生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_口唇用化粧料及び口唇荒れ改善剤
出願番号:2002216181
年次:2004
IPC分類:7,A61K7/00,A61K7/025


特許情報キャッシュ

半山 敦士 江川 裕一郎 引間 理恵 五十嵐 滋 JP 2004059441 公開特許公報(A) 20040226 2002216181 20020725 口唇用化粧料及び口唇荒れ改善剤 カネボウ株式会社 000000952 半山 敦士 江川 裕一郎 引間 理恵 五十嵐 滋 7 A61K7/00 A61K7/025 JP A61K7/00 K A61K7/00 P A61K7/025 2 OL 10 4C083 4C083AA111 4C083AA112 4C083AA121 4C083AA122 4C083AB172 4C083AB232 4C083AB242 4C083AB432 4C083AC012 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC352 4C083AC422 4C083AC662 4C083AC792 4C083AC852 4C083AD242 4C083AD662 4C083CC13 4C083DD31 4C083EE13 4C083EE50 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、口唇の荒れに対して優れた改善効果を有する口唇用化粧料、及び口唇荒れ改善剤に関するものである。【0002】【従来の技術】口唇は人の皮膚の中でも物理的、化学的、環境的な要因で非常に荒れやすい部位であることが知られている。近年、口唇の研究が進むにつれ、口唇は荒れに伴い角層水分量の低下が認められ、さらに荒れの程度が高度なほど不全角化の頻度が高くなることが確認されている(引間、香粧会誌、18、133−138、1994)。また口唇角質層部分の詳細な研究により、荒れた口唇では古い角質細胞が剥離せず残存しているために肥厚した部分が生じ、場合によってはその部分の皮が剥がれたり裂けたりすると考えられている。角質細胞はデスモソームという接着タンパクにより互いに結合している。古い角質細胞の脱離は、このデスモソームが内因性プロテアーゼにより分解されることにより起こるとされている。これまでの研究でセリン系プロテアーゼである角質層特異的キモトリプシン様酵素(SCCE)とアスパラギン酸酵素であるカセプシンDが角質の剥離に関係していることが分かっている(Lundstrom、Acta Dermatol Venereol、71、471−474、1991)、(Horikoshi、Br J Dermatol、141、453−459、1999)。実際、荒れた口唇ではカセプシンDの活性が低下しており、これが角質層肥厚の原因のひとつと考えられる。【0003】このような口唇の荒れを予防・改善するために、従来の口唇用化粧料では、口唇上に油膜を形成させて水分の蒸散を防いだり、多価アルコール等の保湿成分を配合することによって乾燥感やかさつきを改善させる等の手段がとられてきた。しかし、これらは対症療法的なものであり、口唇荒れの原因である角質層の肥厚を改善しようと試みたものはほとんどなかった。【0004】【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、口唇の角質細胞の剥離を促すことによって荒れた状態を改善する口唇用化粧料及び口唇荒れ改善剤を提供することにある。【0005】【課題を解決するための手段】このような背景をもとに、本発明者らは鋭意研究を行なった結果、アプリコットエキス、アプリコットオイル、ウーロン茶エキス、及びニンジンエキスから選ばれる少なくとも1種以上を配合した口唇用化粧料、及びカセプシンD活性を高めるアプリコットオイルからなる口唇荒れ改善剤が、口唇の古くなった角質細胞の剥離を促し、その結果、荒れた状態の改善効果に優れていることを見出し、本発明を完成した。【0006】【発明の実施の形態】以下発明の実施形態に則し、本発明について詳述する。本発明に用いられるアプリコットエキスは、ホンアンズ(Prunus armeniaca L.)、アンズ(Prunus armeniaca L.ansu Maximowicz)又はその近縁植物(Rosaceae)の果実を圧搾して得られる果汁、又は果実や種子から精製水やエタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の低級アルコール、又はこれらの混液にて抽出して得られる抽出物である。アプリコットオイルは、上記ホンアンズ、アンズ又はその近縁植物の種子から、圧搾又は脂溶性溶媒による抽出によって得られる脂肪油である。ウーロン茶エキスは、チャ(Thea sinensis L.)から製造されたウーロン茶の葉から精製水やエタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の低級アルコール、又はこれらの混液にて抽出して得られる抽出物、又は減圧下で乾留により得られる留分である。ニンジンエキスは、ニンジン(Daucus carota L.)の根から圧搾により得られる液汁、又はニンジンの根から精製水やエタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の低級アルコール、又はこれらの混液にて抽出して得られる抽出物である。これらエキス、オイルの調製法については特に限定しない。油性タイプが多い口唇化粧料においては、アンズ種子の脂肪油であるアプリコットオイルが特に好ましく用いられる。本発明において配合されるこれらの配合濃度は、口唇化粧料全体量を基準として、アプリコットエキスは乾燥残分として0.001〜5.0質量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1.0質量%である。アプリコットオイルは種子由来の油脂分として0.005〜10.0質量%が好ましく、更に好ましくは0.02〜5.0質量%である。ウーロン茶エキスは乾燥残分として0.0005〜5.0質量%が好ましく、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。ニンジンエキスは乾燥残分として0.001〜5.0質量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1.0質量%である。【0007】本発明の口唇用化粧料には本発明の目的を損なわない範囲で前記の必須成分以外に通常化粧料に使用される以下の原料、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、合成炭化水素ワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ポリオキシアルキレン変性ポリエチレンワックス、ポリエチレンプロピレンコポリマー、デキストリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸等の固形油性原料、ワセリン、重質流動イソパラフィン、ポリブテン、ラノリン、ラノリン誘導体、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、オレイン酸フィトステリル、高級脂肪酸、高級アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル)等のペースト状油性原料、流動パラフィン、スクワラン、ホホバ油、ヒマシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、月見草油、パーム油、ブドウシード油、マカデミアナッツ油、綿実油、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、リシノール酸オクチルドデシル、オクチルドデカノール、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ラベンダー油、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/2−オクチルドデシル)、ダイマージオールジエステル、ダイマー酸ジエステル、ダイマージオールモノエステル、ダイマージオールダイマー酸エステル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、オレフィンオリゴマー等の液状油性原料、ジメチコン、シクロメチコン、フェニルメチコン、トリメチルシロキシケイ酸、等のシリコーン原料、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、寒天、ゼラチン、ヒアルロン酸、デオキシリボ核酸、キシリトール、マルチトール、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、エチルグルコシド等の保湿剤、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、硫酸バリウム、雲母チタン、窒化ホウ素、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、シルクパウダー、ナイロンパウダー、セルロース、カーボンブラック、ベンガラ、酸化亜鉛、群青、紺青、チタン酸リチウムコバルト、マンガンバイオレット、タール系色素、天然色素等の粉体顔料、紫外線吸収剤、各種ビタミン類、抗酸化剤、防腐剤及び香料等を配合することができる。【0008】本発明の口唇用化粧料としては、例えばリップクリーム、口紅、リップグロス、リップ下地、リップ用コート剤など挙げられるが、特にこれらに限定はされない。【0009】【実施例】以下具体例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお本発明は以下の実施例に限定されるものではない。【0010】試験例1(口唇角質層の剥離酵素活性と口唇荒れ)口唇角質層の剥離酵素活性を測定し、荒れとの関係を調べた。【0011】<口唇荒れの外観に基づく判定>被験者の口唇の荒れを、外観に基づいて以下の基準で判定した。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−外観        荒れのグレード−−−−−−−−−−−−−−−−−−−荒れていない        0乾燥している        1高度な乾燥、鱗屑      2−−−−−−−−−−−−−−−−−−−【0012】<角質層の採取>角質層採取用粘着シート(素肌チェッカー、登録商標)を口唇の採取部に一定圧で接着させたのち、ゆっくりと剥がして角質層を採取した。【0013】<剥離角質量の測定>剥離角質量定量のため、フィルムスキャナー(Ls3500、ニコン社製)にて剥離角質シートを画像として取り込み、画像解析装置(Nexus6800、Nexus社製)により剥離角質量を求めた。【0014】<剥離酵素活性測定>剥離酵素活性は、酸化インシュリンB鎖(シグマ社製)を基質として剥離角質と反応させ、剥離角質に存在するカセプシンDやSCCEにより切断されて生じる、それぞれの酵素に特異的な分解物ピークをHPLCで定量することにより測定した。剥離角質シートから事務用穴あけパンチで直径6mmの円形シートを打ち抜いた。このシートを96ウェル型マイクロプレートのウェルに角質付着面を上にして入れた。ここにカセプシンDの場合、1mg/mL酸化インシュリンB鎖溶液(0.1mol/Lクエン酸緩衝液、pH3.0、0.01wt%トリトンX−100)を50μL添加し、37℃で2時間反応させた。またSCCEの場合、0.5mg/mL酸化インシュリンB鎖溶液(0.1mol/L モルホリノエタンスルホン酸、pH6.0、0.01wt%トリトンX−100、5mmol/L EDTA、50μg/mL ペプスタチン)を50μL添加し、37℃で20時間反応させた。反応物をYMC−pack ODS−A,A−312カラム(YMC社製)にアプライしてHPLC分析した。2mL/分の流速下、最初の5分間は25vol%アセトニトリル−0.1vol%トリフルオロ酢酸で、そして次の5分間は25〜33vol%のアセトニトリルの濃度勾配をかけた0.1vol%トリフルオロ酢酸で溶出した。最後に33vol%アセトニトリル−0.1vol%トリフルオロ酢酸で更に5分間溶出を続けた。分解物ピークの検出は波長220nmの紫外吸収により行った。それぞれの酵素に特異的な分解物ピーク面積を剥離角質量で割った値を酵素活性の指標とした。【0015】結果を図1に示す。荒れた口唇ではカセプシンDの活性が低下していた。一方、SCCEの活性には変化は見られなかった。【0016】試験例2(酵素活性上昇効果の確認)皮膚への連続塗布によるカセプシンD活性の活性上昇を評価した。試験には、アプリコットエキスとしてアンズ果実の圧搾果汁であるホーモフルーツアプリコット(香栄興業社製)を、アプリコットオイルとしてアンズ種子核(杏仁)由来の圧搾脂肪油である杏仁油(日光ケミカルズ社製)を、ウーロン茶エキスとして、ウーロン茶の45vol%エタノール抽出物であるウーロン茶抽出液(丸善製薬社製)を、ニンジンエキスとしてニンジンの圧搾液汁であるホーモフルーツキャロット(香栄興業社製)を使用した。50vol%エタノール水溶液(以下基剤とする)に試験品を溶解し試験液を調製した。但し、アプリコットオイルの場合は95vol%エタノールを基剤とした。試験品の濃度は、アプリコットエキスの場合、乾燥残分として1.0wt%、アプリコットオイルの場合はアンズ由来の油脂分として5.0wt%、ウーロン茶エキスの場合は乾燥残分として0.05wt%、キャロットエキスの場合は乾燥残分として1.0wt%とした。皮膚の上、2×5cmの領域に試験液30μLを均一に塗布した。対照として、近接した部位に基剤30μLを同様に塗布した。1日1回の塗布を7日間連続で行った。最終塗布翌日に3M社製Scotchメンディングテープ(12mm幅)を用いて、テープストリッピングにより角質層を採取した。テープを角質層採取部位に粘着させ、表面を均一な力で軽く押さえた後、テープを剥離した。この一連の操作を1回とし、2回連続で角質層を採取し、2回目に採取した角質層を用いて剥離タンパク量とカセプシンD活性を測定した。剥離した角質層上、直径6mmの領域を50μLの1mol/L NaOHで室温下、2時間処理してタンパクを溶出させた。1mol/L HClで中和後、BCAプロテインアッセイキット(PIERCE社製)を用いて、ウシ血清アルブミンをスタンダードとして定量し、剥離タンパク量の指標とした。剥離した角質層上、直径6mmの領域で50μLの酸化インシュリンB鎖溶液(1mg/mL)を37℃、pH3.0(0.1mol/L クエン酸緩衝液)で2時間反応させた。反応終了後、HPLCにアプライして分解物を分析した。分解物のピーク面積を剥離タンパク量で割った、タンパク量当たりのピーク面積をカセプシンD活性の指標とした。【0017】結果を図2に示す。全ての試験品において角質のカセプシンD活性を上昇させる効果が確認された。【0018】以下、実施例をあげ本発明を具体的に示すが、これに先立ち評価試験方法に関して詳述する。【0019】<口唇荒れ改善効果の評価試験方法>口唇が荒れ気味の被験者25名を5名ずつ5グループに分け、試料を1日2回以上1週間にわたり塗布した。連用前及び連用後に口唇の状態を外観に基いて下記判断基準で判定し、集計した結果の平均をとり評価結果とした。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−外観          荒れのグレード−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−荒れていない           0やや乾燥している         1乾燥している           2乾燥し、角質層の肥厚が見られる  3角質層が肥厚し、割れや鱗屑がある 4−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−【0020】実施例1、2、3、4、比較例1表1に示す実施例1、2、3、4、及び、比較例1はリップクリームであり、溶解混合後、冷却固化し前記評価試験を行った。表1中の数字は質量%である。【0021】【表1】【0022】評価の結果を下記に示す。本実施例のリップクリームは、口唇荒れに対し優れた改善効果を有していた。【0023】実施例5、6、7、8、比較例2表2に示す実施例5、6、7、8、及び、比較例2は口紅であり、溶解混合後、冷却固化し前記評価試験を行った。表2中の数字は質量%である。【0024】【表2】【0025】評価の結果を下記に示す。本実施例の口紅は、口唇荒れに対し優れた改善効果を有していた。【0026】実施例9、10、11、12、比較例3表3に示す実施例9、10、11、12、比較例3はリップグロスであり、溶解混合後、容器に充填し前記評価試験を行った。表3中の数字は質量%である。【0027】【表3】【0028】評価の結果を下記に示す。本実施例のリップグロスは、口唇荒れに対し優れた改善効果を有していた。【発明の効果】以上の記載のように、本発明は、口唇荒れに対して優れた改善効果を有する口唇用化粧料及び口唇荒れ改善剤を提供できることは明らかである。【図面の簡単な説明】【図1】口唇角質層の剥離酵素活性と外観に基づく荒れのグレードの相関を示す。【図2】本発明に用いられる各種抽出物のカセプシンD酵素活性に及ぼす効果を示す。 アプリコットエキス、アプリコットオイル、ウーロン茶エキス、及びニンジンエキスから選ばれる少なくとも1種以上を配合した口唇用化粧料。 カセプシンD活性を高めるアプリコットオイルからなる口唇荒れ改善剤 【課題】口唇荒れを改善する効果を有する口唇化粧料及び口唇荒れ改善剤を提供する。【解決手段】本課題は、角質の剥離酵素活性を上昇させる効果を有する、アプリコットエキス、アプリコットオイル、ウーロン茶エキス、及びニンジンエキスから選ばれる少なくとも1種以上を配合した口唇用化粧料及びアプリコットオイルからなる口唇荒れ改善剤により解決される。【選択図】なし


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