タイトル: | 公開特許公報(A)_芳香族不飽和カルボン酸エステルの製造方法 |
出願番号: | 2002293028 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C67/08,C07C69/736,C07B61/00 |
大豆生田 勉 小林 芳照 JP 2004091456 公開特許公報(A) 20040325 2002293028 20020830 芳香族不飽和カルボン酸エステルの製造方法 松本製薬工業株式会社 000188939 大豆生田 勉 小林 芳照 7 C07C67/08 C07C69/736 C07B61/00 JP C07C67/08 C07C69/736 C07B61/00 300 4 書面 7 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC48 4H006BA10 4H006BA32 4H006BJ50 4H006BN30 4H006BP30 4H006KA06 4H006KC12 4H039CA66 4H039CD30 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、有機チタネート触媒を効率よく除去し、不純物の少ない芳香族不飽和カルボン酸エステルを製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】芳香族不飽和カルボン酸とアルコールとからエステルを製造する方法として、酸触媒を用いる方法や、カルボン酸を酸クロライド化しアルコールと反応させる方法が広く知られている(例えば、特開昭60−222476など)。これらの方法によるエステル化反応混合物は着色が著しく、触媒除去および脱色の工程を必要とする。【0003】これに対して、飽和脂肪族カルボン酸のエステル化において有機チタネート触媒を使用した場合、エステル化反応混合物の着色は、酸触媒に比べて少ないことは知られている。しかし、有機チタネート触媒を用いた芳香族不飽和カルボン酸のエステル化方法は知られていない。【0004】有機チタネート触媒の除去方法として、反応混合物に水を加えて加熱することにより加水分解し、活性炭や活性白土で吸着・濾過して除去する湿式法(例えば、特開昭55−130937号など)や反応混合物を水の不存在下で炭酸ナトリウム等の固体アルカリと加熱接触処理した後、活性白土等の吸着剤により吸着する乾式法(例えば、特開昭54−76517号など)などが知られている。【0005】しかし、前者の湿式法は工程が煩雑で精製処理に長時間を要し、洗浄用水の消費量が多い。また、フェルラ酸等のフェノール性水酸基を有する桂皮酸エステルでは、触媒を加水分解する際に乳化して分離できないなどの難点がある。【0006】後者の乾式法は固液反応であるため処理時間が長く、また高温下での加熱処理を必要とするためエステルの変質を招きやすいなどの難点がある。【0007】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、従来法による上述の欠点がなく、有機チタネート触媒を除去することができ、不純物の少ない芳香族不飽和カルボン酸エステルを製造することを目的とするものである。【0008】【課題が解決しようとする手段】本発明者らは、鋭意検討の結果、有機チタネートを触媒として製造した芳香族不飽和カルボン酸エステルの反応混合物をヒドロキシカルボン酸またはその水溶液で処理することにより、有機チタネート触媒の金属元素を錯体化することでエステル相から容易に分離でき、不純物の少ないエステルを製造することができることを見出した。【0009】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について更に詳述する。本発明では、芳香族不飽和カルボン酸とアルコールとのエステル化そのものは、常法に従って行うことができる。反応原料の芳香族不飽和カルボン酸とは、芳香族基以外に炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有するカルボン酸をいう。具体的には桂皮酸、p−メトキシ桂皮酸、3,4−ジメトキシ桂皮酸、フェルラ酸等の桂皮酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。【0010】本発明におけるアルコールを具体的に例示すると、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第2級ブチルアルコール、イソヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−デシルテトラデカノール等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族一価アルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、デカグリセリン等の脂肪族多価アルコール等より選択される1種乃至数種類の混合物が挙げられる。更に、ヒドロキシメチル基、ポリエチレンオキシド基、ポリプロリレンオキシド基、グリコール類等を有するシリコーン等の他のIV族原子からなる誘導体も本発明のアルコールに含まれる。但し、これらに限定されるものではない。【0011】本発明における有機チタネート触媒を具体的に例示すると、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラt−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソステアリルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等のチタネート類が挙げられ、これらから選択される数種類の混合物でもよい。更に、これらを出発原料とする反応生成物または混合物も含まれ、適宜他の化合物と組み合わせて用いることもできる。従って、エステル化の際に用いられる原料アルコールと上記チタネート触媒の反応物を触媒として使用することも本発明の有機チタネート触媒に含まれる。【0012】本発明における芳香族不飽和カルボン酸とアルコールとのエステル化反応は、反応装置に原料の芳香族不飽和カルボン酸とアルコールとを仕込み、更にこれに触媒を添加した後、加熱して反応させればよい。また、必要に応じて有機溶媒を添加して行うことができる。エステル化反応は平衡反応であるので、副生する水が系内に存在すると反応を阻害する。このため、発生する水を反応装置外に抜き出し、系外に除去する必要がある。従って水と共沸する有機溶媒を用いることが好ましい。【0013】本発明における有機溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、またはベンゼン等のような芳香族有機溶媒が好ましい。溶媒量は特に制限はないが、生成するエステルに対して0.1〜10倍モル量の割合で用いることが好ましい。【0014】本発明は、エステル化反応によって得られる触媒を含む反応混合物をヒドロキシカルボン酸またはその水溶液で処理することを特徴としている。本発明におけるヒドロキシカルボン酸を例示すると、乳酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられ、特に乳酸またはその水溶液が好ましい。これらの例示された化合物を適宜他の成分と混合して用いることも本発明の範中である。なお、ヒドロキシカルボン酸がこれらの化合物に限定されるものでは無いことは言うまでもない。【0015】本発明で用いられるヒドロキシカルボン酸水溶液の濃度は、乳酸で例示すると1重量%以上、好ましくは10重量%以上である。更に、有機チタネートに対して1〜50倍モル、好ましくは2〜30倍モル用いると良い。【0016】本発明におけるヒドロキシカルボン酸またはその水溶液による処理は、乳酸で例示すると、攪拌・混合しながら40〜100℃、好ましくは60〜80℃で行うと良い。温度が低い場合は、有機チタネート触媒の除去に長時間が必要であり、一方、高温で行うと加水分解等が起こり、得られるエステルの品質に悪影響を及ぼすことがある。【0017】【発明の効果】本発明による芳香族不飽和カルボン酸エステルの製造方法を用いることで、次のような効果を奏する。(1)ヒドロキシカルボン酸またはその水溶液による処理を行うことにより、有機チタネート触媒の金属元素を錯体化することでエステル相から容易に除去でき、不純物の少ないエステルを製造することができる。(2)有機チタネート触媒の除去が容易に行えるため、頻雑な工程を必要としない。【0018】【実施例】次に、実施例により本発明を説明するがこれらに限定されるものではない。【0019】実施例1p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルの合成攪拌機及び油水分離装置付きの冷却器を備えた200ml四つ口フラスコに、p−メトキシ桂皮酸17.7g、2−エチルヘキシルアルコール13.0g及び溶媒としてキシレンを15g、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.7gを加えた。加熱攪拌して有機溶媒還流下に副生した水は油水分離装置で分離して系外に排出しながら、160℃で3時間エステル化反応を行った。【0020】脱水が止まった点を反応の終点とし、反応終了後70℃に冷却し、有機チタネート触媒を除去するために90%乳酸水溶液11gを加え攪拌を行った。攪拌後静置し、分液により水層を除去した。これを4回繰り返した後、水洗を行い、分液により水層を除去した。ロータリーエバポレーターにて有機層から溶媒を留去することでp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルを得た。得られたp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルは淡黄色粘稠液体であった。このエステルについて赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を以下に示した。【0021】反応率:78%性状:粘性のある淡黄色液体赤外線吸収:CH3、CH2 2950〜2870cm−1エステルC=O 1710cm−1エステルC−O 1250,1170cm−1核磁気共鳴(1H NMR)(CDCl3):0.88−1.62ppm(15H、m、アルキル基)3.81ppm(3H、s、−O−CH3)4.09ppm(2H、d、−O−CH2−)6.30−7.61ppm(6H、m、芳香族及び−CH=CH−)紫外線吸収(95%エタノール):λmax 310nm(εmax 22000)【0022】実施例2フェルラ酸2−エチルヘキシルの合成攪拌機及び油水分離装置付きの冷却器を備えた200ml四つ口フラスコに、フェルラ酸19.4g、2−エチルヘキシルアルコール13.0g及び溶媒としてキシレンを15g、触媒としてテトラノルマルブチルチタネート0.85gを加えた。実施例1と同様にして165℃で6時間エステル化反応を行った。【0023】脱水が止まった点を反応の終点とし、反応終了後70℃に冷却し、有機チタネート触媒を除去するために90%乳酸水溶液11gを加え攪拌を行った。攪拌後静置し、分液により水層を除去した。これを4回繰り返した後、水洗を行い、分液により水層を除去した。ロータリーエバポレーターにて有機層から溶媒を留去することでフェルラ酸2−エチルヘキシルを得た。得られたフェルラ酸2−エチルヘキシルは橙黄色粘稠液体であった。このエステルについて赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を以下に示した。【0024】反応率:93%性状:粘性のある橙黄色液体赤外線吸収:OH 3450cm−1CH3、CH2 2960〜2870cm−1エステルC=O 1710cm−1エステルC−O 1270,1170cm−1核磁気共鳴(1H NMR)(CDCl3):0.87−1.62ppm(15H、m、アルキル基)3.89ppm(3H、s、−O−CH3)4.08ppm(2H、d、−O−CH2−)6.26−7.57ppm(5H、m、芳香族及び−CH=CH−)紫外吸収(95%エタノール):λmax 300nm(εmax 12000)λmax 330nm(εmax 16000)【0025】実施例3フェルラ酸イソステアリルの合成攪拌機及び油水分離装置付きの冷却器を備えた200ml四つ口フラスコに、フェルラ酸19.4g、イソステアリルアルコール27.0g及び溶媒としてキシレンを30g、触媒としてテトライソステアリルチタネート2.8gを加えた。実施例1と同様にして160℃で10時間エステル化反応を行った。【0026】脱水が止まった点を反応の終点とし、反応終了後70℃に冷却し、有機チタネート触媒を除去するために90%乳酸水溶液11gを加え攪拌を行った。攪拌後静置し、分液により水層を除去した。これを4回繰り返した後、水洗を行い、分液により水層を除去した。ロータリーエバポレーターにて有機層から溶媒を留去することでフェルラ酸イソステアリルを得た。得られたフェルラ酸イソステアリルは橙黄色粘稠液体であった。このエステルについて赤外線吸収スペクトル、紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を以下に示した。【0027】反応率:99%性状:粘性のある橙黄色液体赤外線吸収:OH 3440cm−1CH3、CH2 2940〜2860cm−1エステルC=O 1710cm−1エステルC−O 1270,1170cm−1紫外吸収(95%エタノール):λmax 300nm(εmax 18000)λmax 330nm(εmax 21000)【0028】比較例1p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルの合成攪拌機及び油水分離装置付きの冷却器を備えた200ml四つ口フラスコに、p−メトキシ桂皮酸17.7g、2−エチルヘキシルアルコール13.0g及び溶媒としてキシレンを15g、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.95gを加えた。実施例1と同様にして160℃で3時間エステル化反応を行った。【0029】脱水が止まった点を反応の終点とし、反応終了後室温に冷却し、酸触媒を中和するために炭酸水素ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。次いで水洗を行い、分液により水層を除去した。ロータリーエバポレーターにて有機層から溶媒を留去することでp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルを得た。得られたp−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルは実施例1のチタネート触媒に比較して着色が強いものであった。このエステルについて赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を以下に示す。【0030】反応率:86%性状:粘性のある褐色液体赤外線吸収:CH3、CH2 2950〜2870cm−1エステルC=O 1710cm−1エステルC−O 1250,1170cm−1核磁気共鳴(1H NMR)(CDCl3):0.88−1.62ppm(15H、m、アルキル基)3.80ppm(3H、s、−O−CH3)4.10ppm(2H、d、−O−CH2−)6.31−7.61ppm(6H、m、芳香族及び−CH=CH−)紫外線吸収(95%エタノール):λmax 310nm(εmax 22000)【0031】比較例2フェルラ酸2−エチルヘキシルの合成攪拌機及び油水分離装置付きの冷却器を備えた200ml四つ口フラスコに、フェルラ酸19.4g、2−エチルヘキシルアルコール13.0g及び溶媒としてキシレンを15g、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.95gを加えた。実施例1と同様にして165℃で6時間エステル化反応を行った。【0032】脱水が止まった点を反応の終点とし、反応終了後室温に冷却し、酸触媒を中和するために炭酸水素ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。次いで水洗を行い、分液により水層を除去した。ロータリーエバポレーターにて有機層から溶媒を留去することでフェルラ酸2−エチルヘキシルを得た。得られたフェルラ酸2−エチルヘキシルは実施例2のチタネート触媒に比較して着色が強いものであった。このエステルについて赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を以下に示す。【0033】反応率:93%性状:粘性のある褐色液体赤外線吸収:OH 3450cm−1CH3、CH2 2960〜2870cm−1エステルC=O 1710cm−1エステルC−O 1270,1170cm−1核磁気共鳴(1H NMR)(CDCl3):0.87−1.61ppm(15H、m、アルキル基)3.89ppm(3H、s、−O−CH3)4.07ppm(2H、d、−O−CH2−)6.26−7.58ppm(5H、m、芳香族及び−CH=CH−)紫外吸収(95%エタノール):λmax 300nm(εmax 13000)λmax 330nm(εmax 15000)【0034】比較例3フェルラ酸2−エチルヘキシルの合成攪拌機及び油水分離装置付きの冷却器を備えた200ml四つ口フラスコに、フェルラ酸19.4g、2−エチルヘキシルアルコール13.0g及び溶媒としてキシレンを15g、触媒としてテトラノルマルブチルチタネート0.85gを加えた。実施例1と同様にして165℃で6時間エステル化反応を行った。【0035】脱水が止まった点を反応の終点とし、反応終了後室温に冷却し、有機チタネート触媒を除去するためにイオン交換水50gを加え攪拌を行った。実施例2の乳酸水溶液による処理と比較し、イオン交換水による処理では、乳化状態となり、チタン触媒を含む水層の分離が困難となり、フェルラ酸2−エチルヘキシルを得ることができなかった。 芳香族不飽和カルボン酸とアルコールとを有機チタネート触媒の存在下で反応させることにより芳香族不飽和カルボン酸エステルを製造する方法。 芳香族不飽和カルボン酸とアルコールとを有機チタネート触媒の存在下で反応させることにより芳香族不飽和カルボン酸エステルを製造する方法において、触媒を含有するエステル化反応混合物をヒドロキシカルボン酸またはその水溶液で処理することを特徴とする芳香族不飽和カルボン酸エステルの製造方法。 芳香族不飽和カルボン酸が桂皮酸誘導体から選ばれることを特徴とする請求項1、2記載のエステルの製造方法。 桂皮酸誘導体がフェルラ酸誘導体であることを特徴とする請求項3のエステルの製造方法。 【課題】芳香族不飽和カルボン酸エステルの製造方法を提供する。【解決手段】芳香族不飽和カルボン酸とアルコールとを有機チタネート触媒の存在下で反応させることにより芳香族不飽和カルボン酸エステルを製造する方法、およびその方法において、触媒を含有するエステル化反応混合物を乳酸またはその水溶液で処理するものである。【効果】乳酸またはその水溶液で処理することにより、有機チタネート触媒の金属元素を錯体化することでエステル相から容易に分離できるため、頻雑な工程を必要とせず不純物の少ないエステルを製造することができる。