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タイトル:公開特許公報(A)_マイクロ流体デバイスの送液方法
出願番号:2002220409
年次:2004
IPC分類:7,G01N35/08,G01N1/00,G01N31/20,G01N33/53,G01N35/10,G01N37/00,G01N30/32,G01N30/60


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穴澤 孝典 寺前 敦司 JP 2004061320 公開特許公報(A) 20040226 2002220409 20020729 マイクロ流体デバイスの送液方法 財団法人川村理化学研究所 000173751 志賀 正武 100064908 渡邊 隆 100089037 穴澤 孝典 寺前 敦司 7 G01N35/08 G01N1/00 G01N31/20 G01N33/53 G01N35/10 G01N37/00 G01N30/32 G01N30/60 JP G01N35/08 B G01N1/00 101F G01N31/20 G01N33/53 M G01N37/00 101 G01N35/06 A G01N30/32 Z G01N30/60 D 13 1 OL 17 2G042 2G052 2G058 2G042CA10 2G042CB03 2G042DA10 2G042GA01 2G042GA02 2G042HA02 2G042HA03 2G042HA10 2G052AB20 2G052AD26 2G052AD46 2G052CA03 2G052CA08 2G052CA12 2G052CA20 2G052CA39 2G052EB11 2G052GA22 2G058BB02 2G058BB09 2G058EA14 2G058EB19 2G058GA11 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ流体デバイスに形成された毛細管状の流路中で液体を送液する方法に関し、特に極微少量の液体を送液するマイクロ流体デバイスの送液方法に関する。【0002】【従来の技術】毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイスは、マイクロ・フルイディック・デバイス、マイクロ・ファブリケイテッド・デバイス、ラブ・オン・チップ、又はマイクロ・トータル・アナリティカル・システム(μ−TAS)とも呼ばれるものであり、流体を流入し流出するまでの経路内で、流体が温度変化をうける機構、濃度調整される機構、化学反応をうける機構、流動の流速、流動の分岐、混合若しくは分離などの制御をうける機構、又は電気的、光学的な測定をうける機構等を設けた毛細管状の流路を有するデバイスである。マイクロ流体デバイスは、例えば微小ケミカルデバイス、即ち、微小な流路、反応槽などの構造が形成された、化学・生化学反応用微小デバイス(マイクロ・リアクター);膜濾過デバイス、透析デバイス、脱気・吸気デバイス、抽出デバイスなどの化学的・物理化学的処理デバイス;DNA分析デバイス、免疫分析デバイス、電気泳動デバイス、クロマトグラフィー、ガス分析デバイス、水質分析デバイスなどの微小分析デバイスに使用できる。また、例えばDNAチップなどのマイクロアレイ製造用のノズルやそれを組み込んだ装置に利用できる。このようなマイクロ流体デバイスとして、例えば特開2000−246092号公報や特開2000−246805号公報等が開示されている。マイクロ流体デバイスは、毛細管状の流路を用いるため、マイクロリットルオーダー以下の極めて微量の溶液量で化学反応、分離などの物理化学的処理、検出などの分析などを行うことが出来る。そのため、使用サンプル量や使用試薬量の低減が図れると期待されている。しかしながら、このような極微量のサンプルをマイクロ流体デバイスに導入したり、マイクロ流体デバイス内の流路を送液することは、特に、サンプル量がマイクロ流体デバイス内の流路容積より少ない場合にはかなり困難であった。マイクロ流体デバイス中に形成された毛細管状の流路に流体を流す方法として、空気などの気体やシリンジポンプなどの外部駆動手段を用いた圧力差による方法、マイクロ流体デバイス内部に形成されたダイヤフラムポンプやギヤポンプなどの内部駆動手段を用いた圧力差による方法、非対称な波形の振動や超音波で流路内の流体を駆動する方法、流体が水系液体の場合には電気浸透流で直接流体を移動させる方法などが知られている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電気浸透流による方法の場合には、送液する液体は2つの電極間を常に連絡する量だけ満たされている必要があり、液体が流路の一部だけに存在するような極少量である場合には使用不能であった。非対称な波形の振動や超音波で駆動する方法も、液体量が少ない場合には、一方向のみの送液は可能であっても、複雑な形状の流路中を送液することは不可能であった。シリンジポンプやギヤポンプなどの外部ポンプを用いた押動又は吸引による駆動の場合には、液体の量が、配管やポンプを満たす量が必要であった。また、マイクロ流体デバイス内部に設けられた内部ポンプのように、それが機能するためには液体が充填されている必要がある場合、液体は送液期間中この機構を満たしている必要があった。一定圧力の気体を駆動力とする圧力差による駆動の場合には、液体の量が、配管やポンプを満たすに不十分な量であっても、気体を介して液体を圧力差で押動させたり吸引させることによって液体の移送を行うことが可能であった。しかしながら、流路の途中に、例えば多孔質膜のように大きな圧力損失を生じる機構が設けられている場合、液体が大きな圧力損失を有する部分を通過する前と後で流速が大きく変化するという不具合がある。また流路内の複数の領域で温度が異なる場合等には、気体の膨張・収縮により流路の各温度部分を所定の滞留時間で流すことが出来ず、流量が不正確になる、といった不具合が生じていた。このような不具合は、加圧又は減圧気体で送液する場合だけでなく、加圧または減圧液体で送液する場合にも、送液すべき液体と駆動のための液体の混合やコンタミネーションを避けるため、2つの液体間に気体(流路を塞ぐ気泡。以下、単に気泡と称する。)を介在させて駆動すると、上記と同じ問題が生じた。これは、一定圧力の気体や液体で駆動する場合だけでなく、シリンジポンプやギヤポンプなどの定量ポンプで押動又は吸引する場合でも同様であった。特に、大気に解放された注入口に極微量の試料液体を注入し、そこに配管を接続する場合にも、2つの液体間に気体が介在する状況が生じがちであった。【0004】本発明は、このような実情に鑑みて、試料液体が流路の一部だけに存在するような極少量であっても、また、大きな圧力損失を生じる機構が設けられている場合や、流路の各部で温度が異なる場合であっても、所定の流速で送液することの出来るマイクロ流体デバイスの送液方法を提供することを目的とする。また本発明の他の目的は、大気に解放された注入口に試料液体を注入し、そこに圧力差で駆動するための配管を接続する場合に於いても、気泡の混入を生じること無く試料液体を導入出来るようにしたマイクロ流体デバイスの送液方法を提供することである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイスの流路内に配した試料液体を、試料液体と接触した状態で直列に配した試料液体と非相溶性(非混和性)の他の液体を圧力差や振動、超音波、電気浸透流等により駆動して送液することにより、上記課題を解決できることを見いだした。また、上記の送液方法は、大気に解放された注入口から試料液体を導入する方法においても、気泡の混入無く導入して送液可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によるマイクロ流体デバイスの送液方法は、毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイスにおいて、流路内に供給した試料液体に該試料液体とは非相溶性の駆動液体を接触させ、該駆動液体を移動させることで試料液体を送液するようにしたことを特徴とする。本発明によれば、試料液体が流路内の一部にのみ存在するような極微少量であっても、駆動液体を移動させることで直接試料液体を押動または吸引させることができ、その際に試料液体に気泡などが混入することなく、また毛細管状の流路内に温度差のある領域があっても温度変化による液体の熱膨張や収縮は極めて少ないから、試料液体を所定の流速で流路内を流すことができ、或いは所定の滞留時間で流路内を流すことが出来ることになり、流量が正確になる。しかも試料液体とは非相溶性の駆動液体を接触させて押動させることで試料液体と混和する等の悪影響を与えない。【0006】また本発明によるマイクロ流体デバイスの送液方法は、毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイスにおいて、流路内に供給した試料液体に続いて該試料液体とは非相溶性の中間液体を介して作動液体を配設し、該作動液体を移動させることで試料液体を送液するようにしたことを特徴とする。本発明によれば、試料液体が流路内の一部にのみ存在するような極微少量であっても、作動液体を移動させることで仲間液体を介して間接的に試料液体を押動または吸引させることができ、その際に試料液体に気泡などが混入することなく、また毛細管状の流路内に温度差のある領域があっても温度変化による液体の熱膨張や収縮は極めて少ないから、試料液体を所定の流速で流路内を流すことができ、或いは所定の滞留時間で流路内を流すことが出来ることになり、流量が正確になる。しかも試料液体と作動液体との間に非相溶性の中間液体を介在させれば、作動液体が試料液体と相溶性であっても試料液体に悪影響を与えることがない。また中間液体は試料液体と非相溶性であればよく、作動液体と相溶性であっても非相溶性であってもよい。尚、駆動液体や作動液体の駆動手段として圧力差、振動、超音波、電磁波等を用いることができる。圧力差は加圧でも減圧でも良く、また、空気圧などの一定圧力差(圧力制御)、定量ポンプなどの流量制御の圧力差であって良い。【0007】【発明の実施の形態】本発明におけるマイクロ流体デバイスは、内部に毛細管状の流路(以下、「毛細管状の流路」を、単に「流路」と称する場合がある)を有し、この流路中で、化学反応、物理化学的処理、検出、定量などを行ったり、この流路から極微少量の液体を定量吐出したり、同じく定量吸引したりする機能を有するものである。本発明でいう流路は、その内部を送液する対象の液体である液体A(試料液体)を送液する空洞を言い、単なる移送用の流路の他、反応流路、検出用流路、定量用流路、抽出その他の処理流路、バルブやポンプ部の空洞等であり得る。また、「流路内の液体Aの送液」は、流路への液体Aの導入や流路からの液体Aの吐出であってもよい。液体Aは、例えば反応原液や生成物溶液、分離原液や分離液、検出すべき物質の溶液、定量すべき液体などであり、その状態は任意である。例えば、純粋液体、混合液体、溶液、分散液などであり得る。また液体Aは、例えば水、酸、アルカリ、有機溶剤などであり得る。流路中に供給される液体Aの量は任意であるが、本発明は特に少量の液体Aを送液する場合に効果が発揮される。特に、液体Aの量が流路の容積より少であり、液体Aの全量が前記流路に導入されても流出口に達せず、流路中を1つの塊となって送液される量である場合に、本発明の効果が発揮され、好ましい。即ち、本発明に於いては、液体Aがこのような少量であっても使用可能である。液体Aの量は、好ましくくは1μm3〜100mm3 、より好ましくは10μm3〜10mm3である。好ましい溶液Aの量は、マイクロ流体デバイスの流路断面積にも依存し、例えば流路断面積が1μm2〜30μm2の場合には1μm3〜1mm3 程度が好ましく、流路断面積が30μm2〜500μm2の場合には100μm3〜100mm3 程度が好ましい。【0008】液体Aを流路に供給する方法は任意であり、大気に解放された注入口への注入;接続配管を通じての注入口からの導入;マイクロ流体デバイス中で分岐やバルブを経ての流路への導入;マイクロ流体デバイスの流路中での合成、混合、分離等の処理による形成などであり得るが、大気に解放された注入口への注入であることが特に有用である。本発明に用いる液体B(駆動液体)は液体Aとは非相溶性の液体であり、液体Aやマイクロ流体デバイスなどを犯すものでなければ任意である。但し、この液体Bは非磁性流体である。液体Aが水系液体、即ち水溶液や、水を分散媒とする分散液である場合には、液体Bは非水溶性の有機溶剤や有機液体、例えば、ノルマルヘキサン、トルエン、ミネラルオイルなどの炭化水素系溶剤;デカン酸エチルなどのエステル系溶剤;ジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤;クロロホルムなどの塩素系溶剤;フッ素系溶剤;シリコンオイル等を例示できる。液体Bの粘度は、流路の断面積や送液速度によって好適なものを選択できる。例えば0.1〜100mPa/sのものを好ましく用いることが出来る。流路断面積が小さい場合には低粘度のものが流動性や定速性をよくして反応性を良好にするために好ましく、流路断面積が大きい場合には比較的高粘度のものが適正な流動性と定速性と計量性を確保する上で好ましい。本発明の送液方法において、大気に解放された注入口に液体Aを注入し、その上に下記の液体Bを注入する場合には、液体Bの密度は液体Aの密度より小であることが好ましい。【0009】液体Bは、流路内に於いて、液体Aに接して液体Aと直列に配する。直列とは送液方向に対して順に並ぶことを意味する。液体Bを、液体Aに接するようにして直列に流路に配する方法は任意であり、例えば、注入口に注入した液体Aの上に液体Bを注入する方法、マイクロ流体デバイス内に設けられた三方バルブにより流路内の液体を液体Aから液体Bへ切り替える方法、液体Aと気体を介して液体Bを流路中に配し、その後、気体を除去して液体Aと液体Bを接触させる方法、マイクロ流体デバイス外において、例えば三方バルブなどによって互いに接して配された流体Aと流体Bを配管を通じてそのままマイクロ流体デバイスの流路に注入する方法等があり得る。流路中の流体Aと流体Bの間の気体を除去する方法は任意であり、例えば疎水性の多孔質体や疎水性の小径の毛細管状から成るベントを通じての除去、非多孔質気体透過膜を通じての脱気(脱泡)、炭酸ガスや酸素などの気体の化学的な吸収等であり得る。流路内に配された液体Aの、液体Bとは反対側(の界面)に接する物質は任意であり、気体、液体Aと非混和性の液体、流路内を移動可能な固体やゲルの栓等であって良い。これらの中で、気体または液体Aと非混和性の他の液体が好ましい。この気体は液体Aを犯す物でなければ任意であり、例えば、空気、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、酸素、二酸化炭素、メタンなどの炭化水素、四フッ化炭素などのフッ化炭素等であり得るが、空気、窒素、ヘリウムまたはアルゴンが、非反応性、毒性、大気汚染性、コストなどの面で好ましい。液体Aの、液体Bとは反対側(の界面)に接する液体Aと非混和性の液体としては、本発明において液体Bとして挙げた液体を使用できる。液体Bと同じものであることが好ましい。液体Aの量が特に少なく、例えば流路方向の充填長さが流路幅の100倍以下であるような場合には、液体Aの蒸発を防止する目的で、液体Aの、液体Bとは反対側に液体Aと非混和性の液体を接触させることが好ましい。【0010】液体Aと液体Bの位置関係は、液体Bを加圧または減圧することによって、即ち、流路内の液体Bの一方の端と他方の端の圧力差によって液体Bが駆動され、液体Bの移動に伴って液体Aが直接送液されるものであれば任意である。そのため、この発明では液体Bは駆動液体を構成する。液体Aは液体Bにより押されて送液される位置にあってもよく、吸引されて送液される位置にあってもよく、或いは両側を液体Bに挟まれていても良い。流路中に複数の液体Aが液体Bを挟んで配されていることも、多数高速処理の観点から好ましい。液体Bの駆動方法は任意で有る。但し、本発明に於いては、液体Bは非磁性流体であり磁性流体を外部磁力で駆動する方法は除く。駆動方法は、例えば圧力差、即ち加圧または減圧により駆動する方法、超音波や振動による駆動等を挙げることができる。圧力差による駆動は、例えばマイクロ流体デバイス外の定量ポンプによる液体Bの圧入または吸引、圧力制御によるマイクロ流体デバイス外からの液体Bの加圧または減圧、マイクロ流体デバイス内に設けられたポンプによる液体Bの加圧または減圧、マイクロ流体デバイス内に設けられたタンク中の加圧気体や減圧気体による液体Bの加圧または減圧等であり得る。【0011】本発明の別の送液方法として、液体Bは、必要に応じて液体Bと直列に配した第3の液体Cによって駆動してもよい。この場合、液体Bは中間液体を構成し、液体Cは作動液体を構成する。本発明では、液体Cが液体Bを押動するまたは吸引することによって液体Bを駆動し、液体Aを間接的に送液する。液体Cは、液体Bの液体Aとの接触界面とは反対の界面側に直接接触させるか、他の液体を介して接触させる。この時、液体Bと液体Cの接触部の位置は任意であり、マイクロ流体デバイスの流路内であっても、マイクロ流体デバイスの注入口内であっても、例えば流路に接続された接続配管などのマイクロ流体デバイス外であっても良いが、マイクロ流体デバイスの流路内またはマイクロ流体デバイスの注入口内であることが好ましい。この時、液体Bの量は任意であり、液体Aと液体Cを隔てることが出来れば極微少量であって良く、例えば流路中の充填長さが流路幅の1〜10倍程度であっても良いが、注入の容易な適量を使用できる。液体Cを液体Bに接して直列に配する方法は任意であり、液体Bを液体Aに接して直列に配する方法として下記の実施例等で例示した方法を採用することが出来る。液体Cの駆動方法も任意であり、例えば上記の液体Bに対して適用できる駆動方法を採用できるが、その他に、例えば液体Cとして水系液体を使用し、これを電気浸透流によって駆動する方法なども使用することも出来る。液体Cは任意である。液体Bと非混和性であることが好ましいが、混和性であっても使用可能である。マイクロ流体デバイスの使用時間内に液体Bと完全に混和して液体Aに接し、液体Aを汚染するなどの影響を及ぼすことが無ければよい。液体Cの粘度は、液体Bの場合と同様であるが、液体Bと液体Cの接触部がマイクロ流体デバイス外である場合には、液体Cは径の大きな配管内を流れるのみであるので、好ましく使用できる粘度範囲が広くなり、0.1〜10000mPaSが好ましい。液体Cとしては、水系液体、特に水であることが、汚染性、有毒性等の面で取り扱い性が良く好ましい。このように、液体Cを用い、これを駆動して間接的に液体Aを送液する方法は、駆動用の液体Cの選択範囲が広がり、注入口への配管接続の際の注入口付近の汚染の心配が無くなり、取り扱い性の良い水などを使用できるため好ましい。【0012】本発明で使用するマイクロ液体デバイスの形状は任意であり、用途、目的に応じた形状とすることが出来る。例えば塊状、板状、シート状(フィルム状、リボン状、ベルト状を含む)、繊維状(中空繊維状)等であり得るし、これらの複合構造、例えば液体Aが配された流路部分が板状であり、液体Bが配された流路部分が中空糸状である構造などであり得る。マイクロ流体デバイスが微小ケミカルデバイスである場合には、板状またはシート状であることが好ましい。流路の形状は任意である。流路の長さ方向の形状は、例えば直線、曲線、渦巻き、ジグザグ、その他の線状;樹枝状、櫛型、放射状、網状などの分岐状;円形や矩形などの面状;バルブ機構や膜分離機構などの機構の一部となる構造、これらの連結された形状等であり得る。流路はマイクロ液体デバイスの外部に開口していても良く、配管や他のデバイスと接続されていても良く、外部に開口せずに、マイクロ液体デバイス内に設けられた機構、例えば貯液槽、廃液溜め、加圧槽、減圧槽等に連絡していても良い。流路の断面形状も任意であり、矩形(角の丸められた矩形を含む)、台形、円形、半円形、スリット状、その他の複雑な形状であり得る。流路の断面寸法は、幅と高さがそれぞれ好ましくは1μm〜500μm、更に好ましくは3μm〜300μmである。また、断面積は、好ましくは1μm2〜0.3mm2、更に好ましくは10μm2〜0.1mm2である。これらの寸法未満では液体Aの移送が困難となる。また、これらの寸法を超えると流路中の液体Aの量が多くなり本発明の効果が減じる。なお、上記の断面形状や断面寸法は、液体Aが送液される部分の形状、寸法であり、その他の部分、例えば廃液タンク等については任意である。【0013】本発明においては、マイクロ流体デバイス内の流路が異なる温度にそれぞれ設定された複数の温度領域(温調領域部)にまたがって形成されており、これらの温度領域の流路を液体Aが通過するようにした送液方法であることが好ましく、異なる温度領域を通過させることによって液体Aが化学反応を行う送液方法であることが好ましく、特にポリメラーゼ連鎖反応(ピー・シー・アール:PCR)を行う送液方法であることが、有用であり好ましい。また、本発明においては、マイクロ流体デバイスがマイクロノズルであり、液体Aがマイクロノズルから吐出させるべき液体であることが有用であり好ましい。この場合、マイクロノズルとして、それぞれ注入口と吐出口を有する互いに独立した複数の毛細管状の流路を有するものを使用し、各注入口にそれぞれ液体Aを注入し、必要に応じてその上に液体Bを注入し、更に必要に応じてその上に液体Cを注入する送液方法であり、しかも注入口には供給源から分岐した複数の接続配管を接続し、接続配管の供給源において液体Bまたは液体Cを駆動し、接続配管が接続された複数の流路のそれぞれにおいて、液体Aを送液して吐出口から吐出させる送液方法であることが好ましい。これらの方法において、分岐した接続配管の供給源において駆動用の液体Bまたは作動用の液体Cを駆動する方法は任意であり、例えばピエゾポンプの使用、ピエゾ素子による流路容積の減少、定量ポンプによる吐出、気体などによる加圧などであり得るが、DNAマイクロアレイなどの製造にスポッタとして使用する場合には、ピエゾポンプによるパルス的な加圧、またはピエゾ素子による流路容積の瞬間的な減少であることが好ましい。上記のような送液方法により、溶液Aが少量であってもマイクロノズルへの注入が容易となり、且つ1つの駆動機構で複数の吐出口でのスポッテイングが可能となる。【0014】【実施例】以下、本発明の実施例について添付図面により説明する。図1及び図2は第一実施例によるマイクロ流体デバイスを示すもので、図1はその平面図、図2は図1のA−A線縦断面図である。図に示すマイクロ流体デバイスDaは化学反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応を行う送液方法に用いるものである。このデバイスDaは、例えばポリスチレン製の基材1上に組成物からなる第一塗膜2と第二塗膜3を順次積層して部材Mを形成し、第二塗膜3には液体の流路4を形成するために上下面に貫通する溝を平面視で蛇行して折り曲げた形状に形成する。また例えばポリスチレン製の板6上に第三塗膜5を積層して部材Nを形成する。そして部材Mの第二塗膜3に部材Nの第三塗膜5を密着させて固着させることで一体化させ、第二塗膜3に設けた溝の上下面を密閉させて毛細管状の流路4を形成する。そしてマイクロ流体デバイスDaの部材Nについて、板6と第三塗膜5を貫通する二つの孔部を形成してそれぞれ流路4の両端部と連通させる。一方の孔部に円筒部を嵌挿して注入口7とし、他方の孔部にも円筒部を嵌挿して吐出口8とする。これによって流路4は注入口7と吐出口8によって大気に連通する構成となる。図1に示すマイクロ流体デバイスDa内で蛇行して形成された流路4は、略直線状の多数の流路部4aが互いに平行に配列されると共に各流路部4aは両端で湾曲または屈曲することで隣接する他の流路部4aと接続されて全体で1本の流路を構成している。【0015】そして図1に示す平面視で、流路4は直線状の流路部4aに直交する方向の複数、例えば三つの温調領域部α、β、γに仕切られており、各温調領域部において流路4はそれぞれ異なる温度、例えば第一の温調領域部αで95℃、第二の温調領域部βで75℃、第三の温調領域部γで45℃に制御されている。そのため、注入口7から供給された例えばPCR反応原液等の試料液体Aは流路4内を移動する過程で第一の温調領域部α、第二の温調領域部β、第三の温調領域部γを順次繰り返して通過することで温度制御され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことになる。これらの温度調節を行う手段として例えば表面温度を各温度に設定した温度調節ステージ(図示せず)をマイクロ流体デバイスDaの基板1の下面に密着させて配置してもよく、各温度調節ステージはそれぞれ図1に示す第一の温調領域部α、第二の温調領域部β、第三の温調領域部γと重なる位置に設置するとよい。【0016】本実施例によるマイクロ流体デバイスDaは上述の構成を有しており、次にこのデバイスDaの送液方法について説明する。先ず第一の送液方法として、マイクロ流体デバイスDaの注入口7にDNAを含むPCR用反応溶液を液体A(試料液体)としてマイクロシリンジを用いて注入する。このとき液体Aの注入量は任意である。液体Aの注入量が比較的多い場合には、液体Aは注入口7内に十分な量が残存し、接続配管管9を注入口7に接続する際に気泡の混入を避けることが出来る。一方、注入する液体Aが極微量の場合には、注入された液体Aは、流路の表面が親水性で有る場合には、毛細管現象で大部分又は全ての液体Aが流路4に入り込み、注入口7に残存する量がほとんど又は全く無くなる場合がある。このような場合には、後述のように液体Bを注入口7に適量注入した後、接続配管9を接続することで、気泡の混入を避けることが出来る。尚、液体Aの注入完了状態で液体Aが流路4に入り込む量は任意である。液体Aの全量が流路4に入り込んでも良いし、液体Aの一部が流路4を充填し、残余が注入口7に残留していても良い。 次に図2に示すように他端にマイクロシリンジポンプ(図示せず)を装着した接続配管9の先端を注入口7内に嵌挿させ、マイクロシリンジポンプを駆動させて液体B(駆動液体)として液体Aと非相溶性のミネラルオイル等を注入口7から気泡を混入させないように充填する。前述のように、注入口7内の液体Aの残留量が少ない場合には、接続配管9の注入口7への嵌挿に先立って、マイクロシリンジを用いて、或いはマイクロシリンジポンプを一時的に作動させて接続配管9から注入口7内に液体Bを注入することによって、気泡の混入を防止できる。これによって液体Aは液体Bで押されて流路4内を一定速度で送液され、三つの温調領域部α、β、γを順次通過することで温度履歴を受ける。そして液体Aは流出口8からDNAが増幅された反応溶液として採取される。次に第二の送液方法について説明する。液体Aを注入口7から供給した後に例えばマイクロシリンジを用いてミネラルオイル等の非相溶性の液体B(中間液体)を注入口7に注入し、次いで接続配管9を接続して蒸留水等の液体C(作動液体)を供給する。その際、液体A,B,C間に気泡を混入しないように液体Bの注入量を調節する。また液体Cは好ましくは液体Bと非相溶性の液体を用いるとよいが、相溶性であってもよく、或いは液体Aと同質の液体でもよい。そして液体Cをマイクロシリンジポンプで加圧して注入口7へ充填することで液体Aを流路4内を送液させることができる。【0017】上述のように本実施例によれば、液体Aが流路4内の容積のほんの一部だけにすぎない極少量であっても、所定の流速で直接または間接的に流路4内を送液してポリメラーゼ連鎖反応等の反応や処理を行うことができ、しかも液体Aを送液する駆動用の液体Bまたは液体Cは液体Aと混和することがない上に、従来の送液方法と相違して気体でなく液体B,Cで駆動させるために温度変化による熱膨張差や熱収縮差が小さく気泡を混入することもなく、送液量の変動を抑制して所望の速度で精度良く送液できる。【0018】尚、本実施例のように液体Aを加熱する送液方法にあっては、液体B,Cや液体Bはオイル等の沸点の高い液体であることが好ましいが、マイクロ流体デバイスDaをろ過処理に用いる場合には常温で行われるために水等でよく、格別沸点の高い液体である必要はない。また上述の実施例では液体B,Cを加圧することによって液体Aを流路4内を移動させるようにしたが、これとは逆に液体Aに対して流出口8側に液体Bを接触状態で配設し、或いは液体Bを介して液体Cを配設して減圧することで液体Aを吸引して送液させて、流出口8から採取するようにしてもよい。この場合には予め流路4に液体B又は液体Cを充填しておき、注入口に液体Aを注入する方法で、各液体を配置することが出来る。【0019】次に本発明の第二実施例を図3乃至図5により説明する。図3及び図4に示すマイクロ流体デバイスDbはマイクロノズルまたはスポッタとして用いるものである。図において、マイクロ流体デバイスDbは、例えばシート状の第一部材11、第二部材12、第三部材13が積層されて構成されている。第三部材13にはその上下面を貫通する孔状の注入口14a、14b、14c、14dが所定間隔をおいて穿孔されており、図3に示す例では平面視で正方形の各角部に相当する位置に設けられている。第一部材11にはその上下面を貫通する孔状の吐出口15a、15b、15c、15dが所定間隔をおいて穿孔されており、図3に示す例では一列に配列されている。しかも各吐出口15a、15b、15c、15dは14a、14b、14c、14dよりも小径に形成されている。そして第二部材12にその上下面を貫通する溝状の流路16a、16b、16c、16dがそれぞれ互いに連通することなく個別に仕切られて形成されており、各流路16a、16b、16c、16dの両端にはそれぞれ注入口14a、14b、14c、14dと吐出口15a、15b、15c、15dとが連通して形成されて四本の独立した流路を構成している。【0020】本実施例によるマイクロ流体デバイスDbは上述の構成を有しており、次にこのデバイスDbの送液方法について説明する。先ず第一の送液方法として、マイクロ流体デバイスDbの第一部材11を、吐出口15a,15b,15c,15dと重ならない位置に置かれたスペーサ17を介して塗布対象物18に当接させ、各吐出口15a、15b、15c、15dを塗布対象物18の面にスペーサ17の厚みだけの間隔をあけて対向させる(図5参照)。そしてマイクロ流体デバイスDbの各注入口14a、14b、14c、14dにDNAを含む混合溶液を液体Aとして例えば図示しないマイクロシリンジを用いて注入する。尚、本例では液体Aの注入完了状態で液体Aは各流路16a、16b、16c、16d内の一部にのみ充填しており、残余の液体Aは注入口14a、14b、14c、14d内に残留しているものとする。次に図4に示すように他端にピエゾポンプ19を装着した配管20を途中から分岐させた各接続配管20a、20b、20c、20dの先端を各注入口14a、14b、14c、14d内に嵌挿させ、ピエゾポンプ19を駆動させて液体Bとして液体Aと非相溶性のミネラルオイル等を各注入口14a、14b、14c、14dから気泡を混入させないように充填する。液体Aの注入量が少なく、注入口14a,14b,14c,14d内の残留量が少ない場合には、各注入口にミネラルオイル等の液体Bを適量注入し、その後接続配管を接続することで気泡の混入を防止できる。これによって液体Aは液体Bで押されて各流路16a、16b、16c、16d内を一定速度で送液され、図5(a)に示すように各吐出口15a、15b、15c、15dから液体Aが吐出されて塗布対象物18の面に付着する。このとき、液体Aは表面張力で略半球状に盛り上がって塗布対象物18の面に接触して付着する。そしてマイクロ流体デバイスDbを離間させると、液体Aは塗布対象物18の面に四つの半球状のスポットsとしてスポッティングされることになる。【0021】また第二の送液方法として、上述の第一実施例と同様に液体Aを各注入口14a、14b、14c、14dから供給した後にマイクロシリンジを用いてミネラルオイル等の非相溶性の液体を液体Bとして注入し、次いで各接続配管20a、20b、20c、20dを接続して蒸留水等の液体Cを供給する。これによって液体Aは液体Bを介して液体Cで押されて各流路16a、16b、16c、16d内を一定速度で送液され、各吐出口15a、15b、15c、15dから吐出されて塗布対象物18の面に半球状のスポットsとして付着させることができる。上述のように本実施例によれば、極少量の液体Aを精密にスポッティングすることができる。【0022】以下、本発明をより具体化した実施例1、2,3,4及び比較例1,2を用いて更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例1,2,3,4の範囲に限定されるものではない。なお、以下の実施例1,2,3,4及び比較例1,2における「部」は「質量部」を表す。また各実施例の説明に先立って各部材の製作や試験に共通する、エネルギー線照射装置と照射方法、エネルギー線硬化性組成物(i)の調製方法、マイクロ流体デバイスの製法、配管9,20の製作手順について説明する。[エネルギー線照射装置]200wメタルハライドランプが組み込まれたウシオ電機株式会社製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける強度が50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気下で照射した。[製造例1]〔エネルギー線硬化性組成物(i)の調製〕活性エネルギー線架橋重合性化合物として、平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV−4263」)を60部、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(第一工業製薬株式会社製の「ニューフロンティアHDDA」)を20部、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬株式会社製の「N−177E」;両親媒性の単量体)を20部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュア184」)を5部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.1部を均一に混合して組成物(i)を調製した。【0023】〔マイクロ流体デバイスDaの作製〕基材1としてポリスチレン(大日本インキ化学工業社製の「ディックスチレンXC−520」)製の5cm×5cm×1mmの板を用い、これに127μmのバーコーターを用いて組成物(i)を塗布し、紫外線を3秒間照射して、第一塗膜2を半硬化させた。この半硬化の第一塗膜2の上に、127μmのバーコーターを用いて組成物(i)を塗布し、フォトマスクを使用して、図1に示された、蛇行状に折りたたまれた形状の流路4となる部分以外の部分に、紫外線を3秒間照射して、照射部分の第二塗膜3を半硬化させた後、50%エタノール水溶液にて第二塗膜3の未照射部の未硬化の組成物(i)を洗浄除去し、流路4となる溝が形成された部材Mを作製した。一方、前記と同じポリスチレン製の5cm×5cm×1mmの板6に127μmのバーコーターを用いて組成物(i)を塗布し、紫外線をフォトマスク無しで3秒間照射し、第三塗膜5を半硬化させ、部材Nとした。次いで、部材Nの半硬化状態の第三塗膜5を部材Mの第二塗膜3と密着させて、紫外線を更に30秒間照射し、部材Mの第二塗膜3に部材Nを接着し、溝を毛細管状の流路4と成し、幅150μm、深さ100μm、長さ1.5m(流路断面積1500μm2、流路の全容積22.5mm3)の流路4を形成した。【0024】〔注入口の形成〕部材Nの、流路4の両端部に相当する位置に、3mmのドリルにてそれぞれ孔を穿ち、その部分に内径2mm、外径3mm、高さ8mmの軟質塩化ビニル製の円筒を挿入して接着し、注入口7及び流出口8を形成し、図1及び図2に示された形状のマイクロ流体デバイス[Da1]を得た。〔接続配管の作製〕一方、、先端部の外径が2mm、根本の外径が2.5mm、長さ6mm、内径が0.5mmのテーパー状のホース口を、内径2mm、外径3mmの軟質塩化ビニルチューブの先端に取り付けた接続配管9を作製した。【0025】[実施例1]〔反応溶液の調製〕鋳型プラスミドDNA:4.0mm3、ポリメラーゼ[宝酒造株式会社製「TaKaRa Ex Taq TM」]:2.0mm3、緩衝液[宝酒造株式会社製「10X ExTaq TM Buffer」]:8.0mm3、基質 [宝酒造株式会社製「dNTP Mixture (2.5mM each)」]:6.4mm3、プライマー[宝酒造株式会社製「Fluorescein−Labeled Primer M4 (1pmol/mm3)」]:20mm3、プライマー[宝酒造株式会社製「Fluorescein−Labeled Primer RV−M (1pmol/mm3)」]:20mm3、及び滅菌蒸留水:19.6mm3を混合して、PCR用の反応溶液を調製した。【0026】〔PCR試験〕製造例1で作製したマイクロ流体デバイス[Da1]を注入口7を上にして、図1に示された第一の温調領域部α、第二の温調領域部β、第三の温調領域部γの底面に、それぞれ95℃、75℃、45℃に温調した真鍮製の温調ステージ(図示せず)を密着させて載置した。そして、注入口7と流出口8の部分に孔を開けた厚さ3mmの透明アクリル板(図示せず)を、マイクロ流体デバイス[Da1]の上面に約1mmの間隙をあけて乗せた。マイクロ流体デバイス[Da1]の注入口7に、液体Aとして10mm3、即ち、マイクロ流体デバイス[Da1]の全長150cmの流路中の67cmに充填される量の反応溶液をマイクロシリンジを用いて注入したところ、反応溶液は注入口7に残留した。次いで、液体Bとしてミネラルオイル(和光純薬製)をマイクロシリンジを用いて注入口7一杯に注入し、注入口7に、液体Bとして同じミネラルオイルを充填した接続配管9を、気泡が混入しないように注意しながら押し込んで接続した。接続配管9の他端をマイクロシリンジポンプ(サイエンティフィック社製IC−3210P型)(図示せず)に接続し、マイクロシリンジポンプを駆動して液体Bとしてミネラルオイルを1mm3/分の一定速度で導入したところ、液体Aは液体Bにより押されて、流路4内を一定速度で送液され、前記の各温調領域部α、β、γを順次通過することによって温度履歴を受けた後、流出口8から流出した。流出口8より流出した反応溶液を採取し、電気泳動分析装置(日立電子エンジニヤリング製、SV1100型)にかけたところ、DNAが増幅されていることが確認された。【0027】[実施例2]液体Aを注入した後に、液体Bとして5mm3(即ち、マイクロ流体デバイス[Da1]の流路中の34cmに充填される量)のミネラルオイル(和光純薬製)を注入口7に注入したこと、さらにその上に、液体Cとして蒸留水をマイクロシリンジを用いて注入口7一杯まで注入したこと、注入口7に、液体Cとして蒸留水を充填した接続配管9を接続したこと、及びシリンジポンプから液体Cとして蒸留水を導入したこと以外は実施例1と同様の送液試験を行い、実施例1と同様の結果を得た。[比較例1]液体Bを使用せず、その代わりに流路4中での長さが約5cmの空気(気泡)を間に挟んで、液体Cとして水を使用して駆動したこと以外は実施例2と同様の試験を行ったところ、気泡の長さが不規則に変動し、それに伴って液体Aの移送速度も変動する様子が観察された。また、得られたDNAの濃度は実施例2の約1/10であった。【0028】[製造例2]バーコーターの代わりにスピンコーターを用いて組成物(i)を塗布したこと、フォトマスクのパターン寸法が異なること以外は、製造例1と同様にして、流路4が、幅13μm、深さ8μm、長さ1.5m(流路断面積104μm2、流路4の全容積0.156mm3)であること以外は、マイクロ流体デバイス[Da1]と同様のPCR用のマイクロ流体デバイス[Da2]を形成した。[実施例3]液体Aの注入量が0.1mm3であること、マイクロシリンジポンプの吐出量が0.007mm3/分であること以外は実施例1と同様の試験を行い、実施例1と同様の結果を得た。[比較例2]液体Bを使用せず、その代わりに圧力空気の配管を接続して、圧力空気で駆動したこと以外は実施例3と同様の試験を行ったところ、液体Aが注入口から流路4に入り、流路4中の液体Aの充填長さが増すに従い移送速度が低下し、また、液体Aの一部が流出口から流出するに伴って流路4中に残った液体Aの移送速度が速くなり、一定速度で移送出来なかった。さらに、流路4中の液体Aの平均滞留時間を実施例3と同じにしたところ、得られたDNAの濃度は実施例2の約1/3であった。【0029】[製造例3]〔エネルギー線硬化性組成物(i)の調製〕製造例1で調製したエネルギー線硬化性組成物(i)を用いた。〔エネルギー線硬化性組成物(ii)の調製〕エネルギー線硬化性化合物として、3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV4263」)10部、及びジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬株式会社製の「R−684」)90部、重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学社製)を0.5部、及び紫外線重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュアー184」)5部を混合して、組成物(ii)を調製した。〔第一部材11の作製〕一時的な支持体(図示せず)として、ポリプロピレン二軸延伸シート(二村化学社製の「FOR」;厚さ30μm;片面コロナ処理)を用い、このコロナ処理面に、50μmのバーコーターを用いて組成物(ii)を塗布し、フォトマスクを使用して、吐出口15a、15b、15c、15dと成す部分以外の部分に紫外線を3秒間照射して、流動性を喪失した半硬化状態の塗膜と成し、非照射部分の未硬化の組成物(i)を、50%エタノール水溶液に浸漬して5秒間の超音波線状により除去し、図3及び図4に示された、直径100μm、中心間距離300μmの4つの吐出口15a、15b、15c、15dとなる孔が形成された厚さ35μmの半硬化塗膜状の第一部材11を一時的な支持体(図示せず)上に形成した。【0030】〔第二部材12(Q)の作製〕別途、50μmのバーコーターの代わりに125μmのバーコーターを使用したこと、組成物(ii)の代わりに組成物(i)を用いたこと、非露光部のパターンが、図3及び図4に示された流路16a、16b、16c、16dを形成する部分であること以外は上と同様にして、一時的な支持体(図示せず)の上に組成物(ii)の硬化物で形成された、厚さ約105μmの半硬化塗膜状の第二部材12を一時的な支持体(図示せず)上に形成した。 第二部材12に形成された4本の流路16a、16b、16c、16dとなる欠損部は各、幅150μm、長さ約7mmである。〔第三部材13の作製〕また別途、ポリスチレン(大日本インキ化学工業社製の「ディックスチレン XC−520」)製の3cm×3cm×3mmの板(図示せず)に、1辺が1cmの正方形の頂点となる位置に、ドリルを用いて直径2mmの注入口14a、14b、14c、14dとなる孔を穿ち、第三部材13とした。【0031】〔第一乃至第三部材11,12,13の接着〕第一部材11の各孔状の欠損部に第二部材12の流路となる欠損部の一端部の位置を合わせて密着させ、第二部材12側から紫外線を7秒間照射して、これらの部材の硬化を進め、2つの部材11、12を接着した。そして、第二部材12から一時的な支持体(図示せず)を剥離した。次いで、第三部材13に、接着剤として組成物(i)の10%2−ブタノン(東京化成)溶液をスピンコートし、40℃にて温風乾燥した後、紫外線を3秒間照射して、接着剤層を半硬化させ、第三部材13の各注入口14a、14b、14c、14dとなる孔を第二部材12の流路16a、16b、16c、16dとなる欠損部の端部に合わせて密着させ、紫外線を60秒間照射して、接着剤及び各部材の硬化を進めると同時に各部材を接着した。その後、第一部材11から一時的な支持体を剥離除去し、第一部材11と第二部材12の、第三部材13からはみ出した部分を切除し、図3及び図4に示された形状のマイクロノズル[Db1]を作製した。即ち、このマイクロノズル[Db1]は、中心間距離300μmで一列に直径100μmの4つの吐出口15a、15b、15c、15dが形成されており、各吐出口には幅150μm、深さ105μmの流路16a、16b、16c、16dが接続され、各流路の他端には、直径2mm、深さ3mmの注入口14a、14b、14c、14dが形成されている。更に、このマイクロノズル[Db1]の第一部材11の中心部に、直径5mmの固定用の真鍮棒(図示せず)をエポキシ接着剤にて垂直に接着した。〔接続配管の作製〕一方、製造例1の接続配管9と同様にして、一方の端が4本に分岐しており、その各先端にホース口が取り付けられていること以外は、接続配管9と同様の接続配管20を作製した。【0032】[実施例3]マイクロノズル[Db1]の各注入口14a、14b、14c、14dに、アミノ基を有する蛍光標識DNA断片[エスペックオリゴサービス社製、5’−C6アミノ基−3’−FITC−26塩基オリゴヌクレオチド)とマイクロスポッティングソルーション[テレケムインターナショナル社(Tele Chem International Inc.)製]の1/1混合溶液を液体Aとしてマイクロシリンジを用いて5mm3注入し、その上に液体Bとしてマイクロシリンジを用いてミネラルオイルを注入口一杯に満たし、各注入口に液体Bとしてミネラルオイルが充填された配管20の各分岐した先端を押し込んで接続し、供給源である配管20の基端側部分を液体Bとしてミネラルオイルが入ったピエゾポプ19(日本計器製作所)に接続した。スポッティング用基板として25mm×75mm、厚み1mmのアルデヒド基固定スライドグラス[テレケム インターナショナル社(Tele Chem International Inc.)社製、オーガノアルデヒドSMA]を用い、これを上下方向に可動な台座の上に水平に置き、固定したマイクロノズル[Db1]の底面である第一部材11面へ上昇させ、厚み50μmのアルミ箔断片製のスペーサ17を介して当接させることによって、約50μm離れた位置に設置した。次いで、ピエゾポンプ19から液体Bとしてミネラルオイルをパルス状に0.15mm3(設定値)吐出したところ、マイクロノズル[Db1]の各吐出口15a、15b、15c、15dからDNA溶液が液体Aとして吐出されて、マイクロノズル[Db1]の吐出口形成面である第一部材11と塗布対象物18を橋渡しする形状に塗布対象物18の表面に付着した。次いで、台座を下降させてスライドグラスをマイクロノズル[Db1]から離し、塗布対象物18の表面に半球状に塗布された4つのDNA溶液をヘアドライヤーを用いて熱風乾燥した。蛍光顕微鏡(オリンパス製)で観察したところ、直径約600μmの4個の蛍光スポットが観察された。[実施例4]接続配管20及びピエゾポンプ19に液体Cとして蒸留水を充填したこと以外は実施例3と同様の試験を行い、実施例3と同様の結果を得た。【0033】【発明の効果】上述のように本発明によるマイクロ流体デバイスの送液方法は、極少量の液体を気泡が混入することなくマイクロ流体デバイス中の流路中で送液することが出来る。また、流路の各部で温度が異なる場合などにも、所定の流速で不都合なく送液することが出来る。さらに、大気に解放された注入口から試料を導入するという取り扱いの簡単な試料導入方法においても、気泡の混入無く試料となる液体を導入して送液可能である。【図面の簡単な説明】【図1】本発明の第一実施例によるマイクロ流体デバイスの平面図である。【図2】図1に示すマイクロ流体デバイスのA−A線縦断面図である。【図3】本発明の第二実施例によるマイクロ流体デバイスの平面図である。【図4】図3に示すマイクロ流体デバイスの側面図である。【図5】第二実施例によるマイクロ流体デバイスを用いたスポッティング工程を示す図であり、(a)はスポッティング時の吐出口付近の拡大断面図、(b)はマイクロ流体デバイスを離した状態でのスポットを示す図である。【符号の説明】Da、Db マイクロ流体デバイス4、16a、16b、16c、16d 流路7 注入口8 流出口9、20a、20b、20c、20d 接続配管14a、14b、14c、14d 注入口15a、15b、15c、15d 吐出口20 配管α 第一の温調領域部β 第二の温調領域部γ 第三の温調領域部 毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイスにおいて、前記流路内に供給した試料液体に該試料液体とは非相溶性で非磁性流体からなる駆動液体を接触させ、該駆動液体を移動させることで前記試料液体を送液するようにしたことを特徴とするマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記流路の注入口に試料液体を注入した後、前記注入口に接続配管を接続して駆動液体を供給して試料液体を送液するようにした請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記駆動液体は、試料液体より低密度の液体である請求項1または2に記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記流路はそれぞれ注入口と吐出口を有する互いに独立した複数の流路からなり、前記注入口に同一供給源から分岐した複数の接続配管を接続して駆動液体を供給して、該駆動液体を移動させることで試料液体を送液するようにした請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記駆動液体は圧力差によって移動させるようにした請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 毛細管状の流路を有するマイクロ流体デバイスにおいて、前記流路内に供給した試料液体に該試料液体とは非相溶性の中間液体を接触させ、更に該中間液体に非磁性流体からなる作動液体を接触させて配設し、該作動液体を移動させることで前記試料液体を送液するようにしたことを特徴とするマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記流路の注入口に試料液体を注入した後、中間液体を注入し、前記注入口に接続配管を接続して作動液体を供給して、中間液体を介して試料液体を送液するようにした請求項6に記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記流路はそれぞれ注入口と吐出口を有する互いに独立した複数の流路からなり、前記注入口に同一供給源から分岐した複数の接続配管を接続して作動液体を供給し、該作動液体を移動させることで、中間液体を介して試料液体を送液するようにした請求項6に記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記作動液体は圧力差によって移動させるようにした請求項6乃至8のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記試料液体の量が前記流路の容積より少である請求項1乃至9のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記試料液体はマイクロ流体デバイスの流路内で異なる温度領域を通過させるようにした請求項1乃至10のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記試料液体は流路内でポリメラーゼ連鎖反応を行うようにした請求項11に記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 前記マイクロ流体デバイスがマイクロノズルであり、該マイクロノズルによって試料液体を吐出させるようにした請求項4または8に記載のマイクロ流体デバイスの送液方法。 【課題】処理すべき液体が極少量であっても、気泡を混入せず所定の流速で送液できる。【解決手段】マイクロ流体デバイスDa内で蛇行して形成した流路4は両端を注入口7と吐出口8によって大気に開放する。流路4は三つの温調領域部α、β、γを有している。各温調領域部において流路4をそれぞれ異なる温度に制御する。注入口7から供給された例えばDNA等の液体Aは液体Bに接触した状態で液体Bの圧力差で流路4内を移動し、第一、第二、第三の温調領域部α、β、γを順次繰り返して通過することで温度制御され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う。【選択図】図1


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