タイトル: | 公開特許公報(A)_水溶性クエン酸マグネシウム含水塩およびその製法 |
出願番号: | 2002258505 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C59/265,C07C51/41,A23L1/304 |
稲葉 豊量 JP 2004091442 公開特許公報(A) 20040325 2002258505 20020904 水溶性クエン酸マグネシウム含水塩およびその製法 小松屋化学株式会社 594148759 稲葉 豊量 7 C07C59/265 C07C51/41 A23L1/304 JP C07C59/265 C07C51/41 A23L1/304 3 OL 7 4B018 4H006 4B018MD03 4B018MD09 4B018MF06 4B018MF10 4H006AA01 4H006AA02 4H006AB84 4H006AC47 4H006BC51 4H006BE11 4H006BE13 4H006BN10 4H006BS10 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医薬用原料、工業薬品原料、マグネシウム強化剤などに用いられるクエン酸マグネシウム含水塩およびその製法に関する。【0002】【従来の技術】クエン酸やクエン酸塩を、これらの水溶液又は懸濁液中で金属マグネシウム又は塩基性マグネシウム塩を加え反応させると透明な水溶液となる。この水溶液に加熱、冷却等の工程を加えることにより結晶が生成するが、その結晶は晶析条件により、例えば,1分子を構成する水和物の数、クエン酸の数、又はマグネシウムの数が異なり、種々の構造となる。しかも、それらのうち一部を除いては、水に対する溶解度が小さく、水中では不溶又は白濁するため、得られた結晶を再び水に溶かして透明な水溶液として使用することは困難である。【0003】他方、日本薬局方外医薬品規格1997、USP Official Monograph などでは、大腸検査?手術に於ける前処置用の内服下剤として、クエン酸水素マグネシウムの液剤(水溶液)の形で使用されている。又同じ目的に使用される散剤としては、非晶質体の塩(例えば、特開昭55−108814号、特開平5−194205号などの公報参照),又は結晶体の五水塩(例えば、USP2260004号、特開平6−228046号などの公報参照)が知られている。【0004】しかしこれらのマグネシウム塩類はいずれもC6H6Mg O7で表されるクエン酸水素マグネシウムに関するものであった。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来から水に不溶解又は微溶解とされていたC12H10Mg3O14・nH2O(n:0〜9の整数)で表される,クエン酸トリマグネシウム水和物を水に可溶性の粉末をとりだす方法を発見し,従来の製法に比べて安価で、高品質であり,経時変化にも安定していることを調べ本発明を完成するに至った。【0006】【課題を解決するための手段】本発明は,クエン酸の水溶液ないし懸濁液に金属マグネシウムまたはマグネシウム塩類を添加して反応させた後、反応液を直ちに噴霧乾燥、減圧乾燥等により乾燥して、粉末の状態でえられ、25℃で5倍の水に溶解し,安定性の良い、式:C12H10Mg3O14・xH2O(x:1〜9の整数)で表されるクエン酸マグネシウム含水塩、及びその製法に関する。【0007】【発明実施の形態】本発明に係わるクエン酸マグネシウム含水塩は,前記したように,クエン酸の水溶液ないし懸濁液に金属マグネシウム又はマグネシウム塩類を常温以下の温度で添加して反応させ,当該反応液を噴霧乾燥,減圧濃縮乾燥等の工程で固形化させたものである。本発明に用いられるクエン酸は,クエン酸水和物,無水クエン酸、イソクエン酸及びその脱水物であるイソクエン酸のラクトンも含んでいる。【0008】又,本発明に用いられる金属マグネシウム又はマグネシウム塩類(以下これらを「マグネシウム原料」という)のうち,マグネシウム塩類は水酸化マグネシウム,炭酸マグネシウム,酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらのなかでも水となじみがよく,クエン酸との反応性が高い面から水酸化マグネシウムあるいは重質炭酸マグネシウムが使用しやすい。又水溶液中で低温で反応させることが必要であることからマグネシウム塩類の形態は,200メッシュパス以下の細かい粒子径を有する粉末であることが望ましい。又これらのマグネシウム原料は単独又は2種以上混合して使用することも出来る。【0009】本発明に使用される水としては,出来るだけマグネシウム以外の塩類が含まれないことが望ましく,イオン交換水や蒸留水などの精製水を用いることが好ましい。【0010】本発明におけるクエン酸溶液は水溶液ないし懸濁液の状態で用いられる。クエン酸を水に添加する際,水の使用量があまりに少ない場合は生成したクエン酸マグネシウムの水に対する溶解量が小さいので,水の量は、クエン酸100部(重量部,以下同様)に対して300部以上,好ましくは400部以上とすることが望ましい。逆に,水の使用量が多い場合は,反応で得られたクエン酸マグネシウム溶液を乾燥するために水分の蒸発時間が長くなり,コストが高く付くため,水の使用量はクエン酸100部に対して500部以下とすることが良く,好ましくは430部以下とすることが望ましい。【0011】クエン酸の水溶液ないし懸濁液(以下懸濁水溶液(1)という)は,クエン酸の全量が溶解した状態であってもよく,懸濁した状態であってもよいが,反応が十分進行し,その結果均質なクエン酸マグネシウム含水塩を得るためには、反応の進行と共に反応系は均質な溶液となることが好ましい。このためには前記懸濁水溶液(1)はクエン酸溶解時の温度を15℃以上とすることが望ましく,好ましくは25℃前後にすることが良い。【0012】次に,懸濁水溶液(1)を攪拌しながらマグネシウム原料を添加することにより両者の反応が進行してクエン酸マグネシウム含水塩を含む水溶液ないし懸濁液(以下懸濁水溶液(2)という)がえられる。【0013】この反応におけるマグネシウム原料の使用量は,クエン酸1モルに対しマグネシウム量としては1.5モル以上、好ましくは1.51モル以上、更に好ましくは1.52モル以上であることが望ましい。 なお懸濁水溶液(1)をつくるためのマグネシウム原料の添加は少量ずつ行い、完全溶解するのを確認してから次の添加を行うようにするとよい。マグネシウム原料の添加終了後のpHは5.3〜8.0となる。【0014】又この反応を速やかに進行させるためには,溶液の温度は20℃以上,好ましくは25℃以上とすることが望ましい。他方反応温度が上がりすぎると結晶が析出する。結晶を析出させないために40℃以下,好ましくは30℃以下とすることが望ましい。反応が完了すると懸濁水溶液(2)は透明な水溶液となる。前記の条件で反応した場合でも結晶が析出する場合があるが、この場合の結晶はクエン酸マグネシウム含水塩又はそれ以外のものである場合があるので,直ちにこれをろ過等の手段で系外に除去し,クエン酸マグネシウムと混合しないようにしなければならない。ここで晶析する結晶は水に対する溶解度が非常に低く,乾燥して可溶性の結晶と混合されても、この結晶は水に溶解させた時不溶物となる。従って乾燥前に分離しておかなければならない。【0015】本発明では,クエン酸マグネシウムの懸濁水溶液(2)の透明な溶液から,水に易溶性の固体を得ることである。そのためには水溶液を低温で短時間に濃縮乾燥して固体とするか、低温短時間で結晶が成長する前に水溶液から非晶質の固体として分離し、乾燥することがポイントとなる。【0016】本発明では,これらの手段をいろいろ多方面にわたって検討の結果,その一つとして、噴霧乾燥による低温で短時間に乾燥する方法が,水に易溶性で経時にも安定している個体が得られることを発見した。【0017】この方法は、低温で短時間で固体を得る方法であり、クエン酸マグネシウムが結晶型を形成するまでの時間をかけないで,殆ど瞬時に乾燥粉末化することである。この方法によって固体は非晶質の粉末でえられることを発見した。【0018】本発明においては低温,短時間での乾燥は,前記の透明な懸濁水溶液(2)(pH5.3〜8.0)を使用し、噴霧乾燥機で乾燥した。乾燥するための空気の温度は試料入り口で好ましくは150℃以上、更に好ましくは180℃であり、最も望ましいのは200℃である。また試料出口温度は70℃以上であり、更に好ましくは100℃である。【0019】他方,ここで得られた粉末は非晶質であると共に含水塩である。その数はクエン酸マグネシウム1モルに対して1〜9モルの水を有する。この水分子の数は水に対する溶解度の小さい結晶型のもつ水和物の数にも匹敵する。【0020】かくしてえられた本発明のクエン酸マグネシウム含水塩は、噴霧乾燥時の乾燥温度,乾燥時間,水溶液の濃度等乾燥条件によって水分子(xの数)が異なるが、C12H10Mg3O14・x H2O(x:1〜9の整数)の型を有し,25℃に於いて水100mlに20g以上溶解し,透明で安定した状態を保つ。また水溶液のpHは5.9〜7.7であった。マグネシウムの含量は、11、7〜13、5%(含水塩換算)である。【0021】又本発明では、非晶質のクエン酸マグネシウム含水塩を得る方法として、前記、懸濁水溶液(2)の透明な溶液を使用し,減圧下で,60℃以下の温度で濃縮した。 溶液(以下懸濁水溶液3という)が十分濃縮された状態に達したとき,薄板上にひろげ,再び減圧下60℃以下で乾燥固化する方法を発見した。【0022】懸濁水溶液(3)の透明な溶液は長時間加熱攪拌するとクエン酸マグネシウム水和物の結晶が析出する。 それを防ぐために,溶液の温度は60℃以下として、好ましくは55℃以下である。また機械的攪拌は結晶の生成を起こしやすくするため行はない。この状態で濃縮するためには圧力は−0.0055MPa以下である。好ましくは−0.0053MPa以下である。【0023】濃縮が進むと共に溶液は粘稠になる。この液を薄板上に広げて減圧で加熱乾燥する。 減圧は懸濁水溶液(3)の濃縮の際と同じでよいが、加熱の温度は分解温度以下が必要なので,80℃でよい。 好ましくは70℃以下であり、更に好ましくは60℃以下である。ここでえられた乾燥物は5倍の水に溶解する。【0024】【実施例】次に,本発明のクエン酸マグネシウム含水塩及びその製法を、実施例に基づいて更に詳しく説明するが,本発明はかかる実施例に限定されるものではない。【0025】実施例1.クエン酸一水和物280gをイオン交換精製水1,200mlに溶解させ、10〜15℃に保持した。このときクエン酸水溶液のpHは1.5であった。このクエン酸水溶液を攪拌しながら水酸化マグネシウム117gを反応して溶解していることを確認しながら徐々に添加した。その間反応液の温度を外部から冷却して30〜35℃に保った。水酸化マグネシウム添加終了後も反応が終了して反応液が透明になるまで攪拌を続けた。反応終了後水溶液のpHは6.5であった。【0026】えられた懸濁水溶液(2)を回転円盤式噴霧乾燥機で熱風を入口温度200℃,出口温度50〜70℃の条件で噴霧乾燥を行った。えられた白色粉末は255gであった。【0027】この白色粉末のMg含量は12.1%で、180℃、2時間での乾燥減量は23.5重量%であり、また5%水溶液pH:6.4であった。また室温で減圧デシケータ中での乾燥減量が5.2%であった。このことから粉末は、C12H10Mg3O14・6H2Oの含水塩である。またこの粉末25gは25℃の水100gに溶解した。【0028】えられた白色粉末の赤外吸収スペクトルを、島津製作所製,島津フーリエ変換赤外分光光度計 FTIR−8200Dを用い,臭素カリウム錠剤法により測定モード(%T)で求めた。その結果を図1に示す。また,えられた結晶のX線解析スペクトルを,下記の条件に従って測定した。その結果を図2に示す。・機種 : 理学電機(株)製 RINT1400・ターゲット : 銅(モノクロメーター)・電圧及び電流 : 30KV,90mA・走査速度 : 4.000/min【0029】実施例1でえられたクエン酸マグネシウム粉末は粉末の状態では安定である。また100mlの水に25℃で25g溶解した。その溶液を22〜25℃の状態に静置したが、10日間では変化を認めなかった。【0030】実施例2.実施例1.と同じ方法でつくった懸濁水溶液(2)を減圧で濃縮して懸濁水溶液(3)をえた。濃縮温度は60℃以下とした。濃縮が進むにしたがって,粘度が高くなった。攪拌はしなかった。仕込み量(1,600g)が1/4(400g)になったところで,30cm×20cmの琺瑯張り容器2個に排出して平らにのばした。これを減圧で60〜70℃で乾燥した。えられた乾燥物は310gであった。【0031】この乾燥物を粉砕したものは、Mgの含量が11.3%で,180℃、2時間での乾燥減量は26.2重量%であった。また5%水溶液pH:6.2であった。また減圧デシケータ中での乾燥減量が10.4%であった。このことから粉末は、C12H10Mg3O14・4.5H2Oの含水塩である。また、この粉末25gは25℃の水100gに溶解した。【0032】又この乾燥物を粉末として,実施例1.に準じて赤外吸収スペクトル,X線解析スペクトルを測定した。結果を図3及び図4に示す。【0033】実施例2でえられたクエン酸マグネシウム粉末は粉末の状態では安定である。また100mlの水に25℃で25g溶解した。その溶液を22〜25℃の状態に静置したが、10日間では変化を認めなかった。【0034】【発明の効果】以上詳述したように、クエン酸マグネシウムは種々の水和物を有する結晶型が存在するが、これまで水に良く溶けるものは,無水物でありこの化合物は非晶質体であった。これに対し,本発明では,金属マグネシウム又はマグネシウム塩類とクエン酸との反応液を,噴霧乾燥又は減圧乾燥等により短時間で,低温度で乾燥固化することにより非晶質体の粉末が得られた。この粉末はクエン酸マグネシウム1モルに対して1〜9モルの水を包括する。これらの粉末は安定であると共に、25℃の水100mlに20〜30g溶解し,しかもその溶液も常温では安定である。この様に本発明のクエン酸マグネシウムは水易溶性であるため,粉末として医薬品原料,工業薬品原料,マグネシウム強化剤などの製剤化,例えば粉末を始め、錠剤,カプセルとして使用するのに有用である。【0035】本発明によれば,低温で短時間で粉末化することにより,これまでなしえなかった高い溶解性を持つクエン酸マグネシウムを収率良く,簡便に製造できる方法である。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1でえられた粉末の赤外吸収スペクトルである。【図2】実施例1でえられた粉末のX線解析図である。【図3】実施例2でえられた粉末の赤外吸収スペクトルである。【図4】実施例2でえられた粉末のX線解析図である。 クエン酸の水溶液に炭酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムを添加して反応させた溶液を噴霧乾燥することによりえられ、C12H10Mg3O14・xH2O(x:1〜9の整数)で表される、5倍の水に溶解するクエン酸マグネシウム含水塩。 クエン酸の水溶液に炭酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムを添加して反応させた溶液を噴霧乾燥することによりえられ、C12H10Mg3O14・xH2O(x:1〜9の整数)で表される、5倍の水に溶解するクエン酸マグネシウム含水塩の製法。 クエン酸の水溶液に炭酸マグネシウム又は水酸化マグネシウムを添加して反応させた溶液を60℃以下で減圧乾燥することによりえられ、C12H10Mg3O14・xH2O(x:1〜9の整数)で表される、5倍の水に溶解するクエン酸マグネシウム含水塩の製法。 【課題】水に易溶性で,例えば医薬品原料,マグネシウム強化剤、工業薬品原料,などの原料、あるいは中間体として優れた効果を発揮する、クエン酸マグネシウム含水塩及びその製法を提供すること。【解決手段】クエン酸の水溶液ないし懸濁液に金属マグネシウム又はマグネシウム塩類を添加して反応させた後、当該反応液を噴霧乾燥するか、減圧低温乾燥等によって粉末化、又は固化することによって得られ、25℃で水100mlに対する溶解度が20g以上であって、式:C12H10Mg3O14・x H2O(x:1〜9の整数)で表されるクエン酸マグネシウム含水塩、及びその製法である。【選択図】 なし