タイトル: | 特許公報(B2)_高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤 |
出願番号: | 2002354478 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A23L 1/304,A61K 33/06,A61K 47/12 |
浦野 輝男 小林 和也 JP 4390245 特許公報(B2) 20091016 2002354478 20021206 高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤 村樫石灰工業株式会社 000203047 秋元 輝雄 100062225 浦野 輝男 小林 和也 20091224 A23L 1/304 20060101AFI20091203BHJP A61K 33/06 20060101ALI20091203BHJP A61K 47/12 20060101ALI20091203BHJP JPA23L1/304A61K33/06A61K47/12 A23L 1/304 A61K 33/06 A61K 47/12 特開2001−204383(JP,A) 特開2000−224971(JP,A) 特開2002−010765(JP,A) 特開平02−119761(JP,A) 特開平10−014535(JP,A) 特表2002−510477(JP,A) 国際公開第02/069743(WO,A1) 5 2004182698 20040702 36 20051107 飯室 里美 【0001】【産業上の利用分野】 本発明は食品、栄養補助食品、健康食品のカルシウム、マグネシウム強化素材として適した高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤に関する。【0002】【従来の技術】 カルシウム、マグネシウムは人体の構成成分として重要な役割を担っており、その他生命活動に必要な各種生理作用、酵素作用、代謝調節作用などと密接に関わっている。【0003】 カルシウムは体重の1〜2%を占めるほど大量に存在し、体内で最も貯量が多いミネラルであり、その99%は骨、歯に存在している。骨はカルシウムの貯蔵庫になっており、形成と溶出を繰り返しながら血中のカルシウム濃度を一定に保っている。成長期には骨の形成が溶出を上回り、骨の貯量は増え続け最大骨量に達するが、カルシウム摂取量が不足すると溶出量が増え骨がもろくなっていく。これが慢性的に続くと骨粗鬆症の原因となる。女性にあっては、閉経期後にカルシウムの吸収率が大きく低下するので、骨からのカルシウム溶出が大きくなり骨粗鬆症になりやすい傾向にある。【0004】 マグネシウムは成人体内に約25g含まれ、4番目に貯量が多いミネラルである。その60〜65%は骨に含有され、残りは軟組織、しかもその大部分は細胞内液中に分布して生命の維持に不可欠な生理作用を担っている。【0005】 カルシウム、マグネシウムは体内で拮抗作用があるので、摂取には注意を要する。つまり、どちらか一方のミネラルを摂りすぎると他のミネラルの吸収、代謝を妨げる作用がある。カルシウムだけを多く取りすぎると、心筋梗塞、狭心症などの発症率が高くなるということもいわれている。このような拮抗作用、危険性を防ぐためにカルシウム:マグネシウムを2:1の割合でバランス良く摂取することが推奨されている。【0006】 カルシウム、マグネシウムなどの栄養欠乏症の予防を主眼として、1日に必要な摂取量が年齢別、男女別、妊婦及び授乳婦別に「第6次改定日本人の栄養所要量」に示されている。それによれば、18〜29歳男性のカルシウム所要量は700mg、マグネシウム所要量は310mg、同じく女性は600mg、250mg、30〜49歳男性のカルシウム所要量は600mg、マグネシウム所要量は320mg、同じく女性は600mg、260mgとなっている。【0007】 しかしカルシウム、マグネシウムを豊富に含む食品は限られている。例えば、カルシウムを多く含む食品は乳製品、小魚、海藻、豆類などで、マグネシウムを多く含む食品は海藻、ナッツ類などである。しかも、所要量を充足させるにはそれらの食品を大量に摂取しなければならない。また精白、精製加工によりカルシウム、マグネシウムが減少するため、精製加工食品の多い現代の食生活ではカルシウム、マグネシウム摂取不足に陥っている。【0008】 したがってカルシウム、マグネシウムが強化された食品、栄養補助食品、健康食品を意図的に摂取しなければならない。カルシウム、マグネシウム強化素材としては炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、貝カルシウム、卵殻カルシウム、ドロマイト、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどがある。しかし、これら素材はいずれも水に難溶性である。【0009】 塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩は水への溶解度は高いが、強い苦味を有するためカルシウム、マグネシウム強化剤としては好ましくない。【0010】 有機酸カルシウムとしては、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウムなどがあるがそれぞれ溶解度が0.1g/100ml、3.5g/100g、5.0g/100mlと低く、また水に完全溶解するのに比較的時間がかかることから、溶解を促進させる目的で加熱したり、酸を加えたりするので扱いに手間がかかるのが現状である。【0011】 一方、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウムなどの有機酸マグネシウムの溶解度はそれぞれ7.3g/100ml、13.2g/100mlと比較的高い。【0012】 特開昭56−97248号公報には、クエン酸カルシウム単独よりも溶解度の増したクエン酸カルシウム・リンゴ酸カルシウム複合体の製造方法が開示されている。クエン酸カルシウムにリンゴ酸カルシウムを共存させることにより、従来のクエン酸カルシウムの3倍以上溶解性が増すが、溶解度にすれば20℃で0.5g/100ml程度である。特開平9−286732号公報には、有機酸のカルシウム塩と有機酸のアルカリ金属塩とを含有する溶解速度が改善されたカルシウム強化剤が開示されているが、溶解度が増したことは示されていない。【0013】 特開2000−224971号公報には、乳酸とグルコン酸を1:9〜9:1の重量比で配合してなる配合物とカルシウム原料、マグネシウム原料を水存在下で中和反応させることにより製造する溶解性の高いカルシウム剤とマグネシウム剤の製造方法が開示されている。特開2002−10765号公報には、ドロマイト又は水難溶性又は水不溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩の混合物と、α−オキシモノカルボン酸もしくはその塩又はそれらの水溶液およびオキシポリカルボン酸もしくはその塩又はそれらの水溶液とを混合することで得られる溶解安定性が良いドロマイト溶液又は、カルシウム及びマグネシウム溶液が開示されている。【0014】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤を提供することを目的とする。【0015】【課題を解決するための手段】 本発明に係わる高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤は、アルカリ性カルシウム原料、又はアルカリ性カルシウム原料及びアルカリ性マグネシウム原料の混合物と、重量比がグルコン酸:アジピン酸=70〜40:30〜60である混酸または重量比がグルコン酸:フマル酸=80〜50:20〜50である混酸を水媒質下で中和反応させた中和物であることを特徴とする。【0016】 中和反応した水溶液を乾燥、例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥することにより、粉末状の高水溶性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤が得られる。【0017】 グルコン酸とアジピン酸の重量比は、好ましくはグルコン酸:アジピン酸=80〜20:20〜80の範囲、さらに好ましくはグルコン酸:アジピン酸=70〜40:30〜60の範囲が適当である。【0018】 グルコン酸とフマル酸の重量比は、好ましくはグルコン酸:フマル酸=80〜20:20〜80の範囲、さらに好ましくはグルコン酸:フマル酸=80〜50:20〜50の範囲が適当である。【0019】(削除)【0020】(削除)【0021】 本発明に使用できるアルカリ性カルシウム原料、アルカリ性マグネシウム原料並びに有機酸は、化学品グレードのものでもよいが、食品添加物や食品として販売されているグレードのものがより好ましい。カルシウム原料には炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムから選ばれる1種又は2種以上、マグネシウム原料には炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及びドロマイトなどから選ばれる1種又は2種以上を用いることができるが、有機酸・カルシウム・マグネシウム組成物を調製するにはドロマイトを使用するのが好ましい。なぜならドロマイトは炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムを主成分とする鉱石で、カルシウム:マグネシウムを2:1の重量比で含有する食品素材だからである。よって、カルシウム原料とマグネシウム原料を予め混合する手間を省いて有機酸との中和反応に用いることができ、容易に高水溶性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤を得ることができる。カルシウム原料、マグネシウム原料は、粗粒のままでも使えるが反応効率上微粒化させたものが良い。有機酸については、グルコン酸、乳酸は一般に溶液状で、アジピン酸、フマル酸は粉末状で販売されている。【0022】 中和反応させる上で、これら原料を加える順番は特に限定しない。例えばアルカリ性カルシウム原料、アルカリ性マグネシウム原料水懸濁液に有機酸混酸水溶液を添加する方法、またあらかじめ有機酸混酸水溶液を調製してアルカリ性カルシウム原料、アルカリ性マグネシウム原料を粉末で加えるなどの方法があるが、後者の方が好ましい。炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩をカルシウム原料、マグネシウム原料とする場合は有機酸との中和反応で二酸化炭素が発生し発泡するので、ふきこぼれないよう注意が必要である。また反応温度も特に限定しないがアジピン酸、フマル酸が室温では溶解しにくいのと、アルカリ性カルシウム原料、アルカリ性マグネシウム原料と有機酸の反応効率を上げるために50〜100℃に加熱しながら反応させると良い。【0023】 本発明に使用する有機酸であるグルコン酸、乳酸、アジピン酸、フマル酸それぞれの分子量、有機酸とアルカリ性カルシウム原料、アルカリ性マグネシウム原料との中和反応式を表1に示す。【0024】【表1】【0025】 以下実施例、参考例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、それによって本発明が限定されるものではない。本実施例、参考例及び比較例のカルシウム原料、マグネシウム原料、有機酸は主に試薬を用いた。その原料を表2に示す。【0026】【表2】【0027】【実施例】[実施例1〜3及び参考例1〜3及び比較例1、2] 本実施例は、ドロマイトと、グルコン酸とアジピン酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を噴霧乾燥して得られる高水溶性のグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物に関するものである。ドロマイトと、グルコン酸又はアジピン酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物は比較例である。【0028】 ドロマイトM−W5(No.1)10g中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(1)、(7)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表3に配合割合を示した。【0029】【表3】【0030】 中和反応の操作は、混酸とドロマイトの中和反応の場合、まず所定量のグルコン酸溶液と水を混合し粉末形態のアジピン酸を加え、攪拌しながら80〜90℃に加熱溶解し有機酸混酸水溶液を調製した。次に攪拌下にある有機酸混酸水溶液に、ドロマイトを添加し5時間中和反応させた。グルコン酸、アジピン酸単独とドロマイトを反応させる場合は、所定量の有機酸と水を混合し、後は上述した同様の操作で中和反応を行った。反応容器には500ml容量の三角フラスコを、攪拌にはマグネチックスターラーを用い、加熱は恒温槽に反応容器を浸漬する方法で行った。反応中の水分蒸発を防ぐため、反応容器には冷却管を付けた。中和反応後、ガラス繊維濾紙を用いて吸引濾過し、中和反応水溶液を得た。得られた中和反応水溶液は、EDTA滴定法によりカルシウム、マグネシウムを測定し、その値を表4に示した。なお表中の「%」はすべて「重量%」である。(以下同じ)【0031】【表4】【0032】 表4中のカルシウム、マグネシウム理論値とは、配合した原料水の損失が一切ないことを前提とし、配合した原料総重量から反応により生成する二酸化炭素を差し引き、生成する水を加えた水溶液に、ドロマイト由来のカルシウム、マグネシウムが有機酸と完全に中和反応し、溶存する状態の値である。これは、測定値からドロマイト中のカルシウム、マグネシウムと有機酸の反応率を推定するために示してある。表中には、理論値よりもカルシウム、マグネシウムの値が若干高くなっているものがあるが、それは実験誤差や分析誤差によるものと思われる。参考例1〜3及び実施例1までは100%近くカルシウム、マグネシウムと有機酸が反応していると思われるが、混酸中のアジピン酸量が50%近くになるにつれ中和反応水液中のカルシウムが低下している。これは、中和反応により生成した有機酸・カルシウムの溶解度が低いため、反応中に沈殿を起こし、中和反応水溶液を得るための濾過により除去されたためではないかと推定される。【0033】 中和反応水溶液は噴霧乾燥機(スプレードライヤ)にて粉末化しグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物を得た。スプレードライヤの運転条件は、アトマイザ回転数を2,5000〜3,5000回転、熱風入口温度150〜165℃、排風出口温度を80〜85℃とした。この運転条件を変えることにより、得られる粉末組成物の粒径、含有水分を変えることができる。得られた粉末組成物についてカルシウム、マグネシウム、粒径、水分及び溶解度を測定した。カルシウム、マグネシウムはEDTA滴定法により測定した。粒径は組成物をスライドグラス上に微量採取し、光学顕微鏡の視野内で無作為に10粒子選び、それぞれの粒径を接眼ミクロメーターで測定した。粒径の結果はその10粒子の粒径の範囲を示した。水分は120℃、4時間の乾燥により求めた。それらの測定結果を表5に示す。【0034】【表5】【0035】 噴霧乾燥により得られたグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の溶解度を測定した。溶解度の測定法は、室温で水に粉末組成物を過剰量添加し2時間攪拌溶解した。その後、濾紙により静置濾過しそれぞれの組成物の飽和溶液を得た。得られた飽和溶液中のカルシウム、マグネシウムをEDTA滴定法により測定し、その値を、用いた有機酸組成から生成する有機酸カルシウム、有機酸マグネシウムとしての値に換算し、乾物組成物の溶解度として表6及び図1に示した。図1は縦軸に溶解度を、横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるアジピン酸濃度を%で示した。横軸の0%はグルコン酸単独を、100%はアジピン酸単独を示す。【0036】【表6】【0037】 比較例1、2で得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水に対する溶解度はそれぞれ、5.2g/100ml、13.8g/100mlである。これに対して本実施例で得られたグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の溶解度は、表6及び図1からわかるように、有機酸重量比がグルコン酸:アジピン酸=80:20から急激に増加し、実施例1(グルコン酸:アジピン酸=64.16:35.84)で極大点を有し、アジピン酸重量比が80%付近になるまで比較例よりも高い溶解度値を示している。つまり、高水溶性のグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物はドロマイトと、グルコン酸とアジピン酸を80:20〜20:80の重量比で配合した混酸を水媒質下で中和反応させ得られた中和反応水溶液を、噴霧乾燥することにより得られる。【0038】[参考例4〜6及び実施例4〜7及び比較例1、3] 本実施例は、ドロマイトと、グルコン酸とフマル酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる高水溶性のグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物に関するものである。ドロマイトと、グルコン酸又はフマル酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物は比較例である。【0039】 ドロマイト(No.1)中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(1)、(10)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表7に配合割合を示した。【0040】【表7】【0041】 上述した方法で中和反応水溶液を調製し、水溶液中に含まれるカルシウム、マグネシウムを測定し、表8に示した。【0042】【表8】【0043】 参考例4〜5及び実施例4〜7まではカルシウム、マグネシウムがほぼ100%反応していると思われるが、グルコン酸とフマル酸の混酸に占めるフマル酸量が40%を超える参考例6以降では、カルシウム含有量が理論値に比べて極端に低くなっている。【0044】 中和反応水溶液は、参考例1〜3及び実施例1〜3と同様に噴霧乾燥(スプレードライヤ)にて粉末化しグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物を得た。その粉末組成物のカルシウム、マグネシウム含有量、粒径、水分を表9に示す。【0045】【表9】【0046】 粉末組成物の溶解度を表10及び図2に示す。図2の横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるフマル酸の濃度を%で示した。横軸の0%はグルコン酸単独で、100%はフマル酸単独を示す。【0047】【表10】【0048】 比較例1、3で得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水に対する溶解度はそれぞれ5.2g/100ml、7.7g/100mlである。これに対して本実施例で得られたグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の溶解度は、表10及び図2からわかるようにグルコン酸:フマル酸=80:20付近で急激に溶解度が増加し、実施例5(グルコン酸:フマル酸=73.45:26.55)で極大点を迎える。その後低下し、フマル酸重量比が80%で比較例1の溶解度とほとんど差がなくなる。つまり、高水溶性のグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウムはドロマイトと、グルコン酸とフマル酸を80〜20:20〜80の重量比で配合した混酸を水媒質下で中和反応させ得られた中和反応水溶液を、噴霧乾燥することにより得られる。【0049】[参考例7〜10及び比較例2、4] 本例は、ドロマイトと、乳酸とアジピン酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる高水溶性の乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物に関するものである。ドロマイトと、乳酸又はアジピン酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物は比較例である。【0050】 ドロマイト(No.1)中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(4)、(7)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表11に配合割合を示した。【0051】【表11】【0052】 上述した方法で中和反応水溶液を調製し、水溶液中に含まれるカルシウム、マグネシウムを測定し、表12に示した。【0053】【表12】【0054】 参考例7〜9まではカルシウム、マグネシウムがほぼ100%反応していると思われるが、乳酸とアジピン酸の混酸に占めるアジピン酸含有量が76%を超えるとカルシウム含有量が低下した。【0055】 中和反応水溶液は、参考例1〜3および実施例1〜3と同様に噴霧乾燥(スプレードライヤ)にて粉末化し乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物を得た。その粉末組成物のカルシウム、マグネシウム含有量、粒径、水分を表13に示す。【0056】【表13】【0057】 粉末組成物の溶解度を表14及び図3に示す。図3の横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるアジピン酸の濃度を重量%で示した。横軸の0%は乳酸単独で、100%はアジピン酸単独を示す。【0058】【表14】【0059】 比較例2、4で得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水に対する溶解度はそれぞれ13.8g/100ml、10.6g/100mlである。これに対して本例で得られた乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の溶解度は、表14及び図3からわかるように乳酸:アジピン酸=80:20付近で溶解度が増加しはじめ、参考例8(乳酸:アジピン酸=64.91:35.09)で極大点を迎える。その後徐々に低下し、アジピン酸重量比が80%でフマル酸単独の溶解度とほとんど差がなくなる。つまり、高水溶性の乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシ ウムはドロマイトと、乳酸とアジピン酸を80〜20:20〜80の重量比で配合した混酸を水媒質下で中和反応させ得られた中和反応水溶液を、噴霧乾燥することにより得られる。【0060】[参考例11〜14及び比較例3、4] 本例は、ドロマイトと、乳酸とフマル酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる高水溶性の乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物に関するものである。ドロマイトと、乳酸又はフマル酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物は比較例である。【0061】 ドロマイト(No.2)中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(4)、(10)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表15に配合割合を示した。【0062】【表15】【0063】 上述した方法で中和反応水溶液を調製し、水溶液中に含まれるカルシウム、マグネシウムを測定し、表16に示した。【0064】【表16】【0065】 参考例11、12ではカルシウム、マグネシウムがほぼ100%反応していると思われるが、乳酸とフマル酸の混酸に占めるフマル酸含有量が50%近くになるとカルシウム含有量が低下した。【0066】 中和反応水溶液は、参考例1〜3及び実施例1〜3と同様に噴霧乾燥(スプレードライヤ)にて粉末化し乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物を得た。その粉末組成物のカルシウム、マグネシウム含有量、粒径、水分を表17に示す。【0067】【表17】【0068】 粉末組成物の溶解度を表18及び図4に示す。図4の横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるフマル酸の濃度を重量%で示した。横軸の0%は乳酸単独で、100%はフマル酸単独を示す。【0069】【表18】【0070】 比較例3、4で得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水に対する溶解度はそれぞれ7.7g/100ml、10.6g/100mlである。これに対して本例で得られた乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の溶解度は、表18及び図4からわかるように参考例12(乳酸:フマル酸=69.96:30.04)で極大点を迎える。その後徐々に低下し、フマル酸重量比が80%で比較例4の溶解度とほとんど差がなくなる。つまり高水溶性の乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウムはドロマイトと、乳酸とフマル酸を80〜20:20〜80の重量比で配合した混酸を水媒質下で中和反応させ得られた中和反応水溶液を、噴霧乾燥することにより得られる。【0071】 以上の実施例及び参考例からわかるように、ドロマイトと、グルコン酸とアジピン酸、グルコン酸とフマル酸、乳酸とアジピン酸、乳酸とフマル酸をある特定の比率で配合した混酸から選ばれる1種の混酸を水媒質下で中和反応させて得られた中和反応水溶液を噴霧乾燥することにより得られた有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物は、理由は定かではないが、ドロマイトとグルコン酸、乳酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれる1種の有機酸単独を水媒質下で中和反応させて得られた中和反応水溶液を噴霧乾燥することにより得られた粉末組成物よりも、特異的に溶解度が増すことが判明した。つまり水に高濃度に溶解する有機酸・カルシウム・マグネシウム組成物は、ドロマイトと、グルコン酸とアジピン酸、グルコン酸とフマル酸、乳酸とアジピン酸、乳酸とフマル酸をそれぞれ80〜20:20〜80の重量比で配合してなる混酸から選ばれる1種の混酸を水媒質下で中和反応させ、噴霧乾燥することにより得ることができる。【0072】[実施例8〜9及び参考例15] 本実施例はカルシウム原料とマグネシウム原料をカルシウムとマグネシウムが重量比で2:1となるように配合した混合物と、グルコン酸とアジピン酸の混酸(実施例8)、グルコン酸とフマル酸の混酸(実施例9)及び乳酸とアジピン酸の混酸(参考例15)それぞれを水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる高水溶性の有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物に関する。【0073】 本実施例及び参考例に使用したカルシウム原料、マグネシウム原料、有機酸は表2の通りである。【0074】 カルシウム原料、マグネシウム原料混合物に含まれるカルシウム、マグネシウム含量のモル換算値と、表1の中和反応式(1)〜(5)、(7)〜(9)及び(11)〜(12)とから中和反応に要する有機酸を算出し表19に示した。表19中の有機酸モル比はカルシウム1モルとマグネシウム1モル、計2モルに対するモル比で示した。【0075】【表19】【0076】 上述した方法で中和反応水溶液を調製し、水溶液中に含まれるカルシウム、マグネシウムを測定し、表20に示した。【0077】【表20】【0078】 カルシウムとマグネシウムが、有機酸とほぼ100%反応していることがわかる。【0079】 中和反応水溶液は、参考例1〜3及び実施例1〜3と同様に噴霧乾燥(スプレードライヤ)にて粉末化し有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物を得た。その粉末組成物のカルシウム、マグネシウム含有量、粒径、水分を表21に示す。【0080】【表21】【0081】 粉末組成物の溶解度を表22及び図5〜7に示す。図5〜7において横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるアジピン酸又はフマル酸濃度を重量%で示した。なお、溶解度の比較には比較例1〜4の値を用いた。【0082】【表22】【0083】 表22及び図5〜図7の結果からわかるように、カルシウム原料、マグネシウム原料の混合物と、グルコン酸とアジピン酸の混酸、グルコン酸とフマル酸の混酸、乳酸とアジピン酸の混酸と、水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥することにより得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の溶解度は、カルシウム、マグネシウムを重量比で約2:1で含有するドロマイトと、グルコン酸(比較例1)、アジピン酸(比較例2)、フマル酸(比較例3)、乳酸(比較例4)の有機酸単独と水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥することにより得られる有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物よりも高い。【0084】[実施例10〜11及び参考例16〜17及び比較例5〜8] これらの実施例はカルシウム原料と、グルコン酸とアジピン酸の混酸(実施例10)、グルコン酸とフマル酸の混酸(実施例11)、乳酸とアジピン酸の混酸(参考例16)及び乳酸とフマル酸の混酸(参考例17)を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる高水溶性の有機酸・カルシウム粉末組成物に関する。カルシウム原料と、グルコン酸、乳酸、アジピン酸及びフマル酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる有機酸・カルシウム粉末組成物は比較例である。本実施例に使用したカルシウム原料、有機酸は表2の通りである。【0085】 カルシウム原料に含まれるカルシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(1)、(3)、(4)、(5)、(7)、(8)、(10)、(12)から、中和反応に要する有機酸を算出し表23のように配合割合を示した。配合割合のモル比は、カルシウム1モルを中和するのに要する有機酸のモル比で示した。【0086】【表23】【0087】 上述した方法で中和反応水溶液を調製し、水溶液中に含まれるカルシウムを測定し、表24に示した。【0088】【表24】【0089】 中和反応水溶液は、実施例1〜3及び参考例1〜3と同様に噴霧乾燥(スプレードライヤ)にて粉末化し有機酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物を得た。その粉末組成物のカルシウム、マグネシウム含有量、粒径、水分を表25に示す。【0090】【表25】【0091】 粉末組成物の溶解度を表26及び図8(実施例10)、図9(実施例11)、図10(参考例16)及び図11(参考例17)に示す。図において、横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるアジピン酸又はフマル酸濃度を重量%で示した。【0092】【表26】【0093】 表26及び図8〜図11の結果からわかるように、カルシウム原料と、グルコン酸とアジピン酸の混酸、グルコン酸とフマル酸の混酸、乳酸とアジピン酸の混酸及び乳酸とフマル酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥して得られる有機酸・カルシウム粉末組成物の溶解度は、カルシウム原料とグルコン酸、乳酸、アジピン酸、フマル酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液を、噴霧乾燥することにより得られた有機酸・カルシウム粉末組成物よりも高い。【0094】 前述の実施例1〜11及び参考例1〜17のようにカルシウム原料、又はカルシウム原料とマグネシウム原料の混合物と、グルコン酸とアジピン酸の混酸、グルコン酸とフマル酸の混酸、乳酸とアジピン酸の混酸、乳酸とフマル酸の混酸から選ばれる1種の混酸を水媒質下で中和反応させ、噴霧乾燥することにより得られる有機酸・カルシウム組成物及び有機酸・カルシウム・マグネシウム組成物は水に高濃度に溶解することから、水媒質下で中和反応させる際に水の量を調整して反応を行い不溶解分を濾過することにより、有機酸・カルシウム、有機酸・カルシウム・マグネシウムを高濃度に含有する高濃度有機酸・カルシウム水溶液組成物及び高濃度有機酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物を得ることができる。以下に水溶液組成物に関する実施例及び比較例を示し説明する。【0095】[参考例18〜19及び実施例12〜15及び比較例9、10] 本実施例は、ドロマイトと、グルコン酸とアジピン酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる高濃度有機酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物に関する。ドロマイトと、グルコン酸又はアジピン酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液は比較例である。【0096】 ドロマイトM−W5(No.1)10g中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(1)、(7)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表27に配合割合を示した。有機酸の配合モル比は、カルシウム1モルとマグネシウム1モル、計2モルに対する値で示した。水の配合割合は、高濃度グルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物調製後、沈殿が生じる水量より若干多めに設定してある。【0097】【表27】【0098】 上述した方法で中和反応を行い、不溶解分を濾過して高濃度グルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物を得た。得られた水溶液組成物中のカルシウム、マグネシウムを測定し、その値を、配合に用いた有機酸から生成する有機酸・カルシウム・マグネシウムに換算しその濃度を表28及び図12に示した。図12の縦軸にグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム濃度を、横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるアジピン酸濃度を重量%で示した。【0099】【表28】【0100】 比較例9、10の水溶液組成物に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度はそれぞれ18.9%、10.3%であるが、本実施例で得られた高濃度グルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度は、表28及び図12からもわかるように有機酸重量比がグルコン酸:アジピン酸=80:20付近から増加しており、実施例12(グルコン酸:アジピン酸=72.85:27.15 で)極大を迎えている。その後ゆるやかに濃度が減少し、グルコン酸:アジピン酸=20:80になった時点で比較例9とほぼ同じ濃度になった。【0101】[参考例20〜22及び実施例16〜19及び比較例9、11] 本実施例は、ドロマイトと、グルコン酸とフマル酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる高濃度グルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物に関する。ドロマイトと、グルコン酸又はフマル酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液は比較例である。【0102】 ドロマイト(No.1)中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(1)、(10)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表29に配合割合を示した。【0103】【表29】【0104】 上述した方法で中和反応を行い、不溶解分を濾過して高濃度グルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物を得た。得られた水溶液組成物中のカルシウム、マグネシウムを測定し、その値を、配合に用いた有機酸から生成する有機酸・カルシウム・マグネシウムに換算しその濃度を表30及び図13に示した。図13の縦軸にグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム濃度を、横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるフマル酸濃度を重量%で示した。【0105】【表30】【0106】 比較例9、11の水溶液組成物に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度はそれぞれ18.9%、7.7%であるが、本実施例で得られた高濃度グルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度は、表30及び図13からもわかるように有機酸重量比がグルコン酸:フマル酸=80:20付近から急激に増加しており、実施例17(グルコン酸:フマル酸=73.45:26.55)で極大を迎えている。その後減少し、グルコン酸:フマル酸=20:80付近で比較例9とほぼ同じになった。【0107】[参考例23〜26及び比較例10、12] 本例は、ドロマイトと、乳酸とアジピン酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる高濃度乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物に関する。ドロマイトと、乳酸又はアジピン酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液は比較例である。【0108】 ドロマイト(No.1)中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(4)、(7)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表31に配合割合を示した。【0109】【表31】【0110】 上述した方法で中和反応を行い、不溶解分を濾過して高濃度乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物を得た。得られた水溶液組成物中のカルシウム、マグネシウムを測定し、その値を、配合に用いた有機酸から生成する有機酸・カルシウム・マグネシウムに換算し、その濃度を表32及び図14に示した。図14の縦軸に乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム濃度を、横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるアジピン酸濃度を%で示した。【0111】【表32】【0112】 比較例10、12の水溶液組成物に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度はそれぞれ10.3%、14.0%であるが、本例で得られた高濃度乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度は、表32及び図14からもわかるように、有機酸重量比が乳酸:アジピン酸=80:20付近から急激に増加しており、参考例25(乳酸:アジピン酸=45.13:54.87)で極大を迎えている。その後減少し、乳酸:アジピン酸=20:80になった時点で比較例12とほぼ同じになった。【0113】[参考例27〜30及び比較例11、12] 本例は、ドロマイトと、乳酸とフマル酸の混酸を水媒質下で中和反応させて得られる高濃度乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物に関する。ドロマイトと、乳酸又はフマル酸単独を水媒質下で中和反応させて得られる中和反応水溶液は比較例である。【0114】 ドロマイト(No.2)中のカルシウム、マグネシウムのモル換算値と、表1の中和反応式(4)、(10)から中和反応に要する有機酸量を算出し、表33に配合割合を示した。【0115】【表33】【0116】 上述した方法で中和反応を行い、不溶解分を濾過して高濃度乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物を得た。得られた水溶液組成物中のカルシウム、マグネシウムを測定し、その値を、配合に用いた有機酸から生成する有機酸・カルシウム・マグネシウムに換算しその濃度を表34及び図15に示した。図15の縦軸に乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム濃度を、横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるフマル酸濃度を%で示した。【0117】【表34】【0118】 比較例11、12の水溶液組成物に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度はそれぞれ7.7%、14.0%であるが、本実施例で得られた高濃度有機酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれる有機酸・カルシウム・マグネシウム濃度は、表34及び図15からもわかるようにフマル酸濃度が増すにつれて徐々に高くなり、参考例28(乳酸:フマル酸=69.96:30.04)で極大を迎えている。その後減少し、乳酸:アジピン酸=20:80になった時点で比較例12ほぼと同じ濃度となった。【0119】 以上の参考例18〜30及び実施例12〜19からわかるように、ドロマイトと、グルコン酸とアジピン酸、グルコン酸とフマル酸、乳酸とアジピン酸及び乳酸とフマル酸をある特定の重量比で配合した混酸から選ばれる1種の混酸とを水媒質下で中和反応させて、不溶解分を濾過することにより得られる水溶液組成物は、理由は定かではないが、ドロマイトと、グルコン酸、乳酸、アジピン酸、フマル酸から選ばれる1種の有機酸とを水媒質下で中和反応させて得られる水溶液よりも、高濃度に有機酸・カルシウム・マグネシウムを含有することができる。つまり高濃度有機酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物はドロマイトと、グルコン酸とアジピン酸、グルコン酸とフマル酸、乳酸とアジピン酸、乳酸とフマル酸をそれぞれ80〜20:20〜80の重量比で配合して成る混酸から選ばれる1種の混酸を水媒質下で中和反応させることにより得ることができる。【0120】 表24の中和反応水溶液のカルシウム測定値からわかるように、比較例5〜8では理論値に比べ極端に低い値となっている。これは、カルシウム原料と有機酸単独の中和反応により生成する有機酸・カルシウムが、水への溶解度が低いことから反応中沈殿を起こし、濾過により除去されたためと推定される。すなわち、比較例5〜8により得られた中和反応水溶液は、有機酸・カルシウムの飽和溶液に近い濃度になっていると思われる。また、カルシウム原料と有機酸混酸を水媒質下で中和反応することにより得られた中和反応水溶液も、理論値よりも低い値を示している。これも上述した理由によると思われ、飽和溶液に近い濃度となっているはずである。そこで、参考例18〜30及び実施例12〜19のように水の量を減じた配合で改めて調製せず、表24のカルシウムの測定値を、用いた有機酸組成から生成する有機酸・カルシウム濃度に換算し図16(グルコン酸とアジピン酸の混酸)、図17(グルコン酸とフマル酸の混酸)、図18(乳酸とアジピン酸の混酸)、図19(乳酸とフマル酸の混酸)に示した。図16〜19の縦軸に有機酸・カルシウム濃度を、横軸に中和反応で用いた有機酸混酸に含まれるアジピン酸又はフマル酸濃度を%で示した。【0121】 図16〜図19の結果からわかるように、カルシウム原料と、グルコン酸とアジピン酸の混酸、グルコン酸とフマル酸の混酸、乳酸とアジピン酸の混酸、乳酸とフマル酸の混酸を水媒質下で中和反応させて、不溶解分を濾過することにより得られる中和反応水溶液には、カルシウム原料と、グルコン酸、乳酸、アジピン酸、フマル酸単独と水媒質下で中和反応させて、不溶解分を濾過することにより得られる中和反応水溶液よりも高濃度に有機酸・カルシウムを含んでいる。つまり、高濃度有機酸・カルシウム水溶液組成物はカルシウム原料と、グルコン酸とアジピン酸の混酸、グルコン酸とフマル酸の混酸、乳酸とアジピン酸の混酸、乳酸とフマル酸の混酸から選ばれる1種の混酸を水媒質下で中和反応させ、不溶解分を濾過することにより得ることができる。【0122】 高水溶性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤は、アルカリ性カルシウム原料、又はアルカリ性カルシウム原料とアルカリ性マグネシウム原料の混合物と、グルコン酸とアジピン酸の混酸、グルコン酸とフマル酸の混酸、乳酸とアジピン酸の混酸、乳酸とフマル酸の混酸から選ばれる1種の混酸を水媒質下で中和反応させること、或いは更に乾燥することにより得られるが、種類の異なる有機酸のカルシウム塩どうしの混合(混塩法)、又は有機酸・カルシウムと種類の異なる有機酸のマグネシウ ム塩を混合(混塩法)することによっても得ることができる。以下実施例及び参考例を示して説明する。【0123】 高水溶性の有機酸・カルシウム混合物、有機酸・カルシウム−有機酸・マグネシウム混合物に関する実施例及び参考例に用いた原料を表35に示す。【0124】【表35】【0125】 表35中のアジピン酸・カルシウム、フマル酸・カルシウムは実験室にて、炭酸カルシウムとアジピン酸、又はフマル酸を水媒質下で中和反応させ、得られた中和反応溶液を噴霧乾燥することにより得た。【0126】[実施例20、21] これらの実施例は、高水溶性のグルコン酸・カルシウム−アジピン酸・カルシウム混合物(実施例20)、又はグルコン酸・カルシウム−フマル酸・カルシウム混合物(実施例21)に関する。グルコン酸・カルシウムとアジピン・酸カルシウム、又はグルコン酸・カルシウムとフマル酸・カルシウムは重量比で10〜0:0〜10となるように混合した。次に20℃に設定した約100mlの水にその混合物を過剰量添加し、5時間攪拌溶解した。溶解後、濾紙により静置濾過し、得られた飽和溶液中のカルシウム、マグネシウムをEDTA滴定法により測定した。その値を用いたグルコン酸・カルシウムとアジピン酸・カルシウム、又はグルコン酸・カルシウムとフマル酸・カルシウムとしての値に乾物換算しグルコン酸・カルシウム−アジピン酸・カルシウム混合物、またはグルコン酸・カルシウム−フマル酸・カルシウム混合物の溶解度とした。溶解度を図20、21に示す。【0127】 図20、21のように、グルコン酸・カルシウムとアジピン酸・カルシウムを混合して成る混合物、又はグルコン酸・カルシウムとフマル酸・カルシウムを混合して成る混合物は、グルコン酸・カルシウム、アジピン酸・カルシウム、フマル酸・カルシウム単独よりも溶解度が増加する。【0128】[実施例22、23] これらの実施例は、高水溶性のグルコン酸・マグネシウム−アジピン酸・カルシウム混合物(実施例22)、グルコン酸・マグネシウム−フマル酸・カルシウム混合物(実施例23)に関する。グルコン酸・マグネシウムとアジピン酸・カルシウム、又はグルコン酸・マグネシウムとフマル酸・カルシウムを上述の方法と同様に混合し、溶解度を求めた。その溶解度を図22、23に示す。【0129】 図22、23に示されるように、グルコン酸・マグネシウムとアジピン酸・カルシウムの混合物、又はグルコン酸・マグネシウムとフマル酸・カルシウムの混合物は、グルコン酸・マグネシウム単独、アジピン酸・カルシウム単独、フマル酸・カルシウム単独よりも溶解度が増加する。【0130】[参考例31] これらの例は、高水溶性の乳酸・カルシウム−アジピン酸・カルシウム混合物に関する。乳酸・カルシウムとアジピン酸・カルシウムを上述の方法と同様に混合し、溶解度を求めた。その溶解度を図24に示す。【0131】 図24のように、乳酸・カルシウムとアジピン酸・カルシウムを混合して成る乳酸・カルシウム−アジピン酸・カルシウム混合物は、乳酸・カルシウム、アジピン酸・カルシウム単独よりも溶解度が増加する。【0132】[参考例32] この例は、高水溶性の乳酸・マグネシウム−フマル酸・カルシウム混合物に関する。乳酸・マグネシウムとフマル酸・カルシウムを上述の方法と同様に混合し、溶解度を求めた。その溶解度を図25に示す。【0133】 図25のように、乳酸・マグネシウムとフマル酸・カルシウムを混合して成る乳酸・マグネシウム−フマル酸・カルシウム混合物は、乳酸・マグネシウム、フマル酸・カルシウム単独よりも溶解度が増加する。【0134】【発明の効果】 本発明品は高水溶性で食品、栄養補助食品、健康食品のカルシウム、マグネシウム強化素材として適する。【図面の簡単な説明】【図1】噴霧乾燥により得られたグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水への溶解度を示す。【図2】噴霧乾燥により得られたグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水への溶解度を示す。【図3】噴霧乾燥により得られた乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水への溶解度を示す。【図4】噴霧乾燥により得られた乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水への溶解度を示す。【図5】噴霧乾燥により得られたグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水への溶解度(実施例8)を示す。【図6】噴霧乾燥により得られたグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水への溶解度(実施例9)を示す。【図7】噴霧乾燥により得られた乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム粉末組成物の室温での水への溶解度(参考例15)を示す。【図8】噴霧乾燥により得られたグルコン酸−アジピン酸・カルシウム粉末組成物の室温での水への溶解度(実施例10)を示す。【図9】噴霧乾燥により得られたグルコン酸−フマル酸・カルシウム粉末組成物の室温での水への溶解度(実施例11)を示す。【図10】噴霧乾燥により得られた乳酸−アジピン酸・カルシウム粉末組成物の室温での水への溶解度(参考例16)を示す。【図11】噴霧乾燥により得られた乳酸−フマル酸・カルシウム粉末組成物の室温での水への溶解度(参考例17)を示す。【図12】高濃度グルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれるグルコン酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム濃度を示す。【図13】高濃度グルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれるグルコン酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム濃度を示す。【図14】高濃度乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれる乳酸−アジピン酸・カルシウム・マグネシウム濃度を示す。【図15】高濃度乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム水溶液組成物中に含まれる乳酸−フマル酸・カルシウム・マグネシウム濃度を示す。【図16】高濃度グルコン酸−アジピン酸・カルシウム水溶液組成物中に含まれるグルコン酸−アジピン酸・カルシウム濃度(実施例10)を示す。【図17】高濃度グルコン酸−フマル酸・カルシウム水溶液組成物中に含まれるグルコン酸−フマル酸・カルシウム濃度(実施例11)を示す。【図18】高濃度乳酸−アジピン酸・カルシウム水溶液組成物中に含まれる乳酸−アジピン酸・カルシウム濃度を示す。【図19】高濃度乳酸−フマル酸・カルシウム水溶液組成物中に含まれる乳酸−フマル酸・カルシウム濃度を示す。【図20】混合重量比の違いによるグルコン酸・カルシウム−アジピン酸・カルシウム混合物の溶解度を示す。【図21】混合重量比の違いによるグルコン酸・カルシウム−フマル酸・カルシウム混合物の溶解度を示す。【図22】混合重量比の違いによるグルコン酸・マグネシウム−アジピン酸・カルシウム混合物の溶解度を示す。【図23】混合重量比の違いによるグルコン酸・マグネシウム−フマル酸・カルシウム混合物の溶解度を示す。【図24】混合重量比の違いによる乳酸・カルシウム−アジピン酸・カルシウム混合物の溶解度を示す。【図25】混合重量比の違いによる乳酸・マグネシウム−フマル酸・カルシウム混合物の溶解度を示す。 アルカリ性カルシウム原料、又はアルカリ性カルシウム原料及びアルカリ性マグネシウム原料の混合物と、重量比がグルコン酸:アジピン酸=70〜40:30〜60である混酸または重量比がグルコン酸:フマル酸=80〜50:20〜50である混酸を水媒質下で中和反応させた中和物であることを特徴とする高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤。 粉末化した剤であることを特徴とする請求項1記載の高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤。 アルカリ性カルシウム原料が、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムのうちから選ばれる1種又は2種以上の混合物である請求項1あるいは請求項2に記載の高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤。 アルカリ性カルシウム原料とアルカリ性マグネシウム原料の混合物が、アルカリ性カルシウム原料として炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムのうちから選ばれる1種又は2種以上の混合物と、アルカリ性マグネシウム原料として炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムのうちから選ばれる1種又は2種以上の混合物を混合したものである請求項1あるいは請求項2に記載の高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤。 アルカリ性カルシウム原料とアルカリ性マグネシウム原料の混合物が、ドロマイトである請求項1あるいは請求項2に記載の高溶解性カルシウム剤又はカルシウム・マグネシウム剤。