分解した生成物はほぼ67%がアミノ酸である高アミノ酸素材であり、粉末調味料原料として使用されており、約20%のグルタミン酸が含まれている)あるいは小麦のタンパク質またはそのタンパク質分解物(これもアミノ酸が37%程度含まれた粉末調味料であって、そのグルタミン酸含有量は約10%である)などを挙げることができる。【0016】発芽玄米も高ギャバアルコール飲料の原料として有効なものの1つである。ただ、麦芽中のギャバが麦芽16g当り10mg程度であるのに対し、発芽玄米は、発芽玄米80g当り10mgと麦芽中の含有量に対し20%程度しか含まれていないため、発芽玄米のみを原料として使用して高ギャバアルコール飲料を製造しようとすると必然的にアルコール濃度の高いものになることは避けられない。したがって、ギャバの含有量を高めるためだけを考えれば麦芽を使用する方が有利ではあるが、原料はアルコール飲料の味や臭いとも深い関係があるから、これらを総合的に考慮して原料の選択を行う必要がある。ただ発芽玄米には、ギャバ以外に美白効果があるフィチン酸や、抗酸化作用のあるフェルラ酸などが含まれているので、このような効果を期待して麦芽と発芽玄米を原料として併用することも有利である。【0017】アルコール飲料中のギャバ含有量を高める方法の1つとして米胚芽や酵素処理した米胚芽を麦汁などの原料やアルコール飲料に配合することもできる。例えばオリザ油化製の商品名オリザギャバエキスは、酵素処理した米胚芽から抽出したギャバエキスであって、このギャバ含有量は700mg/100ml程度であるので、これを麦汁100ml当たり1ml加えることにより、ビール中のギャバ含有量を7mg/100ml増加させることができる。【0018】また、アルコール飲料中のギャバ含有量を高める方法の1つとして、酵素処理した米胚芽由来のギャバや酵素処理したアミノ酸由来のギャバをアルコール飲料やその原料に配合することもできる。例えば、オリザ油化製の商品名オリザギャバエキスHC5は、グルタミン酸類を米胚芽中のギャバ変換酵素でギャバに変換したエキス(ギャバ含有量5wt%)でこれを麦汁に0.2wt%添加することにより、発泡酒(原料中の麦芽割合は25wt%未満)中のギャバ含有量を10mg/100ml増加させることができる。【0019】アルコール飲料中のギャバ含有量を高める方法の他の1つとして、(i)乳製品または乳製品に植物成分を添加したもの、および(ii)グルタミン酸(たとえばL−グルタミン酸)またはそのナトリウム塩もしくはこれらの少なくとも1種を含有する食品、との混合物よりなる発酵培地を乳酸菌により発酵させて得られる発酵培養物をアルコール飲料やその原料に配合する方法がある。例えば、太洋香料製の商品名ギャバラクトC−24(ギャバ含有量2wt%)を麦汁に0.5wt%添加することにより、発泡酒(原料中の麦芽割合は25wt%未満)中のギャバ含有量を10mg/100ml増加させることができる。【0020】アルコール飲料中のギャバ含有量を高める方法の他の1つとして、乳酸発酵した麦汁由来のギャバをアルコール飲料または原料に配合することもできる。例えば麦汁100ml当たり、グルタミン酸1gを含む麦汁に乳酸菌(Lactobacillus brevis、Lactobacillus leichmannii、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus casei、Lactobacillus bulgalicus、Lactobacillus lactisなど)を添加し、20℃で6時間乳酸発酵させるとグルタミン酸類が乳酸菌の出す酵素のデカルボキシラーゼによりギャバに変換され、100ml当たり500mgのギャバを含有する発酵麦汁が得られる。これを通常の麦汁に2%添加することにより、ビール中のギャバ含有量を10mg/100ml増加させることができる。また同時に乳酸発酵により生じる乳酸によりビールの風味も向上する。【0021】前記植物成分としては、豆(豆乳などの形で利用)、人参、ピーマン、カボチャ、セロリ、ほうれん草、小松菜、キャベツ、トマト、さつまいも、じゃがいもなどがある。【0022】高ギャバ含有発酵用原料としては、前述のように麦芽、発芽玄米、これらにグルタミン酸やその塩を添加したものあるいはこれらにタンパク質分解物を添加したものが適している。通常、ビール、発泡酒などのアルコール飲料を製造する場合、麦芽に温水を加え、麦芽中の澱粉やタンパク質を麦芽それ自体のもつ酵素によって低分子化する。場合によっては、これにさらに澱粉質副原料を配合してもよい。この低分子化工程を仕込み工程といい、得られた液体を麦汁という。不溶物を除去、ホップを添加、煮沸、濾過を経て得られる透明な麦汁に酵母を加えてアルコール発酵、熟成させ(発酵、貯酒工程)、濾過後、製品化する。【0023】本発明者は、ビール製造工程において、ギャバは大麦から麦芽を作る工程でまず発生し、更に麦芽から麦汁をつくる工程で増大することを見出した。また、麦汁中のギャバは、他のアミノ酸が豊富にある場合には、酵母による発酵過程で消費されない。そこで、高ギャバのビールをつくるためには、ギャバ含量を高めた麦芽を豊富に用いることと、麦汁製造工程において、グルタミン酸類の含量を高めるとともに、グルタミン酸類からギャバに変換するグルタミン酸デカルボキシラーゼを十分に働かせることが重要であることを見出した。【0024】本発明者の研究によれば、高ギャバアルコール含有飲料の製造において、ギャバ含量を高めるには2通りの方法がある。ひとつは、仕込み工程(タンパク質分解工程とでんぷん分解工程を含む)において、主としてタンパク質分解工程の時間を延長することにより、麦汁中のグルタミン酸デカルボキシラーゼの働きにより、グルタミン酸類をより多くギャバに変換させることである。通常仕込み工程は1996年9月30日株式会社養賢堂発行、大塚謙一編著「醸造学」第70〜109頁、とくに第79頁に記載されているように麦芽に温水を加え、40〜60℃で40〜60分保ち、タンパク質分解酵素を働かせる主にアミノ酸を生成させる期間、ついで65〜68℃に昇温し、65〜68℃で1〜1.5時間保持し、糖化酵素を働かせて麦芽糖を主体とする糖類を生成させる期間、及び75〜80℃に昇温し、諸酵素を失活させる期間からなり、最初の40〜60℃に保つ期間をタンパク質分解工程という。この工程で麦汁中のグルタミン酸類の一部が系中に存在するグルタミン酸デカルボキシラーゼの働きにより、ギャバに変換されるのである。さらには、タンパク質分解工程は通常1時間程度であるが、これを例えば2時間に延長することによりギャバ含有量が増大する。実施例にも記載したように、麦汁中のグルタミン酸類に対するギャバ含有量が一時間では1.87倍であるのに対し、二時間では2.42倍と大きく増大した。【0025】いまひとつは、仕込み工程の原料投入時の麦芽添加量をふやしたり、グルタミン酸類を添加したり、タンパク質分解物を添加することにより、麦汁中のアミノ酸含有量、特にグルタミン酸類含有量を増加させることである。アルコール飲料の発酵過程において、酵母は特定のアミノ酸から順次消費する傾向があることがわかっている。すなわち、同じアミノ酸の中ではグルタミン酸類が優先的に消費され、ギャバすなわちγ−アミノ酪酸の消費順位が非常に低いことが判っている。従って、麦汁中のアミノ酸含量、特にグルタミン酸類含量を増やし、タンパク質分解工程でのギャバへの変換量を増やし、ギャバを非常に高濃度に含有するアルコール飲料を製造することが可能となったのである。また麦汁中にグルタミン酸類が比較的多く残った場合でも、酵母により優先的に消費されらので、ビールとなった場合にその味に影響をあたえない。【0026】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。【0027】実施例150mlのドリンク一本当たり、キャバ含有量2%の乳酸発酵ギャバエキスを3000mg、ハチミツ4g、クエン酸20mg、朝鮮人参、クコの実、なつめ、生姜、甘草の各エキスをそれぞれ100mg、ビタミンB2を1mgに、水と香料を加え50mlとし、味を調えた。この飲料の1本当たりのギャバ含有量は60mgである。この清涼飲料を更年期障害で不眠や抑うつ、イライラを感じるボランティア8人に自宅に持ち帰り、就寝前に、一回あたり、25%の焼酎20mlに前記1本の清涼飲料を加えて混合したものを1週間連続して毎日服用してもらった。また、ギャバエキス抜きの前記飲料のプラセボをつくり、同じ8人に、1週間連続して同様に服用してもらった。試験者はどちらが試験品か知らしめていない。試験品とプラセボの順序効果を無くすため、4人ずつ試験品とプラセボの飲用順序を変えた。試験終了後、ボランティアにそれぞれのサンプルの服用期間の気分改善効果について聞き取りを行った。その結果を表1に示す。本発明の効果は明らかである。【表1】【0028】実施例2米胚芽にアミノ酸を添加し、胚芽内酵素で反応させ、ギャバ含有量を高めた粉末エキス(ギャバ含有量5wt%)800mgとデキストリン200mgを混合し、スティックにつめた。この中には、40mgのギャバが含まれている。一方、プラセボとして、デキストリンのみを1000mg詰めたスティック(試料)を用意した。このスティックを更年期障害で不眠や抑うつ、イライラを感じるボランティア8人に自宅に持ち帰ってもらい、晩酌時に、ギャバ5mg/100mlを含む350mlのビールに前記1本分のスティックを溶かし、1週間にわたり毎日1スティック分を飲用し、その効果を調べた。1回に服用するギャバ総量は57.5mgである。また、別の1週間はプラセボをビールに溶かして飲用した。ボランティアはどちらのスティックがギャバ入りかは知らされておらず、試料とプラセボの順序効果を消すために、4人づつ試料とプラセボの順序を変えた。試験終了後、ボランティアにそれぞれのサンプルの服用期間の気分改善効果について聞き取りを行った。【表2】【0029】実施例3可溶性固形分17重量%の麦芽100%麦汁中にはギャバが16.5mg/100ml、グルタミン酸14.2mg/100mlが含まれていた。この麦汁をタンパク質分解工程に一時間かけたところ、ギャバは17.8mg/100ml、グルタミン酸は9.5mg/100mlとなった。さらに一時間タンパク質分解工程を続けたところ、ギャバは22.3mg/100ml、グルタミン酸は9.2mg/100mlとなった。このようにタンパク質分解工程の時間を長くすると、系中のグルタミン酸がギャバに変換することにより、ギャバ含有量を増大することができる。系中のグルタミン酸含有量に対するギャバ含有量は、一時間後(従来からの通常の反応時間):17.8/9.5=1.87倍二時間後(本発明の反応時間):22.3/9.2=2.42倍となっていることが判る。【0030】実施例4可溶性固形分12%になるように麦芽、コーンスターチ、米に温水を加えて得られた麦汁100mlに対し、グルタミン酸を40mg添加し、50℃で1時間保持した。ついで、常法通り約65℃に昇温、糖化を行い、さらに75℃に昇温、すべての酵素を失活させ、冷却、濾過して麦汁を得た。このグルタミン酸添加麦汁と同様に調製したグルタミン酸未添加麦汁をそれぞれ用いて常法に従って、麦芽使用比率25%未満の発泡酒を製造した。下表に麦汁中および発泡酒中の100mlあたりのギャバ含有量(mg)を示す。この結果から、グルタミン酸類を麦汁に添加することにより、仕込み工程においてギャバに変換される。またグルタミン酸類が麦汁中に豊富にある場合は、酵母はギャバを消費しないので、高ギャバ含有ビールまたは発泡酒が製造できることが明らかとなった。【表3】【0031】実施例5可溶性固形分12%になるように麦芽に温水を加えて得られた麦汁100mlに対し、トウモロコシタンパク質分解物または小麦タンパク質分解物を125mg添加し、50℃で2時間保持した。ついで、常法通り約65℃に昇温、糖化を行い、さらに75℃に昇温、全ての酵素を失活させ、冷却、濾過をして麦汁を得た。これらのタンパク質分解物添加麦汁と同様に調製した未添加麦汁からそれぞれ常法に従ってビールを製造した。各麦汁の100ml中のギャバおよびグルタミン酸の含有量(mg)、仕込み工程における添加物中のグルタミン酸のギャバ変換率(%)、ビール中のギャバ含有量(mg)を下表に示す。【表4】この結果から、グルタミン酸が麦汁中に豊富にある場合は、その1部がギャバに変換され、麦汁中のギャバ含量が高まるとともに、発酵工程においても酵母はギャバを消費しないので、高ギャバ含有ビールが製造できることが明らかとなった。【0032】【発明の効果】 本発明により、ほろ酔い程度に飲むことにより高血圧症や、血圧低下症の改善、うつ状態などの神経障害の改善に有効なギャバ含有量の高いアルコール飲料の製造方法を提供することができた。 麦芽を含むアルコール飲料用原料を用いて通常の発酵方法によってアルコール飲料を製造する方法であって、その麦芽の仕込み工程において、仕込み工程終了時の系中におけるグルタミン酸類の存在量に対してギャバ(すなわちガンマアミノ酪酸)の存在量が2倍以上になる時点まで仕込み工程を行うことを特徴とする高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法。 麦芽を含むアルコール飲料用原料を用いて通常の発酵方法によってアルコール飲料を製造する方法であって、麦芽を低分子化してマイシェに変える工程の開始前および/または工程中に、グルタミン酸類を添加することを特徴とする高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法。 麦芽を含むアルコール飲料用原料を用いて通常の発酵方法によってアルコール飲料を製造する方法であって、麦芽を低分子化してマイシェに変える工程の開始前および/または工程中に、トウモロコシタンパク質分解物および/または小麦タンパク質分解物を添加することを特徴とする高ギャバ含有アルコール飲料の製造方法。


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