タイトル: | 公開特許公報(A)_アダマンタノンの精製方法 |
出願番号: | 2002234578 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C45/84,B01D3/14,B01D9/02,C07C45/81,C07C49/453 |
玉置 正典 矢次 貴志 西川 寛 吉留 俊英 JP 2004075557 公開特許公報(A) 20040311 2002234578 20020812 アダマンタノンの精製方法 スガイ化学工業株式会社 000107561 出光石油化学株式会社 000183657 廣瀬 孝美 100085486 玉置 正典 矢次 貴志 西川 寛 吉留 俊英 7 C07C45/84 B01D3/14 B01D9/02 C07C45/81 C07C49/453 JP C07C45/84 B01D3/14 A B01D9/02 601H B01D9/02 602B B01D9/02 608A B01D9/02 619Z C07C45/81 C07C49/453 2 OL 6 4D076 4H006 4D076AA01 4D076AA11 4D076AA12 4D076AA22 4D076BA01 4D076BB03 4H006AA02 4H006AD12 4H006AD15 4H006AD17 4H006BB11 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は昇華性物質であるアダマンタノンを精製する方法に関する。【0002】【従来の技術】本発明の目的被精製物であるアダマンタノンは医薬用途や電材用途において重要な中間体である。医薬用途、電材用途共に高純度化が要望されているが、アダマンタノンが昇華性を有する化合物であるがために、工業ベースでの大量精製において充分な純度が得られる方法が無かった。例えば、再結晶法ではアダマンタノンを合成する際の原料であるアダマンタンとの分離が難しく、昇華法では装置的な問題から大量精製には適していない。また、アダマンタノンは昇華性の固体であるために通常の蒸留での精製は不可能で、仮に蒸留したとしても昇華したアダマンタノンが蒸留装置の冷却管内で析出して留出ラインを閉塞させる問題がある。このように、昇華性物質であるアダマンタノンを高純度に大量精製する効率的な方法はなかった。なお、不純物としての昇華性物質を除去することを目的とした精製方法としては特開2001−97893公報記載の方法がある。当該特開2001−97893公報に記載される方法は、非昇華性であり且つ高沸点の化合物であるアルキルアダマンチルエステルを、アダマンタンなどの昇華性物質を不純物として含有する溶液から精製する方法に関するもので、本発明のように昇華性物質であるアダマンタノンを精製する方法とは全く技術思想が異なるものである。【0003】【発明が解決しようとする課題】昇華性を有する化合物であるアダマンタノンを精製する方法においては、再結晶法、昇華法、蒸留法のどれも充分な純度と大量精製を同時に満足する方法ではない。本発明者らはこれらの精製法の長所と短所に注目して鋭意検討した結果、アダマンタノンの昇華温度と近似した沸点を有し、且つアダマンタノンの溶解度が低い溶媒を用いてアダマンタノンを懸濁させて蒸留を行うことで熱アダマンタノン/溶媒溶液として主留分を得、次いで得られた主留分を冷却してアダマンタノンを結晶化して、結晶を採取することにより精製アダマンタノンが得られることを見出し、アダマンタノンを高純度に大量精製することを可能にした。このように、本発明は効率的にアダマンタノンを高純度に大量精製することを可能にする極めて優れた方法を提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】上記の問題を解決するためになされた本発明の要旨は、(1)アダマンタノンを、アダマンタノンの昇華温度と近似した沸点を有し且つアダマンタノンの溶解度が低い溶媒と混合し、蒸留を行うことにより主留分を熱アダマンタノン/溶媒溶液として得、次いで当該溶液を冷却してアダマンタノンを結晶化させ、結晶を採取して精製アダマンタノンを得ることを特徴とするアダマンタノンの精製方法;(2)溶媒として、炭素数10〜14の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素の1種又は2種以上を用いる上記(1)記載のアダマンタノンの精製方法;である。【0005】【発明の実施の形態】本発明のアダマンタノンの精製方法は、アダマンタノンの昇華温度と近似した沸点を有し、且つアダマンタノンの溶解度が低い溶媒を用いてアダマンタノンを懸濁させた状態で通常の蒸留方法に従い蒸留を行い、次いで主留分を冷却結晶化し、析出した結晶を採取することで精製アダマンタノンを得る方法である。【0006】本発明において、アダマンタノンの昇華温度と近似した沸点を有する溶媒とは、アダマンタノンの昇華温度(180〜210℃)と近似の沸点、即ち160〜280℃、好ましくは210〜260℃の沸点を有する溶媒を意味する。溶媒の沸点が160℃よりも低い場合には溶媒のみが先に留出するために精製効果がない。溶媒の沸点が280℃よりも高い場合には溶媒の留出前にアダマンタノンの昇華が始まり、蒸留装置の内壁や冷却管内で結晶が析出することによる留出ラインの閉塞を起こすおそれがある。【0007】また、アダマンタノンの溶解度が低い溶媒とは、加熱(又は加温)時にはアダマンタノンを溶解し得るが、常温〜0℃程度に冷却したときにアダマンタノンの結晶が析出し得る溶媒を意味する。即ち、通常、アダマンタノンの再結晶に使用され得る溶媒である。より具体的には、常温〜0℃程度におけるアダマンタノンの溶解度が、10w/v%以下、好ましくは5w/v%以下、より好ましくは2w/v%以下の溶媒が用いられる。【0008】本発明で用いられる溶媒は上記の条件を満たす限り特に限定されないが、好ましい例としては、炭素数10〜14の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素(例えば、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、デカジエン、テトラデカジエン、デカリン、テトラリン等)が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。【0009】本発明の精製方法は、上記の溶媒とアダマンタノンの混合物を使用する以外は、通常の蒸留方法及び装置を用いて行うことができる。蒸留時の常圧・減圧の条件は問わないが常圧である場合には200度付近の高温を必要とするので減圧条件下での蒸留が好ましく、2.7kPaの減圧条件であれば100℃付近での蒸留が可能となる。また、主留分はアダマンタノンと溶媒との熱溶液として留出し、冷却するとアダマンタノンが析出するために蒸留中はアダマンタノンが析出しない程度に保温することが望ましい。【0010】アダマンタノンと溶媒との熱溶液として留出した主留分を冷却することによりアダマンタノンの結晶が析出する。析出した結晶の採取方法は特に限定されず、慣用の方法を用いることができ、例えば濾過、遠心分離、デカンテーションなどが例示される。濾過方法が簡便で好ましい。本発明においては、前述のように蒸留時にアダマンタノンの溶解度が低い溶媒を用いているため、アダマンタノンの冷却・結晶化は、特別な操作や特別な装置は必要なく通常の冷却・結晶化によって容易に行うことができる。【0011】精製アダマンタノンを採取した後の液は、次の蒸留時にそのまま用いることができる。仮に、蒸留時にアダマンタノンの溶解度が高い溶媒を用いた場合には、前記の主留分を冷却しても結晶が析出しなかったり、また析出したとしてもその量が少なく、結晶を採取した後の液にアダマンタノンが多く残るので精製収率が低下する問題が生じる。【0012】採取された精製アダマンタノンはそのまま乾燥させてもよいが、ヘキサンやヘプタンなどの低沸点の溶媒又は水で洗浄して、蒸留時に使用した溶媒と置換することで容易に乾燥させることができる。【0013】【発明の効果】前述のように、昇華性を有する化合物であるアダマンタノンの工業ベースでの大量精製において充分な純度が得られる方法は無かったが、本発明の方法によれば、アダマンタノンの昇華温度と近似の沸点を有し、且つアダマンタノンの溶解度が低い溶媒と共にアダマンタノンを昇華留出させることにより、昇華物による装置の閉塞が防止でき、通常の蒸留と同様の操作及び同様の装置で蒸留することが可能となる。また、アダマンタノンの溶解度が低い溶媒を用いるため、熱溶液として留出した主留分からは冷却するだけでアダマンタノンが結晶化され採取可能となる。従って、本発明によれば、前述の溶媒中に懸濁させて蒸留を行うこと以外は一般的な蒸留、冷却結晶化、結晶採取と同様の操作及び同様の装置でアダマンタノンを高純度に大量精製することができる。【0014】【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。【0015】実施例1温度計、攪拌機、分留管を備えた500mLの3つ口フラスコに昇華性不純物として1−アダマンタノール0.1%(重量%、以下同様)、タール及び高沸点物の不純物13.9%を含む粗アダマンタノン30.0g(純度86.0%、純分25.8g)及びドデカン300mLを入れ初留分として少量除いた後、約2.7kPaの減圧下100℃付近で蒸留を行った。主留分として得られた熱アダマンタノン/ドデカン溶液を0℃付近まで冷却し、析出したアダマンタノンを濾取し、上水300mLで洗浄後に減圧乾燥して精製アダマンタノンを19.2g(純度99.5%、精製収率74.0%)得た。この精製アダマンタノン中に含まれる水分は0.1%、ドデカン0.2%、1−アダマンタノールは0.1%、タール及び高沸点物は0.1%であった。【0016】実施例2実施例1において、昇華性不純物としてアダマンタンを1.0%添加して不純物の組成をアダマンタン1.0%、1−アダマンタノール0.1%、タール及び高沸点物13.8%とした粗アダマンタノン30.0g(純度85.1%、純分25.5g)を用いたことと初留分として全体量の約5%まで除去たこと以外は実施例1と同様の操作で精製アダマンタノンを18.1g(純度99.1%、精製収率70.0%)得た。この精製アダマンタノン中に含まれる水分は0.1%、ドデカンは0.2%、アダマンタンは0.4%、1−アダマンタノールは0.1%、タール及び高沸点物は0.1%であった。【0017】実施例3実施例1のドデカン濾液に新しいドデカンを追加して300mLとして用いた以外は実施例1と同様の材料・操作で精製し、精製アダマンタノンを22.3g(純度99.6%、精製収率86.0%)得た。この精製アダマンタノン中に含まれる水分は0.1%、ドデカンは0.1%、1−アダマンタノールは0.1%、タール及び高沸点物は0.1%であった。【0018】実施例4実施例1においてドデカンの代わりにテトラデカンを用い、上水300mLの代わりにヘプタン90mLで洗浄を行った以外は実施例1と同様の材料・操作で精製し、精製アダマンタノンを16.7g(純度98.8%、精製収率64.1%)得た。この精製アダマンタノン中に含まれるヘプタンは0.2%、テトラドデカンは0.7%、1−アダマンタノールは0.1%、タール及び高沸点物は0.2%であった。【0019】実施例5実施例4においてテトラデカンの代わりにドデセンを用いた以外は実施例4と同様の材料・操作で精製し、精製アダマンタノンを12.1g(純度99.1%、精製収率46.5%)得た。この精製アダマンタノン中に含まれるヘプタンは0.2%、ドデセンは0.5%、1−アダマンタノールは0.1%、タール及び高沸点物は0.1%であった。【0020】比較例1アダマンタノンの溶解度が大きい溶媒を用いた場合の比較として実施例1においてドデカンの代わりにニトロベンゼンを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、主留分からアダマンタノンの結晶は析出しなかった。【0021】比較例2実施例2において、初留分として除去する量と精製アダマンタノン中に残存するアダマンタンの含有率の比較を行うと、初留として全体量の5%を除去した場合の精製アダマンタノン中のアダマンタン含有率は0.4%、20%を除去すると0.16%、40%を除去すると痕跡程度になった。 アダマンタノンを、アダマンタノンの昇華温度と近似した沸点を有し且つアダマンタノンの溶解度が低い溶媒と混合し、蒸留を行うことにより主留分を熱アダマンタノン/溶媒溶液として得、次いで当該溶液を冷却してアダマンタノンを結晶化させ、結晶を採取して精製アダマンタノンを得ることを特徴とするアダマンタノンの精製方法。 溶媒として、炭素数10〜14の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素の1種又は2種以上を用いる請求項1記載のアダマンタノンの精製方法。 【課題】高純度のアダマンタノンを得ると共に効率的な大量精製をも可能にするアダマンタノンの精製法を提供する。【解決手段】昇華性を有する物質であるアダマンタノンを精製する方法であり、特定の溶媒と共に蒸留することによりアダマンタノン溶液として主留分を得、次いで主留分を冷却してアダマンタノンを結晶化させ、結晶を採取して高純度の精製アダマンタノンを得るものである。この方法によれば、アダマンタノンの大量精製が可能となる。