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タイトル:特許公報(B2)_超臨界二酸化炭素を用いるポリエステルの解重合法および解重合生成物からのポリエステルの製造方法
出願番号:2002193114
年次:2008
IPC分類:C12P 7/62


特許情報キャッシュ

松村 秀一 JP 4171823 特許公報(B2) 20080822 2002193114 20020702 超臨界二酸化炭素を用いるポリエステルの解重合法および解重合生成物からのポリエステルの製造方法 学校法人慶應義塾 899000079 中島 淳 100079049 加藤 和詳 100084995 西元 勝一 100085279 福田 浩志 100099025 松村 秀一 JP 2001204999 20010705 20081029 C12P 7/62 20060101AFI20081009BHJP JPC12P7/62 C12P 7/62 PubMed JSTPlus(JDreamII) JMEDPlus(JDreamII) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA(STN) CAplus(STN) 特開平08−256783(JP,A) Hao Yan 他,超臨界二酸化炭素加圧処理によるCandida rugosaリパーゼの加水分解活性の変化,化学工学会年会研究発表講演要旨集,2001年 3月 2日,Vol.66th,p.527 小林厚志 他,脂質修飾リパーゼを用いた含水超臨界二酸化炭素中でのエステル加水分解反応,日本化学会第76春季年会,1999年 3月15日,p.1210(講演番号:1D2 31) 中谷英樹 他,超臨界CO2の臨界点付近におけるリパーゼ反応特性,日本農芸化学会誌,2001年 3月 5日,75巻,臨時増刊号,p.19(講演番号:1K1p3) 江端洋樹 他,酵素触媒による循環型高分子リサイクル:ポリカプロラクトン,高分子学会予稿集,2000年 5月12日,第49巻,第5号,p.1021(講演番号:II J03) 松村秀一,酵素とポリマーとの超構造体形成能を利用する高機能性新素材の創出,学術フロンティア 分子・超分子・超構造体理工学 平成11年度研究成果報告書,2000年 3月,p.325−381 3 2003079388 20030318 11 20050512 清水 晋治 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、高分子化合物を完全な循環型として利用することが可能な、酵素による高分子化合物の解重合と再重合に関する。【0002】【従来の技術】現在、様々な分野において製品からの有用材料の回収および再利用が検討され、サステイナブル(持続可能)材料利用システムの構築が急がれている。高分子材料製品の再利用については、限りのある炭素資源(C資源)の有効利用と有限エネルギー資源の節約の観点から、使用後はそのまま再使用されるか(この中にはPETボトルの繊維素材化なども含まれる)、リサイクルされている。リサイクルの方法としては、マテリアルリサイクル法、ケミカルリサイクル法、サーマルリサイクル法などが用いられているが、マテリアルリサイクル法は分子量低下などの品質劣化を伴い、ケミカルリサイクル法はエネルギー多消費型であり、またサーマルリサイクル法は多量の炭酸ガスが発生するなど、それぞれ問題を内包していて、最終的にはどの方法でも廃プラスチックを排出することになり、焼却、埋め立などにより処理されているのが現状である。炭素資源の有効利用の観点からは、最終的にはケミカルリサイクル法により原料に戻すことが理想的であり、ケミカルリサイクル法には、解重合反応によるモノマーの回収や化学的分解反応による原料モノマーの回収が知られているが、いずれもエネルギー多消費型で環境に対する負荷は大きく、また一般に採算性はない。【0003】本発明者は、先に、酵素を利用することによって消費エネルギーが少なく、かつ完全循環型のポリマー分解およびポリマー製造法を提案した。特願2000−198867号は、トリメチレンカーボネート重合体を加水分解酵素の存在下、解重合させてトリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)を製造する方法であり、また、特願2000−198866号は、カプロラクトン重合体に加水分解酵素を作用させてカプロラクトンの環状二量体であるジカプロラクトンを製造する方法と、このジカプロラクトンを加水分解酵素の存在下重合させてカプロラクトン重合体を製造する方法である。さらに、特願2001−131768号は、前記と同様に加水分解酵素を利用することにより、ポリアルキレンアルカノエートまたはポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)を、環状体を主成分とするオリゴマーに解重合する方法、および前記環状オリゴマーを重合する方法に関するものである。これらの方法における解重合法は、酵素を利用するため低エネルギー消費であり、また、解重合により得られる生成物は、酵素により再び重合して高分子化されるので、炭素資源を無駄無く有効に利用することができ、いわば、完全循環型のポリマー再利用と位置付けることができる。したがって、前記の方法はサステイナブル材料構築の観点からみると、現実的なケミカルリサイクル法である。【0004】しかし、固形のプラスチック材料をそのまま酵素に作用させることは、不可能であり、前記3つの方法においても、プラスチック材料を溶解させるために、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼンなどの有機溶媒を必要とする。特に再重合性の優れた環状オリゴマーを得るためには、大量の有機溶媒を必要とする。しかし、有機溶媒の多くは通常揮発性化合物で環境に放出されると汚染するので、この点が次に解決すべき問題となっている。【0005】一方、超臨界流体は、最近注目を浴びている流体である。超臨界流体は、気相と液相の相変化を示す蒸気圧曲線における臨界点以上の温度、圧力領域にある流体で、気体と液体の中間的性質をもち、密度は液体に近いが、粘性は気体とほぼ同じで非常に低く、物質中の拡散性も液体よりはるかに高いという性質がある。超臨界流体のこの性質を利用して、様々な材料から有用な物質を抽出、あるいは不要物質を除去する分離・精製技術が実現されている。特に二酸化炭素は、無害であり、かつ安価で不燃性であることに加え、32℃、7.2MPa程度に加圧すると容易に超臨界流体となるので、熱や有機溶媒に不安定な性質を示す物質を抽出あるいは除去するのに好都合で、従来抽出等に用いられていた有機溶媒に代わる媒体として利用されつつある。たとえば、現在、超臨界流体二酸化炭素を用いてコーヒーあるいは紅茶からカフェインを除去することが工業的に実用化されている。【0006】また、超臨界流体の粘性が低く拡散性が高いという性質は反応溶媒(反応媒体)としても期待が持たれている。すなわち、拡散性が高いことから、不均一系の反応の場合に、拡散律速の制約を受けている反応が促進される。さらに、超臨界流体は、圧力および温度を変えることにより、密度、極性および粘性などの物性を連続的にしかも大きく変えること、つまり、溶媒としての超臨界流体の物性を制御することが容易である。また、反応終了後に系を大気圧に戻すことで、生成物を反応媒体から容易に分離することができる。この他、超臨界水によるフロン等の難分解性有害物質の分解処理に関する研究も行われている。また、本発明者は先に、超臨界流体(二酸化炭素、フロロホルム)を用いた、キシランと長鎖アルコールとのワンポットグリコシル化反応を発表した(T.Nakamura,K.Toshima,S.Matsumura,Biotechnology Letters Vol.22,1183-1189 2000;S.Matsumura,T.Nakamura,E.Yao,.K.Toshima,Chemistry Letters,581-582,1999)。このように、超臨界流体は、気体、液体につぐ第三の媒体として期待されているが、超臨界流体を、酵素を用いてポリマーを解重合および再重合する、低エネルギー消費の完全循環型ケミカルリサイクリングに適用するとの報告はされていない。【0007】【発明が解決しようとする課題】 本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリエステルを再重合可能な解重合生成物に変換する方法、および前記解重合生成物からポリエステルを製造する方法を、低エネルギー消費でかつ環境受容型の方法として提供するものである。【0008】【課題を解決するための手段】 本発明の前記目的は、以下の解重合方法および重合方法を提供することにより解決される。(1)ポリエステルをリパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で、超臨界二酸化炭素に対するポリエステルの濃度を0.1〜10質量%に、かつポリエステルに対する水の濃度を45〜200質量%にして環状二量体を主成分とする解重合生成物に解重合させる、ポリエステルの解重合方法。(2)ポリエステルをリパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で、超臨界二酸化炭素に対するポリエステルの濃度を0.1〜10質量%に、かつポリエステルに対する水の濃度を45〜200質量%にして環状二量体を主成分とする解重合生成物に解重合させ、得られる前記解重合生成物を、リパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で重合させることを特徴とするポリエステルの製造方法。(3)ポリエステルをリパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で、超臨界二酸化炭素に対するポリエステルの濃度を0.1〜10質量%に、かつポリエステルに対する水の濃度を45〜200質量%にして環状二量体を主成分とする解重合生成物に解重合させ、得られる前記解重合生成物を、重合触媒の存在下、超臨界二酸化炭素中で重合させることを特徴とするポリエステルの製造方法。【0010】【発明の実施の形態】 初めに、ポリエステルを解重合する方法について説明する。本発明の解重合に用いることのできるポリエステルとしては、ポリカルボン酸とポリオールからのポリエステルのほか、ヒドロキシカルボン酸あるいはその分子内エステル(ラクトン)からのポリエステルまたはポリラクトンが含まれる。ポリカルボン酸とポリオールからのポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリ(ブチレンサクシネート−アジペート)共重合体など、以下のごとき構造式(1)で示される繰り返し単位を有するものが好適に挙げられる。【0011】【化1】【0012】前記構造式(1)中、Aは炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、Bは炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。AおよびBはそれぞれ、2つ以上の異なるもの(すなわち共重合体)であってもよい。さらに、A(COOH)2で表されるジカルボン酸の50モル%以下を芳香族ジカルボン酸、たとえばテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸などで置換してもよい。本発明のポリエステルとしては、前記構造式(1)で示される以外の繰り返し単位、たとえば、以下の構造式(2)および/または(3)で示す繰り返し単位(単位中、Dは炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基を表す)を、50モル%以下含んでいてもよい。【0013】【化2】【0014】前記ポリエステルの分子量(数平均分子量)は特に制限はなく、また、ポリエステルの末端基部分にはポリマー合成法により決定されるいずれの置換基によって置換されていることが可能である。【0015】また、前記ヒドロキシカルボン酸からのポリエステルまたはポリラクトンとしては、炭素数3〜20のヒドロキシカルボン酸またはラクトンの重合体の他、下記構造式(4)で示される繰り返し単位を1種以上有するポリエステルまたはポリラクトンも含まれる。式中、Rは水素原子または炭素数1から12の直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。【0016】【化3】【0017】前記Rは、水素原子および炭素数1〜12のアルキル基より選ばれる、異なる2種以上(共重合体)であってもよい。Rがメチル基の場合、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)であり、Rがメチル基および水素原子の場合3−ヒドロキシ酪酸/3−ヒドロキシプロピオン酸共重合体(PHB/PHP)であり、Rがメチル基およびエチル基の場合3−ヒドロキシ酪酸/3−ヒドロキシバレリアン酸共重合体(PHB/PHV)である。これらは、微生物が産生するポリマーとして知られている。このポリラクトンの末端基部分にはポリマー合成法により決定されるいずれの置換基によって置換されていることが可能である。また、前記ポリラクトンは、分子中にさらに以下の構造式(5)ないし(7)で示す繰り返し単位を1種以上有していてもよい。【0018】【化4】【0019】式中R1は炭素数1〜17の直鎖または分岐のアルキレン基を、R2は炭素数2〜11の直鎖または分岐のアルキレン基を、R3は炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキレン基を、R4は炭素数2〜10の直鎖または分岐のアルキレン基をそれぞれ表わす。(繰り返し単位(5)を含む場合は、他のラクトンを含む共重合体であることを表す。)【0021】 次に、本発明においては超臨界流体としては二酸化炭素が用いられる。二酸化炭素は前記のように、無害、安価、不燃性であり、また、その臨界点は、32℃、7.2MPa程度であるので、臨界点に達し易く、本発明の解重合および重合に用いる媒体として好適である。【0022】 本発明のポリエステル(以下において「解重合ポリマー」ということがある。)の解重合は、解重合ポリマーとリパーゼを耐圧反応管に入れ、これに液化炭酸を、送液ポンプにより加圧しながら注入することにより、二酸化炭素を超臨界状態にし、超臨界二酸化炭素を適切な温度に保持しつつ、好ましくは攪拌しながら、適切な時間解重合反応をさせることにより行われる。解重合の際の超臨界二酸化炭素の温度は、31〜90℃程度、好ましくは40〜80℃程度であり、また、圧力は7.2〜30MPa程度、好ましくは7.5〜20MPa程度である。 また、解重合反応媒体中に含まれる解重合ポリマーの濃度は、0.1〜50g/L、中でも1〜20g/Lが適切である。0.1g/Lより低い濃度の場合は、収率自体は特に低くないが濃度が低いため得られる解重合生成物の量を十分に確保しにくく、また50g/Lを超えると解重合生成物への変換率が低下するので、前記範囲が好ましい。 また、解重合の反応時間は少なくとも3時間であることが望ましい。反応時間の上限は特にないが、48時間以上行ってもそれ以上解重合は進行せず経済的に不利となる。【0023】 本発明の解重合に用いる酵素であるリパーゼは、固定化していても固定化していなくてもよいが、解重合生成物の回収や酵素の再利用の観点からは固定化しているものが利便である。中でもCandida antarctica由来のリパーゼが好ましい。リパーゼとしては、例えば、Candida antarctica由来の固定化酵素である、ノボザイムズジャパン(株)の「Novozym 435(商品名)」を挙げることができる。 本発明の解重合における固定化リパーゼの添加量は、ポリマー当たり1〜1000質量%、好ましくは、1〜500質量%、より好ましくは5〜200質量%である。1質量%未満では、解重合反応が著しく低下し、また、1000質量%を超えても解重合生成物の収量に顕著な変化はみられないので、前記範囲が適切である。【0024】 さらに、解重合の系の中に全く水が存在しないとリパーゼの活性が保てないので、系に微量の水分を添加することが好ましい。リパーゼ自体が水分を保持している場合には、水を添加する必要はない。リパーゼの活性を保つための水分は、反応系中解重合ポリマーに対して0.1〜1000質量%程度である。【0025】 ポリエステルの解重合生成物は、線状あるいは環状のオリゴマーまたはモノマーである(ただし環状二量体を主成分とする。)。解重合条件により環状のものが多く得られたり、線状のものが多く得られたりするが、本発明においては、環状オリゴマーを多く得るために、解重合ポリマーに対する水分濃度を低く(45〜200質量%)、また、反応媒体に対する解重合ポリマーの濃度を低く(0.1〜10質量%)する。いずれのオリゴマーおよびモノマーも再重合によりもとのポリマーに再生させることが可能である。特に環状オリゴマーの再重合は、開環重合であるため、水等の縮合成分が発生せず、これらを反応系外に出す必要もないので、重合反応操作が簡便であるというメリットがある。 また、オリゴマーの分子量は、温度、圧力、解重合ポリマー濃度等の反応条件にもよるが、一般に500以下である。【0026】 環状オリゴマーを多く生成させるための条件で解重合させると、たとえば、ポリカプロラクトンではカプロラクトンの環状二量体であるジカプロラクトン(1,8−ジオキサシクロテトラデカリン−2,9−ジオン)を主生成物として得ることができる。また、前記構造式(1)および(4)で示される繰り返し単位を有するポリエステルからは、後述の実施例4及び6で示される環状二量体を主生成物として得ることができる。【0027】[前記解重合生成物の重合](リパーゼを用いる方法) 本発明のポリエステルからの解重合生成物は、リパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で重合させることが可能である。解重合生成物とリパーゼを耐圧反応管に入れ、これに液化炭酸を、送液ポンプにより加圧しながら注入することにより、二酸化炭素を超臨界状態にし、超臨界二酸化炭素を適切な温度に保持しつつ、好ましくは攪拌しながら、適切な時間解重合反応をさせることにより行われる。解重合の際の超臨界二酸化炭素の温度は、31〜85℃程度、好ましくは40〜75℃程度であり、また、圧力は7.2〜30MPa程度、好ましくは7.5〜20MPa程度である。 また、重合反応溶液中に含まれる解重合生成物の濃度は、0.1〜50g/L、中でも1〜20g/Lが適切である。0.1g/Lより低い濃度の場合は、収率自体は特に低くないが濃度が低いため得られるポリマーの量を十分に確保しにくく、また50g/Lを超えるとポリマーへの変換率が低下するので、前記範囲が好ましい。 また、重合時間は、0.5〜48時間が適当である。0.5時間より短いと十分反応が進行せず、また、48時間を超えると生成したポリマーが解重合を起こしたりするので、前記範囲が好ましい。【0028】 本発明の解重合生成物を重合させるのに用いる固定化リパーゼの添加量は、解重合生成物に対してリパーゼ0.1〜50質量%、好ましくは、リパーゼ0.1〜10質量%である。0.1質量%未満では、重合速度が低下し、モノマー変換率も低くなりやすく、また、50質量%を超えると生成するポリマーの分子量が低くなりやすいので、前記範囲が適切である。【0029】 本発明の重合法により、数平均分子量で1万程度までの分子量のポリエステルが得られる。前記解重合生成物のポリマーへの変換率は100%を達成することも可能である。【0030】(化学的合成方法) ポリエステルの一例を挙げると、絶対乾燥条件下、解重合生成物に対して0.1質量%のジスタノキサンを触媒として加え、100℃で、塊状重合を行うことにより対応するポリエステルを得ることができる。【0036】 本発明の解重合方法および重合方法は、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として用いるため、反応後に系の圧力を常圧に戻すだけで、反応溶媒を系外に容易に放出することができ、系から生成物を分離することが容易である。また、放出された反応溶媒を回収して再利用することも可能である。更に、溶媒が反応系外に漏れた場合でも環境を汚染する虞はない。 さらに、通常の有機溶媒を用いた解重合方法および重合方法に比較して、解重合および重合の反応効率に遜色はなく、リパーゼを用いる解重合反応の場合、ポリマーを100%解重合させるのに必要な時間は、トルエンを用いる場合より若干長くなるものの、アセトニトリルを用いた場合に比較すると顕著に短くなる。 また、本発明のリパーゼを用いる解重合方法および重合方法は、ワンポットによる簡便な操作でよい他、反応条件は温和でありまた低エネルギー消費でもある。さらに解重合により得られるオリゴマーおよびモノマーは再重合によりもとのポリマーに再生させることが可能である。そして、解重合または重合を行うのに用いるリパーゼは、回収して繰り返し用いることができ、その際酵素としての活性の減少は実質的にないという有利な点を有する。 したがって、本発明により、環境受容型であり、かつ炭素資源を完全再利用することが可能な、完全循環型の高分子材料利用システムを構築することが可能になった。【0037】【実施例】 以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。【0039】実施例1 14員環ジカプロラクトン(1,8−dioxacyclotetradecane−2,9−dione)を(50mg)および固定化リパーゼ(Novozym 435)(5mg)を10mLステンレス製耐圧反応管に秤り取り、次いで、液化炭酸を8MPaで充填し、超臨界二酸化炭素中、磁気撹拌子を用いて70℃で6時間8MPaで撹拌を行い重合を行った。反応終了後、反応管をドライアイス−メタノール浴で冷却し、ガス導入用コックを開け、徐々に炭酸ガスを排気し、常圧に戻した後、反応管中の重合物にクロロホルムを少量加え、不溶の固定化リパーゼをセライトを用いて濾別し、濾液よりクロロホルムをエバポレーターを用いて減圧濃縮し、ポリカプロラクトンをほぼ定量的に得た。GPC法により分子量を測定したところ、Mw=48,000、Mn=26,000,Mw/Mn=1.8であった。【0042】実施例2 14員環ジカプロラクトン(1,8−dioxacyclotetradecane−2,9−dione)(200mg)、オレイン酸カリウム(1.5mg)および18−クラウン−6(1.2mg)を、10mLステンレス製耐圧反応管に秤り取り、次いで、液化炭酸を10MPaで充填し、超臨界二酸化炭素中、磁気撹拌子を用いて40℃で24時間10MPaで撹拌を行い重合を行った。反応終了後、反応管をドライアイス−メタノール浴で冷却し、ガス導入用コックを開け、徐々に炭酸ガスを排気し、常圧に戻した後、反応管中の重合物にクロロホルムを少量加え、不溶物を濾別し、濾液よりクロロホルムをエバポレーターを用いて減圧濃縮し、ポリカプロラクトンを得た。GPC法により分子量を測定したところ、Mw=30,000、Mn=20,000,Mw/Mn=1.5であった。【0044】実施例3 ポリ(カプロラクトン)(分子量Mn=110,000,Mw/Mn=1.6)25mg、固定化リパーゼ(Novozym435)10mgおよび水12mgを10mLステンレス製耐圧反応管に秤り取り、ついで液化炭酸を16MPaで充填し、超臨界二酸化炭素中、磁気攪拌子を用いて40℃で6時間、16MPaで攪拌を行い分解を行った。反応終了後、反応管をドライアイス−メタノール浴で冷却し、ガス導入用コックを開け、徐々に炭酸ガスを排気した。常圧に戻した後、反応管中に残った分解物にクロロホルムを少量加え、不溶の固定化リパーゼをセライトを用いて濾別し、濾液より溶媒をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、環状ジカプロラクトンを92%含む再重合性オリゴマーをほぼ定量的に得た。環状ジカプロラクトンの定量はGPCおよびMALDI−TOF MSによった。また、環状ジカプロラクトン生成の確認は、粗生成物のテトラヒドロフラン(THF)溶液から再結晶を行うことにより精製し、分析を行った。結果を以下に示す。【0045】融点(m.p)113−115℃(文献値111−113℃).[F.J.Van Natta,J.W.Hill,W.H.Carothers,J.Am.Chem.Soc.1934,56,455.]赤外分光スペクトル IR(KBr):2936,2866(CH2),1721(COO,ester),1472cm-1(CH2).1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ=1.35−1.75(m,12H,CH2ofC−3,3’,4,4’,5and5’),2.38(t,J=6.05Hz,4H,CH2ofC−2and2’),4.16(t,J=5.63Hz,4H,CH2ofC−6and6’).13C−NMR(75MHz,CDCl3):δ=24.6,28.1(C−3,3’,4,4’,5and5’,CH2),34.6(C−2and2’,CH2),63.0(C−6and6’,CH2),173.5(C−1and1’,C=0).元素分析値 C12H20O4(228.3):計算値 C63.13;H8.83;理論値 C63.12;H8.79.【0046】同様にして、超臨界二酸化炭素の圧力を変化させたときの環状ジカプロラクトン(DCL)の収率の変化を図1に示す。図1よりDCLの収率は圧力を上げるにつれて上昇し、16MPaで最大値に達し、それ以上圧力を上げても効果は認められなかった。なお、この範囲の圧力では、圧力を変えることによりDCLの含量のみが変化し、環状ジカプロラクトンを含む環状体を主成分とするオリゴマーにほぼ定量的に変換されていた。【0047】また、16MPaで反応を行ったときの温度と環状ジカプロラクン(DCL)の収率の関係(6時間反応)を図2に示す。図2より、反応温度は40〜50℃でDCLの最高収率が得られることが分かった。これ以上の反応温度では、酵素の活性が低下し、収率も低下する。環状ジカプロラクン(DCL)の収率は初めに添加する水分量にも大きく依存しており、水分量が極端に多くなれば加水分解により線状ヒドロキシ酸が多くなる。反応系における水分量と環状ジカプロラクン(DCL)の収率の関係を図3に示す。【0048】実施例4 ポリ(ブチレンアジぺート)(分子量Mw22,000)30mg、固定化リパーゼ(Novozym 435)30mgおよび水20mgを、10mLステンレス製耐圧反応管に秤り取り、ついで液化炭酸を16MPaで充填し、超臨界二酸化炭素中、磁気攪拌子を用いて40℃で6時間、16MPaで攪拌を行い分解を行った。反応終了後、反応管をドライアイス−メタノール浴で冷却し、ガス導入用コックを開け、徐々に炭酸ガスを排気した。常圧に戻した後、反応管中に残った分解物にクロロホルムを少量加え、不溶の固定化リパーゼをセライトを用いて濾別し、濾液より溶媒をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、環状ブチレンアジペート2量体(前記構造式(8)においてL:(CH2)4,M(CH2)4m=2)を主成分とする再重合性オリゴマーをほぼ定量的に得た。環状ブチレンアジペート2量体の定量はGPCおよびMALDI−TOF MSによった。また、環状ブチレンアジペート2量体生成の確認は、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、分析を行った。1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm)=4.12(−CH2−O−CO−)(4H,m),2.34(−CH2−CO−O)(4H,m),1.73(−CO−CH2−CH2−CH2−CH2−CO−)(4H,m),1.68(−O−CH2−CH2−CH2−CH2−O−)(4H,m).【0049】実施例5 実施例4で得た環状ブチレンアジペート2量体50mgおよび固定化リパーゼ(Novozym 435)5mgを、10mLステンレス製耐圧反応管に秤り取り、ついで液化炭酸を8MPaで充填し、超臨界二酸化炭素中、磁気攪拌子を用いて70℃で6時間、8MPaで攪拌を行い重合を行った。反応終了後、反応管をドライアイス−メタノール浴で冷却し、徐々に炭酸ガスを排気し、常圧に戻した後、反応管中の重合物にクロロホルムを少量加え、不溶の固定化リパーゼをセライトを用いて濾別し、濾液より溶媒をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、ポリ(ブチレンアジペート)をほぼ定量的に得た。GPC法により分子量を測定したところ、Mw=52,000であった。【0050】実施例6 ポリ(ブチレンサクシネート)(分子量Mw99,000)25mg、固定化リパーゼ(Novozym 435)30mgおよび水12mgを、10mLステンレス製耐圧反応管に秤り取り、ついで液化炭酸を16MPaで充填し、超臨界二酸化炭素中、磁気攪拌子を用いて40℃で6時間、16MPaで攪拌を行い分解を行った。反応終了後、反応管をドライアイス−メタノール浴で冷却し、ガス導入用コックを開け、徐々に炭酸ガスを排気した。常圧に戻した後、反応管中に残った分解物にクロロホルムを少量加え、不溶の固定化リパーゼをセライトを用いて濾別し、濾液より溶媒をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、環状2〜3量体を主成分とする再重合性オリゴマーを得た。環状ブチレンサクシネート2量体(前記構造式(8)においてL:(CH2)2,M(CH2)4m=2)の定量はGPCおよびMALDI−TOF MSによった。また、環状ブチレンサクシネート2量体生成の確認は、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、分析を行った。1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ(ppm)=4.11(−CH2−O−CO−)(4H,m),2.63(−CH2−CO−O)(4H,m),1.71(−O−CH2−CH2−CH2−CH2−O−)(4H,m).【0051】【発明の効果】 本発明の解重合方法および重合方法は、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として用いるため、反応後に系の圧力を常圧に戻すだけで、反応溶媒を系外に容易に放出することができ、系から生成物を分離することが容易である。また、放出された反応溶媒を回収して再利用することも可能である。更に、溶媒が反応系外に漏れた場合でも環境を汚染する虞はない。 さらに、通常の有機溶媒を用いた解重合方法および重合方法に比較して、解重合および重合の反応効率に遜色はなく、リパーゼを用いる解重合反応の場合、ポリマーを100%解重合させるのに必要な時間は、トルエンを用いる場合より若干長くなるものの、アセトニトリルを用いた場合に比較すると顕著に短くなる。 また、本発明のリパーゼを用いる解重合方法および重合方法は、ワンポットによる簡便な操作でよい他、反応条件は温和でありまた低エネルギー消費でもある。さらに解重合により得られるオリゴマーおよびモノマーは再重合によりもとのポリマーに再生させることが可能である。そして、解重合または重合を行うのに用いるリパーゼは、回収して繰り返し用いることができ、その際酵素としての活性の減少は実質的にないという有利な点を有する。 したがって、本発明により、環境受容型であり、かつ炭素資源を完全再利用することが可能な、完全循環型の高分子材料利用システムを構築することが可能になった。【図面の簡単な説明】【図1】 実施例3において超臨界二酸化炭素の圧力と環状ジカプロラクトンの収率との関係を示すグラフである。【図2】 実施例3において反応温度と環状ジカプロラクトンの収率との関係を示すグラフである。【図3】 実施例3において反応系における水分含有量と環状ジカプロラクトンの収率との関係を示すグラフである。 ポリエステルをリパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で、超臨界二酸化炭素に対するポリエステルの濃度を0.1〜10質量%に、かつポリエステルに対する水の濃度を45〜200質量%にして環状二量体を主成分とする解重合生成物に解重合させる、ポリエステルの解重合方法。 ポリエステルをリパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で、超臨界二酸化炭素に対するポリエステルの濃度を0.1〜10質量%に、かつポリエステルに対する水の濃度を45〜200質量%にして環状二量体を主成分とする解重合生成物に解重合させ、得られる前記解重合生成物を、リパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で重合させることを特徴とするポリエステルの製造方法。 ポリエステルをリパーゼの存在下、超臨界二酸化炭素中で、超臨界二酸化炭素に対するポリエステルの濃度を0.1〜10質量%に、かつポリエステルに対する水の濃度を45〜200質量%にして環状二量体を主成分とする解重合生成物に解重合させ、得られる前記解重合生成物を、重合触媒の存在下、超臨界二酸化炭素中で重合させることを特徴とするポリエステルの製造方法。


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