生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ジンクフィンガータンパク質をコードするホヤ由来の新規遺伝子群
出願番号:2002222484
年次:2004
IPC分類:7,C12N15/09,C07K14/435,C07K16/18,C12M1/00,C12N1/15,C12N1/19,C12N1/21,C12N5/10,C12Q1/68


特許情報キャッシュ

佐藤 矩行 佐藤 ゆたか 山田 力志 JP 2004057126 公開特許公報(A) 20040226 2002222484 20020731 ジンクフィンガータンパク質をコードするホヤ由来の新規遺伝子群 科学技術振興事業団 396020800 原 謙三 100080034 佐藤 矩行 佐藤 ゆたか 山田 力志 7 C12N15/09 C07K14/435 C07K16/18 C12M1/00 C12N1/15 C12N1/19 C12N1/21 C12N5/10 C12Q1/68 JP C12N15/00 A C07K14/435 C07K16/18 C12M1/00 A C12N1/15 C12N1/19 C12N1/21 C12Q1/68 A C12N5/00 A C12N15/00 F 9 OL 972 4B024 4B029 4B063 4B065 4H045 4B024AA11 4B024AA19 4B024BA80 4B024CA04 4B024CA09 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA14 4B029AA07 4B029AA21 4B029AA23 4B029BB20 4B029CC01 4B029CC02 4B029CC03 4B029CC08 4B029FA12 4B029FA15 4B063QA01 4B063QQ02 4B063QQ43 4B063QQ53 4B063QQ79 4B063QR32 4B063QR35 4B063QR40 4B063QR55 4B063QR84 4B063QS34 4B065AA26X 4B065AA58X 4B065AA72X 4B065AA87X 4B065AA90Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065BA03 4B065CA24 4B065CA46 4H045AA10 4H045AA11 4H045BA10 4H045CA50 4H045DA75 4H045EA50 4H045FA71 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ジンクフィンガータンパク質をコードするホヤ由来の新規遺伝子群、およびその利用に関する。【0002】【従来の技術】現在、生物の発生についての研究が急速に進んでおり、このような発生の研究では種々の生物材料が使用されている。発生の研究は主として遺伝子を解析することにより行われるが、とりわけ、ヒトを含む脊椎動物、さらにはホヤ等の脊索動物の発生段階において特異的に発現する遺伝子の発現制御機構を解析することは、単に発生のメカニズムの解明のみならず、細胞の増殖・分化・再生のメカニズムの解明にも資するものである。さらに、このような解析により得られた知見は、医学上及び産業上への応用も期待されており、具体的には、発生段階の異常に起因する種々の遺伝子疾患の原因究明、さらにはその診断法や治療法の開発に貢献すること等が期待されている。【0003】一方、遺伝子の発現を制御するタンパク質として、ジンクフィンガー(Znフィンガー:Zn finger)モチーフをもつタンパク質が知られている。Znフィンガーは、タンパク質中の構造ドメインの1つであり、転写調節タンパク質など、DNA結合タンパク質に存在することが知られている。Znフィンガーは、アフリカツメガエルの遺伝子の転写調節タンパク質(TFIIIA)において最初に発見され、DNA結合モチーフとして提唱された。【0004】上述のように、生物の発生についての研究対象となっている生物の1つにホヤが挙げられる。ホヤは、世界中の海に広く分布しており、岩やブイに付着して生活する生物である。ホヤの成体は、入水口及び出水口という2つの開口部を有しており、この開口部を通過する海水から栄養物を濾過摂食する。ホヤはすべて雌雄同体であり、ホヤの受精卵は、比較的短時間に胞胚、嚢胚、神経胚、尾芽胚を経て、オタマジャクシ型幼生へと変態する。ホヤの幼生は、しばらく遊泳したのち変態して成体となる。ホヤの形態形成パターンは、予定神経細胞が巻きあがって神経管を形成するなど、脊椎動物の発生様式とよく似ている。【0005】ホヤは尾索動物群に属し、ナメクジウオを含む頭索動物、カエルやヒトを含む脊椎動物とともに脊索動物門を構成する。尾索動物は尾に脊索を持ち、頭索動物は脊索が頭部の先端まで延びており、脊椎動物は発生に伴って脊索が椎骨に置き換わる。これらの3つの動物群には、脊索、脊索の中空の神経管、咽頭の裂け目である鰓裂など、いくつかの共通した形質がある。脊索動物は、今から約5億年以上昔に、上述した脊索動物に特有の性質を獲得することによって、新口動物から進化してきたものと考えられている。新口動物とは、脊索動物、半索動物、及び棘皮動物を含む動物群である。半索動物の例としてはギボシムシが、棘皮動物の例としては、ウニ、ヒトデなどが挙げられる。【0006】ホヤのオタマジャクシ型幼生の体制(ボディプラン)は、両生類のオタマジャクシ幼生のミニチュア版ともいうべきものであり、脊椎動物の体制の最も単純な型(原型)を表している。そのため、脊椎動物の体制を研究する上で、ホヤのオタマジャクシ型幼生の体制を調べることは、極めて重要な意味をもつ。また、ホヤの受精卵がどのように分裂して、胚を構成する各割球がどのような位置を占めて、最終的に何個のどのような細胞を生みだすのかというホヤの細胞系譜は、ほぼ完全に調べられている。【0007】ホヤのオタマジャクシ型幼生を構成する細胞の数は少なく、2650個に満たない。しかしながら、ホヤのオタマジャクシ型幼生の頭部の背側には、耳に相当する平衡器と眼に相当する眼点とを含む中枢神経系が存在する。この中枢神経系を構成する細胞数は約350個であり、そのうち神経細胞は約80個と見積もられている。上記中枢神経系の腹側には消化器系をつくりだす約500個の細胞からなる内胚葉、首の部分には約900個の細胞からなる間充織が存在する。間充織は、主として成体の中胚葉を形成する。【0008】ホヤのオタマジャクシ型幼生の尾部の中央には、40個の細胞からなる脊索、その両側には単核で横紋をもった筋肉が、背側にはグリア細胞からなる神経索、腹側には内胚葉索が存在し、幼生全体は1層の表皮によって覆われている。上記脊索は、上記内胚葉の誘導作用を受けて形成され、脊索動物の個体発生において重要な役割を果たす。形成された脊索は、その背側の外胚葉に働きかけて神経系形成を誘導するばかりでなく、脊索の両側における筋肉のパターン形成、及び消化器系の形成にも重要な働きをする。【0009】本発明者は以前、カタユウレイボヤの尾芽胚における遺伝子発現プロファイルを報告している(Development 128,2893−2904(2001))。【0010】【発明が解決しようとする課題】上述のように、脊椎動物などを用いて発生段階に発現する遺伝子(発生遺伝子)の解析が急速に進められているが、脊椎動物において、発生遺伝子の機能の解析と、発生遺伝子の発現制御の解析とを行なうには、次の問題点がある。【0011】脊椎動物は、進化にともなって、ゲノムレベルで2回の遺伝子重複が起こったと考えられており、この遺伝子重複が遺伝子機能のリダンダンシー(冗長性)を引き起こし、脊椎動物の遺伝子機能の解析を難しくしている。最近の研究では、脊索動物の共通の祖先から脊椎動物への進化のルートをたどった動物は、その進化の間に遺伝子の全体的な重複が2回おこったことが明らかになっている。【0012】上記のように進化の間に遺伝子の全体的な重複が2回起こり、無脊椎動物の遺伝子数を約1万5千と仮定した場合、ヒトを含む脊椎動物の遺伝子数は、6万程度存在することになる。一般的に、Aという親遺伝子が重複してA+A’になった場合、Aはもともとの機能を保持し、A’にはAと異なった新しい機能が付加されると考えられている。【0013】しかしながら、脊椎動物の進化時におこった発生遺伝子の重複は、AがA+A’+A’’+A’’’となっても、4つの遺伝子の機能は基本的に同じであるが、微妙にその空間的・時間的発現パターンを変えている。これによって、原型的な脊索動物には認められないような量的にも質的にも異なった器官及び組織をつくり出し、巧妙な遺伝子の相互作用によって機能を増し、現存する非常に複雑な体制を、脊椎動物は得たと考えられている。【0014】上述のように、遺伝子重複による遺伝子機能のリダンダンシー(冗長性)が存在しているため、脊椎動物の遺伝子機能の解析は難しいという問題点がある。【0015】最近の研究では、ハエ、線虫、カエル、哺乳類などの様々な動物の体づくりが、基本的には同じ遺伝子や分子を使ってなされているということが明らかになっている。また、脊索動物であるホヤの遺伝子は、前述のように、脊椎動物における遺伝子の重複がなく、遺伝子重複前の脊索動物の基本型を保っており、ホヤのオタマジャクシ型幼生の体制は、脊索動物の体制の最も単純な型(原型)を表している。【0016】したがって、脊索動物であるホヤは、ヒトを含む脊椎動物全般の発生メカニズムの解明に非常に適したモデル動物であり、ホヤにおいて発生段階に発現する遺伝子、とりわけその多くが転写因子として遺伝子の発現を制御するジンクフィンガータンパク質をコードする遺伝子は、発生の研究を進める上において有用であるのみならず、遺伝子治療や再生医療等の医療分野、さらには環境分野・食品分野などへの応用も期待されるものである。【0017】本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ジンクフィンガータンパク質をコードするホヤ由来の新規遺伝子群、およびその利用方法を提供することにある。【0018】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記のように、ホヤの遺伝子には脊椎動物における遺伝子の重複がないこと、ホヤの発生遺伝子は遺伝子重複前の脊索動物の基本型を保っていること、及び、ホヤの発生遺伝子は脊索動物のボディプランの最も単純な型(原型)の形成に関与していることに着目した。【0019】そこで、本発明者は、ホヤの発生遺伝子の時間的・空間的発現制御機構を解析することによって、脊椎動物の複雑な発生遺伝子の時間的・空間的発現制御機構の解明に重要な貢献をもたらすものと考えた。さらに、ホヤの発生遺伝子の時間的・空間的発現制御機構を解析するには、ホヤのZnフィンガーの機能を明らかにすることが重要であると考えた。【0020】本発明者は、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)の受精卵・卵割期胚・尾芽胚・幼生・幼若体・精巣で発現する遺伝子のmRNAに対して、EST(expressed sequence tag:発現配列タグ)解析を行った。その解析で得られた塩基配列情報をもとに相同性検索を行い、Znフィンガータンパク質をコードする遺伝子のmRNAの断片的塩基配列情報を得た。このmRNAの断片的な情報から、本発明者は、120個のmRNA(cDNA)の全塩基配列を決定して、本発明を完成させるに至った。【0021】本発明に係る遺伝子は、以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする。(a)2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列からなるジンクフィンガータンパク質。(b)2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるジンクフィンガータンパク質。【0022】なお、「2以上240以下の偶数の配列番号」とは、具体的に言うと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、204、206、208、210、212、214、216、218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、及び240のことである。【0023】上記「遺伝子」とは、DNAを含むものとする。DNAには、例えばクローニングや化学合成技術又はそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。また、DNAは二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖DNAは、センス鎖となるコードDNAでもよく、アンチセンス鎖となるアンチコード鎖でもよい。アンチセンス鎖は、プローブとして又はアンチセンス薬物として利用できる。【0024】上記「遺伝子」とは、RNAを含むものとする。なお、「遺伝子」がRNAを意味するときは、塩基配列の「T(チミン)」を「U(ウラシル)」と読み替えて解釈するものとする。【0025】本発明の「遺伝子」は、上記(a)又は(b)のタンパク質をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。【0026】本発明の遺伝子は、1以上239以下の奇数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示される塩基配列のオープンリーディングフレーム(ORF)領域を有する。【0027】なお、「1以上239以下の奇数の配列番号」とは、具体的に言うと、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205、207、209、211、213、215、217、219、221、223、225、227、229、231、233、235、237、及び239のことである。【0028】本発明の遺伝子は、1以上239以下の奇数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示される塩基配列において、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加された塩基配列を有するものであってもよい。【0029】ここで、「1個若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加された塩基配列」とは、公知のDNA組換え技術、変異導入方法により欠失、置換、挿入、及び/又は付加できる程度の数の塩基が、欠失、置換、挿入、及び/又は付加された塩基配列を意味する。【0030】本発明の遺伝子は、ホヤ由来の遺伝子である。なお、ここで言うホヤとは、ホヤ類に属する動物を指す。ここで言うホヤとしては、例えば、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)、ユウレイボヤ(Ciona savignyi)、マボヤ(Halocynthiaroretzi)などが挙げられる。【0031】本発明のタンパク質は、2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列からなるZnフィンガータンパク質である。【0032】本発明に係るタンパク質は、細胞などから単離精製された状態であってもよいし、タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞に導入して、そのタンパク質を細胞内発現させた状態であってもよい。また、本発明に係るタンパク質は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。このようなポリペプチドが付加される場合としては、例えば、HAやMyc、flag等によって本発明のタンパク質がエピトープ標識されるような場合が挙げられる。【0033】本発明に係るタンパク質は、2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるZnフィンガータンパク質であってもよい。【0034】ここで、「1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法などの公知の変異タンパク質作製法により欠失、置換、挿入、及び/又は付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が、欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたことを意味する。【0035】このように、上記タンパク質は、換言すれば、2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列からなる本発明に係る上記タンパク質、すなわちZnフィンガータンパク質の変異タンパク質である。ここにいう「変異」は、主として、公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する変異タンパク質を単離精製したものであってもよい。【0036】上記変異タンパク質の性質は特に限定されるものではなく、例えば、上記Znフィンガータンパク質と同様のDNA結合能を持つものであってもよいし、結合領域に変異を生じさせることにより結合能を増強したもの、結合能が弱まったもの、あるいは結合能が失われたものであってもよい。【0037】本発明の組換え発現ベクターは、上記に記載の遺伝子を含んでいる。このベクターを用いると、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、形質転換体を得ることができる。さらに、そのベクターに含まれる遺伝子がコードする遺伝子を対象細胞(宿主細胞)内で発現させることにより、目的とするZnフィンガータンパク質を生産することができる。【0038】本発明に係る形質転換体は、上記(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子が導入された形質転換体である。ここで、「遺伝子が導入された」とは、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入されることを意味する。また、上記「形質転換体」とは、細胞・組織・器官のみならず、動物個体(ホヤ、海洋生物、魚類、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、サルなどの形質転換動物)を含む意味である。特に、ホヤは現在、実験動物・モデル動物として広く用いられており、本発明に係る遺伝子やタンパク質を用いた発生や再生等の研究に利用できるだけでなく、本発明に係る遺伝子やタンパク質のヒトホモログの関与する病気の診断方法の開発や、その治療方法の開発などにも有用である。【0039】本発明の遺伝子検出器具は、上記に記載の遺伝子における少なくとも一部の塩基配列またはその相補配列をプローブとして用いている。【0040】上記遺伝子検出器具は、Znフィンガータンパク質(特にホヤ由来のZnフィンガータンパク質)をコードする遺伝子の発現パターンのモニタリングを行なうことができる。本発明の遺伝子検出器具としては、例えば、本発明の遺伝子を基盤(担体)上に固定化したDNAチップが挙げられる。【0041】本発明の抗体は、上記に記載のZnフィンガータンパク質に対する抗体である。上述のように、Znフィンガータンパク質は、遺伝子の発現制御に関与しているため、発生遺伝子の発現制御の研究に本発明の抗体を利用することができる。【0042】なお、本発明に係るタンパク質に対する抗体の生産方法は、特に限定されるものではない。例えば、本発明に係るタンパク質に対する抗体は、本発明に係るタンパク質それ自体、又はそのタンパク質の部分ペプチドを抗原として、従来公知の方法により、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得られる抗体である。【0043】【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。尚、本発明はこれに限定されるものではない。【0044】(1)ホヤについて本実施の形態においては、ホヤの1種であるカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)を用いた。カタユウレイボヤは、ホヤの中でも世界で広く研究されている種である。カタユウレイボヤのゲノムサイズは約160Mb(Mb=100万塩基)であり、カタユウレイボヤの遺伝子数は約15,500と見積もられている。これは、ショウジョウバエのゲノムサイズ及び遺伝子数にほぼ匹敵する。さらに、カタユウレイボヤの発生遺伝子の時間的・空間的発現を調節する配列(基本的プロモーター及びエンハンサー)のほとんどは、転写開始点の上流約1kb以内、場合によっては約200塩基対以内におさまっている。したがって、カタユウレイボヤのゲノムは、多くの遺伝子が比較的コンパクトにつまった型のゲノムであることが予想される。【0045】(2)ジンクフィンガー(Znフィンガー)について次に、ジンクフィンガー(zinc finger)について説明する。ジンクフィンガーは、亜鉛(Zn)を補助因子として要求する構造ドメインである。ジンクフィンガーは、転写調節タンパク質など、DNA結合タンパク質に存在する結合のための構造単位の1つである。【0046】ジンクフィンガーは、アフリカツメガエルが持つ、5SRNAの遺伝子の転写調節タンパク質TFIIIA(transcription factor IIIA)において最初に発見され、DNA結合モチーフとして提唱されてきた。それ以来、ジンクフィンガーは、転写因子をはじめ、多くのタンパク質中に見出されている構造ドメインである。上記のように、Znフィンガーの多くは、DNA結合に関与することが知られているが、タンパク質間の相互作用に関与するものも知られている。【0047】Znフィンガーは、亜鉛結合部位の構造から、いくつかのタイプ(型)に分類できる。代表的な型としては、システイン残基2個とヒスチジン残基2個とからなる亜鉛結合部位をもつもの(C2H2型のZnフィンガー)と、システイン残基4個〜5個からなる亜鉛結合部位をもつもの(C4型のZnフィンガー)とがある。なお、「C」はシステインを、「H」はヒスチジンを示している。【0048】C2H2型のZnフィンガーは、真核生物の転写因子(Sp1, TFIIIA, Zif268)によくみられる。C2H2型のZnフィンガーは30残基からなり、多くの場合、「C−X2−4−C−X12−H−X3−5−H」という基本構造をもち、この基本構造の繰り返しがみられる。【0049】C4型のZnフィンガーは、核内レセプター因子群で多く見つかっており、独立した70残基程度のDNA結合性ドメインをもち、「C−X2−C−X13−C−X2−C」という基本構造をもっている。また、Znフィンガーの変型で、RINGフィンガーと呼ばれる一群のタンパク質(PML−1)もある。【0050】ホヤにおいても、Znフィンガーは、転写調節又はタンパク質間の相互作用に関与する重要なタンパク質である。そのため、ホヤ由来のZnフィンガーの機能を個々に明らかにすることは、ホヤにおける発生遺伝子の時間的・空間的発現制御機構の解明に重要な貢献をもたらすとともに、脊椎動物における発生遺伝子の発現制御の解明にも重要な貢献をもたらす可能性が高い。【0051】(3)タンパク質及び遺伝子について次に、本実施の形態におけるタンパク質及び遺伝子について説明する。本実施の形態におけるタンパク質は、2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列からなるジンクフィンガータンパク質である。【0052】本実施の形態における遺伝子は、上記タンパク質をコードする遺伝子である。また、本実施の形態における遺伝子は、1以上239以下の奇数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示される塩基配列のオープンリーディングフレーム(ORF)領域を有している。【0053】上記オープンリーディングフレーム(ORF)領域は、配列表の数字見出し<222>、および下記の表1〜表4の「翻訳領域」の項目に示している。例えば、配列番号1に示される塩基配列は、32〜1474番目の塩基配列をオープンリーディングフレームとして有するが、この場合、配列表の数字見出し<222>の項においては「<222> (32)..(1474)」のように示され、下記の表1〜表4の「翻訳領域」の項においては「32〜1474」のように示される。【0054】本発明者は、カタユウレイボヤの発生における遺伝子の発現プロファイルを解析する目的で、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)の受精卵・卵割期胚・尾芽胚・幼生・幼若体・精巣で発現する遺伝子のmRNAに対して、3’側76,920及び5’側76,250のEST(expressed sequence tag:発現配列タグ)解析を行った。上記EST解析によって得られた塩基配列情報をもとに相同性検索(BLAST検索)を行い、約150のZnフィンガータンパク質をコードする遺伝子のmRNAの断片的塩基配列情報を得た。この中から120のmRNA(cDNA)の全塩基配列を決定した。上記Znフィンガータンパク質をコードする全長cDNA配列を、1以上239以下の奇数の配列番号に示す。また、上記Znフィンガータンパク質のアミノ酸配列を、2以上240以下の偶数の配列番号に示す。【0055】【表1】【0056】【表2】【0057】【表3】【0058】【表4】【0059】次に、表に記載の事項について説明する。表1〜表11において、「配列ID」の項目には、120個のZnフィンガータンパク質に振られた番号を記している。【0060】表1〜表4について以下に説明する。「配列番号」の項目は、左側の列に当該Znフィンガータンパク質をコードする全長cDNA配列と該cDNA配列がコードするアミノ酸配列とが併記されている配列の配列番号、右側の列に当該Znフィンガータンパク質のアミノ酸配列の配列番号を記している。すなわち、「配列番号」の項目の右側の列に記載の配列番号に示されるアミノ酸配列は、「配列番号」の項目の左側の列に記載の配列番号に示されるcDNA配列とアミノ酸配列とが併記された配列におけるアミノ酸配列のみを単独で示した配列である。【0061】「cDNAの長さ」の項目には、当該Znフィンガータンパク質をコードする全長cDNA配列の総塩基数を記載している。「アミノ酸残基の数」の項目には、当該Znフィンガータンパク質のアミノ酸残基数を記載している。【0062】「翻訳領域」の項目においては、アミノ酸翻訳開始位置(翻訳領域の項目における左側の数字)と、アミノ酸翻訳停止位置(翻訳領域の項目における右側の数字)とを示している。上記アミノ酸翻訳停止位置は、終止コドンを含まないものとする。すなわち、「翻訳領域」の項目は、当該Znフィンガータンパク質をコードする全長cDNA配列上におけるオープンリーディングフレーム(ORF)領域を示している。【0063】なお、「翻訳領域」の項目における右側の数値に「[  ]」を付しているものは、ORFの3’側がストップコドンで終わっていない可能性があると判定されたものである。「翻訳領域」の項目における左側の数値に「[  ]」を付しているものは、ORFの5’側にストップコドンがないなどの状況から、まだ実際には5’側が存在する可能性があると判定されたものである。【0064】「Zinc Finger」の項目は、各Znフィンガータンパク質の種類を示している。「繰り返し数」の項目は、各Znフィンガータンパク質におけるZnフィンガー構造の繰り返し数を記載している。【0065】本発明のZnフィンガータンパク質は、Znフィンガー部分の構造の違いにより、表1から表4の「Zinc Finger」の項目に示すように分類される。本発明のZnフィンガータンパク質は、C2H2型、DHHC型、RING型、PHD型、CCCH型、CCHC型、C4型、C4CHHC型に分類される。【0066】複数の型のZnフィンガー構造を有するZnフィンガータンパク質は、「/」で区切って各Znフィンガー構造の型を記載している。例えば、C2H2型及びCCHC型のZnフィンガー構造を有するZnフィンガータンパク質は「C2H2/CCHC」のように記載している。【0067】「RING/C2H2(B box)」、「C4(Tim10 DDP)」、「C4(AN1 like)」、「C4CHHC(MYND)」に示される「()」は、「RING/C2H2」、「C4」、「C4CHHC」をさらに細かく分類したものである。【0068】複数の型のZnフィンガー構造を有するZnフィンガータンパク質は、「繰り返し数」の項目においては、「/」で区切り、各Znフィンガー構造の繰り返し数を記載している。例えば、5個のC2H2型のZnフィンガー構造及び1個のCCHC型のZnフィンガー構造を有するZnフィンガータンパク質の場合、「Zinc Finger」の項目には「C2H2/CCHC」のように記載し、「繰り返し数」の項目には「5/1」のように記載している。【0069】なお、表1〜表4の「Zinc Finger」の項目において、例えば「[C2H2]」のように「[  ]」を付しているものは、すべてのORF領域が含まれていない可能性があると判定されたものである。「[  ]」を付しているものは、他の生物との相同性検索の結果、及び5’側にストップコドンがないなどの状況から、まだ実際には5’側が存在する可能性があると判定されたものである。【0070】C2H2型のZnフィンガードメインは、RNA及びDNAの両方に結合する機能を有する。また、C2H2型のZnフィンガードメインは、タンパク質間の相互作用に関与することが示唆されている。【0071】DHHC型のZnフィンガードメインは、タンパク質間の相互作用又はタンパク質−DNA間の相互作用に関与しているものと予測されている。【0072】RING型のZnフィンガードメインは、タンパク質間の相互作用に関与しているものと示唆されおり、ユビキチン−タンパク質リガーゼE3(ubiquitin−protein ligase E3)活性を有するものや、ユビキチン共役タンパク質E2(ubiquitin−conjugating enzymes E2)との結合を示すものが報告されている。【0073】PHD型のZnフィンガードメインは、クロマチンを媒介した転写調節に関与すことが示唆される核タンパクであるC4HC3型のZnフィンガー様ドメインであり、DNA結合能を有するものと予測されている。【0074】CCCH型のZnフィンガードメインは、核酸に結合するものと考えられており、様々なmRNAの3’非翻訳領域に相互作用するとの報告もある。【0075】C4型のZnフィンガードメインは、DNAに結合する機能を有しており、C4型のZnフィンガータンパク質は、転写因子として機能するものと予測されている。【0076】【表5】【0077】【表6】【0078】【表7】【0079】次に、表5〜表7について説明する。表5〜表7の項目は、「配列ID」の項目と、「発現プロファイル」の項目との大きく2つがある。「発現プロファイル」の項目には、「EG」、「CL」、「TB」、「LV」「AD」、「subtotal」、「TS」、及び「total」の項目がある。「配列ID」の項目は、上記と同様、120個のZnフィンガータンパク質に振られた番号を示している。「発現プロファイル」の項目は、各発生段階及び精巣におけるZnフィンガータンパク質の発現頻度を示している。【0080】「発現プロファイル」の「EG」、「CL」、「TB」、「LV」、「AD」は、それぞれ、受精卵(EG)、卵割期胚(CL)、尾芽胚(TB)、幼生(LV)、幼若体(AD)の各発生段階におけるZnフィンガータンパク質の発現頻度を示している。すなわち、各遺伝子の配列と同じ配列をもつcDNAクローンが、各発生ステージ(段階)由来のcDNAライブラリに何個存在するかという数を示したものである。【0081】「発現プロファイル」の「TS」の項目は、精巣(TS)におけるZnフィンガータンパク質の発現頻度を記載している。「発現プロファイル」の「subtotal」の項目は、受精卵(EG)、卵割期胚(CL)、尾芽胚(TB)、幼生(LV)、及び幼若体(AD)の時期における発現頻度の合計を示している。「発現プロファイル」の「total」の項目は、受精卵(EG)、卵割期胚(CL)、尾芽胚(TB)、幼生(LV)、幼若体(AD)、及び精巣(TS)における発現頻度の合計を示している。発現頻度は、EST解析により決定した。【0082】抽出されたRNAからバイアスをかけずに(その中に多く含まれているmRNAは多いまま、少ないmRNAは少ないまま)cDNAライブラリを作製しており、又各発生段階ほぼ同数のクローンのEST解析を行なっているため、上記「発現プロファイル」のデータは、各発現時期にそれぞれの遺伝子がどの程度発現しているかを表わす指標となる。【0083】なお、配列IDが15番・16番の遺伝子、配列IDが26番・27番の遺伝子、配列IDが40番・41番の遺伝子、配列IDが91番・92番の遺伝子、配列IDが100番・101番の遺伝子、配列IDが109番・110番の遺伝子、配列IDが117番・118番の遺伝子、及び配列IDが119番・120番の遺伝子は、それぞれ選択的スプライシング型(alternative splicing form)の関係であることが示唆される遺伝子である。【0084】上記選択的スプライシング型の関係が示唆される遺伝子については、選択的スプライシング型の関係にある遺伝子の発現頻度の合計をそれぞれ配列ID15番、26番、40番、91番、100番、109番、117番、及び119番の「発現プロファイル」の項目に示した。【0085】上記発現プロファイルに示す、受精卵(EG)の時期においては、発生のスタートとして、将来の胚の軸形成及びパターン形成にかかわる母性遺伝子mRNAが蓄積していると考えられる。表中において、受精卵(EG)の時期にのみ発現している遺伝子としては、配列IDが7番、9番、20番、22番、39番、43番、45番、60番、及び105番のものが挙げられる。それら遺伝子およびタンパク質は、発生のスタートとして将来の胚の軸形成及びパターン形成にかかわる遺伝子の転写調節に関与している可能性がある。【0086】卵割期胚(CL)の時期においては、内胚葉、筋肉細胞などの細胞型の自律的分化にかかわる遺伝子が働いていると考えられる。さらに、卵割期胚(CL)の時期においては、脊索や神経などその分化に必要とされる細胞間相互に関連した分子が働いていると考えられる。表中において、卵割期胚(CL)の時期にのみ発現している遺伝子としては、配列IDが44番、48番、59番、82番、83番、87番、及び97番のものが挙げられる。それら遺伝子およびタンパク質は、内胚葉、筋肉細胞などの細胞型の自律的分化にかかわる遺伝子の転写調節に関与している可能性がある。【0087】尾芽胚(TB)の時期においては、ホヤ幼生を構成する組織や器官の分化が始まるときであり、それぞれの組織形成にかかわる遺伝子が働いていると考えられる。表中において、尾芽胚(TB)の時期にのみ発現している遺伝子としては、配列IDが29番、38番、及び107番のものが挙げられる。それら遺伝子およびタンパク質は、ホヤ幼生を構成する組織や器官の分化及び組織形成にかかわる遺伝子の転写調節に関与している可能性がある。【0088】幼生(LV)の時期においては、ある意味では完全に分化し独特な機能をもった細胞の集まりからなるといえる。特に、神経系などの機能にかかわっている遺伝子の発現が期待される。表中において、幼生(LV)の時期にのみ発現している遺伝子としては、配列IDが53番のものが挙げられる。その遺伝子およびタンパク質は、神経系などの機能にかかわる遺伝子の転写調節に関与している可能性がある。【0089】幼若体(AD)の時期においては、既に多くの成体器官の形成が進んでおり、幼生とは異なった遺伝子の発現が期待される。表中において、幼若体(AD)の時期にのみ発現している遺伝子としては、配列IDが25番のものが挙げられる。その遺伝子およびタンパク質は、幼生とは異なった発現を示す遺伝子の転写調節に関与している可能性がある。【0090】【表8】【0091】【表9】【0092】【表10】【0093】【表11】【0094】次に、表8〜表11について説明する。「配列ID」の項目は、上記と同様、120個のZnフィンガータンパク質に振られた番号を示している。「相同性検索の結果(BLASTX)」の項目には、BLAST(ブラスト)検索の結果を記載している。上記相同性検索の結果を示す「Accession number」の項目には、データベース・アクセッション番号(Accession number)を示している。相同性検索の結果を示す「Database entry name」の項目には、データベースに登録されている名称を示している。「Organism」の項目には生物名を、「probability」の項目には確率(probability)を示している。本実施の形態のタンパク質において、BLAST検索により結果が得られているものは、その検索結果と同様の機能を有する可能性が高い。【0095】なお、「Database entry name」の項目において、「not enough researched」と記載されているものは、BLAST検索の結果、他の生物のESTクローンと相同性を示したものである。すなわち、ESTクローンであるため、その生物に存在することは確かであるが、機能や発現パターンが研究されていない(not enough researched)ものである。【0096】なお、本実施の形態におけるタンパク質は、2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するジンクフィンガータンパク質であってもよい。【0097】また、本実施の形態における遺伝子は、1以上239以下の奇数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示される塩基配列において、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加された塩基配列を有する遺伝子であってもよい。【0098】(4)遺伝子の取得方法次に、本実施の形態における遺伝子の取得方法について説明する。本実施の形態における遺伝子の取得方法としては、例えば、上記の配列情報などに基づいて上記遺伝子を含むDNAを単離して、クローニングする方法が挙げられる。具体的に言えば、まず、上記Znフィンガータンパク質をコードするDNAの一部配列と特異的にハイブリダイズするプローブを調製する。そして、DNAライブラリ、例えば、ホヤのDNAライブラリ、ホヤのゲノムDNAライブラリ、ホヤのcDNAライブラリをスクリーニングすればよい。【0099】上記プローブとしては、Znフィンガータンパク質をコードするDNA(cDNAなど)の塩基配列、又はその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列・長さのものを用いてもよい。上記スクリーニングにおける各ステップについては、通常用いられる条件の下で行なえばよい。【0100】上記スクリーニングによって得られたクローンは、制限酵素地図の作成及びその塩基配列決定(シークエンシング)によって、さらに詳しく解析することができる。これらの解析によって、本発明に係る遺伝子を含むDNAを取得できたかを容易に確認することができる。【0101】本発明に係る遺伝子を取得する方法は、上記スクリーニングによる方法以外にも、例えば、PCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)などの増幅手段を用いる方法がある。例えば、上記Znフィンガータンパク質のcDNA配列のうち、5’側及び3’側の非翻訳領域の配列(又はその相補配列)の中から、それぞれプライマーを調製する。次に、これらプライマーを用いて、ホヤのDNA(ゲノムDNA、cDNAなど)を鋳型にしてPCRを行なう。このPCRにより、両プライマー間に挟まれるDNA領域が増幅されて、本発明の遺伝子を含むDNAを大量に取得することができる。【0102】上記Znフィンガータンパク質をコードするcDNAの塩基配列において、1個若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加された塩基配列を有する遺伝子(変異遺伝子)は、例えば、次の方法によってDNAを改変して作製することができる。その方法とは、PCR法を利用して塩基配列に点変異を導入する方法、部位特異的突然変異誘発法など、公知の変異導入方法である。【0103】なお、上記遺伝子を取得する方法は、上記方法に限定されるものではない。【0104】(5)タンパク質の取得方法次に、本実施の形態におけるタンパク質の取得方法について説明する。本実施の形態におけるタンパク質の取得方法としては、例えば、上記遺伝子を微生物、動物細胞などに組み入れて、遺伝子がコードするタンパク質を得る方法などが挙げられる。【0105】上記方法を具体的に言うと、まず、上記の方法で取得したcDNAを、周知の方法により、大腸菌、酵母などの微生物、又は動物細胞などに組み入れる。なお、ここで使用するcDNAは、上記Znフィンガータンパク質、又はその相同分子などをコードするcDNAなどである。次に、そのタンパク質をコードするcDNAを発現させて、タンパク質を生産する。さらに、生産したタンパク質を精製することによって、本実施の形態のタンパク質を取得することができる。【0106】なお、このように宿主に外来遺伝子を導入する場合、外来遺伝子の組換え領域に宿主内で機能するプロモーターを組み入れた発現ベクター、及び、宿主には様々なものがある。そのため、それら発現ベクター及び宿主は、目的に応じて選択すればよい。また、生産したタンパク質は、用いた宿主と、タンパク質の性質とに応じて、適切な条件下で精製及び取得すればよい。【0107】上記Znフィンガータンパク質のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する変異タンパク質を作製する方法としては、次のような方法がある。例えば、PCR法を利用して塩基配列に点変異を導入して変異タンパク質を作製する方法、部位特異的突然変異誘発法、市販のキットを用いた方法、文献「細胞工学別冊 新細胞工学実験プロトコール 秀潤社 241−248 (1993)」に記載の方法などである。なお、部位特異的突然変異誘発法の詳細は、文献「hashimoto−Gotoh,Gene 152,271−275(1995)他」に記載されている。上記市販のキットを用いた方法で用いるキットとしては、例えば、Quikchange Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)などが挙げられる。【0108】上記のように作製された変異タンパク質が、野生型と同様の活性・機能を有する例は既に多数知られている。さらに、そのタンパク質の活性又は機能に異常が発生するように変異を導入して、変異タンパク質を作製することも既に多く行われている。例えば、結合領域である上記Znフィンガータンパク質のZnフィンガー領域に変異を生じさせることによって、上記Znフィンガータンパク質の変異タンパク質を作製することができる。このような変異タンパク質は、野生型のZnフィンガータンパク質と比べて、DNAとの結合能について、結合能が増強された変異タンパク質、又は、結合能が弱まった変異タンパク質である可能性が高い。さらに、上記変異タンパク質は、DNAとの結合能が失われた変異タンパク質である可能性もある。【0109】なお、本実施の形態のタンパク質を取得する方法は、上記の方法だけに限定されるものではない。【0110】(6)遺伝子検出器具次に、本実施の形態における遺伝子検出器具について説明する。本実施の形態の遺伝子検出器具は、例えば、上記に記載の遺伝子における少なくとも一部の塩基配列またはその相補配列をプローブとして用いたものである。【0111】本実施の形態における遺伝子検出器具としては、例えば、基盤(担体)上にオリゴヌクレオチド(プローブ)を固定化して作るDNAチップが挙げられる。なお、ここで言う「DNAチップ」とは、主として、合成したオリゴヌクレオチドをプローブに用いる合成型DNAチップを意味する。しかし、ここで言う「DNAチップ」とは、PCR産物などのcDNAをプローブに用いる貼り付け型DNAマイクロアレイをも包含するものとする。【0112】上記基盤上に固定化するオリゴヌクレオチドは、1以上239以下の奇数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるDNA配列であって、そのDNA配列にあるコード領域内の7ヌクレオチド以上の連続したDNA配列、又はその連続したDNA配列の相補配列からなることがより好ましい。【0113】プローブとして用いる配列は、調製したcDNAのそれぞれについて、個々を識別することが可能な特徴的な配列を特定する従来公知の方法によって決定することができる。プローブとして用いる配列は、例えばSAGE:Serial Analysis of Gene Expression法(Science 276:1268, 1997; Cell 88:243, 1997; Science 270:484, 1995; Nature 389:300, 1997; 米国特許第5,695,937 号)により決定することができる。【0114】なお、DNAチップの製造には、公知の方法を採用すればよい。例えば、オリゴヌクレオチドとして合成オリゴヌクレオチドを使用する場合には、フォトリソグラフィー技術と固相法DNA合成技術との組み合わせにより、基盤上で該オリゴヌクレオチドを合成すればよい。一方、オリゴヌクレオチドとしてcDNAを用いる場合には、アレイ機を用いて基盤上に貼り付ければよい。【0115】また、一般的なDNAチップと同様、パーフェクトマッチプローブ(オリゴヌクレオチド)と、該パーフェクトマッチプローブにおいて一塩基置換されたミスマッチプローブとを配置してZnフィンガータンパク質をコードする遺伝子の検出精度をより向上させてもよい。さらに、異なるZnフィンガータンパク質をコードする遺伝子を並行して検出するために、複数種のオリゴヌクレオチドを同一の基盤上に固定してDNAチップを構成してもよい。【0116】(7)形質転換体次に、本実施の形態における組換え発現ベクター及び形質転換体について説明する。本実施の形態における組換え発現ベクターは、上記に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクターである。また、本実施の形態の形質転換体は、上記に記載の遺伝子の少なくとも1つを含有する組換えベクターを含むものである。【0117】なお、本実施の形態における組換え発現ベクターは、上記遺伝子を得て、公知の方法により取得することができる。【0118】本実施の形態における形質転換体は、上記遺伝子の取得方法を用いて、下記のように生産することができる。つまり、単離した上記遺伝子を、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入して、当該遺伝子を発現する形質転換体を生産すればよい。上記の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)としては、例えば、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DNA直接導入法、適切なベクター系を用いた導入法などが挙げられる。なお、これら遺伝子工学的手法は、対象細胞(宿主細胞)の種類に応じて最適なものを選択すればよい。(8)抗体次に、本実施の形態における抗体について説明する。本実施の形態における抗体は、本発明のタンパク質、またはその部分ペプチドを抗原として、公知の方法によりポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体として得られる抗体である。【0119】上記抗体は、Znフィンガータンパク質の検出に極めて有効である。また、Znフィンガータンパク質は遺伝子の発現制御に関与しているため、発生遺伝子の発現制御の研究においても、上記抗体を利用することができる。【0120】本実施の形態における抗体は、例えば、次のようにして生産することができる。まず、本実施の形態におけるタンパク質を、上記に示した方法により取得する。次に、そのタンパク質自体、又はそのタンパク質の部分ペプチドを抗原として、従来公知の方法により、抗体を得ることができる。なお、ここで言う従来公知の方法としては、例えば、文献(Harlowらの「Antibodies : A laboratory manual(Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988)」、岩崎らの「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA,講談社(1991)」)に記載の方法が挙げられる。【0121】(9)有用性上記のように、本発明に係るタンパク質は、本発明者によって初めて明らかにされた、ホヤの発生段階に発現する新規のジンクフィンガータンパク質である。したがって、本発明に係る遺伝子、タンパク質等は以下の有用性を有する。【0122】前述のように、ハエ、線虫、カエル、哺乳類など、様々な動物の体づくりは、基本的には同じ遺伝子及び分子を使ってなされていることが明らかになっている。また、脊索動物であるホヤの遺伝子は、前述のように、脊椎動物における遺伝子の重複がなく、遺伝子重複前の脊索動物の基本型を保っており、ホヤのオタマジャクシ型幼生の体制は、脊索動物のボディプランの最も単純な型(原型)を表している。【0123】したがって、脊索動物であるホヤの発生段階に発現する遺伝子の発現制御機構の解析により得られた知見は、単にホヤにおける発生のメカニズムの解明のみならず、ヒトを含む脊椎動物の発生のメカニズムの解明に資するものである。さらに、このような解析により得られた知見は、細胞の増殖・分化・再生のメカニズムの解明にも資するものである。また、このような解析により得られた知見は、医学上及び産業上へ有効利用できるものであり、具体的には、発生段階の異常に起因する種々の遺伝子疾患の原因究明、さらにはその診断法や治療法の開発などに有効利用できるものである。【0124】前述のように、ジンクフィンガータンパク質は、遺伝子の発現制御に関与しているので、例えば、発生段階の異常に起因する種々の遺伝子疾患においては、その疾患の原因となる遺伝子の発現を調節する等の治療法及び治療薬の開発に利用できる。例えば、発生段階において、ある遺伝子の発現が微量なために起こる疾患では、その疾患の原因となる遺伝子の発現を促進するジンクフィンガータンパク質を過剰発現させる等の治療法及び治療薬の開発に、本発明に係る遺伝子を利用することができる。【0125】発生段階の異常に起因する種々の遺伝子疾患においては、その疾患の原因となる遺伝子に結合して、その遺伝子の転写を調節するジンクフィンガータンパク質に変異が生じている可能性も考えられる。本発明に係る遺伝子検出器具、及び本発明に係る抗体は、上記のようにジンクフィンガータンパク質に生じた変異が関わる遺伝子疾患の診断及び診断薬に利用できる。【0126】例えば、ウィルムス腫瘍、多指症、先天性ミエリン形成不全症(congenital hypomyelinating)などの疾患は、C2H2型のZnフィンガータンパク質をコードする遺伝子に生じたミスセンス突然変異が原因とされている。【0127】男性ホルモン不能症候群、男性乳癌、くる病(Rickets)、球脊髄性筋萎縮症、前立腺癌、遅発性の網膜色素変性症、男性における副腎皮質不全などの疾患は、C4型のZnフィンガータンパク質をコードする遺伝子に生じたミスセンス突然変異が原因とされている。【0128】本発明に係る遺伝子、とりわけC2H2型、C4型のZnフィンガータンパク質をコードする遺伝子は、上記のようなジンクフィンガータンパク質をコードする遺伝子に生じた変異が関わる遺伝子疾患の治療法及び治療薬の開発、並びに診断及び診断薬に利用することができる。【0129】RING型のZnフィンガードメインは、前述のように、ユビキチン−タンパク質リガーゼE3活性を有するものや、ユビキチン共役タンパク質E2との結合を示すものが報告されている。ユビキチンは、細胞内で不要になったタンパク質を分解するための目印となるタンパク質であり、原核生物から哺乳類までのほぼ全ての細胞に存在し、アルツハイマー病患者の脳内においても発見されている。また、パーキンソン病の原因遺伝子からつくられるタンパク質は、ユビキチンに類似した構造をもつ。【0130】本発明に係る遺伝子、とりわけRING型のZnフィンガータンパク質をコードする遺伝子は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患の治療法及び治療薬の開発、並びに診断及び診断薬の開発に利用できる可能性がある。【0131】本発明に係る遺伝子、タンパク質等は、細胞の増殖・分化・再生のメカニズムを研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、種々の病気の病態解析やその治療薬の開発、治療改善に有効利用できる。例えば、再生医療分野においては、ジンクフィンガータンパク質をベクター等を用いて人為的に細胞内発現させることにより、幹細胞の分化の誘導及び分化した細胞の増殖を促すなどの治療法の開発に本発明に係る遺伝子、タンパク質等を利用することができる。【0132】本発明に係る遺伝子は、環境測定、特に海水などの水質調査に利用できる。例えば、発生段階の生物への影響を調べたい物質を加えて、人為的に調整した海水環境下で発生段階のホヤを飼育し、そのホヤにおける発生遺伝子の発現を本発明に係る遺伝子検出器具を用いて測定する。この場合、調査したい地域の海水を採取して、その採取した海水を用いて発生段階のホヤを飼育してもよい。【0133】上記のような環境測定により、種々の環境因子に対してそれぞれ感受性を示す遺伝子を特定することができる。例えば、ある地域の海水を用いて飼育したホヤのみが特別な遺伝子発現パターンを示した場合、その海水をさらに詳しく分析することにより、生物の発生に影響を与える環境因子を特定することができる。このような環境測定は、環境浄化や養殖など産業上広く利用できるものである。【0134】さらに、本発明の遺伝子は、ホヤの形質転換体の作製に利用できる。例えば、食用のホヤの改良に、本発明の遺伝子を利用できる。食用としてのホヤには、例えば、マボヤ(Halocynthia roretzi)が挙げられる。【0135】【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。【0136】Znフィンガータンパク質と、その遺伝子の配列(全長cDNA)とを、次の方法により決定した。【0137】(1)使用したホヤホヤは、京都大学の舞鶴Fisheries Research Station及び東北大学のEducation and Research Center of Marine Bio−Resourcesで培養したカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)を使用した。このホヤの成体を一定の光のもとで保持することにより、卵母細胞(oocyte)の成熟を促した。【0138】ホヤの卵子及び精子(精巣)は、生殖輸管から外科的に採取した。必要に応じて、受精後、1.3%チオグリコール酸ナトリウム(Wako Pure Chemical Industries, Osaka, Japan)と、0.065%アクチナーゼE(Kaken Pharmaceutical Company,Tokyo,Japan)とを含んだ海水に卵子を浸すことによって、受精卵からコリオンを除いた。洗浄後、寒天で覆われたシャーレ内で、50μg/mlの硫酸ストレプトマイシンを含んでいるミリポア−フィルタでろ過された海水(MFSW:Millipore−filtered seawater)とともに、室温(18℃〜20℃)下に受精卵を保持した。そのような環境に受精卵を保つことによって、ホヤの卵割期胚、尾芽胚、幼生、及び幼若体を得た。【0139】(2)cDNAライブラリの作製まず、上記カタユウレイボヤを用いて、RNAを抽出した。RNAは、ホヤの受精卵(受精直後)、卵割期胚、尾芽胚、幼生、幼若体、及び精巣から抽出した。また、酸グアニジウムチオシアネイト−フェノール−クロロホルム法(AGPC法)(Chomczynski and Sacchi, Anal.Biochem. 162, 156−159(1987))により、上記RNAを抽出した。【0140】上記AGPC法で抽出したRNAを精製して、mRNA(ポリ(A)+RNA)を得た。なお、オリゴテクスビーズ(Roche社製)を用いた2回の精製により、ポリ(A)+RNAを得た。【0141】上記精製されたポリ(A)+RNAを、EcoRI部位を5’末端に有し、XhoI部位を3’末端に有する2本鎖のcDNAに変換した。なお、その変換には、cDNA合成キット(Stratagene社製)を用いた。【0142】次に、EcoRI及びXhoIで処理されたベクター(pBSII−SK(−))に、上記cDNAを結合させた。そして、上記cDNAが結合したベクターを、エレクトロポレーションにより、XL−1 Blue MRF’菌(Stratagene社製)に導入して、cDNAライブラリを得た。【0143】上記ライブラリは、Genetix Q−Pixロボットを使って384ウェルプレートに整列した。なお、上記ライブラリは、得られたRNAの由来(受精卵、卵割期胚、尾芽胚、幼生、幼若体、及び精巣の由来)が分かるように作製されている。【0144】(3)塩基配列のシークエンス塩基配列のシークエンスは、下記の方法で行った。まず、384ウェルプレートからクローンを取り出し、cDNA挿入断片をPCRにより増幅した。その増幅は、アガロース電気泳動法を用いて、良好な増幅であることを確認した。【0145】上記PCRで得られたPCR産物を精製した後、オートシークエンサーを用いて、そのPCR産物の塩基配列を従来の手法で決定した。なお、オートシークエンサーは、Academia DNA Sequencing Center,National Institute of Genetics,Japanのオートシークエンサー(ABI3700)を用いた。さらに、そのオートシークエンサーとともに、塩基配列の決定には、ビッグダイターミネータ(the big−dye terminators)も用いた。なお、シークエンスにおいて、3’配列用のプライマーに固着オリゴdTプライマー(5’−(T)17−V−3’)を、5’配列用のプライマーにBS740(5’−CCGCTCTAGAACTAGTG−3’)を用いた。【0146】(4)クラスタリング及び相同性検索3’末端配列タグを用いてクローンの重複を調べ、クローンをクラスタに分類した。上記クラスタの分類には、FASTAプログラムを用いた。それぞれのクラスタは、同一の遺伝子をコードするcDNAクローンを含んでいる。【0147】次に、3’側76,920のEST及び5’側76,250のESTの塩基配列について、相同性検索を行った。なお、相同性検索には、データベースとして、遺伝子データベース(DDBJ DNAデータベース)と、タンパク質データベース(DAD)とを用いた。相同性検索には、BLASTアルゴリズム(BLASTN及びBLASTX)を用いた。【0148】(5)cDNA全長の決定上記相同性検索の結果(BLASTXの結果)から、ジンクフィンガータンパク質に関する約150個のmRNA断片を得た。この約150個のmRNA断片は、ジンクフィンガータンパク質をコードする遺伝子のmRNAである。【0149】上記約150のmRNA断片の全塩基配列を決定したところ、これらは120個のmRNA(cDNA)に相当することがわかった。なお、決定したcDNAの全塩基配列(全長cDNA配列)は、本発明に係る上記Znフィンガータンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)領域の塩基配列のほか、5’末端側と3’末端側とにそれぞれ非翻訳領域(UTR)を含むものである。【0150】(6)モチーフ検索次に、上記全長cDNA配列の情報、上記ORFの情報などを用いて、アミノ酸配列を決定した。さらに、決定したアミノ酸配列を用いて、モチーフ検索を行った。そのモチーフ検索により、上記表1〜4の「Zinc Finger」の項目に示される各Znフィンガータンパク質の種類、及び表1〜4の「繰り返し数」の項目に示されるZnフィンガー構造の繰り返し数を決定した。【0151】なお、モチーフ検索には、主としてGenomeNetのモチーフ検索を用い、CutOFFの値はデフォルトのままとして、ライブラリは、PROSITE、BLOCKS、ProDom、PRINTS、Pfamを用いた。【0152】【発明の効果】以上のように、本発明によれば、発生遺伝子の時間的・空間的発現制御機構の解析に、特にホヤにおける発生遺伝子の時間的・空間的発現制御機構の解析に極めて有用であるという効果を奏する。さらに、本発明は、上記解析を通じて、医学上及び産業上への応用も期待されており、具体的には、発生段階の異常に起因する種々の遺伝子疾患の原因究明、さらにはその診断法や治療法の開発に有用であるという効果を奏する。【0153】【配列表】 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする遺伝子。(a)2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列からなるジンクフィンガータンパク質。(b)2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるジンクフィンガータンパク質。 ホヤ由来である請求項1記載の遺伝子。 1以上239以下の奇数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示される塩基配列のオープンリーディングフレーム領域を有する請求項1又は2記載の遺伝子。 請求項1から3のいずれか1項に記載の遺伝子における少なくとも一部の塩基配列またはその相補配列をプローブとして用いた遺伝子検出器具。 2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列からなるジンクフィンガータンパク質。 2以上240以下の偶数の配列番号のうち、いずれか任意の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるジンクフィンガータンパク質。 請求項1から3のいずれか1項に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。 請求項1から3のいずれか1項に記載の遺伝子が導入された形質転換体。 請求項5又は6に記載のタンパク質に対する抗体。 【課題】ジンクフィンガータンパク質をコードするホヤ由来の新規遺伝子群、およびそのタンパク質に対する抗体などを提供する。【解決手段】本発明に係る新規のジンクフィンガータンパク質は、カタユウレイボヤから単離されたタンパク質であり、DNAに結合し、転写調節に関わる重要なタンパク質であると考えられる。このホヤ由来の新規のジンクフィンガータンパク質は、ホヤにおける発生遺伝子の時間的・空間的発現制御機構を研究解析するための研究材料として有用であるばかりでなく、こうした研究を通じて、発生遺伝子の時間的・空間的制御機構に関わる種々の病気の病態解析やその治療薬の開発、治療改善に有効利用できる。【選択図】 なし


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