タイトル: | 公開特許公報(A)_二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法 |
出願番号: | 2002216453 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C17/12,C07C25/125,C07B61/00 |
蓑宮 英一 加藤 元 内山 直行 吉川 正人 JP 2004059447 公開特許公報(A) 20040226 2002216453 20020725 二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法 東レ株式会社 000003159 蓑宮 英一 加藤 元 内山 直行 吉川 正人 7 C07C17/12 C07C25/125 C07B61/00 JP C07C17/12 C07C25/125 C07B61/00 300 6 OL 7 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC30 4H006BA71 4H006BB12 4H006BB61 4H006BC30 4H006BE53 4H039CA52 4H039CD10 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医薬及び農薬をはじめとする各種有機合成化学物質やポリマー原料として利用されうる塩素化ベンゼン誘導体の製造方法に関する。さらに詳しくは、オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体を塩素化し、1,2,4位に置換基を有する三置換塩素化ベンゼン誘導体を選択的に製造する方法を提供するものである。【0002】【従来の技術】塩素化ベンゼン誘導体は多くの化合物の原料中間体として工業的に重要な化合物である。三置換塩素化ベンゼン誘導体には、その置換基の位置から1,2,3−トリ置換体、1,2,4−トリ置換体、1,3,5−トリ置換体の三種類の異性体が存在するが、特に分子サイズの最も小さい1,2,4−置換塩素化ベンゼン誘導体は各種の有機化合物の原料として重要である。例えば、1位と2位にメチル基、4位にクロロ基を有する4−クロロオルトキシレンや1位にメチル基、2位と5位にクロロ基を有する2,5−ジクロロトルエンは医薬及び農薬をはじめとする各種有機合成化学物質やポリマー原料など、多くの有用な化合物の原料中間体として用いられる。【0003】塩素化ベンゼン誘導体は、一般的には、塩化第二鉄、塩化アルミニウム等のルイス酸を触媒として、ベンゼン及び/又はベンゼン誘導体を塩素化して製造されている。例えば、4−クロロオルトキシレンは、ルイス酸の存在下、オルトキシレンを塩素化する事により得られるが、この際、4−クロロオルトキシレンと沸点差が少ない3−クロロオルトキシレンやα−クロロキシレンが生成する。有用な4−クロロオルトキシレンを選択的に得る方法として、特開平3−81234号公報に無溶媒系でL型ゼオライトを触媒として用いるオルトキシレンの塩素化による4−クロロオルトキシレンの製造方法が開示されている。ニトロ基含有化合物を添加剤として加えると、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなることも開示されている。さらに、塩素化剤である塩素を希釈して用いても良いことが発明の詳細な説明中に記載されている。しかし、その濃度についての記載はない。また、スジット・ビー・クマールらは、溶媒として1,2−ジクロロエタンを利用することにより4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなることを開示している(ジャーナルオブ キャタリシス、150巻、p430−433(1994))。2,5−ジクロロトルエンにおいては、特公昭63−34130号公報にL型ゼオライトを触媒として用いるオルトクロロトルエンの塩素化による2,5−ジクロロトルエンの製造方法が開示されている。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、三置換塩素化誘導体製造において、従来公知の方法においても未だ、1,2,4−トリ置換体選択率は充分ではない。【0005】したがって、三置換塩素化誘導体製造において、1,2,4−トリ置換体を選択的に製造することは工業的に極めて重要である。例えば、クロロオルトキシレンでは、沸点差の少ない3−クロロオルトキシレンの生成を抑え、4−クロロオルトキシレンをより選択的かつ高活性、高収率に合成できれば、精製工程が簡略化され精製工程の固定費が下がる。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、ゼオライトを触媒として溶媒の共存下オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体を塩素化するに当たり、予め希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させることによって、1,2,4−置換塩素化ベンゼン誘導体の製造を高選択率、高収率で達成できることを見出し、本発明に至った。【0007】本発明は、上記課題を解決するために主として次の構成を有する。すなわち、ゼオライトを触媒として溶媒の共存下オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体を塩素化するに当たり、予め希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させることを特徴とする二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法である。【0008】【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に記述する。本発明の二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法は、ゼオライトを触媒として溶媒の共存下オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体を塩素化するに当たり、予め希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させることを特徴とする。【0009】本発明方法では、触媒としてゼオライトを使用する。本発明においてゼオライトとは、結晶性マイクロポーラス物質のことで、分子サイズの均一な細孔径を有する結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェート、結晶性シリコアルミノフォスフェートのことである。ここでいうメタロシリケート、メタロアルミノシリケートとは、アルミノシリケートのアルミニウムの一部又は全部がガリウム、鉄、チタン、ボロン、コバルト、クロム等のアルミニウム以外の金属で置換されたものである。メタロアルミノフォスフェートも同様にアルミノフォスフェートのアルミニウム又はリンに対してその一部がそれ以外の金属で置換されたものをいう。【0010】本発明でゼオライトとは、アトラス オブ ゼオライト ストラクチャー タイプス(Atlas of Zeolite Structure types)(ダブリュー.エム.マイヤー,デイー.エイチ.オルソン、シーエイチ.ベロチャー,ゼオライツ(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites,) 17(1/2), 1996)(文献1)に掲載されているすべてのゼオライト構造を意味する。上記の文献に掲載されていない構造の新種のゼオライトも本発明のゼオライトに含まれる。しかし、好ましくは簡単に入手できるL型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、MFI型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、β型ゼオライト、Ω型ゼオライト、AFI型ゼオライト、AEL型ゼオライト、ATO型ゼオライトが好ましい。好ましくは、陽イオンとしてアルカリ金属を有しているゼオライトである。その理由は、アルカリ金属が塩素を活性化する活性点と推定できるからである。特に好ましくは、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなる、またクロロオルトキシレンの収率が高くなる点で、L型ゼオライトである。L型ゼオライトを利用したときに、選択性が高くなる理由は、現時点では明らかでない。【0011】L型ゼオライトは、陽イオンとして一般にKイオンを含有しているが、これ以外のものが含まれていても構わない。ゼオライトの使用量は、特に限定されないが基質1モルに対して通常0.5〜60gである。【0012】本発明の方法は、基質としてオルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体を使用する。二置換ベンゼン誘導体とは、ベンゼンの水素の二つがハロゲンあるいはアルキル基等の置換基で置換された化合物を意味し、本発明では、オルト,メタ,パラの三種類の異性体のうち、オルト位若しくはメタ位に置換基を有するものを基質とする。例えば、ジハロゲン化ベンゼン、ジアルキル化ベンゼン、ハロゲン化アルキルベンゼンが好ましい。特にオルトジクロロベンゼン、メタジクロロベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、オルトクロロトルエン、メタクロロトルエン等を挙げることができる。また、これら二置換ベンゼン誘導体は、特に純度など限定されることなく、工業的に入手できるものを使用できる。純度は、高いほど好ましいが、不純物が若干量含まれているのが通常であり、これらが含まれていても構わない。【0013】本発明では、塩素化反応時に溶媒を加える。例えば、4−クロロオルトキシレンの製造においては、従来公知の方法で、溶媒としてジクロロエタンを、触媒としてK−L型ゼオライトを使用することによって、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレン生成比が向上することが知られている。本発明方法においても溶媒を利用することによって選択性は向上する。その理由は明らかではない。【0014】使用する溶媒は蒸留などで回収して再利用することが製造コストの観点から好ましい。従って、生成物と沸点差が十分あり、しかも低い沸点のものが好ましい。溶媒の種類は、特に限定されないが、従来公知のクロロ含有化合物、ニトロ含有化合物が好ましく使用される。クロロ含有化合物の方が、ニトロ含有化合物より活性が高くなるので好ましい。クロロ含有化合物は、芳香族でも脂肪族でも構わない。例えば、クロロベンゼン、o−,m−,p−ジクロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン等である。後の工程やリサイクル性の点から沸点160℃以下の化合物が好ましい。特に、1,2−ジクロロエタン等のジクロロエタンや1,2−ジクロロプロパン、1,3−ジクロロプロパン等ジクロロプロパンが、活性、選択性ともに高くなるので好ましい。【0015】本発明の方法は、予め希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させることが重要である。希釈ガスの種類は特に限定されないが、価格や扱い易さから窒素などの不活性ガスを使用するのが最も好ましい。このような予め希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させることにより、オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体の塩素化による三置換塩素化誘導体の製造では1,2,4−トリ置換体の選択率が高くなる。例えば、オルトキシレンの塩素化反応において、4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレンの生成比が高くなる。さらに、副生成物であるポリクロロ化体の生成が抑制されるために、クロロオルトキシレンの収率も高くなる。理由は現時点では明らかではないが、希釈ガスを塩素と混合して吹き込むことによって、その曝気効果により副生成物である塩酸などを反応系中から除去し触媒表面を清浄する効果であると推定される。【0016】予め希釈した塩素ガスの濃度は100モル%より少なければ特に限定されないが、5モル%から99モル%であれば良く、好ましくは5モル%から80モル%、さらに好ましくは5モル%から50モル%である。塩素ガスの濃度が5モル%より少ないと塩素化反応速度が著しく低くなり反応時間が長くなるため、かえって経済的に不利となり好ましくない。【0017】本発明方法の塩素化反応は、液相でも気相でも構わないが、反応温度を低く設定できる点から液相反応が好ましい。反応温度が余り高いと副反応が多くなる。すなわち、基質の液又は蒸気と予め希釈した塩素ガスを接触させることによって、塩素化は達成させるが、基質の液と予め希釈した塩素ガスを接触させることが好ましい。最も好ましくは、基質の液に予め希釈した塩素ガスを吹き込む形で接触させる。吹き込みに際しては、攪拌しながら吹き込む方が好ましい。また、塩素を効率よく利用するために、充分な深さで吹き込む方が好ましい。反応は、加圧でも、常圧でも、減圧でも構わないが、設備投資を低くする観点から、常圧の方が好ましい。本発明における反応温度は、特に限定されないが、通常20〜200℃好ましくは30〜150℃である。【0018】本発明方法に用いる反応装置は、連続式、回分式、半回分式のいずれでも良い。【0019】【実施例】以下に、本発明を実施例をもって説明する。【0020】(実施例1)100mlの4つ口フラスコにリフラックス管、温度計、塩素吹き込み口、サンプリング口を設置した。廃塩素ガスは、リフラックス管の上部から排気し、水酸化ナトリウム溶液でトラップするようにした。加熱は、オイルバスで行った。【0021】上記フラスコに、オルトキシレン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、試薬1級)16.96gに1,2−ジクロロエタン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、1級)60ml、400℃で1時間焼成しデシケーター中で冷却したK−L型ゼオライト(東ソー製)3.39gを添加し、窒素ガスを塩素ガス吹き込み口から吹き込みながら80℃に加熱した。80℃の加熱後、窒素ガスを予め窒素ガスで希釈した塩素ガスに切り替え反応を開始した。塩素ガスの濃度は95モル%に調整した。【0022】3時間後のオルトキシレン転化率および4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレン生成比を表1に示した。【0023】(実施例2〜6)塩素ガスの濃度を80モル%、50モル%、20モル%、11モル%、3モル%に調整した以外、実施例1と同様の方法により反応させた。【0024】それぞれの3時間後のオルトキシレン転化率および4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレン生成比を表1に示した。【0025】(比較例1)塩素ガスを希釈せず用いる以外、実施例1と同様の方法により反応させた。【0026】3時間後のオルトキシレン転化率および4−クロロオルトキシレン/3−クロロオルトキシレン生成比を表1に示した。【0027】【表1】【0028】【発明の効果】本発明によれば、オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体の塩素化による三置換塩素化誘導体の製造において、1,2,4−トリ置換体を選択的に製造できる。 ゼオライトを触媒として溶媒の共存下オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体を塩素化するに当たり、予め希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させることを特徴とする二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法。 予め不活性ガスで希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させることを特徴とする請求項1記載の二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法。 希釈した塩素ガスの濃度が5モル%から99モル%であることを特徴とする請求項1または2記載の二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法。 ゼオライトがL型ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法。 溶媒がクロロ含有化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法。 クロロ含有化合物がジクロロエタン又はジクロロプロパンであることを特徴とする請求項5記載の二置換ベンゼン誘導体の塩素化方法。 【課題】オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体の塩素化による三置換塩素化誘導体の製造において、1,2,4−トリ置換体を選択的に製造する手法を得る。【解決手段】ゼオライトを触媒として溶媒の共存下オルト位若しくはメタ位に置換基を有する二置換ベンゼン誘導体を塩素化するに当たり、予め希釈した塩素ガスを用いて塩素化反応させる。ゼオライトはL型ゼオライトであることが好ましい。また、溶媒がクロロ含有化合物であることが好ましい。【選択図】なし