生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アミノ酸の分析方法
出願番号:2002202285
年次:2004
IPC分類:7,G01N30/88,G01N21/33,G01N21/77,G01N30/06,G01N30/14,G01N30/74,G01N33/02


特許情報キャッシュ

原田 勝寿 早川 和仁 木村 雅行 牧野 孝 JP 2004045174 公開特許公報(A) 20040212 2002202285 20020711 アミノ酸の分析方法 株式会社ヤクルト本社 000006884 佐藤 正年 100092082 佐藤 年哉 100099586 原田 勝寿 早川 和仁 木村 雅行 牧野 孝 7 G01N30/88 G01N21/33 G01N21/77 G01N30/06 G01N30/14 G01N30/74 G01N33/02 JP G01N30/88 F G01N21/33 G01N21/77 Z G01N30/06 E G01N30/14 A G01N30/74 E G01N33/02 6 OL 14 2G054 2G059 2G054AA10 2G054BA01 2G054BB04 2G054CA16 2G054CA21 2G054CD01 2G054CD04 2G054EA04 2G054EB01 2G054GA02 2G054JA06 2G059AA01 2G059BB04 2G059BB11 2G059CC16 2G059DD02 2G059DD03 2G059DD04 2G059DD16 2G059EE01 2G059FF12 2G059HH03 2G059HH06 2G059MM01 2G059MM04 2G059MM12 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、アミノ酸を含む食品等から標的とするアミノ酸を定量する方法に関し、特に機能性を高めるために調整された食品(特定保健用食品)の有効成分の含有量を簡便・迅速・正確に測定する定量方法に関するものである。【0002】【従来の技術】アミノ酸はタンパク合成に必要な成分であり、重要な栄養素であるため、古くからその研究が進められており、最近では様々な生理効果も見出されている。また、アミノ酸が数個結合したペプチド類についても同様に研究が進められており、これらの機能性として、例えば、GABA(γ−アミノ酪酸)、ラクトトリペプチドの血圧降下作用やグロビン蛋白分解物(オリゴペプチド)の食後中性脂肪上昇抑制、分岐鎖アミノ酸の疲労回復力の向上作用、グルタミン及びアルギニンの免疫力の向上作用等が報告されている。【0003】近年、生活習慣病の予防や食生活の質的向上を目的とした機能性食品が数多く開発され、特定保健用食品や保健機能食品等として市販されており、上記アミノ酸、ペプチドには、このような食品類の有効成分(機能性成分)となっているものもある。【0004】機能性を有する成分を食品、医薬品等として上市する際には、その有効量を設定し製品中の含有量を保証する必要がある。このため、効果の検証や含有量の調査、あるいは、製品中における含有量の保証(確認)を行うための定量分析方法を確立することが望まれている。【0005】一般に食品中のアミノ酸の定量方法としては、蛍光誘導体化を組み合わせたHPLC法が使用されている。代表的な分析法であるo−フタルアルデヒド(以下、OPAという)を用いた HPLC法では、高感度に定量が可能である反面、自動分析を行うためには反応装置等、専用の装置が必要であり、また誘導体化物が不安定であることから、定量精度に問題が生じたりしている。【0006】また、誘導体化(反応)試薬として使用するチオールアルキル試薬が独特の臭気を持つことから、実験環境にしばしば影響を与えている。他方、安定した誘導体化を得る方法としては、AQC(6−aminoquinolyl−N−hydroxysuccinimidyl carbamate)やDNC(5−Dimethyl− aminonaphtalene−1−Sulfonyl Chloride:Dansyl Chloride)或いはDBC(4−Dimethyl− aminoazobenzene−4’−sulfonyl Chloride:Dabsyl Chloride)などの試薬を利用した方法が使用されているが、反応試薬が高価であったり、反応時の温度が高温なため、別途反応槽を設置する必要があるなどの問題があった。また、高感度であるがゆえに、試料を高倍率で希釈しなければならず、操作が煩雑であった。【0007】上記、製品中における機能性成分含量の確認試験等は、通常、製造現場において行われるため、これら問題点の改善された簡便な定量方法を確立することが望まれている。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、機能性成分、すなわちアミノ酸、ペプチド類を製造現場等でも容易に検出・定量できる、簡便・迅速・安価かつ高精度な定量分析方法を得ることを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】請求項1に記載された発明に係るアミノ酸の分析方法は、アミノ酸を含有する組成物中のアミノ酸を検出、定量する方法であって、チオールアルキルを含まない誘導体化試薬と組成物中のアミノ酸とを反応させ、得られた紫外吸収体の紫外線吸収強度を測定するものである。【0010】請求項2に記載された発明に係るアミノ酸の分析方法は、請求項1に記載の紫外線吸収強度を測定する前の前工程として、紫外吸収体を液体クロマトグラフィーにて分離する工程を具備するものである。【0011】請求項3に記載された発明に係るアミノ酸の分析方法は、請求項1又は2に記載の誘導体化試薬に用いる反応試薬が、o−フタルアルデヒドであるものである。【0012】請求項4に記載された発明に係るアミノ酸の分析方法は、請求項1〜3の何れかに記載の誘導体化試薬を50%以上のアルコール溶液として用いるものである。【0013】請求項5に記載された発明に係るアミノ酸の分析方法は、請求項1〜4の何れかに記載のアミノ酸がγ−アミノ酪酸であるものである。【0014】請求項6に記載された発明に係るアミノ酸の分析方法は、請求項1〜5の何れかに記載の前工程として、組成物中の高分子物質を除去する工程を具備するものである。【0015】【発明の実施の形態】本発明においては、アミノ酸を含有する組成物中のアミノ酸に紫外吸収を有する反応物を得るための誘導体化試薬を反応させることにより得られ、構造中にチオールアルキルを含まない誘導体が、充分な安定を有していること、そしてこの誘導体の紫外線吸収強度を測定することで、簡便、迅速かつ高精度にアミノ酸またはペプチドを定量できる。【0016】即ち、本発明は、アミノ酸を含有する組成物中のアミノ酸を検出、定量する方法であって、誘導体化試薬と組成物中のアミノ酸とを反応させ、得られた紫外吸収体の紫外線吸収強度を測定するものである。【0017】また、本発明は、誘導体化試薬に用いる反応試薬として、o−フタルアルデヒドであることを特徴とする上記のアミノ酸の検出・定量方法を提供するものである。【0018】また、意外にも、前記反応時において、誘導体化試薬を50重量%以上のアルコール溶液として用いることにより、検出感度が顕著に増加することを見出した。即ち、本発明は、誘導体化試薬を50重量%以上のアルコール溶液として用いることを特徴とする上記のアミノ酸の検出・定量方法を提供するものである。【0019】更にまた、本発明は、アミノ酸がγ−アミノ酪酸であることを特徴とする上記のアミノ酸の検出・定量方法をも提供するものである。【0020】また、本発明は、紫外線吸収強度を測定する前の前工程として、紫外吸収体を液体クロマトグラフィーにて分離する工程を具備することを特徴とする上記のアミノ酸の検出・定量方法を提供するものである。【0021】本発明において、検出、定量の対象となるアミノ酸は特に限定されないが、グリシン、アラニン、ロイシン、GABA、α−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸等、一級アミノ酸を対象とした場合に、検出感度が高いため好ましく、特にGABAを対象とすることが好ましい。また、ペプチドとしては、アミノ酸数が2〜10個結合したものを対象として用いることができ、例えばラクトトリペプチド、グロビン蛋白分解物等が挙げられる。【0022】アミノ酸又はペプチド(以下両者をあわせてアミノ酸等ともいう)を含有する組成物も特に限定されず、牛乳、豆乳、発酵乳、果汁飲料、清涼飲料水、ゼリー、菓子等の飲食品や、医薬品、化粧品等いずれも好適に使用し得る。中でも、発酵乳、果汁飲料、清涼飲料水等の多くの成分(糖質、タンパク質、食物繊維等)が混在する中から対象とするアミノ酸あるいはペプチドを検出する際に、本発明の定量方法を用いれば、迅速且つ簡便に検出、定量を行えるため好ましく、特に発酵乳の工程管理等、迅速な分析が要求される場合の定量に用いることが好ましい。【0023】組成物としては、簡便かつ正確な定量のためには、対象とするアミノ酸等を100ng/mL以上、特に1μg/mL〜100μg/mL含むものを用いることが好ましい。100ng/mL未満では、再現性の高い定量が困難であり、100μg/mL以上では、検出、定量の前処理として行う希釈が煩雑なためである。【0024】本発明においては、まず、アミノ酸等を含む組成物をイオン交換水(または蒸留水)により希釈する。この時、再現性の高い定量を保つため、アミノ酸等の濃度は1〜100μg/mLとなるように希釈するのが望ましい。また、組成物が、発酵乳等固形物や不溶物を含むものである場合や、タンパク質等の高分子成分が存在する場合には、遠心分離(例えば4℃、12000G、20分)、限外濾過等の手段により、これらを予め除去しておくことが好ましい。これらの成分の残存は、後工程である高速液体クロマトグラフィーにおいて使用するカラムに残留し、カラム劣化の問題を起こすためである。なお、限外濾過膜としては、分画分子量10,000以上の高分子物質を除去するものを用いることが、効率性の点から好ましい。得られた希釈液は、0.45μm程度のフィルターで濾過し、調製液とする。【0025】次いで、得られた調製液を少量とり、これに誘導体化試薬を加え、攪拌、振とう等により混合し、反応させ、紫外誘導体を得る。ここで、誘導体化試薬とは、紫外吸収を有し、アミノ酸またはペプチドのアミノ基と結合能を有する物質(反応試薬)を溶媒に溶解したものである。反応試薬がo−フタルアルデヒドである場合、誘導体化試薬中にチオールアルキルを添加すると、チオールアルキルが結合した蛍光誘導体が生成するが、同生成物は安定性が低く、蛍光強度のみならず紫外強度が経時的に低下してしまうため、チオールアルキルを本発明の誘導体化試薬として用いることはできないのである。例えば、チオールアルキルの一種である2−メルカプトエタノールは、アミノ酸等を分析する際の蛍光誘導体生成時に用いられているが、これを用いて得られる反応生成物は、イソインドール環の1位の炭素に結合したチオールアルキルが不安定であり、室温下でチオールアルキルの脱離が容易に生じ、構造的に不安定となってしまう。【0026】誘導体化試薬の調製に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類やアセトン等があげられ、反応効率の点から水性溶媒を用いることが好ましく、特にアルコール類を用いることが好ましく、メタノールが最も好ましい。また、誘導体化試薬に用いる反応試薬としては、o−フタルアルデヒド(OPA )が好ましい。【0027】また、アルコールを用いる場合、その濃度は50%以上とすることが、反応効率や検出感度から好ましく、特に50%〜80%、更に75%〜80%が好ましい。反応試薬および誘導体の溶解性はアルコール濃度に比例すること、内標比は20〜80%の間で一定であることから、 OPA反応試薬のアルコール濃度が高いほど、誘導体化反応の反応性は高くなり、また、95%のアルコール濃度では加えている50mMほう酸緩衝液の一部が沈殿し、反応時のpH変化による反応性の低下が起こり、ピーク面積値が低下するためである。【0028】通常、これら溶媒は20%以下の濃度で使用されているが、本発明の方法においては、意外にも溶媒濃度が高濃度の領域で良い効果が得られ、特に、誘導体化試薬( OPA反応試薬)の溶媒としてメタノールを用い、その濃度を75%〜80%とした場合に特に優れていた。より具体的には、80%メタノールで反応試薬を溶解後、50mMホウ酸緩衝液:pH10.5を加えた誘導体化試薬とした場合に良好な反応効率、検出感度を得ることができた。【0029】誘導体化試薬のpHは、反応効率の点から反応時のpHを 9.5〜10.5とすることが望ましく、更に、pH10.0が最も好ましい。緩衝液の種類としては、pH9〜11の範囲で緩衝作用を有するものであれば特に限定されず、ホウ酸緩衝液や炭酸緩衝液等が使用可能である。緩衝液濃度は広範な食品に対応するため50mM程度が望ましいが、反応時の調製液のpHが10.0程度であれば、緩衝液濃度は特にこの濃度に固定されるものではない。【0030】調製液と反応試薬の混合比は特に限定されないが、反応効率を良くするためには、調整液5〜1に対し、反応試薬1の割合で反応するのが望ましく、特に1:1が好ましい。【0031】また、誘導体化反応時の反応試薬濃度は、対象とするアミノ酸に対し、10〜5000倍程度高濃度が望ましく、特に100 〜1000倍程度とすることが反応効率の点から好ましい。反応試薬の濃度が高くなるにつれて、後工程である紫外線吸収測定時のピーク面積は増加するが、濃度が高すぎると試薬が溶解し難く、沈殿物が生じてしまうためである。【0032】また、定量精度を向上させるには内部標準物質を使用することが最も望ましく、被験試料に含有せず、分析対象物質に構造が類似した物質を用いるのが望ましい。GABA分析においては、5−アミノ吉草酸やα−アミノ酪酸等が最適である。【0033】試薬誘導体化の反応時間は、ピーク面積値及び内標比が一定値を示し、安定する10分〜30分とすることが好ましく、特に簡便性や再現性を考慮すると反応時間は15分〜20分が好ましい。反応温度は、室温程度でよいが、室温が安定しない場合は反応効率に差が生じることから、20℃〜50℃、特に30℃〜50℃の範囲で加温することが最も好ましい。【0034】さらに、反応再現性の点から調製液に誘導体化試薬を加えた時の振とうは重要である。最低でも20秒以上、ボルテックスミキサー等を用いて激しく攪拌することが望ましく、30秒以上攪拌することが最も望ましい。【0035】本発明においては、次いで、反応後の組成物中から、試薬とアミノ酸等の反応生成物(紫外誘導体)の紫外吸収強度を測定し、アミノ酸、ペプチドの定量を行う。紫外吸収の測定は、紫外吸収体を分離する前工程を経てから行うことが好ましく、例えば紫線吸収検出器を使用した高速液体クロマトグラフ装置で分析し、同様の方法にて紫外誘導体化した標準品の検量線からこれを定量すればよい。液体クロマトグラフィー(HPLC)の条件は特に制限されず通常用いられているものを使用できる。【0036】分離に使用する分析カラムは、他の成分の妨害を防ぎ、分離条件設定の容易さ等の理由からオクタデシルシリカゲル等の充填剤を用いた逆送系充填カラムの使用が好ましく、中でも充填剤としてオクタデシルシリカカラム(ODSカラム)を用いることが最も好ましい。使用するカラムは、特に実施例で示したODSカラムに限定されるものではなく、例えば充填剤の粒子径や細孔径などは一般的な粒子径3〜5μm、細孔径100〜120Å以外の充填剤も使用することができ、分析対象物や希望する分析時間に合わせて、種々の選択が可能である。【0037】また、移動相としては、アセトニトリルと0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.0)を使用でき、その比率が30:70〜10:90の場合、最も良好な分離を示すため望ましい。その他移動相としてはアセトニトリルの代わりとしてメタノールが、緩衝液としてはギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等が使用できる。【0038】また、検出方法は紫外吸収検出器により検出が可能であるが、得られた紫外誘導体化物は256nmおよび325nm付近に極大吸収を持つことから、これらの波長を用いて検出するのが好ましく、なかでも 325nm付近の波長を用いることが、他の妨害成分の影響を避ける上でも最も好ましい。これらの条件、方法を用いることにより、精度の高い分析が可能となる。【0039】【実施例】以下の実施例をもって、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0040】実施例11)試験溶液の調製GABA標準品をイオン交換水または蒸留水でGABA濃度が20〜50μg/mLとなるよう希釈し、試験溶液を調製した。【0041】2)OPA誘導体化試薬の調製OPA10mgを秤量し、メタノール800μLに溶解後、200μLの 50mMほう酸緩衝液(四ほう酸ナトリウム1.91gを100mL容メスフラスコにとり、少量の水で溶解後、水で100mLに定容し、1N NaOHを使用してpHを10.5に調整)を加え、良く混和する。この反応試薬は用時調製する。【0042】3)紫外誘導体の調製GABAを20〜50μg/mL含有する試験溶液50μLにOPA誘導体化試薬50μLを加え、直ちに30秒以上、ボルテックスミキサーを使用して混和した。その後、35℃で15min反応し、これをHPLC分析試料とした。【0043】4)試験条件以下の試験においては、次の試験条件を基本条件として採用した。なお、内部標準としては、5−アミノ吉草酸(5−AVA:5−amino valeric acid)を用いた。【0044】・HPLC分析条件使用カラム  :μ−Bondasphere C18−100Å(ウォーターズ 内径3.9mm,長さ150mm)ガードカラム :LicroCART Lichrosphere 100 RP−18(メルク 内径4mm,長さ4mm)移 動 相  :アセトニトリル:0.1Mクエン酸溶液(pH3.0)=30:70検 出 器  :紫外吸収検出器 検出波長=325nmカラム温度  :30℃流   速  :1.0mL/min注 入 量  :10μL【0045】・検量線作成OPA 紫外誘導体化したGABA標準試料(5.0,10.0,20.0,50.0,100μg/mL)をHPLC分析し、クロマトグラムからピーク面積値またはピーク高さを縦軸にとり、横軸に各標準試料の濃度をとって検量線を作成する。【0046】・定性の原理:OPA 紫外誘導体化した試験試料およびGABA標準試料(20.0μg/mL)を、上記で示した高速液体クロマトグラフィーで同一条件により分析する。標準品との保持時間(リテンションタイム)の比較によりGABAを同定する。【0047】・定量の原理:OPA 紫外誘導体化したGABA標準試料を定性試験と同一の分析条件により分析する。標準試料のピーク面積値またはピーク高さから算出した内標比を縦軸に、標準試料濃度を横軸に検量線を作成し、試験試料中のGABA量を定量する。【0048】5)OPA誘導体化試薬の検討・OPA試薬のアルコール濃度の検討OPA反応試薬のアルコール濃度がGABA及び5−AVAのピーク面積値に与える影響について検討した。OPA を各10mg秤量し、メタノール200、400、600、800、950μLにて溶解後、全量が1mLとなるように50mMホウ酸緩衝液を加え、良く混和し、OPA反応試薬とした(メタノール濃度は20,40,60,80,95%となる)。これらのOPA反応試薬を使用して、GABA標準溶液を誘導体化し、GABA、5−AVAのピーク面積値及び内標比の変化について検討した。図1はOPA反応試薬のメタノール濃度とGABA及び5−AVAのピーク面積の関係を示す線図である。【0049】図に示す通り、GABA及び5−AVAのピーク面積ともOPA反応試薬のメタノール濃度が高くなるにつれて増加し、メタノール濃度が80%の時にピーク面積値は最大となった。反応試薬及び誘導体の溶解性はメタノール濃度に比例すること、内標比は20〜80%の間で一定であることから、OPA反応試薬のメタノール濃度が高いほど、誘導体化反応の反応性は高いものと考えられた。95%のメタノール濃度においてピーク面積値が低下した原因は、この濃度ではOPA試薬中に加えた50mMホウ酸緩衝液の一部が沈殿し、反応時のpHが変化したことから(pH9以下)反応性が低下したためであった。したがって、OPA反応試薬のメタノール濃度は80%程度が良好と考えられた。【0050】・OPA試薬濃度の検討OPA試薬濃度が2,5,10,25,50mg/mLとなるように調製したOPA反応試薬を使用して、GABA及び5−AVAを誘導体化し、GABA、5−AVAのピーク面積値及び内標比の変化について検討した。図2はOPA反応試薬中のOPA試薬濃度とGABA及び5−AVAのピーク面積の関係を示す線図である。【0051】図に示す通り、GABA及び5−AVAのピーク面積ともOPA反応試薬のOPA試薬濃度が高くなるにつれてピーク面積は増加した。しかし、GABAでは10mg/mL以上、5−AVAでは25mg/mL以上の濃度において、大きなピーク面積の増加は認められなかった。また、OPA濃度が25mg/mL以上ではOPAが溶解し難いことから、OPA試薬濃度は10mg/mL程度が良好と考えられた。【0052】・OPA紫外誘導体化の反応時間の検討OPA反応試薬調製法(メタノール濃度及びOPA試薬濃度)が決定したことから、反応時間について検討した。反応時間を2、5、10、15、20、30minとして、GABA標準溶液を誘導体化し、これまでと同様にGABA、5−AVAのピーク面積値及び内標比の変化について検討した。図3はOPA紫外誘導体化の反応時間とGABA及び5−AVAのピーク面積の関係を示す線図である。【0053】図に示す通り、GABA及び5−AVAのピーク面積値とも、反応時間に比例してピーク面積は増加したが、10minを越える反応時間ではピーク面積はほぼ一定となり、10minで誘導体化反応は終了しているものと考えられた。内標比も反応時間10min以降では、非常に安定した値を示していた。また、30minの反応においても、面積値や内標比に変化は認められないことから、得られた誘導体の分解等は生じないものと考えられた。したがって、OPA誘導体化の反応時間は、ピーク面積値及び内標比が一定値を示し安定した15min程度が良好と考えられた。【0054】6)HPLC分析条件の検討得られた紫外誘導体を用いてHPLCの分析条件(移動相)について検討した。HPLC移動相であるアセトニトリルと0.1Mクエン酸バッファー(pH3.0)を、▲1▼30:70、▲2▼32:68、▲3▼35:65、▲4▼40:60の混合比に調整し、分析した。図4はHPLC移動相を変更した際のGABA及び5−AVA紫外誘導体の溶出時間を示すHPLCクロマトグラムであり、図中▲1▼はアセトニトリル:0.1Mクエン酸バッファー(pH3.0)=30:70、▲2▼=32:68、▲3▼=35:65、▲4▼=40:60を示す。【0055】図に示す通り、HPLC移動相▲1▼(30:70の混合比)におけるGABA及び5−AVAは、GABA=16.3分、5−AVA=22.9分で溶出された。HPLC移動相▲4▼(40:60の混合比)との間では、溶出時間に3倍程度の差が認められたが、いずれの移動相においても、GABAや5−AVAのピーク形状の対称性は良好であり、また新たなピークも検出されなかった。移動相▲1▼を用いた場合においても、分析時間は25分で終了することから、いずれのHPLC移動相を用いても分析が可能であると考えられた。【0056】6)食品(発酵乳)中のGABA量を測定するためのHPLC分析条件の検討食品におけるHPLC分析条件の適用性を検証するため、GABAを含有するモデル発酵乳を調製し、同様に紫外誘導体化し、HPLCの分析条件について検討した。なお、モデル発酵乳としては、加熱殺菌した30%脱脂粉乳溶液にL.カゼイYIT9029を接種し、30℃で3日間培養後、蒸留水で2倍に希釈したものを用いた。希釈時には、最終濃度が16mg/100mLとなるようにGABAを添加した。図5は、HPLC移動相を変更した際のモデル発酵乳中のGABA及び5−AVAの溶出時間を示すHPLCクロマトグラムであり、図4と同様に図中▲1▼はアセトニトリル:0.1Mクエン酸バッファー(pH3.0)=30:70、▲2▼=32:68、▲3▼=35:65、▲4▼=40:60を示す。【0057】図5に示す通り、HPLC移動相▲4▼(35:65の混合比)のクロマトグラムにおいて、GABAピークの近傍に未知ピークが認められた。さらに検討した結果、この未知ピークは移動相▲1▼(30:70の混合比)を用いることにより、ベースライン分離することが可能であった。【0058】7)OPA紫外誘導体の安定性の検討OPA紫外誘導体の安定性について、10℃で保存し、経時的にHPLC分析を行い、GABA及び5−AVAのピーク面積値の変化から、その安定性を評価した。表1は、10℃での保存時間(min)におけるGABA、5−AVAのピーク面積値及び内標比を示す。また、図6は保存時間に対するGABA、5−AVAのピーク面積値及び内標比の変化を示す線図である。【0059】【表1】【0060】図6及び表1に示す通り、 OPA紫外誘導体後、24時間、10℃で保存した結果、GABA標準溶液および試験溶液とも24時間の保存中にGABAおよび 5−AVAのピーク面積値、内標比に大きな変化は認められず、 OPA紫外誘導体は安定であった。GABA標準溶液における反応直後から保存24時間までのGABAのピーク面積値の変動はcv%=2.22、5−AVAの変動はcv%=1.98であり、また内標比の変動はcv%=1.05と非常に良好な結果が得られた。【0061】8)定量範囲の検討定量範囲について、GABA標準溶液をOPA紫外誘導体とし、検討した。定量範囲については検量線の直線性から評価した。図7はGABA標準溶液(μg/mL)と内標比との相関を示す線図である。図7に示す通り、GABA検量線の相関係数は5.0〜100.0μg/mLの間でR=0.999以上であり、検量線に直線性が認められ、定量範囲は5.0〜100.0μg/mLとした。【0062】9)定量精度の検討GABA定量値の精度について、分析定量茅野へ以降制度から評価した。先に調整したGABA含有モデル発酵乳の思料採取を3回行い、各5回OPA誘導体化後、HPLCにより分析し、得られたGABA定量値の標準偏差(SD)及びバラツキ(cv%)を算出した。結果を次の表2に示す。【0063】【表2】【0064】表2に示す通り、得られたGABA定量値は15.65〜16.05mg/100mLの範囲であり、そのバラツキは15.83±0.12(0.79)であった(mean±SD(cv%))。SD及びcv%は良好な結果を示し、誘導体反応及びHPLC分析の再現性に問題はないものと考えられた。【0065】またこのモデル発酵乳にGABA標準溶液(15mg/100mL)を添加し、添加回収率を算出した。得られた添加回収率は102.2%であり、良好な添加回収率であった。以上の結果から、OPA紫外誘導体化法により得られた分析値の妥当性が認められた。したがって、食品中のGABA定量分析法として、OPA紫外誘導体化法が適用可能であった。【0066】実施例2食品への応用として、「γ−アミノ酪酸を含有する発酵乳」3ロットの分析を行った。発酵乳であるが、加熱滅菌した30%脱脂粉乳溶液にL.カゼイYIT9029とL.ラクチスYIT2027の両菌株を1:1の比率で接種し、30℃で3日間培養後、蒸留水で2倍に希釈し、調製した。発酵乳10gを50mL容メスフラスコにとり、内部標準溶液(5−AVA)を添加した後、水で50mLに定容し、良く混和した。この希釈水溶液から遠心上清(20000G、4℃、20min)を調製し、水系メンブランフィルター(孔径0.45mm)でろ過し、試験溶液とした。この試験溶液50μLにOPA反応試薬50μLを加え、直ちに30秒以上、激しく混和し、35℃で15min反応後、これを試験試料とした。【0067】また、標準溶液についても同様の操作でOPA紫外誘導体化した。得られたOPA紫外誘導体をHPLC分析し、検量線法により分析試料中のGABA量を定量した。「γ−アミノ酪酸を含有する発酵乳」3ロットを定量した結果、得られた定量値は15.9〜16.0mg/100mLと非常に良好な結果が得られた(表3)。【0068】組成物への応用として、「γ−アミノ酪酸を含有する発酵乳」3ロットの分析を行った。発酵乳10gを50mL容メスフラスコにとり、内部標準溶液(5−アミノ吉草酸:1mg/mL調製液)を1mL添加した後、水で50mLに定容し、良く混和した。この「γ−アミノ酪酸を含有する発酵乳」希釈水溶液から遠心上清(20000G、4℃、20min)を調製し、水系メンブランフィルター(孔径0.45mm)でろ過し、試験溶液とした。この試験溶液50μLにOPA反応試薬50μLを加え、直ちに30秒以上、激しく混和し、35℃で15min反応後、これを試験試料とした。【0069】また、標準溶液についても同様の操作でOPA紫外誘導体化した。得られたOPA紫外誘導体をHPLC分析し、検量線法により分析試料中のGABA量を定量した。結果を次の表3に示す。表3に示す通り、「γ−アミノ酪酸を含有する発酵乳」3ロットを定量した結果、得られた定量値は15.9〜16.0mg/100mLと非常に良好な結果が得られた。【0070】【表3】【0071】以上のように、本発明によれば、特殊な装置およびチオールアルキル化剤を使用せずに食品中のアミノ酸類あるいはペプチド類を簡便な操作で迅速に精度良く、定量分析することができる。【0072】【発明の効果】本発明は以上説明した通り、機能性成分、すなわちアミノ酸、ペプチド類を製造現場等でも容易に検出・定量できる、簡便・迅速・安価かつ高精度な定量分析方法を得るという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】OPA反応試薬のメタノール濃度とGABA及び5−AVAのピーク面積と内標比の関係を示す線図である。【図2】OPA反応試薬中のOPA試薬濃度とGABA及び5−AVAのピーク面積と内標比の関係を示す線図である。【図3】PA紫外誘導体化の反応時間とGABA及び5−AVAのピーク面積と内標比の関係を示す線図である。【図4】HPLC移動相を変更した際のGABA及び5−AVA紫外誘導体の溶出時間を示すHPLCクロマトグラムである。【図5】HPLC移動相を変更した際のモデル発酵乳中のGABA及び5−AVAの溶出時間を示すHPLCクロマトグラムである。【図6】OPA紫外誘導体化後の保存時間に対するGABAと5−AVAのピーク面積値及び内標比の関係を示す線図である。【図7】GABA標準溶液の濃度(μg/mL)と内標比との相関を示す線図である。 アミノ酸を含有する組成物中のアミノ酸を検出、定量する方法であって、チオールアルキルを含まない誘導体化試薬と組成物中のアミノ酸とを反応させ、得られた紫外吸収体の紫外線吸収強度を測定することを特徴とするアミノ酸の分析方法。 紫外線吸収強度を測定する前の前工程として、紫外吸収体を液体クロマトグラフィーにて分離する工程を具備することを特徴とする請求項1記載のアミノ酸の分析方法。 誘導体化試薬に用いる反応試薬が、o−フタルアルデヒドであることを特徴とする請求項1又は2記載のアミノ酸の分析方法。 誘導体化試薬を50%以上のアルコール溶液として用いることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアミノ酸の分析方法。 アミノ酸がγ−アミノ酪酸であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のアミノ酸の分析方法。 更に、前工程として、組成物中の高分子物質を除去する工程を具備することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のアミノ酸の分析方法。 【課題】機能性成分、すなわちアミノ酸、ペプチド類を製造現場等でも容易に検出・定量できる、簡便・迅速・安価かつ高精度な定量分析方法を得る。【解決手段】アミノ酸を含有する組成物中のアミノ酸を検出、定量する方法であって、チオールアルキルを含まない誘導体化試薬と組成物中のアミノ酸とを反応させ、得られた紫外吸収体の紫外線吸収強度を測定するもの。【選択図】   なし 20020717 A16330 0062 3 【0062】9)定量精度の検討GABA定量値の精度について、分析定量値の併行精度から評価した。先に調整したGABA含有モデル発酵乳の試料採取を3回行い、各5回OPA誘導体化後、HPLCにより分析し、得られたGABA定量値の標準偏差(SD)及びバラツキ(cv%)を算出した。結果を次の表2に示す。


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