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タイトル:公開特許公報(A)_中和反応熱の概算方法および概算装置
出願番号:2002240376
年次:2004
IPC分類:7,G01N25/48,G01N21/78


特許情報キャッシュ

坂井 宏行 JP 2004077367 公開特許公報(A) 20040311 2002240376 20020821 中和反応熱の概算方法および概算装置 財団法人鉄道総合技術研究所 000173784 廣瀬 哲夫 100085394 坂井 宏行 7 G01N25/48 G01N21/78 JP G01N25/48 G01N21/78 C 4 OL 6 2G040 2G054 2G040AB14 2G040BA02 2G040BA24 2G040CA12 2G040CA23 2G040CB04 2G040GA01 2G040GA05 2G040GA07 2G040GB02 2G040ZA05 2G054AA02 2G054AB10 2G054EA03 2G054GA04 2G054GB02 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ミリモル・オーダーという希薄濃度であっても、酸・アルカリ中和反応の反応熱を概算することができる中和反応熱の概算方法および概算装置の技術分野に属するものである。【0002】【従来技術】種々の化学現象を理解するうえで反応熱はきわめて有益な情報を与えてくれる。そしてこのような反応熱を測定する場合、通常は、ポリウレタンフォームやポリスチレンフォーム等の断熱性の優れた断熱材を用いて厳重に断熱した反応容器を用い、該容器中で、モータードライブのスターラー(撹拌器)で撹拌しながら化学反応を行わせ、発生する熱量の増減をサーミスター抵抗温度計やベックマン温度計等の特殊な温度計で精密に測定して反応熱を求める方法が一般に採用されている。【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで前記従来のものでは、反応溶液の温度変化を温度計で実測するものであるため、反応溶液はモル・オーダーと高濃度溶液であることが要求され、ミリモル・オーダーのような希薄濃度での測定は事実上困難であった。しかも反応溶液中で行われる反応については、できるだけ均一な反応場で進行させる必要があり、そのため反応溶液の濃度が高くなるほどスターラーによる撹拌を厳重に行うことが要求される。一方、スターラーによる撹拌をした場合、該撹拌に伴う強制的な分子運動によって熱(いわゆる「かきまぜ熱」)が発生するため、反応熱の測定に影響を及ぼすような激しい撹拌をすることは好ましくなく、適度な速度で撹拌することが要求される。この結果、従来の温度計を用いての反応熱の測定手法では、均一な反応場を確保することと撹拌により熱が発生することとが相反することとなって、実際には、反応熱を再現性良く正確に測定するには相当の困難があり、一定の測定値を再現させるためには時間をかけた繰り返し測定が不可欠であって、ここに本発明が解決せんとする課題がある。一方、測定精度を向上させる条件の一つとして測定時間の十分な確保が必要であって測定の作業効率は良好とはいえない。加えて、前述したように反応容器に対する断熱性の確保は測定値に直接影響を及ぼすことになるため、反応容器の断熱化には特別の工夫が要求されると共に、反応容器の材料として銀が使用されるなど、反応装置自体の構造が単純な割には工賃や材料費が割高になっており、ここにも本発明の解決すべき課題がある。【0004】【課題を解決するための手段】本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、酸・アルカリの中和反応を行ったときに発生する中和熱を、該中和反応において発生するケイ光の発光強度を測定し、該測定した発光強度から概算するものであることを特徴とする中和反応熱の概算方法である。請求項2の発明は、酸・アルカリの中和反応を行ったときに発生する反応熱を概算する装置であって、該中和反応において発生するケイ光の発光強度を測定する測定手段、該測定した発光強度から既知の反応熱データを基準にして反応熱を概算する概算手段とを備えていることを特徴とする中和反応熱の概算装置である。そしてこれらのようにすることにより、従来では測定できない希薄濃度であっても簡単に中和反応の反応熱の概算ができることになる。これらにおいて、概算される反応熱は、実際に行われた濃度における反応熱または、1当量あたりの反応熱である。【0005】【発明の実施の形態】本発明は、激しい撹拌をしないでも均一な反応場を得やすいミリモル・オーダーという希薄濃度下での酸・アルカリの中和反応の反応熱の概算もできるようにしたものである。本発明を完成するにあたり、本発明の発明者は、酸とアルカリとを反応させた際に、反応溶液から微弱ではあるが波長が450〜700nm(ナノメートル)の範囲でケイ光が発せられることを発見した。そしてこの発光現象は、酸とアルカリとが中和する際に発生する反応熱(熱エネルギー)により、反応溶液中に溶存する酸素分子が励起して一重項酸素となり(式(1))、この一重項酸素が基底状態(三重項酸素)へ緩和するときに光エネルギーとしてケイ光(化学発光)を放出した(式(2))ものであると推定した。3O2+E→1O2           (1)1O2+1O2→23O2+hν      (2)つまりこれらの式から、ケイ光の発光強度というものは励起した一重項酸素の量に関係があり、かつ該一重項酸素の量は酸・アルカリの中和反応によって発生する反応熱と関係があるのではないかという予測をたて、実際に酸・アルカリの中和反応をさせたときに発せられるケイ光の発光強度を、濃度を種々変化させながら測定してみたところ、該ケイ光の発光強度が反応溶液の濃度に比例することを見出した。そしてこのケイ光の発光強度は、反応溶液の濃度がミリモル・オーダーという従来では測定不可能な希薄溶液であっても十分に測定できることから、該ミリモル・オーダーの希薄溶液であっても中和反応において発生する化学発光の強度を測定することで該中和反応の反応熱の測定ができることを見出し、本発明を完成するに至った。【0006】本発明を実施するにあたり、反応溶液に溶存する酸素量がケイ光の発光強度に影響を与えるものと考え、反応溶液をイオン交換水としたときに、このイオン交換水を、空気雰囲気下で1時間沸騰させた後、イオン交換して得たものと、空気雰囲気下で6時間沸騰させた後、イオン交換して得たもの、窒素ガス雰囲気下で1時間沸騰させた後、イオン交換して得たもの、さらにはイオン交換した後、室温にて窒素ガスを1時間バブリングして得たものをそれぞれ用いて中和反応させたときに発せられるケイ光の発光強度を測定したところ、両者の発光強度に殆ど差異はなく一定であり、そこで通常得られる蒸留水に溶存する酸素量があれば十分に中和反応の反応熱が測定できることを確認した。【0007】本発明は、酸・アルカリが中和反応するときに発生する反応熱を、ケイ光の発光強度を測定することで概算しようとするものであるが、発光強度は測定装置によって相対強度(例えばミリボルト(mV))として測定される。従って、未知の中和反応の反応熱を概算しようとするときには、標準溶液として反応熱(中和エンタルピー)が既知の酸・アルカリについて予め設定した濃度で中和反応を行ってそのとき発せられるケイ光の発光強度を相対強度として測定し、この測定された相対強度と、実際に求めようとする中和反応をすることで測定されたケイ光の相対強度との関係から、実際に行った濃度での中和反応の反応熱を概算することができ、また実際に中和反応を行った濃度から1当量あたりの反応熱についても概算することができる。【0008】[実験例]<反応装置の作成>反応装置としては、図1に示すように酸が供給される第一流路1とアルカリが供給される第二流路2とで構成されるが、この装置では、アルカリが供給される第二流路2についてはアルカリを供給するためのインジェクター3が設けられ、そして両流路1、2が合流して主流路4の流れとなって反応し、該主流路4に配したケイ光の強度検出装置5によってケイ光の強度測定がなされるが、具体的には、流路1、2、4は直径0.5mm(ミリメートル)のポリテトラフルオロエチレン製のチューブにより形成され、また、第一、第二流路1、2はともに0.1mL min−1(ミリリットル 分のマイナス1乗)の流速になるよう設定した。また、ケイ光の発光強度の測定装置5は市販の装置を採用した。さらに発光強度の測定するため採用したフローセルは70μL(マイクロリットル)の石英製スパイラルセルである。【0009】<発光強度と中和反応濃度との関係>硝酸(HNO3)と水酸化カリウム(KOH)について、1.0、2.0、4.0、10、20、30mmol L−1(ミリモル リットルのマイナス1乗)の濃度に調製した各水溶液を作成し、前記反応装置を用いて中和反応(当量での中和反応)を行い、そのとき発せられるケイ光の発光強度を測定(反応温度は18℃)したところ、測定されたケイ光の相対強度は図2に示す表図のようになった。この表図から、中和反応により発せられるケイ光の相対強度は、濃度に比例していることが確認される。因みに、10.0mmol L−1の濃度で中和反応をしたときに観測されたケイ光の相対強度は6.0mVであった。因みに、塩酸と水酸化カリウムとについても同様にして濃度を変化させて実験してみたところ、濃度とケイ光の相対強度とは比例の関係にあることが確認され、しかも10.0mmol L−1の濃度で中和反応をしたときに観測されたケイ光の相対強度は6.0mVであった。【0010】<中和反応の反応熱の概算1>そこで次に、反応条件は前記硝酸と水酸化カリウムの中和反応の場合と同様であるが、硝酸の濃度を10、20、30mmol L−1と一定にし、水酸化カリウムの濃度を変化させることで[水酸化カリウム]/[硝酸]の濃度比を種々変化させたものについて中和反応を試みた。その場合に測定されたケイ光の相対強度は図3に示すグラフ図のようになった。このグラフ図から、測定されるケイ光の相対強度は、各濃度比において、硝酸の濃度によく比例していることが確認される。そこで例えば、硝酸の濃度が20mmol L−1のものにおいてみたときに、前記濃度比が1.0であるとき測定される相対強度は12mV、0.7である場合との相対強度比は5.8mVであり、これらから相対強度比は5.8/12となる。ところで、硝酸と水酸化ナトリウムとを中和させたときの中和エンタルピー(−ΔHn)は既知であって58.19kJ mol−1(キロジュール モルのマイナス1乗)であることから、前記濃度比を0.7とした場合の中和反応の反応熱は58.19×20×10−3×5.8/12=0.56kJ L−1として概算することができる。【0011】<中和反応の反応熱の概算1>次に、アルカリとして50mmol L−1に調製した炭酸ナトリウムおよび100mmol L−1に調製した水酸化カリウムをそれぞれ用意し、酸として100mmol L−1に調製した塩酸を用意し、それぞれについて前記同様の条件(当量での反応)で中和反応を行い、各中和反応において発するケイ光の相対強度を測定したところ、塩酸−炭酸ナトリウムの中和反応系の相対強度を1とした場合に、塩酸−水酸化カリウムの反応系については0.67であることが観測された。また、塩酸−水酸化カリウムの中和エンタルピーは58.30kJ mol−1であることから、炭酸ナトリウム−塩酸の当量で中和反応系について、塩酸濃度が100mmol L−1である場合の反応熱は、58.30×100×10−3×0.67=3.91kJ L−1として概算することができる。さらにまた、この中和反応系について1当量あたりの中和熱についても、前記反応熱が塩酸濃度を100mmol L−1として概算されたものであるから、3.91÷0.1=39.1kJ 当量−1として概算することができる。【0012】<中和反応の反応熱の概算2>また次に、酸として100mmol L−1に調製した塩酸および硝酸、そして50mmol L−1に調製した硫酸(H2SO4)を用意し、アルカリとして50mmol L−1に調製した炭酸ナトリウム(Na2CO3)を用意し、それぞれについて中和反応を行い、各中和反応において発するケイ光の相対強度を測定したところ、塩酸−炭酸ナトリウムの中和反応系の相対強度を1とした場合に、硝酸−炭酸ナトリウムの反応系では0.81、硫酸−炭酸ナトリウムの反応系では0.24であることが観測された。そしてこれらについても、前記同様にして反応濃度での反応熱、そして1当量あたりの中和熱についても概算することができる。【0013】ところで前記した中和反応熱の概算にあたり、前述した反応装置に設けたケイ光の強度測定をする測定装置からの測定データを入力し、該入力したデータと既知の中和エンタルピーとから前記概算したようにして反応熱、そして当量あたりの中和熱を概算することができるよう演算ソフトを組むことができ、このようにすることで、いちいち計算することなく、データ入力(手動入力、自動入力の何れでも良い)に基づいて自動的な概算ができるように設定することもできる。【0014】【効果】このように本発明では、中和反応の反応熱(実際の反応系および1当量あたりの反応熱)を、従来のように厳重な断熱化を計った反応容器を用いることなく、しかもミリモル・オーダーという反応場の均一化を得やすい希薄濃度においても簡単に概算することができることになる。【図面の簡単な説明】【図1】中和反応装置の概略フロー図である。【図2】硝酸−水酸化カリウムを中和させたときの濃度と測定されたケイ光の相対強度との関係を記すグラフ図である。【図3】硝酸濃度は一定とし、水酸化カリウムの濃度を変化させたときの水酸化カリウムと硝酸との濃度比の変化と測定されたケイ光の相対強度との関係を表すグラフ図である。 酸・アルカリの中和反応を行ったときに発生する反応熱を、該中和反応において発生するケイ光の発光強度を測定し、該測定した発光強度から概算するものであることを特徴とする中和反応熱の概算方法。 酸・アルカリの中和反応を行ったときに発生する反応熱を概算する装置であって、該中和反応において発生するケイ光の発光強度を測定する測定手段、該測定した発光強度から既知の反応熱データを基準にして反応熱を概算する概算手段とを備えていることを特徴とする中和反応熱の概算装置。 請求項1または2において、概算される反応熱は、実際に行われた濃度における反応熱であることを特徴とする中和反応熱の概算方法または概算装置。 請求項1または2において、概算される反応熱は、1当量あたりの反応熱であることを特徴とする中和反応熱の概算方法または概算装置。 【課題】硝酸、水酸化カリウムを中和させる場合のような中和反応における反応熱を、厳重に断熱化した容器を用いてモル・オーダーのような高濃度で求める必要がないようにする。【解決手段】硝酸と水酸化ナトリウムとを中和させたとき、発光強度が濃度に比例するケイ光が発せられることを発見し、そこでこのケイ光の発光強度を測定し、該測定した発光強度と既知の中和エンタルピーとから該中和反応系における反応熱を、ミリモル・オーダーのような希薄溶液でおいても簡単に測定し、概算できるようにした。【選択図】    なし


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