タイトル: | 特許公報(B2)_液中成分濃度測定装置 |
出願番号: | 2002302735 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 29/00,G01N 29/02,C25D 21/12 |
松永 和夫 松平 長久 JP 4045917 特許公報(B2) 20071130 2002302735 20021017 液中成分濃度測定装置 凸版印刷株式会社 000003193 松永 和夫 松平 長久 20080213 G01N 29/00 20060101AFI20080124BHJP G01N 29/02 20060101ALI20080124BHJP C25D 21/12 20060101ALI20080124BHJP JPG01N29/18G01N29/02C25D21/12 C G01N 29/00 - 29/52 C25D 21/00 - 21/22 G01N 9/00 - 9/36 JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) 特開2001−242148(JP,A) 特開2001−11693(JP,A) 特開平10−221312(JP,A) 特公平7−102354(JP,B2) 特開平2−116745(JP,A) 特開2000−129498(JP,A) 特公平7−109332(JP,B2) 特開平10−267726(JP,A) 特許第3316657(JP,B2) 特開平3−25345(JP,A) 実開平6−18950(JP,U) 特開2000−171376(JP,A) 特開平11−118774(JP,A) 実公平7−53699(JP,Y2) 特開昭62−27648(JP,A) 特開平6−201562(JP,A) 特表平9−504756(JP,A) 特表2000−505553(JP,A) 3 2004138473 20040513 8 20050916 遠藤 孝徳 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、クロムめっき液等の溶液の成分濃度管理に有用な成分濃度の測定装置に関し、特にインライン測定に適した音速による簡便な測定法による液中成分濃度測定装置に関する。【0002】【従来の技術】クロムめっきは、光沢を利用した装飾用、あるいは耐腐食性や耐摩耗性等の物理特性を利用した工業用めっきとして広く利用されている。めっき液の管理としては、比重測定による方法が一般的であり、滴定による成分定量法も必要に応じて行われている。【0003】特に工業用めっきにおいては、めっき皮膜の品質維持のために、めっき浴の組成を一定範囲に保つことが不可欠であり、そのために、めっき浴(めっき液)中の成分濃度を精度良く測定することが重要であるが、従来の液中成分濃度の測定方法においては、いずれも工業的に、いくつかの欠点があった。【0004】例えば比重測定による液中成分濃度の測定方法は、ボーメ計と呼ばれる浮き秤を使用して、液の比重を計る方法であり、基本的には、無水クロム酸溶液等のめっき液の密度(比重)が成分濃度により変化することを利用したものである。この方法は、液中に秤を浮かべるという簡易な測定方法であり、広く用いられているが、精度からみて、無水クロム酸以外の成分の影響を評価することは困難であり、さらに、その測定結果を電気的にフィードバックして制御することも難しかった。【0005】また、滴定による液中成分濃度の測定方法は、例えば無水クロム酸溶液中の無水クロム酸濃度及び3価クロム濃度と硫酸濃度の各成分を滴定により測定する方法であり、それぞれの成分を定量評価できるという利点があるが、測定に当たっては、めっき液から試料を採取(サンプリング)してオフラインで測定を行うことと、滴定作業に人と時間が必要なことから常時監視することが困難であった。【0006】そこで、これらの問題を解決して、インラインによる測定制御に利用できる方法として、従来から液体中の音速と液体の密度の関係を利用して、音速の測定により濃度を求める方法が、いくつかの分野で実用化されている。【0007】しかしながら、クロムめっき液に適用した場合には、液中の音速の温度依存性の複雑さから非常に複雑なアルゴリズムと、多くの相関データが必要なことが予想され、また副成分の影響の評価のために、他の分析法との併用が必要になることもあって実用化が難しかった。【0008】ここで、クロムめっき液の組成として、一般的に硬質クロムめっきに用いられるめっき液を例に採って説明すれば、そのめっき液の組成は、具体的には、無水クロム酸が250±100g/リットル、硫酸が2〜10ミリリットル/リットルの範囲である。【0009】本発明者等は、クロムめっきに用いる液中の成分のうちで、主成分の無水クロム酸について、その水溶液の濃度と液中の音速の相関について詳細に検討した結果、無水クロム酸濃度を音速により測定することが可能であることを見出したものである。【0010】しかしながら、これをインライン計測に応用する場合には、プロセス中で発生する気泡の影響で、測定値にノイズが重畳し、正確な音速の測定が困難であることが判った。【0011】この問題を解決するために、いくつかの対策が提案されていて、大別すると、音速の測定のアルゴリズムの改良による気泡の影響の除去と、測定対象溶液中に発生する気泡本体の除去がある。【0012】音速測定のアルゴリズムの改良による気泡の影響の除去は、基本的には超音波信号のうちで気泡による減衰を受けた反射波信号を無視できるようにデータ処理を行うことであり、気泡による減衰を受けない正常信号と、減衰を受けた異常信号との識別の論理によっていくつかに区分される。【0013】一般には、正常信号は短時間においては繰り返しの変化が少なく、異常信号は変化が大きいと考えられることから、一定時間内の音速値の分散によって識別することができるが、この方法は、正常信号が一定時間内に適当数存在する場合のみ適用可能である。また、減衰による強度比により、正常信号と異常信号とを区分することも可能であるが、この方法は、数次反射波との識別が困難であるという問題点を抱えていて、この方法については、現状では微小気泡が多数存在する系に対しては安定した計測が可能な水準には到達していない。【0014】測定対象溶液中の気泡除去の方法については従来から加圧による方法が提案されておりこれを補助する手段も併用される場合がある。この方法は流路をクローズドにして圧をかけることから構造的に複雑になり特にクロム酸のような強酸化性の危険な液体を取り扱う工程に於いては安全対策を含めて簡単には使用が困難である。【0015】大気中で静置することによって気泡の除去は可能であるが、このためには脱泡時間がかかるため連続でのインライン測定が出来ず断続的な測定となり、さらに高温の液を測定する場合には液温の低下が大きく音速の温度依存性の直線範囲を超えてしまう場合がしばしば起こり正確な測定も困難であった。【0016】【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、この問題を解決するために、開放系連続流路での脱泡の程度を実験的に評価した結果、低流量ポンプと長流路との組み合わせによって、音速測定に影響を与えないような気泡除去が可能であることを見出した。すなわち、液中の気泡を除去する機構として、常圧での折り返し流路を備えた除去槽を有するクロムめっき液の液中成分濃度測定装置である。【0017】この方法は、インラインでの音速測定というメンテナンスフリーの方法で、音速のみの1つの物理量から成分濃度を測定するという方法であり、複雑な加圧機構を必要とすることなく連続測定と監視が可能であるという点で優れている。【0018】しかしながら、バイパス機構を必要とし、液送ポンプを用いるという測定装置の複雑さと、脱泡時間による測定タイミングの遅延と、複数の槽で使用する場合に、それぞれに高価なセンサーが必要になるという3つの問題点があった。【0019】本発明の課題は、液中成分濃度測定装置であって、その測定装置を簡素化し、脱泡時間による測定タイミングの遅延を解消し、複数槽の測定の場合に個別の高価なセンサーを不要とすることにある。【0020】【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る発明は、測定槽1内の溶液2中に配置した音速測定手段4にて測定される溶液2中の音速から、その溶液2中の成分濃度を求める方式の液中成分濃度測定装置において、音速測定手段4の音速センサー部5(垂直又は水平方向に対向配置した超音波発振部5aと超音波受振部5b)を、測定槽1内の溶液2の液面Lから一定の深度Dに配置制御する深度制御手段3を備えてなり、かつ音速センサー部が、深度制御手段の下部の一定の深度の位置に固定配置されてなることを特徴とする液中成分濃度測定装置である。【0021】本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る液中成分濃度測定装置において、前記深度制御手段3が測定槽1内の溶液2の液面Lに浮かべたフロート6(浮体)であって、前記音速測定手段4がフロート6に固定された構造であることを特徴とする液中成分濃度測定装置である。【0022】本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は請求項2に係る液中成分濃度測定装置において、前記溶液2が無水クロム酸溶液であって、該液中の成分濃度の測定対象がクロム酸であることを特徴とする液中成分濃度測定装置である。【0023】【作用】上記問題を解決するために、本発明者等は、測定の対象となる溶液2を貯留する測定槽1(溶液貯留槽、処理槽)内において、液面Lの液面位が変動する溶液2中の気泡2aの分布と、その溶液2の音速測定に与える影響とを実験的に評価した結果、音速測定手段4の音速センサー部5(対向配置した超音波発振部5aと超音波受振部5b)を、溶液2の液面Lから一定の深度Dに配置することによって、液面Lから一定の深度D未満の液中に発生する多数の気泡2aの存在による音速測定への影響を、必要程度まで軽減することができる。【0024】本発明の液中成分濃度測定装置は、測定槽1内に貯留する溶液2の液面Lの液面位の変動に対応して、音速測定手段4(音速センサー部5、対向配置した超音波発振部5aと超音波受振部5b)を、溶液2の液面Lから、常に一定の深度Dに配置制御するフロート等の深度制御手段3を備えたので、音速測定手段4の音速センサー部5は液面Lから常に一定の深度Dに保持でき、液面Lから一定の深度D未満の溶液2中に発生する多数の気泡2aの存在による音速測定への影響を必要程度まで軽減することができる。【0025】本発明装置は、気泡2aを含有する開放系の溶液2のうち、音速により成分濃度測定が可能な全ての溶液の成分濃度測定に用いることが可能であり、特に、液面Lが上下に変動するような、めっき溶液(めっき浴)を貯留する貯留槽などの測定槽1において、そのめっき溶液としての無水クロム酸溶液中のクロム酸濃度を測定対象とした場合には、液面Lから一定の深度D未満のめっき溶液2中に発生する多数の気泡2aの存在による音速測定への影響を必要程度まで軽減することができる。【0026】【発明の実施の形態】本発明の液中成分濃度測定装置の実施の形態を、図1に基づいて以下に詳細に説明すれば、本発明装置は、測定槽(処理槽)として、無水クロム酸溶液などめっき溶液(めっき浴)を貯留する貯留槽1を備え、該貯留槽1内に貯留されためっき溶液(めっき浴)などの所定の溶液2の液面Lには、深度制御手段3としてフロート6(浮体)を浮かべてある。【0027】図1に示すように、音速測定手段4は、深度制御手段3である前記フロート6に固定して取り付けられ、該音速測定手段4の音速センサー部5は、前記フロート6外側の下部に、溶液2の液面Lより一定の深度D(深さ)の位置に固定配置されていて、該音速センサー部5は、液面Lの変位に関係なく、液面Lより一定の深度Dにおける液中の音速を計測することができるようになっている。【0028】音速測定手段4の音速センサー部5にて計測された音速データ信号は、音速測定手段4より出力されて、該音速測定手段4に接続する計測信号伝送用の配線部W(信号ケーブル、必要に応じて音速センサー部5への計測用基準電圧も供給可能な配線系統を備える)を通して濃度測定動作制御手段7に入力される。【0029】濃度測定動作制御手段7は、中央制御処理部8(CPU)と、音速データ信号処理部9と、メモリ部10と、計測濃度表示部11(計測データ出力用のCRT表示用モニター、液晶表示用モニター、プリンターなど)を備える。【0030】音速測定手段4からの計測された溶液2の液面Lより一定の深度Dにおける液中の音速データ信号は、音速データ信号処理部9に入力されて、中央制御処理部8による演算処理制御により、該音速データ信号処理部9にて、予めメモリ部10に格納された音速−濃度変換テーブルを読み出して、音速測定手段4にて計測された前記音速データを、液体2の前記深度Dにおける溶液密度データ[溶質量(1種の溶質成分の溶質量)/溶媒量](溶液濃度データ)に変換処理することにより溶液中の溶質成分濃度を算出する。【0031】【実施例】以下に、本発明の液中成分濃度測定装置の具体的実施例について説明する。【0032】<実施例1>図1に示すように、深さ50cmのめっき浴槽1内に、溶液として無水クロム酸を主成分とする温度60℃のクロムめっき液2を貯留した。【0033】また、めっき浴槽1内に装備しためっき液循環送流手段(図示せず)により、めっき浴槽1内のめっき液2を循環送流させた。めっき液2の液面Lから深度10cm未満のめっき液2中には、多数の気泡2aの発生が見られた。【0034】そのめっき液2の液面Lに、音速測定手段4として、2MHzの超音波発振部5a(発振子)と超音波受振部5bとを、めっき液2を挟んで離間対向するように配置して構成される音速センサー部5(音速計)に、該音速センサー部5が溶液2の液面Lから深度Dが20cmとなるようにフロート6(深度制御手段3)を取り付けて浮かべ、液面Lの液面位を上下に変動させた状態で深度20cmに於けるめっき溶液2中の音速を測定した。【0035】測定された音速データ信号は、音速測定手段4から接続ケーブルWを通って、本発明装置における中央制御処理部8(CPU)と、音速データ信号処理部9と、メモリ部10と、計測濃度表示部11(計測データ出力用のCRT表示用モニター、液晶表示用モニター、プリンターなど)を備える濃度測定動作制御手段7の音速データ信号処理部9に入力した。【0036】続いて、音速データ信号処理部9にて、入力した上記めっき溶液2中の実測の音速データと、予め作成した音速と濃度の関係を表す温度補正済みの音速―濃度変換テーブル(前記メモリ部10に格納した音速―濃度変換メモリテーブル)のうち、無水クロム酸を主成分とする温度60℃のクロムめっき溶液に関する音速―濃度変換用の変換テーブルに基づいて、無水クロム酸の濃度を算出した。このときの経時音速データを図2に示す。【0037】<比較例1>なお、比較例1として、上記実施例1と同様の深さを備えためっき浴槽の液面位の変動に無関係な一定位置に、上記実施例1と同様の音速センサー5を固定して測定した以外は、上記実施例1と同様にして、無水クロム酸を主成分とする温度60℃のクロムめっき液2中の音速を測定し、換算テーブルとに基づいて無水クロム酸の濃度を算出した。このときの経時音速データを図3に示す。【0038】<測定結果>液面Lが高い(すなわち液面Lからの音速センサー5の位置が深い)当初は、比較例1の音速データは安定しているが、液面Lが低くなる(すなわち音速センサー5が気泡2aが多い液中位置にある時)と、気泡2aの影響で安定した測定データが得られなかった。【0039】実施例1では、データ変動がほとんどなく、安定した測定データが得られた。実施例1で測定した無水クロム酸濃度は、濃度既知の溶液で検定した結果±0.3%であり、管理上に必要な精度と再現性を有していた。【0040】【発明の効果】本発明の液中成分濃度測定装置は、特に腐食性の溶液の測定における複雑な溶液バイパス機構を必要とせず、従来のバイパス機構を伴う測定方式に比べて装置を簡略化でき、腐食性の溶液の測定においても装置構造が簡単になる。【0041】また、本発明の液中成分濃度測定装置は、測定槽(溶液貯留槽、めっき浴槽など)の形式が異なる複数の槽における測定においても、一つの音速測定手段(音速センサー部)を簡単に移動させることにより測定が可能なので、高価なセンサーを複数個揃えることが不要になり、測定原価が低減できる。【0042】また、バイパス機構を伴う測定方式のように、バイパス流路の通過に必要な測定時間が省略でき、測定槽の状態をリアルタイムに把握できるので、めっき浴処理など溶液取扱工程における槽中の溶液変化(溶液濃度、液中成分濃度の変化、液面位の変動等)に対する適正な対応が迅速にできる。【0043】また、従来の液中成分濃度測定装置ようなオフラインでの測定方式に比べて、溶液の測定用サンプリング操作や、人による測定操作に掛かる時間が省略でき、測定物理量が自動的に採取できると同時に、電気的に音速測定手段(音速センサー部)から直接、濃度測定動作制御手段にデータ信号が送信されるので、測定物理量に基づく、溶液の濃度調整、成分濃度調整等のフィードバック制御にも利用可能になる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の液中成分濃度測定装置の概要側面図。【図2】本発明の液中成分濃度測定装置により測定された音速と測定経過時間との関係を示すグラフ。【図3】従来の液中成分濃度測定装置により測定された音速と測定経過時間との関係を示すグラフ。【符号の説明】1…測定槽(溶液槽) 2…溶液 2a…気泡 3…深度制御手段4…音速測定手段 5…音速センサー 5a…超音波発振部5b…超音波受振部 6…フロート 7…濃度測定動作制御手段8…中央制御処理部(CPU) 9…音速データ信号処理部 10…メモリ部11…計測濃度表示部(ディスプレイ)L…液面 D…深度 W…信号ケーブル 測定槽内の溶液中に配置した音速測定手段にて測定される溶液中の音速から、その溶液中の成分濃度を求める方式の液中成分濃度測定装置において、音速測定手段の音速センサー部を、測定槽内の溶液の液面から一定の深度に配置制御する深度制御手段を備えてなり、かつ音速センサー部が、深度制御手段の下部の一定の深度の位置に固定配置されてなることを特徴とする液中成分濃度測定装置。 請求項1記載の液中成分濃度測定装置において、前記深度制御手段が測定槽内の溶液の液面に浮かべたフロート(浮体)であって、前記音速測定手段がフロートに固定された構造であることを特徴とする液中成分濃度測定装置。 請求項1又は請求項2記載の液中成分濃度測定装置において、前記溶液が無水クロム酸溶液であって、該液中の成分濃度の測定対象がクロム酸であることを特徴とする液中成分濃度測定装置。