タイトル: | 公開特許公報(A)_抗アレルギー剤 |
出願番号: | 2002185897 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,A61K35/74,A61P11/02,A61P11/06,A61P17/00,A61P37/08,A61P43/00 |
山本 直之 石田 優 板東 出樹 JP 2004026729 公開特許公報(A) 20040129 2002185897 20020626 抗アレルギー剤 カルピス株式会社 000104353 酒井 一 100081514 蔵合 正博 100082692 山本 直之 石田 優 板東 出樹 7 A61K35/74 A61P11/02 A61P11/06 A61P17/00 A61P37/08 A61P43/00 JP A61K35/74 A A61P11/02 A61P11/06 A61P17/00 A61P37/08 A61P43/00 111 4 OL 13 4C087 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC56 4C087BC58 4C087CA09 4C087MA52 4C087NA07 4C087NA10 4C087ZA34 4C087ZA59 4C087ZA89 4C087ZB13 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、抗アレルギー剤に関する。【0002】【従来の技術】わが国のアレルギー患者は年々増加しており、成人の3人に1人は何らかのアレルギー疾患であるといわれている。アレルギー疾患は作用機序によりI型〜IV型と大きく4タイプに分類されている。花粉症などのアレルギー性鼻炎や、気管支喘息、アトピー性皮膚炎の一部は、免疫グロブリンE(IgE)依存性のI型アレルギーといわれるものであり、血中の抗原特異的IgE抗体が増加するとアレルギー症状を引き起こすリスクが高くなる。【0003】I型アレルギーの発症機構について述べる。体内に侵入した花粉やハウスダスト、ダニなどの抗原に対する特異的IgE抗体が産生され、マスト細胞や血中の好塩基球表面のFcεレセプターに結合することで感作された状態となる。その後さらに抗原が体内に侵入すると、抗原がIgE抗体に結合し、複合体が形成されることで脱顆粒を引き起こし、顆粒中のヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、これらの作用によりアレルギー症状が現れる。【0004】今日アレルギー疾患の治療に主に用いられているのは、抗ヒスタミン剤に代表される化学伝達物質の拮抗剤と、抗炎症剤として用いられるステロイド剤である。しかしいずれも対症療法にすぎず、ステロイド剤については免疫反応全体を抑制してしまうために副作用が伴う。また脱顆粒抑制による化学伝達物質遊離抑制剤も用いられているが、発症の主な因子であるIgE抗体を特異的に減少させるような根本的な治療薬は現在のところない。【0005】また、抗アレルギー剤は、長期間連用する必要が生じるので、容易に摂取でき、且つ安全性が高いものが望まれる。従って、そのような特性を有しうる新たな抗アレルギー剤が求められている。【0006】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、I型アレルギーの発症に関わるIgE抗体量を減少させてアレルギー体質を改善することができ、容易に摂取でき、かつ安全性が高い抗アレルギー剤を提供することにある。【0007】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本願発明者らは、大きなIgGの増加を伴わず、顕著に抗原特異的IgEが増加したマウスモデルを構築し、そのモデルにおいて、腸管免疫系に影響を及ぼしうる各種の乳酸菌菌株のIgE量抑制作用を検討したところ、各種の乳酸菌のうち特定のものが、特に優れたIgE産生抑制作用を有することを見出し、本発明を完成した。【0008】即ち、本発明によれば、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)に属する乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)に属する乳酸菌、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される乳酸菌を有効成分として含む抗アレルギー剤が提供される。【0009】また、本発明によれば、前記ラクトバチルス・アシドフィラスに属する乳酸菌がラクトバチルス・アシドフィラスCP1613株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−14204)、L92株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−14205)及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである前記抗アレルギー剤が提供される。【0010】さらに、本発明によれば、前記ラクトバチルス・ファーメンタムに属する乳酸菌がラクトバチルス・ファーメンタムCP34株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−18866)である前記抗アレルギー剤が提供される。【0011】さらに、本発明によれば、持続的に鼻部に抗原刺激をすることにより血中の抗原特異的IgE抗体を増加させた鼻炎モデルマウスにおいて、経口投与により血中の抗原特異的IgE抗体を減少させることを特徴とする前記抗アレルギー剤が提供される。【0012】【発明の実施の形態】本発明の抗アレルギー剤は、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)に属する乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)に属する乳酸菌、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される乳酸菌を有効成分として含む。【0013】ラクトバチルス・アシドフィラスに属する乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィラスCP1613株(特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1中央第6)寄託番号FERM P−14204、寄託日1994年3月4日)、L92株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−14205、寄託日1994年3月4日)又はこれらの組み合わせが特に好ましい。また、ラクトバチルス・ファーメンタムに属する乳酸菌としては、ラクトバチルス・ファーメンタムCP34株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−18866、寄託日2002年5月23日)が特に好ましい。【0014】ラクトバチルス・アシドフィルスCP1613株は、以下の菌学的性質を有する。(形態学的性質)1)細胞の形:桿菌、2)運動性の有無:無、3)胞子の有無:無、4)グラム染色:陽性(生理学的性質)1)カタラーゼ:陰性、2)インドールの生成:陰性、3)硝酸塩の還元:陰性、4)酸素に対する態度:通性嫌気性、5)15℃で生育:無、6)グルコースからホモ乳酸発酵によりDL乳酸生成、ガス産生無7)各種糖類から酸生成の有無グルコース + メリビオース +ラクトース + ラフィノース +マンノース + マンニトール −フラクトース + ソルビトール −ガラクトース + エスクリン +シュークロース + サリシン +アラビノース − N−アセチルグルコサミン +マルトース + アミグダリン +キシロース − ゲンチオビオース +ラムノース − メレチトース −セロビオース + デキストリン +トレハロース + スターチ −。【0015】ラクトバチルス・アシドフィラスL92株は、以下の菌学的性質を有する。(形態学的性質)1)細胞の形:桿菌、2)運動性の有無:無、3)胞子の有無:無、4)グラム染色:陽性(生理学的性質)1)カタラーゼ:陰性、2)インドールの生成:陰性、3)硝酸塩の還元:陰性、4)酸素に対する態度:通性嫌気性、5)15℃で生育:無、6)グルコースからホモ乳酸発酵によりDL乳酸生成、ガス産生無7)各種糖類から酸生成の有無グルコース + メリビオース −ラクトース + ラフィノース +マンノース + マンニトール −フラクトース + ソルビトール −ガラクトース + エスクリン +シュークロース + サリシン +アラビノース − N−アセチルグルコサミン +マルトース + アミグダリン +キシロース − ゲンチオビオース +ラムノース − メレチトース −セロビオース + デキストリン −トレハロース + スターチ −。【0016】ラクトバチルス・ファーメンタムCP34は、以下の菌学的性質を有する。(形態学的性質)1)細胞の形:桿菌、2)運動性の有無:無、3)胞子の有無:無、4)グラム染色:陽性(生理学的性質)1)カタラーゼ:陰性、2)酸素に対する態度:通性嫌気性、3)グルコースからDL乳酸生成し、ガス産生(+)4)各種炭水化物の分解性アラビノース − セロビオース −キシロース − ラクトース +メリビオース − トレハロース −ラムノース − アミグダリン −リボース + ラフィノース −グルコース + メレチトース −マンノース − マンニトール −フラクトース + ソルビトール −シュークロース + エスクリン −マルトース + サリシン −。【0017】本発明の抗アレルギー剤中の、前記乳酸菌の含有割合は、特に限定されず製造の容易性や好ましい一日投与量等に応じて適宜調節しうるが、例えば剤型が液体の場合1×107cells/ml〜1×1010cells/mlとすることが好ましい。【0018】本発明の抗アレルギー剤は、前記乳酸菌に加え、他の成分を含むことができる。他の成分としては、賦形剤等の添加剤、及び後述する培地の成分等を挙げることができる。【0019】本発明の抗アレルギー剤は、前記乳酸菌を培地において培養することにより製造することができる。【0020】培養に用いる培地は、前記乳酸菌が生育可能な培地であればどのようなものでも利用可能であり、獣乳、脱脂乳、乳性ホエー、MRS培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Brothや合成培地などを用いることができる。培養温度は25℃から50℃、好ましくは35℃から42℃とすることができる。また、培養時間は3時間から48時間、好ましくは8時間から12時間とすることができる。培養終了後の培地をそのまま、又は必要に応じてさらに処理することにより本発明の抗アレルギー剤とすることができる。例えば、培養終了後の培地から遠心分離、ろ過等により集菌して菌体のみとしたもの、これを凍結乾燥菌体としたもの、さらに加熱処理した菌体、菌体破砕物等も本発明の抗アレルギー剤とすることができる。また、上記のものをさらに製剤化したものや、飲料、錠菓、ペースト、パンなど様々な食品素材に配合したもの等も、本発明の抗アレルギー剤とすることができる。【0021】本発明の抗アレルギー剤の投与方法は、特に限定されないが経口投与が好ましい。投与量は、例えばヒトへの経口投与の場合、菌体数として2×109個/日以上、好ましくは2×1010個/日とすることができ、1日1回投与、または複数回の分与とすることもできる。【0022】本発明の抗アレルギー剤は、後述する実施例において確認されるとおりIgE抗体量を効果的に抑制することができる一方、食品として摂食されている菌体を有効成分とするため、安全性は高いものと思われる。【0023】【発明の効果】本発明の抗アレルギー剤は、生体中のIgE抗体量を効果的に減少させることができる一方、容易に摂取でき、且つ安全性が高い。したがって、IgE抗体量の過剰が関与するアレルギーの抑制に有用である。【0024】【実施例】以下に本発明を実施例を参照してより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。【0025】【実施例1】(高IgEマウスの作成)BALB/c系雄マウスを日本チャールスリバー社から購入し、飼料としてCE−2(日本クレア社製)を自由摂取させ飼育した。卵白アルブミン(以下、OVAと略す。シグマ社製)10μg及びアジュバントとして水酸化アルミニウム(和光純薬株式会社製)2mgを生理食塩水300μlに懸濁した。この懸濁液を、6週齢の上記マウス10匹のそれぞれに、感作開始日及び4日目に腹腔内投与し、一次感作を行った。二次感作として、OVAが25mg/mlとなるよう生理食塩水に溶解したOVA抗原溶液にマウスの鼻を約3秒間浸した。この操作を1回につき3度繰り返し、1日に2回行った。これを10〜16日目まで毎日行ない、高IgEマウスを得た。【0026】この高IgEマウスの眼底静脈より、感作開始日及び17日目に部分採血し、採取した血液より血清サンプルを得た。この血清サンプル中の、OVA特異的IgE(以下、OVA−IgEと略す)、総IgE及び総IgGを、下記の測定方法により測定した。結果を図1(a)〜図1(c)に示す。【0027】図1(a)〜1(c)の結果より、感作により血中の総IgE及びOVA−IgEが増加量がIgG増加量に対して著しく大きいことが分かる。このようにして、免疫機能を全体的に変動させることなく、血中IgE及び抗原特異的血中IgEが増加したアレルギーモデルマウスが構築された。(血中OVA−IgEの測定)サンドイッチELISA法によって行った。96穴イムノプレート(コーニング社製)の各ウェルにヒツジ抗マウスIgEポリクローナル抗体(商品名「AAM11」、大日本製薬株式会社製)10μg/mlを含む生理食塩水溶液を100μl加えて、4℃で一晩インキュべートした。プレートをリン酸緩衝液(137mM NaCl, 2.7mM KCl, 8.1mMNa2HPO4及び1.5mM KH2PO4を含む。以下PBSと略す。)で3回洗浄した後、0.5%カゼイン含有PBSをウェルいっぱいに加えて、室温で3時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した。PBSで1/10に希釈した血清サンプル100μlを各ウェルに加え、4℃で一晩反応させた。PBSで4回洗浄し、ビオチン化キット(アメリカン・コーレックス社製)でビオチン化したOVA(ビオチンラベルOVA)10μg/mlを含む0.5%カゼイン含有PBS溶液を各ウェルに100μl加えて室温で2時間反応後、PBSで5回洗浄した。ストレプトアビジンペルオキシダーゼ(シグマ社製)1μg/ml及びカゼイン0.5%を含むPBS溶液を各ウェルに100μl加えて室温で1時間反応させた。プレートを0.1%Tween20含有PBSで5回洗浄した後、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(以下ABTSと略す。ベーリンガーマンハイム社製)600μg/ml及び過酸化水素0.006%を含む0.2Mクエン酸緩衝液(0.2Mクエン酸と0.2Mクエン酸三ナトリウムとを混合してpH5としたもの)を各ウェルに100μl加えて37℃で3時間遮蔽して発色反応した。反応後、OD405とOD492を測定し、OD405値−OD492値を用いて真の発色値とした。【0028】一方、OVA25mg/mlを含む生理食塩水を5回(1回/週)腹腔内投与したマウスの血液を採血し、これから血清を調製し、スタンダード血清とした。このスタンダード血清をPBSで1/10に希釈した。この希釈液をさらに未免疫血清で2倍に希釈する操作を段階的に行い、検量線作成用の希釈液を調製した。これらの希釈液について、上記と同様の操作を行い発色値を測定し、検量線を得た。この検量線に基き、血清サンプル中のOVA−IgE量を、スタンダード血清中のOVA−IgE量を1とした相対量で求めた。(血中総IgEの測定)96穴イムノプレート(コーニング社製)の各ウェルにヒツジ抗マウスIgEポリクローナル抗体(商品名「AAM11」、大日本製薬株式会社製)10μg/mlを含む生理食塩水溶液を50μl加えて、4℃で一晩インキュべートした。プレートをPBSで3回洗浄した後、0.5%カゼイン含有PBSをウェルいっぱいに加えて、室温で3時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した。0.5%カゼイン含有PBSで1/25に希釈した血清サンプル50μlを各ウェルに加え、4℃で一晩反応させた。PBSで4回洗浄し、ビオチンラベル抗マウスIgE抗体(ヤマサ醤油株式会社製)2μg/ml及びカゼイン0.5%を含むPBS溶液を各ウェルに50μl加えて2時間室温で反応させた。0.1%Tween20含有PBSで5回洗浄後、ストレプトアビジンペルオキシダーゼ1μg/ml及びカゼイン0.5%を含むPBS溶液を各ウェルに50μl加えて室温で1時間反応させた。プレートを0.1%Tween20含有PBSで5回洗浄した後、ABTS 300μg/ml及び過酸化水素0.006%を含む0.2Mクエン酸緩衝液(pH5)を各ウェルに50μl加えて、室温で20〜30分間遮蔽して反応させ、OD405を測定した。【0029】一方、血清サンプルの代わりに、マウス抗DNP−IgE(ヤマサ醤油株式会社製)を、カゼイン0.5%を含むPBSに種々の濃度で溶解したものを用いて上記と同様に操作し、検量線を得た。この検量線に基き、血清サンプル中の総IgE量を算出した。(血中総IgGの測定)96穴イムノプレート(コーニング社製)の各ウェルにヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(商品名「62−6500」、ザイメッド社製)1μg/mlを含む生理食塩水溶液を50μl加えて、4℃で一晩インキュべートした。プレートをPBSで3回洗浄した後、0.5%カゼイン含有PBSをウェルいっぱいに加えて、室温で3時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した。0.5%カゼイン含有PBSで1/1000に希釈した血清サンプル50μlを加え、4℃で一晩反応させた。PBSで4回洗浄し、ペルオキシダーゼラベル抗マウスIgG(γ)抗体(カッペル社製)2μg/ml及びカゼイン0.5%を含むPBS溶液を各ウェルに50μl加えて2時間室温で反応させた。0.1%Tween20含有PBSで5回洗浄後、ABTS 300μg/ml及び過酸化水素0.006%を含む0.2Mクエン酸緩衝液(pH5)を各ウェルに50μl加えて、室温で20〜30分間遮蔽して反応させ、OD405を測定した。【0030】一方、血清サンプルの代わりに、精製したマウスIgG(カッペル社製)を、カゼイン0.5%を含むPBSに種々の濃度で溶解したものを用いて上記と同様に操作し、検量線を得た。この検量線に基き、上記血清サンプル中の総IgG量を算出した。【0031】【実施例2】(各種乳酸菌の効果の比較)表1に示す乳酸菌菌株のそれぞれを、MRS培地で37℃で一晩前培養し、3000rpmで10分間の遠心分離により菌体を回収した。この菌体を、9%(W/V)還元脱脂乳(0.1%(W/V)酵母エキス(DIFCO社製)を含む)に添加し、37℃で乳が凝固するまで発酵させ、発酵終了後、各発酵乳の総菌数を測定した。結果を表1に示す。【0032】【表1】【0033】次に、実施例1と同様の手順で高IgEマウスを作製し、感作18日目に血中OVA−IgEを実施例1と同様の測定方法にて測定した。血中OVA−IgE量が均等になるよう一群10匹ずつにマウスを振り分けた。各群のマウスに、感作19日目〜21日目にわたり、上記の各種発酵乳、発酵させていない9%(W/V)還元脱脂乳、又はシクロホスファミドを750μg含む発酵させていない9w/v%還元脱脂乳を1日につき1ml、3日間胃ゾンデにより強制投与した。感作開始22日目に、これらのマウスの眼底静脈から採血し、血清を調製し、血中OVA−IgE及び総IgG量を測定した。また、対照として、同様に感作を行ったが発酵乳等の投与は何も行わなかったマウスについても、同様に採血し、血中OVA−IgE及び総IgG量を測定した。結果を図2に示す。【0034】図2に示される通り、ラクトバチルス・アシドフィラス又はラクトバチルス・ファーメンタム発酵乳を投与した群においては、OVA−IgE量に関して有意な抑制効果が得られた(p<0.01)。一方血中総IgG量に関しては大きな変化は認められなかった。【0035】【実施例3】乳酸菌菌株として表2に示すものを用いた他は、実施例2と同様に操作した。各発酵乳中の総菌数の測定結果を表2に示す。また、血中OVA−IgEの測定結果を図3に示す。【0036】【表2】【0037】図3に示される通り、ラクトバチルス・アシドフィラス発酵乳を投与した群においては、OVA−IgE量に関して有意な抑制効果が得られた(p<0.01)。一方血中総IgG量に関しては大きな変化は認められなかった。【0038】【実施例4】(低用量での効果の確認)ラクトバチルス・アシドフィラスL92株とラクトバチルス・ファーメンタムCP34株のそれぞれをMRS培地で37℃で一晩前培養した。3000rpmで10分間の遠心分離により菌体を回収してMRS培地に添加し、37℃で一晩本培養し、再び3000rpmで10分間の遠心分離により菌体を回収した。それぞれ菌数を測定して、1mlあたり1×106個となるように9%脱脂乳に菌体を懸濁し、懸濁液を調製した。【0039】次に、実施例1と同様の手順で高IgEマウスを作製し、感作18日目に血中OVA−IgEを実施例1と同様の測定方法にて測定した。血中OVA−IgE量が均等になるよう一群10匹ずつにマウスを振り分けた。各群のマウスに、感作19日目〜21日目にわたり、上記の懸濁液を1日につき1ml、3日間胃ゾンデにより強制投与した。感作開始22日目に、これらのマウスの眼底静脈から採血し、血清を調製し、血中OVA−IgE及び総IgG量を測定した。結果を図4に示す。【0040】図4に示される通り、ラクトバチルス・アシドフィラスL92株及びラクトバチルス・ファーメンタムCP34株のいずれを投与した群においても、OVA−IgE量に関して有意な抑制効果が得られた。一方血中総IgG量に関しては大きな変化は認められなかった。【0041】発酵させていない脱脂乳を試料とした際のOVA−IgE量のスタンダード比をa、各懸濁液を試料とした際のOVA−IgEのスタンダード比をbとすると、各懸濁液中を投与した場合のOVA−IgEの減少率dは、式d=1−(b/a)により求められる。投与した懸濁液中の菌濃度をs(cells/ml)とし、sと減少率dとが比例すると仮定すると、この実験系においてOVA−IgEを半減させるのに必要な懸濁液中の菌数x(cells/ml)は、式x=(s×0.5)/dで求められる。この式に基いて、実施例2〜3で用いた各菌株における菌数xを求めた。結果を表3に示す。【0042】【表3】【0043】【実施例5】(ヒト臨床効果)通年性アレルギー性鼻炎に罹患して症状を呈している13名の被験者(平均年齢22.9±6.1歳、男性6名、女性7名)に、2週間の観察期間の後、ラクトバチルス・アシドフィラスL92株を8.0×108〜1.3×109cell/ml含む発酵乳を100ml/日づつ4週間摂取させた。経時的に自覚症状に関するアンケートをとり、これを元に日本アレルギー学会「アレルギー性鼻炎重症度分類」に従って症状をスコア化した。また、経時的に鼻炎症状を、日本アレルギー学会ガイドラインの基準に従って診断した。また、経時的に採血し、血液中のIgE抗体価を測定した。さらに、試験期間中の最低気温を記録した。試験期間中の被験者の鼻閉の重症度、鼻をかんだ回数及び最低気温を図5及び図6に示す。【0044】試験期間の最低気温の変化が激しく、摂取期間開始日(11月15日)の14℃から、摂取期間終了日(12月13日)の3.7℃まで10℃以上低下し、鼻炎症状は悪化しやすい条件であったにもかかわらず、鼻閉は摂取開始2週間後に改善傾向が見られ(Wilcoxon test: p<0.1)、摂取開始4週間後には有意な改善を認めた(Wilcoxon test: p<0.05)。鼻かみ回数においても摂取開始3週間後に減少傾向が見られた(Wilcoxon test: p<0.1)。また、摂取期間中、くしゃみ回数の減少、下鼻甲介の腫脹の軽快、及び血中総IgE抗体価の低下の傾向が見られた。【図面の簡単な説明】【図1】実施例1における、高IgEマウスの血中免疫グロブリン量の変化を示すグラフである。【図2】実施例2における、高IgEマウスに対する発酵乳投与によるOVA−IgE量抑制の実験結果を示すグラフである。【図3】実施例3における、高IgEマウスに対する発酵乳投与によるOVA−IgE量抑制の実験結果を示すグラフである。【図4】実施例4における、高IgEマウスに対する発酵乳投与によるOVA−IgE量抑制の実験結果を示すグラフである。【図5】実施例5における、ヒトに対する発酵乳投与によるアレルギー抑制の実験結果を示すグラフである。【図6】実施例5における、ヒトに対する発酵乳投与によるアレルギー抑制の実験結果を示すグラフである。 ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)に属する乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)に属する乳酸菌、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される乳酸菌を有効成分として含む抗アレルギー剤。 前記ラクトバチルス・アシドフィラスに属する乳酸菌がラクトバチルス・アシドフィラスCP1613株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−14204)、L92株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−14205)またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項1記載の抗アレルギー剤。 前記ラクトバチルス・ファーメンタムに属する乳酸菌がラクトバチルス・ファーメンタムCP34株(特許生物寄託センター寄託番号FERM P−18866)である請求項1記載の抗アレルギー剤。 持続的に鼻部に抗原刺激をすることにより血中の抗原特異的IgE抗体を増加させた鼻炎モデルマウスにおいて、経口投与により血中の抗原特異的IgE抗体を減少させることを特徴とする請求項1記載の抗アレルギー剤。 【課題】I型アレルギーの発症に関わるIgE抗体量を減少させてアレルギー体質を改善することができ、容易に摂取でき、かつ安全性が高い抗アレルギー剤を提供する。【解決手段】ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)に属する乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)に属する乳酸菌、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される乳酸菌を有効成分として含む抗アレルギー剤。【選択図】 なし