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タイトル:特許公報(B2)_ホットスタート核酸増幅用組成物及びホットスタート核酸増幅法
出願番号:2002202533
年次:2008
IPC分類:C12N 15/09,C12Q 1/68


特許情報キャッシュ

ヴァルトラウト アンケンバウアー ディーター ハインドル フランク ラウエ アンドレーアス フーバー JP 4053363 特許公報(B2) 20071214 2002202533 20020711 ホットスタート核酸増幅用組成物及びホットスタート核酸増幅法 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 591003013 F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT 細田 芳徳 100095832 ヴァルトラウト アンケンバウアー ディーター ハインドル フランク ラウエ アンドレーアス フーバー EP 01115788.0 20010711 20080227 C12N 15/09 20060101AFI20080207BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20080207BHJP JPC12N15/00 AC12Q1/68 A C12N 15/00-15/90 C12Q 1/00-1/68 EUROPAT(QUESTEL) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CAplus(STN) PubMed JST7580(JDream2) JSTPlus(JDream2) 国際公開第01/023583(WO,A1) 特開平09−107997(JP,A) 英国特許出願公開第02293238(GB,A) 特表平08−505053(JP,A) 特表2003−510084(JP,A) 特開平08−038198(JP,A) 特開2002−223799(JP,A) 3 2003038180 20030212 26 20020717 渡邉 潤也 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、分子生物学分野、より詳しくは、核酸増幅方法に関する。より具体的には、本発明は、非特異的増幅産物の形成の阻害により、DNA の増幅の特異性を増強することができる、核酸増幅方法及びそれに用いる組成物に関する。【0002】【従来の技術】インビトロ核酸合成は、日常的に、DNA ポリメラーゼと追加のポリペプチドとの混合物又はDNA ポリメラーゼ単独を用いて行なわれている。DNA ポリメラーゼは、DNA 複製及び修復に関与する酵素のファミリーである。大腸菌などの中温性微生物由来のDNA ポリメラーゼの単離において、広範囲な研究が行なわれている。例えば、ベスマン(Bessman) ら、J. Biol. Chem., 223, 171-177 (1957) 及びブチン(Buttin, G.)及びコーンベルク(Kornberg, A.), J. Biol. Chem., 241, 5419-5427 (1966) などを参照のこと。【0003】また、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)などの好熱性細菌由来のDNA ポリメラーゼの単離及び精製において、研究が行なわれている。チェン(Chien, A.) ら, J. Bacteriol., 127, 1550-1557 (1976)には、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus) YT1 株由来の至適温度80℃のDNA ポリメラーゼの単離及び精製が開示されている。また、米国特許第4,889,818 号明細書には、分子量約86,000〜90,000ダルトンのT.アクアティカス由来精製耐熱性DNA ポリメラーゼ、Taq DNA ポリメラーゼが開示されている。また、欧州特許出願公開第0 258 017 号公報には、PCR 法に用いるに適した酵素として、Taq DNA ポリメラーゼが開示されている。【0004】Taq DNA ポリメラーゼは、5’−3’ポリメラーゼ依存性エキソヌクレアーゼ機能を有するが、Taq DNA ポリメラーゼは、3’−5’エキソヌクレアーゼ機能を有さないことが研究により示されている〔ロイヤー(Lawyer, F. C.) ら, J. Biol. Chem., 264, 6427-6437 (1989);バーナッド(Bernad, A.)ら, Cell, 59, 219-228 (1989)〕。DNA ポリメラーゼの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、一般的に、プルーフリーディング活性といもいわれる。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は、プライマー−テンプレートデュープレックスの3’末端におけるミスマッチ塩基を除去する。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の存在により、核酸鎖の複製の忠実度の増加を導き、未完成の産物の伸長を導くので、有利である。Taq DNA ポリメラーゼは、ミスマッチプライマー末端を除去することができないので、 塩基取り込みエラーの傾向があり、一部の用途におけるその使用を望まれないものにする。例えば、遺伝子のいずれかの1コピーが、ランダムな誤った取り込み事象によるエラーを含むかもしれないので、増幅産物をクローニングしようとする場合、厄介である。エラーが生じるサイクル(例えば、早期複製サイクル)によっては、全増幅DNA は、誤って取り込まれた塩基を含み得、それゆえ、変異遺伝子産物を生じさせる。【0005】当該技術分野において、高忠実度DNA 増幅に用いられる好熱性古細菌由来B 型ポリメラーゼのように、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を呈するいくつかの耐熱性DNA ポリメラーゼが公知である。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を呈する耐熱性ポリメラーゼは、パイロコッカス(Pyrococcus)〔精製耐熱性パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus) DNA ポリメラーゼ、マシュー(Mathur E.) 、ストラタジーン(Stratagene)、国際公開第92/09689号パンフレット、米国特許第5,545,552 号明細書;パイロコッカス・スピーシーズ(Pyrococcus sp.)由来精製耐熱性DNA ポリメラーゼ、コム(Comb D. G.)ら、ニュー・イングランド・バイオラボ・インコーポレーティッド(New England Biolabs, Inc.) 、欧州特許第0 547 359 号(EP 0 547 359)明細書;古細菌パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus) 由来DNA ポリメラーゼ遺伝子の構造及びヌクレオチド配列、ウエモリ(Uemori, T.)ら、Nucleic Acids Res., 21, 259-265, (1993) 〕、パイロディクティウム・スピーシーズ(Pyrodictium sp.) 〔耐熱性核酸ポリメラーゼ、ゲルファント(Gelfand D. H.) 、エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アーゲー(F. Hoffmann-La Roche AG) 、欧州特許第0 624 641 号(EP 0 624 641)明細書;パイロディクティウム・スピーシーズ(Pyrodictium sp.) 由来精製耐熱性核酸ポリメラーゼ及び配列をコードするDNA 、ゲルファント(Gelfand D. H.) 、ホフマン−ラ・ロシュ・インコーポレーティッド(Hoffmann-La Roche Inc.)、米国特許第 5,491,086号明細書〕、サーモコッカス(Thermococcus)〔例えば、サーモコッカス・スピーシーズ TY (Thermococcus sp. TY) 由来耐熱性DNA ポリメラーゼ、ニーハウス(Niehaus F.)ら、国際公開第97/35988号パンフレット;精製サーモコッカス・バロッシィ(Thermocccus barossii) 由来DNA ポリメラーゼ、ルーム(Luhm R. A.)、ファルマシア・バイオテック・インコーポレーティッド(Pharmacia Biotech, Inc.) 、国際公開第96/22389号パンフレット;DNA シークエンシング、PCR などに有用な、介在エキソヌクレアーゼ活性と高温における良好な長期安定性とを有するサーモコッカス・バロッシィ(Thermococcus barossii) 由来DNA ポリメラーゼ、デーヘンネッツェル(Dhennezel O. B.) 、ファルマシア・バイオテック・インコーポレーティッド(Pharmacia Biotech Inc.)、国際公開第96/22389号パンフレット;DNA 操作に用いるためのサーモコッカス・リトラリス (Thermococcus litoralis) 由来精製耐熱性DNA ポリメラーゼ、コム(Comb D. G.)、ニュー・イングランド・バイオラボ・インコーポレーティッド(New England Biolabs, Inc.) 、米国特許第5,322,785 号明細書、欧州特許第0 455 430 号(EP 0 455 430)明細書;古細菌由来組換耐熱性DNA ポリメラーゼ、コム(Comb D. G.)、ニュー・イングランド・バイオラボ・インコーポレーティッド(New England Biolabs, Inc.) 、米国特許第5,352,778 号明細書、欧州特許第0 547 920 号(EP 0 547 920)明細書、欧州特許第0 701 000 号(EP 0 701 000)明細書;サーモコッカス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)から得られた新規単離耐熱性DNA ポリメラーゼ、アンゲラー(Angerer B.)ら、ベーリンガー・マンハイム・ゲーエムベーハー(Boehringer Mannheim GmbH)、国際公開第98/14590号パンフレット〕から単離され、クローニングされるであろう。【0006】プルーフリーディング機能の存在下でのPCR を与える他の可能性は、一方のポリメラーゼがかかるプルーフリーディング活性を呈するものであるポリメラーゼ酵素の混合物の使用である〔例えば、耐熱性が増強され、プライマー伸長の長さ及び効率が増強された耐熱性DNA ポリメラーゼ、バーンズ(Barnes W. M.)、米国特許第5,436,149 号明細書、欧州特許第0 693 078 号(EP 0 693 078)明細書;新規ポリメラーゼ組成物及びその使用、ゾルゲ(Sorge J. A.) 、ストラタジーン(Stratagene)、国際公開第95/16028号パンフレット〕。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠損した少なくとも1種の耐熱性DNA ポリメラーゼの主要成分及び3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を呈する少数成分、例えば、Taq DNA ポリメラーゼとPfu DNA ポリメラーゼとを含有した耐熱性DNA ポリメラーゼ配合剤を使用することは一般的な手段である。これらの混合物において、伸長性は、Taq DNA ポリメラーゼなどのpol I 型酵素により付与され、プルーフリーディング機能は、Pfu などの耐熱性B 型ポリメラーゼにより付与される。【0007】高忠実度DNA 合成は、核酸増幅における1つの所望のパラメータであり、他の重要な特徴は、汚染除去の可能性である。ポリメラーゼ連鎖反応は、1つの分子を10億倍以上に増幅しうる。したがって、ほんのわずかな量の汚染要因物でさえ、増幅し、擬陽性の結果を導きうる。かかる汚染要因物は、しばしば、前のPCR 増幅の産物である(キャリーオーバー汚染) 。したがって、研究者らは、かかる汚染を回避する方法を開発してきた。かかる方法は、PCR 増幅に際してTTP をdUTPに置換し、ウラシル含有DNA(U-DNA)を産生することに基づく。ついで、PCR 増幅に先立って、PCR 反応混合物をウラシル-DNA- グリコシラーゼ(UNG) で処理することにより、汚染した核酸が分解され、該汚染核酸からの増幅は生じなくなる。dUTPは、pol I 型耐熱性ポリメラーゼにより直ちに取り込まれうるが、B −型ポリメラーゼには取り込まれ得ない〔スラッファウ(Slupphaug, G.) ら, Anal. Biochem., 211, 164-169 (1993) 〕。B 型ポリメラーゼによるdUTPの低い取り込みは、PCR 増幅により、同じタイプの鋳型を繰り返し分析する研究室における使用を限定する。【0008】3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を呈する耐熱性DNA ポリメラーゼもサーモトガ(Thermotoga)などの真正細菌株から単離されている〔サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)由来好熱性DNA ポリメラーゼ、スラター(Slater M. R.)ら、プロメガコーポレーション(Promega Corporation) 、国際公開第96/41014号パンフレット;サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)由来クローン化DNA ポリメラーゼ及びその変異体、ヒューグズ(Hughes A. J.)ら、ライフ・テクノロジー・インコーポレーティッド(Life Technologies, Inc.) 、国際公開第96/10640号パンフレット;ターモトガ・マリティーマ(Termotoga maritima)由来精製耐熱性核酸ポリメラーゼ酵素、ゲルファント(Gelfand D. H.) ら、セタス・コーポレーション(CETUS Corporation) 、国際公開第92/03556号パンフレット〕。これらの酵素は、誤って取り込まれた塩基又はミスマッチ塩基を除去し得る強い3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。本酵素の遺伝子工学的産物は、さらなるポリペプチドなしにPCR 工程に用いられ得るDNA ポリメラーゼULTma として、市販されている。本酵素は、誤って取り込まれた塩基を除去し、dUTPを取り込むが、忠実度は、未知の理由により、Taq DNA ポリメラーゼの忠実度よりも高くない〔ポリメラーゼ連鎖反応における複製の正確性、ディアズ(Diaz, R. S.) 及びサビノ(Sabino, E. C.) 、Braz J. Med. Biol. Res., 31, 1239-1242 (1998) ;Pfu DNA ポリメラーゼ及び他の耐熱性 DNAポリメラーゼのPCR 忠実度、クリン(Cline, J.) ら、Nucleic Acids Res., 24, 3546-3551 (1996)〕。【0009】また、好ましくは、付随してdUTPを取り込むことができる高忠実度PCR 系がある。欧州特許出願公開第1088891 号(EP-A-1088891)明細書によれば、3’−エキソヌクレアーゼ活性を示すが、本質的にDNA ポリメラーゼ活性を示さないものであり、ポリメラーゼ活性を呈する第2の酵素を添加した場合、増幅工程の忠実度を増強する耐熱性酵素を用いてもよい。したがって、前記酵素は、ミスマッチしたプライマー末端を切り出し、ポリメラーゼ活性を呈する第2の酵素、例えば、Taq DNA ポリメラーゼなどを、DNA を合成する工程に際して、再会合させ、再度伸長させる。また、前記酵素は、プルーフリーディング酵素として、ポリメラーゼ活性を呈する第2の酵素と協同することができる必要がある。特に、例えば、耐熱性エキソヌクレアーゼIII などがこの仕事に適する。3’−5’方向に作用し、5’のリン酸を切断し、3’水酸基を遊離させ、理想的には、二本鎖DNA のみに作用するエキソヌクレアーゼIII が好ましい。【0010】もちろん、酵素が、70℃〜80℃で活性であり、変性サイクルを生き残るに十分に安定であり、より低い温度で不活性である場合、PCR 工程の終了後、PCR 産物を分解させないために有利である。これらの特徴を呈する酵素は、好熱性真正細菌から得られ得、または関連する酵素は、好熱性古細菌から得られ得る。3 つの耐熱性古細菌、すなわち、メタノコッカス・ジャナシュィ(Methanococcus jannaschii)〔メタン生成古細菌メタノコッカス・ジャナシュィ(Methanococcus jannaschii)の完全ゲノム配列、ブルト(Bult, C. J.) ら、Science, 273, 1058-1073 (1996)〕、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)〔メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム H(Methanobacterium thermoautotrophicum H) の完全ゲノム配列:機能解析及び比較ゲノミックス、スミス(Smith, D. R.)ら、J. Bacteriol., 179, 7135-7155 (1997)〕及びアーキオグロバス・フルギドス(Archaeoglobus fulgidus)〔超好熱性硫酸還元古細菌アーキオグロバス・フルギドス(Archaeoglobus fulgidus)の完全ゲノム配列、クレンク(Klenk, H. P.)ら、Nature, 390, 364-370 (1997) 〕のゲノムが、配列決定されている。【0011】特に、欧州特許出願公開第1088891 号(EP-A-1088891)明細書には、二本鎖DNA における3’−5’方向におけるプライマー又はポリヌクレオチドのミスマッチ末端の分解を触媒するものである、アーキオグロバス・フルギドス(Archaeoglobus fulgidus)から得られ得る耐熱性酵素が開示されている。アーキオグロバス・フルギドス(Archaeoglobus fulgidus)から得られ得る耐熱性エキソヌクレアーゼIII をコードする遺伝子(Afu) をクローン化し、大腸菌内で発現させ、単離した。前記酵素は、PCR 反応で用いられるインキュベーション及び温度条件下で活性である。前記酵素は、低エラー率でDNA 合成及び反応混合物中に存在するdUTPの存在下又は非存在下における良好な収率でのゲノムDNA 上の3kb を超える産物(Taq DNA ポリメラーゼにより合成される産物の上限範囲)のDNA 合成を行なう際にTaq DNA ポリメラーゼなどのDNA ポリメラーゼをサポートする。至適PCR パフォーマンスを有するために、好ましくは、2.5 U のTaq DNA ポリメラーゼあたり、Afu から得られ得る50〜500 ngのエキソヌクレアーゼIII を用いる。より好ましくは、PCR 反応において、2.5 U のTaq DNA ポリメラーゼあたり、Afu から得られ得る67ng〜380ng のエキソヌクレアーゼIII の使用である。【0012】核酸増幅、特に、PCR での別の主要な問題は、非特異的増幅産物の生成である。耐熱性DNA ポリメラーゼも外界温度で適度に活性であるので、多くの場合、これは、実際のサーモサイクル手順自体に先立ち非特異的オリゴヌクレオチドプライミング及びつづくプライマー伸長事象によるものである。例えば、結局のところ、プライマー二量体化及びつづく伸長を生じる機会による増幅産物がしばしば観察される。この問題を克服するため、いわゆる「ホットスタート」PCR を行なうことが当該技術分野に周知である。増幅反応に必須の成分は、反応混合物から単離されるか、反応混合物の温度が最初に上がるまで不活性な状態に維持される。ポリメラーゼは、これらの条件下に機能しないので、プライマーが非特異的に結合できる期間においてプライマー伸長はない。この効果を達成するために、いくつかの方法、例えば、下記a)〜e)などが利用される。【0013】a) DNAポリメラーゼの物理的分離物理的分離は、例えば、DNA ポリメラーゼを含む区画と、大部分の他の試薬を含む区画とを隔てる固体ワックスの障壁により得られ得る。第1の加熱工程の際、ついで、ワックスは、自動的に融解し、2つの区画が混合される〔チョウ(Chou, Q.)ら、Nucleic Acids Res., 20, 1717-1723 (1992)〕。一方、DNA ポリメラーゼは、増幅反応に先立って固体支持体にアフィニティー固定され、熱媒介放出により、反応混合物中に放出されるのみである〔ニルソン(Nilsson, J.) ら、Biotechniques, 22, 744-751 (1997) 〕。しかしながら、両方の方法ともに、時間がかかり、実施に便利ではないという欠点がある。【0014】b) DNAポリメラーゼの化学修飾本タイプのホットスタートPCR のために、DNA ポリメラーゼは、化学修飾の結果として、可逆的に不活性化される。より詳しくは、室温で酵素を不活性化させる熱不安定性ブロック基が、Taq DNA ポリメラーゼに導入される。これらのブロック基は、前PCR 工程の際、高温で除去され、それにより、酵素が活性化される。かかる熱不安定な修飾は、例えば、シトラコン酸無水物又はアコニット酸無水物を酵素のリジン残基にカップリングすることにより得られうる(米国特許第5,677,152 号明細書)。かかる修飾を保持する酵素は、さしあたり、Amplitaq Gold 〔モレッティ(Moretti, T.)ら、Biotechniques, 25, 716-722, (1998)〕又はFastStart DNA ポリメラーゼ〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)社製〕として市販されている。しかしながら、ブロック基の導入は、全ての立体的に利用可能な酵素のリジン残基において任意に生じる化学反応である。したがって、化学修飾酵素標品の再現性及び品質は、変化し、 制御することが困難であるという欠点がある。【0015】c)核酸添加剤によるDNA ポリメラーゼ阻害非特異的にアニールしたプライマーの伸長は、短い二本鎖DNA 断片の添加により阻害されることが示されている〔カインツ(Kainz, P.) ら、Biotechniques 28, 278-282 (2000)〕。この場合、プライマー伸長は、短い二本鎖DNA 断片の融解温度より下の温度で阻害されるが、競合DNA 自体の配列とは独立して阻害される。しかしながら、競合DNA の過剰の程度に、核酸増幅反応の収率に影響することが知られている。【0016】一方、決まった二次構造をもたらす特異的な配列を有するオリゴヌクレオチドアプタマーを用いてもよい。かかるアプタマーは、SELEX テクノロジーを用いて、DNA ポリメラーゼに対する非常に高いアフィニティーについて、選択されている(米国特許第5,693,502 号明細書)〔リン(Lin, Y.) 及びジャヤセナ(Jayasena, S. D.) 、J. Mol. Biol., 271, 100-111 (1997)〕。実際のサーモサイクル工程前の増幅混合物内におけるかかるアプタマーの存在自体は、再び、DNA ポリメラーゼへの高い親和性結合をもたらし、結果として、その活性の熱不安定な阻害をもたらす。しかしながら、選択工程のせいで、現段階で利用可能な全てのアプタマーは、DNA ポリメラーゼのある特定種との組合せのみで用いられうるにすぎないという欠点がある。【0017】d)Taq DNA ポリメラーゼ抗体Taq DNA ポリメラーゼの熱不安定な阻害を達成するための別のアプローチは、精製酵素に対するモノクローナル抗体の添加である〔ケロッグ(Kellogg, D. E.)ら、Biotechniques, 16, 1134-1137 (1994) ;シャーキー(Sharkey, D. J.)ら、Biotechnology, 12, 506-509 (NY) (1994)〕。オリゴヌクレオチドアプタマーのように、抗体は、高いアフィニティーで、外界温度において阻害様式でTaq DNA ポリメラーゼと結合する。複合体は、サーモサイクル工程自体に先立つプレヒーティング工程で分離する。これは、特に迅速なサーモサイクルのプロトコールが用いられる場合、全体として、増幅の実質的な所要時間の延長を導く(国際公開第97/46706号パンフレット)。【0018】米国特許第5,985,619 号明細書は、ホットスタート抗体を用いるPCR を行なうための具体的な態様を開示する。Taq DNA ポリメラーゼの他、例えば、非特異的プライマー二量体中間体を消化するために、大腸菌由来エキソヌクレアーゼIII が、増幅混合物への補足として添加される。上記のように、エキソヌクレアーゼIII は、例えば、標的/プライマーハイブリッド又は標的/ プライマー伸長産物ハイブリッドなどの二本鎖DNA を基質として認識する。消化は、3’末端デオキシヌクレオチド残基の5’末端におけるホスホジエステル結合の切断により起こる。このタイプのエキソヌクレアーゼは、外界温度で活性であるので、それゆえ、全ての非特異的にアニールしたプライマー及びプライマー伸長産物を消化する。これは、増幅反応の特異性の一様な増加におけるある態様をもたらす。今までのところ、プレインキュベーション時間の持続時間に依存する非特異的プライマーの消化は、プライマー濃度における実質的で、かつ制御されていない減少を導き、次には、増幅反応自体に影響を与えるかもしれない。【0019】e)エキソヌクレアーゼの使用増幅効率の増加の他の別法は、PCR 反応ミックス中においてホスホロチオエートオリゴヌクレオチドプライマーをエキソヌクレアーゼIII と組合せて使用することである〔欧州特許第0 744 470 号明細書(EP 0 744 470)〕。この場合、二本鎖DNA 基質及び一本鎖DNA 基質を常に受け入れる3’エキソヌクレアーゼは、プライマー二量体などの二本鎖人為産物を分解し、アンプリコンを持ち越し、一方、一本鎖増幅プライマーを分解しないままである。同様に、無塩基修飾3’末端を有するプライマーと鋳型とを、大腸菌エンドヌクレアーゼIVによる除去に依存して使用することが示唆されている(米国特許第5,792,607 号明細書)。しかしながら、この方法には、いくつかの大きな欠点がある。【0020】第1に、ホスホロチオエート残基を含むオリゴヌクレオチドは、立体異性的に純粋な様式で合成され得ないという欠点がある。さらに、それらのハイブリダイゼーション温度は、同じ配列の非修飾オリゴヌクレオチドと比べて異なり、非特異的なハイブリダイゼーション事象がしばしば観察される。【0021】第2に、その3’末端にもホスホロチオエート残基を含むプライマーは、反応混合物中にすでに存在するDNA ポリメラーゼにより、まだ伸長されうる。すなわち、エキソヌクレアーゼの効果は、ポリメラーゼ自体の存在により、少なくとも部分的に補われる。【0022】第3に、大腸菌エンドヌクレアーゼIVの酵素活性は、Mg2+イオンの存在下において、非常に低い〔シヴェック (Siwek, B.)ら、Nucleic Acids Res., 16, 5031-5038, (1988) 〕。さらに、特定のタイプのアッセイに依存して、正確で有意なMg2+濃度が、PCR 増幅反応の成功に本質的に必要条件であり、PCR 試料中におけるエンドヌクレアーゼIVの使用をきわめて効果のないものにするという欠点がある。【0023】第4に、また最も重要なこととして、大腸菌エキソヌクレアーゼIII 又は大腸菌エンドヌクレアーゼIVなどの慣用のヌクレアーゼは、熱に不安定であり、それゆえに、サーモサイクル工程自体の前に活性であるにすぎないという欠点がある。結果として、非特異的プライマー結合及び伸長は、サーモサイクル工程の間でなく前に阻害されるにすぎないという欠点がある。【0024】【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、増幅工程自体の前だけでなく、サーモサイクル工程の間においても非特異的プライミングとプライマー伸長とを阻害すること、非特異的にアニールしたプライマーの伸長による産物の生成を防ぐこと、特異的な核酸増幅を行なうことなどを可能にする、核酸増幅反応を行なうための組成物、特に、ホットスタートPCR 用組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、増幅工程前自体だけでなく、サーモサイクル工程の間においても非特異的プライミングとプライマー伸長とを阻害すること、非特異的にアニールしたプライマーの伸長による産物の生成を防ぐこと、特異的な核酸増幅を行なうことなどを可能にする、核酸増幅方法、特に、ホットスタートPCR 方法を提供することにある。【0025】【課題を解決するための手段】本発明は、耐熱性DNA ポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとを含有した、核酸増幅反応を行なうための組成物を提供する。好ましくは、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼは、37℃〜72℃の温度でより活性が高く、37℃より下の温度で活性が低いことが望ましい。前記耐熱性エキソヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼIII ホモログ又はポリメラーゼ活性がない変異DNA ポリメラーゼ又は低いポリメラーゼ活性を有する変異DNA ポリメラーゼであってもよい。【0026】リアルタイムPCR 解析に有用な具体的な態様において、前記組成物は、増幅産物の検出用化合物をさらに含有してもよい。【0027】核酸増幅用プライマーに関して、好ましくは、少なくとも1種のプライマーが、リン酸基により、又はリン酸基を介して3’末端デオキシヌクレオチドに連結する化学基(moiety)により3’末端で修飾される場合、好ましい。一方、3’末端残基は、ジデオキシヌクレオチド又は任意の他の修飾ヌクレオチド又はDNA ポリメラーゼにより伸長され得ないヌクレオチドアナログである。別の態様において、3’末端ヌクレオチドは、非ヌクレオシド修飾剤(modifier)又は無塩基部位により置換されてもよい。【0028】また、本発明は、上記で開示された組成物を含有したキット又は耐熱性DNA ポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとのための別々の保存容器を含有するキットを対象とする。【0029】他の概念において、本発明は、a) 耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されないように3’末端残基が修飾された少なくとも1種のプライマーと鋳型核酸とを含有した反応混合物を供給する工程、b) さらなる反応混合物成分を添加することなく、前記工程a)で得られた反応混合物の温度を上昇させることにより、該修飾を除去し、反応混合物を得る工程、及びc) 前記工程b)で得られた反応混合物中の鋳型核酸を増幅する工程を含む、鋳型核酸の増幅を行なう方法を対象とする。【0030】好ましくは、少なくとも1種のプライマーの3’末端残基は、耐熱性エキソヌクレアーゼにより除去される。より好ましくは、本発明の方法は、上記で開示された組成物を用いて行なわれるであろう。【0031】すなわち、本発明は、〔1〕 耐熱性DNA ポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとを含有してなる、核酸増幅反応を行なうための組成物、〔2〕 該エキソヌクレアーゼが、37℃〜72℃の温度でより高い活性であり、37℃より下の温度でより低い活性である、前記〔1〕記載の組成物、〔3〕 該耐熱性エキソヌクレアーゼが、エキソヌクレアーゼIII ホモログ、ポリメラーゼ活性がない変異DNA ポリメラーゼ、又は非変異DNA ポリメラーゼの50%未満まで低下したポリメラーゼ活性を有する変異DNA ポリメラーゼ、である、前記〔1〕又は〔2〕記載の組成物、〔4〕 増幅産物の検出用化合物をさらに含有してなる、前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の組成物、〔5〕 少なくとも1種のプライマーが、リン酸基、又はリン酸基を介して3’末端デオキシヌクレオチドに連結する化学基(moiety)、により、3’末端で修飾されたものである、前記〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の組成物、〔6〕 少なくとも1種のプライマーが、3’末端ジデオキシヌクレオチド残基を有する、前記〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の組成物、〔7〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の組成物を含有してなるキット、〔8〕 耐熱性DNA ポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとを含有してなるキット、〔9〕 a) 耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されないように3’末端残基が修飾された少なくとも1種のプライマーと鋳型核酸とを含有した反応混合物を供給する工程、b) さらなる反応混合物成分を添加することなく、前記工程a)で得られた反応混合物の温度を上昇させることにより、該修飾を除去し、反応混合物を得る工程、及びc) 工程b)で得られた反応混合物の鋳型核酸を増幅する工程を含む、核酸増幅方法、並びに〔10〕 少なくとも1種のプライマーの3’末端残基が、耐熱性エキソヌクレアーゼにより除去される、前記〔9〕記載の方法、に関する。【0032】【発明の実施の形態】本発明は、当該技術分野に公知の核酸増幅方法、特に、全ホットスタート法の問題を克服するための新たな概念のPCR 、特に、ホットスタートPCR を提供する。本発明は、第1に、少なくとも1種のプライマーの3’末端に化学修飾を導入することにより、低温でのプライマー伸長を妨げることができるということに基づく。典型的なPCR 伸長温度で利用しやすいプライマーを作製するために、前記概念は、外界温度以下で不活性であり、そのため、これらの温度では、修飾プライマーに影響を与えないままである耐熱性エキソヌクレアーゼの使用を含む。温度上昇により、前記耐熱性エキソヌクレアーゼは、活性になり、これにより、プライマーの3’修飾を除去することができ、そのため、該プライマーが、増幅反応自体に加わることを可能にする。【0033】好ましくは、このエキソヌクレアーゼ活性は、特に鋳型−プライマーハイブリッドなどの基質を認識する3’−5’エキソヌクレアーゼである。これは、大腸菌エキソヌクレアーゼIII 又は好ましい基質として5’突出を有する二本鎖DNA を認識し、特に、3’側から5’側への(3’−5’)方向における基質の陥没3’末端を消化することができる他の生物由来のホモログの場合である。【0034】第1の概念において、本発明は、耐熱性DNA ポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとを含有した核酸増幅反応を行なうための組成物を提供する。【0035】本発明の組成物は、下記成分:耐熱性DNA ポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとを含有するため、該組成物をPCRに用いる場合、増幅工程前自体だけでなく、サーモサイクル工程の間においても非特異的プライミングと非特異的プライマー伸長とを阻害することができるという優れた性質を発現する。また、本発明の組成物は、前記成分を含有するため、該組成物をPCRに用いる場合、非特異的にアニールしたプライマーの伸長の発生、該伸長による産物の生成を防ぐことができるという優れた性質を発現する。さらに、本発明の組成物によれば、キャリーオーバー汚染等の汚染を防ぐことができる。したがって、より特異的な核酸増幅ができるという優れた効果を発揮する。本発明の組成物は、ホットスタート核酸増幅法、具体的には、ホットスタートPCR における使用に好適である。【0036】第1の成分としての前記耐熱性ポリメラーゼは、いかなる種類のDNA 依存性DNA ポリメラーゼ又はRNA 依存性DNA ポリメラーゼ、好ましくは、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus) 由来Taq DNA ポリメラーゼであってもよい。具体的な態様において、耐熱性ポリメラーゼの混合物が用いられる。第1のポリメラーゼ Taq DNA ポリメラーゼが、高い伸長性(processivity)を提供し、第2の酵素が、プルーフリーディング活性を提供する〔例えば、ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)、No.1732641〕。【0037】第2の成分としての前記耐熱性エキソヌクレアーゼは、好ましくは、任意の耐熱性生物起源であってもよいエキソヌクレアーゼIII ホモログである。本発明に照らして、エキソヌクレアーゼIII ホモログは、5’突出を有する二本鎖DNA を基質として認識し、3’陥没末端からヌクレオチド残基を除去できる酵素として定義される。さらに、本発明に照らして、用語「耐熱性」は、70℃で、60分間のインキュベーション後、元の活性の50% を超える活性、好ましくは、80% を超える活性、より好ましくは90% を超える活性を維持する酵素として定義される。【0038】好ましくは、前記耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼは、37℃〜72℃の温度でより高い活性であり、37℃より下の温度で低い活性である。すなわち、37℃より下の任意の温度における前記酵素の酵素活性は、37℃〜72℃の任意の温度における酵素活性に比較して、いかなる場合でも低いものである。酵素の至適温度は、結果として、50℃〜85℃の範囲であろう。【0039】最近、Archaeoglobus fulgidus由来の耐熱性エキソヌクレアーゼIII ホモログ(Afu-ExoIII)が、開示されており〔欧州特許出願公開第1088891 号 (EP-A-1088891) 明細書〕、かかるAfu-ExoIIIは、特に、本発明のホットスタートプロトコールに適する。他の酵素に比べた前記酵素の使用の利点は:▲1▼前記酵素が、明らかに好ましくは、二本鎖DNA に活性であること、及び▲2▼前記酵素は、37℃〜72℃の温度で高い活性であるが、20℃〜37℃の温度で低い活性であることである。【0040】一方、前記耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼは、ポリメラーゼ活性を示さない変異DNA ポリメラーゼ又は実質的に低いポリメラーゼ活性を有する変異DNA ポリメラーゼを示すが、十分に高い3’−エキソヌクレアーゼ活性を示す変異DNA ポリメラーゼであってもよい。これに関連して、「低いDNA ポリメラーゼ活性」とは、DNA ポリメラーゼ活性を示す非変異DNA ポリメラーゼの活性の50% 未満まで低下したものであることを意味する。【0041】本発明の組成物の第3の成分は、前記耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する核酸増幅用プライマーである。好ましくは、両方の増幅プライマーが、DNA ポリメラーゼにより伸長され得ないような様式で修飾される。しかしながら、実施例で示すように、プライマーペアの一方のプライマーのみが3’末端で修飾される場合でも十分である。1を超える特異的増幅産物が同じ反応容器中で1つの試料から生成する多重用途のために、本発明は、増幅対象の各標的核酸の少なくとも1種のプライマーが修飾されることを必要とする。【0042】本発明において、少なくとも1種のプライマーが、リン酸基又はリン酸基を介して3’末端デオキシヌクレオチドに連結する化学基(moiety)により、3’末端で修飾される場合が好ましい。種々の異なる3’末端修飾を用いた結果から、耐熱性エキソヌクレアーゼIII 又はそのホモログが、オリゴヌクレオチドの3’末端においてリン酸基結合を切断することができると推論するのが妥当であると思われる。これに関して、リン酸基を介して結合したプライマーへの前記化学基(moiety)結合は、実質的に、反応の効率に影響を与えないものである。【0043】本発明において、リン酸基による修飾の別法として、プライマー伸長を妨げる他の化学基(moieties)が、プライマーの3’末端に付加される。前記化学基(moiety)は、ポリメラーゼによる伸長を妨げるヌクレオシド又はヌクレオシドアナログでありうる。しかしながら、エキソヌクレアーゼIII 酵素により攻撃され得る隣接のリン酸基があることが必須であるにすぎないので、3’ブロック部分に関する限定はない。【0044】例えば、3’末端残基は、ジデオキシヌクレオチドであってもよい。この場合、完全な3’末端ジデオキシヌクレオチド残基が、耐熱性エキソヌクレアーゼIII ホモログによりプライマーから切り離されることが有望であろう。また、これは、3’末端残基自体が、リン酸基に結合しない化学部分(chemical entity) で修飾され、それでもなお、オリゴヌクレオチドがDNA ポリメラーゼ反応により伸長され得ない本発明のさらに他の態様で生じるであろう。【0045】リン酸部分(moiety)における他の3’末端修飾としては、例えば、限定されないが、アルキルスペーサー、例えば、プロピルスペーサー、又は2’−tertブチルヌクレオシドなどが挙げられる。また、3’修飾は、1を超える修飾剤(modifier)からなりうる。【0046】3’末端修飾オリゴヌクレオチドプライマーの合成は、当該技術分野で公知の任意の方法で行なわれうる。リン酸基は、例えば、オリゴヌクレオチド合成のための開始マトリックスとして、特定の型の市販の管理された微細孔ガラス粒子〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号: 20-2900-xx)〕を用いることにより導入され得る。ジデオキシヌクレオチドは、末端トランスフェラーゼ酵素を用いる酵素反応により、又は市販の2’, 3’−ジデオキシCPG〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号: 20-2017-xx)〕を用いることにより、優先的に導入されうる。【0047】具体的な態様において、本発明の組成物は、リアルタイムPCR モニターに用いられてもよい。例えば、前記組成物は、増幅産物を検出するために、1以上の化合物、例えば、1以上の標識核酸ハイブリダイゼーションプローブをさらに含有してもよい。ここで前記標識として、例えば、蛍光標識などが挙げられる。【0048】一方、前記組成物は、蛍光二本鎖DNA 結合色素を含有してもよい。二本鎖増幅産物の量は、通常、分析対象の試料に元々存在する核酸の量を超えるので、二本鎖DNA に結合する場合に限り、適切な波長での励起において、蛍光の増強を示す二本鎖DNA 特異的色素を用いてもよい。好ましくは、例えば、SYBR Green I〔モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)〕などのPCR 反応の効率に影響を与えないこれらの色素のみを用いてもよい。【0049】蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブの使用に関して、異なる可能性がある。【0050】第1に、蛍光部分で標識され、その蛍光発光が同じプローブ上の消光化合物としても作用するであろう第2の標識により、消光されるものである一本鎖TaqManハイブリダイゼーションプローブを用いてもよい。PCR 反応のアニーリング工程の際、前記プローブは、その標的配列にハイブリダイズし、つづく、プライマーの伸長の際、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNA ポリメラーゼが、ハイブリダイゼーションプローブを、より小さな断片に消化し、蛍光部分が消光化合物から分離される。適切な励起の後、蛍光発光は、増幅産物の蓄積の指標としてモニターされうる〔米国特許第5,210,015 号明細書〕。【0051】第2に、Taq Man プローブと同様に、分子ビーコン(Molecular Beacon)オリゴヌクレオチドは、蛍光化合物及び分子の二次構造が互いに近傍にある消光化合物で標識される。標的DNA への結合の際、分子間水素結合が壊れ、プローブの一端に位置する蛍光化合物が、プローブの逆端に位置する消光化合物から分離する〔リザルディ(Lizardi) ら、米国特許第5,118,801 号明細書〕。【0052】第3に、増幅産物の一方の鎖の隣接するがオーバーラップしてない領域にハイブリダイズしうる、それぞれ蛍光部分で標識された2 つのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを用いてもよい。好ましくは、一方のオリゴヌクレオチドは、5’末端で標識され、別のオリゴヌクレオチドは、3’末端で標識される〔米国特許6,174,670 号明細書〕。標的DNA にハイブリダイズすると、2 つの蛍光標識が、近接な接触に至り、2 つの蛍光部分間の蛍光共鳴エネルギー転移が生じ得る。結果として、ハイブリダイゼーションは、ドナー部分の励起を介してモニターされ得、つづく第2のアクセプター部分の蛍光発光が測定されうる。類似の態様において、1つの適切に標識されたプライマーと共に、特異的なFRETペアとしても働くわずか1つの蛍光標識プローブを用いる〔バーナード(Bernard, P. S.)ら、Anal. Biochem. 255, 101-107, (1998) 〕。【0053】1若しくは複数のハイブリダイゼーションプローブの使用に基づくリアルタイムPCR 形式については、3’消化をさけるため、耐熱性エキソヌクレアーゼIII の存在が、1若しくは複数の検出プローブの3’末端の適切なブロック方法を必要とする。増幅プライマーとは異なり、ハイブリダイゼーションプローブは、PCR 反応の際に伸長されず、3’−5’方向での残基の除去がプローブを不活性化する。【0054】異なる適切なブロック方法が見出されている。例えば、プローブの3’末端における2 つの2’メトキシヌクレオシドの導入は、1若しくは複数のプローブのエキソヌクレアーゼIII 耐性をもたらす。対照的に、2’−tertブチルシリルヌクレオシドによる、2つの3’塩基のさらなる置換は、ヌクレアーゼ耐性の増加をもたらさない。したがって、2’修飾の場合、エキソヌクレアーゼ耐性の増加は、修飾ヌクレオチド残基が相補鎖とハイブリダイズすることができる場合に生じるに過ぎないということが妥当である。したがって、ハイブリダイゼーションに劇的に影響しない全ての2’修飾が、本発明の目的に適する。【0055】もちろん、プローブ安定性は、2’修飾に限定されるものではない。本発明に合致する別のアプローチは、オリゴヌクレオチド又は全体に若しくは部分的に修飾された骨格とのオリゴヌクレオチドキメラを使用することにある。当業者は、容易にアンチセンス技術から公知の異なる修飾を選択することができるであろう。例えば、ホスホチオエート又はメチルホスホネートなどの骨格修飾もヌクレアーゼ耐性の増加をもたらす。【0056】さらなる例示は、3’末端残基としてのCヌクレオシドアナログの使用である。Cヌクレオシドは、米国特許第6,174,998 号明細書に開示されている。【0057】また、本発明は、耐熱性 DNAポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとを含む組成物を含有したキットを対象とする。【0058】一方、本発明のキットは、耐熱性 DNAポリメラーゼと、耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、該耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されない修飾3’末端残基を有する少なくとも1種の核酸増幅用プライマーとのための別々の保存容器を含有してもよい。3つの前記成分のうちの2つが1つの保存容器内に保存される場合も本発明の範囲内である。【0059】また、これらのキットは、核酸増幅反応に適したさらなる緩衝液又は試薬、例えば、デオキシヌクレオシドトリホスフェートなどを含有してもよい。また、前記キットは、増幅産物の検出用試薬、例えば、二本鎖DNA 結合色素、例えば、SYBR GreenI 〔モレキュラープローブス(Molecular Probes)社製〕、又はオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを含んでもよい。【0060】他の概念において、本発明は、a) 耐熱性DNA ポリメラーゼにより伸長されないように3’末端残基が修飾された少なくとも1種のプライマーと鋳型核酸とを含有した反応混合物を供給する工程、b) さらなる反応混合物成分を添加することなく、前記工程a)で得られた反応混合物の温度を上昇させることにより、該修飾を除去し、反応混合物を得る工程、及びc) 前記工程b)で得られた反応混合物の鋳型核酸を増幅する工程を含む、核酸増幅方法、具体的には、鋳型核酸の増幅を行なう方法を対象とする。【0061】好ましくは、少なくとも1種のプライマーの3’末端残基は、耐熱性エキソヌクレアーゼにより除去される。最も好ましくは、本発明のかかる方法は、本発明の化合物を用いて行われてもよい。【0062】一方、3’末端残基と修飾との間のリンカーが熱に不安定である場合、該修飾の除去は、熱により誘導されうる。【0063】【実施例】下記実施例、参考文献、配列表及び図は、本発明の理解のたすけとして提供され、その範囲は、添付の請求項に述べられる。本発明の意図を逸脱することなく、手順に改変がなされることが理解されるであろう。【0064】実施例1 オリゴヌクレオチド合成オリゴヌクレオチド合成には、下記試薬:LightCycler Red 640 NHS エステル〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ (Roche Molecular Biochemicals) 社製、カタログ番号:2015161 〕LightCycler Fluorescein CPG 〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ (Roche Molecular Biochemicals) 社製、カタログ番号:3138178 〕3’ホスフェートCPG〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号:20-2900-xx〕C3プロピルスペーサー〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号:10-1913-xx- 〕2’OMe−Gホスホロアミダイト〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号:10-3121-xx〕2’OMe−C−ホスホロアミダイト〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号:10-3110-xx〕2’OMe−U−ホスホロアミダイト〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号:10-3130-xx〕及び2’3’ジデオキシC CPG〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号:20-2017-xx〕を用いた。【0065】DNA 合成機で、標準プロトコールに従って、オリゴヌクレオチド合成を行なった〔アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystens), モデルABI 394-08〕。合成スケールは、1.0 μmol であった。固体支持体は、グレン・リサーチ(Glen Research) から充填カラムで購入するか、あるいは、空の合成カラムに充填し〔グレン・リサーチ(Glen Research) 、カタログ番号:20-0030-00〕、カラムを対応する合成機の位置に取り付けた。標準3’ホスホロアミダイト([(MeO)2Tr]ib2Gd、[(MeO)2Tr]bz6A、[(MeO)2Tr]bz4Cd 、[(MeO)2Tr]Td))を用いた。合成をDNA 合成の標準プロトコールに従って行なった。【0066】プライマー及び3’ブロックプライマーを、「トリチル オフ」様式で合成した。脱保護は、25% NH3/H20 を用い、8時間、55℃で行なった。MonoQ 〔5.0 x 50 mm カラム、アマシャム・ファルマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)〕での精製を下記条件:緩衝液A:10mM水酸化ナトリウム/水、B :1M 塩化ナトリウムの10 mM 水酸化ナトリウム/水溶液、流速:1ml /分で30分、0% B〜100% Bで行なった。透析により脱塩を行なった。【0067】LightCycler Red 640 NHS エステルと共に、提供された添付文書の説明書にしたがって、LC-Red 640プローブを合成した。LightCycler fluorescein CPG と共に、提供された添付文書の説明書にしたがって、フルオレセインプローブを合成した。【0068】実施例2 3’−P −ブロックプライマーとAfu エキソヌクレアーゼIII とTaq DNA ポリメラーゼとを用いたExo-Start-PCR 誘導配列番号:1及び配列番号:2の非修飾プライマー又は配列番号:1及び2の3’−リン酸−ブロックプライマーを用いて、PCR を行ない、ヒトp53 遺伝子から2763bp断片を増幅した。リン酸修飾の導入は、実施例1にしたがって、当該技術分野に公知のように行なった。PCR 反応は、2.5 ユニットのTaq DNA ポリメラーゼ〔ロシュ・モレキュラー バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1435094〕と、38〜152 ngのA.fulgidusエキソデオキシリボヌクレアーゼ III〔Afu エキソヌクレアーゼIII(Afu-ExoIII) 〕〔欧州特許出願公開第1088891 号(EP-A-1088891)明細書〕添加又は無添加、200 ngのヒトゲノムDNA 〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1691112〕と、各0.4 μM の前記プライマーと、200 μM dNTP〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1969064〕と、1.5 mM MgCl2、50 mM Tris-HCl、pH 8.9 (25℃) と22 mM (NH4)2SO4 とで、最終反応容量50μl に設定して行なった。【0069】PCR 増幅を、下記サーマルプロファイル:94℃で2 分間を1 サイクル、94℃で10秒間と55℃で30秒間と72℃で4 分間とを35サイクル、及び72℃で7 分間を1 サイクルで行なった。【0070】対照として、前記と同じ配列であるが非ブロックのプライマーを用いて、PCR を行なった。全反応を、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製Block Cycler 9600 で行なった。サーモサイクルプロトコールの終了後、混合物に10μl 停止溶液を添加し、得られた各混合物 25μl ずつを、1%アガロースゲルで分離した。【0071】図1に示されるように、Afu-ExoIIIの非存在下では、レーン2及び7に示すように、PCR 産物が、検出できず、Afu-ExoIIIの存在下では、レーン3〜6、8〜11に示すように、特異的PCR 産物が得られる。さらに、本発明の3’ブロックプライマーの使用は、レーン8〜11とレーン3〜6との比較によりわかるように、産物の収率の実質的な増加と、プライマー二量体の望ましい欠損とをもたらす。【0072】実施例3 ExoIII誘導ステップPCR におけるTaq DNA ポリメラーゼと他のタイプI ポリメラーゼとの交換リン酸基により3’末端でブロックされた同じプライマーを用い、実施例1に記載された最終濃度でPCR を行なった。本実験におけるROCHE Taq ポリメラーゼを、Taq DNA ポリメラーゼのN末端欠失変異体AdvanTaqTM〔クローンテック(Clontech)社製、No. 8432-1〕及びTaq DNA ポリメラーゼの別のN末端欠失変異体KlenTaq1TM〔エービー・ペプチド・インコーポレーティッド(Ab Peptides, Inc.), No. 1001 〕と比較した。ROCHE Taq についてのPCR 混合物成分は、実施例1で記載された通りであった。他の2 つのポリメラーゼでの反応は、特別出荷反応緩衝液及び推薦された酵素容量で、20〜50 ng のA.fulgidusエキソデオキシリボヌクレアーゼIII 〔Afu エキソヌクレアーゼIII(Afu-ExoIII) 〕の添加又は無添加で、設定した。【0073】PCR 増幅(50 μl)を、下記サーマルプロファイル:94℃で2 分間を1 サイクル、94℃で10秒間と55℃で30秒間と68℃で4 分間とを35サイクル、及び68℃で7 分間を1 サイクルで行なった。【0074】全反応を、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製Block Cycler 9600 で行なった。サーモサイクルプロトコールの終了後、混合物に10μl 停止溶液を添加し、得られた各混合物 25μl ずつを、1%アガロースゲルで分離した。【0075】図2に示されるように、ブロックプライマーを、A.fulgidusエキソデオキシリボヌクレアーゼIII 〔Afu エキソヌクレアーゼIII(Afu-ExoIII) 〕と組合せて使用することにより、異なるタイプのTaq DNA ポリメラーゼを用いた全てのタイプのPCR 反応に適用可能である。【0076】実施例4 3’−ddC −ブロックプライマーと AfuエキソヌクレアーゼIII とTaq DNA ポリメラーゼとによるPCR 誘導配列番号:3 及び配列番号:4 のプライマーを用いてPCR を行ない、ヒトp53 遺伝子から2767bp断片を増幅した。配列番号:3 及び配列番号:4 のオリゴヌクレオチドは、実施例1などで記載されたように、ddCMP をさらに添加することにより、化学的にブロックされた。【0077】PCR 反応を、2.5 ユニット Taq DNA ポリメラーゼ〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)、No.1435094〕、20〜100 ng A.fulgidus エキソデオキシリボヌクレアーゼIII 〔Afu エキソヌクレアーゼIII(Afu-ExoIII) 〕〔欧州特許出願公開第1088891 号(EP-A-1088891)明細書〕の添加又は無添加で設定した。反応混合物は、さらに、100 ngのヒトゲノムDNA 〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1691112〕と、各0.4 μM の前記プライマーと、各200 μM のdNTP〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1969064〕と1.25 mM MgCl2 と、10 mM Tris-HCl, pH 8.5 (25℃) と17.5 mM (NH4)2SO4 と、2.5%(v/v) Tween 20と1.5% (v/v) DMSO とを含んだ。【0078】PCR 増幅(50 μl)を、下記サーマルプロファイル:94℃で2 分間を1 サイクル、94℃で10秒間と62℃で30秒間と68℃で4 分間とを35サイクル、及び68℃で7 分間を1 サイクルで行なった。【0079】また、本実験において、Pyrococcus woesii のB 型ポリメラーゼの3’−5’ヌクレアーゼ活性との組合せでTaq DNA ポリメラーゼを含有したExpand High Fidelityポリメラーゼ〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1732641〕について、増幅反応前に、ddC −ブロックプライマーの除去能をチェックした。全反応を、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製Block Cycler 9600 で行なった。サーモサイクルプロトコールの終了後、反応産物に10μl 停止溶液を添加し、得られた各混合物 25μl ずつを、1%アガロースゲルで分離した。【0080】図3 に示された結果により、Taq DNA ポリメラーゼ単独では、レーン2に示すように、プライマーのブロックされた塩基を除去し、伸長を開始することができなかった。同様に、HighFidelity System のエキソヌクレアーゼは、レーン8に示すように、この除去を触媒できなかった。対照的に、レーン4〜7に示すように、Taq ポリメラーゼとAfu-ExoIIIとの平衡型ミックスは、増幅をもたらす。さらなるエキソヌクレアーゼIII 活性を伴う耐熱性DNA ポリメラーゼは、エキソヌクレアーゼIII 活性を進めるのみである酵素の代わりに用いられるべき場合、該耐熱性酵素をそのポリメラーゼ活性が失われるか、少なくとも顕著に減少するように用いることが必要であると結論づけられる。【0081】実施例5 3’−フルオレセイン−ブロックプライマーとエキソヌクレアーゼIII とを用いたPCR配列番号:5 及び配列番号:6のヒトApoE遺伝子の断片を増幅するプライマーを用いて、PCR を行なった。なお、前記配列番号:6のプライマーは、実施例1 で開示された標準プロトコールにしたがい、3’末端をフルオレセイン部分で標識したものである。PCR 断片のサイズは、96bpである。一方、同じ標的遺伝子の増幅を、配列番号:7及び配列番号:8 のプライマーを用いて行なった。なお、前記配列番号:8 のプライマーは、実施例1で開示された標準プロトコールにしたがい、3’末端をフルオレセイン部分で標識したものであった。PCR 断片のサイズは、109bp である。【0082】両方の場合において、PCR 反応は、2 μl LightCycler-DNA Master SYBR GreenI〔ロシュ モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.2015099〕と、4 mM MgCl2と、各0.5 μM プライマーと、10% DMSOと、200 ngのヒトゲノムDNA 〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1691112〕と、76〜152 ngのA. fulgidus エキソデオキシリボヌクレアーゼIII 〔Afu エキソヌクレアーゼIII(Afu-ExoIII) 〕の添加又は無添加で設定した。蒸留水で、最終反応容量20μl に調整した。【0083】PCR 条件は、95℃で2 分間の変性を1 サイクル、95℃で0 秒の変性と60℃で10秒間のアニーリングと72℃で10秒間の伸長とを45サイクル、及び68℃で7 分間を1 サイクルである。【0084】全反応を、製造者のユーザーマニュアルの説明にしたがってプログラムされたLightCycler[ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)社製、No. 2011468]で行なった。増幅反応の終了後、反応産物に5 μl 停止溶液を添加し、図4に示されるように、得られた各混合物を、3% MS アガロースゲル〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1816586〕で解析した。【0085】使用されたプライマー対により、増幅産物は、エキソヌクレアーゼIII (レーン3、8)の非存在下で得られず、一方、増幅産物は、Afu-ExoIII (レーン4〜6、9〜11) の存在下に生じ、Archaeoglogus fulgidusエキソヌクレアーゼIII 〔Afu エキソヌクレアーゼIII(Afu-ExoIII) 〕が、異なるプライマーの3’末端からフルオレセイン部分を除去することができ、それゆえにPCR 反応を生じさせることが示唆された。【0086】実施例6 Afu-Exo III の温度依存性6連のパラレルなアッセイにおいて、2 μl Afu-ExoIII (0.5 mg/ml) を、Expand HiFi 緩衝液〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)社製〕中1 μg のBamHI 開環状プラスミドpBR322を含む100 μl の反応混合物に添加した。試料を、60分間、20℃、37℃、50℃、60℃、70℃及び80℃のそれぞれでインキュベートした。ついで、5 μl の停止溶液を、インキュベーション混合物に添加し、ついで、得られた混合物を1%アガロースゲルで解析した。20℃及び37℃でのインキュベーションの場合、分解が観察されなかった。プラスミドの部分分解は、50℃又は60℃でのインキュベーションの場合に観察された。プラスミドの完全分解は、70℃及び80℃でのインキュベーションの場合に観察され、Afu-ExoIIIが、耐熱性酵素であり、37℃よりはるかに上の至適温度を有することを示唆した。【0087】実施例7 ハイブリダイゼーションプローブ検出を用いるAfu-ExoIIIによるリアルタイムPCRリアルタイムPCR におけるPCR アンプリコンの検出及び定量のため、色素標識ブロックハイブリダイゼーションプローブは、PCR の際、インタクトなままであることが必須であり、すなわち、エキソヌクレアーゼIII は、プローブのブロック/標識3’−末端を切断することができないであろう。この目的のために、実施例1に開示されたように当該技術分野で公知の方法にしたがって、3’−末端にさらなる修飾を有するハイブリダイゼーションプローブをデザインし、合成できるようになった。β−アクチン遺伝子由来の断片を増幅するための配列番号:9及び配列番号:10のプライマーを用いた。また、実施例1にしたがって、FRET−ハイブリダイゼーションプローブを調製した。アクセプタープローブとして、2 つの3’末端ヌクレオシドが、2’メトキシヌクレオシドである配列番号:11の5’LCRed-640 標識オリゴヌクレオチドを調製した。また、最後の3’末端残基は、3' 末端でプロピルスペーサーを保持した。ドナープローブとして、2 つの3' 末端残基が2’−メトキシヌクレオシド残基である配列番号:12の3' フルオレセイン標識オリゴヌクレオチドを用いた。【0088】PCR 反応は、2 μl LightCycler-10x DNA Master Hybridisation Probe〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.20150102 〕と、3mM MgCl2 と、各0.5 μM プライマーと、各0.2 μM プローブと、200 ngのヒトゲノムDNA 〔ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(ROCHE Molecular Biochemicals)社製、No.1691112〕と、50 ng のA. fulgidus エキソデオキシリボヌクレアーゼIII 〔Afu エキソヌクレアーゼIII(Afu-ExoIII) 〕の添加又は無添加で設定した。蒸留水で最終反応容量20μl に調整した。全反応を、製造者のユーザーマニュアルの説明にしたがってプログラムされたLightCycler 〔ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics) 社製、No. 2011468 〕で行なった。【0089】PCR 条件は、95℃で2 分間の変性を1 サイクル、95℃で0 秒の変性と60℃で10秒間のアニーリングと72℃で10秒間の伸長とを45サイクルである。【0090】正しいアンプリコンの同定は、融解曲線解析:変性95℃で30秒、アニーリング50℃で15秒、加熱95℃で0 秒、冷却40℃で30秒により検出された。【0091】データ解析により、エキソヌクレアーゼ IIIの存在下、適切に修飾したハイブリダイゼーションプローブを用いるDNA 増幅、検出及び定量の可能性が示された。【0092】参考文献のリストBernad, A., et al., Cell 59 (1989) 219-228Bernard, P. 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Bacteriol., 179, (1997) 7135-7155Uemori, T., et al., Nucleic Acids Res., 21, (1993) 259-265EP 0 258 017EP 0 455 430EP 0 547 359EP 0 547 920EP 0 693 078EP 0 701 000EP 0 744 470EP-A-1088891US 4,889,818US 5,118,801US 5,210,015US 5,322,785US 5,352,778US 5,436,149US 5,491,086US 5,545,552US 5,677,152US 5,693,502US 5,792,607US 5,985,619US 6,174,670US 6,174,998WO 92/03556WO 92/09689WO 95/16028WO 96/10640WO 96/22389WO 96/41014WO 97/35988WO 97/46706WO 98/14590【0093】【発明の効果】本発明の組成物によれば、増幅工程前自体だけでなく、サーモサイクル工程の間においても非特異的プライミングとプライマー伸長とを阻害することができ、非特異的にアニールしたプライマーの伸長による産物の生成を防ぎ、キャリーオーバー汚染等の汚染を防ぎ、かつより特異的な核酸増幅ができるという優れた効果を奏する。また、本発明の核酸増幅方法によれば、増幅工程前自体だけでなく、サーモサイクル工程の間においても非特異的プライミングとプライマー伸長とを阻害することができ、非特異的にアニールしたプライマーの伸長の発生を防ぎ、キャリーオーバー汚染等の汚染を防ぎ、かつより特異的な核酸増幅ができるという優れた効果を奏する。【0094】【配列表】【0095】【0096】【0097】【0098】【0099】【0100】【0101】【0102】【0103】【0104】【0105】【図面の簡単な説明】【図1】図1 は、3' −P −ブロックプライマー、Afu エキソヌクレアーゼIII 及びTaq DNA ポリメラーゼによるExo-Start-PCR 誘導を調べた結果を示す図である。図中、レーン1は、Roche MWM/II、レーン2は、非ブロックプライマーと2.5 UTaqとの反応系の産物、レーン3は、非ブロックプライマーと2.5 U Taq と38 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン4は、非ブロックプライマーと2.5 U Taq と76 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン5は、非ブロックプライマーと2.5 U Taq と101 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン6は、非ブロックプライマーと2.5 U Taq と152 ng Afu-ExoIII との反応系、レーン7は、ブロックプライマーと2.5 U Taq との反応系の産物、レーン8は、ブロックプライマーと2.5 U Taq と38 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン9は、ブロックプライマーと2.5 U Taq と76 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン10は、ブロックプライマーと2.5 U Taq と101 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン11は、ブロックプライマーと2.5 U Taq と152 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン12は、Roche MWM/IIのそれぞれの電気泳動パターンを示す。【図2】図2 は、3' −P −ブロックプライマーとAfu −エキソヌクレアーゼIII と耐熱性 DNAポリメラーゼとによるExo −Start −PCR 誘導を調べた結果を示す図である。図中、レーン1は、Roche MWM VII 、レーン2は、2.5 U ROCHE Taq の反応系の産物、レーン3は、2.5 U ROCHE Taq と50 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン4は、2.5 U ROCHE Taq と33 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン5は、2.5 U ROCHE Taq と25 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン6は、2.5 U ROCHE Taq と20 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン7は、1 μl AdvanTaq Taqの反応系の産物、レーン8は、1 μl AdvanTaqと50 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン9は、1 μl AdvanTaqと33 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン10は、1 μl AdvanTaqと25 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン11は、1 μl AdvanTaqと20 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン12は、0.5 μl Klen Taq1 の反応系の産物、レーン13は、0.5 μl Klen Taq1 と50 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン14は、0.5 μl Klen Taq1 と33 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン15は、0.5 μl Klen Taq1 と25 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン16は、0.5 μl Klen Taq1 と20 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン17は、Roche MWM VII のそれぞれの電気泳動パターンを示す。【図3】3' −ddC −ブロックプライマーとAfu −エキソヌクレアーゼIII とTaq DNA ポリメラーゼとによるPCR 誘導を調べた結果を示す図である。図中、レーン1は、Roche MWM VII 、レーン2は、2.5 U ROCHE Taq の反応系の産物、レーン3は、2.5 U ROCHE Taq と100 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン4は、2.5 U ROCHE Taq と50 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン5は、2.5 U ROCHE Taq と33 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン6は、2.5 U ROCHE Taq と25 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン7は、2.5 U ROCHE Taq と20 ng Afu −ExoIIIとの反応系の産物、レーン8は、ExpandHiFi緩衝液中2.6 U ExpandHighFidelity酵素の反応系の産物、レーン9は、Roche MWM VII のそれぞれの電気泳動パターンを示す。【図4】図4は、3' −フルオレセイン−ブロックプライマーとエキソヌクレアーゼIII によるPCR 誘導を調べた結果を示す図である。図中、レーン3〜7における増幅は、配列番号:5( 非ブロック) 及び配列番号:6( ブロック) のプライマーを用いて行なわれた。また、図中、レーン8〜12における増幅は、配列番号:7( 非ブロック) 及び配列番号:8( ブロック) のプライマーを用いて行なわれた。図中、レーン1は、Roche MWM VI、レーン2は、Roche MWM V 、レーン3は、1.6 U Taq の反応系の産物、レーン4は、1.6 U Taq と76 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン5は、1.6 U Taq と101 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン6は、1.6 U Taq と152 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン7は、対照(DNAとAfu-Exo III とを含有しないPCR ミックス) との反応系の産物、レーン8は、1.6 U Taq の反応系の産物、レーン9は、1.6 U Taq と76 ng Afu-ExoIIIとの反応系の産物、レーン10は、1.6 U Taq と101 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン11は、1.6 U Taq と152 ng Afu-ExoIII との反応系の産物、レーン12は、対照(DNAとAfu-ExoIIIとを含有しないPCR ミックス) 、レーン13は、Roche MWM V 、レーン14は、Roche MWM VIのそれぞれの電気泳動パターンを示す。 1)耐熱性DNA ポリメラーゼと、2)ポリメラーゼ活性を持たないエキソヌクレアーゼIII ホモログ、ポリメラーゼ活性がない変異DNA ポリメラーゼ、及び非変異DNA ポリメラーゼの50%未満まで低下したポリメラーゼ活性を有する変異DNA ポリメラーゼからなる群より選ばれた耐熱性エキソヌクレアーゼであって、37℃よりも下の温度において、37℃〜72℃の温度での3’−5’エキソヌクレアーゼ活性に比べ、より低い3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示す耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、3)3’末端がリン酸基で修飾されてなるプライマー、3’末端がジデオキシヌクレオチド残基であるプライマー、及び3’末端がアルキルスペーサーで修飾されてなるプライマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の核酸増幅用プライマーと、を含有してなる、ホットスタート核酸増幅反応を行なうための組成物。 1)耐熱性DNA ポリメラーゼと、2)ポリメラーゼ活性を持たないエキソヌクレアーゼIII ホモログ、ポリメラーゼ活性がない変異DNA ポリメラーゼ、及び非変異DNA ポリメラーゼの50%未満まで低下したポリメラーゼ活性を有する変異DNA ポリメラーゼからなる群より選ばれた耐熱性エキソヌクレアーゼであって、37℃よりも下の温度において、37℃〜72℃の温度での3’−5’エキソヌクレアーゼ活性に比べ、より低い3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示す耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、3)3’末端がリン酸基で修飾されてなるプライマー、3’末端がジデオキシヌクレオチド残基であるプライマー、及び3’末端がアルキルスペーサーで修飾されてなるプライマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の核酸増幅用プライマーと、を含有してなる、ホットスタート核酸増幅用キット。 a)1)耐熱性DNA ポリメラーゼと、2)ポリメラーゼ活性を持たないエキソヌクレアーゼIII ホモログ、ポリメラーゼ活性がない変異DNA ポリメラーゼ、及び非変異DNA ポリメラーゼの50%未満まで低下したポリメラーゼ活性を有する変異DNA ポリメラーゼからなる群より選ばれた耐熱性エキソヌクレアーゼであって、37℃よりも下の温度において、37℃〜72℃の温度での3’−5’エキソヌクレアーゼ活性に比べ、より低い3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示す耐熱性3’−5’エキソヌクレアーゼと、3)3’末端がリン酸基で修飾されてなるプライマー、3’末端がジデオキシヌクレオチド残基であるプライマー、及び3’末端がアルキルスペーサーで修飾されてなるプライマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の核酸増幅用プライマーと、4)鋳型核酸と、を含有した反応混合物を供給する工程、b) さらなる反応混合物成分を添加することなく、前記工程a)で得られた反応混合物の温度を上昇させることにより、該プライマーの修飾を除去し、反応混合物を得る工程、及びc) 前記工程b)で得られた反応混合物の鋳型核酸を増幅する工程を含む、ホットスタート核酸増幅方法。


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