タイトル: | 特許公報(B2)_紫外線吸収剤 |
出願番号: | 2002300275 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C09K 3/00,C07G 1/00,A61K 8/97,A61P 17/16,A61Q 17/04 |
藤 加珠子 野田 博行 JP 4220752 特許公報(B2) 20081121 2002300275 20021015 紫外線吸収剤 財団法人山形県産業技術振興機構 504265754 特許業務法人特許事務所サイクス 110000109 藤 加珠子 野田 博行 20090204 C09K 3/00 20060101AFI20090115BHJP C07G 1/00 20060101ALI20090115BHJP A61K 8/97 20060101ALN20090115BHJP A61P 17/16 20060101ALN20090115BHJP A61Q 17/04 20060101ALN20090115BHJP JPC09K3/00 104ZC07G1/00A61K8/97A61P17/16A61Q17/04 C09K3/00、 C07G1/00、 A61K8/00-8/99、 A61K36/00、 A61Q1/00-99/00 特開2002−105240(JP,A) 特開平07−215988(JP,A) 特開平04−033986(JP,A) 特開平09−241571(JP,A) 特開2001−200238(JP,A) 特開平09−241615(JP,A) 7 2004131672 20040430 6 20050722 中野 孝一 【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は、米糠由来のリグニンの350nm〜400nmにおける吸光度を高める方法に関するものである。【0002】【従来の技術】近年、オゾン層の破壊に伴って、地上に降りそそぐ紫外線量が増大しつつあることが指摘されている。このため、紫外線の人体への影響が一段と問題視されるようになっており、皮膚癌など皮膚疾患の増加も懸念されている。このため、紫外線吸収剤の開発研究が活発に行われており、これまでにも種々の商品が実用化されるに至っている。【0003】例えば、紫外線吸収能を有する有機化合物が合成されているが(特許文献1〜5参照)、地上に降りそそぐ紫外線波長(UVA及びUVB)全領域で吸収能を有するものがほとんどないことや安全性の点で問題があるものが多い。特に強力な紫外線吸収能を有する合成有機化合物は、皮膚に適用した場合にかぶれや発疹を生じることが多い。このため、紫外線吸収能が高くて安全な紫外線吸収剤を提供することが求められている。【特許文献1】特開平05−112487号公報【特許文献2】特開平05−201928号公報【特許文献3】特開平05−246946号公報【特許文献4】特開平06−135985号公報【特許文献5】特開2001−200238号公報【0004】【発明が解決しようとする課題】 これらの従来技術の現状を考慮して、本発明は、安価に紫外線吸収能を高めることにより安全な紫外線吸収材料を提供することを課題とした。特に本発明は、化粧品等の皮膚外用剤として有用な紫外線吸収材料を提供する方法を開発することを課題とした。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決するため種々の検討を重ねた結果、植物に含まれるリグニンを所定の方法で改質した改質リグニンが良好な紫外線吸収能を有することを見出し、しかも原料として間伐材や食品廃棄物等を利用すれば安価に提供することができることを見出した。【0006】 すなわち、アルカリ処理を施したリグニン(本明細書ではこれを「改質リグニン」という)を含む紫外線吸収剤が有用であることを見出した。この紫外線吸収剤は、280〜400nmの領域における最小吸光度と最大吸光度の比(最小吸光度/最大吸光度)が0.3以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。この紫外線吸収剤は皮膚外用剤として有用である。【0007】 本発明は、米糠由来のリグニンをアルカリを含む溶媒に溶解することを特徴とする、米糠由来のリグニンの350nm〜400nmにおける吸光度を高める方法を提供するものである。【0008】【発明の実施の形態】以下において、本発明の紫外線吸収剤について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。【0009】 本発明では、米糠由来のリグニンを用いる。特に、食品産業廃棄物として大量に排出される脱脂米糠を好適に用いることができる。脱脂米糠は食用にも利用されるので、毒性が低く人体にとって安全性が高い。【0010】 本発明は、米糠由来のリグニンをアルカリを含む溶媒に溶解する処理を行うことを特徴としている。【0011】 アルカリ処理用の薬剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニア、炭酸ナトリウウム、ホウ酸ナトリウムなど種々の塩基性化合物が挙げられる。なかでも、安全性や後処理の容易さなどから水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムの溶液が好適に用いられる。【0012】改質リグニンのなかでも、抽出したリグニンをアルカリ処理したアルカリ処理リグニンや、フェノール化合物とリグニンを化学的に結合させたリグノフェノールをアルカリ処理したアルカリ処理リグノフェノールなどを好適に用いることができる。【0013】 本発明で得られる改質リグニンは、280〜400nmの紫外線を吸収することを特徴としている。地上に到達する紫外線は、その波長によりUV−A領域の紫外線とUV−B領域の紫外線に分類されている。UV−A領域は波長が320〜400nm程度の紫外線であり、地上に到達する紫外線の9割程度を占めている。UV−A領域の紫外線を長期間にわたって浴びると、皮膚深部において慢性的な皮膚疾患を生じる危険性が高い。一方、UV−B領域は波長が280〜320nm程度の紫外線であり、地上に到達する紫外線の1割程度を占めている。UV−A領域の紫外線に比べると皮膚に対する影響が強いため、UV−B領域の紫外線はソバカスやシミの原因となることが多い。【0014】 本発明で得られる改質リグニンを含む紫外線吸収剤(以下、本発明の紫外線吸収剤という)は、これらのUV−A領域とUV−B領域の紫外線をともに吸収し、280〜400nmの紫外線を比較的満遍なく吸収する。本発明の紫外線吸収剤の280〜400nmの領域における最小吸光度と最大吸光度の比(最小吸光度/最大吸光度)が0.3以上であることが好ましく、0.65以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらにより好ましい。未改質のリグニンを含む紫外線吸収剤に比べると、改質リグニンを含む本発明の紫外線吸収剤は、特に350〜400nmの領域の吸収が高い。【0015】本発明の紫外線吸収剤の形態は特に制限されない。本発明の紫外線吸収剤は、たとえば、粉末状やスラリー状、液状で紫外線吸収能を発揮させることが可能である。【0016】本発明の紫外線吸収剤は皮膚外用剤として有効に用いられる。例えば、本発明の紫外線吸収剤は化粧品や医薬品として使用することができる。具体的には、日焼け止めオイル、日焼け止めローション、日焼け止めクリーム、クリーム・乳液、化粧水、香水、おしろい、化粧油、頭髪用化粧品、染毛料、練香水、パウダー、パック、ファンデーション、粉末香水、頬紅、アイライナー、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、眉墨、爪クリーム、マニキュア、口紅、リップクリームなどとして使用することができる。また、本発明の皮膚外用剤は、軟膏剤として使用することもできる。【0017】本発明の皮膚外用剤には、紫外線吸収剤以外のさまざまな成分をさらに添加させておくことができる。例えば、エモリエント効果改善、使用感改善、使用後のかさつき軽減、可溶性改善、乳化性改善、乳化安定性改善、油剤成分との相溶性改善、使用後のつっぱり感軽減、肌への馴染み改善、皮膚上におけるのびの改善、べたつきの軽減、肌荒れ防止、美肌効果改善、皮膚保護効果改善、角質改善、表皮角化正常化、老人性乾皮症などの乾皮症軽減、ひび割れや落屑などの皮膚乾燥状態改善、しわ発生抑制、しわ消滅、創傷治療、色素沈着予防及び改善、老化防止、ふけやかゆみの軽減、脱毛軽減、頭皮疾患予防及び治療、保存性改善、柔軟性改善、弾力性改善、艶付与、メラニン色素産生抑制、日焼け防止などを目的として適当な成分を添加させることができる。【0018】本発明の皮膚外用剤に添加しうる成分として、例えば、油脂成分、リン脂質、UV吸収剤、IR吸収剤、乳化剤、界面活性剤、防腐剤、棒黴剤、酸化防止剤、美白剤、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、ペプチド、生理活性植物抽出物、蛍光材料、顔料、色素、香料、スクラブ剤、金属イオン封鎖剤、バインダー、増量剤、増粘剤、糖類、栄養成分、pH調節剤、キレート剤、殺菌剤、角質改善剤、角質溶解剤、抗生物質、皮膚透過促進剤、血行促進剤、消炎剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、鎮痛剤、皮膚軟化剤、皮膚緩和剤、創傷治療剤、新陳代謝促進剤などを使用目的に応じて適宜配合することができる。【0019】これら以外の材料についても、用途に応じて本発明の皮膚外用剤に添加することができる。各成分の添加量や添加方法については、本技術分野に周知の方法に従うことができる。当業者は、上記の一般的な説明及び実施例の具体的開示を基にして、または必要に応じてそれらに適宜修飾や改変を加えることにより、本発明の好ましい態様の紫外線吸収剤を容易に製造することができよう。改質リグニンの量は特に限定されず、紫外線吸収剤の用途などに応じて適宜選択することができる。【0020】【実施例】以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。【0021】例1:本発明の紫外線吸収剤1の調製脱脂米糠からジオキサン:水=8:2で抽出後、濃縮したのち少量の90%酢酸水溶液に溶解し、過剰の水を加えて沈殿させ、これをろ過してリグニンを得た。得られたリグニン1mgを1mlのジオキサン:0.2MNaOH=8:2に溶解して紫外線吸収剤1を得た。【0023】例2:本発明の紫外線吸収剤の評価 例1で得られた紫外線吸収剤1の紫外線吸収能を評価した。具体的には、日立製U−2000紫外可視分光光度計及び光路長10mmの石英セルを用い吸光度により評価した。 図1に、紫外線吸収剤1の280〜400nm領域における吸光度を示す。比較のためリグニンの吸光度も併せて示す。紫外線吸収剤1は、280〜400nmの全領域にわたって紫外線を吸収した。特に、340nmより長波長域の紫外線吸収能がリグニンに比べ増加した。【0024】【発明の効果】本発明の紫外線吸収剤は、安全で紫外線吸収能が高い。また、廃棄物を原料に安価に製造することができるために、産業上の利用性も高い。このような性質を有することから、本発明の紫外線吸収剤は化粧品や医薬品を始めとする皮膚外用剤として極めて有用である。【図面の簡単な説明】【図1】 紫外線吸収剤1及びリグニンの紫外線吸収特性を示す図である。 米糠由来のリグニンをアルカリを含む溶媒に溶解することを特徴とする、米糠由来のリグニンの350nm〜400nmにおける吸光度を高める方法。 前記米糠由来のリグニンが、脱脂米糠からの抽出物を酸を含む水溶液で処理したリグニンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。 前記酸が酢酸であることを特徴とする請求項2に記載の方法。 前記脱脂米糠からの抽出物が、脱脂米糠から水を含む溶媒で抽出した抽出物であることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。 前記脱脂米糠からの抽出物が、脱脂米糠からジオキサンを含む溶媒で抽出した抽出物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。 前記アルカリが水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 前記アルカリを含む溶媒がジオキサンを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。