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タイトル:特許公報(B2)_油中ガス分析による油入変圧器の診断方法
出願番号:2002366172
年次:2009
IPC分類:H01F 27/00,G01N 33/28,G01R 31/00


特許情報キャッシュ

塚尾 茂之 小川 吉晴 JP 4315675 特許公報(B2) 20090529 2002366172 20021218 油中ガス分析による油入変圧器の診断方法 東京電力株式会社 000003687 株式会社明電舎 000006105 橋本 剛 100096459 塚尾 茂之 小川 吉晴 20090819 H01F 27/00 20060101AFI20090730BHJP G01N 33/28 20060101ALI20090730BHJP G01R 31/00 20060101ALI20090730BHJP JPH01F27/00 BG01N33/28G01R31/00 H01F 27/00 G01N 33/28 G01R 31/00 特公平06−087448(JP,B2) 登録実用新案第3081717(JP,U) 特開2000−241401(JP,A) 5 2004200348 20040715 14 20051012 酒井 朋広 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、油入変圧器の油中ガスを分析することによって変圧器の異常の有無を判断する診断方法に関するものである。【0002】【従来の技術】油入変圧器の保守管理技術の一環として、油中ガス分析を適用して変圧器の異常の有無と診断を行う方法があり、この方法は変圧器の運転中の状態で容易に行えることで実用化され、稼働中の変圧器に適用されて事故防止に役立っている。【0003】油中ガス分析による保守管理の方法は、変圧器の内部に異常があって放電や過熱が発生していると、絶縁油が分解して分解ガスを発生しているので、その絶縁油を採油して絶縁油中に含まれるガス成分を分析することによって異常を診断するものである。その際、油中ガス分析による保守管理基準としては、電気協同研究会第54巻第5号(その1)油入変圧器の保守管理にまとめられており、電力会社他多数のユーザーでこの指針に基づいて運用されている。【0004】ガス成分としては窒素(N2)、酸素(O2)、水素(H2)、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、アセチレン(C2H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)が用いられ、各ガス成分の量を分析して診断に用いている。前記の各ガスのうちH2,CH4,C2H6,C2H4,C2H2,COの和を可燃性ガス総量(Total Combustible Gas:TCG)といい、放電や過熱などの異常により油が分解して発生するガス量として管理指標に用いられている。【0005】電気協同研究会の保守管理基準(非特許文献1)では、油中ガス分析結果から特定ガスの絶対量・増加量により、変圧器の状態を正常、要注意1、要注意2、異常のレベルにランク分けして図13の診断フローにより管理している。油中ガス分析結果から、図13で明らかなように異常の箇所、異常の程度、および緊急性を判断するために以下の様相診断の方法が規定されている。(1)、ガスパターンによる診断(様相診断1)(2)、組成比(異常診断図)による診断(様相診断2)(3)、特定ガスによる診断(様相診断3)(1)のガスパターンによる診断方法は、横軸に対象ガスを、縦軸には各ガスの最大値を1とし(最大値を示すガスを主導ガスと呼んでいる)、それに対する比率をプロットしてパターン図を描いてその形状により異常の内容を診断するものである。変圧器内部の異常が放電と過熱ではガスパターンが異なることが知られており、ガスパターンにより異常部位の様相を診断するものである。【0006】(2)の組成比による診断方法は、特定ガスとしてのC2H2,C2H4とC2H6のガス量の比率から異常現象の内容を判断するもので、異常診断表や異常診断図としてまとめられている。異常診断図はC2H4/C2H6の比率を横軸に、縦軸にC2H2/C2H4およびC2H2/C2H6の比率をプロットして診断を行うもので、放電と過熱の判別や放電のうちアーク放電と部分放電を区別することができる。【0007】(3)の特定ガスによる診断は、異常内容を診断する上で極めて特定なガスに着目して診断する方法で、その代表的なガスとしてCO,CO2,C2H2などを適用する。例えば絶縁紙が過熱する場合には炭酸ガスの発生割合が多くなるのでCO2/CO≦3の場合には絶縁紙が過熱していると診断する。【0008】【非特許文献1】社団法人 電気協同研究会「電気協同研究」第54巻第5号(その1)油入変圧器の保守管理 発行 平成12年2月【0009】【非特許文献2】「絶縁油の局部過熱による分解ガスの挙動」月岡他(電気学会論文誌A98巻7号昭和53年)【0010】【発明が解決しようとする課題】油入変圧器の保守管理の面からは、油中ガス分析により異常が検出された場合、どの箇所でどの程度の異常があり今後どうなるかが重要であり、特に鉄心系の異常(変圧器を構成する鉄心や構造材で発生するもので、異常箇所が主回路と電気的回路に接続されていないため、直接変圧器の停止に結びつかない異常)と巻線系の異常(主に変圧器を構成する巻線に関するもので、常時電圧が印加され負荷電流も流れる箇所であり、電気的事故につながり直ちに停止に至る異常)を的確に判別する必要がある。【0011】しかしながら、従来における鉄心系と巻線系の異常箇所判別の手法は、前述した(1)〜(3)の診断方法であり、水素(H2)やアセチレン(C2H2)主導のガスパターン、組成比(異常診断図)で放電の領域、CO,CO2などの特定ガスが発生すれば、巻線系の放電による異常の可能性が判断できるが、比較的低エネルギーの過熱による異常場合には、的確な判断は困難となっている。【0012】また、ガスパターンによる診断方法では、過熱モードの異常によるガスパターンは、図14〜図16に示すように鉄心系、巻線系ともエチレンやメタン主導のガスパターンであり、巻線系の異常を鉄心系の過熱の可能性が高いと誤って判断された事例も出てきている。【0013】また、異常診断図では、異常の様相が放電か過熱かの判別を行うものであり、過熱モードの異常については過熱温度の高低や放電が含まれているかの判別はできるが、異常箇所が巻線系のものか鉄心系のものかの判別は難しい。実際の診断例でも図17のように、エネルギーの大きな放電の判別はできるが、過熱モードでは鉄心系の異常と巻線系の異常では同じ領域にプロットされる例が多く判別が困難である。この理由は、過熱による分解ガスの発生は絶縁油を構成している分子が分解してガス化するものであり、過熱部の温度により分解ガスの成分は変化するが、異常部位の材料の違いによる影響は少ないためと考えられる。【0014】特定ガスによる診断では、巻線の絶縁紙過熱の診断指標としてCO,CO2を用いているが、過熱が局部である場合、CO,CO2の発生量が僅かであり、通常運転により変圧器全体の絶縁紙から発生するCO,CO2に隠れてしまい、特に大容量器では巻線系と鉄心系の判別が困難となっている。【0015】電気協同研究第54巻第5号(その1)油入変圧器の保守管理(非特許文献1)では、油中分解ガスの発生原理について理論的にまとめ、過去の文献を用いて異常箇所の過熱温度や過熱面積を推定できると記載されている。過熱温度については、絶縁油の過熱による発生ガスは温度が変わると組成が変化し、温度が高くなるほど不飽和炭化水素の割合が多くなるので、図18に示すように発生ガス中の飽和炭化水素と不飽和炭化水素の比から熱分解温度を推定できる。また、ガスの生成速度は温度が高くなるほど速くなり、過熱温度と単位面積当たりのガス生成速度との間には図19に示すように直線関係があり、一定時間毎にガス分析を行い、その組成比から過熱温度を推定し、生成速度から過熱面積を推定できることが述べられている。【0016】 しかしながら、電気協同研究第54巻第5号(その1)油入変圧器の保守管理では、過熱温度や加熱面積と異常個所の関係までは検討されておらず、異常個所が鉄心系であるか巻線系であるかを判別することは困難となっている。【0017】したがって本発明が目的とするところは、変圧器の異常箇所を精度よく推定できる診断方法を提供することにある。【0018】 本発明の第1は 油中ガス分析機能、データ収集機能、データ分析機能及び表示部を有する分析装置を用いて油入変圧器の絶縁油を抽出し、抽出したガス成分の中からエチレンの量、エタンの量、及び可燃ガスの総量を予め定められた周期で検出して変圧器の異常の有無を診断するものにおいて、前記分析装置により検出されたエチレンとエタンの量から等価過熱温度を演算し、複数回の可燃性ガス総量の検出値から等価過熱面積を演算し、予めモデルによる試験により等価過熱温度と等価過熱面積を指標とするXYチャート上に鉄心系の異常、及び巻線系の異常が分布する領域を示した診断図を用い、前記求めた等価過熱温度と等価過熱面積が前記診断図上のどの領域に属するかにより異常個所を特定すると共に、前記等価過熱温度と等価過熱面積が診断図上の複数領域に分布するときには、予めモデルによる試験で可燃ガス総量のトレンドパターンを求めた診断表を用意し、この診断表と前記等価加熱面積の組み合わせから異常個所を診断することを特徴としたものである。【0019】 本発明の第2は、 油中ガス分析機能、データ収集機能、データ分析機能及び表示部を有する分析装置を用いて油入変圧器の絶縁油を抽出し、抽出したガス成分の中からエチレンの量、エタンの量、及び可燃ガスの総量を予め定められた周期で検出して変圧器の異常の有無を診断するものにおいて、前記分析装置により検出されたエチレンとエタンの量からエチレンとエタンの混合比を求め、予めモデルによる試験によりエチレンとエタンの比率と等価過熱面積を指標とするXYチャート上に鉄心系の異常、及び巻線系の異常が分布する領域を示した診断図を用い、前記求めたエチレンとエタン比率と等価過熱面積が前記診断図上のどの領域に属するかにより異常個所を特定すると共に、前記エチレンとエタン比率と等価過熱面積が診断図上の複数領域に分布するときには、予めモデルによる試験で可燃ガス総量のトレンドパターンを求めた診断表を用意し、この診断表と前記等価加熱面積の組み合わせから異常個所を診断することを特徴としたものである。【0021】 本発明の第3は、前記トレンドパターンは、増加率がほぼ一定,ガス急増後に停止,ある時点から急増及び増加率が徐々に上昇することのパターン分類であることを特徴としたものである。【0022】 本発明の第4は、前記油中ガス分析による変圧器の異常の有無診断をソフトウエアに組み込み、診断結果を診断図や診断表で表示または出力して診断を行うことを特徴としたものである。【0023】 本発明の第5は、前記油中ガス分析による変圧器の異常の有無診断は、機器設置形の監視制御システム、通信回線による監視制御システム及び可搬形の分析装置の何れかにより、得られた油中ガス分析データまたは分析した結果を入力した油中ガス分析データを用いて診断を行うことを特徴としたものである。【0024】【発明の実施の形態】図1は、本発明の診断方法を可搬形分析装置に適用した実施形態を示したもので、変圧器1より採油したサンプルを変電所の現場において可搬形分析装置2によって分析する。この分析装置2は、油中ガス分析,データ収集,データ分析及び診断結果表示などの後述する機能を有しており、その解析結果は表示部3によって診断図や診断表として表示されると共に、必要に応じて印刷され出力される。【0025】図2は、機器据え付け形の監視装置に適用した実施形態を示したものである。4は変圧器に取り付けられた油中ガスセンサーで、このセンサーによって検出されたデータを監視制御システム5に送信する。監視制御システム5には、図1で示す分析装置と同様の分析・解析機能が組み込まれており、その結果は表示部3で表示することでオンラインの監視が可能となる。【0026】図3は、油中ガスセンサー4によって検出されたデータを、伝送装置6により通信回線を介して監視制御システム5に伝送する実施形態を示したものである。この場合における監視制御システム5の機能は、図2のものと同様であるが、何れの場合においても、油中ガス分析データを蓄積する方法はオンラインだけでなく、採油した後に分析機関において油中ガス分析を行い、その結果を記憶部に入力して蓄積する方法でもよい。監視制御システムに本発明による診断方法を組み込むことにより機器の運転履歴等との比較が容易となり、異常箇所判別の精度を高めることが出来る。【0027】【実施形態1】等価過熱面積と等価過熱温度による診断方法電気協同研究第54巻第5号(その1)油入変圧器の保守管理では、前記のように異常箇所の過熱温度や過熱面積を過去の文献のデータにより推定できるとされているので、モデル実験や内部点検などにより異常箇所が判っている変圧器のガス分析データを基に、対象器の油中ガス分析のデータから過熱温度と過熱面積を推定してその関係から、異常箇所が鉄心系か巻線系かを判別する。以下に判別のための方法を示す。【0028】等価過熱温度の推定過熱温度の推定はエチレン(不飽和炭化水素)とエタン(飽和炭化水素)ガスの比を用い、文献の実験テータから(1)式により計算する。【0029】T=320×1og(C2H4/C2H6)十530 ……… (1)出典:「絶縁油の局部過熱による分解ガスの挙動」月岡他(電気学会論文誌A98巻7号昭和53年)、(非特許文献2)での実験モデルの形状と実器の異常箇所の違いにより、実器の過熱温度が必ずしも(1)式と同一になるとは限らないので、(1)式で求めた過熱温度を本発明では等価過熱温度と呼ぶ。【0030】等価過熱面積の推定等価過熱面積は可燃性ガス総量の増加率と変圧器の油量および過熱温度と単位時間単位面積当たりのガス生成速度の関係から算出する。可燃性ガス総量の増加率は、油中ガス分析のデータをそれ以前に行った値との差分より(2)式で計算できる。【0031】C=△TCG/△D×30 ………… (2)ここでC:TCG増加率(ppm/月)、△TCG:TGCガス量の差分(ppm)、△D:油分析データの間隔(日)過熱面積Sは次式で計算できる。【0032】S=(Qoil×C×10-3)/(30×24×K) ……… (3)ここで、Qoil:変圧器油量(Lit)、C:可燃性ガス発生量(ppm/月)、 K:単位面積単位時間当たりのガス生成速度(ml/cm2/h)何単位面積単位時間当たりのガス生成速度Kは文献1のデータを用いて以下の計算式を使用する。【0033】Log(K)=14−12000/(T+273) T>562Log(K)=5.5−4900/(T+273) 562>T>285Log(K)=1.2−2500/(T+273) T<285……… (4)過熱温度の時と同様に、実器の単位面積単位時間当たりのガス生成量が必ずしも(4)式と同一になるとは限らないので、本発明では(3)式で求めた過熱面積を等価過熱面積または過熱面積係数と呼ぶ。【0034】等価過熱温度と等価過熱面積による判別異常箇所が鉄心系か巻線系かの判別は、油中ガス分析データより前記計算式で計算した等価過熱温度と等価過熱面積の関係をグラフにプロットし、モデル実験や過去の事例から算出した範囲と比較して行う。図4に鉄心系および巻線系のモデル実験により求めた、等価過熱温度と等価過熱面積の取り得る範囲を示す。ここで○印で示す鉄心系は、鉄心の材料であるけい素鋼板に関する局部過熱について実験を行ったものであり、■印で示す巻線系一1は、変圧器巻線の並列導体間の接触による過熱、および◆印で示す巻線系ー1は主回路リード線の緩みによる過熱の実験、×印で示す巻線系一2は厚い絶縁氏に包まれた細いリード線(抑振シールドリード線)の過熱について実験を行ったものである。【0035】実験結果によると鉄心系の異常によるガス発生では、等価過熱温度が高く等価過熱面積が小さい範囲に分布しており、実験モデルの過熱による等価過熱温度と等価過熱面積は図4の領域一Aに分布している。巻線系一1の過熱によるガス発生では図4の領域一Bに分布しており、鉄心系に比べ等価過熱温度が低く等価過熱面積が低い範囲になっており、鉄心系と巻線系とで有意差が認められる。巻線系一2の場合には図4の領域一Cに分布しており、巻線系一1の場合よりさらに等価過熱温度が低く、等価過熱面積が広くなっている。【0036】また、過去に油中ガス分析による診断で異常が認められ、内部点検や解体調査により異常箇所が明らかになった変圧器について、等価過熱温度と等価過熱面積の関係をプロットした結果を図5に示す。図5において領域一A〜領域一Cは、モデル実験で得られた領域を示す。過去の事例では、図5に見られるようにサンプル数は少ないが、鉄心系と巻線系でモデル実験のときと同様な有意差が認められる。【0037】このように、鉄心系と巻線系で等価過熱面積と等価過熱温度の関係に有意差が認められるのは、鉄心系の異常の場合には、薄いけい素鋼板の局部で過熱するため、面積が小さく鉄板への熱伝導も悪いため過熱温度が高く過熱面積が小さくなる傾向にあり、一方巻線系の異常の場合には、熱伝導がよい銅線を絶縁紙で包んでいる構造のため、過熱面積が広く過熱温度が低い傾向にあると考えられる。【0038】以上の結果を基に、図6で示す等価過熱温度と等価過熱面積による本発明の診断図を作成し、油中ガス分析により異常の認められた変圧器について、等価過熱温度と等価過熱面積を計算して診断図にプロットすることにより、異常箇所が鉄心系か巻線系かを判別する方法を実用化できる。【0039】【実施形態2】ガス比率(エチレン/メタン比)と過熱面積係数による診断等価過熱温度と等価過熱面積による診断図の等価過熱温度は、(1)式で示されるようにエチレン/メタン比(C2H4/C2H6比)から計算しており、診断図として直接C2H4/C2H6比を用いても同じように鉄心系と巻線系の判別を行うことができる。この方法による実施形態を図7に示す。【0040】【実施形態3】ガス発生のトレンドおよび等価過熱面積による診断等価過熱面積と等価過熱温度による診断により、鉄心系と巻線系の判別精度を向上することができるが、鉄心系と巻線系で領域が重なっている部分があり、また鉄心系でも二重接地の場合には広い範囲に分布することが考えられる。そこでガス発生のトレンドと等価過熱面積の閾値の組み合わせによる診断方法を用いることにより、さらに鉄心系と巻線系の判別精度を向上することができる。ガス発生トレンドの例を図8〜図12に示す。ここで図8〜図10はモデル実験で得られたデータであり、図11,12は実器のデータ例を示す。図の点線は可燃性ガス総量(TCG濃度)の変化を示し、実線は月当たりの可燃性ガス総量の増加率を示す。【0041】モデル実験結果では、巻線系においては図8のように可燃性ガス総量の増加率が徐々に拡大する傾向が認められ、一方、鉄心系では図9,図10に示すようにある時点で油中分解ガスが急増したり、停止したりする現象が認められた。また、過去にガス分析で異常があり、内部点検や解体調査により異常箇所が明らかになった変圧器についても、巻線系では、図11に示すように可燃性ガス総量の増加率が徐々に増加していき、鉄心系では、図12に示すようにガス発生が急増して停止するなどモデル実験と同様な傾向が認められた。【0042】鉄心系と巻線系でガス発生のトレンドに違いがあるのは以下のように説明できる。巻線系の異常は巻線の並列素線間の接触による異常やリード線接続部の接触不良によるものであり、巻線には電圧が印加され負荷電流が流れているので異常箇所が過熱し、絶縁紙の黒化や銅線の溶損により異常が進展してガス発生量が徐々に大きくなる傾向が強い。一方、鉄心系の異常では直接電圧の印加や電流が流れる箇所でなく、絶縁されていた箇所が接触して循環電流が流れて過熱するなど急激なガス発生になる傾向が強く、また鉄心の材料であるけい素鋼板は板厚が薄く異常箇所が溶損すると循環電流の経路が無くなり、ガス発生が停止する傾向がある。【0043】これらの事実から、可燃性ガス総量のトレンドまたは可燃性ガス総量の増加率から、ガス発生のトレンドを、a.増加率がほぼ一定b.ガス急増後に停止c.ある時点から急増d.増加率が徐々に上昇のパターンに分類することにより、鉄心系と巻線系の判別に使用できる。このうち、dの増加率が徐々に拡大する場合が巻線系である可能性が高いが、より精度を高めるため上記した「診断の実施形態1」の方法により算出した等価過熱面積係数の閾値を越えた場合に、巻線系であると判定する。また、鉄心系についてはガス発生のトレンドがa〜cの場合となるが、過熱面積係数の閾値以下であれば鉄板に関係する鉄心系の可能性が高いと判断する。過熱面積係数の閾値はデータの蓄積により決定するが、例えばモデル実験において得られた鉄板に関係する鉄心系の等価過熱面積の最大値O.2cm2を用いることができる。【0044】表1に本発明のガス発生トレンドと過熱面積係数を組み合わせた診断表の例を示す。【0045】【表1】【0046】【実施形態4】診断ソフトヘの組み込み上記した診断方法を、油中ガス分析データを蓄積して油入変圧器の診断を行うソフトウエアを図1〜3の分析装置2又は監視制御システム5に組み込み、等価過熱温度と等価過熱面積またはエチレン/エタン比と等価過熱面積による診断図やガス発生トレンドと等価過熱面積による診断表を用いて異常箇所の診断を行うことができる。【0047】図13で示す従来の電気協同研究会の様相診断による診断に、本発明による異常箇所の判別方法を追加して診断を行うことで、油入変圧器の保守管理を精度よく行うことができる。【0048】【発明の効果】(1)以上のとおり、従来では主として油中ガス分析結果の絶対値による診断であったものを、本発明においては、以前の採油データと比較したガス増加率やその変化を用い、異常箇所の過熱温度や過熱面積を推定して実験や過去の事例と比較することや、ガス発生の変化(トレンド)に注目して診断する方法であり、異常箇所の様相診断として異常箇所の判別精度を向上させることができる。(2)等価過熱温度等価過熱面積による診断は、グラフ上に油中ガス分析結果から計算した指標をプロットする方法であり、油中ガス分析データから異常箇所の様相(過熱温度、過熱面積)を推定できるとともに、診断結果を図示できるので目視により容易に異常の様相を判断することができる。(3)油中ガス分析結果のトレンドをパターン化して等価過熱面積の閾値と組み合わせた診断表を用いることにより、異常箇所の原因(鉄板に関係する鉄心の異常、二重接地による異常、巻線系の異常)を判別することができる。(4)本発明の診断方法は、油入変圧器の診断ソフト監視装置などに組み込み易く、従来の方法とともに診断ソフトに組み込んで運用することにより、油中ガス分析による保守管理の適正化を図ることができる。(5)異常箇所の判別の精度が向上することにより、巻線系の異常の場合には早い段階での改修を行うことにより、事故の未然防止を図ることができる。(6)油中ガス分析により異常を検出した後の油分析の追跡インターバルを、異常箇所の状況に応じた適切な間隔(電気的事故に結びつく可能性の高い巻線系の追跡インターバルを短く、変圧器の停止に結びつかない鉄心系の追跡インターバルを長くする)にすることができ、保守費用の低減と保守管理レベルの適正化を図ることができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の実施形態を示す構成図。【図2】本発明の他の実施形態を示す構成図。【図3】本発明の他の実施形態を示す構成図。【図4】モデル実験における等価過熱面積と等価過熱温度の関係図。【図5】過去の事例における等価過熱面積と等価過熱温度の関係図。【図6】等価過熱面積と等価過熱温度による診断図。【図7】エチレン/メタン比と過熱面積係数による診断図。【図8】巻線系の増加率拡大の例図。【図9】鉄心系の増加率急増後停止の例図。【図10】鉄心系の増加率一定の例図。【図11】実器による巻線系の増加率拡大図の例図。【図12】実器による鉄心系の急増後の停止の例図。【図13】油中ガス分析による診断フロー図。【図14】鉄心系のガスパターン例図。【図15】巻線系のガスパターン例図。【図16】巻線系のガスパターン例図。【図17】異常診断図による診断例図。【図18】過熱温度とガス成分図。【図19】過熱温度とガス生成量の関係図。【符号の説明】1…変圧器2…分析装置3…表示部4…油中ガスセンサー5…監視制御システム6…伝送装置 油中ガス分析機能、データ収集機能、データ分析機能及び表示部を有する分析装置を用いて油入変圧器の絶縁油を抽出し、抽出したガス成分の中からエチレンの量、エタンの量、及び可燃ガスの総量を予め定められた周期で検出して変圧器の異常の有無を診断するものにおいて、前記分析装置により検出されたエチレンとエタンの量から等価過熱温度を演算し、複数回の可燃性ガス総量の検出値から等価過熱面積を演算し、予めモデルによる試験により等価過熱温度と等価過熱面積を指標とするXYチャート上に鉄心系の異常、及び巻線系の異常が分布する領域を示した診断図を用い、前記求めた等価過熱温度と等価過熱面積が前記診断図上のどの領域に属するかにより異常個所を特定すると共に、前記等価過熱温度と等価過熱面積が診断図上の複数領域に分布するときには、予めモデルによる試験で可燃ガス総量のトレンドパターンを求めた診断表を用意し、この診断表と前記等価加熱面積の組み合わせから異常個所を診断することを特徴とした油中ガス分析による油入変圧器の診断方法。 油中ガス分析機能、データ収集機能、データ分析機能及び表示部を有する分析装置を用いて油入変圧器の絶縁油を抽出し、抽出したガス成分の中からエチレンの量、エタンの量、及び可燃ガスの総量を予め定められた周期で検出して変圧器の異常の有無を診断するものにおいて、前記分析装置により検出されたエチレンとエタンの量からエチレンとエタンの混合比を求め、予めモデルによる試験によりエチレンとエタンの比率と等価過熱面積を指標とするXYチャート上に鉄心系の異常、及び巻線系の異常が分布する領域を示した診断図を用い、前記求めたエチレンとエタン比率と等価過熱面積が前記診断図上のどの領域に属するかにより異常個所を特定すると共に、前記エチレンとエタン比率と等価過熱面積が診断図上の複数領域に分布するときには、予めモデルによる試験で可燃ガス総量のトレンドパターンを求めた診断表を用意し、この診断表と前記等価加熱面積の組み合わせから異常個所を診断することを特徴とした油中ガス分析による油入変圧器の診断方法。 前記トレンドパターンは、増加率がほぼ一定,ガス急増後に停止,ある時点から急増及び増加率が徐々に上昇することのパターン分類であることを特徴とした請求項1又は2記載の油中ガス分析による油入変圧器の診断方法。 前記油中ガス分析による変圧器の異常の有無診断をソフトウエアに組み込み、診断結果を診断図や診断表で表示または出力して診断を行うことを特徴とした請求項1乃至3の何れかに記載の油中ガス分析による油入変圧器の診断方法。 前記油中ガス分析による変圧器の異常の有無診断は、機器設置形の監視制御システム、通信回線による監視制御システム及び可搬形の分析装置の何れかにより、得られた油中ガス分析データまたは分析した結果を入力した油中ガス分析データを用いて診断を行うことを特徴とした請求項1乃至4の何れかに記載の油中ガス分析による油入変圧器の診断方法。


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