タイトル: | 公開特許公報(A)_金コロイド溶液及びその製造方法 |
出願番号: | 2002235926 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,B01J13/00,A61K7/00,A61K33/24,A61P3/02,B22F9/24,A23L1/00 |
加藤 健次 松田 直樹 祁 志美 JP 2004073964 公開特許公報(A) 20040311 2002235926 20020813 金コロイド溶液及びその製造方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 加藤 健次 松田 直樹 祁 志美 7 B01J13/00 A61K7/00 A61K33/24 A61P3/02 B22F9/24 A23L1/00 JP B01J13/00 Z A61K7/00 B A61K7/00 M A61K33/24 A61P3/02 B22F9/24 F A23L1/00 K 6 OL 7 4B035 4C083 4C086 4G065 4K017 4B035LE03 4B035LG01 4C083AB191 4C083CC01 4C083CC04 4C083DD23 4C083DD27 4C083DD39 4C083EE01 4C083EE11 4C083FF01 4C086AA03 4C086HA01 4C086NA03 4C086ZC21 4G065AA01 4G065AA04 4G065AB06Y 4G065BB01 4G065BB02 4G065CA01 4G065DA01 4G065DA02 4G065DA06 4G065FA02 4G065FA03 4K017AA08 4K017BA02 4K017DA07 4K017DA09 4K017EJ01 4K017FB02 4K017FB08 4K017FB11 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、保存性に優れた金コロイド溶液及びその製法に関するものである。【0002】【従来の技術】現在、金コロイド溶液は、医薬品、化粧品、食品及び塗料などの広範な分野に利用されており、特に、医療用の免疫反応を利用した様々な検査用試薬の基材や抗原抗体反応などを利用したバイオセンサーの基材などとして、また 健康関連素材や美容液などにも広く使用されている。【0003】従来、金コロイド溶液は、塩化金酸溶液に還元剤としてクエン酸塩溶液を加えて加熱することにより、金イオンを還元させてコロイドとする溶液内還元反応を用いて製造されている。ところが、この方法で調製された金コロイド液は、保存性が悪いために、使用する毎に調製する、いわゆる用事調製の形を採っているのが実状である。そのため、金コロイド液を使用しようとする際、その都度、金コロイド液を調製しなければならず、その調製に用いる試薬、加熱用の器具及び設備などを必要とする上に、その作業に多大な労力を要するなどの問題があった。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術における上記した実状に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、金微粒子が安定した分散状態で長期に亘り保存され、簡易に繰り返し使用できる高純度の金コロイド溶液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、金塩の還元及び得られた金微粒子の安定した分散状態の保持に好適な有機化合物を用いて、金コロイド溶液を容易に調製できる製造方法を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明の金コロイド溶液は、金塩を糖類で還元された金微粒子が分散している固体を、水に溶解させたことを特徴とする。また、本発明の金コロイド溶液の製造方法は、金塩と糖類の混合溶液を加熱して蒸発乾固あるいは混合粉末を加熱融解させた後乾固させて得られた固体を、水に溶解させたことを特徴とする。上記の糖類としては、単糖類、二糖類及び多糖類から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。また、金塩としては、塩化金酸を用いることが好ましい。【0006】【発明の実施の形態】本発明は、金コロイド溶液を必要なときに簡単に繰り返し使用できるように、あらかじめ保存可能な金コロイド溶液の中間体として、長期に亘って保存できる固体状物を作製しておき、これを使用時に水に溶解させるのみで簡易に調製できる高純度の金コロイド溶液を提供するものであって、金塩の還元とその還元により生成する金微粒子を安定した分散状態で長期間固体として保存できる特定の有機物質として、糖類を用いるものである。【0007】本発明において、原料の金塩としては、塩化金酸、その水和物や塩類、金粉や金箔等を王水に溶解させたものなどが用いられる。その金塩を糖類に添加する量は、金イオンが還元されてコロイド状になる範囲であればよく、水に溶解した状態の金コロイド溶液中における金濃度としては0.0001〜0.1重量%の範囲が好ましい。【0008】金塩の還元に用いられる糖類としては、単糖類、二糖類、多糖類から選ばれる1種以上が挙げられる。その単糖類としては、炭水化物の基本構造となっている物質であって、式 Cn(H2O)n(式中、nは1〜10の整数である。)で表される炭水化物からなり、オキシメチレン基(−CHOH−)が直鎖状に連なった同族体であって、例えば、ペントース類、ヘキソース類等が含まれ、具体的にはフルクトース等が挙げられる。また、二糖類としては、麦芽糖、セロビオース等の還元性のもの、トレハロース、蔗糖等の非還元性のものが挙げられる。さらに、多糖類としては、セルロース、デンプン、グリコーゲンなどが挙げられる。【0009】これらの糖類は、通常、適宜水などと混合した溶液として用い、その溶液中に金塩を添加し溶解させて用いるが、単糖類及び二糖類等は、加熱されると糖類自体に含まれる水分により水飴状になることから、必ずしも水を添加した混合溶液として用いる必要はない。【0010】次に、金塩の溶解した溶液を、加熱して水分などを蒸発により乾固させて固体状物を生成させる。その加熱条件としては、金塩の溶解液から水分などが徐々に蒸発して乾燥し固体状物が得られる温度及び時間であれば良く、例えば、60〜120℃の加熱下に数分間から12時間放置するなどによって行う。【0011】得られた固体物は、蒸発乾固する過程で金イオンが還元されて、コロイド状金イオンが生成しているとともに、金粒子間に糖類などの還元剤が介在しているから、生成した金粒子同士の凝集がなく、個々の金粒子は分散し安定した状態で存在しているものと考えられる。この固体状物は、コロイド状金粒子を長期間に亘り安定して保存しているものであり、別途調製して保存しておくと、金コロイド溶液の使用を必要とする時に適量の水に溶解させるのみで、金コロイド溶液を容易に得ることができる。【0012】【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。実施例1金0.07gを王水20ml中に入れて溶解させた後、蒸発乾固させることによって塩化金酸を得た。これに水50ml及び蔗糖0.2gを加えて溶解させた後、70℃の乾燥機中に半日間放置して加熱乾燥させたところ、暗緑色の固形物が生成した。この固形物を水50mlに溶解させて金コロイド溶液を得た。得られた金コロイド溶液の光透過スペクトル図を、図1に示す。上記の固形物は、蒸発乾固する過程の粘稠な溶液中において、金イオンが還元されてコロイド状になっているものと解される。その際、金イオンの周囲には糖分の膜が形成されるため、金粒子同士が密着して凝集することはなく、個々の金粒子は分散し安定した状態で存在しているものと考えられる。【0013】実施例2実施例1における加熱乾燥条件である70℃の乾燥機中に半日間放置を、80℃の乾燥機中で12分間に代えたこと以外は、実施例1と全く同様にして、固形物を生成させ、その固形物から金コロイド溶液を得た。得られた金コロイド溶液の光透過スペクトル図を、図2に示す。【0014】実施例3実施例1における加熱乾燥条件である70℃の乾燥機中に半日間放置を、120℃の乾燥機中で3分間に代えたこと以外は、実施例1と全く同様にして、固形物を生成させ、その固形物から金コロイド溶液を得た。得られた金コロイド溶液の光透過スペクトル図を、図3に示す。【0015】実施例4澱粉0.3gを濃度7mMの塩化金酸溶液3mlと混合した溶液を、90℃で17時間加熱したところ、黒灰色の固形物が生成した。この固形物を水に溶かしたところ、赤紫色の金コロイドを得た。また、100℃に15時間加熱しても、同様に金コロイドが得られた。 得られた金コロイド溶液の光透過スペクトル図を、図4に示す。一般に、澱粉は砂糖よりも水に難溶であるが、このように澱粉も砂糖と同じく金コロイド液を得ることができた。なお、図1〜4において、横軸は波長であり、縦軸は吸光度であって、図によれば、金コロイド固有の吸収バンドが現れており、金コロイドが生成していることを確認できる。実施例5固体の砂糖と塩化金酸の混合粉末を、80℃で12分間加熱したところ、同じく金コロイドの前駆体を得ることができた。【0016】各実施例で得られた金コロイド溶液の色は、溶解当初は淡黄色であるが、時間が経つにつれて赤味を増し、10分経過後には赤ワインのような濃い赤色になった。この赤色液のスペクトル図は、金コロイド液の呈する特有のスペクトルであるとともに、いわゆるチンダル現象も確認されたことから、金コロイド液であることは明白である。この金コロイド溶液の色は、30分経過すると、ほぼ一定の濃度になった。また、この金コロイド溶液は非常に安定しており、数週間から数ヶ月間ほぼ一定であった。本発明で得られる金コロイド溶液が安定性を有する主な理由は、従来のクエン酸等を還元剤とする場合とは異なり、得られた金コロイド溶液中に金属イオンが全く含まれない点にあるものと推定される。【0017】【発明の効果】本発明によれば、金コロイドをあらかじめ水に容易に溶解する固体状態にできるから、必要な時に水に溶解させるのみで簡易に高純度の金コロイド溶液を提供できるとともに、数多くの金コロイド溶液の繰り返しの使用にも迅速に対応可能である。また、本発明は、金微粒子の分散した安定な固体状態で保存できることは、金コロイド溶液の前駆体として長期に亘って保管できるばかりでなく、移送にも便利であり、利用価値の高いものである。【図面の簡単な説明】【図1】本発明における一例の金コロイド溶液の光透過スペクトル図である。【図2】本発明における他の一例の金コロイド溶液の光透過スペクトル図である。【図3】本発明における他の一例の金コロイド溶液の光透過スペクトル図である。【図4】本発明における他の一例の金コロイド溶液の光透過スペクトル図である。 金塩を糖類で還元された金微粒子が分散している固体を、水に溶解させたことを特徴とする金コロイド溶液。 糖類が、単糖類、二糖類及び多糖類から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の金コロイド溶液。 金塩が、塩化金酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の金コロイド溶液。 金塩と糖類を混合し、その混合溶液を加熱して蒸発乾固させて得られた固体を、水に溶解させることを特徴とする金コロイド溶液の製造方法。 糖類が、単糖類、二糖類及び多糖類から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の金コロイド溶液の製造方法。 金塩が、塩化金酸であることを特徴とする請求項4または5に記載の金コロイド溶液の製造方法。 【課題】金微粒子が安定した分散状態で長期に亘り保存され、簡易に繰り返し使用できる金コロイド溶液及びその製法を提供する。【解決手段】金塩を糖類で還元された金微粒子が分散している固体を、水に溶解させた金コロイド溶液、また、金塩と糖類とを混合し、その混合溶液を加熱して蒸発乾固させて得られた固体を、水に溶解させる金コロイド溶液の製造方法である。その糖類としては、単糖類、二糖類及び多糖類から選ばれる1種以上を用いる。金コロイド溶液の前駆体である固体を予め作製しておくことにより、迅速かつ簡易に金コロイド溶液を使用できるという利点がある。【選択図】 なし