タイトル: | 公開特許公報(A)_O/W型エマルション製剤 |
出願番号: | 2002202570 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,A61K9/107,A61K31/4745,A61K38/28,A61K47/12,A61K47/14,A61K47/32,A61K47/44,A61P3/10,A61P35/00 |
後藤 雅宏 通阪 栄一 神一 優子 小野 浩重 有森 和彦 JP 2004043355 公開特許公報(A) 20040212 2002202570 20020711 O/W型エマルション製剤 三菱化学フーズ株式会社 593204214 三菱化学株式会社 000005968 岡田 数彦 100097928 後藤 雅宏 通阪 栄一 神一 優子 小野 浩重 有森 和彦 7 A61K9/107 A61K31/4745 A61K38/28 A61K47/12 A61K47/14 A61K47/32 A61K47/44 A61P3/10 A61P35/00 JP A61K9/107 A61K31/4745 A61K47/12 A61K47/14 A61K47/32 A61K47/44 A61P3/10 A61P35/00 A61K37/26 5 OL 8 特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年3月1日 発行の「化学工学会第67年会 2002年 研究発表講演要旨集」に発表 4C076 4C084 4C086 4C076AA17 4C076BB01 4C076BB11 4C076CC27 4C076CC30 4C076DD41 4C076DD41H 4C076DD41M 4C076DD46H 4C076DD46M 4C076DD68H 4C076DD68M 4C076EE24H 4C076EE24M 4C076EE53A 4C076EE53M 4C076FF31 4C076FF67 4C076GG08 4C084AA02 4C084AA03 4C084BA01 4C084BA08 4C084BA22 4C084BA23 4C084DB34 4C084MA22 4C084NA06 4C084NA12 4C084ZB261 4C084ZC351 4C086AA02 4C086CB22 4C086GA02 4C086GA07 4C086GA08 4C086MA01 4C086MA05 4C086MA22 4C086NA06 4C086NA12 4C086ZB26 4C086ZC35 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、O/W型エマルション製剤に関し、詳しくは、親水性薬物を特定の親油性界面活性剤で被覆して成る界面活性剤−薬物複合体を油相に含有する、経口剤または注射薬として使用するのに適した、O/W型エマルション製剤に関する。【0002】【従来の技術】エマルション製剤において、薬物の封入能力が高く、調製が簡単であることから、通常、W/O/W(水中油中水)型エマルションが利用される。経口剤や注射剤としては、古くから、制癌剤と油脂と非イオン系界面活性剤とより成るリンパ節嗜向性制癌剤(特開昭48−88220号公報)、インシュリン分泌増強活性物質に油脂を共存させた経口剤(特開昭55−129218号公報)等のW/O/W型エマルション組成物が提案されているが、W/O/W型エマルションは、その性質上、ナノオーダーの粒子を調製することに限界がある。【0003】インスリン製剤の投与は、吸収速度の制御が可能で効果的に血糖値を下げることが出来る注射によるのが一般的である。しかしながら、注射での投与は、患者に苦痛を与えたり、アレルギー反応などの副作用発現の原因になる。服用の簡便さ及び安全性を考えると、経口投与が望ましいが、経口投与した場合、消化酵素や蛋白分解酵素により分解され易く、効果的ではない。また、水溶性で高分子である蛋白質製剤では細胞壁透過性が低い。【0004】塩酸イリノテカン(CPT−11)は、疎水性物質である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN−38)のプロドラッグであり、優れた抗癌作用を示す反面、重篤な副作用を引き起こすために使用が制限される。また、カンプトテシン誘導体はpHの影響を大きく受け、中性以上のpHではラクトン環が開環し、活性を失うので、イリノテカンを体内に投与する場合、副作用をなくし活性を保持したまま目的腫瘍部位に送達させる必要がある。【0005】上記の様な親水性薬物の新規な製剤の調製法として、親油性界面活性剤で水溶性の薬物を被覆し、油中に分散させる方法(バイオサイエンスとインダストリー、vol.55、11(1997))が利用できる。親油性界面活性剤で被覆することで有機溶媒に溶解可能となり、封入効果が向上し、O/W型エマルションとすることで薬物を外部環境から保護することが出来る。また、有機相として植物油を使用することにより、小腸に存在するリパーゼにより油が分解され、コントロールドリリースが可能となる。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実状に鑑みなされたものであり、その目的は、親水性薬物の水相への漏洩を抑制し、徐放制御により副作用を軽減することの出来る、経口剤や注射剤として使用するのに適した新規な医薬製剤を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨は、不飽和脂肪酸を30重量%以上含む炭素数16〜22の脂肪酸と炭素数4以上の多価アルコールとのエステルから成る親油性界面活性剤で親水性薬物を被覆して成る界面活性剤−薬物複合体を、油相に含有することを特徴とするO/W型エマルション型の医薬製剤に関する。【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明のO/W型エマルション製剤は、特定の界面活性剤−薬物複合体を油相に含有せしめることにより得られる。【0009】<界面活性剤−薬物複合体>界面活性剤−薬物複合体は、親水性薬物を特定の親油性界面活性剤で被覆して得られる。親水性薬物としては、シスプラチン、サリチル酸、バリノマイシン等の低分子化合物、インスリン、インターフェロン等のタンパク質組成物などが挙げられる。中でも、塩酸イリノテカン(CPT−11)等のカンプトテシン誘導体、インスリン等が好適である。塩酸イリノテカンは、生体内でエステラーゼにより加水分解されて活性な7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN−38)となり、DNA阻害剤として優れた抗癌作用を示す。【0010】親油性界面活性剤は、不飽和脂肪酸を30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上含む炭素数16〜22の脂肪酸と炭素数4以上の多価アルコールとのエステルから成る。斯かる親油性界面活性剤を使用することにより、経口剤や注射剤として使用するO/W型エマルション製剤に好適な、界面活性剤−薬物複合体を得ることが出来る。界面活性剤において、疎水部と成る上記の不飽和脂肪酸としては、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸などが挙げられ、中でも、エルカ酸が好ましい。親水部と成る多価アルコールとしては、ショ糖、乳糖、ブドウ糖、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。ポリグリセリンの重合度は4〜20が好ましい。【0011】より好ましい界面活性剤は、HLB3以下のショ糖脂肪酸エステル、HLB10以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、置換度が1〜3のソルビタン脂肪酸エステルである。これらの親油性界面活性剤は、油性成分に溶け易く、O/W型エマルションからの水溶性薬物の漏洩を抑制できるので、好適に使用される。最も好ましい界面活性剤は、HLB1〜3のショ糖エルカ酸エステル又はショ糖オレイン酸エステル、HLBが8以下のヘキサグリセリンエルカ酸エステル又はデカグリセリンエルカ酸エステルである。親油性界面活性剤は、夫々2種以上を組合せて使用してもよく、両者の組合せは適宜に選択することが出来る。【0012】界面活性剤−薬物複合体は、通常、薬物の水溶液を、親油性界面活性剤を含有する有機溶媒へ乳化・分散してW/O型エマルションを調製し、次いで、得られたW/O型エマルションを、定法により、凍結乾燥することにより得られる。有機溶媒としては、親油性界面活性剤を溶解することが出来、凍結乾燥により揮散除去出来るものであれば特に限定はないが、通常、エタノール等の低級アルコールやヘキサン等の低沸点の炭化水素が使用される。乳化・分散は、プロペラミキサー、ディスパー等の撹拌機で行うことが出来る。分散滴の粒径は、撹拌強度(=動力×時間)を調節することにより、0.1〜50μmの間で制御することが出来る。親水性薬物に対する親油性界面活性剤の割合は、重量比で、通常1:10〜10:1、好ましくは1:2〜2:1の範囲である。有機溶媒に含有させる親油性界面活性剤の濃度は、通常1〜10重量%の範囲である。【0013】<O/W型エマルション製剤>本発明のO/W型エマルション製剤は、上記の界面活性剤−薬物複合体を油相に含有する。O/W型エマルション製剤の調製は、界面活性剤−薬物複合体を油性成分に添加し、超音波照射などにより分散・溶解させて得られた油相を、所定の水相液中に滴下し、撹拌機を使用して乳化・分散させることにより、容易に製造することが出来る。また、必要に応じて、親水性SPG(Shirasu Porous Glass)膜を使用した膜乳化装置に、得られたO/W型エマルションを圧入し均一な粒径に制御されたO/W型エマルション製剤を得ることが出来る。O/Wの比率は、容積比率で、通常99:1〜50:50の範囲である。油相中の薬物の量は、目的に応じた有効量以上であれば特に制限されない。【0014】<油相>油相に使用される油性成分としては、大豆油、コーン油、ピーナッツ油、オリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ホホバ油などの植物油、魚油、オレンジラフィー油などの動物油などが挙げられる。また、軽質流動パラフィン、スクアレン、スクアラン等の炭化水素、カプリル酸、カプリン酸などの中鎖飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの長鎖不飽和脂肪酸類、中鎖または長鎖の脂肪族アルコール類、シリコーン系油剤なども使用することが出来る。油性成分として植物油を使用した場合、小腸に存在するリパーゼにより油が分解され、コントロールドリリースが可能となるので、特に好ましい。【0015】<水相>水相は、特に限定されないが、所望のpHに調節する目的で、適宜、緩衝液を使用することが出来る。また、外水相中にNaClを添加して浸透圧を調節してもよく、更に、O/W型エマルションの安定性向上のために、親水性界面活性剤を添加することも出来る。水相に添加する界面活性剤としては、構成ポリグリセリンの重合度が4〜20で、HLBが10以上のポリグリセリンステアリン酸エステルが好ましい。親水性のポリグリセリンステアリン酸エステルの水相全体に対する割合は、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。【0016】【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例では、表1に示す原材料を使用した。【0017】【表1】<界面活性剤>「ER−290」:ショ糖エルカ酸エステル(三菱化学フーズ社製、エルカ酸90重量%、HLB2)「O−170」:ショ糖オレイン酸エステル(三菱化学フーズ社製、オレイン酸70重量%、HLB1)「POS−135」:ショ糖混合脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製、パルミチン酸/オレイン酸/ステアリン酸=30/40/30(重量比)、HLB1)「L−195」:ショ糖ラウリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、ラウリン酸95重量%、HLB1)「TGCR」:縮合リシノレイン酸テトラグリセリンエステル(平均縮合度4.4、HLB1)<他の原材料>(1)大豆油:(株)和光純薬工業(1)D(+)−グルコース:(株)和光純薬工業(2)コール酸ナトリウム:(株)キシダ化学(3)インスリン:シグマ社「Human Insulin(28.7units/mg)」(4)塩酸イリノテカン:ヤクルト(株)(5)PEG20000:東京化成(株)【0018】実施例115mLのインスリン水溶液(30U/mL)とER−290を5重量%含むヘキサン溶液30mLを、ホモジナイザー(POLYTRON PT2100:KINEMARICA AG社)により26000rpmで乳化し、W/O型エマルションを調製した。得られたエマルションを24時間凍結乾燥(FREEZE DRYER FD−1000;EYELA社)して、ER−290でコーティングした黄色、高粘性の界面活性剤−インスリン複合体0.75gを得た。【0019】上記で得られた複合体0.75gに大豆油15mLを加え、超音波照射(BRANSONIC ULUTORASONIC CLEANER 1510J−DTH;BRANSON社)を15分間行い、複合体を大豆油中に分散させた。次いで、その大豆油を、L−1695(1.0重量%)、コール酸ナトリウム(1.0重量%)、グルコース(5.0重量%)を溶解させた水溶液30mLに添加し、ホモジナイザー(26000rpm)で乳化して、平均粒子径9.117μmのO/W型エマルションを調製した。続いて、得られたエマルションを膜細孔径1.1μmの親水性SPG(shirasu Poras Glass)膜に膜乳化装置((株)清本鐵鋼)を使用して圧入して、平均粒子径0.912μmの均一な粒径に制御されたO/W型エマルション製剤を得た。【0020】得られたO/W型エマルション製剤を冷蔵庫で静置保存し、経時サンプリングしてインスリン活性の測定を行った。その結果、インスリンの漏洩率は60時間後で5%であり、エマルション中のインスリン活性値は10日後でも70%以上であった。なおインスリン活性の測定は次に示す方法により行った。【0021】<インスリン活性の測定法>エタノールでエマルションを解乳化し、解乳化した溶液を遠心濾過(倒立式遠心チューブシステム;ADVANTEC社、MX−300;(株)トミー工業)し、インスリン水溶液を得、IMXアナライザー((株)ダイナボット)によりインスリン活性を測定した(MEIA法)。一方、エマルション製剤を直接遠心濾過してエマルション中から漏洩したインスリン水溶液を得て、漏洩したインスリンの活性測定を行い、エマルション全体のインスリン活性値から差し引くことでエマルション中のインスリン活性値を算出する。【0022】<試験例および比較試験例>O/W型エマルション製剤を動物実験(経口投与)に供し、インスリン経口投与後の血糖値の変化を調べた。また、インスリン水溶液(100U/kg)を同様に経口投与して比較を行った。その結果を表2に示す。なお、実験方法は次に示す通りである。【0023】<動物実験(経口投与)>Wistar系雄性ラットにストレプトゾシン55mg/kgを尾静脈投与し、3日後に背部皮下にバスキュラーアクセスポートの埋め込み手術を行った。7日目に、16時間絶食させた糖尿病誘発ラットに対して、上記で得たO/W型エマルション製剤(100U/kg)を経口投与し、経時的に頸静脈より採決して血清中の血糖値(mg/100mL)を測定した。また、血糖値の測定は、GL−NEW TEST(「ミズホ」を使用した酵素法)により行った。【0024】【表2】【0025】実施例2〜4及び比較例1〜2pH3に調節した塩酸イリノテカン(CPT−11)水溶液と表3に示す親油性界面活性剤5重量%を含むヘキサン溶液を使用し、表4に示す配合により、実施例1と同様にW/O乳化・凍結乾燥して、界面活性剤−CPT−11複合体を得た。次いで、得られた複合体を大豆油に加え、超音波照射を15分間行い、複合体を大豆油中に分散させた。次いで、その大豆油を水相に添加し、ホモジナイザーで乳化して、表5に示す配合のO/W型エマルションを調製した。得られたO/W型エマルションについて、水相に漏洩したCPT−11を測定した結果(漏洩率;重量%)を表3に示す。なお、漏洩量の測定は、次に示す方法で行った。【0026】<CPT−11の漏洩量の測定方法>37℃の恒温槽中、O/W型エマルションをスターラーで攪拌しながら、経時的に試料1mLを採取し、5分間遠心分離((株)トミー精工LT−015型;2900rpm)にかけた後、5倍に希釈し、蛍光分光光度計(Perkin Elmer 社LS50B型;励起波長365nm、発光波長430nm)で、水相中のCPT−11の量を測定した。【0027】【表3】【0028】【表4】【0029】【表5】【0030】実施例5実施例2において、界面活性剤−CPT−11複合体の調製に、水溶性高分子であるPEG20000を5重量%含有するCPT−11水溶液を使用した以外は、実施例2と同様にしてO/W型エマルションを調製した。CPT−11の水相への漏洩率は、60時間後で1重量%、120時間後で1.6重量%であり、実施例2よりも漏洩を抑えることが出来た。これはCPT−11が高分子であるPEGに絡まって封入されているためと考察される。【0031】【発明の効果】以上述べた様に、本発明によって、親水性薬物の水相への漏洩を抑制し、徐放制御により副作用を軽減することの出来る、経口剤や注射剤として使用するのに適した新規な医薬製剤が提供される。 不飽和脂肪酸を30重量%以上含む炭素数16〜22の脂肪酸と炭素数4以上の多価アルコールとのエステルから成る親油性界面活性剤で親水性薬物を被覆して成る界面活性剤−薬物複合体を、油相に含有することを特徴とするO/W型エマルション製剤。 親油性界面活性剤を構成する不飽和脂肪酸が、パルミトオレイン酸、オレイン酸およびエルカ酸の群から選ばれる1種以上である請求項1に記載の製剤。 親油性界面活性剤が、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ポリグリセリンエルカ酸エステルの群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の製剤。 油相の媒体が植物油である請求項1に記載の製剤。 親水性薬物がインスリン又はカンプトテシン誘導体である請求項1〜4の何れかに記載の製剤。 【課題】親水性薬物の水相への漏洩を抑制し、徐放制御により副作用を軽減することの出来る、経口剤や注射剤として使用するのに適した新規な医薬製剤を提供する。【解決手段】不飽和脂肪酸を30重量%以上含む炭素数16〜22の脂肪酸と炭素数4以上の多価アルコールとのエステルから成る親油性界面活性剤で親水性薬物を被覆して成る界面活性剤−薬物複合体を、油相に含有するO/W型エマルション製剤。【選択図】 なし