タイトル: | 公開特許公報(A)_乳化製剤の新規製造法 |
出願番号: | 2002226208 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,A61K9/107,A61K35/74,A61K47/04,A61K47/18,A61K47/34,A61P35/00,A61P37/04,B01F17/42,B01F17/56 |
野村 武彦 JP 2004067536 公開特許公報(A) 20040304 2002226208 20020802 乳化製剤の新規製造法 住友製薬株式会社 000183370 五十部 穣 100121588 野村 武彦 7 A61K9/107 A61K35/74 A61K47/04 A61K47/18 A61K47/34 A61P35/00 A61P37/04 B01F17/42 B01F17/56 JP A61K9/107 A61K35/74 A A61K47/04 A61K47/18 A61K47/34 A61P35/00 A61P37/04 B01F17/42 B01F17/56 8 OL 11 4C076 4C087 4D077 4C076AA17 4C076CC27 4C076DD07 4C076DD22 4C076DD34 4C076DD46 4C076DD51 4C076EE23 4C076FF16 4C076GG41 4C087AA10 4C087BC29 4C087MA22 4C087NA20 4C087ZB02 4C087ZB26 4D077AA04 4D077AB12 4D077AC01 4D077BA15 4D077DB06Y 4D077DC50Y 4D077DD32Y 4D077DE09Y 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、油状物質と非イオン性界面活性剤、および該界面活性剤の曇点を下げる物質を含む安定な乳化製剤の製造方法に関する。【0002】【従来の技術】乳化製剤とは液状の医薬品に乳化剤と適当な水溶液を加え、適当な方法で乳化し、全体を均等にしたものである。乳化製剤の製造方法については、多くの方法、形態が知られているが(J.Phys.Chem., 24, 120−126(1920)、J.Phys.Chem., 37, 279−302(1933)、J.Am.Oil Chem.Soc., 33, 598−604(1956))、その中の一形態として水中油型エマルションが挙げられる。水中油型エマルション製剤としては、多くの製剤が知られているが、特に最近では、BCGの細胞壁骨格成分(Cell Wall Skeleton、以下、CWSと略す)を用いた免疫賦活剤の乳化製剤が、従来にない優れた効果を示すことから、大いに注目されている。 (Pro.Japan Acad.,70,Ser.B 205−209(1994)、Pro.Japan Acad.,74,Ser.B 20550−55(1998))。【0003】しかし、上記乳化製剤は、安定した良好な品質の製剤を大量スケールで提供できる工業的製造方法が充分確立していなかった。その原因の一つとして、乳化のために使用する非イオン性界面活性剤の使用方法が挙げられる。非イオン性界面活性剤の使用に際しては、非イオン性界面活性剤は曇点付近の温度でもっとも界面活性能力が高くなることが知られている(界面活性剤便覧、西 市郎他、167−176(産業図書))。また、乳化時間は乳化時の温度に依存されるので、大量スケールで効率的に安定した乳化製剤を製造するためには、使用する非イオン性界面活性剤の曇点を考慮した上で可能な限り高温で乳化することが望ましいことが知られていた。一方、乳化製剤の調製時の溶液中に曇点を下げる物質が共存する場合、非イオン性界面活性剤の曇点が低下し、従来の製造工程における乳化時の温度で界面活性剤が析出する等の現象がおこり、良好な品質の乳化製剤を得ることができなかった。また、高濃度の油を含有した濃縮製剤を調製する際、乳化製剤の安定性を保持するために、同時に曇点を下げる物質も高濃度に共存させておく必要があり、大幅な曇点の低下により乳化効率が顕著に低下した。そこで、従来公知の乳化製剤製造方法を改良し、工業的製造法を確立することが急務とされた。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来の乳化製剤の工業的製造方法を改良し、曇点の低下を原因とした製造途中に起こる界面活性剤の析出等による付着物を抑制し、最終的に優れた安定性を有する医薬品として有効な乳化製剤品の実用的かつ恒常的製造法を最適な形で提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意検討を進めた結果、曇点を下げる物質が含まれる乳化製剤の新規な製造方法、および濃縮製剤の希釈による、同一設備における製造スケールの拡大方法を見いだした。すなわち本発明の製造方法は、まず曇点を下げる物質を加えることなく乳化効率の良い高温で乳化を行った後に乳化液を曇点以下の温度まで冷却し、非イオン性界面活性剤の曇点を下げる物質を含む水溶液を加えて希釈する。このことにより界面活性剤の一部が析出することを防ぎ、不溶物として付着し残存することもなくなった。また、界面活性剤の一部が析出した乳化製剤は、凍結乾燥すると凍結乾燥中のケーキが収縮あるいは浮上してしまうが、これを阻止することができた。従って、本発明により、医薬品として有効な乳化製剤品の実用的な大量製造法が可能となり、特に細菌の菌体成分を使用した癌免疫療法用の乳化製剤を医薬品として使用することが可能となった。【0006】本発明の要旨は次のように示される。[1] 以下の工程を特徴とする、乳化製剤の製造法。(a)油状物質と非イオン性界面活性剤を含む水溶液の混合液または、溶媒不溶の固形物質を含む油状物質と非イオン性界面活性剤を含む水溶液の混合液を攪拌し乳化した後、(b)曇点以下の温度まで冷却し、非イオン界面活性剤の曇点を下げる物質を含む水溶液を加えて混合撹拌する。[2] 非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類である[1]記載の乳化製剤の製造法[3] 非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)である、[1]記載の乳化製剤の製造法。[4] 非イオン性界面活性剤の曇点を下げる物質がアミノ酸、もしくは無機塩である、[1]〜[3]のいずれか記載の乳化製剤の製造法。[5] 電解質がアミノ酸、もしくは無機塩である、[4]記載の乳化製剤の製造法。[6] 電解質がアルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩である、[4]記載の乳化製剤の製造法。[7] 溶媒不溶の固形物質が、細菌の菌体成分である[1]〜[6]のいずれか記載の乳化製剤の製造法。[8] 細菌の菌体成分が、BCG−CWSまたはノカルディア・ルブラー−CWSである[7]記載の乳化製剤の製造法[9] 以下の工程を特徴とする乳化製剤の製造法(a)油状物質と、低濃度の非イオン性界面活性剤を含む水溶液または、溶媒不溶の固形物質を含む油状物質と低濃度の非イオン性界面活性剤を含有する水溶液を加えて40℃以上で撹拌して粗乳化を行い、(b)更に非イオン性界面活性剤水溶液を添加し撹拌し単一ピークを得られる粒子径を持つ濃縮水中油型エマルションを製造した後、(c)曇点以下の温度まで冷却した状態で電解質水溶液を加えて攪拌することによって所望の界面活性剤濃度および原薬濃度の水中油型エマルションを製造する。【0007】【発明の実施の形態】本発明で使用可能な非イオン性界面活性剤としては特に制限されるものはないが、医薬品製剤に使用される非イオン性の界面活性剤であれば好ましい。例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類または、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類としては例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)等が挙げられ、ソルビタン脂肪酸エステル類としてはソルビタンモノラウレート(Span20)、ソルビタンモノラウレートモノパルミネート(Span40)、ソルビタンモノラウレートモノステアレート(Span60)、ソルビタンモノラウレートモノオレート(Span80)等が挙げられる。特に好ましい非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート類を挙げることができる。さらに好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)が最も適している。【0008】本乳化製剤の製造方法に使用される非イオン性界面活性剤含有水溶液の濃度は、特に限定されないが、通常非イオン性界面活性剤の含有量として約0.01%〜10.0%w/wの範囲で用いられる。固形物質が細菌の菌体成分である場合、好ましくは、0.01%〜4%、更に好ましくは0.1%〜1.5%が挙げられる。乳化工程は複数回に分けることもできる。例えば、1番目の工程では粗乳化を行い、2番目の工程で細乳化を行う2工程に分けられる。その場合の非イオン性界面活性剤濃度は、粗乳化工程においては必要最小限でよく、0.1%w/w以下の少量が好適である。好ましくは0.01〜0.05%w/wがあげられる。細乳化工程では、非イオン性界面活性剤濃度は好ましくは0.1%〜10%w/wが挙げられ、固形物質が細菌の菌体成分である場合、好ましくは0.1〜1.5%w/wが挙げられる。また、細乳化工程後に、適宜必要に応じて、さらに非イオン性界面活性剤を加えて、より高含量の非イオン性界面活性剤溶液に調製することもでき、その際、さらに乳化機による攪拌を行うこととで粒度分布をシャープなものにすることも可能である。これら水溶液には必要に応じて適宜安定化剤や等張化剤が加えられていてもよい。また、これら非イオン性界面活性剤は一種類に限らず、適宜、数種類を組み合わせて使用することができる。【0009】本発明に使用可能な非イオン性界面活性剤の曇点を下げる物質としては、医薬品製剤に使用される物質であれば、特に制限されるものはないが、電解質が挙げられる。例えば、有機酸、有機塩基、無機酸、無機塩基、または塩等が挙げられる。有機酸としては例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、アミノ酸、ヒドロキサム酸等が挙げられ、好ましくは、アミノ酸が挙げられる。具体的には、α−アミノ酸であるアラニン、グリシン、バリン、プロリン、リシン、ロイシン、チロシン等のアミノ酸が挙げられる。有機塩基としては、トリエチルアミン等が挙げられる。無機酸としては、硫酸、リン酸、塩酸等が挙げられる。無機塩基としては、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。塩としては、前記有機酸、有機塩基、無機酸、および無機塩基の各々に対応する塩を用いることができ、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩等が挙げられ、好ましくは、アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩が挙げられる。具体的には、リン酸一または二水素ナトリウム、リン酸水素一または二カリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。該電解質は一種類に限らず、適宜、数種類を組み合わせて使用することができる。また、グルコース、フルクトース、ラクトース、スクロース、トレハロース等の糖類、マンニトール、マルトース等のポリアルコール類、またはウレアなどの非電解質を、安定化剤、賦形剤または等張化剤として、曇天を下げる物質とともに用いることができる。【0010】非イオン性界面活性剤の曇点を下げる物質の濃度は、特に限定されないが、水中油型エマルション製剤において0.1〜30%w/wの範囲が適当である。好ましくは、1〜20%w/wの範囲が適当である。更に非電解質の水溶液を添加する場合、該水溶液の濃度としては、約1.5〜15%w/w(浸透圧比0.3〜3)が望ましい。【0011】本発明において、乳化製剤が溶媒不溶の固形物質を含む場合、使用可能な固形物質とは溶媒不溶であれば特に制限されるものはなく、医薬品製剤に使用される物質例えば、医薬品の原薬等が挙げられる。該原薬としては、具体的には、細菌菌体成分が挙げられ、好ましくは微生物死菌や微生物由来の細胞壁骨格成分(CWS)、ムラミルジペプチド(MDP),リポ多糖(LPS)、マンナン、グルカンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。微生物死菌の例としては、ヒト型結核菌の死菌などが挙げられる。CWSの由来微生物としては、マイコバクテリア属、ノカルディア属、コリネバクテリア属、プロピオニバクテリウム属などが挙げられる。さらに好ましくは、マイコバクテリア属ウシ型結核菌であるBCGおよびノカルデイア・ルブラーを挙げることができる。これらのCWSは、物理的に細菌を粉砕した後、除核酸、除タンパク、脱脂などの精製工程を経て得られる不溶性残渣として得られ、その製法自体は公知である。なお、本発明で使用される菌体成分の濃度は、好ましくは乳化製剤において0.01〜10mg/mlが挙げられる。【0012】本発明で使用可能な油状物質としては特に制限されるものはなく、Immunology第27巻、第311〜329項(1974年)に記載されているような鉱物油、動植物油が挙げられる。鉱物油としては、流動パラフィン、バイオール(Bayol F)、ドラケオール(Drakeol−6VR)、モレスコバイオレスなどが挙げられる。植物油としては、落花生油、ゴマ油、AD−65(落花生油とアラセルとアルミニウムモノステアレートの混合物)、オレイン酸エチル、大豆油、ツバキ油等が挙げられる。動物油としては、スクワラン、スクワレンのようなテルペノイド誘導体が挙げられる。好ましい例としては、ドラケオール6VR、スクワレン、スクワラン、グリセリン、シンセラン4等を挙げることができる。なお、油状物質の濃度は、水中油型エマルション製剤において0.01〜30%w/wの範囲が適当であるが、好ましくは0.01〜10%w/wが挙げられ、より好ましくは0.01〜5.0%w/wが挙げられる。【0013】また、本発明で使用可能な等張液は、エマルション粒子の分散媒体となるものとして、注射用水(注射用蒸留水)、生理食塩水などが挙げられるが、注射可能な分散溶媒であれば特に限定されない。その他、医薬品製剤に使用しうる安定化剤、酸化防止剤、防腐剤、緩衝剤等を必要に応じて添加することができる。添加濃度としては水中油型エマルション製剤において10%w/w以下で十分である。【0014】本発明で使用可能な分散・乳化機器としては、例えばPotter−Elvehjem型ホモジナイザー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(商品名)、ナノマイザー(商品名)、アルティマイザー(商品名)、マントン−ガウリンホモジナイザー型高圧ホモジナイザー、IKAウルトラタックスT−25(商品名)等の分散・乳化機により、分散もしくは乳化を行って所望の濃縮された水中油型エマルション溶液を得ることができる。調製後、賦形剤、安定化剤等の添加剤を添加し、適宜所望の製剤製造を行う。乳化のための攪拌条件は製剤調製時の原料の分量および乳化機器によって異なるため、所望の粒度分布が得られたことを目安に回転数を決めることが好ましい。例えば、本発明の乳化製剤の製造法における工程では、概ね回転数10000〜25000rpmで乳化することが挙げられる。本発明の工程で製造された乳化製剤の粒度分布は0.1〜10μmである。【0015】乳化工程は複数回に分けることもできる。例えば、1番目の工程では粗乳化を行い、2番目の工程で細乳化を行う2工程に分けられる。粗乳化は、細乳化よりも低速で行うことが好ましい。工程を複数回に分けた場合も撹拌速度は原料の分量、乳化機器によって異なるが、例えば、本発明の乳化製剤の製造法における工程での回転数は、粗乳化で約3000rpm〜10000rpmであり、好ましくは6000rpm〜8000rpmが挙げられ、より好ましくは約7000rpmが挙げられる。また、細乳化工程での撹拌の回転数は好ましくは約8000rpm以上が挙げられ、より好ましくは10000rpm〜20000rpmが挙げられ、より好ましくは12000rpm〜16000rpmが挙げられる。【0016】本発明乳化製剤の製造法での乳化の温度としては、40℃〜85℃であればよいが、約65℃以上の高温であることが望ましい。本発明の乳化製剤の製造法の乳化時間は乳化温度に依存するが、5〜60分が挙げられ、好ましくは5〜30分が挙げられ、より好ましくは5〜10分が挙げられる。また、乳化工程は複数回に分けることもできる。例えば、1番目の工程では粗乳化を行い、2番目の工程で細乳化を行う2工程に分けられる。粗乳化、細乳化で乳化温度を変える必要はない。例えば、粗乳化、細乳化共、65℃〜70℃でそれぞれ約10分で乳化を行うことができる。【0017】本発明の乳化製剤の製造法で非イオン性界面活性剤の曇点を下げる物質を含有する水溶液を添加する際の撹拌は低速で良く、乳化後の濃縮エマルションと上記水溶液がまんべんなく混合される程度でよい。ここで低速とは、1000〜7000round/minの速度を意味する。上記水溶液の添加は、乳化工程後であればいつでもよいが、乳化製剤を曇点以下の温度に冷却した後に添加することが好ましい。複数回に分けて乳化した場合は、最終の乳化工程が終了した後に、曇点以下まで冷却し添加する。曇点は、使用する非イオン性界面活性剤によって異なる(界面活性剤便覧、西市郎他、167−176(産業図書))。曇点の温度変化は、非イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の曇点を下げる物質との組み合わせ且つ、非イオン性界面活性剤の曇点を下げる物質の含有量に依存されるので、適宜その条件での曇点を求める。曇点の測定方法は「新・界面活性剤入門」藤本 武彦(三洋化成工業)、P95記載の方法で容易に求められる。例えば、本発明の乳化製剤の製造法における曇点以下の温度とは、特に限定されないが、本発明の好ましい態様においては、通常40℃以下が挙げられ、より好ましくは30℃以下が挙げられる。乳化製剤の製法の処方での原料の分量は特に制限されない。本発明の乳化製剤の製造法での乳化機器においても特に制限されない。【0018】本発明に係る乳化製剤は、注射など非経口で投与できる。投与形態は、治療目的などにより異なり、特に制限されるものではない。例えば細菌の細胞壁骨格成分を非経口的に投与する場合、通常用いられる投与形態として例えば、注射剤として皮膚より投与すること等ができる。投与量、投与回数は対象とする疾患、患者の症状、年齢、体重、性別等によって異なるが、例えば細菌の細胞壁骨格成分を非経口投与する場合、特に注射剤として使用する場合には、通常は成人に対して週1回若しくは4週1回の投与で1回当たり有効成分が0.1〜250μgの範囲、好ましくは10〜200μgの範囲を投与することができる。より好ましくは25〜250μgの範囲を投与することが出きる。【0019】【実施例】以下、実施例、試験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれらによってなんら限定されるものではない。【0020】試薬スクワラン :スーパースクワランEx.(Lot.PC9F54、スクアテック社)ポリソルベート80(Tween80):TO−10M(Lot.9316、日光ケミカル)グリシン :特級グリシン(ナカライテスク)乳化機器乳化機 :ロボミックス、攪拌部:ホモミクサーMARKIIターヒ゛ン蓋一体型(特殊機化工業)乳化容器:ジャケット付きセパラブルフラスコ(ロボミックス2L用、特殊機化工業)恒温槽 :EYEL DIGITAL UNI ACE UA−100乳化条件処方:有効成分として、BCG−CWSを用いる場合の、1Lあたりの原料の組成としては、例えば以下の表1に例示される。【0021】【表1】凍結乾燥凍結乾燥機:フィンテック社製GT―6重鎮容器バイアル :VSC18―CS(不二硝子)ゴム栓 :V10―F8(大協精工)物性評価粒度分布評価:島津静的光散乱粒度分布計SALD−3000【0022】実施例1菌体成分としてBCG−CWS600mgを、スクワラン 16gとトルエン200mlの混合液に加え、振とうあるいは超音波により15分間分散した。その後、窒素気流下で60℃に加熱しトルエンを留去した。次いで、0.02%w/wポリソルベート80(Tween80)水溶液786mLを添加し、ホモミキサー(ロボミックス)を用い、7000rpm10分間65℃で粗乳化を行った。その後、10%w/wポリソルベート80(Tween80)水溶液15mLを添加し、ホモミキサー(ロボミックス)を用いて12000rpm5分間65℃で本乳化した。本乳化後、粒度分布が所望のものであることを確認後、10%w/wポリソルベート80(Tween80)水溶液183mLを添加し、ホモミキサー(T.K.ROBO MICS)を用いて5000rpm1分間65℃で混合することにより最終的なポリソルベート80(Tween80)濃度を2.0%w/wに調整した。その後、品温を30℃以下に冷却した後、2400mMグリシン水溶液1000mLを徐々に製剤側に添加し、充分混合することにより、最終的に原薬濃度0.3mg/mL、スクワラン濃度0.8%w/w、ポリソルベート80(Tween80)濃度1.0%w/w、グリシン濃度1200mMの水中油型エマルション製剤を得た。【0023】参考例1 (グリシン共存下でのビークル調製)乳化中あるいは直後での、不溶性物質の生成製剤の不安定化原因が原薬ではないことを確認するため、以下のようにグリシン共存下ビークルを調製した。さらに、グリシン添加のタイミングの影響についても検討した。2%w/wスクワラン、1%w/w ポリソルベート80(Tween80)のビークル(1Lスケール)を下記の3種の製法にて調製。▲1▼グリシン・前添加 …0.2% w/w ポリソルベート80(Tween80)/1200mMグリシン水溶液にて本乳化を行う▲2▼グリシン・後添加(スラリー)…グリシン無しで本乳化した後、グリシンをスラリー状態(粉末)で直接製剤に投入(この時の品温は約65℃)▲3▼グリシン・後添加(溶液)…油、界面活性剤を各2倍量含有した濃縮製剤を調製後、2400mMグリシン溶液を等量添加(品温25℃)尚、特記しない限り、本乳化での設定温度は65℃である。(品温:65〜70℃)試験の結果を以下に示す。▲1▼グリシンを含んだポリソルベート80(Tween80)溶液にて本乳化を行った結果、0.2%w/w ポリソルベート80(Tween80)における従来の乳化では充分シャープな粒度分布は得られず、ポリソルベート80(Tween80)濃度を上げて乳化したが改善は見られなかった。さらに、ポリソルベート80(Tween80)の最終濃度である1%w/wで本乳化を行ったところ、粒度分布が変化し、製剤中に不溶性物質が浮遊しているのが認められた。粒度分布の結果を図1に示す。▲2▼グリシン非含有ポリソルベート80(Tween80)溶液にて乳化を行ったところ、10分間の乳化においては粒度分布が充分にシャープにはならなかった。これはスクワラン4%w/wの濃縮製剤での乳化であった為と考えられる。そこで、20分間の乳化に延長したところ、本来のシャープな粒度分布が得られることが判った。その後、ポリソルベート80(Tween80)濃度を1%w/wにしても粒度分布は変化しなかった。さらに、グリシン90g(1200mM相当)をスラリーで投入しミキサーにて混合(回転数:3000rpm、乳化ではない)したが、粒度分布には変化は無かった。ところが、その状態からミキサーの回転数を上げ(12000rpm)、乳化したところ、粒度分布が変化し、▲1▼での結果と同様な不溶性物質が生成し始めた。粒度分布変化の結果を図3に示す。▲3▼ ▲2▼での結果を参考にして、グリシン非存在下での本乳化におけるポリソルベート80(Tween80)濃度を2倍の0.4%w/wにしたところ、10分間の乳化により▲2▼と同様なシャープな粒度分布が得られた。その後、ポリソルベート80(Tween80)濃度を最終濃度(1%)に調整し、グリシン2400mM溶液を製剤と等量添加し混合したが、粒度分布に変化は無かった。さらに、▲2▼の最終工程での結果を参考に、ここでは品温を15℃付近まで冷却してから、10分間の細乳化を行ったところ、粒度分布は全く変化せず、不溶性物質の生成も認められなかった。粒度分布変化の結果を図4に示す。製法▲1▼と▲3▼により調製された製剤比較すると、明らかに製法▲1▼による製剤の上部には不溶性物質が浮遊しているのが判った。以上の結果から、グリシン共存下での乳化で認めれる製剤の不安定化は、原薬の影響で起こっているのではなく、おそらくグリシンが高濃度化することにより他の成分(ポリソルベート80(Tween80)あるいはスクワラン)に何らかの影響を及ぼし製剤を不安定化させたものと考えられた。また、▲2▼、▲3▼の結果から、「高濃度のグリシン」「高温(65〜70度)」「高い回転数での乳化」という3つの条件が揃った時に、製剤が不安定化することが示された。【0024】参考例2 グリシン共存下でのポリソルベート80(Tween80)の曇点測定ポリソルベート80(Tween80)のような非イオン性界面活性剤は、親水基であるポリオキシエチレン基の親水性により溶解している。これは、基中にあるエーテル結合型の酸素原子に水分子が水素結合することにより生ずるものである。この水素結合は水溶液の温度が上昇して水分子の運動が活発になると切れてしまい、それまでミセル状に溶解していた界面活性剤分子は水和性を失って白濁して析出する。この温度を曇点(cloud point)というが、グリシン濃度がポリソルベート80(Tween80)の曇点に及ぼす影響について検討した。「新・界面活性剤入門」(藤本 武彦(三洋化成工業)、P95)に記載されている方法に従って、グリシン300mM〜1200mMにおけるポリソルベート80(Tween80)の曇点を測定した。一般に界面活性剤の曇点は、0.5〜5% w/w程度の範囲では濃度の影響を受けず一定であることが知られている。ここでの検討では、実際の本乳化での設定濃度である0.2% w/wで測定することにした。試験結果を以下に示す。図6に示すように、グリシン濃度と曇点の間には良い相関性が認められ、グリシン濃度の増加に反してポリソルベート80(Tween80)の曇点が低下することが判明した。このことから、BCG−CWSエマルション調製時の乳化温度である65〜70℃の条件下では、グリシン濃度約600mM以上でポリソルベート80(Tween80)が析出していた可能性が高いことが判った。以上の結果から、これまでの製剤調製において、グリシン600mM以上での細乳化ではポリソルベート80(Tween80)が析出し乳化力が顕著に低下していたことが示された。【0025】【発明の効果】本発明は乳化製剤の安定化大量製造方法である。その特徴は、溶媒不溶の固形物質、油状物質、非イオン性界面活性剤水溶液のみで濃縮エマルション製剤を調製した後で、非イオン性界面活性剤の曇点を低下させる物質含有の水溶液と混合することにより、付着物の生成と凍結乾燥中のケーキの収縮などの製剤の不安定化を解消することができた。すなわち、本発明により、医薬品として有効な乳化製剤品の実用的な大量製造法が可能となり、特に細菌の菌体成分を使用した癌免疫療法用の乳化製剤を医薬品として提供することが可能となった。【0026】【図面の簡単な説明】【図1】参考例1の▲1▼の、グリシン共存下での乳化による粒度分布変化を表すグラフである。【図2】参考例1の▲2▼の、グリシン非含有ポリソルベート80(Tween80)溶液で乳化時間を変えて乳化した場合の粒度分布変化と、グリシンをスラリーで乳化後に添加した場合の粒度分布変化を表すグラフである。【図3】参考例1の▲2▼の、グリシン溶液を乳化後に添加した場合の粒度分布変化を表すグラフである。【図4】参考例2の雲点とグリシン濃度のとの相関性を表すグラフである。 以下の工程を特徴とする、乳化製剤の製造法。(a)油状物質と非イオン性界面活性剤を含む水溶液の混合液または、溶媒不溶の固形物質を含む油状物質と非イオン性界面活性剤を含む水溶液の混合液を攪拌し乳化した後、(b)曇点以下の温度まで冷却し、非イオン界面活性剤の曇点を下げる物質を含む水溶液を加えて混合撹拌する。 非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類である請求項1記載の乳化製剤の製造法 非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)である、請求項1記載の乳化製剤の製造法。 非イオン界面活性剤の曇点を下げる物質が電解質である、請求項1〜3のいずれか記載の乳化製剤の製造法。 電解質がアミノ酸、もしくは無機塩である、請求項4記載の乳化製剤の製造法。 電解質がアルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩である、請求項4記載の乳化製剤の製造法。 溶媒不溶の固形物質が、細菌の菌体成分である請求項1〜6のいずれか記載の乳化製剤の製造法 細菌の菌体成分が、BCG−CWSまたはノカルディア・ルブラー−CWSである請求項7記載の乳化製剤の製造法 【課題】大量スケールでの乳化製剤の製造方法に関する実用的製造法を提供する。【解決手段】(1)以下の工程を特徴とする、乳化製剤の製造法。以下の工程を特徴とする、乳化製剤の製造法。(a)油状物質と非イオン性界面活性剤を含む水溶液の混合液または、溶媒不溶の固形物質を含む油状物質と非イオン性界面活性剤を含む水溶液の混合液を攪拌し乳化した後、(b)曇点以下の温度まで冷却し、非イオン界面活性剤の曇点を下げる物質を含む水溶液を加えて混合撹拌する。【選択図】 なし