タイトル: | 公開特許公報(A)_脂肪酸エステルの製造方法 |
出願番号: | 2002187001 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C67/08,C07C69/24,C07C69/50,C07C69/533,C11C3/08 |
状家 美香 中岡 久男 林 豊 藤谷 貫剛 JP 2004026738 公開特許公報(A) 20040129 2002187001 20020627 脂肪酸エステルの製造方法 新日本理化株式会社 000191250 状家 美香 中岡 久男 林 豊 藤谷 貫剛 7 C07C67/08 C07C69/24 C07C69/50 C07C69/533 C11C3/08 JP C07C67/08 C07C69/24 C07C69/50 C07C69/533 C11C3/08 9 OL 10 4H006 4H059 4H006AA02 4H006AC48 4H006BA90 4H006BC10 4H006BC11 4H006BC18 4H006BD33 4H006BD52 4H006KA06 4H006KC12 4H006KC14 4H059BA30 4H059BB01 4H059CA36 4H059CA48 4H059CA65 4H059CA93 4H059DA04 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、脂肪酸と低級アルコールの無触媒エステル化反応による脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来、一般的な触媒として、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、酸化スズ、アルコキシチタネート等のプロトン酸やルイス酸を用いて脂肪酸と低級アルコールとをエステル化反応させて脂肪酸低級アルキルエステルが製造されている。しかし、これらの酸は高い触媒作用を示す反面、反応終了後の触媒を分離除去するための中和・水洗工程の煩雑さに加え、その際生じる廃水の処理といった課題を抱えている。【0003】また、上記エステル化反応を用いて製造される脂肪酸低級アルキルエステルには、微量の触媒が不純物として残存しているおそれがあり、そのまま食品や化粧品分野で使用するのは適当ではない。また、かかる不純物が脂肪酸低級アルキルエステルを水素還元して各種高級アルコールを製造する際の触媒毒となる等の問題が生じる。【0004】一方、脂肪酸自身の酸性プロトンに依存する自己酸触媒法、通称、無触媒エステル化反応による製造方法は、上記エステル化方法の廃水、触媒毒等の問題点を解決するには有効な方法である。しかし、無触媒エステル化反応は、原料自身の酸性プロトン濃度に依存しているため、酸価が大きい状態では容易に反応は進行するが、酸価が小さい状態では反応は極端に遅くなり、酸価が一定水準以下にならないという問題点がある。【0005】例えば、米国特許第5,349,075号公報には、炭素数2〜24の脂肪酸と炭素数1〜5のアルコールとの無触媒エステル化反応方法として、低級アルコールをガス状態で連続的に液状の脂肪酸に供給して、生成水を含むアルコールを連続的に系外に放出する方法により中程度の酸価の脂肪酸低級アルキルエステル粗物を得る第一段階、及びスルホン酸型イオン交換樹脂を触媒としてエステル化反応を完結する第二段階を含む反応方法が開示されている。【0006】しかしながら、上記開示技術においては、無触媒エステル化反応の第一段階では、回分反応の場合は酸価6であり、最も反応効率のよい向流式泡鐘塔を用いた場合でも酸価1.8の反応粗物しか得られておらず、そのため酸価を1以下にするには高価なスルホン酸型イオン交換樹脂を触媒としてエステル化反応を完結させる必要がある等の欠点があり、「完全」な無触媒エステル化反応プロセスとは言えないのが現状である。【0007】また、食品や化粧品分野では、酸価が1以下、好ましくは0.5以下の脂肪酸低級アルキルエステルが強く要望されている。しかし、酸価が1以下、好ましくは0.5以下の脂肪酸低級アルキルエステルは無触媒エステル化方法では従来得られていない。【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、脂肪酸と低級アルコールの無触媒エステル化により、酸価が一定水準以下の脂肪酸低級アルキルエステルを効率的に製造するプロセスを提供することを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、下記に示す知見を得た。(1)水の含有量が特定量以下の低級アルコールを連続的に導入しながら、生成水と低級アルコールを連続的に除去するプロセスが有効である。【0010】(2)低級アルコールと共に留出してくる脂肪酸及び/又は脂肪酸エステル蒸気を分縮器により凝縮せしめて反応缶に戻し、循環させることにより収率が向上する。【0011】(3)酸価を特定の水準以下にするためには、水の含有量が特定量以下の低級アルコールを導入することが必要である。【0012】(4)反応前期の反応粗物に導入する低級アルコールは、反応後期に導入した水の含有量の少ない低級アルコールから回収した低級アルコールをそのまま再使用することができる。【0013】本発明は、かかる知見に基づき、完成されたものであり、以下に示す発明を提供するものである。項1 脂肪酸と低級アルコールとを無触媒エステル化反応させて脂肪酸低級アルキルエステルを製造する方法であって、該脂肪酸を反応缶中に仕込んだ後、該低級アルコールをガス状又は液状で、連続的又は間欠的に反応缶底部に導入し、加圧下、生成水を該低級アルコールと共に連続的又は間欠的に系外に除去しながら、該低級アルコール−生成水の混合蒸気中の脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルの蒸気を分縮器により凝縮させ、回収した脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルを反応系内に戻して、循環させながらエステル化反応することを特徴とする脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0014】項2 水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入することを特徴とする上記項1に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0015】項3 エステル化反応粗物の酸価が20以下に到達後、水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入することを特徴とする上記項1又は2に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0016】項4 エステル化反応粗物の酸価が20以下に到達後、水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入した際に発生する回収低級アルコールをそのままエステル化反応粗物の酸価が20以上の該反応粗物に導入することを特徴とする上記項1〜3のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0017】項5 エステル化反応粗物の酸価が5以下に到達後、水の含有量が0.2重量%以下の低級アルコールを導入することを特徴とする上記項1〜4のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0018】項6 低級アルコールをエステル化反応粗物1tに対して、0.1〜0.4t/hを導入することを特徴とする上記項1〜6のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0019】項7 反応圧力が0.2〜5MPaであり、反応温度が200〜300℃であることを特徴とする上記項1〜7のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0020】項8 脂肪酸が炭素数8〜36の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸であり、低級アルコールがメチルアルコールであることを特徴とする上記項1〜7のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。【0021】項9 上記項8に記載の製造方法により得られる酸価が1以下の脂肪酸メチルエステル。【0022】【発明の実施の形態】脂肪酸エステルの製造方法本発明は、脂肪酸と低級アルコールの無触媒エステル化により、酸価が一定水準以下の脂肪酸低級アルキルエステルを効率的に製造するプロセスに関するものである。【0023】〈低級アルコール〉本発明に係る低級アルコールとしては、特に限定されることはないが、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールが例示される。これらのうち特に、メチルアルコールが好ましい。【0024】〈脂肪酸〉本発明に係る脂肪酸としては、特に限定されることはないが、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸及びその酸無水物等の炭素数8〜36の有機カルボン酸が例示される。【0025】モノカルボン酸として、具体的には、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘインコ酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オブツシル酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトオレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドレイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸、ヒラゴ酸、エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレイン酸、ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ニシン酸、ドコサヘキサエン酸、及びこれらと同一炭素数の分岐脂肪酸等の飽和又は不飽和脂肪酸が例示される。【0026】これらの脂肪酸は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることもできる。【0027】また、上記の脂肪酸の混合物の植物性脂肪酸としては、ヤシ油、パームカーネル油、パーム油、オリーブ油、大豆油、菜種油、サフラワー油、トウモロコシ油、綿実油、ひまわり油、米糠油、亜麻仁油等、及びこれらの使用済み揚げ油等から得られる脂肪酸が例示される。【0028】使用済み揚げ油とは、レストランの厨房、仕出し弁当製造、学校給食室、ファーストフード店、スナック菓子工場等で一定期間使用した揚げ油を回収業者が回収したもので、通称、植物二号油と呼ばれる極めて安価なリサイクル油として取り引きされている油を示す。【0029】動物性脂肪酸としては、牛脂、豚脂、鶏脂、イワシやオレンジラフィーなどの魚油を原料とした脂肪酸が例示される。【0030】これらの植物性又は動物性油脂から得られる脂肪酸は、該油脂を加水分解して得られる飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸をそのまま用いてもよいし、必要に応じて蒸留分別して所定の脂肪酸組成としたものを用いてもよい。また、不飽和脂肪酸低級アルキルエステルを得る目的であれば、その脂肪酸を冷却固体分別操作により所望のヨウ素価の脂肪酸組成とした原料も使用することができる。【0031】また、クラフトパルプ製造廃液から得られるトール油の蒸留品であるトール油脂肪酸や石油系のナフテン酸も使用することができる。【0032】また、本発明に係る脂肪酸として、通称、合成脂肪酸と呼ばれるカルボン酸も使用することができる。具体的には、パラフィンの液相空気酸化によって得られる炭素数8〜20の直鎖又は分岐脂肪酸、α−オレフィンを一酸化炭素と水素存在下でヒドロホルミル化したオキソアルデヒドのガーベット反応物を酸化して得られる2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘプタン酸等のオキソ法由来の脂肪酸が例示される。さらにまた、安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、アルキル(炭素数2〜12)安息香酸などの芳香族カルボン酸及びその核水素化カルボン酸が例示される。【0033】ジカルボン酸としては、炭素数4以上のジカルボン酸が例示され、より具体的には、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、不飽和脂肪酸のダイマー酸、不飽和脂肪酸のトリマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、オキシビフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸及びこれらの幾何異性体、位置異性体、これらの酸無水物等が例示される。【0034】トリカルボン酸及びテトラカルボン酸としては、具体的には、トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸等のトリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、オキシビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、スチレンと無水マレイン酸のディールス・アルダー反応とエン反応により得られるテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物等が例示される。【0035】これらの脂肪酸のなかでも、炭素数8〜30の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が好ましく、特に、高級アルコールや食品や化粧品原料の用途として好適な植物系又は動物系の炭素数8〜30の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が好ましい。【0036】〈エステル化反応装置〉以下に本発明に係るエステル化反応装置について詳細に説明する。本発明に用いられるエステル反応器としては、低級アルコールを蒸発させることができる熱供給能力のある加圧容器であれば特に限定されることはなく、例えば、攪拌機付き容器、塔型反応器等が例示される。【0037】低級アルコールは、ガス状又は液状で連続的又は間欠的に反応缶底部に設置した導入口から導入される結果、反応缶底部からガス状の低級アルコール又は沸騰した低級アルコール蒸気と反応生成水の蒸気からなる気泡の上昇により反応系内の撹拌作用の効果も有する。【0038】反応器に撹拌機を備えていない塔型反応器の場合、反応系内の撹拌は気泡の上昇のみで行うことになる。そのため、低級アルコールのガス空塔線速度が、通常、2〜10cm/s程度になるような塔型反応器を採用することが推奨される。【0039】反応缶の上部から、生成水を低級アルコールと共に連続的若しくは間欠的に系外に除去することにより反応を促進させる。この時、該低級アルコール−生成水の混合蒸気中の脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルの蒸気を分縮器により凝縮させ、回収した脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルを反応系内に戻して、循環させる。このとき分縮器を通過した該低級アルコール−生成水の混合蒸気はコンデンサにより冷却され低級アルコールが回収される。そのうち水の含有量が一定量以下の回収低級アルコールを再使用することができる。【0040】分縮器は反応缶から独立したコンデンサに配管で接続してもよく、また、反応器上部に一体型として設置することもできる。また、塔型反応器の場合は、塔上部に分縮ゾーンを設定してもよい。これらの選択は、本発明の効果が得られる限り特に限定されるものではないが、例えば、既存設備を有効利用するならば独立させて分縮器を設置するなど適宜行うことができる。【0041】分縮器の温度としては、反応圧力により異なるが、通常、150〜220℃程度の範囲が好ましい。150℃未満では反応系内に戻る循環液中の凝縮生成水が多くなるため反応率が低下する傾向があり、また、220℃を越えると脂肪酸及び/又は脂肪酸エステルの凝縮量が減少して、収率が低下する傾向が認められる。【0042】このような分縮器の設置は、該低級アルコール−生成水の混合蒸気中の脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルの蒸気を分縮器により凝縮させ、回収した脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルを反応系内に戻し、循環させることにより収率の向上ができる点からも好ましい。【0043】〈エステル化反応〉反応圧力としては、通常、0.2〜5MPa程度、好ましくは0.5〜0.9MPa程度が推奨される。0.2MPa未満だと低級アルコールの溶存量が少なく、反応時間が長時間になる傾向が見られ、5MPaを越えると高価な耐圧構造設備を必要とし、コスト面で不利になる。【0044】反応温度としては、通常、200〜300℃程度、好ましくは220〜260℃程度である。200℃未満だと反応速度が遅くなり実用性に欠け、300℃を越えると脂肪酸低級アルキルエステル(例えば、不飽和脂肪酸低級アルキルエステル)が熱劣化を起こす傾向がある。本発明の範囲であれば、このような問題は生じない。例えば、オレイン酸では、原料脂肪酸のヨウ素価から算出される理論ヨウ素価を示すオレイン酸メチルエステルが得られる。【0045】低級アルコールの導入方法は、ガス状態又は液体のいずれでもよい。ガス状態での導入は、例えば、反応缶底部の導入部位に回分式の蒸発器や連続式多管式蒸発器等を設置して行うことが好ましい。【0046】液体状態での導入は、そのまま導入してもよいし、あらかじめ回分式の缶型加温器や連続式管式加温器等を設置して行うことが好ましい。【0047】低級アルコールの導入温度としては、通常、室温〜300℃程度、好ましくは100〜260℃程度の範囲である。反応缶自体に充分な熱供給能力のある場合は、低温の低級アルコールを導入でき、一方、充分な熱供給能力がない場合は、あらかじめ反応温度又は低級アルコールの反応缶内での蒸発潜熱を考慮した温度で導入するのが好ましい。【0048】本発明においては、連続的又は間欠的に導入する低級アルコールは、水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールが好ましい。【0049】特に、エステル化反応粗物の酸価が20以下に到達後、水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入することが好ましい。水の含有量が1.0重量%を越えた低級アルコールを導入した場合、反応が進行しにくくなるため反応に長時間を必要とし、そのため、低級アルコールの導入量が多くなり不経済となる。【0050】さらに、酸価が5以下に到達後は、水の含有量が0.2重量%以下の低級アルコールを導入することが好ましい。水の含有量が0.2重量%を越えた低級アルコールを導入した場合、反応が進行しにくくなるため反応に長時間を必要とし、そのため、低級アルコールの導入量が多くなり不経済となる。【0051】低級アルコールの導入量としては、エステル化反応粗物1tに対して、通常、0.05〜0.4t/h程度、好ましくは0.1〜0.3t/h程度である。0.05t/h未満であると、反応が遅くなり実用性に欠け、また、0.4t/hを越えても、導入量に相当する反応速度の向上は得られず、不必要なエネルギーを消費し不経済となる。【0052】本発明方法においては、エステル化反応粗物の酸価が20以下に到達後、水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入した際に発生する回収低級アルコールをそのままエステル化反応粗物の酸価が20以上の該反応粗物に導入することができることから、低級アルコールと水を蒸留分離する工程を省略することが可能となる。【0053】〈脂肪酸低級アルキルエステル〉本発明の脂肪酸と低級アルコールとの無触媒エステル化反応により、酸価が一定水準以下の脂肪酸低級アルキルエステルが効率よく製造することが可能となった。特に、高級アルコールや食品や化粧品原料の用途として好適な酸価が1以下、好ましくは0.5以下の炭素数8〜36、好ましくは8〜30の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸低級アルキルエステルを効率よく製造することが可能となった。【0054】【実施例】以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。尚、酸価は、JIS K0070に準拠して測定した。【0055】実施例1攪拌機付きの8m3圧力容器の底部に低級アルコールを供給できる導入口を設置したものを用いた。低級アルコールは、計量しながら、多管式加熱器に供給してガス又は液体として缶底部の導入口から反応缶に導入した。反応缶上部に、独立したコンデンサを配管で接続して分縮器として設置した。分縮器として用いるコンデンサは熱媒を使用して、温度制御した。分縮器で凝縮した液体は、コンデンサ底部から全量を反応缶に戻し、循環させた。【0056】脂肪酸として、ラウリン酸(新日本理化社製、商品名「ラウリン酸P」)4200kgを反応器に仕込み、反応温度260℃で、圧力0.88MPaにセットし、加熱器で120℃に加熱した水の含有量が0.1重量%のメチルアルコールを、800kg/hで導入して、4時間反応を行った。そのときのエステル化反応粗物の酸価は0.2を示した。この条件では、圧力0.88MPaにおけるメチルアルコールの沸点は140℃であり、液体として導入されたメチルアルコールは、260℃の反応缶底部で沸騰してガス化する。分縮器は180℃を保持した。反応終了後、冷却して酸価が0.2のラウリン酸メチルエステル4413kg(モル収率98.2%)を得た。【0057】比較例1分縮器で凝縮したラウリン酸メチルエステル及び/又はラウリン酸を反応器に循環させなかった他は実施例1と同様にエステル化反応を行い、酸価が0.2のラウリン酸メチルエステル3258kg(モル収率72.5%)を得た。【0058】実施例2脂肪酸として、牛脂系不飽和脂肪酸(日本油脂社製、商品名「NAA−34」)4200kgを用い、分縮器は200℃に保持し、メチルアルコールの導入を以下のように行った他は実施例1と同様にエステル化反応を行った。反応開始時はメタノールの水の含有量が3重量%のメタノールを2時間導入し、2時間後の酸価は15を示した。次に水の含有量が0.05重量%のメチルアルコールに切り替えて2時間導入し、酸価0.2のオレイン酸メチルエステル4394kg(モル収率99.6重量%)を得た。【0059】実施例3パームカーネル油系オレイン酸(アシッドケム社製、商品名「PALMAC 760」)4200kgを用い、メチルアルコールを180℃に加熱して、ガス状態で供給した他は実施例2と同様にエステル化反応を行い、酸価0.2のパームカーネル油系オレイン酸メチルエステル4393kg(モル収率99.6%)を得た。得られたオレイン酸メチルエステルは、原料オレイン酸から算出されるオレイン酸メチルエステルの理論ヨウ素価と等しい89.1を示した。【0060】実施例4ステアリン酸(新日本理化社製、商品名「ステアリン酸300」)4200kgを用いた他は実施例3と同様にエステル化反応を行い、酸価0.2のステアリン酸メチルエステル4395kg(モル収率99.6%)を得た。この時に後半の2時間に発生したメチルアルコール全量をタンクに回収した。そのメチルアルコールは1500kgであり、水の含有量は1.5重量%であった。次に、ステアリン酸(新日本理化社製、商品名「ステアリン酸300」)4200kgを仕込み、上記の回収した水の含有量が1.5重量%のメチルアルコールを用い実施例3と同様にエステル化反応を行い、2時間後の酸価は13を示した。さらに、水の含有量が0.05重量%のメチルアルコールを2時間導入して、酸価0.2のステアリン酸メチルエステル4395kg(モル収率99.6%)を得た。【0061】実施例5水の含有量が2.0重量%のメチルアルコールを用い、メタノールの導入時間を6時間とした他は実施例1と同様に反応を行い、酸価が0.8のラウリン酸メチルエステル4399kg(モル収率97.9%)を得た。【0062】実施例6水の含有量が0.5重量%のメチルアルコールを用い、メタノール導入時間を4時間とした他は実施例1と同様に反応を行い、酸価が0.8のラウリン酸メチルエステル4403kg(モル収率98.0%)を得た。【0063】実施例7脂肪酸として、セバシン酸4200kgを用いた他は実施例1と同様に反応を行い、酸価0.2のセバシン酸ジメチルエステル4706kg(モル収率98.4%)を得た。【0064】【発明の効果】本発明方法によれば、脂肪酸と低級アルコールの無触媒エステル化により酸価が一定水準以下の脂肪酸低級アルキルエステルを効率よく得ることができる。 脂肪酸と低級アルコールとを無触媒エステル化反応させて脂肪酸低級アルキルエステルを製造する方法であって、該脂肪酸を反応缶中に仕込んだ後、該低級アルコールをガス状又は液状で、連続的又は間欠的に反応缶底部に導入し、加圧下、生成水を該低級アルコールと共に連続的又は間欠的に系外に除去しながら、該低級アルコール−生成水の混合蒸気中の脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルの蒸気を分縮器により凝縮させ、回収した脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルを反応系内に戻して、循環させながらエステル化反応することを特徴とする脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入することを特徴とする請求項1に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 エステル化反応粗物の酸価が20以下に到達後、水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入することを特徴とする請求項1又は2に記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 エステル化反応粗物の酸価が20以下に到達後、水の含有量が1.0重量%以下の低級アルコールを導入した際に発生する回収低級アルコールをそのままエステル化反応粗物の酸価が20以上の該反応粗物に導入することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 エステル化反応粗物の酸価が5以下に到達後、水の含有量が0.2重量%以下の低級アルコールを導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 低級アルコールをエステル化反応粗物1tに対して、0.1〜0.4t/hを導入することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 反応圧力が0.2〜5MPaであり、反応温度が200〜300℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 脂肪酸が炭素数8〜36の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸であり、低級アルコールがメチルアルコールであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の脂肪酸低級アルキルエステルの製造方法。 請求項8に記載の製造方法により得られる酸価が1以下の脂肪酸メチルエステル。 【課題】本発明は、脂肪酸と低級アルコールの無触媒エステル化により酸価が一定水準以下の脂肪酸低級アルキルエステルの効率的製造方法を提供する。【解決手段】脂肪酸と低級アルコールとを無触媒エステル化反応させて脂肪酸低級アルキルエステルを製造する方法であって、該脂肪酸を反応缶中に仕込んだ後、該低級アルコールをガス状又は液状で、連続的又は間欠的に反応缶底部に導入し、加圧下、生成水を該低級アルコールと共に連続的又は間欠的に系外に除去しながら、該低級アルコール−生成水の混合蒸気中の脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルの蒸気を分縮器により凝縮させ、回収した脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルキルエステルを反応系内に戻して、循環させながらエステル化反応する。