タイトル: | 公開特許公報(A)_L−アルギニン粉末およびこれを含有する食品 |
出願番号: | 2002260496 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,A23L1/305,A61K9/14,A61K31/198,A61K47/12 |
木本 英治 広谷 光一郎 JP 2004097034 公開特許公報(A) 20040402 2002260496 20020905 L−アルギニン粉末およびこれを含有する食品 株式会社ホワイズ 598112442 木本 英治 502324310 早川 誠志 100079337 木本 英治 広谷 光一郎 7 A23L1/305 A61K9/14 A61K31/198 A61K47/12 JP A23L1/305 A61K9/14 A61K31/198 A61K47/12 5 OL 8 4B018 4C076 4C206 4B018MD09 4B018MD19 4B018ME02 4B018ME10 4B018ME14 4C076AA29 4C076BB01 4C076CC40 4C076DD41Q 4C076DD41T 4C076DD43Q 4C076DD43T 4C076DD59S 4C076DD59T 4C076FF36 4C076FF51 4C076FF52 4C206AA01 4C206AA02 4C206FA53 4C206MA02 4C206MA05 4C206MA72 4C206NA09 4C206ZC02 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、L−アルギニン粉末およびこれを含有する食品に関する。詳しくは、本発明は、L−アルギニンの苦みを緩和した粉末であり、またこれを栄養補助食品やこれを含有する加工食品等の食品に関する。【0002】【従来の技術】動物性タンパク質を多食する欧米の成人では、1日平均5.4gのアルギニンを摂取しているとされている。日本における食物タンパク質の所要量は成人で60〜70g/日であるが、アルギニンに換算して1〜2g/日にしかならない。【0003】また、日本人が常食としている動物性食品では、リシン/アルギニン比が高いものが多く、リシン>アルギニンのインバランスを起こすことになり、生活習慣病などの発生原因にかかわっていることが明らかになっている。【0004】従来に確立されているアミノ酸栄養学に於いて、アルギニンは成人の体内では合成されるが、幼児ではアルギニン合成系が未発達のため成長のためには半必須アミノ酸として扱われてきた。【0005】しかし、1970〜1980年代に、アルギニンの栄養効果に関する再評価がおこなわれ、アルギニン欠乏食は代謝障害、脂肪肝、オロチン酸尿症(J.Nutr.,114,581−590(1984)およびCancer Res.,44,2186−2191(1984))などが発生することが確かめられている。【0006】また、肉類に多く含まれるリシン過剰摂取は、アルギニンが関与する代謝系を阻害すること(Harper:Physiol.Rev.,50,428−588(1970)およびSanchez:Arch.Lat.Nutr.,56,229−237(1988)、そして、アルギニンの投与により代謝障害が緩和されることが認められている。【0007】1995年Hurson(J.Parent.Enteral Nutr.,19,227−230(1995)は老齢者が通常の食べ物を摂取しながらアルギニン(17g/日)を14日間経口投与し血清アミノ酸、窒素出納および血清コレステロール値の変化を調べ、LDLコレステロールが低下し、HDLコレステロールの上昇を確認した。食物中のアルギニン/リシン比の上昇により、血清コレステロール値が低下することがKatan(Atheroscler.,43,381−391(1982)によって報告されている。【0008】また、老化にともなう生殖器の機能低下により精力の衰えを覚えるようになるが、アルギニン欠乏は去精液症をひきおこすこと、アルギニン投与が精子形成、精子の運動性を高めることがわかっており(J.Parent.Enteral Nutr.,10,227−238(1986)、高齢者に多発するインポテンスの改善の効果があることも知られている。【0009】老化にともなってアルギニン合成能が衰退し、アルギニンが関与する生理的諸機能が低下することから、老化予防のための栄養補助の一つとしてアルギニン補給が考えられる。【0010】生活習慣病の発生原因として肉類過食があげられ、肉類に多く含まれる脂肪が問題であることが定着した考え方になっている。【0011】肉類タンパク質を構成する塩基性アミノ酸として、リシンの過剰、アルギニンの不足、すなわち、リシン/アルギニンのインバランスが健康に関与されるようになってきている。【0012】現存、研究が進んでいる分野としては、血液循環系でのアルギニン効果、脳神経系でのアルギニン効果、胃腸粘膜でのアルギニン効果、内分泌系でのアルギニン効果、糖尿病におけるアルギニン効果、産婦人科領域でのアルギニン効果、免疫機能冗進のためのアルギニン効果、組織再生におけるアルギニン効果など、アルギニンの栄養効果については再評価されている。(木本英治:L−アルギニンの栄養化学、開成出版、,94−186(1999))【0013】【発明が解決しようとする課題】以上のように、L−アルギニンの摂取は非常に重要であるが、L−アルギニンは極めて強い苦みを有している。したがって、これを栄養価強化食材として摂取するために苦みを緩和する方法が望まれていた。【0014】【課題を解決するための手段】本発明者らは、L−アルギニンの塩酸塩とし、これをカルボキシル基を有する有機酸と混合することにより、錯塩を形成してL−アルギニンの苦みの問題を解消し、さらには保存効果と抗酸化効果が達成されることを見出し、本発明に到達した。【0015】本発明は、L−アルギニン塩酸塩粉末に有機酸粉末を混合してなるL−アルギニン粉末であり、また、このL−アルギニン粉末を含有することを特徴とする食品である。【0016】【発明の実施の形態】L−アルギニンは、ゼラチン加水分解物からフラビアン酸塩便じり電誘導体、ピクラートなどを沈殿分離して得られるが、昨今は発酵法によるものが純度が高く、市販されている。この塩酸塩であるL−アルギニン塩酸塩も、市販されており、特には純度が97%以上のものが好ましい。使用されるL−アルギニン塩酸塩粉末としては、好ましくは250μm、特には149μmの篩を通過するものが、混合するのに適している。【0017】L−アルギニン塩酸塩に混合する有機酸は、好ましくは有機カルボン酸であり、特にはクエン酸、DL−リンゴ酸、L−酒石酸、DL−乳酸、L−アスコルビン酸などの果実にも含有される有機酸が好ましく使用される。その純度は好ましくは97%以上であり、また有機酸は、単独でも2種類以上を混合して使用してもよい。使用される有機酸粉末としては、好ましくは250μm、特には149μmの篩を通過するものが、混合するのに適している。【0018】L−アルギニン塩酸塩粉末に対する混合量は、好ましくはL−アルギニン塩酸塩粉末100重量部に対する混合量で、好ましくは0.5〜10重量部である。【0019】L−アルギニン塩酸塩粉末に有機酸粉末を混合するには各種の公知の方法で可能である。混合する際に特に好ましいのは、L−アルギニン塩酸塩粉末に有機酸粉末を混合し、これに造粒基剤を加えてスプレードライする方法である。この際の造粒基剤としては、澱粉、α化澱粉、ゼラチン、デキストリン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられ、特にはα化澱粉が好ましく使用される。造粒基剤の好ましい使用量は、L−アルギニン塩酸塩粉末と有機酸粉末の混合物1重量部に対し、0.1〜0.5重量部である。【0020】造粒基剤の他にその他の添加剤も必要に応じて混合することができ、増量剤、分散剤、湿潤剤、着色剤、安定剤、乾燥剤等を添加混合してもよい。造粒は転動造粒、撹拌造粒、流動層造粒、押出し造粒等が好ましく適用される。【0021】以上により得られたL−アルギニン塩酸塩と有機酸の混合粉末は、アルギニン特有の苦みがほとんど感じられない。所望によりさらに追加の成分を加え、そのままの形態又は錠剤、粒剤、顆粒、カプセル錠に加工して、栄養剤、栄養補助食品、健康食品、加工食品等の食品として使用される。加工食品としてはシャーベット、ゼリー、ガム、キャンデー類、豆腐、みそ、漬け物類、乳製品類、乳酸菌飲料、食肉加工品、魚肉加工品、魚肉・食肉練り製品、カレー類、中華麺類、各種缶詰製品、健康飲料、嗜好飲料、アルコール飲料類等が挙げられる。【0022】以下は本発明の好ましい実施態様である。1)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜5重量部のDL−リンゴ酸の粉末を混合することにより、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0023】2)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜5重量部のDL−リンゴ酸の粉末を混合し、混合物100重量部に対して、20〜50重量部の造粒基剤を加えてスプレードライし、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0024】3)上記1、2記載の粉末からなる混合物を含有する栄養補助食品および混合物を錠剤に成形した栄養補助食品および混合物を顆粒に成形した栄養補助食品および栄養価を強化した加工食品。【0025】4)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜7重量部のDL−乳酸を混合することにより、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0026】5)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜7重量部のDL−乳酸を混合し、混合物100重量部に対して、20〜50重量部の造粒基剤を加えてスプレードライし、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0027】6)上記4、5記載の粉末からなる混合物を含有する栄養補助食品および混合物を錠剤に成形した栄養補助食品および混合物を顆粒に成形した栄養補助食品および栄養価を強化した加工食品。【0028】7)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜6重量部のクエン酸の粉末を混合することにより、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0029】8)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜6重量部のクエン酸の粉末を混合し、混合物100重量部に対して、20〜50重量部の造粒基剤を加えてスプレードライし、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0030】9)上記7、8記載の粉末からなる混合物を含有する栄養補助食品および混合物を錠剤に成形した栄養補助食品、混合物を額粒に成形した栄養補助食品および栄養価を強化した加工食品。【0031】10)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜7重量部のL−酒石酸の粉末を混合することにより、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0032】11)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に2〜7重量部のL−酒石酸の粉末を混合し、混合物100重量部に対して、20〜50重量部の造粒基剤を加えてスプレードライし、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0033】12)上記10、11記載の粉末からなる混合物を含有する栄養補助食品および混合物を錠剤に成形した栄養補助食品、混合物を顆粒に成形した栄養補助食品および栄養価を強化した加工食品。【0034】13)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に3〜8重量部のL−アスコルビン酸の粉末を混合することにより、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0035】14)L−アルギニン塩酸塩の粉末100重量部に3〜8重量部のL−アスコルビン酸の粉末を混合し、混合物100重量部に対して、20〜50重量部の造粒基剤を加えてスプレードライし、アルギニンの苦味を緩和する方法。【0036】15)上記13、14記載の粉末からなる混合物を含有する栄養補助食品および混合物を錠剤に成形した栄養補助食品、混合物を顆粒に成形した栄養補助食品および栄養価を強化した加工食品。【0037】【実施例】以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。(製造例1)L−アルギニン塩酸塩(分子量210.66)粉末21グラムとDL−乳酸(分子量90.08)1グラム(L−アルギニン塩酸塩100重量部に対し4.8重量部に相当)を陶磁製の乳鉢に入れ均一に混合し、JIS Z8801に規定の目開き149μmの標準篩を通して混合粉末22グラムを得た。ついで、この粉末22グラムにα化澱粉10.5グラムを加えてスプレードライして、L−アルギニン塩酸塩造粒粉末を得た。【0038】(製造例2)L−アルギニン塩酸塩粉末32グラムとDL−リンゴ酸(分子量134.09)粉末1グラム(L−アルギニン塩酸塩100重量部に対し3.1重量部に相当)を陶磁製の乳鉢に入れ均一に混合し、JIS Z8801に規定の目開き149μmの標準篩を通して混合粉末33グラムを得た。ついで、この粉末33グラムにα化澱粉16.0グラムを加えてスプレードライして、L−アルギニン塩酸塩造粒粉末を得た。【0039】(製造例3)L−アルギニン塩酸塩粉末28グラムとクエン酸(分子量192.13)粉末1グラム(L−アルギニン塩酸塩100重量部に対し3.8重量部に相当)を陶磁製の乳鉢に入れ均一に混合し、JIS Z8801に規定の目開き149μmの標準篩を通して混合粉末29グラムを得た。ついで、この粉末29グラムにα化澱粉13.5グラムを加えてスプレードライして、L−アルギニン塩酸塩造粒粉末を得た。【0040】(製造例4)L−アルギニン塩酸塩粉末21グラムとL−酒石酸(分子量150.09)粉末1グラム(L−アルギニン塩酸塩100重量部に対し4.8重量部に相当)を陶磁製の乳鉢に入れ均一に混合し、JIS Z8801に規定の目開き149μmの標準篩を通して混合粉末22グラムを得た。ついで、この粉末22グラムにα化澱粉11.0グラムを加えてスプレードライして、L−アルギニン塩酸塩造粒粉末を得た。【0041】(製造例5)L−アルギニン塩酸塩粉末17グラムとL−アスコルビン酸(分子量176.13)粉末1グラム(L−アルギニン塩酸塩100重量部に対し5.6重量部に相当)を陶磁製の乳鉢に入れ均一に混合し、JIS Z8801に規定の目開き149μmの標準篩を通して混合粉末18グラムを得た。ついで、この粉末18グラムにα化澱粉11.0グラムを加えてスプレードライして、L−アルギニン塩酸塩造粒粉末を得た。【0042】(官能検査テスト)製造例1〜5で得られたL−アルギニン塩酸塩造粒粉末を5人の官能検査パネラーに食して貰い官能検査テストを行った。結果は下記表1の通りであった。ただし、表1中、記号+は苦味または酸味がかなり強い±は苦みまたは酸味が殆どない−は苦みまたは酸味が感じられない【0043】【表1】【0044】【発明の効果】本発明はアルギニン特有の苦味を消去することにより、経口摂取が極めて容易となり、また賞味改善に加えて、防湿、抗酸化、防褐変および保存効果が向上し、顆粒や錠剤などの剤型でそのまま或いは栄養補助食品や加工食品の栄養価強化食材とすることが容易となる。【0045】本発明による栄養価強化食材は日本人の食生活が欧米食に移行し、動物性タンパク質を多食することにより、リシンの過剰、アルギニンの不足すなわちリシン/アルギニンのインバランスからおこる生活習慣病の予防や老化に伴う生理諸機能の低下防止に優れた栄養補助食品や加工食品を提供し得る。 L−アルギニン塩酸塩粉末に有機酸粉末を混合してなるL−アルギニン粉末。 L−アルギニン塩酸塩粉末100重量部に対する有機酸粉末の混合量が0.5〜10重量部である請求項1に記載のL−アルギニン粉末。 有機酸が、有機カルボン酸である請求項1〜2に記載のL−アルギニン粉末。 有機カルボン酸が、クエン酸、DL−リンゴ酸、DL−乳酸、L−酒石酸またはL−アスコルビン酸から選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載のL−アルギニン粉末。 請求項1〜4のいずれかに記載のL−アルギニン粉末を含有することを特徴とする食品。 【課題】L−アルギニンの摂取は非常に重要であるが、L−アルギニンは極めて強い苦みを有している。したがって、これを栄養価強化食材として摂取するために苦みを緩和する方法が望まれていた。【解決手段】L−アルギニンの塩酸塩とし、これをカルボキシル基を有する有機酸と混合することにより、錯塩を形成してL−アルギニンの苦みの問題を解消し、さらには保存効果と抗酸化効果が達成される。