生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_食品中の昆虫混入時期の判定方法
出願番号:2002368981
年次:2008
IPC分類:G01N 23/223,G01N 33/14


特許情報キャッシュ

小林 稔 女川 裕司 橋田 学 JP 4035435 特許公報(B2) 20071102 2002368981 20021219 食品中の昆虫混入時期の判定方法 アサヒビール株式会社 000000055 友松 英爾 100094466 岡本 利郎 100116481 小林 稔 女川 裕司 橋田 学 20080123 G01N 23/223 20060101AFI20071227BHJP G01N 33/14 20060101ALI20071227BHJP JPG01N23/223G01N33/14 G01N23/00-23/227 G01N33/14 JSTPlus(JDream2) 特開2001−228132(JP,A) 特開平10−253611(JP,A) 特開平08−056696(JP,A) 特開平06−066739(JP,A) 特開2002−243671(JP,A) 3 2004198326 20040715 7 20051207 島田 英昭 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ビール等の食品中へ混入し死亡した昆虫の死亡時期を判定する方法に関する。【0002】【従来の技術】死亡昆虫が食品に混入していた場合、食品製造業者は消費者から苦情を受けることとなる。例えば、ビールメーカーの場合、製品ビール中にハエ等の昆虫が混入していた旨の苦情を寄せられることがある。その場合、その昆虫が製造工程中に混入したのか、開栓後に混入したかはメーカー側にとって大きな問題となる。製造工程中に混入したのであれば、メーカー側は製品の回収を含めて再発防止に努力する必要があるのに対し、開栓後に混入したのであれば、消費者にその旨を伝えれば良いこととなる。ところで、食品中に昆虫が混入した場合に、特定の酵素が死後日数を経るにつれて活性が減少することが知られており、ビール中に発見された昆虫自身の持つ酵素の減少度合を比較することにより、死後日数を推定し、その昆虫が製造工程中に混入したのか、開栓後に混入したのかを判定していた。【0003】この判定方法に使用される酵素としては、日数が経つにつれて減少し続けること、同じ日数だけビールに浸漬したときに昆虫個体間で酵素量のばらつきが少ないこと等の観点からカタラーゼやコリンエステラーゼが挙げられている。しかし、カタラーゼの活性は、昆虫の死後一旦は低下するものの、再び増加する傾向があり、コリンエステラーゼの活性は、死後20日以上経過してもビールが低温保存された場合には、低下の度合いが少ないという問題があった。【0004】そこで、アセチルコリンエステラーゼに着目し、その残存活性を測定して試料中に存在する昆虫の死亡時期を判定する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。特許文献1には、死亡昆虫のアセチルコリンエステラーゼの残存活性を測定し、該残存活性値から死亡後の期間を判定する、試料中に存在する昆虫の死亡時期の判定法について記載されており、また、特許文献2には、食品中に混入死亡した昆虫のアセチルコリンエステラーゼの残存活性を測定するにあたり、電気伝導度検出器付きイオンクロマト法を用いる食品中死亡昆虫のアセチルコリンエステラーゼ測定方法が記載されている。しかし、酵素は、低温条件下で保存された場合、失活しにくいため、昆虫に残存する酵素活性は、市場での生ビールの保存温度の影響を直接受けることとなる。特に、冷蔵庫等の低温で保存され続けた場合、酵素の失活はほとんど見られなかった。ハエについて生ビール中に浸漬した場合の保存温度4℃、25℃におけるコリンエステラーゼ活性の経時変化を図1に示す。【0005】【特許文献1】特開平8−56696号公報【特許文献2】特開平10−253611号公報【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、食品の保存環境に関係なく、ビール等の食品中で発見された昆虫の該食品への混入時期を、簡便に、高精度に、非破壊で安全に判定する方法を提供することを目的とするものである。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者等は、食品の保存環境に影響を受けることの少ない、昆虫中に含まれるカリウム量および硫黄量に着目し、本発明を完成したものである。即ち、本発明の第1は、食品中に混入し死亡した昆虫のカリウム量および硫黄量を蛍光X線分析法により測定し、K/Sの値から、昆虫が食品中に混入し死亡した時期を判定することを特徴とする食品中に存在する昆虫の死亡時期の判定方法に関する。本発明の第2は、食品がビールであることを特徴とする請求項1記載の食品中に存在する昆虫の死亡時期の判定方法に関する。本発明の第3は、昆虫がハエであることを特徴とする請求項1又は2記載の食品中に存在する昆虫の死亡時期の判定方法に関する。【0008】死亡したハエ等昆虫は、ビール等の食品中でカリウム(K)は溶出し、蛍光X線分析法により測定した場合、昆虫の体内に残存するカリウム(K)強度は減少していく様子が確認された。しかし、昆虫の体内に残存するカリウム(K)強度を蛍光X線分析法により測定した場合、虫体が食品中に混入し、死亡した当初のカリウム(K)強度が、昆虫の生存期間、昆虫体の部位により一定でないため、虫体が食品中に混入、死亡後所定期間経過後のカリウム(K)強度が判明しても直ちにその経過期間を判定することは困難であった。しかも、蛍光X線分析法による測定では、虫体表面の凹凸による検出強度の低下や表面に残存する水分による検出強度の低下等の影響が見られた。【0009】これに対して、昆虫の体内中の硫黄(S)は、昆虫を構成するタンパク質の構成元素の1つであり、しかも、ビール等に浸漬しても虫体からタンパク質の流出は殆ど認められず、死亡後一定期間経過しても虫体の硫黄(S)強度は殆ど変わらないことに着目し、昆虫体の部位毎に予めK/Sを求めておくと、昆虫の生存期間に関係なくほぼ一定の値を示すことから、食品中に混入した昆虫のK/Sを求め、その減少率から食品中に存在する昆虫の死亡時期を判定し得ることを見出した。しかも、蛍光X線分析法の測定による、虫体表面の凹凸による検出強度の低下や表面に残存する水分による検出強度の低下等の影響は、虫体のカリウム(K)強度の測定と虫体の硫黄(S)強度の測定が同条件で実施されることとなるので相殺され、食品中に存在する昆虫の死亡時期を判定することができる。本発明の判定方法の対象となる昆虫としては、一般に昆虫と呼ばれるものであれば特に制限はないが、特に食品中に多く混入し、苦情の多いハエが主たる判定対象となる。本発明の判定方法の対象となる食品としては、特に限定されるものではないが、ビール、その他の飲料水で特に有効である。しかし、固形食品であっても、液体に浸漬された状態のものや、半流動体のものであれば、本発明の判定方法の対象となりうる。【0010】本発明において、蛍光X線分析はX線分析顕微鏡によりなされるが、市販のX線分析顕微鏡を用いることもできる。例えば、堀場製作所製X線分析顕微鏡・XGT−2700がある。具体的には、得られた試料を1日デシケータ内で乾燥せしめ、試料台に虫体をのせ、薄膜(ポリエチレンテレフタレート膜φ80mm)で覆い、薄膜周辺をセロファンテープで止めることにより虫体を固定する。試料台を装置の所定の場所にセットし、蛍光X線分析に供する。ICP(ICP/AES,高周波誘導結合プラズマ発光分析装置)等の元素分析法が知られているが、この方法では、破壊試験(虫体を酸・アルカリ等で溶解)であるため、試料分析後跡形もなくなってしまうので、食品中に混入し死亡した昆虫の、消費者からの苦情に対する混入時期の判定には好ましくない。これに対し、蛍光X線分析法は、測定試料の前処理が殆ど不要で、試料を破壊することなく大気圧下で分析することができ、また、X線は光や電子線に比較して物質の透過能が高いため、その表面だけでなく内部の元素情報が得られる長所を有するので優れている。【0011】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。【0012】対照例1死亡直後のハエをビールに入れ、4℃、25℃にそれぞれ維持して、3日、7日、14日、30日後のコリンエステラーゼ活性を測定した。測定は、「生ビール中の昆虫の混入時期の判定方法」(食衛誌 Vol.36,No.3,413〜416頁,1995年 中桐裕幸等)を参考にして以下のように実施した。ビールに浸かっていたハエを水洗し、風乾し、試料とした。ホモジナイザー容器に試料およびリン酸水素二ナトリウム緩衝液に2.5重量%のTriton X―100(商品名)(ポリオキシエチレン−p−t−オクテルフェニルエーテル類)を添加した抽出緩衝液(pH7.2)300μリットルを加え、冷却しながらホモジナイズした。粗抽出液をマイクロ遠心管に移し、遠心分離(10,000rpm,5min)し、上澄みを抽出液とした。リン酸水素二ナトリウム緩衝液50mMに5,5′−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)0.26mM添加した反応液I(pH7.2)1.5mリットル、上記抽出液50μリットルおよびヨウ化アセチルチオコリン0.16mM水溶液からなる反応液IIを50μリットル順次加え、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌した後すぐにセルに移し、420nmにおける吸光度を分光光度計で測定した。1分間当たりの吸光度変化のうち、値の近い3つの値の平均値を採用した。その結果を図1に示す。このグラフから、ハエ混入ビールを25℃に維持した場合には、ハエの混入から14日まではコリンエステラーゼ活性が低下し、それ以降はほとんど活性を認めることができなかったことから、ハエの混入が、ビール製造中のものか出荷後のものであるか容易に判定することができるが、ハエ混入ビールを4℃に維持した場合には、コリンエステラーゼ活性は、ハエの混入から14日までは低下したが、14日を過ぎると再度上昇を示した。例えば、コリンエステラーゼ活性0.15(Absorbance/min)は、浸漬日数11日と21日の2点で現われ、浸漬日数を確定することができなかった。【0013】実施例1試料として、イエバエ(体長7〜8mm)を用い、4℃および25℃において、ビールに0、7、14日間浸漬した試料を取り出し、イオン交換水で軽く水洗後、デシケータ内で試料を1日乾燥させた。乾燥後イエバエ全体を、X線分析顕微鏡(XGT−2700 堀場製作所製)を用いて、条件XGT経 : 100μm 電圧 : 30kV電流 : 1.0mA mode : P4のもと、分析時間5000秒で蛍光X線分析をし、検出されたK(カリウム)とS(硫黄)をマッピングした。結果を図2および図3に示した。この結果、タンパク質等に含まれるS(硫黄)は浸漬日数により変化は認められなかったが、K(カリウム)は1週間程度で体表面から漏出することが確認された。【0014】実施例2試料として、イエバエ(体長7〜8mm)を用い、4℃および25℃において、ビールに0、1、2、3、7、14、30日間浸漬した試料を、頭部、胸部および、腹部に区別して取り出し、イオン交換水で軽く水洗後、デシケータ内で試料を1日乾燥させた。乾燥後、実施例1と同様のX線分析顕微鏡を用いて、実施例1と同様の条件下で蛍光X線分析をした。各部所の大きさおよびその検出時間は、頭部 : 0.5mm×0.5mm 50秒胸部 : 1.0mm×1.0mm 50秒腹部 : 1.0mm×1.0mm 50秒であった。検出されたカリウム量(K)および硫黄量(S)からK/Sを求めた。得られた結果は、図4〜6に示す通りである。図4は頭部、図5は胸部、図6は腹部について各浸漬期間のK/Sを求め、ビールの維持温度4℃、25℃に分けてスポットし、グラフとしたものである。各スポットはいずれも5回の実験を繰り返しK/Sを求め、その平均値により示した。この結果、イエバエの、頭部、腹部、胸部のいずれのK/Sをとっても、浸漬期間1〜2日と、7日以降、特に14日以降では明確に区別することができ、しかもこの傾向は、保存温度によって大きく影響されないことが明らかとなった。【0015】【発明の効果】本発明により、食品の保存環境に関係なく、ビール等の食品中で発見された昆虫の該食品への混入時期を、簡便に、高精度に、非破壊で安全に判定する方法を提供することができた。【図面の簡単な説明】【図1】ハエについて、コリンエステラーゼ活性の経時変化を示すグラフである。【図2】イエバエのカリウム強度の経時変化を示す図である。【図3】イエバエの硫黄強度の経時変化を示す図である。【図4】イエバエ頭部のK/Sについて、その経時変化を示すグラフである。【図5】イエバエ胸部のK/Sについて、その経時変化を示すグラフである。【図6】イエバエ腹部のK/Sについて、その経時変化を示すグラフである。 食品中に混入し死亡した昆虫中に含まれるカリウム量(K)および硫黄量(S)を蛍光X線分析法により測定し、(カリウム量)÷(硫黄量)(以下、K/Sという。)の値から、昆虫が食品中に混入し死亡した時期を判定することを特徴とする食品中に存在する昆虫の死亡時期の判定方法。 食品がビールであることを特徴とする請求項1記載の食品中に存在する昆虫の死亡時期の判定方法。 昆虫がハエであることを特徴とする請求項1又は2記載の食品中に存在する昆虫の死亡時期の判定方法。


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