生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_魚由来ゼラチンペプチドの製造方法
出願番号:2002306711
年次:2009
IPC分類:A23J 3/06,A61K 35/60,A61K 38/17


特許情報キャッシュ

川原 裕之 谷端 孝之 JP 4226299 特許公報(B2) 20081205 2002306711 20021022 魚由来ゼラチンペプチドの製造方法 日本水産株式会社 000004189 川原 裕之 谷端 孝之 20090218 A23J 3/06 20060101AFI20090129BHJP A61K 35/60 20060101ALN20090129BHJP A61K 38/17 20060101ALN20090129BHJP JPA23J3/06A61K35/60A61K37/12 A23J 1/00-1/22 3/00-3/34 JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) G-Search WPI(Dialog) Food Science and Technology Abstract(Dialog) Foodline(Dialog) Foods Adlibra(Dialog) 特開2000−050811(JP,A) 国際公開第02/012408(WO,A1) 特開2001−045981(JP,A) 特開平04−252194(JP,A) 特開2003−327599(JP,A) Journal of Aquatic Food Product Technology, 1997, 6(1), p.65-77 Journal of Food Science, 2000, 65(3), p.434-438 Food Hydrocolloids, 2002, 16(1), p.25-34 4 2004141007 20040520 8 20051021 三原 健治 【0001】【産業の属する技術分野】本発明は魚由来のゼラチンペプチドの製造方法に関する。動物の組織に広く分布するタンパク質であるコラーゲンを加温によって水溶性にしたものはゼラチンと呼ばれ、医薬品、食品をはじめ多くの工業用材料として利用されている。このゼラチンの水溶液は低温下ではゲル化して固まるため、このゲル化するという性質を期待した用途には分子量が高いことが望まれるが、例えば飲料に添加する場合などにはむしろこうした性質は好まれない。コラーゲンやゼラチンの栄養学的な性質を維持したまま、高粘度あるいは低温でゲル化することを避ける目的で、ゼラチンを部分的に加水分解し、低分子化したものはコラーゲン・ペプチドまたはゼラチン・ペプチドと呼ばれる。本発明において「ゼラチンペプチド」とはゼラチンを酵素等で部分的に加水分解し、平均分子量数千程度まで低分子化した水に易溶なペプチドを指す。【0002】【従来の技術】従来、動物組織からゼラチンを抽出するためにはアルカリまたは酸による前処理を行なうのが常識で、これにより夾雑物の混入を避け、抽出効率を上昇させることができる。しかしながら、これらの処理には長時間を要したり、多くの手間がかかる場合が少なくない。動物の皮を原料とした場合には、しばしば前処理として希薄な酸溶液で浸漬され、これによって組織が軟化、膨潤することで抽出時の効率を高めている。【0003】一方、魚の皮を用いた場合にも同様の効果は認められるが、寿命が短く成長の早い魚類では組織が陸上動物ほど複雑化しないため、同処理を経由しなくても大きく抽出効率が落ちるわけではない。さらに、酸処理を経由した場合には洗浄液を十分に除去しても試料中に酸が残存するため、抽出用に真水を使用しても酸性寄りの条件下での抽出となる。こうして得られる抽出液にはコラーゲン由来成分の他にも夾雑タンパクが抽出されるため、キレート剤を加えて沈殿を生成させそれを除くなどの清澄化処理等、なんらかの精製工程を踏まなくてはならない。また、魚を原料とした場合には調整したゼラチン関連製品に独特の魚臭が残り、食品用途として用いる場合には適さない場合もある。【0004】非特許文献1には、動物組織からのゼラチンの一般的製造方法(アルカリ処理−水洗−中和−水洗−抽出−濾か−濃縮−切断−乾燥)が記載されている。非特許文献2には、「ゼラチン・コラーゲン由来食品素材の分析と開発の新展開」と題して、アルカリ処理のコラーゲンへの影響−豚、魚類の真皮を加熱すると比較的簡単にゼラチンが可溶化してくるため、洗浄した材料を酸性溶液で直接可溶化する。一方、牛の真皮は−中略−抽出効率を上げるために水酸化ナトリウムや石灰水によるアルカリ処理が行われることなどが記載されている。非特許文献3には、「コラーゲンの食品への利用展開と今後」と題して、ゼラチンを製造する場合:コラーゲンを酸あるいはアルカリであらかじめ前処理を行なう。一般的に牛原料は消石灰に2〜3ヶ月間漬けるアルカリ処理。豚原料は希塩酸などに数十時間漬ける酸処理を行う。また、コラーゲンペプチドの製法:原料はゼラチンで一般的にゼラチンはアルカリ処理ゼラチンまたは酸処理ゼラチンを用いる。加水分解:塩酸などの酸、またはタンパク質分解酵素を使用する。と記載されている。非特許文献4には、「ゼラチンの食品への利用展開と今後」と題して、ゼラチンの製造方法−これらのコラーゲン原料から、効率良く高品質のゼラチンを抽出するために、酸もしくは石灰を用いて、原料の前処理を行なう。前処理の終わった原料は水洗し、過剰の酸やアルカリを除去したのち、温水を用いて加熱し、ゼラチンを抽出する。ことが記載されている。【0005】【非特許文献1】蛋白質化学3, p453-463, 共立出版(1955)【非特許文献2】食品加工技術, vol.21, No.1, p16-21(2001)【非特許文献3】食品加工技術, vol.21, No.1, p22-27(2001)【非特許文献4】食品加工技術, vol.21, No.1, p28-33(2001)【0006】【発明が解決しようとする課題】ゼラチンペプチドは広く健康食品や一般食品に利用されているが、近年の狂牛病騒動などから牛由来製品は消費者に敬遠される傾向にあり、豚や魚への原料のシフトが進む中、魚由来製品には独特の臭い(魚臭)が残ることから、実際には広く利用されるに至っていない。これが解決されれば魚由来製品は他の動物由来製品と同等に利用価値の高いものとなる。すなわち、本発明は、より簡潔な工程で魚臭が低減された魚皮由来ゼラチンペプチドの製造を可能にすることを課題とする。【0007】【課題を解決するための手段】本発明は、魚皮を0.1〜5%の食塩水と真水により洗浄し、中性の水を用いて50〜100℃の温度で抽出し、水層を酵素処理し、濃縮し、活性炭処理し、乾燥するゼラチンペプチドの製造方法を要旨とする。洗浄水の食塩水の塩分濃度は0.5〜2%がより好ましい。魚皮は白身魚由来の魚皮が好ましく、特に好ましいのは、スケソウダラまたはマダラ等、タラ類の魚由来の皮である。魚皮としては、フィレ加工等の残滓として出る皮などが使用できる。また、真水とは、水道水、精製水など通常の水を意味する。中性の水とは積極的に酸やアルカリに調節していない水の意味であり、中性付近の水道水、精製水などが使用できる。【0008】【発明の実施の形態】着色度が低く、魚臭を低減した製品を得るためには、前処理すなわち洗浄の条件と活性炭処理を本発明に示した手順で組み合わせることが重要である。前処理としては低濃度の食塩水での洗浄が必須である。好ましくは0.1%から5%の濃度の食塩水で、2回以上の洗浄をしたのち、真水で2回以上の洗浄処理が適当であり、より好ましくは0.5%から2%の濃度の食塩水で同様に洗浄した後、真水でやはり同様に洗浄する処理が好適である。前処理後の魚皮は等倍量から10倍量程度の中性の水で抽出を行なう。中性の水で抽出することで、夾雑タンパクが同時に抽出されることをかなり避けられる。したがって清澄化処理等は必須ではなくなる。抽出の温度は50℃以上であれば特に限定されないが、好ましくは60℃〜100℃の範囲で1〜5時間程度実施するのが良い。抽出操作は単回でも良好な結果を得られるが、歩留りの向上のために抽出液を交換して2回以上抽出しても構わない。抽出後は魚種によって油を多く含むものもあるため、遠心分離等で水層のみを得る必要がある。油の少ない魚種では特にこの操作の必要はなく、好ましくは白身魚の魚皮、より好ましくはスケソウダラ、マダラ等のタラ類の魚皮を用いることで良好な抽出液が得られる。抽出液中に混入した固形分は出きるだけ取り除くことが望ましく、この目的には各種フィルターを用いたろ過や遠心分離が利用できる。【0009】次に酵素処理を行なう。タンパク質の主鎖を切断できる酵素であれば特に限定されないが、好ましくはエンド型プロテアーゼが用いられる。酵素によって適当な添加量、反応温度、反応時間が決まるが、目的ペプチドの分子量によってこの条件は制御可能である。酵素反応後は使用した酵素が失活する条件の処理を行なうが、加熱によって失活する酵素を利用すると簡便である。酵素失活処理後はペプチド溶液の濃縮を行なう。濃縮の方法は特に限定されないが、減圧下加熱を行ない水分を除去する方法が一般的で好ましい。【0010】次いで活性炭処理を行なうが、粉末状活性炭を加え一定時間撹拌した後、ろ過する方法でも良いし、カラム状に活性炭を充填した装置を通過させる処理も好適である。その後は製品の求められる性状に合わせた乾燥方法が適用できるが、粉末状の製品を得るためには凍結乾燥、噴霧乾燥が望ましい。以上の手順が必須の工程であるが、適宜塩分を除くイオン交換処理や殺菌処理等の各種工程を挿入してもよい。この方法により白色でほぼ魚臭のないゼラチンペプチドが得られ、水に溶解することでほぼ無色透明な溶液を得ることができる。本発明の製造方法による収率は、抽出温度、時間、処理回数に依存するが、従来法と比較して遜色ないものである。【0011】【実施例】本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。【0012】実施例1前処理方法のスクリーニングスケソウダラ皮約5gを表1記載の各種溶液50mlにて室温で1時間浸漬後、洗浄液を除き、水洗した後、凍結乾燥させたものについて官能評価により魚臭低減効果を評価した。魚皮洗浄による魚臭低減効果の比較の結果は表1に示すとおりであった。(評価基準は、 +:わずかに魚臭を感じる、++:弱い魚臭を感じる、+++:はっきりと魚臭を感じる 、である。)【0013】【表1】【0014】この評価を一次評価とし、評価の良かったものについて、各々水50mlで60℃、1時間抽出を行い、凍結乾燥したゼラチンを調整し、これについて同様に二次評価を行なった。洗浄処理後得たゼラチン乾燥物の臭いの評価の結果を表2に示す。(評価基準は、 +:わずかに魚臭を感じる、++:弱い魚臭を感じる、である。)表2に示されるように、前処理の洗浄液としては、0.5%、1.0%などの低濃度の食塩水が好適であることが示された。【0015】【表2】【0016】実施例2スケソウダラ魚皮を用いたゼラチンペプチドの調整スケソウダラ魚皮100gを、1.0%NaCl水1L、1.0%NaCl水0.5L、水0.5L、水0.5Lで順次洗浄し、水300ml、60℃、1時間で抽出を行なった。抽出液を濾過してアルカラーゼ(Novo Nordisk)0.1mlを加え、60℃、1.5時間、低分子化処理を行なった。反応後、10分間煮沸を行い酵素を失活させた。得られた試料液は遠心分離で不溶分を除き、減圧濃縮した。活性炭1gを加え、室温、1時間、攪拌した後、吸引濾過で活性炭を除き、凍結乾燥にてゼラチンペプチドを得た。収量8.0g(収率約8%)。【0017】実施例3前処理と活性炭処理の組み合わせの効果以下の条件において調整したゼラチンペプチドの品質を比較した。条件1: 原料洗浄処理なし、活性炭処理なし条件2: 原料洗浄(1%食塩水、水)有り、活性炭処理なし条件3: 原料洗浄処理なし、活性炭処理有り条件4: 原料洗浄(1%食塩水、水)有り、活性炭処理有り前処理と活性炭処理を除く他の工程については、実施例2と同様の条件を用いた。試料の比較はそれぞれ10%溶液を調整し、臭いについて官能評価、色については分光光度計による測定を行なった。魚臭の比較についての官能評価の結果を表3に示す。(評価基準は、±:ほとんど魚臭を感じない、+:わずかに魚臭を感じる、++:弱い魚臭を感じる、+++:はっきりと魚臭を感じる、である。)【0018】【表3】【0019】魚臭の低減効果は前処理、活性炭処理どちらか一方の場合には同程度の効果が得られるが、両者を組み合わせることで効果が非常に高くなることが分かった。図1に各ゼラチンペプチドの10%溶液の吸収スペクトルを示す。図1の吸収スペクトルの比較より、可視部吸光度が低下していることから、前処理による色調の改善、活性炭による色調の改善効果はそれぞれ認められるものの、両者を組み合わせることで改善効果が著しいことが分かった。【0020】実施例4スケソウダラ魚皮を用いたゼラチンペプチドの調整(スケールアップ)スケソウダラ魚皮1.5kgを、1.0%NaCl水10L、1.0%NaCl水5L、水5L、水5Lで順次洗浄し、水4.5L、60℃、2時間で抽出を行なった。抽出液を濾過してアルカラーゼ(Novo Nordisk)1mlを加え、60℃、1.5時間、低分子化処理を行なった。反応後、10分間煮沸を行い酵素を失活させた後、遠心分離で不溶分を除き、減圧濃縮した。活性炭15gを加え、室温、1時間、攪拌した後、吸引濾過で活性炭を除き、噴霧乾燥にてゼラチンペプチドを得た。収量72.8g(収率約4.8%*)。(*少量の実験のため乾燥装置に付着した粉末のロスにより、収率は低くなっている。)【0021】実施例5ミナミダラ魚皮を用いたゼラチンペプチドの製造ミナミダラ魚皮1kgを、1.0%NaCl水10L、1.0%NaCl水5L、水5L、水5Lで順次洗浄し、水3L、60℃、1時間で抽出を行なった。抽出液を濾過してアルカラーゼ(Novo Nordisk)0.5mlを加え、60℃、1.5時間、低分子化処理を行なった。反応後、10分間煮沸を行い酵素を失活させた後、遠心分離で不溶分を除き、減圧濃縮した。活性炭10gを加え、室温、1時間、攪拌した後、吸引濾過で活性炭を除き、噴霧乾燥にてゼラチンペプチドを得た。32.5g(収率約3.3%*)。(*少量の実験のため乾燥装置に付着した粉末のロスにより、収率は低くなっている。)【0022】実施例6トラウト魚皮を用いたゼラチンペプチドの製造トラウト魚皮100gを、1.0%NaCl水1L、1.0%NaCl水0.5L、水0.5L、水0.5Lで順次洗浄し、水300ml、60℃、1時間で抽出を行なった。遠心分離により油層を分離、除去した後、抽出液を濾過してアルカラーゼ(Novo Nordisk)0.1mlを加え、60℃、1.5時間、低分子化処理を行なった。反応後、10分間煮沸を行い酵素を失活させた。得られた試料液は遠心分離で不溶分を除き、減圧濃縮した。活性炭1gを加え、室温、1時間、攪拌した後、吸引濾過で活性炭を除き、凍結乾燥にてゼラチンペプチドを得た。収量6.7g(収率約6.7%)。【0023】実施例8各社製品との比較(官能評価など)実施例4で得られたゼラチンペプチドと他社製品( A社、B社、C社:魚由来)との品質を比較した。各々の試料は10%溶液として魚臭および色調を官能評価で比較した。結果を表4に示す。(魚臭についての評価基準は、±: ほとんど魚臭を感じない、+: わずかに魚臭を感じる、++: 弱い魚臭を感じる、+++: はっきりと魚臭を感じる、であり、色についての評価基準は、±: ほぼ無色透明、+: わずかに着色、++薄い着色、+++: はっきりと着色、である。)【0024】【表4】【0025】市販品の幾つかの製品との比較において、本製法で調整されたゼラチンペプチドは魚臭、色調とも劣ることはなく、両者を総合的に比較すると非常に良好な品質であることが分かった。【0026】【発明の効果】本発明により、食塩水、真水による洗浄、中性水による抽出、活性炭処理という簡潔な条件で魚臭が低減された魚皮由来ゼラチンペプチドの製造を可能にすることができる。本発明の製造方法は食塩水、真水による洗浄、中性水による抽出のみで行えるため、酸、アルカリなどの環境に負荷のある物質の使用しないで済む製造方法である。工程全体がシンプルなので、製造コストも低減することができる。【図面の簡単な説明】【図1】 実施例3の各ゼラチンペプチドの10%溶液の吸収スペクトルである。(#1、#2、#3、#4はそれぞれ実施例3の条件1、2、3、4のゼラチンペプチドを表わす。) 魚皮を0.1〜5%の食塩水と真水により洗浄し、中性の水を用いて50〜100℃の温度で抽出し、水層を酵素処理し、濃縮し、活性炭処理し、乾燥するゼラチンペプチドの製造方法。 洗浄水の食塩水濃度が0.5〜2%である請求項1のゼラチンペブチドの製造方法。 魚皮が白身魚由来の魚皮である請求項1または2のゼラチンペブチドの製造方法。 白身魚がタラ類の魚である請求項3のゼラチンペブチドの製造方法。


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