タイトル: | 公開特許公報(A)_有機酸の分離方法 |
出願番号: | 2002256546 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,B01D11/00,B01J3/00,B01J20/26,B01J20/34,B01J49/00,C07C51/47,C07C53/02,C07C53/08 |
畠山 耕 斎藤 成正 寺前 直樹 山縣 和則 山野 友里恵 菊池 俊明 JP 2004089904 公開特許公報(A) 20040325 2002256546 20020902 有機酸の分離方法 三菱マテリアル株式会社 000006264 清水 千春 100096862 尾股 行雄 100067046 畠山 耕 斎藤 成正 寺前 直樹 山縣 和則 山野 友里恵 菊池 俊明 7 B01D11/00 B01J3/00 B01J20/26 B01J20/34 B01J49/00 C07C51/47 C07C53/02 C07C53/08 JP B01D11/00 B01J3/00 A B01J20/26 G B01J20/34 G B01J49/00 G C07C51/47 C07C53/02 C07C53/08 4 1 OL 13 4D056 4G066 4H006 4D056AB17 4D056AC24 4D056BA16 4D056CA21 4D056CA22 4D056DA01 4D056DA02 4G066AA43D 4G066AE10 4G066CA07 4G066CA21 4G066GA08 4G066GA11 4G066GA32 4G066GA33 4H006AA02 4H006AD17 4H006AD32 4H006BB31 4H006BC51 4H006BC52 4H006BE41 4H006BS10 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、陰イオン交換樹脂等の物質に吸着した有機酸を当該物質から分離するための有機酸の分離方法に関する。【0002】【従来の技術】この種の有機酸の分離方法は、例えば有機酸を使用または製造する施設において当該有機酸を濃縮したり、工場等の廃水中から有機酸を除去したりするのに用いられている。有機酸を濃縮する場合には、有機酸を例えば陰イオン交換樹脂(物質)に吸着させた後、アルカリの水溶液または有機系の溶剤を用いて、陰イオン交換樹脂から有機酸を溶離し、この有機酸を溶離した溶液に対して蒸留または膜分離などの処理を行うことによって、濃縮された有機酸を得ている。【0003】一方、有機酸を取り除く廃水処理をする場合には、廃水中に含まれる有機酸を陰イオン交換樹脂に吸着させた後、アルカリ水溶液を用いて、陰イオン交換樹脂から有機酸を分離する処理を行っている。いずれの場合も、陰イオン交換樹脂は、有機酸を分離することによって再生されることになる。【0004】【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の有機酸の分離方法においては、有機酸の濃縮に用いた場合、有機酸を陰イオン交換樹脂から分離するために、多量のアルカリの水溶液等が必要になるとともに、分離した有機酸を濃縮するために、蒸留等の多くの工程が必要になることになる。したがって、濃縮した有機酸を陰イオン交換樹脂から分離回収するのに多くのコストがかかるという欠点がある。また、廃水処理のために用いた場合にも、有機酸を陰イオン交換樹脂から分離するために、多量のアルカリ水溶液が必要になるため、有機酸を陰イオン交換樹脂から分離回収のためのコストが高くなるという欠点があった。【0005】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機酸をこれを吸着した物質から容易にかつ低コストで分離回収することのできる有機酸の分離方法を提供することを課題としている。【0006】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1に記載の有機酸の分離方法は、有機酸を吸着しかつ水分を含んだ物質に、圧力が1MPa以上で温度が20℃以上の二酸化炭素を接触させることにより、上記有機酸を上記二酸化炭素に移行させて上記物質から分離することを特徴としている。【0007】請求項2に記載の有機酸の分離方法は、有機酸を吸着しかつ水分を含んだ物質を抽出槽内に収容し、上記抽出槽内に圧力が1MPa以上で温度が20℃以上の二酸化炭素を供給することによって上記有機酸を上記二酸化炭素に移行させ、当該有機酸を含む二酸化炭素を上記抽出槽から排出した後に減圧することによって、当該二酸化炭素から上記有機酸を分離した後、当該二酸化炭素を1MPa以上で20℃以上に昇圧、加熱して再び上記抽出槽内に供給することを特徴としている。【0008】請求項3に記載の有機酸の分離方法は、請求項1または2に記載の発明において、上記1MPa以上に代えて6〜25MPaとし、上記20℃以上に代えて25〜100℃としたことを特徴としている。【0009】請求項4に記載の有機酸の分離方法は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、上記物質は、陰イオン交換樹脂であることを特徴としている。【0010】請求項1〜4に記載の発明においては、水分を含んだ物質または陰イオン交換樹脂に1MPa以上20℃以上の二酸化炭素を接触させることによって、物質または陰イオン交換樹脂に吸着した有機酸を、水分を介して二酸化炭素に移行させることができる。この有機酸の移行は、次のような反応によるものと推測される。【0011】すなわち、二酸化炭素が物質または陰イオン交換樹脂に付着する水に接触することによって、当該二酸化炭素が水に溶解し、次の式(1)に示すように、炭酸(H2 CO3 )が発生する。H2 O+CO2 =H2 CO3 …(1)【0012】この炭酸は、次の式(2)に示す反応によって、物質または陰イオン交換樹脂に吸着した有機酸(organic)と交換され、当該有機酸が水相に放出される。2R−organic+H2 CO3 =R2 CO3 +2H−organic …(2)なお、式(2)において、Rは、物質または陰イオン交換樹脂中の例えばアミノ基である。【0013】水相に放出された有機酸は、次の式(3)に示すように、高圧の二酸化炭素相に溶解することになる。2H−organic(水相)=2H−organic(高圧二酸化炭素相) …(3)【0014】すなわち、物質または陰イオン交換樹脂に吸着した有機酸が二酸化炭素に移行することになる。このように有機酸が溶解した二酸化炭素は1MPa以上の高圧状態にあることから、有機酸が溶解不能な状態まで減圧することによって、当該二酸化炭素から有機酸を容易にかつ高濃度で分離回収することができる。そして、アルカリ水溶液等を大量に使う必要もないので、濃縮された有機酸の分離回収に要するコストの低減を図ることができる。また、物質または陰イオン交換樹脂については、劣化を生じさせることなく再利用可能な状態まで再生することができる。したがって、有機酸をこれを吸着した物質または陰イオン交換樹脂から容易にかつ低コストで分離回収することができるとともに、上記物質または陰イオン交換樹脂を再生することができる。【0015】また、水には、上述したように炭酸が大量に含有された状態になるので、この炭酸の殺菌効果によって、物質または陰イオン交換樹脂の表面等に付着した細菌やバクテリア等を確実に死滅させることができる。したがって、再生後の物質または陰イオン交換樹脂は、飲料水等のレベルの高い高純度のものを精製するために利用することができる。【0016】なお、上記物質としては、上述のように請求項4で限定した陰イオン交換樹脂を使用することができるが、この陰イオン交換樹脂に限らず、有機酸を吸着する他の物質を使用することも可能である。【0017】請求項2〜4に記載の発明においては、抽出槽から抜き出した1MPa以上20℃以上の二酸化炭素を減圧した後、当該二酸化炭素を再び1MPa以上20℃以上に昇圧、加熱して抽出槽に供給することが連続してなされるので、有機酸を連続して分離回収することができる。したがって、二酸化炭素を無駄なく有効に利用することができると共に、有機酸をより容易にかつ効率的に分離回収することができる。【0018】請求項3および4に記載の発明においては、二酸化炭素の圧力を6〜25MPa、温度を25〜100℃に設定しているので、有機酸をこれを吸着した物質または陰イオン交換樹脂から二酸化炭素により効率よく移行させることができる。したがって、有機酸の分離能率の向上を図ることができる。【0019】【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。【0020】図1は、この発明の一実施の形態としての有機酸の分離方法を実施するための有機酸の分離装置を示すブロック図であり、図2および図3は、抽出槽内の状態を示す説明図である。【0021】有機酸の分離装置は、図1に示すように、抽出槽1と、減圧分離手段としての減圧分離槽2と、冷却手段3と、供給槽4と、昇圧手段としてのポンプ5と、加熱手段としてのヒータ6と、これらを連通する連通手段としての配管7とを備えている。【0022】抽出槽1は、有機酸を吸着しかつ水分を含んだ物質としての陰イオン交換樹脂を収容するとともに、ポンプ5およびヒータ6によって1MPa以上の圧力に昇圧されかつ20℃以上の温度に加熱された二酸化炭素(CO2 )が供給されるようになっている。この実施の形態では、抽出槽1の上端部に二酸化炭素の供給口1aが設けられている。抽出槽1内では、二酸化炭素が水分を介して陰イオン交換樹脂に接触することになる。【0023】また、陰イオン交換樹脂は、その表面に水が付着しているか、水中に没した状態で当該水と接触した状態にする必要がある。したがって、陰イオン交換樹脂に対する水の量は、少なくとも陰イオン交換樹脂の表面に付着する程度の量が必要である。ただし、水の量があまり多くなりすぎると、有機酸の分離が効率よく行われなくなるおそれがある。よって、抽出槽1内における水の量は、陰イオン交換樹脂に対して50〜500重量%に維持することが好ましい。【0024】このため、有機酸を吸着した陰イオン交換樹脂が乾燥状態になっている場合には、二酸化炭素を抽出槽1に供給する前の段階で、陰イオン交換樹脂に対して上記比率の水を加える必要がある。陰イオン交換樹脂に水を加えるのは、陰イオン交換樹脂を抽出槽1に投入する前でも、投入後であってもよい。【0025】また、抽出槽1には、二酸化炭素の排出口1bが設けられている。この排出口1bは、水分を介して陰イオン交換樹脂に接触し、当該陰イオン交換樹脂に吸着した有機酸がより多く移行した後の二酸化炭素を抜き出すことが可能な位置に設けられている。すなわち、排出口1bは、抽出槽1の底部に蓄えられた陰イオン交換樹脂の上面(水が陰イオン交換樹脂の上に満たされている場合には当該水の上面)よりやや上の位置に設けられている。【0026】減圧分離槽2は、抽出槽1の排出口1bから排出された後の高圧の二酸化炭素を減圧することによって、二酸化炭素に含まれる有機酸を分離して回収するようになっている。回収された有機酸は、付加価値の低いものについては焼却等の処理がなされることになる。また、付加価値の高い有機酸については、濃縮された状態で回収されることから、同一工場内でリサイクルして使用することが可能であるとともに、濃縮された有機酸として製品化することが可能である。【0027】冷却手段3は、減圧分離槽2において減圧により温度低下したものをさらに冷却して液状にしたものを供給槽4に供給するようになっている。【0028】ポンプ5は、供給槽4内に蓄えられた二酸化炭素を上述した圧力まで加圧して、抽出槽1に供給するようになっており、ヒータ6は抽出槽1に供給する二酸化炭素の温度を上述した温度まで加熱するようになっている。【0029】また、上記有機酸としては、分子内にカルボキシル基(−COOH)、スルホン基(−SO3 H)、スルフィン基(−SO2 H)、燐酸基(−PO2 H2 、−PO2 H)を有する有機化合物が上げられる。この有機化合物の具体例を以下に示す。【0030】i)カルボン酸類(分子内にカルボキシル基を含む化合物)(例1)モノカルボン酸類:蟻酸、酢酸RCH2 COOH、R2 CHCOOH、R3 CCOOH(Rがアルキル基または芳香核で、ハロゲン、−OH基が含まれる場合もある)などの一つの分子内にカルボキシル基が一つ含まれるも(例2)多カルボン酸類:シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、マレイン酸、フミン酸、フタル酸類、クエン酸、リンゴ酸、トリカルバリン酸などの一つの分子内にカルボキシル基を二以上含むものである。【0031】ii)アミノ酸類(分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物)(例1)脂肪族アミノ基:グリシン、アラニンなどのモノアミノモノカルボン酸、セリンなどのオキシアミノ酸、システィン、シスチン、メチオニンなどの硫黄を含むアミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などのモノアミノジカルボン酸、リシン、アルギニンなどのジアミノモノカルボン酸(例2)芳香環を持つアミノ酸:フェニルアラニン、チロシンなど(例3)複素環を持つアミノ酸:ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリンなど【0032】iii)スルホン酸類(炭化水素の水素原子がスルホン基(−SO3 H)に置換された化合物)(例1)アルキルスルホン酸(R−SO3 H):メタンスルホン酸など(例2)芳香族スルホン酸:ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸など【0033】iv)スルフィン酸類(炭化水素の水素原子がスルフィン基(−SO2 H)に置換された化合物)(例1)アルキルスルフィン酸(R−SO2 H):メタンスルフィン酸など(例2)芳香族スルフィン酸:ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸など【0034】v)フェノール酸(芳香環の水素が水酸基に置換された化合物)(例1)フェノール、クレゾールなどのアルキルフェノール類(例2)カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、オルシンなどの多価フェノール類【0035】vi)ホスホン酸類(炭化水素の水素原子がホスホン基(−PO2 H2 )に置換された化合物)(例1)アルキルホスホン酸類(R−PO2 H2 ):メチルホスホン酸など(例2)芳香族ホスホン酸類:フェニルホスホン酸など【0036】vii)ホスフィン酸類(炭化水素の水素原子がホスフィン基(−PO2 H)に置換された化合物)(例1)アルキルホスフィン酸類:ジメチルホスフィン酸など(例2)芳香族ホスフィン酸類:ジフェニルホスフィン酸など【0037】viii)複素環化合物のうち水素基がエノール構造をとる化合物:尿酸、バルビツル酸など【0038】以上の化合物は陰イオン交換樹脂で吸着して二酸化炭素で分離回収する有機酸の対象となる。ただし、上記化合物のなかでも、pH5〜6程度の水溶液に溶解しやすい化合物が分離回収するのに好ましい。【0039】次に、この発明の一実施の形態としての有機酸の分離方法を説明する。まず、抽出槽1内に有機酸を吸着しかつ水を含んで表面が水で濡れた状態の陰イオン交換樹脂を抽出槽1内に投入する。そして、供給槽4に蓄えられた二酸化炭素をポンプ5およびヒータ6を介して1MPa以上20℃以上に調整した上で抽出槽1に供給する。これによって、抽出槽1内を上記圧力、温度の二酸化炭素で満たしつつ、当該二酸化炭素を排出口1bから排出する。【0040】なお、この実施の形態では、抽出槽1内を約20MPa、約50℃とすべくポンプ5、ヒータ6等を設定した。【0041】二酸化炭素が抽出槽1内に満たされると、陰イオン交換樹脂に接触している水に二酸化炭素が溶解して、上記式(1)で示すように炭酸が発生する。この炭酸は、上記式(2)に示すように反応して、陰イオン交換樹脂に吸着している有機酸との交換がなされ、有機酸が水相に放出される。水相に放出された有機酸は、上記式(3)に示すように、高圧の二酸化炭素相に溶解することになる。【0042】以上を図示したのが図2および図3であり、図2は、二酸化炭素が抽出槽1に満たされた直後の状態を示し、図3は、二酸化炭素が水に溶解するととも有機酸が水相の放出され(図3の上図)、さらに有機酸が二酸化炭素相に溶解した状態(図3の下図)を示している。【0043】なお、二酸化炭素の圧力および温度は、それぞれがともに低ければ有機酸を二酸化炭素側に抽出する効率が下がり、高くなれば抽出する効率が向上するが、高くなりすぎれば、抽出槽1の負荷の増大および陰イオン交換樹脂の劣化を招くことになる。したがって、抽出槽1に満たす二酸化炭素は、6〜25MPaの圧力で25〜100℃の温度に維持することが、有機酸の抽出効率を向上しかつ抽出槽1の負担および陰イオン交換樹脂の劣化を抑制する上でより好ましい。【0044】また、水については、酸性からアルカリ性までの適用が可能であるが、二酸化炭素による有機酸の抽出効率を向上させる上で、pH5〜6に維持することが好ましい。なお、二酸化炭素による有機酸の抽出処理により、抽出槽1内の水分が低下した場合には、上述した式(1)〜式(3)の反応が維持できなくなるおそれがあるので、式(1)〜式(3)の反応を維持できる程度に抽出槽1内に水を供給する必要がある。この場合も、上述した陰イオン交換樹脂に対して50〜500重量%となるように水を抽出槽1内に供給することが好ましい。【0045】抽出槽1から流出する有機酸を含んだ二酸化炭素は、減圧分離槽2で減圧されることになる。この減圧分離槽2では、上述した約20MPaの圧力から約5MPaまで低下させる減圧を行い、この減圧に伴って、温度が約50℃から20℃まで低下する。この減圧によって、有機酸が二酸化炭素から濃縮された状態で分離回収されることになる。【0046】減圧後の二酸化炭素は、冷却手段3を介して冷却により液化された後、供給槽4に送られ、抽出槽1に供給可能な二酸化炭素として再利用されることになる。なお、冷却手段3に代えて、図示しないコンプレッサ等の圧縮手段を用いて二酸化炭素を液化して供給槽4に送るようにしてもよい。また、冷却手段3と圧縮手段の双方を用いて二酸化炭素を液化して供給槽4に送るようにしてもよい。【0047】また、二酸化炭素は、供給槽4から出て、抽出槽1を通り、再び供給槽4に戻る閉ループを循環することになるが、この循環過程においてやむを得ずロスする二酸化炭素分についてはそのロス分を供給槽4に補給することになる。【0048】以上の二酸化炭素の循環により、陰イオン交換樹脂からの有機酸の抽出が終了した後は、抽出槽1への二酸化炭素の供給を停止した後、例えば供給口1aおよび排出口1bをバルブ(図示せず)により閉塞した状態にする。そして、抽出槽1内を大気圧まで減圧した後、有機酸を除去した後の陰イオン交換樹脂を抽出槽1から取り出す。取り出された陰イオン交換樹脂は、有機酸等を吸着可能な再生陰イオン交換樹脂として利用されることになる。【0049】なお、再生陰イオン交換樹脂は、含水状態で抽出槽1から取り出して再利用することも、乾燥状態で抽出槽1から取り出して再利用することも可能である。すなわち、再生陰イオン交換樹脂を含水状態で取り出すには、有機酸の抽出が完了した時点で、抽出槽1への二酸化炭素の供給を停止して、当該抽出槽1から陰イオン交換樹脂を取り出すことによって得られる。【0050】また、再生陰イオン交換樹脂を乾燥状態で取り出すには、有機酸の抽出が完了した後も抽出槽1に二酸化炭素を供給し続けることによって、水分を取り除いた後に、陰イオン交換樹脂を抽出槽1から取り出すことによって得られる。なお、乾燥を促進させるために、抽出槽1に供給する二酸化炭素にメタノールやアセトン等のエントレーナを加えるようにしてもよい。そしてさらに、抽出槽1内の圧力を急激に抜くことによって、陰イオン交換樹脂表面の水を二酸化炭素の発泡効果により吹き飛ばして除去することにより、乾燥状態の陰イオン交換樹脂を得ることもできる。なお、発泡効果により吹き飛ばされた水は抽出槽1の底部から流出させることになる。【0051】上記のように構成された有機酸の分離装置および分離方法によれば、高圧の二酸化炭素を抽出槽1に連続的に供給することによって、陰イオン交換樹脂に吸着した有機酸を二酸化炭素に連続的に移行させることができるとともに、この二酸化炭素を減圧分離槽2で連続的に減圧することによって、濃縮された有機酸を連続的に回収することができる。したがって、有機酸を容易にかつ効率よく分離回収することができる。また、抽出槽1に供給する二酸化炭素の圧力を6〜25MPa、温度を25〜100℃に設定した場合には、有機酸を陰イオン交換樹脂から二酸化炭素に効率よく移行させることができる。【0052】しかも、例えばアルカリ水溶液等を大量に使うこともないので、例えば廃水処理における有機酸の分離回収や、濃縮された有機酸を得るための有機酸の分離回収に要するコストの低減を図ることができる。また、有機酸の濃縮に際しては、蒸留等の濃縮のための工程が不要であるので、さらにコストの低減を図ることができる。そして、陰イオン交換樹脂については、劣化を生じさせることなく再利用可能な状態まで再生することができる。【0053】また、水をpH5〜6に維持することによって、当該水に上述したように炭酸が大量に含有された状態になるので、この炭酸による殺菌効果によって、陰イオン交換樹脂の表面等に付着した細菌やバクテリア等を確実に死滅させることができる。したがって、再生後の陰イオン交換樹脂は、飲料水等のレベルの高い高純度のものを精製する陰イオン交換樹脂として有効に利用することができる。【0054】すなわち、分子内にカルボキシル基、スルホン基、スルフィン基、水酸基、燐酸基を1から3ないしはそれ以上を有する有機化合物又は含窒素有機化合物を、陰イオン交換樹脂から分離回収することによって、当該陰イオン交換樹脂の再生および殺菌、上記化合物の濃縮等を行うことができる。【0055】なお、上記実施の形態においては、有機酸を吸着する物質として、陰イオン交換樹脂を使用した例を示したが、この有機酸を吸着する物質としては、陰イオン交換樹脂以外の他の物質であってもよい。【0056】【実施例】次に、この発明の実施例を説明する。ここでは、特定の有機酸を担持した陰イオン交換樹脂を上記有機酸の分離装置の抽出槽1内に投入することによって、陰イオン交換樹脂から特定の有機酸を除去する実験を行った。【0057】1.実験条件実施例1陰イオン交換樹脂に担持した有機酸:酢酸水:乾燥陰イオン交換樹脂に対して100重量%となるように含浸させた。抽出槽1内の二酸化炭素の圧力:20MPa抽出槽1内の二酸化炭素の温度:40℃【0058】実施例2陰イオン交換樹脂に担持した有機酸:酢酸水:乾燥陰イオン交換樹脂に対して300重量%となるように含浸させた。抽出槽1内の二酸化炭素の圧力:20MPa抽出槽1内の二酸化炭素の温度:40℃【0059】実施例3陰イオン交換樹脂に担持した有機酸:蟻酸水:乾燥陰イオン交換樹脂に対して100重量%となるように含浸させた。抽出槽1内の二酸化炭素の圧力:20MPa抽出槽1内の二酸化炭素の温度:40℃【0060】実施例4陰イオン交換樹脂に担持した有機酸:蟻酸水:乾燥陰イオン交換樹脂に対して300重量%となるように含浸させた。抽出槽1内の二酸化炭素の圧力:20MPa抽出槽1内の二酸化炭素の温度:40℃【0061】比較例1陰イオン交換樹脂に担持した有機酸:酢酸水:乾燥陰イオン交換樹脂に対して100重量%となるように含浸させた。抽出槽1内の二酸化炭素の圧力:0.1MPa抽出槽1内の二酸化炭素の温度:40℃【0062】比較例2陰イオン交換樹脂に担持した有機酸:蟻酸水:乾燥陰イオン交換樹脂に対して100重量%となるように含浸させた。抽出槽1内の二酸化炭素の圧力:0.1MPa抽出槽1内の二酸化炭素の温度:40℃【0063】2.実験結果実験結果を表1に示す。この表1において、水樹脂比は、陰イオン交換樹脂に対する水の重量比を示したものであり、次の式(4)によって計算したものである。水樹脂比=水/乾燥陰イオン交換樹脂 (g/g) …(4)【0064】また、表1において、除去率は、陰イオン交換樹脂に担持された酢酸または蟻酸に対する二酸化炭素の減圧によって回収された酢酸または蟻酸の重量比を示したものであり、次の式(5)によって計算したものである。除去率=(回収された有機酸/陰イオン交換樹脂に担持した有機酸)×100(%) …(5)【0065】【表1】【0066】3.考察表1に示すように、酢酸および蟻酸のいずれの場合も、二酸化炭素の圧力を高めることによって、陰イオン交換樹脂からの除去率が向上することが確認できた。また、蟻酸を担持させた場合には、水樹脂比の増大によって除去率が若干向上することが確認できた。【0067】【発明の効果】以上説明したように、請求項1〜4に記載の発明によれば、物質または陰イオン交換樹脂に吸着した有機酸を二酸化炭素に移行させることができるので、当該二酸化炭素を減圧することによって、有機酸を容易にかつ高濃度で分離回収することができる。この際、アルカリ水溶液等を大量に使う必要もないので、濃縮された有機酸の分離回収に要するコストの低減を図ることができる。また、陰イオン交換樹脂については、劣化を生じさせることなく再利用可能な状態まで再生することができる。したがって、有機酸を陰イオン交換樹脂から容易にかつ低コストで分離回収することができるとともに、陰イオン交換樹脂を再生することができる。【0068】また、水には、上述したように炭酸が大量に含有された状態になるので、この炭酸の殺菌効果によって、陰イオン交換樹脂の表面等に付着した細菌やバクテリア等を確実に死滅させることができる。したがって、再生後の陰イオン交換樹脂は、飲料水等の高純度のものを精製するための付加価値の高いものに再生することができる。【0069】請求項2〜4に記載の発明においては、抽出槽から抜き出した1MPa以上20℃以上の二酸化炭素を減圧した後、当該二酸化炭素を再び1MPa以上20℃以上に昇圧、加熱して抽出槽に供給することが連続してなされるので、有機酸を連続して分離回収することができる。したがって、二酸化炭素を無駄なく有効に利用することができると共に、有機酸をより容易にかつ効率的に分離回収することができる。【0070】請求項3および4に記載の発明においては、二酸化炭素の圧力を6〜25MPa、温度を25〜100℃に設定しているので、有機酸をこれを吸着した物質または陰イオン交換樹脂から二酸化炭素により効率よく移行させることができる。したがって、有機酸の分離能率の向上を図ることができる。【図面の簡単な説明】【図1】この発明の一実施の形態としての有機酸の分離方法を実施する有機酸の分離装置を示すブロックである。【図2】同有機酸の分離装置における抽出槽内に二酸化炭素が満たされた直後の状態を示す説明図である。【図3】同有機酸の分離装置における抽出槽内において二酸化炭素が水に溶解するととも、有機酸が水相に放出され、有機酸が二酸化炭素相に溶解する状態を示す説明図である。【符号の説明】1 抽出槽2 減圧分離槽5 ポンプ6 ヒータ 有機酸を吸着しかつ水分を含んだ物質に、圧力が1MPa以上で温度が20℃以上の二酸化炭素を接触させることにより、上記有機酸を上記二酸化炭素に移行させて上記物質から分離することを特徴とする有機酸の分離方法。 有機酸を吸着しかつ水分を含んだ物質を抽出槽内に収容し、上記抽出槽内に圧力が1MPa以上で温度が20℃以上の二酸化炭素を供給することによって上記有機酸を上記二酸化炭素に移行させ、当該有機酸を含む二酸化炭素を上記抽出槽から排出した後に減圧することによって、当該二酸化炭素から上記有機酸を分離した後、当該二酸化炭素を1MPa以上で20℃以上に昇圧、加熱して再び上記抽出槽内に供給することを特徴とする有機酸の分離方法。 上記1MPa以上に代えて6〜25MPaとし、上記20℃以上に代えて25〜100℃としたことを特徴とする請求項1または2に記載の有機酸の分離方法。 上記物質は、陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の有機酸の分離方法。 【課題】有機酸をこれを吸着した物質から容易にかつ低コストで分離回収することにある。【解決手段】有機酸を吸着しかつ水分を含んだ物質(陰イオン交換樹脂)に、圧力が1MPa以上で温度が20℃以上の二酸化炭素を接触させることにより、上記有機酸を上記二酸化炭素に移行させて上記物質から分離する構成になっている。【選択図】 図1