生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_黄色ブドウ球菌の迅速検出法
出願番号:2002289534
年次:2007
IPC分類:C12Q 1/14


特許情報キャッシュ

外山 一吉 福渡 康夫 矢野 陽一郎 清瀧 兼司 中川 稔 狩野 健一郎 佐々木 一枝 JP 3895658 特許公報(B2) 20061222 2002289534 20021002 黄色ブドウ球菌の迅速検出法 森永乳業株式会社 000006127 遠山 勉 100089244 松倉 秀実 100090516 川口 嘉之 100100549 外山 一吉 福渡 康夫 矢野 陽一郎 清瀧 兼司 中川 稔 狩野 健一郎 佐々木 一枝 JP 2001306247 20011002 20070322 C12Q 1/14 20060101AFI20070301BHJP JPC12Q1/14 C12Q 1/00-1/70 C12N 1/00-1/38 PubMed JSTPlus(JDream2) JMEDPlus(JDream2) JST7580(JDream2) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JICST-EPLUS/CA(STN) 特開2001−136998(JP,A) Zentralblatt fur Bakteriologie, Parasitenkunde, Infektionskrankheiten und Hygiene Abteilung I Originale, Medizinische Hygienische Bakteriologie Virusforschung und Parasitologie, (1971) Vol.216, No.4, p.466-471 駒形和男 編,微生物の化学分類実験法,学会出版センター,1982年 6月30日,初版,p.185 長谷川武治 編,微生物の分類と同定,東京大学出版会,1975年 6月20日,初版,p.220−221 樫田良精 編,日本医師会 臨床検査指針による臨床検査法,南山堂,1966年11月 1日,増訂第3版発行,p.348−354 3 2003174899 20030624 11 20030320 清水 晋治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、食品衛生、医薬検査、研究などの各分野における、黄色ブドウ球菌[スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)]の検出に用いる培養検出法に関する。【0002】更に詳しくは、本発明は、卵黄を含有する培地上に観察される上記微生物の卵黄反応の有無を迅速に検出する方法に関するものである。【0003】尚、本発明における卵黄反応とは、卵黄を含有する平板培地において、卵黄反応陽性の微生物の集落の周囲に白濁環(培地によっては透明環)を形成する反応をいう。【0004】【従来の技術】黄色ブドウ球菌による食中毒は、日本国において一定の頻度で発生する食中毒であり、食品衛生検査上重要な細菌とされている。食品衛生検査に使用される黄色ブドウ球菌用の卵黄を含む選択分離平板培地としては、卵黄加マンニット食塩寒天培地(非特許文献1を参照)、食塩卵寒天培地(日水製薬社製等)、ベアード・パーカー(Baird-Parker)寒天培地(非特許文献2を参照、又はメルク社製等)、エッグヨーク食塩寒天培地(栄研化学社製等)等が知られている。従来、食品衛生検査において、黄色ブドウ球菌の検出は、これらの培地に、検体を接種し、35〜37℃、24〜48時間培養後、卵黄反応陽性の黄色ブドウ球菌と疑わしい集落を計測することにより行われている(非特許文献3を参照)。【0005】また、非特許文献4には、食肉製品の黄色ブドウ球菌試験法として、「試料液0.1mlそれぞれについて卵黄加マンニット食塩寒天培地2枚に接種し、35.0℃±1.0℃の温度で48±3時間培養し、集落の周囲に真珠色かやや乳黄色の白濁環を伴った黄色ブドウ球菌の定型的集落のすべてを数え菌数を算定する」と具体的に規定されている。【0006】尚、黄色ブドウ球菌の増殖が認められる温度域は5〜47.8℃であり、至適温度は30〜37℃である(非特許文献5を参照)。しかしながら、これらの従来技術には、次に記載するとおりの課題があった。【0007】【非特許文献1】日本薬学会編、「乳製品試験法・注解」、金原出版株式会社、第113ページ、昭和59年3月20日等【非特許文献2】坂崎他著、「新 細菌培地学講座・下II」、第2版、近代出版、第62ページ、1990年【非特許文献3】厚生省生活衛生局監修、「食品衛生検査指針 微生物編」、日本食品衛生協会発行、第162ページ、1990年12月25日【非特許文献4】「食品衛生法施行規則及び食品,添加物等の規格基準の一部改正について」に関する厚生省生活衛生局長から各都道府県知事他宛ての通知(平成5年3月17日衛乳第54号)の別紙1第3試験法、1微生物(4)黄色ブドウ球菌試験法の項【非特許文献5】坂井千三編、厚生省生活衛生局食品保健課監修、「食中毒菌の制御」、中央法規出版株式会社、第14ページ、昭和63年6月10日【0008】【発明が解決しようとする課題】即ち、検体培養後の黄色ブドウ球菌の迅速な検出は各分野にまたがって重要なこととなっていた。そのためには現状の培養検出法に必要な時間では十分早いとは言えず、一層早急な検出法が求められていた。また、従来、明瞭な卵黄反応を生じさせ、卵黄反応陽性と判定するためには、多くの時間が必要であり、早期に正確な黄色ブドウ球菌の検出を行うためには、一層明瞭な卵黄反応を短時間で生じさせる検出法が必要であった。【0009】本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を短時間で生じさせる黄色ブドウ球菌の迅速検出法を提供することを課題とする。【0010】【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を短時間で生じさせる黄色ブドウ球菌の迅速検出法を開発すべく、鋭意研究を行った。【0011】その結果、卵黄を含有する培地に検体を接種し、培養し、培地上に微生物の集落を発現させる第1段階と、卵黄反応を促進する温度で恒温保持し、卵黄反応を促進する第2段階からなる検出法が、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を短時間で生じさせることにより、黄色ブドウ球菌を迅速に検出できる検出法であることを見い出し、本発明を完成した。【0012】本発明の目的は、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を短時間で生じさせる黄色ブドウ球菌の迅速検出法を提供することである。【0013】前記課題を解決する本発明は、卵黄を含有する培地に検体を接種し、培養し、培地上に微生物の集落を発現させる第1段階と、卵黄反応を促進する温度で恒温保持し、卵黄反応を促進する第2段階からなる黄色ブドウ球菌の迅速検出法であり、卵黄反応を促進する温度が、培養温度よりも少なくとも5℃高い温度であることを望ましい態様としており、また、卵黄反応を促進する温度が、40℃〜75℃であることを望ましい態様ともしており、さらに、第2段階において、55℃〜75℃で少なくとも1時間恒温保持し、卵黄反応を促進すること(以下、態様1と記載する。)、及び第2段階において、55℃〜65℃で少なくとも2時間恒温保持し、卵黄反応を促進すること(以下、態様2と記載する。)を望ましい態様としてもいる。【0014】【発明の実施の形態】次に、本発明について詳細に説明する。本発明の黄色ブドウ球菌の迅速検出法は、卵黄を含有する培地に検体を接種し、培養し、培地上に微生物の集落を発現させる第1段階と、卵黄反応を促進する温度で恒温保持し、卵黄反応を促進する第2段階からなることを特徴としている。【0015】本発明に使用される卵黄を含有する培地は、卵黄を含有し、卵黄反応を示す黄色ブドウ球菌が生育できる培地であれば如何なる種類の培地であってもよいが、前記のとおり、従来技術として知られる卵黄加マンニット食塩寒天培地、食塩卵寒天培地、ベアード・パーカー寒天培地、エッグヨーク食塩寒天培地等が例示でき、簡便にはこれらの市販品を用いることができる。【0016】尚、通常、卵黄は65℃以上の温度で熱変性し凝固するため、前記培地の調製時、卵黄の熱による変性を防止するために、卵黄を除いた配合成分からなる基礎培地を滅菌した後に、添加される。また、滅菌後の培地に添加するために、その卵黄液は変性を防止しつつ無菌的に処理されたものを用いる。詳しくは、新鮮な鶏卵を消毒用アルコール綿にてその外殻を洗浄し、滅菌処理したピンセットなどで割卵し、卵黄部を無菌的に取出し無菌卵黄液とする。または採取した卵黄液を無菌フィルターなどにより、除菌操作を行ない、無菌卵黄液とする。または卵黄含有液を電子線などで照射し、無菌卵黄液を調製する。【0017】検体中の微生物の培養及び恒温保持に使用される装置としては、温度を一定に維持できる装置であれば如何なる種類の装置であってもよいが、恒温槽、恒温培養器、インキュベーター等の装置を例示することができる。【0018】本発明の第1段階の検体の培養温度は、検体中の微生物、特に黄色ブドウ球菌の集落が適正な大きさまで迅速に発育するために、好適な温度帯であれば限定されないが、通常35〜37℃である。また、培養時間は、培地の種類、培養温度等により異なり、黄色ブドウ球菌の集落が肉眼で確認できる大きさにまで生育し得る時間であれば限定されないが、通常18〜24時間程度である。【0019】本発明の第2段階の卵黄反応を促進するための恒温保持の温度は、卵黄反応を促進するために、好適な温度帯であり、卵黄反応を迅速に確認でき得る条件であれば限定されないが、具体的には、後記する試験例の結果からも明らかなとおり、通常40〜75℃、好ましくは55〜75℃、より好ましくは55〜65℃である。なお、恒温保持の温度が37℃以下の場合は、卵黄反応が十分に促進されず、卵黄反応が迅速に確認できないため、好ましくない。恒温保持の温度が80℃以上の場合は、卵黄反応が見づらくなる、培地寒天が軟化し、集落が流れる等、観察に支障をきたし、好ましくない。【0020】また、恒温保持の時間は、培地の種類、培養温度等により異なり、卵黄反応が肉眼で確認できるまでの時間であれば限定されないが、例えば、卵黄加マンニット食塩寒天培地の場合、40℃では10時間程度、55℃〜75℃では1時間程度であり、食塩卵寒天培地の場合、40℃では2時間程度、55℃〜75℃では1時間程度である。【0021】また、本発明の態様1に示すとおり、55℃〜75℃で少なくとも1時間恒温保持し、卵黄反応を促進することが、後記する試験例の結果からも明らかなとおり、短時間で明瞭な卵黄反応を観察できることから好ましい。【0022】更に、驚くべきことには、後記する試験例の結果からも明らかなとおり、黄色ブドウ球菌が生育しない55℃〜65℃という温度で少なくとも2時間恒温保持し、卵黄反応を促進することにより、短時間で一層明瞭な卵黄反応が観察されるという良好な結果が得られた。【0023】従って、本発明の態様2に示すとおり、黄色ブドウ球菌が生育しない55℃〜65℃という温度で少なくとも2時間恒温保持し、卵黄反応を促進することが、短時間で一層明瞭な卵黄反応を観察できることから好ましい。【0024】次に試験例を示して本発明を詳細に説明する。試験例1この試験は、黄色ブドウ球菌による卵黄反応の見易さを指標として、従来技術と本発明の方法を比較するとともに、恒温保持の適正な条件を調べるために行った。(1)試料の調製培地試料として、次の2種類の平板培地を調製し使用した。(a)本発明の実施例1に記載の市販の卵黄加マンニット食塩寒天培地(b)本発明の実施例2に記載の市販の食塩卵寒天培地【0025】(2)試験菌株試験用黄色ブドウ球菌として、微生物寄託機関であるアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲されたスタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)ATCC 6538Pを使用した。【0026】(3)試験方法各試料の黄色ブドウ球菌による卵黄反応の状態を、次の試験方法により試験した。(a)試験条件標準寒天培地の1平板に0.1ml塗抹し、35℃で48時間培養した場合に、前記試験菌株のほぼ50個の集落が得られる試験菌株の希釈液を調製した。【0027】各培地の1平板に、前記試験菌株の希釈液を0.1ml塗抹した後、35℃で20時間培養し、培地上にほぼ50個(所定数)のしっかりとした集落を発現させた。尚、この時点で卵黄反応は認められない。【0028】前記のとおり、35℃で20時間培養し、所定数の集落が観察された各5平板を、それぞれ、35℃(継続培養。いわゆる従来技術)、37℃、40℃、55℃、65℃、75℃、叉は80℃の温度条件に設定された恒温槽中に静置し、0.5時間〜28時間恒温保持して、卵黄反応の促進状態を観察した。【0029】(b)卵黄反応の評価方法各平板上に生じた集落の卵黄反応の見易さを次の指標に基づき評価した。1平板上の平均的なサイズの10個の集落を肉眼観察し、集落の直径と集落の周囲に広がる卵黄反応(白濁環叉は透明環)の直径との差を計測し、これら差の平均値(5平板計50個の集落から求まる平均値)を算出し、この平均値を、次の基準でレベル分けし、卵黄反応の見易さの指標とし、これを結果として表中に示した。集落直径と卵黄反応直径との差の平均値 レベル0mm 01mm未満 11mm以上2mm未満 22mm以上 3【0030】(4)試験結果この試験の結果は、表1及び表2に示すとおりである。表1は卵黄加マンニット食塩寒天培地、表2は食塩卵寒天培地における結果である。【0031】表1から明らかなとおり、従来技術に相当する35℃24時間恒温保持(継続培養44時間に相当)時の卵黄反応の状態は、レベル1であった。これに対して、37℃で恒温保持した場合にも、卵黄反応がレベル1になるまでに24時間を要し、卵黄反応を促進する効果は得られなかった。【0032】一方、本発明に相当するところの、培地上に微生物の集落の発現後、培養温度よりも少なくとも5℃高い卵黄反応を促進する温度で恒温保持する、即ち、本試験において40℃以上の恒温保持温度条件においては、レベル1以上の卵黄反応が観察されるまでの恒温保持時間は、40℃で10時間、55〜75℃で1時間であった。【0033】即ち、従来技術に比較して、本発明の黄色ブドウ球菌の検出法は、卵黄反応の検出時間を、40℃で1/2以下、55〜75℃で1/24に短縮することが可能であった。【0034】尚、恒温保持温度が80℃の場合は、卵黄反応が見づらくなる、培地寒天が軟化し、集落が流れる等、観察に支障をきたし、不適当であった。【0035】また、本発明の恒温保持温度を55〜65℃とした場合には、レベル2以上の一層明瞭な卵黄反応が40℃での検出時間(24時間)に比較して1/12(2時間)という短時間で得られることが判明した。【0036】次いで、表2から明らかなとおり、従来技術に相当する35℃8時間恒温保持(継続培養28時間に相当)時の卵黄反応の状態は、レベル1であった。これに対して、37℃で恒温保持した場合にも、卵黄反応がレベル1になるまでに8時間を要し、卵黄反応を促進する効果は得られなかった。【0037】一方、本発明に相当するところの、培地上に微生物の集落の発現後、培養温度よりも少なくとも5℃高い卵黄反応を促進する温度で恒温保持する、即ち、本試験において40℃以上の恒温保持温度条件においては、レベル1以上の卵黄反応が観察されるまでの恒温保持時間は、40℃で2時間、55〜75℃で1時間であった。【0038】即ち、従来技術に比較して、本発明の黄色ブドウ球菌の検出法は、卵黄反応の検出時間を、40℃で1/4、55〜75℃で1/8に短縮することが可能であった。【0039】尚、恒温保持温度が80℃の場合は、卵黄反応が見づらくなる、培地寒天が軟化し、集落が流れる等、観察に支障をきたし、不適当であった。【0040】また、本発明の恒温保持温度を55〜65℃とした場合には、レベル2以上の一層明瞭な卵黄反応が40℃での検出時間(8時間)に比較して1/4以下(1〜2時間)という短時間で得られることが判明した。【0041】以上のとおり、本発明の検出法は、従来技術に比較して、卵黄反応の検出時間を大幅に短縮することが可能であり、卵黄反応を示す黄色ブドウ球菌を迅速に検出出来る方法として、有効であることが判明した。【0042】尚、卵黄を含有する培地として、食塩卵寒天培地をベアード・パーカー寒天培地叉はエッグヨーク食塩寒天培地に変更して試験したが、卵黄反応の状態は、表2の結果とほぼ同様の結果が得られた。【0043】また、黄色ブドウ球菌の供試菌株を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。【0044】【表1】【0045】【表2】【0046】次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。【0047】【実施例】実施例1卵黄を含有する平板培地として市販の黄色ブドウ球菌選択培地である卵黄加マンニット食塩(寒天)培地(日水製薬社製)を使用した。【0048】検体として購入日より1週間経過した市販の鶏ひき肉を使用した。該鶏ひき肉をストマッカーにて細かく磨砕した後10g採取し、滅菌生理食塩水で10倍に希釈した分散液0.1mlを、前記平板培地に塗抹接種し、定温乾燥機(ヤマト科学社製)を用いて37℃で20時間培養し、培地上に微生物の集落を発現させた後、60℃で3時間恒温保持し、卵黄反応を促進し、卵黄反応を肉眼観察し、その陽性陰性を判定した。尚、37℃で20時間培養後に発現した集落より細菌の同定用の試料を採取した。【0049】その結果、集落周囲に、培地本来が持つ透明な色調とは明らかに異なり、また明らかに大きさ・色調とも集落とは異なる明瞭な薄白色の白濁環のある特徴的な卵黄反応を示した20個の集落と、この反応を示さない37個の集落が観察された。【0050】卵黄反応が観察された集落に対応する前記細菌の同定用の試料について、常法(厚生省生活衛生局監修、「食品衛生検査指針 微生物編」、日本食品衛生協会発行、第163ページ、1990年12月25日)に基づき細菌の同定を行なった結果、卵黄反応を示した集落は、黄色ブドウ球菌であることが確認された。【0051】また、卵黄反応を示さない集落に対応する前記細菌の同定用の試料についても、上記方法により黄色ブドウ球菌の同定を行なったが、全て同菌とは同定されなかった。【0052】即ち、この検出法により、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を、集落形成後3時間という短時間で生じさせ、食品中の黄色ブドウ球菌を迅速、確実、かつ明確に検出できた。【0053】実施例2卵黄を含有する平板培地として市販の黄色ブドウ球菌選択培地である食塩卵寒天培地(日水製薬社製)を使用した。【0054】検体として調理後五日目の焼きそばを使用した。該焼きそばをストマッカーにて細かく磨砕した後10g採取し、滅菌生理食塩水で10倍に希釈した分散液0.1mlを、前記平板培地に塗抹接種し、定温乾燥機(ヤマト科学社製)を用いて37℃で18時間培養し、培地上に微生物の集落を発現させた後、65℃で3時間恒温保持し、卵黄反応を促進し、卵黄反応を肉眼観察し、その陽性陰性を判定した。尚、37℃で20時間培養後に発現した集落より細菌の同定用の試料を採取した。【0055】その結果、集落周囲に、培地本来が持つ透明な色調とは明らかに異なり、また明らかに大きさ・色調とも集落と異なる明瞭な薄白色の白濁環のある特徴的な卵黄反応を示した2個の集落と、この反応を示さない15個の集落が観察された。【0056】卵黄反応が観察された集落に対応する前記細菌の同定用の試料について、常法(厚生省生活衛生局監修、「食品衛生検査指針 微生物編」、日本食品衛生協会発行、第163ページ、1990年12月25日)に基づき細菌の同定を行なった結果、卵黄反応を示した集落は、黄色ブドウ球菌であることが確認された。【0057】また、卵黄反応を示さない集落に対応する前記細菌の同定用の試料についても、上記方法により黄色ブドウ球菌の同定を行なったが、全て同菌とは同定されなかった。【0058】即ち、この検出法により、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を、集落形成後3時間という短時間で生じさせ、食品中の黄色ブドウ球菌を迅速、確実、かつ明確に検出できた。【0059】実施例3市販の黄色ブドウ球菌選択培地であるベアード・パーカー寒天培地(メルク社製)粉末58gを使用説明書に従って、精製水950mlに均一に分散又は溶解し、オートクレーブ(岩楯医療機器製作所社製)を使用して121℃で15分間加熱し滅菌して45〜50℃に冷却後、亜テルル酸塩卵黄乳液(メルク社製)50mlを添加し、シャーレ(栄研化学社製)1枚当たり15ml分注し、冷却固化し卵黄を含有する平板培地(ベアード・パーカー寒天培地)を調製した。【0060】検体として、にぎり飯を3日間30℃にて放置したものを使用した。該にぎり飯を滅菌生理食塩水で10倍に希釈した分散液0.1mlを、前記平板培地に塗抹接種し、恒温培養器(日立製作所社製)を用いて35℃で20時間培養し、培地上に微生物の集落を発現させた後、55℃で2時間恒温保持し、卵黄反応を促進し、卵黄反応を肉眼観察し、その陽性陰性を判定した。【0061】その結果、黒色集落の周囲に、培地本来が持つ白濁した色調とは明らかに異なり、また明らかに大きさ・色調とも集落とは異なる明瞭な透明環、更にはこの透明環の中に白濁環のある特徴的な卵黄反応を示した10個の集落と、この反応を示さない67個の集落が観察された。【0062】卵黄反応が観察された集落について、常法(厚生省生活衛生局監修、「食品衛生検査指針 微生物編」、日本食品衛生協会発行、第163ページ、1990年12月25日)に基づき細菌の同定を行なった結果、卵黄反応を示した集落は、黄色ブドウ球菌であることが確認された。【0063】また、卵黄反応を示さない集落についても、上記方法により黄色ブドウ球菌の同定を行なったが、全て同菌とは同定されなかった。【0064】即ち、この検出法により、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を、集落形成後2時間という短時間で生じさせ、食品中の黄色ブドウ球菌を迅速、確実、かつ明確に検出できた。【0065】実施例4基礎培地として次の組成の各原料を均一に分散又は溶解し、冷却固化した後の最終的な培地のpHが6.2になるように0.1mol/Lの塩酸水溶液若しくは0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し調整した。【0066】このpHを調整した基礎培地をオートクレーブ(岩楯医療機器製作所社製)を使用して121℃で15分間加熱し滅菌して50℃に冷却後、殻付き卵から無菌的に採取した卵黄液を10g添加し、シャーレ(栄研化学社製)1枚当たり15ml分注し、冷却固化し卵黄を含有する平板培地を調製した。原材料 配合量カゼインペプトン(ディフコ社製) 5g大豆ペプトン(日本製薬社製) 5g酵母エキス(オリエンタル酵母工業社製) 5g塩化ナトリウム(和光純薬工業社製) 70gマンニトール(和光純薬工業社製) 10g塩化リチウム(和光純薬工業社製) 5gリン酸二水素一カリウム(和光純薬工業社製) 0.4g寒天(伊那食品工業社製) 15g精製水 1000ml【0067】検体として購入日より3日間経過した市販の鶏ひき肉を使用した。該鶏ひき肉をストマッカーにて細かく磨砕した後10g採取し、滅菌生理食塩水で10倍に希釈した分散液0.1mlを、前記平板培地に塗抹接種し、定温乾燥機(ヤマト科学社製)を用いて35℃で20時間培養し、培地上に微生物の集落を発現させた後、55℃で1時間恒温保持し、卵黄反応を促進し、卵黄反応を肉眼観察し、その陽性陰性を判定した。【0068】その結果、集落周囲に、培地本来が持つ透明な色調とは明らかに異なり、また明らかに大きさ・色調とも集落とは異なる明瞭な薄白色の白濁環のある特徴的な卵黄反応を示した10個の集落と、この反応を示さない8個の集落が観察された。【0069】卵黄反応が観察された集落について、常法(厚生省生活衛生局監修、「食品衛生検査指針 微生物編」、日本食品衛生協会発行、第163ページ、1990年12月25日)に基づき細菌の同定を行なった結果、卵黄反応を示した集落は、黄色ブドウ球菌であることが確認された。【0070】また、卵黄反応を示さない集落についても、上記方法により黄色ブドウ球菌の同定を行なったが、全て同菌とは同定されなかった。【0071】即ち、この検出法により、黄色ブドウ球菌による明瞭な卵黄反応を、集落形成後1時間という極めて短時間で生じさせ、食品中の黄色ブドウ球菌を迅速、確実、かつ明確に検出できた。【0072】【発明の効果】以上詳記したとおり、本発明は、卵黄を含有する培地に検体を接種し、培養し、培地上に微生物の集落を発現させる第1段階と、卵黄反応を促進する温度で恒温保持し、卵黄反応を促進する第2段階からなる黄色ブドウ球菌の迅速検出法に関するものであり、本発明により奏せられる効果は次のとおりである。1)本発明の黄色ブドウ球菌の検出法は、黄色ブドウ球菌の特徴である卵黄反応を迅速、確実、かつ明確に検出できる点で、従来技術の方法に比較して優れている。2)本発明の黄色ブドウ球菌の検出法は、黄色ブドウ球菌の特徴である卵黄反応を迅速に検出するために、培養の後、所定の温度で恒温保持するのみの簡便な手法である点で優れている。3)本発明の黄色ブドウ球菌の検出法は、汎用性を有しており、卵黄を含有する各種の黄色ブドウ球菌用の選択培地において、黄色ブドウ球菌の特徴となる卵黄反応を従来技術の方法に比較して迅速に確認できる点で優れている。 卵黄を含有する培地に検体を接種し、培養し、培地上に微生物の集落を発現させる第1段階と、卵黄反応を促進する温度55℃〜75℃で少なくとも1時間恒温保持し、卵黄反応を促進する第2段階からなる黄色ブドウ球菌の迅速検出法。 第2段階において、55℃〜65℃で少なくとも2時間恒温保持し、集落直径と卵黄反応直径との差の平均値が1mm以上になるまで卵黄反応を促進する請求項1に記載の黄色ブドウ球菌の迅速検出法。 集落直径と卵黄反応直径との差の平均値が1mm以上2mm未満になるまで卵黄反応を促進する請求項1に記載の黄色ブドウ球菌の迅速検出法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る