タイトル: | 特許公報(B2)_逆浸透膜供給水の評価方法及び水処理装置の運転管理方法 |
出願番号: | 2002362543 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C02F 1/44,B01D 61/10,B01D 71/56,G01N 15/08 |
新井 伸説 一柳 直人 JP 4082202 特許公報(B2) 20080222 2002362543 20021213 逆浸透膜供給水の評価方法及び水処理装置の運転管理方法 栗田工業株式会社 000001063 重野 剛 100086911 新井 伸説 一柳 直人 20080430 C02F 1/44 20060101AFI20080410BHJP B01D 61/10 20060101ALI20080410BHJP B01D 71/56 20060101ALI20080410BHJP G01N 15/08 20060101ALI20080410BHJP JPC02F1/44 DB01D61/10B01D71/56G01N15/08 A C02F 1/44 B01D 61/10 B01D 71/56 G01N 15/08 特開平01−191038(JP,A) 特開昭56−150403(JP,A) 特開2003−275760(JP,A) 特開2004−113939(JP,A) 3 2004188387 20040708 8 20051004 須藤 康洋 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、逆浸透膜供給水の評価方法及び逆浸透膜装置を含む水処理装置の運転管理方法に関する。詳しくは、本発明は、逆浸透膜の透過流束の低下を招くことなく、長期間にわたって逆浸透膜装置を安定して運転するための逆浸透膜供給水の評価方法と、この評価結果に基づいて水処理装置の運転を適正に管理する方法に関する。【0002】【従来の技術】逆浸透膜は溶質の阻止率が高いため、逆浸透膜処理により清澄な透過水を得ることができるという優れた利点を有する。しかし、その一方で、処理の継続に伴い膜の透過流束が低下し、操作圧力が上昇するため、この場合には、膜性能を回復させるために、運転を停止して逆浸透膜を洗浄する処理が必要となる。【0003】従来においては、逆浸透膜を用いて水処理を行う場合、このような膜洗浄頻度を低減して、処理効率を高めるために、逆浸透膜装置への供給水を、JIS K3802に定義されているファウリングインデックス(FI)、又はASTM D4189に定義されているシルトデンシティインデックス(SDI)や、より簡便な評価方法として谷口により提案されたMF値(Desalination,vol.20,p.353−364,1977)で評価し、この値が規定値以下となるように必要に応じて前処理を実施し、逆浸透膜供給水をある程度清澄にすることにより、逆浸透膜装置における透過流束の低下や操作圧力の上昇などの障害を避け、安定運転を継続する方法が実施されている。【0004】FI値、SDI値、MF値はいずれも逆浸透膜供給水を0.45μmの精密濾過膜(通常、日本ミリポア株式会社の「ミリポアフィルター」を用いることが多い。)で濾過したときの所定の濾過時間を測定し、この測定値に基いて算出されるものである。従来、これらの評価に用いられているミリポアフィルターは、セルロース系(ニトロセルロースとセルロースアセテートとの混合エステル)メンブレンフィルターである。【0005】【非特許文献1】Desalination,vol.20,p.353−364,1977【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、FI値又はSDI値やMF値が規定値以下の逆浸透膜供給水であっても、逆浸透膜において透過流束の低下や操作圧力の上昇が早期に発生する場合があった。【0007】即ち、従来のFI値、SDI値又はMF値の評価は、原水中のSSを捕捉することにより、これを濾過時間に反映することができるため、SSに基く逆浸透膜供給水としての良否の判定には有効であるが、原水中の溶解性の汚れ成分を濾過時間に反映しない。このため、溶存物質の化学的相互作用に基く逆浸透膜供給水としての良否を的確には判定できない。【0008】このため、逆浸透膜における透過流束の低下、操作圧力の上昇を防ぎ、長期間にわたって安定に運転を継続し、水質の良好な透過水を得ることのできる逆浸透膜供給水の評価方法、及び運転管理方法が求められていた。【0009】本発明は、逆浸透膜の透過流束の低下、操作圧力の上昇を招くことなく、長期間にわたって逆浸透膜装置を安定して運転するための、逆浸透膜供給水の評価方法と、逆浸透膜装置を含む水処理装置の運転管理方法を提供することを目的とする。【0010】【課題を解決するための手段】 本発明の逆浸透膜供給水の評価方法は、逆浸透膜装置に供給される水の逆浸透膜供給水としての良否を評価する方法において、ポリアミド系メンブレンフィルターを用いて逆浸透膜供給水の濾過を継続し、所定量毎の濾過時間を測定し、濾過開始時の濾過時間に対する濾過時間の増加割合を調べ、濾過水量の増加と共に、この所定量毎の濾過時間が増加する水を逆浸透膜供給水としては好ましくないと評価することを特徴とする。【0011】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、逆浸透膜の透過流束が低下する原因は、原水(逆浸透膜供給水)に含まれる懸濁固形物(SS)による物理的閉塞作用だけでなく、原水に含まれる溶存物質による化学的相互作用(吸着、イオン結合など)も影響を及ぼすことを知見した。特に、近年、酢酸セルロース系逆浸透膜に代って、主流となってきたポリアミド系逆浸透膜は、脱塩率が高い上に有機物質の除去性にも優れ、界面活性剤等の有機系溶存物質を化学的相互作用により捕捉することもあるため、これらの溶存物質による影響によっても透過流束が低下する。【0012】本発明は、ポリアミド系メンブレンフィルターの特徴を利用して、原水中の溶存物質の化学的相互作用による影響を評価するものである。【0013】本発明の逆浸透膜供給水の評価方法によれば、逆浸透膜供給水をポリアミド系メンブレンフィルターに通水することにより、逆浸透膜供給水中のSSによる物理的閉塞作用と溶存物質による化学的相互作用の影響とを十分に評価して逆浸透膜供給水としての良否を的確に判定することができる。【0014】 本発明の水処理装置の運転管理方法は、このような本発明の逆浸透膜供給水の評価方法により逆浸透膜供給水の良否を評価し、その結果に基いて、前処理装置の運転条件を変更する、新たな前処理を追加する、又は逆浸透膜装置の洗浄頻度を変更するものであり、的確な評価結果に基いて逆浸透膜装置における透過流束の低下や操作圧力の上昇などの障害を引き起こすことなく、長期にわたり安定な運転を継続することができる。【0015】【発明の実施の形態】以下に本発明の逆浸透膜供給水の評価方法及び水処理装置の運転管理方法の実施の形態を詳細に説明する。【0016】本発明で用いるポリアミド系メンブレンフィルターの材質や細孔径には特に制限はなく、例えばポリアミド、6ナイロン、66ナイロンなどよりなり、0.45μm、0.2μmなどの公称孔径を有するメンブレンフィルターを用いることができる。これらの中でも、ポリアミド系逆浸透膜に近い材質であること、また従来法との比較という観点より、公称孔径0.45μmのポリアミド系メンブレンフィルターが好適である。【0017】本発明の評価方法においては、評価に用いるポリアミド系メンブレンフィルターの細孔径よりも小さな細孔径を有する膜を用いて逆浸透膜供給水を前濾過し、逆浸透膜供給水中のSSを十分に除去した後、ポリアミド系メンブレンフィルターに通水しても良く、このようにすることにより、逆浸透膜供給水に含まれる溶存物質の化学的相互作用の影響をより一層確実に評価することができる。【0018】この場合、前濾過用の膜の種類や材質に特に制限はなく、例えば種類としては精密濾過膜、限外濾過膜など、材質としてはセルロースアセテート(CA)、ポリスルホン(PS)、ポリアクリルニトリル(PAN)などを挙げることができる。【0020】 本発明においては、後述の実施例のようにポリアミド系メンブレンフィルターを用いて逆浸透膜供給水の濾過を継続し、所定量毎の濾過時間を測定し、濾過開始時の濾過時間に対する濾過時間の増加割合を調べる。【0021】本発明の逆浸透膜供給水の評価方法においては、逆浸透膜供給水をポリアミド系メンブレンフィルターに通水して求めた濾過抵抗(濾過時間)に、従来のMF値と同様に換算係数を乗じ、水温による換算を行うようにしても良い。また、このようにして、逆浸透膜供給水をポリアミド系メンブレンフィルターに通水した際の濾過抵抗を求めると共に、従来法のFI値、SDI値、MF値を求め、これらの結果を併用して評価を行うようにしても良い。【0022】このような本発明の逆浸透膜供給水の評価方法が適用される逆浸透膜の材質に特に制限はなく、例えば、ポリアミド系逆浸透膜、セルロースエステル系逆浸透膜、ポリスルホン系逆浸透膜、ポリイミド系逆浸透膜などを挙げることができる。逆浸透膜の形態にも特に制限はなく。相転換膜、複合膜のいずれにも用いることができる。これらの中で、膜支持体となる限外濾過膜にポリスルホンを用い、緻密層に架橋ポリアミド、線状ポリアミド、ポリピペラジンアミドなどを用いたポリアミド系逆浸透膜を好適に用いることができる。【0023】本発明の逆浸透膜供給水の評価方法が適用される逆浸透膜装置の膜モジュールの種類にも特に制限はなく、例えばスパイラルモジュール、中空糸モジュール、平面膜モジュール、管型モジュールなども挙げることができる。【0024】本発明の水処理装置の運転管理方法においては、このような本発明の逆浸透膜供給水の評価方法により、逆浸透膜供給水をポリアミド系メンブレンフィルターに通水して逆浸透膜供給水の良否を評価し、その結果に基いて逆浸透膜装置を含む水処理装置の運転を管理する。この運転管理方法に特に制限はなく、例えば、前処理装置の運転条件を変更する、新たな前処理を追加する、逆浸透膜装置の洗浄頻度を変更するなどが挙げられる。【0025】【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。【0026】[評価例1]実施例1機械工場の排水処理設備出口水を用いて、試験を実施した。まず、この排水処理設備出口水を、細孔径0.2μmのカートリッジフィルタ(アドバンテック東洋(株)製「TCR020」)で精密濾過した。濾過水3Lを、直径47mm、細孔径0.45μmのポリアミド系メンブレンフィルター(SartoriusCo.製「SARTOLON POLYAMID」)を用い、500mmHgで減圧濾過し、濾過に要する時間を500mL毎に、6回に分けて計測した。【0027】0〜0.5L,0.5〜1L,1〜1.5L,1.5〜2L,2〜2.5L,2.5〜3Lの濾過に要した時間を、それぞれT1,T2,T3,T4,T5,T6とし、T1に対するT1〜T6の比をそれぞれMFF1(=T1/T1),MFF2(=T2/T1),MFF3(=T3/T1),MFF4(=T4/T1),MFF5(=T5/T1),MFF6(=T6/T1)として評価した。【0028】MFF1〜6の値は表1に示す通りであった。【0029】比較例1実施例1と同じ機械工場の排水処理設備出口水を、実施例1と同様に精密濾過し、濾過水3Lを、直径47mm、細孔径0.45μmのセルロース系メンブレンフィルター(Millipore Co.製「ミリポアフィルタHAWP」)を用いて濾過したこと以外は実施例1と同様にしてMFF1〜6の値を求めた。【0030】MFF1〜6の値は表1に示す通りであった。【0031】【表1】【0032】表1に見られるように、ポリアミド系メンブレンフィルターを用いた場合(実施例1)には、MFFの値は濾過水量の増加と共に増加したが、従来法であるMF法やFI法で用いられるセルロース系メンブレンフィルターを用いた場合(比較例1)には、MFF値は、3Lの濾過水量の範囲で、濾過水量が増加してもほぼ一定であった。【0033】実施例1及び比較例1と同じ機械工場の排水処理設備出口水を、実施例1及び比較例1と同様に精密濾過した後、ポリアミド系逆浸透膜(日東電工(株)製「NTR759HR」)に25℃、圧力1.5MPaで通水した。このときの透過流束は図1に示す通りであり、通水開始直後0.74m/d、24時間後0.51m/d、60時間後0.46m/dであった。【0034】表1及び図1の結果から、次のことが明らかである。【0035】即ち、図1に示す如く、試験に用いた排水処理設備出口水の精密濾過水は、透過流束の経時上昇を引き起こすものであり、逆浸透膜供給水としては好ましくない。しかし、比較例1の従来法ではMFF値は濾過水量が増加してもほぼ一定であり、この評価方法であれば、この排水処理設備出口水は逆浸透膜供給水としては良好であると評価される。これに対して、ポリアミド系メンブレンフィルターを用いた実施例1の評価方法では、MFF値が濾過水量の増加と共に増加するため、この排水処理設備出口水は逆浸透膜供給水として好適ではなく、逆浸透膜装置における透過流束の経時低下が予想される。【0036】[評価例2]実施例2実施例1と同じ機械工場の排水処理設備出口水を、粒状活性炭(栗田工業(株)製「WG160 20/42」)を充填したカラムに通水して吸着処理し、その吸着処理水を細孔径0.2μmのカートリッジフィルタ(アドバンテック東洋(株)製「TCR020」)で精密濾過した。濾過水3Lを、直径47mm、細孔径0.45μmのポリアミド系メンブレンフィルター(Sartorius Co.製「SARTOLON POLYAMID」)を用いて濾過することにより、実施例1と同様にしてMFF1〜6の値を求めた。【0037】MFF1〜6の値は表2に示す通りであった。【0038】比較例2実施例1と同じ機械工場の排水処理設備出口水を、実施例2と同様に吸着処理及び精密濾過し、濾過水3Lを、直径47mm、細孔径0.45μmのセルロース系メンブレンフィルター(Millipore Co.製「ミリポアフィルタHAWP」)を用いて濾過したこと以外は実施例1と同様にしてMFF1〜6の値を求めた。【0039】MFF1〜6の値は表2に示す通りであった。【0040】【表2】【0041】表2に見られるように、ポリアミド系メンブレンフィルターを用いた場合(実施例2)も、従来法であるMF法やFI法で用いられるセルロース系メンブレンフィルターを用いた場合(比較例2)も、MFFの値はいずれも3Lの濾過水量の範囲で、濾過水量が増加してもほぼ一定であった。ただし、ポリアミド系メンブレンフィルターを用いた実施例2では、MFF値のわずかな増加が認められる。【0042】実施例2及び比較例2と同じ機械工場の排水処理設備出口水を実施例2及び比較例2と同様に吸着処理及び精密濾過した後、ポリアミド系逆浸透膜(日東電工(株)製「NTR759HR」)に25℃、圧力1.5MPaで通水した。このときの透過流束は図1に示す通りであり、通水開始直後1.07m/d、24時間後0.94m/d、60時間後0.92m/dであった。【0043】表2及び図1の結果から、次のことが明らかである。【0044】即ち、図1に示す如く、試験に用いた排水処理設備出口水の活性炭吸着及び精密濾過水は、透過流束の経時上昇の小さいものであり、逆浸透膜供給水としては比較的好ましいものである。これに対して、実施例2でも比較例2でもMFF値は濾過水量が増加してもほぼ一定であり、いずれも逆浸透膜供給水として好適であるとの評価結果となる。ただし、実施例2においては、濾過水量の増加と共にMFF値がわずかに増加しており、この結果から、図1における透過水量の若干の経時低下を予測することができる。【0045】【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の逆浸透膜供給水の評価方法によれば、逆浸透膜供給水をポリアミド系メンブレンフィルターを用いて評価することにより、逆浸透膜供給水としての良否を的確に評価することができる。そして、このようなポリアミド系メンブレンフィルターを用いた評価結果に基いて運転管理を行う本発明の水処理装置の運転管理方法によれば、逆浸透膜装置において高透過流束を維持することができ、長期にわたり安定した運転を継続することができる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1,2及び比較例1,2における逆浸透膜装置の透過流束の経時変化を示すグラフである。 逆浸透膜装置に供給される水の逆浸透膜供給水としての良否を評価する方法において、ポリアミド系メンブレンフィルターを用いて逆浸透膜供給水の濾過を継続し、所定量毎の濾過時間を測定し、濾過開始時の濾過時間に対する濾過時間の増加割合を調べ、濾過水量の増加と共に、この所定量毎の濾過時間が増加する水を逆浸透膜供給水としては好ましくないと評価することを特徴とする逆浸透膜供給水の評価方法。 請求項1において、該逆浸透膜供給水を、該ポリアミド系メンブレンフィルターの細孔径よりも小さな細孔径を有する膜を用いて前濾過した後、該ポリアミド系メンブレンフィルターに通水することを特徴とする逆浸透膜供給水の評価方法。 逆浸透膜装置を含む水処理装置の運転を管理する方法において、請求項1又は2に記載の逆浸透膜供給水の評価方法により、該逆浸透膜装置に供給される水の良否を評価し、この評価結果に基づいて、前処理装置の運転条件を変更する、新たな前処理を追加する、又は逆浸透膜装置の洗浄頻度を変更することを特徴とする水処理装置の運転管理方法。